通常、このような監視カメラでは、監視対象物を常時撮像し続けるため、異常時の撮影内容を確認するために長時間の映像をはじめから通して再生して、早回しなどで問題のシーンを探して確認する必要があった。このため、確認作業に非常に多くの時間が掛かっていた。
そこで、本発明は、イベントが発生した前後の撮影内容を容易に確認することができる画像データを取得可能な装置等を提供することを目的とする。この目的は例えば特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は例えば本発明の更なる有利な具体例を規定する。
(1)上記課題を解決するために、本発明は、イベントの発生を示す情報を外部から受信したことを契機として、少なくとも、イベントが発生した時刻の前後所定時間に撮像手段が撮像した画像データを記憶手段に記憶させる制御を行う制御手段を備える装置とするとよい。
このようにすれば、イベントが発生した前後における撮像手段が撮像した画像データを記憶することができるので、イベントが発生した時刻の前後に撮像した画像の内容の確認が容易になる。例えば、画像の確認のためには、記憶した画像データをユーザが視認可能に再生する再生手段を備えるとよい。再生手段は制御手段と一体に設けられてもよいし、別体として設けられてもよい。また、本発明では、制御手段とともに撮像手段を備えるとよい。撮像手段は、イベントの発生の有無に関わらず常時撮像を行って所定時間にわたる画像データを一時的に格納するとよい。そして、制御手段がイベントの発生を示す情報を受信したときに、その前後所定時間に撮像された画像データを記憶手段に記憶させるよう制御手段が制御をするとよい。また、本発明では、記憶手段は制御手段が設けられる装置に内蔵されてもよいが、当該装置に着脱可能に、例えばメモリカード、ハードディスクドライブ等の形態で設けられるとよい。
「イベント」は、例えば、異常が発生した場合に発生するものとするとよい。例えば、各種の出来事とするとよく、特に工場の製造ラインで稼働する工作機械における作業の失敗、装置が検出した通常とは異なる振動、外部センサが検出した状態の変化や異常等に起因して発生するものとするとよい。
「イベントの発生を示す情報」は、例えば状態の変化や異常の発生を示す情報とするとよい。具体的には、例えば、工作機械が作業の失敗を検知したときに発生する情報を「イベントの発生を示す情報」とするとよい。特に、アラーム信号を「イベントの発生を示す情報」とするとよい。工作機械が作業の失敗を検知したときに発生するアラーム信号を「イベントの発生を示す情報」とすると特によい。また例えば、工作機械に接続された回転灯からの信号(例えば回転灯が点灯していることを示すステータス信号)を「イベントの発生を示す情報」とするとよい。また、「イベントの発生を示す情報」は、外部の機器で発生する信号としてもよい。装置はこれらの信号をトリガ信号として受け取るトリガ受信手段を備えるように構成するとよい。そして、制御手段は、トリガ信号の状態の変化を契機として、撮像手段が撮像した画像データを記憶手段に記憶させる制御を行うとよい。また、「イベントの発生を示す情報」は、外部から受信するものだけでなく、装置内部でイベントの発生を検出して「イベントの発生を示す情報」を発信し、装置内部で発生した「イベントの発生を示す情報」をも受信する構成を備えるようにしてもよい。
「イベントが発生した時刻」は、例えばイベントの発生を示す情報を外部から受信した直後の時とするとよい。
「画像データ」は、イベントの発生の原因を追及できる範囲を撮像範囲として撮像されたものとするとよい。
「画像」は、例えば静止画像としてもよいが、特に動画像とするとよい。また、画像は、例えば2D画像としてもよいし、3D画像としてもよい。例えば白黒画像としてもよいし、カラー画像としてもよい。
(2)好ましくは、本発明では、制御手段は、イベントを識別する情報を、画像データを格納するファイルに埋め込んで記憶手段に記憶するよう制御するとよい。このようにすれば、画像データを格納するファイルからイベントを識別する情報を取り出すことが可能となる。したがって画像データとは別にイベントを識別する情報を含むファイルをやりとりしなくても、この画像データを格納するファイルをやりとりするだけでイベントを識別する情報を得ることが可能となる。例えば、遠隔地の工場に配置された装置がイベント発生時に記憶した画像を、管理部門などにまとめて送り、管理部門にて画像の内容を確認するような場合には、沢山の関連するファイルをまとめて送るのには労力を要し、ファイルを受け取った側においても、一式のファイルを区別して管理するのに多大な労力を要する。このような場合などに、上記の構成とすれば、イベントを識別するための情報を手動で入力する必要をなくすことができたり、イベントを識別する情報を記録するファイルと画像データの記録されたファイルとの対応関係を送信側・受信側の双方で確認したりするなど、装置が撮影してえられたファイルを送信する側、及び送られてきた画像を確認する側の双方における労力を軽減することができる。
(3−1)例えば、制御手段は、イベントを識別する情報をファイルの名称の少なくとも一部に使用して記憶するよう制御するとよい。このようにすれば、ファイルを開かなくともファイル名からイベントを識別する情報の内容を把握することができる。例えば、ファイルからイベントを識別する情報や画像データを取り出して表示させるといった時間のかかる作業をしなくてもファイル名を表示するだけで、そのファイルの内容を把握することが可能となる。(3−2)他の例としては、制御手段は、イベントを識別する情報を撮像手段が撮像した画像に透かしとして埋め込むよう制御するとよい。このようにすれば、イベントを識別する情報の改ざんを困難にすることができる。特に、ファイルのサイズを増やすことなく、また画像に視認可能な影響を及ぼすことなく、イベントを識別する情報を埋め込む構成とするとよい。(3−3)更に他の例としては、制御手段は、イベントを識別する情報を、画像データを格納するファイルに付加情報として埋め込むよう制御するとよい。このようにすれば、画像に視認可能な影響を及ぼすことなく、イベントを識別する情報を埋め込むことができる。なお、「付加情報」とは、画像データを格納するファイルのうち、例えばヘッダ、フッタ等、画像そのもの以外の情報を指す。もちろん例えば(3−1)から(3−3)の構成は任意に複数のものを組み合わせることができる。特に(3−1)から(3−3)のうちいずれか2つを備える構成とすると望ましく、最も望ましくは例えば(3−1)の構成と(3−2)の構成と(3−3)の構成を備えるとよい。例えば第一のイベントを識別する情報はファイルの名称の少なくとも一部に使用し、第二のイベントを識別する情報は画像に透かしとして埋め込み、第三のイベントを識別する情報は付加情報として画像データを格納するファイルに埋め込むようにするとよい。例えば第一から第三のイベントを識別する情報は同一の情報としてもよいが、特に、異なる情報を含む構成とするとよい。特に、これらは全く異なる情報としてもよいが、特に一部の情報について同一の情報を含むとよい。このようにすれば、その同一の情報についてユーザが容易にファイル名から視認できるとともに、改ざんされにくくしたり、第一から第三のイベントを識別する情報を比較することで改ざんを検出したりすることが容易にできる。特に一部の情報について同一の情報を異なる表現形式の情報として格納する構成とするとよい。例えば、ファイル名称に使用する情報は、そのイベントが発生した場所と日時を特定する情報をその場所に一意に対応する例えば英数字列等からなる人が場所を識別できる場所コードと日時とイベントの内容を示すコードであるイベントコードとをこの順で並べた文字列情報とする一方、付加情報や透かしとしては、場所コードに対応する場所の名称を示す文字列とイベントコードに対応するイベントの具体的な内容の文字列を格納するようにするとよい。
(4)画像データが複数のフレームにより構成された動画である場合、制御手段は、当該イベントが発生したときに撮像されたフレームに、イベントを識別する情報を、埋め込んで記憶するよう制御するとよい。このようにすれば、イベントが発生したときのフレームを特定し易くなり、イベントの前後の画像の確認を容易にすることができる。またイベントを識別する情報からそのフレームで発生したイベントを識別できる。特に、イベントを識別する情報としてイベントの種類を識別する情報を備えるとよい。このようにすればその種類のイベントが発生したフレームを動画中から抽出することができる。1つのファイルの動画中にはイベントが発生したフレームは1つとするようにファイルを構成してもよいが、1つのファイルの動画中にイベントが発生した複数のフレームを備えるようにするとよい。このように構成すると動画ファイル中でのイベントの発生したフレームをイベントの種類を識別する情報から容易に特定することができ、早送り等して動画の全体を確認する必要がなくなるため顕著な効果を奏する。
(5−1)好ましくは、本発明では、イベントを識別する情報は、イベントが発生した時刻を示す情報を含むとよい。このようにすれば、受け取ったファイルから、外部でイベントの発生した時刻を特定できる。したがってイベントの発生した時刻を示す情報を含むファイルを別にやりとりする必要がなく、イベントの発生した時刻を示す情報を含むファイルと画像データの格納されたファイルとを別に受け渡したり、両者の対応関係をいちいち確認したりする必要もなくなる。(5−2)また、イベントを識別する情報は、イベントが発生した場所を示す情報を含むとよい。このようにすれば、受け取ったファイルから、イベントの発生した場所を特定できる。したがってイベントの発生した場所を示す情報を含むファイルを別にやりとりする必要がなく、イベントの発生した場所を示す情報を含むファイルと画像データの格納されたファイルとを別に受け渡したり、両者の対応関係をいちいち確認したりする必要もなくなる。イベントが発生した場所を示す情報としては、例えば、工作機械が設置された工場を示す情報や当該工場において撮影している工作機械が設置されたラインを示す情報とするとよい。また、イベントが発生した場所を示す情報は、国や地域を示す情報を含むようにすると特によい。このようにすれば、様々な国の様々な地域にある工場の複数の異なる製造ラインの異なる製造機器の異常時の映像データを、本社・本部に集約してその原因等を検討することが容易にできる。(5−3)また、イベントを識別する情報は、イベントの種類を示す情報を含むとよい。このようにすれば、受け取ったファイルから、発生したイベントの種類を特定できる。したがってイベントの種類を示す情報を含むファイルを別にやりとりする必要がなく、イベントの種類を示す情報を含むファイルと画像データの格納されたファイルとを別に受け渡したり、両者の対応関係をいちいち確認したりする必要もなくなる。例えば、制御手段が工作機械からの異常発生を示すアラーム信号をイベントとして受信する場合には、「イベントの種類を示す情報」とは、異常の種類を示すエラーコードとするとよい。その他、イベントを識別する情報は、録画開始からのイベントの発生した順番を示す連番としてもよい。もちろん例えば(5−1)から(5−3)の構成は任意に複数のものを組み合わせることができる。特に(5−1)から(5−3)のうちいずれか2つを備える構成とすると望ましく、最も望ましくは例えば(5−1)の構成と(5−2)の構成と(5−3)の構成を備えるとよい。イベントを識別する情報が、イベントが発生した時刻、イベントが発生した場所、および発生したイベントのウチの少なくとも2つ、好ましくはすべてを含むようにすることで、受け取ったファイルから、イベントに関するより詳細で多角的な情報が得られる。また、イベント発生時の画像が記録された多数のファイルを、イベントの発生場所、発生時刻、イベントの種類によって分類することが容易となり、イベント発生の原因等を検討し究明することが容易となる。
(6)撮影対象が所定の動作時間を1周期として動作を繰り返すものであり、所定時間は、少なくとも、イベントが発生した周期における動作時間の開始時点からイベントの発生までを含むようにするとよい。このようにすれば、イベントが発生した時点を含む1周期の動作の開示時点からイベント発生までの動作を記憶された画像データを再生して確認することができる。したがって、その周期でイベントが発生した原因をさかのぼって画像データを確認して特定することが容易になるとともに、イベントの発生とは無関係な記録を防止できるので、画像データの確認に要する時間を短縮することができる。例えば撮影対象が所定の動作時間を1周期として動作を繰り返す工作機械である場合に、工作機械の作業ミスのようなイベントが発生すると、その、イベントが発生した周期における動作時間の開始時点からイベントの発生までの時間に撮影した画像データを記憶するので、作業ミスの原因究明を容易にすることができる。所定時間は、「少なくとも、イベントが発生した周期における動作時間の開始時点からイベントの発生までを含む」構成であればよいが、特に、「そのイベントが発生した時刻を含む1周期分の時間」とするとよい。このようにすれば、作業ミスの原因究明を容易にすることができる。また、別の構成として、所定時間は、特に、イベントが発生した周期における動作時間の開始時点からイベントの発生までの時間とするとよい。例えば、1周期の動作開始の時点で動作開始信号を受ける構成とし、動作開始信号を受けた場合に映像の記録を開始する構成とするとよい。
(7)また、所定時間はイベントの発生を示す情報を受信した時刻の前と後ろにそれぞれ動作時間の1周期の時間とすることがより好ましい。このようにすれば、動作時間の1単位内におけるイベントの発生タイミングに関わらず、当該イベントが発生した周期の開始から終了までを含む画像データを記憶することができる。例えば所定の動作時間を1周期として動作を繰り返す工作機械において工作機械の作業ミスのようなイベントが発生した場合に、そのイベントが発生した時刻を含む周期の開始から終了までに撮影した画像データを漏れなく記憶することができ、作業ミスの原因やその後の処理の確認を容易にすることができる。また、例えば1周期の動作終了の時点で動作終了信号を受ける構成とし、前記イベントの発生を示す信号を外部から受信せずに動作終了信号を受けた場合に当該周期に対応する前記画像データを記録しない構成とするとよい。このようにすれば、記憶容量を削減できるとともに、イベントが発生していない場面の画像データを確認する手間を省くことができる。また、例えば前記イベントの発生を示す信号を外部から受信した場合には、少なくとも前記イベントの発生によるリカバリーの時間分、前記画像データの記録を延長する処理を行うとよい。このようにすれば、イベントの発生に伴いリカバリー処理を行う機器等において、そのリカバリーの過程も含めて記録することができる。
(8)好ましくは、制御手段は、イベントの発生を示す情報を受信した時刻の前後所定時間以外の時間に、当該所定時間におけるよりも低い情報量で画像データを記憶するよう記憶手段を制御するとよい。このようにすれば、イベントが発生していない時間帯に撮像した画像データの内容を粗く確認することができるとともに、イベント発生時については画像データの内容を詳細に確認することができる。また、画像データを格納するファイルのサイズを抑制しつつ、イベントが発生していない時間の画像を記憶することができる。
「低い情報量で画像データを記憶する」とは、例えば、動画像のフレームレートを下げて記憶すると特によい。その他、画像ファイルを圧縮する、画像ファイルの画質を落とす、イベント発生時にはカラー画像を格納し、その他の時間については白黒画像を格納する、等としてもよい。
(9)好ましくは、本発明の装置は、振動を検出し、所定値以上の振動を検出した場合にイベントの発生を示す情報を制御手段に送信する振動検出手段をさらに備える。このようにすれば、外部からイベントの発生を示す情報を受信した場合以外に、所定値以上の振動が装置に加わったときにもイベントが発生したとして当該イベントの前後の画像を記録することができる。例えば、工作機械のエラーをイベントとして受信するように構成して、当該工作機械を撮影している場合に、装置自体に衝撃が加わったり撮影方向が変えられたりといった想定外の振動が検出される状況において、イベントを自ら発生して画像を記録することができる。
(10)また、本発明は、上述の(1)〜(13)のいずれかの装置を複数備えて構成されるシステムであって、当該システムを構成する複数の装置は、共通のイベントの発生を示す情報を受信可能に構成される。このようにすれば、複数の装置によってイベントが発生した前後に撮像した画像データを記憶することができるので、イベントが発生した前後の状況の確認が容易になる。
(11)本発明では、システムを構成する各装置が備える制御手段は、イベントを識別する情報を、画像データを格納するファイルに埋め込んで記憶手段に記憶するよう制御するように構成され、複数の装置のうちの第1装置はマスタとして機能し、複数の装置のうち第1装置以外はスレーブとして機能し、第1装置は、イベントの発生を示す情報を受信したときにスレーブとして機能する装置に当該イベントを識別する情報を分配するイベント分配部を備え、スレーブとして機能する装置が備える制御手段は、第1装置から分配されたイベントを識別する情報を、当該スレーブとして機能する装置が撮像した画像データを格納するファイルに埋め込んで記憶手段に記憶するよう制御するシステムとするとよい。
このようにすれば、イベントが発生したときに、撮像システムを構成する複数の装置が、共通のイベントを識別する情報をファイルに埋め込むことができる。その結果、共通のイベントの発生を契機としてそれぞれの装置の制御により記憶された画像データの特定が容易となる。また、イベントを識別する情報がイベントの種類を示す情報を含む場合には、ファイルの分類が容易となる。撮像システムを構成する複数の装置のそれぞれは、共通の記憶手段に画像データを記憶するように制御してもよいが、互いに異なる記憶手段に画像データを記憶するよう制御するとよい。
ここで「分配」とは、受け取った情報をそのまま他の装置の分けて配ってもよいが、受け取った情報を加工(例えば、情報を修正変更、又は追加)してから他の装置の分けて配ってもよい。「分配」する情報を伝達する手段としては有線することもできるが、無線とするとよい。また、直接及び間接的に分配する方法を含む。例えば、複数のスレーブを多段に縦続接続し、マスタから供給されるイベントを識別する情報やイベントの発生を示す情報を、順次後段に伝達するように構成してもよい。
(12)本発明では、システムを構成する各装置の制御手段は、第1装置から分配されたイベントを識別する情報に加え、装置を識別するための識別情報を当該装置が撮像した画像データを格納するファイルに埋め込んで記憶手段に記憶するよう制御するとよい。
スレーブとして機能する装置の制御手段が、マスタとして機能する装置を識別するための情報を、画像データを格納するファイルに埋め込んで記憶手段に記憶するように制御するとよい。このようにすれば、共通のマスタに接続されたスレーブによって記憶されたファイルには共通の情報が埋め込まれるので、共通のイベントを契機に撮影した画像ファイルを容易に見つけることができるようになる。
装置を識別するための識別情報は、例えば、予め各装置に一意の識別番号を割り当ててもよいし、MACアドレス等の予め一意に割り振られている情報を流用してもよい。また、接続時にマスタとスレーブとの通信を通じて、自動的に重複しないように設定すると特によい。
(13)好ましくは、第1装置が備えるイベント分配部は、制御手段がイベントの発生を示す情報を受信したときに、スレーブとして機能する装置にイベントの発生を示す情報を分配するとよい。このようにすれば、イベントを識別する情報とともにイベントの発生を示す情報も分配できる。イベントを識別する情報の供給元とイベントの発生を示す情報の供給元が共通となるのでシステムを構成する各装置の接続や設定が容易となる。
(14)本発明のプログラムでは、コンピュータを上述のいずれかの装置として機能させるとよい。
〔第1実施形態〕
工場に製造ラインを構築したばかりの時期は、3〜4ヵ月間程度の期間、ラインを構成する工作機械が種々のトラブルを起こすので監視が必要である。例えば、螺子締めのラインで螺子が落ちた、螺子が倒れた等のトラブルが発生する場合がある。このようなトラブルの原因を解消して、トラブルをほぼゼロにし、製品がきちんと出来上がってくるようにするための活動を行う。従来は、ビデオカメラで工作機械を常時撮影しておいて、何か異常が起きたことを工作機械が記録したデータからあとで見つけると、作業者が撮影した映像を最初から見るということをしていた。そして、記録された映像の中から異常が起きた部分を探し、その部分のみをコピーして、本部や工作機械の製造者に送り、本部や工作機械の製造者において、トラブルの原因究明や対策の立案等をしていた。
以下、本発明の好適な実施形態である撮像システム1を、図面を参照して説明する。本実施形態の撮像システム1は、工場の製造ラインで稼働する工作機械2の作業内容を監視すべく、工作機械2の映像を記録するシステムである。図1は、撮像システム1の構成を工作機械2とともに示す模式図である。図2は、工作機械2でイベントが発生したときの動作順序の概要を示す模式図である。
本例において監視の対象となる工作機械2は、製造ラインにおいて螺子締め作業を行うものとする。工作機械2は、この螺子締め作業を、所定の動作時間(例えば30秒)を1周期として繰り返し実行する。工作機械2は、自らが行う作業に失敗があったこと、機器の異常等を検出すると、異常の発生を示すアラーム信号を出力する。作業の失敗、機器の異常等、平常な状態から平常な状態とは異なる状態への遷移を「イベント」という。工作機械2はイベントの発生時にアラーム信号の信号レベルをローからハイに変化させる。アラーム信号は回転灯21に点灯制御信号として入力される。回転灯21は、アラーム信号の信号レベルがローの時には消灯(あるいは異常がないことを示す青色の点灯)状態となり、ハイの時には異常があることを示す赤色の点灯状態となる。工作機械2はイベント発生時にアラーム信号を変化させることに加え、どのようなイベントが起きたかを示す情報(エラーコード)を出力する。エラーコードとしては、例えば、螺子が落下したこと、螺子が倒れたこと、等の異常の種類毎に異なるコードが設けられる。工作機械2は、アラーム信号を出力した後、作業停止し、不具合品を排除して、作業を再開するとともに、アラーム信号をハイからローに戻す。これらの失敗検知後の一連の処理は、工作機械2における失敗が検知された動作周期内に完了するものとする。撮像システム1では、アラーム信号の状態変化からイベントの発生を検知し、イベント発生の前後の画像を撮影する。
撮像システム1は、3台の撮像装置((100−1、100−2、100−3)これらを総称して撮像装置100という。)により構成される。
図3は撮像装置100の外観を示す模式図であり、図4は撮像装置100の構成をメモリカード200とともに示すブロック図である。撮像装置100は、略円筒形の筐体105の内部に、CPU110、撮像ユニット120、イベント入力部130、加速度センサ140、イベント分配部150、計時部170、及びメモリカードスロット160を備える。筐体105の下部には、撮影場所に固定するための螺子穴が設けられている。
CPU110は、本発明の制御手段に相当する。CPU110は、制御プログラムに従い、各種の制御を行う。CPU110は、撮像ユニット120の駆動を制御し、画像処理や画像データの蓄積等の制御を行う。また、CPU110は、イベント入力部130に入力されるイベントに関する情報、及び加速度センサ140が出力するセンサ信号等を受け取り、イベントに応じた制御を実行する。
メモリカードスロット160は、筐体105の長手方向の一端に設けられる。メモリカードスロット160には、本発明の記憶手段に相当するメモリカード200が挿入される。CPU110の制御に従い、撮像ユニット120が撮像した画像データを格納したファイルがメモリカード200に記録される。画像データを格納するファイルには、イベントを識別する情報として、イベントの発生時刻、撮影場所、及びエラーコードが埋め込まれる。
また、メモリカード200には、画像データの記録に関する条件(例えば、画質、録画コマ数等)、撮像装置100を識別するための識別情報、後述するマスタ/スレーブの設定を定義した設定ファイルが格納される。また、マスタとしての設定が定義される場合には、撮影場所を示す情報も設定ファイル内に定義される。撮影場所を示す情報を示す情報としては、工作機械が設置された工場を示す識別情報及び当該工場において撮影している工作機械を示す識別情報を定義する。本例においては、以下で説明する記録に必要な条件が設定ファイルに定義されているものとする。
撮像ユニット120は、本発明の撮像手段に対応する。撮像ユニット120は、略円筒形の筐体105のメモリカードスロット160とは反対側の端部に、筐体105の長手方向を光軸として設けられる。撮像ユニット120は、レンズ部122と撮像素子124とにより構成される。レンズ部122は、ズームレンズを備え、撮影対象の大きさや撮像対象までの距離に応じて画角を設定可能である。撮像素子124は、CCD、CMOSイメージセンサ等であり、レンズ部122によって結像された撮影対象の像を画像データとして取得する。
イベント入力部130は、筐体105の側面に設けられた端子であり、トリガ入力端子132とイベント識別情報入力端子134を備える。トリガ入力端子132には、工作機械2が作業の失敗を検知したときにアラームの回転灯21を点灯させるためのアラーム信号を伝達する接続線を分岐した配線を接続する。トリガ入力端子132は、アラーム信号をイベントの発生を示すトリガ信号として受け取る。トリガ入力端子132に入力されたトリガ信号は、CPU110に伝達され、イベントの発生を示す情報の一種として用いられる。
マスタに設定された撮像装置100のイベント識別情報入力端子134には、工作機械2が有するエラーコード出力端子を接続する。マスタに設定された撮像装置100のイベント識別情報入力端子134は、工作機械2が作業の失敗を検知したときに発生するエラーコードを受け取る。入力されたエラーコードは、CPU110に伝達され、イベントを識別する情報の一部として利用される。また、スレーブに設定された撮像装置100のイベント識別情報入力端子134には、マスタに設定された撮像装置100のイベント分配部150を接続する。スレーブに設定された撮像装置100のイベント識別情報入力端子134は、マスタに設定された撮像装置100が分配するイベントを識別する情報を受け取る。入力されたイベントを識別する情報は、CPU110に伝達され、スレーブに設定された撮像装置100におけるイベントを識別する情報の一部として利用される。
既存の工作機械には上述のようにイベントの発生を人に知らせる構成が設けられているので、撮像装置100はその構成を利用して、イベント入力部を介してトリガ信号やエラーコードを受信する。
加速度センサ140は、振動を検出し、予め設定された強度以上の振動を検出した場合に、センサ信号をロー状態からハイ状態に遷移させる。センサ信号は、CPU110に伝達される。CPU110では、センサ信号をイベントの発生を示す情報の一種として用いる。
計時部170は、現在時刻を計時し、CPU110の求めに応じて現在時刻の情報をCPU110に出力する。CPU110では、計時部170から取得した時刻の情報を、イベントを識別する情報の一部として利用する。
画像信号出力端子180は、撮像ユニット120によって撮像した画像を外部のモニタに表示するための画像信号を出力する端子であり、本実施形態ではHDMI(High-Definition Multimedia Interface、登録商標)端子が用いられる。
イベント分配部150は、撮像装置100がマスタとして機能するよう設定されている場合に、イベントを識別する情報をスレーブとして機能する他の撮像装置100に分配する。具体的には、CPU110の制御の下、当該マスタとして機能する撮像装置100の計時部170にて計時したイベント発生時刻、マスタとして機能する撮像装置100に挿入されたメモリカード200の設定ファイルに記録されている撮影場所を示す情報、及びエラーコードを出力端子から出力する。出力端子にはスレーブとして機能する撮像装置100にイベントを識別する情報を伝送するためのケーブルが接続される。イベント分配部150の出力端子は、工作機械2のエラーコード出力端子と共通の構造、ピン配置であり、工作機械2のエラーコード出力端子とマスタとして機能する撮像装置100のイベント識別情報入力端子134とを接続するケーブルと、マスタとして機能する撮像装置100のイベント分配部150とスレーブとして機能する撮像装置100のイベント識別情報入力端子134とを接続するケーブルとは、互換性を有する。
以上のように構成される各撮像装置100は、互いに異なる方向から工作機械2を撮影するよう設置される。各撮像装置100は、筐体105の下部に設けられた螺子穴を利用して、撮影対象の工作機械2の周辺の構造物や三脚等の架台に固定される。固定箇所と撮像装置100との間には雲台が設けられ、撮影方向を自由に変更可能とされる。各撮像装置100がそなえるレンズ部122は、イベントの発生の原因を追及できる範囲を撮像範囲として画像データを記録できるように、それぞれの画角が調節される。撮像範囲を調節する際には、撮像装置100の画像信号出力端子180とモニタ3とを接続して、モニタ3の画面に撮像装置100が撮像した画像をそのまま表示させて(いわゆるスルー画表示)、画面に映る範囲を確認しながら調整を行う。3台の撮像装置のうち、撮像装置100−1はマスタとして機能するよう設定され、残りの撮像装置100−2及び100−3はスレーブして機能するように設定される。
各撮像装置100のトリガ入力端子132には、工作機械2からアラーム信号を伝送するケーブルが接続される。このような接続より、撮像システム1を構成する3台の撮像装置100は共通のイベントの発生を示す情報であるアラーム信号を受信可能となる。また、マスタである撮像装置100−1のイベント識別情報入力端子134には、工作機械2からのエラーコードを伝送するケーブルが接続される。スレーブである撮像装置100−2及び100−3がそれぞれ備えるイベント識別情報入力端子134には、撮像装置100−1のイベント分配部150から分配されるイベントを識別する情報を伝送するケーブルが接続される。
以下、具体的な撮像システム1による監視機能を実行する際の動作について説明する。なお、以下の説明において各構成要素の動作は特に明記されていなくともCPU110の制御によるものである。
図5は、イベントの発生と画像データの記録との関係を示す図である。撮像システム1を構成する各撮像装置100の撮像ユニット120は、イベントの発生の有無に関わらず、常時、動画像の撮像を行って、それぞれのメモリカードスロット160に挿入されたメモリカード200に、所定時間前から最新までの画像データを、高フレームレート(例えば1秒間に30フレーム)で一時的に格納する。撮影時から所定時間が経過した画像データは、随時、低フレームレート(例えば1秒間に1フレーム)になるよう間引いて、メモリカード200に記憶する。
上述のように、動画像の常時撮像を行っている状態において、工作機械2が行う作業に失敗が発生すると、工作機械2はこの失敗を検知し、アラーム信号の状態をローからハイへと変化させる。すると、このアラーム信号が各撮像装置100のトリガ入力端子132に入力される。アラーム信号のローからハイへの変化を検出したこと契機として、CPU110は、イベントが発生した時刻(すなわちアラーム信号のローからハイへと変化したことを検出した時刻)の所定時間前からイベント発生時刻の所定時間後までに撮像ユニット120よって撮像された高フレームレートの画像データをメモリカード200に記憶させる制御を行う。具体的には、イベントが発生した時刻にメモリカードに一時的に格納されていた高フレームレートの画像データ(すなわち、イベント発生時刻より所定時間前からイベント発生時刻までの画像データ)と、イベントが発生した時刻から所定時間の間に撮像される高フレームレートの画像データを、間引くことなくメモリカード200内のファイルに記録する。
作業ミス等のイベントは、ミスの原因となる事象、ミスの発生、ミスの検出、イベントの発生を示す情報の送信(例えばアラーム信号の変化)の過程を順に経ることで発生するため、作業ミスの原因追及にはイベントの発生前の画像の確認が必要となるところ、本実施形態によれば、イベントの発生前の画像を確認することができる。
上述の「所定時間」は、工作機械2の動作時間の1周期分とする。このようにすれば、動作時間の1周期内におけるイベントの発生タイミングに関わらず、当該イベントが発生した周期の開始から終了までを含む画像データを記憶することができる。イベントが発生した時刻を含む周期の開始から終了までに撮影した画像データを漏れなく記憶することができるので、作業ミスの原因やその後の処理の確認を容易にすることができる。すなわち、イベントが発生した周期におけるイベント発生前の画像を確認することで、作業ミスの原因を把握することができる。また、イベントが発生した周期におけるイベント発生後の画像を確認することで、イベント発生後の処理が適切に行われたかを確認することができる。
イベントが発生した時刻から所定時間の間に撮像された詳細な画像データを格納するファイルをメモリカード200に記録する際、CPU110は、イベントを識別する情報を当該ファイルに埋め込むよう制御する。イベントを識別する情報は、マスタとして機能する撮像装置100−1がスレーブとして機能する撮像装置100−2、100−3に分配する。これにより、一つのイベントの発生を契機に各撮像装置100にて記録されたファイルに共通のイベントを識別する情報が埋め込まれるので、ファイルの分類や管理が容易となる。
本実施形態の例において、イベントを識別する情報は、イベントが発生した時刻を示す情報、イベントが発生した場所を示す情報、及びエラーコードである。マスタとして機能する撮像装置100−1のCPU110は、イベントが発生した時刻を撮像装置100−1が備える計時部170から取得する。また、イベントが発生した場所を示す情報は撮像装置100−1に挿入されたメモリカード200に記録されている設定ファイルに予め定義されているものを読み出して用いる。エラーコードは工作機械2から出力されたものを、イベント識別情報入力端子134を介して受信して利用する。
イベントを識別する情報を埋め込む方法としては、イベントを識別する情報をファイルの名称の一部に使用する。ファイル名にイベントを識別する情報が含まれることにより、画像ファイルを専用のソフトウェアに読み込まずとも、ファイルに格納されている画像データの内容を把握することを容易にすることができる。また、記録する動画像の中のイベントが発生した時のフレームのヘッダにエラーコードを埋め込む。再生時にエラーコードが埋め込まれたフレームを検索することで、イベントが発生した瞬間の画像を素早く確認することができる。また、一つのイベントの発生を契機に各撮像装置100にて記録された複数のファイルを同時に再生する場合に、エラーコードが埋め込まれたフレームを同時に再生することで、同期をとることができる。
撮像システム1を構成する各撮像装置100のCPU110は、イベントを識別する情報に加え、撮像装置100を識別するための識別情報を、撮像ユニット120にて撮像した画像データを格納するファイルに埋め込んでメモリカード200に記憶するよう制御する。撮像装置100を識別するための識別情報は、各撮像装置100に挿入されたメモリカード200に記録されている設定ファイルに予め定義されているものを読み出して用いる。
イベントが発生した時刻から所定時間が経過した後は、再び、常時、動画像の撮像を行って、それぞれのメモリカードスロット160に挿入されたメモリカード200に、所定時間前から最新までの画像データを、高フレームレートで一時的に格納しながら、撮影時から所定時間が経過した画像データを、随時、低フレームレートになるよう間引いて、メモリカード200に記憶する。このようにすれば、イベントが発生していない時間帯に撮像した画像データの内容を粗く確認することができるとともに、イベント発生時については画像データの内容を詳細に確認することができる。また、画像データを格納するファイルのサイズを抑制しつつ、イベントが発生していない時間の画像を記憶することができる。
上述のように工作機械2がアラーム信号にてイベントの発生を撮像システム1に伝える場合の他、本実施形態の撮像システム1を構成する各撮像装置100は、それぞれが備える加速度センサ140にて予め設定された強度以上の振動を検出したことをイベントの発生として扱い、振動を検出した時刻の所定時間前からイベント発生時刻の所定時間後までに撮像ユニット120よって撮像された高フレームレートの画像データをメモリカード200に記憶する。振動の検出を契機とする画像データの記憶は、当該振動を検出した加速度センサ140を備える撮像装置100のみが行い、それ以外の撮像装置100では画像データの記憶を行わない。これにより、振動を検出した撮像装置100のみがファイルを記憶したイベントが存在することになるので、異常があった可能性のある撮像装置100を容易に特定することができる。
このようにすれば、工作機械2からアラーム信号を受信した場合以外に、所定値以上の振動が装置に加わったときにもイベントが発生したとして当該イベントの前後の画像を記録することができる。撮像装置自体に衝撃が加わったり撮影方向が変えられたりといった想定外の振動や撮像装置側の異常が検出される状況において、イベントを自ら発生して画像を記録することができる。これにより、カメラの撮影方向の変化に気付きやすくし、撮影方向を修正して、工作機械2の異常等のイベントが発生した時に適切に撮影を行うよう備えることができる。
加速度センサ140による振動の検出を契機に記録されるファイルには、工作機械2からのアラーム信号を契機とする場合とは異なるイベントを識別する情報を埋め込む。具体的には、異常な振動を検出したことを示すエラーコードをイベントを識別する情報として埋め込む。
共通のイベントの発生を契機として、3台の撮像装置100がそれぞれ記録した画像データを格納するファイルは、コンピュータ上で動作するビューワが同期して再生する機能を備えている。このビューワは、各画像データにおける、ヘッダにエラーコードが埋め込まれたフレームが同じタイミングで再生されるよう、同期させて再生を行う。また、イベントを識別する情報に含まれる、時間情報、場所情報、およびエラーコードを再生中の画像に関連付けて表示する。また、再生する対象ファイルを選択する際に、イベントを識別する情報が共通である複数のファイルを関連付けて表示する。これにより同期して再生すべきファイルの特定が容易となる。また、ビューワは、再生するファイルを、時間情報、場所情報、およびエラーコードをキーに検索する機能を備えている。このようなビューワにより、一つのイベントの前後に複数の方向から撮影された画像データが格納されたファイルを素早く見つけ出し、同期して再生することができるので、イベントの原因究明や事後処理の確認が容易となる。
以上で説明した撮像システム1によれば、イベントを識別するための情報や撮像装置の識別情報を手動で入力する必要をなくすことができる。したがって、遠隔地の工場に配置された装置がイベント発生時に記憶した画像を、管理部門などにまとめて送り、管理部門にて画像の内容を確認するような場合には、撮像装置100が撮影して得られたファイルを送信する側においては各種情報が自動的に埋め込まれたファイルをそのまま送ることができる。また、送られてきた画像を確認する側においては、あらかじめ決められた情報が確実に埋め込まれたファイルを扱うことができる。したがって、送信側、受信側双方において、労力を軽減することができる。また、複数の撮像装置100によってイベントが発生した前後に撮像した画像データを記憶することができるので、イベントが発生した前後の状況の確認が容易になる。
また、イベントが発生したときに、撮像システム1を構成する複数の撮像装置100が、共通のイベントを識別する情報をファイルに埋め込むので、共通のイベントの発生を契機としてそれぞれの撮像装置100により記憶された画像データの特定が容易となる。また、イベントを識別する情報がイベントの種類を示す情報を含む場合には、ファイルの分類や管理が容易となる。
〔第1実施形態の変形〕
本発明は、上記第1実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、上記第1実施形態では、工作機械2が、自らが行う作業に失敗があったこと、機器の異常等を検出すると、工作機械2に接続された回転灯21への信号を分岐して利用してイベントの発生を示す情報を受け取るように構成したが、工作機械2が異常の発生を示すアラーム信号を外部に出力し、このアラーム信号をイベントの発生を示す情報として利用するように構成してもよい。また、回転灯21への信号を分岐して利用する場合において、例えば、回転灯21として、正常時に青色に点灯し、異常発生時に赤色に点灯するものを用い、赤色に点灯させるための制御信号をアラーム信号として流用してもよい。また、撮像装置100に赤色の発光を検出する受光素子を設け、回転灯21の赤色の発光をイベントの発生を示す情報として受け取ってもよい。また、回転灯21として異常発生時に赤色の点灯とともに警報音を発するものを用い、警報音を検出するマイクを撮像装置100に設け、回転灯の警報音をイベントの発生を示す情報として受け取るようにしてもよい。また、撮像装置100による撮影対象は工作機械に限らず、工場のラインに配置された各種のロボット、加工機械等であってもよい。図6はその一例として、いちごケーキを製造するラインに配置され、ケーキの上面にいちごを並べるロボットを撮影対象とした場合における、イベント発生時の動作順序を模式的に示している。当該ロボットは回転灯を備えず、作業の失敗を検知したときにアラーム信号を外部に出力可能に構成されている。
上記第1実施形態では、マスタとなる撮像装置100−1は、工作機械2から受け取ったエラーコードに、時間を示す情報や撮影場所を示す情報を加えて、イベントを識別する情報として、スレーブとなる撮像装置100−2、100−3に配信したが、工作機械2から受け取ったエラーコードをそのままスレーブに分配してもよい。
上記第1実施形態では、「分配」する情報を伝達する手段を有線としたが、無線としてもよい。無線によって伝送する場合には、Wifi、3G、Bluetooth(登録商標)など、無線通信の規格を問わない。また、情報を分配する方法はマスタから各スレーブに直接分配する方法に限らず、間接的に分配する方法を含む。例えば、1つのマスタを起点として複数のスレーブを多段に縦続接続し、マスタから供給されるイベントを識別する情報やイベントの発生を示す情報を、順次後段に伝達するように構成してもよい。他の例としては、全ての撮像装置100をネットワーク接続し、マスタから当該ネットワーク上に分配する情報をブロードキャストすることで全てのスレーブに情報を伝えるようにしてもよい。
上記第1実施形態では、装置を識別するための識別情報として、予めメモリカード200に定義した識別情報を用いたが、これに代えて、MACアドレス等の予め各装置に一意に割り振られている情報を流用してもよい。また、撮像システム1の構成を設定するときにマスタとスレーブとの通信を通じて、識別情報が重複しないように自動的に設定するようにしてもよい。
また、スレーブとして機能する撮像装置100のCPU110が、マスタとして機能する撮像装置100の識別情報を、画像データを格納するファイルに埋め込んで記憶するように制御してもよい。このようにすれば、共通のマスタに接続されたスレーブによって記憶されたファイルには共通の情報が埋め込まれるので、共通のイベントを契機に撮影した画像ファイルを容易に見つけることができるようになる。
上記第1実施形態では、工作機械2と各撮像装置100が直接接続されて、イベントの発生を示す情報(すなわちアラーム信号)が送信されたが、マスタとして機能する撮像装置100−1が備えるイベント分配部150が、スレーブに、イベントを識別する情報に加えてイベントの発生を示す情報を分配するように構成してもよい。このようにすれば、イベントを識別する情報とともにイベントの発生を示す情報も分配できるのでシステムを構成する各装置の接続や設定が容易となる。この場合、イベントを識別する情報を伝達するケーブルとイベントの発生を示す情報を伝達するケーブルは一体化するとよい。このようにすれば、マスタとスレーブとの接続に用いるケーブルの数を少なくすることができ、接続や設定が容易となる。また、マスタからスレーブにイベントの発生を示す情報を伝達するケーブルは、工作機械2からマスタにアラーム信号を伝達すると互換性を有するように構成するとよい。
また、トリガとなるイベントの発生を示す情報と一緒に録画開始からの連番を送信し、この連番で各撮像装置100により記録した画像データのファイルを関連づけてもよい。この録画開始からの連番は、イベントを識別する情報の一部とされてもよい。
上記第1実施形態では、加速度センサ140が予め設定された強度以上の振動を検出した場合に、当該振動を検出した加速度センサ140を備える撮像装置100においてのみ画像の記録を行ったが、他の撮像装置100に対して、イベントの発生を示す情報を送信して、他の撮像装置100でも画像の記録を行うようにしてもよい。任意の撮像装置100からイベントの発生を示す情報を他の撮像装置100に分配するには、分配元の撮像装置から他の撮像装置のそれぞれに対し、個別にイベントの発生を示す情報を送信してもよいが、例えば、全ての撮像装置100をネットワーク接続し、分配元の撮像装置100から当該ネットワーク上にイベントの発生を示す情報をブロードキャストするとよい。これにより、全ての撮像装置100にほぼ同じタイミングでイベントの発生を示す情報を伝えることができる。
上記第1実施形態では、撮像ユニット120は画像として動画像を撮像したが、例えば静止画像を撮像するようにしてもよい。また、画像は、例えば2D画像としてもよいし、3D画像としてもよい。また、白黒画像としてもよいし、カラー画像としてもよい。撮像ユニット120が備えるレンズ部は、ズームレンズではなく短焦点レンズとしてもよい。
上記第1実施形態では、記憶手段としてメモリカードスロット160に挿入されるメモリカード200を利用したが、メモリカードに代えて、ハードディスクドライブ等の他の記憶装置を用いてもよい。また、記憶手段は着脱可能なものに限定されず、筐体105内に着脱できない形で内蔵されてもよい。上記第1実施形態では、記憶手段として各撮像装置100が有するメモリカードスロット160に挿入されたメモリカード200を利用したが、複数の撮像装置100が、共通の記憶手段(例えばハードディスクドライブや通信ネットワーク上に設けられた記憶領域)に画像データを記憶するようにしてもよい。しかしながら、最もよいのは、前述した各撮像装置100ごとに記憶する構成である。特に工場に製造ラインを構築したばかりの時期は、3〜4ヵ月間程度の期間、トラブルの監視をする際などの仮設の場合などに、大掛かりなシステムを組むことなく、螺子止により簡易に取り付けてそれぞれの撮像装置で記憶させることができる。また仮設の場合だけでなく、イベントの発生がそう頻繁におきない場合に大掛かりなシステムの工事等をせずに、簡便に工作機械の異常時の状況を撮影できる。
上述した第1実施形態では、動画像の常時撮像を行う構成としたが、1周期の動作開始の時点で動作開始信号を受ける構成とし、動作開始信号を受けた場合に映像の記録を開始する構成としてもよい。また、例えば1周期の動作終了の時点で動作終了信号を受ける構成とし記イベントの発生を示す信号を外部から受信せずに動作終了信号を受けた場合に当該周期に対応する前記画像データを記録しない構成としてもよい。例えばイベントの発生を示す信号を外部から受信した場合には、少なくともイベントの発生によるリカバリーの時間分、画像データの記録を延長する処理を行うように構成するとよい。
上記第1実施形態では、撮像ユニット120より撮像した画像データを、所定時間分だけメモリカード200内に一時的に記憶したが、撮像装置100が内蔵するSDRAM等の記憶素子に、画像データの一時的な記憶を行い、イベント発生時の高フレームレートの画像データや、イベント未発生時の低フレームレートの画像データを、メモリカード200に最終的に記録するようしてもよい。
上記第1実施形態では、イベント発生時に、所定時間前からイベント発生時刻の所定時間後までの高フレームレートの画像を記録したが、所定時間はイベント発生前の記録時間とイベント発生後の記録時間は異なってもよく、ユーザが時間を自由に設定できるようにするとよい。例えば、工作機械2がイベント発生後の処理に通常の動作の1周期よりも長い時間を要する場合には、イベント発生後の記録時間をより長くしてもよい。このようにすれば、イベント発生の原因究明や事後処理の確認をより確実に行うことができる。
上記第1実施形態では、イベントを識別する情報を、ファイル名の一部として使用することによりファイルに埋め込んだが、これ以外の方法で埋め込むことも可能である。例えば、イベントを識別する情報を画像に透かしとして埋め込んでもよい。このようにすれば、ファイルのサイズを増やすことなく、また画像に視認可能な影響を及ぼすことなく、イベントを識別する情報を埋め込むことができる。また、イベントを識別する情報の改ざんを困難にすることができる。他の例としては、イベントを識別する情報を、画像に重畳した文字として埋め込んでもよい。さらに他の例としては、イベントを識別する情報を、データを格納するファイルに付加情報として埋め込んでもよい。なお、「付加情報」とは、画像データを格納するファイルのうち、例えばヘッダ、フッタ等、画像そのもの以外の情報を指す。
また、上記第1実施形態では、三つのイベントを識別する情報、すなわちイベントが発生した時刻を示す情報、イベントが発生した場所を示す情報、及びエラーコードを含むイベントを識別する情報を、ファイルの名称の少なくとも一部に使用することとしたが、例えば第一のイベント(例えばイベントが発生した時刻を示す情報)を識別する情報はファイルの名称の少なくとも一部に使用し、第二のイベント(例えばイベントが発生した場所を示す情報)を識別する情報は画像に透かしとして埋め込み、第三のイベントを識別する情報(例えばエラーコード)は付加情報として画像データを格納するファイルに埋め込むようにしてもよい。例えば第一から第三のイベントを識別する情報は同一の情報としてもよいが、特に、異なる情報を含む構成とするとよい。特に、これらは全く異なる情報としてもよいが、特に一部の情報について同一の情報を含むとよい。このようにすれば、その同一の情報についてユーザが容易にファイル名から視認できるとともに、改ざんされにくくしたり、第一から第三のイベントを識別する情報を比較することで改ざんを検出したりすることが容易にできる。特に一部の情報について同一の情報を異なる表現形式の情報として格納する構成とするとよい。例えば、ファイル名称に使用する情報は、そのイベントが発生した場所と日時を特定する情報をその場所に一意に対応する例えば英数字列等からなる人が場所を識別できる場所コードと日時とイベントの内容を示すコードであるイベントコードとをこの順で並べた文字列情報とする一方、付加情報や透かしとしては、場所コードに対応する場所の名称を示す文字列とイベントコードに対応するイベントの具体的な内容の文字列を格納するようにするとよい。
上記第1実施形態では、1つのファイルの動画中にはイベントが発生したフレームは1つとするようにファイルを構成したが、1つのファイルの動画中にイベントが発生した複数のフレームを備えるようにしてもよい。
上記第1実施形態では、イベントが発生した時刻の所定時間前からイベント発生時刻の所定時間後までは、高フレームレートの画像を記録し、他の時間は低フレームレートの画像を記録したが、他の時間には画像を記録しないようにしてもよい。また、所定時間前からイベント発生時刻の所定時間後までは、画像ファイルの圧縮率を下げる(あるいは圧縮しない)、画像ファイルの画質を高く(例えばHD(High Defintion)画像)する、カラー画像とする、等により情報量の多い画像を記録し、他の時間は、画像ファイルの圧縮率を高める、画像ファイルの画質を低く(例えばVGA画像)する、白黒画像とする、等により情報量を少なくしてもよい。
上記第1実施形態では、再生手段としてのビューワが撮像装置100とは別体のコンピュータ上で実行されるソフトウェアとして提供される例を説明したが、撮像装置100は、筐体105内に、撮像した画像データを再生して表示する再生手段を一体に備えてもよい。
〔第2実施形態〕
図7は、本発明の第2実施形態における、撮像装置100の設置例を示している。本実施形態では、撮像装置100は、作業場のテーブルの上に配置されテーブル上を監視する。例えば、お昼休みの作業場から作業員が居なくなったときに、テーブル上に置かれた工具などを監視する。本実施形態において、撮像装置100は、電動工具等に用いるバッテリーから供給される電力を利用して動作する。本例の撮像装置100は、内部の加速度センサが出力する異常な振動を示すセンサ信号や、外部センサからのトリガ信号をイベントの発生を示す情報として受け取り、イベント発生の前後に撮像した画像データを記録する。
〔第3実施形態〕
図8は、本発明の第3実施形態における、撮像装置100の設置例を示している。本実施形態では、撮像装置100は、フォークリフトの運転台後部のフレームに取り付けられ、前方を撮影する。撮影範囲には運転台とフォークリフトの前方の領域、特にフォークが含まれるように設定される。本例の撮像装置100は、筐体の上面にも取り付け用の螺子穴が設けられ、上部から撮像装置100を吊るして設置できるように構成される。本実施形態の撮像装置100は、温度計測手段を備えている。フォークリフトが冷凍庫などに出入りする場合には、撮像ユニットが曇るので、それを防止すべく温度計測手段が低温を検知した時のみ電熱線とサーモスタットにて加熱して曇りを防止する。また、温度計測手段が温度の急激な変化(例えば冷凍庫からの出入りに伴う温度変化)を検出したことをイベントとして扱い、撮像した画像データを記録する。