以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、作業車両の概略左側面図である。なお、以下では、作業車両としてトラクタ1を例に説明する。トラクタ1は、自走しながら圃場などで作業を行う農用トラクタである。また、以下の説明において、前後方向とは、作業車両、すなわち、トラクタ1の直進時における進行方向であり、進行方向前方側を前後方向の「前」、後方側を前後方向「後」と規定する。ここで、トラクタ1の進行方向とは、トラクタ1直進時において、後述する操縦席7からステアリングハンドル8に向かう方向である。
また、左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。ここでは、前後方向「前」側に向けて左右を規定する。すなわち、オペレータが操縦席7に着いて前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。さらに、鉛直方向とは、前後方向および左右方向に対して直交する方向である。したがって、前後方向、左右方向および鉛直方向は、互いに3次元で直交するようになる。
図1に示すように、作業車両としてのトラクタ1は、機体前部のボンネット2内にエンジンEを搭載している。エンジンEからの回転動力は、ミッションケース3内の走行伝動装置へ伝達され、走行伝動装置で減速されて車輪、すなわち、トラクタ1の前輪4や後輪5へ伝達される。
機体後部のキャビン6内には操縦席7が設けられている。操縦席7の前方には前輪4を操舵するステアリングハンドル8が設けられている。ステアリングハンドル8の前方にはメータパネル9が設けられている。トラクタ1は、機体の後方にロータリ作業機などが連結される。このような作業機は、ミッションケース3から後方へ突出しているPTO軸111によって駆動される。
また、キャビン6内において、操縦席7の周りにはステアリングハンドル8やメータパネル9の他、アクセルペダル10、クラッチペダル11、ブレーキペダル12などの各種操作ペダルや前後進レバー14、主変速レバー15、副変速レバー(図示省略)などの各種操作レバーが設けられている。なお、操縦席7の周りの各種操作機器の詳細については、図5、図6および図7を用いて後述する。
次に、図2を参照して、ミッションケース3内に設けられた伝動機構(走行伝動装置)について説明する。図2は、ミッションケース3内の伝動経路図である。図2に示すように、ミッションケース3内では、動力上流側となるエンジンEの出力軸20の回転動力が入力軸21へ伝達される。
入力軸21に入力された回転動力は、入力軸21の第1入力ギヤ22および第2入力ギヤ23が第1Hi−Loクラッチ24の第1低速ギヤ26、第2Hi−Loクラッチ25の第2低速ギヤ27および第1Hi−Loクラッチ24の第1高速ギヤ30、第2Hi−Loクラッチ25の第2高速ギヤ31と噛合することで、動力下流側へ伝達される。
ここで、第1Hi−Loクラッチ24および第2Hi−Loクラッチ25は、同一の油圧多板クラッチで、それぞれ入力軸21の回転動力を同じ減速比で高低2段に減速して第1クラッチ軸28および第2クラッチ軸29へと伝達する。
また、低速伝動軸34および高速伝動軸32の回転動力は、それぞれ第1シンクロチェンジ42および第2シンクロチェンジ36へ伝達され、第1シンクロ小ギヤ43および第2シンクロ小ギヤ37が第1伝動軸の第5ギヤ40と噛合し、第1シンクロ大ギヤ44および第2シンクロ大ギヤ38が第1伝動軸39の第6ギヤ41と噛合することで、さらに動力下流側へ伝達される。
これにより、入力軸21の回転動力が、第1伝動軸39によって低速4段および高速4段に変速される。
以上説明した伝動機構(多段変速装置150)によってトラクタ1(図1参照)の主変速部が構成されている。主変速部では、オペレータが操作する主変速レバー15(図1参照)の変速位置を検出して、後述する走行制御部120(図11参照)によって自動的に第1Hi−Loクラッチ24、第2Hi−Loクラッチ25、第1シンクロチェンジ42および第2シンクロチェンジ36を制御して、低速4段から高速4段まで変速可能となる。
図2に示すように、第1伝動軸39は、第2伝動軸45に連結されている。また、第2伝動軸45には第7ギヤ46および第8ギヤ47が設けられている。ここで、第7ギヤ46および第8ギヤ47が正逆クラッチ(以下、「走行クラッチ」という)48の正転クラッチギヤ49および逆転軸52の逆転ギヤ51と噛合し、さらに、逆転ギヤ51が逆転クラッチギヤ50と噛合している。
したがって、第1伝動軸39の回転動力は、走行クラッチ48が正転クラッチギヤ49に接続されると、正転状態で走行クラッチ48に連結された副変速軸53へ伝達され、走行クラッチ48が逆転クラッチギヤ50に接続されると、逆転状態で副変速軸53へ伝達される。
また、副変速軸53には第9ギヤ54および第10ギヤ55が設けられている。ここで、第9ギヤ54および第10ギヤ55がそれぞれ第3シンクロチェンジ58の第3シンクロ小ギヤ56および第3シンクロ大ギヤ59と噛合している。
第3シンクロチェンジ58が第3シンクロ小ギヤ56側へ接続されると、第9ギヤ54から第3シンクロ小ギヤ56へ伝達された回転動力によって、第5伝動軸60が増速して高速で回転駆動される。
また、第3シンクロチェンジ58が第3シンクロ大ギヤ59側へ接続されると、第10ギヤ55から第3シンクロ大ギヤ59へ伝動された回転動力によって、第5伝動軸60が減速して中速で回転駆動される。
また、第3シンクロチェンジ58が中立状態となると、第10ギヤ55の回転動力が第3シンクロ大ギヤ59へ伝達され、第3シンクロ大ギヤ59に設けられた第11ギヤ57から第4シンクロ小ギヤ69へ伝動される。
また、第4シンクロチェンジ71が第4シンクロ小ギヤ69側へ接続されると、第4シンクロ小ギヤ69の回転動力が第16ギヤ74の回転となることで低速となる。さらに、第4シンクロチェンジ71が第4シンクロ大ギヤ72側へ接続されると、第4シンクロ小ギヤ69の回転動力が第15ギヤ70から第17ギヤ75、第18ギヤ76、第4シンクロ大ギヤ72へ伝達され、第16ギヤ74が超低速となる。
また、第16ギヤ74が第5伝動軸60に設けられた第12ギヤ61と噛合することで、第5伝動軸60が回転駆動される。また、第5伝動軸60の軸端に設けられた第1ベベルギヤ62がリアベベルギヤケース64の第2ベベルギヤ63と噛合し、リアベベルギヤケース64のベベル出力軸65から第13ギヤ66および第14ギヤ67を介して後輪出力軸68が回転駆動される。これにより、後輪5が回転駆動される。
また、第5伝動軸60には第21ギヤ117が設けられている。第21ギヤ117の回転動力は、副変速軸53の第3筒軸119に設けられた第22ギヤ118および第23ギヤ148を介して第1前輪駆動軸78の第19ギヤ77へ伝達され、第5伝動軸60の低速16段および高速16段の回転動力が第1前輪駆動軸78へ伝達される。
さらに、回転動力は、第1前輪駆動軸78から前輪増速クラッチ(以下、「4WDクラッチ」という)79を介して第2前輪駆動軸85へ伝達され、第3前輪駆動軸86、第4前輪駆動軸87、前輪駆動ベベル軸88へ引き継いで伝達される。
前輪駆動ベベル軸88の軸端に設けられた第1フロントベベルギヤ89がフロントベベルケース90の第2フロントベベルギヤ115と噛合し、フロントベベルケース90のフロントベベル出力軸91から第1フロント出力ベベルギヤ組92、前輪駆動軸116、第2フロント出力ベベルギヤ組93を介して前輪出力軸94が回転駆動される。これにより、前輪4が回転駆動される。
ここで、4WDクラッチ79が前輪等速ギヤ82側へ接続されると、第1前輪駆動軸78の回転動力が第2前輪駆動軸85へそのまま伝達されて通常の四輪駆動となる。また、4WDクラッチ79が前輪増速ギヤ84側へ接続されると、第1前輪駆動軸78の回転動力が前輪等速ギヤ82から第1増速ギヤ81、第2増速ギヤ83を介して増速された回転動力が第2前輪駆動軸85へ伝達されて前輪倍速の四輪駆動となる。さらに、4WDクラッチ79が中立状態となると、前輪4に回転動力が伝達されないため、後輪5の二輪駆動となる。
図2に示すように、第2入力ギヤ23がPTOクラッチ97のメインクラッチギヤ96と噛合することで、PTOクラッチ97によってPTO軸111へ回転動力を断続(接続/遮断、すなわち、接続解除)するようになる。
第1PTO軸95にはPTO変速部157が設けられている。また、第1PTO軸95は、第1PTOギヤ98と、第5シンクロチェンジ151と、第5シンクロ小ギヤ100と、第5シンクロ大ギヤ101とを有している。また、第2PTO軸107は、第20ギヤ102と、第24ギヤ152と、第26ギヤ103と、第25ギヤ153とを有し、カウンタ軸106にPTO逆転ギヤ105を軸支している。
ここで、第1PTOギヤ98がスライドして第20ギヤ102と噛合すると、第2PTO軸107が2速になる。また、第1PTOギヤ98がスライドして第2PTOギヤ99と噛合すると、第1PTO軸95の回転動力が第2PTOギヤ99および第24ギヤ152を介して第2PTO軸107へ伝達され、第2PTO軸107が4速となる。
また、第5シンクロチェンジ151が第5シンクロ小ギヤ100へ接続されることで、第5シンクロ小ギヤ100の回転動力が第26ギヤ103へ伝達されて1速となる。さらに、第5シンクロチェンジ151が第5シンクロ大ギヤ101へ接続されることで、第5シンクロ大ギヤ101の回転動力が第25ギヤ153へ伝達されて3速となる。なお、PTO逆転ギヤ105が第1PTOギヤ98および第20ギヤ102と噛合すると、第1PTO軸95の回転動力が第1PTOギヤ98、PTO逆転ギヤ105を介して第20ギヤ102へ伝達され、さらに、第2PTO軸107へ伝達されて逆回転となる。
そして、第2PTO軸107の回転動力は、第3PTO軸156を介して第4PTO軸108へ伝達され、第1PTO出力ギヤ109および第2PTO出力ギヤ110によってさらに減速されてPTO軸111が回転駆動される。
ここで、図3を参照して走行クラッチ48について詳細に説明する。図3は、走行クラッチ48の模式的な平断面図である。上述したように、走行クラッチ48は、正逆クラッチであり、第1伝動軸39(図2参照)の回転動力を正転または逆転させて副変速軸53へと伝達する。
図3に示すように、走行クラッチ48は、正転クラッチギヤ49と一体的に設けられたクラッチ軸48aを備えている。クラッチ軸48aは、第2軸受B1および第3軸受B2によって副変速軸53に回動自在に支持されている。また、クラッチ軸48aの後方には複数の内側クラッチ板48bが配置されている。さらに、クラッチ軸48aは、後部がクラッチケース48dで覆われており、クラッチケース48dの前部内側に設けられた押え板48eが複数の内側クラッチ板48bの前端の前方に位置して配置されている。
クラッチケース48d内の内側には複数の外側クラッチ板48cが隣り合う内側クラッチ板48bの間に挟まれるように交互に配置されている。なお、内側クラッチ板48bは、内側に複数の歯を有しているため、クラッチ軸48aと一体となって回転し、外側クラッチ板48cは、外側に複数の歯を有しているため、クラッチケース48dと一体となって回転する。
クラッチケース48d内にはクラッチ軸48aの後方にバネ48gで後方へ付勢されたクラッチピストン48fが設けられている。クラッチピストン48fの後部には作動油が供給されるシリンダ部48hの空間が形成されている。走行クラッチ48は、シリンダ部48hに作動油が供給され、供給された作動油の圧力がバネ48gの弾性力を上回るとクラッチピストン48fが前進し、内側クラッチ板48b、外側クラッチ板48cを押え板48eの間で挟圧する。
挟圧された内側クラッチ板48bおよび外側クラッチ板48cは、摩擦によって互いに動力を伝達するようになり、正転クラッチギヤ49から伝達されてきた回転動力がクラッチケース48dへ伝達され、クラッチケース48dにスプライン嵌合している副変速軸53が回転する。
また、シリンダ部48hに作動油(圧油)が供給されず圧力が付与されていない状態では、クラッチピストン48fがバネ48gの弾性力によって後方に押されるため、内側クラッチ板48bおよび外側クラッチ板48cは挟圧されない。このような状態の場合、内側クラッチ板48bおよび外側クラッチ板48cが互いに動力を伝達しないので、PTOクラッチ97が動力伝達を遮断した状態となり、正転クラッチギヤ49が回転しても副変速軸53は回転しない。
なお、クラッチケース48dを挟んで副変速軸53とは反対側には逆転クラッチギヤ50が設けられており、上述した構成と同様の構成で後進側の動力が伝達(および遮断)される。また、第1Hi−Loクラッチ24、第2Hi−Loクラッチ25および4WDクラッチ79においても、上述した構成と同様の構成のものが用いられている。また、PTOクラッチ97においては、上述した構成の片側半分の構成のものが用いられている。
次に、図4を参照してトラクタ1の油圧回路について説明する。図4は、作業車両(トラクタ1)の油圧回路図である。図4に示すように、トラクタ1(図1参照)では、エンジンE(図2参照)の回転動力により作動するメインポンプ250およびサブポンプ251がサクションフィルタ252を通じてミッションケース3内の潤滑油を吸い上げ、油圧回路内に作動油として圧油が供給される。
サブポンプ251は、パワーステアリング装置253へ圧油を供給する。これにより、前輪4(図2参照)が操作される。なお、パワーステアリング装置253から排出された作動油は、第1Hi−Loクラッチ24、第2Hi−Loクラッチ25および正逆クラッチ(走行クラッチ)48の潤滑や冷却用の油としても利用され、ミッションケース3内へ戻される。
メインポンプ250は、作業機系油圧装置254、走行系油圧装置255へ圧油を供給する。また、メインポンプ250は、走行系油圧装置255へ供給する経路から分離した経路で走行系油圧装置255内のPTO系および2WD/4WD切替系油圧装置258へ圧油を供給する。このようなメインポンプ250によれば、主変速レバー15(図1参照)が1速に操作されると、たとえば、第1主変速ソレノイド207,208のうちソレノイド207に電流が流れてバルブが動作し、第1主変速シリンダ256のLo側油室256Lから圧油が抜けて第1シンクロチェンジ42が第1シンクロ小ギヤ43(いずれも、図2参照)側に接続される。さらに、たとえば、第1Lo側ソレノイド211aおよび第1Hi側ソレノイド211bのうちソレノイド211aに電流が流れてバルブが動作し、第1Hi−Loクラッチ24のLo側油室に圧油が供給され、第1低速ギヤ26(図2参照)側に接続される。
また、主変速レバー15が1速から2速に操作されると、第1主変速ソレノイド207の状態はそのまま、第1シンクロチェンジ42が第1シンクロ小ギヤ43側に接続された状態で、第1Lo側ソレノイド211aへの電流供給が停止して、第1Hi側ソレノイド211bに電流が流されてそれぞれのバルブが動作し、第1Hi−Loクラッチ24のHi側油室に圧油が供給され、第1高速ギヤ30側に接続される。
また、主変速レバー15が2速から3速に操作されると、第1主変速ソレノイド207への電流供給が停止して、たとえば、第2主変速ソレノイド209,210のうちソレノイド209に電流が流れ、第1シンクロチェンジ42の接続が切れて第2シンクロチェンジ36が第2シンクロ小ギヤ37(いずれも、図2参照)側に接続される。
さらに、第1Hi側ソレノイド211bの電流が停止するとともに、第2Lo側ソレノイド212aに電流が流れてそれぞれのバルブが動作し、第2Hi−Loクラッチ25のLo側油室へ圧油が供給され、第2低速ギヤ27側に接続される。
以降同様に、4速では、第2シンクロ小ギヤ37および第2高速ギヤ31(図2参照)、5速では、第1シンクロ大ギヤ44および第1低速ギヤ26(図2参照)、6速では、第1シンクロ大ギヤ44および第1高速ギヤ30、7速では、第2シンクロ大ギヤ38および第2低速ギヤ27(図2参照)、8速では、第2シンクロ大ギヤ38および第2高速ギヤ31がそれぞれ接続される。
このような変速時やトラクタ1の発進時にはクラッチ接続圧が調整されて変速ショックや発進時のショックが抑制される。また、前後進レバー14(図1参照)が前進または後進に操作されると、前後進レバーセンサによって前後進レバー14の操作位置が検出され、前進切替ソレノイド141Fまたは後進切替ソレノイド141Rに電流が流れてバルブが動作し、油路が選択される。
なお、図4に例示したような回路構成では、比例ソレノイドである前後進昇圧ソレノイド142に流れる電流の大きさによって前後進リリーフバルブ142aのリリーフ圧を決める流量が調節される。これにより、前後進油路142bの圧力を任意に調整することで走行クラッチ48の接続圧力を任意に調整することができる。
次に、図5、図6および図7を参照して操縦席7の周りに設けられた各種操作機器について説明する。図5は、操縦席7の前方にある操作機器の説明図である。図6は、図5におけるA部の拡大図である。なお、図6では、図5のA部を右から左へ見た場合を示している。図7は、操縦席7の右側方にある操作機器の説明図である。また、各図に示す操作機器の種類や配置などは一例であり、これに限定されるものではない。
図5に示すように、操縦席7(図1参照)の前方には、上述したように、ステアリングハンドル8が設けられている。また、ステアリングハンドル8が取り付けられたハンドルポスト350の下部左方にはクラッチペダル10が設けられ、ハンドルポスト350の下部右方にアクセルペダル11およびブレーキペダル12が設けられている。なお、ブレーキペダル12は、左右それぞれのブレーキペダル12L,12Rを備えている。左右のブレーキペダル12L,12Rの構成については、図8を用いて後述する。
ハンドルポスト350の上部左方には前後進レバー14が設けられている。また、図5および図6に示すように、ハンドルポスト350の上部右方にはアクセルレバー351、ウィンカレバー352およびワンタッチ昇降レバー353が設けられている。なお、ワンタッチ昇降レバー353は、機体に作業機を連結するリフトアームをポジションレバー358(図7参照)の操作位置または最上位置へワンタッチで操作するものである。また、ハンドルポスト350の中央にはPTO変速レバー354が設けられている。
図5に示すように、ステアリングハンドル8の前方にはダッシュボードカバー355が設けられている。また、ダッシュボードカバー355には、操縦席7のオペレータから見えるようにメータパネル9が設けられている。また、メータパネル9には表示部(液晶モニタ)356やエンジン回転計(タコメータ)357などが設けられている。なお、液晶モニタ356では、たとえば、現在の変速段を表示する変速段表示、燃料消費率表示および走行速度表示などの各種表示がなされ、燃料消費率表示と走行速度表示とは一定時間ごとに切り替わるように表示されてもよい。
また、メータパネル9には省エネモニタランプ(図示省略)が設けられている。省エネモニタランプは、エンジンモード選択スイッチ192(図6参照)で低燃費のエンジン出力カーブを選択している場合に点灯する構成であり、たとえば、緑色に点灯する。
図6に示すように、ダッシュボードカバー355の右部には走行/作業切替スイッチ223およびエンジンモード選択スイッチ192が設けられている。なお、エンジンモード選択スイッチ192が押されると、エンジンE(図2参照)が低燃費のエンジン出力カーブで制御される。
図7に示すように、操縦席7の右方には、主変速レバー15やポジションレバー358などの操作レバーが設けられている。なお、ポジションレバー358は、上述したリフトアームの昇降を操作するものである。また、操縦席7の右方には、PTO入り切りスイッチ221、PTO自動/手動切替スイッチ222、変速感度ダイヤル135、エンジン回転指示部(定回転スイッチ)126、回転数増加調整スイッチ123、回転数減少調整スイッチ124などの操作スイッチが設けられている。なお、各操作スイッチのうちPTO自動/手動切替スイッチ222では、上述したリフトアームが一定以上の高さまで上昇すると、自動でPTOクラッチ97(図2参照)を遮断する。さらに、操縦席7の右方には、その他の操作スイッチなどが配置された操作パネル206(図11参照)を収納する操作パネル収納ボックス359が設けられている。
ここで、図8、図9、図10Aおよび図10Bを参照して左右のブレーキペダル12L,12Rおよび左右のブレーキペダル12L,12Rの連結をロックするロック機構318について説明する。図8は、左右のブレーキペダル12L,12Rの概略斜視図である。図9は、ペダル連結操作部310の説明図である。図10Aおよび図10Bは、ロック機構318の動作説明図である。上述したように、ブレーキペダル12は、左右の車輪(後輪5)を制動する場合にそれぞれ操作する左右のブレーキペダル12L,12Rを備えている。
図8に示すように、左右のブレーキペダル12L,12Rは、左右方向に延伸する基軸300に回動可能に軸支され、下方へ延伸するそれぞれのアーム301,301の先端部に設けられている。なお、アーム301,301は、それぞれバネなどの付勢部材302,302によって基軸300に対してオペレータが踏み込む向きと反対側へ付勢されている。また、アーム301,301の中途位置には、左右のブレーキペダル12L,12Rを連結するペダル連結部303が設けられている。
ペダル連結部303は、連結片304と、受け部305とを備えている。連結片304は、左右のうち一方のブレーキペダル(たとえば、左側のブレーキペダル12L)が設けられたアーム301に、アーム301の延伸向きとは略直交する向きへ回動自在に取り付けられている。また、受け部305は、左右のうち他方のブレーキペダル(たとえば、右側のブレーキペダル12R)が設けられたアーム301に設けられている。
ペダル連結部303は、連結片304が回動軸を中心に回動して、連結片304の先端部が鉤状の受け部305に嵌ることで、アーム301,301を連結する。このように、ペダル連結部303によってアーム301,301が連結されることで、左右のブレーキペダル12L,12Rは略一体となり、オペレータが踏み込んだ場合には共に動作するようになる。なお、左右のブレーキペダル12L,12Rを連結して左右同時に踏み込む操作は、路上などで機体を通常走行させる場合などに用いられる。これに対して、左右のブレーキペダル12L,12Rの連結を解除してそれぞれを個別に踏み込む操作は、圃場などで機体を急旋回させる場合などに用いられる。また、以下では、左右のブレーキペダル12L,12Rが連結された状態で、オペレータが左右同時にブレーキペダル12L,12Rを踏み込む通常の操作を「ブレーキ操作」といい、左右いずれかのみ踏み込む操作を「片ブレーキ操作」という場合がある。
また、ペダル連結部303の連結片304は、ワイヤ306に接続されており、オペレータがペダル連結操作部310(図9参照)を踏み込むと、ワイヤ306によって引き上げられ、左右のブレーキペダル12L,12Rの連結を解除する。なお、オペレータがペダル連結操作部310から足を離すと、ワイヤ306による連結片304の引き上げが解除され、連結片304が回動して受け部305に嵌り込み、左右のブレーキペダル12L,12Rが連結される。
上述したペダル連結操作部310は、ハンドルポスト350(図5参照)の下部に操縦席7側へ向けて突出して設けられている。図9に示すように、ペダル連結操作部310は、先端部にペダル部311が設けられている。また、ペダル連結操作部310は、基端部312が回動可能に設けられており、オペレータによる踏み込みを可能にしている。さらに、ペダル連結操作部310の基端部312には、回動中心から上方へ突出した第1凸部313aと、第1凸部313aとは所定角度ずれて回動中心から上方へ突出した第2凸部313bとが設けられている。第1凸部313aおよび第2凸部313bは、ペダル連結操作部310が回動すると、これと共に回動方向へ移動する。
また、ペダル連結操作部310の基端部312の上方にはロックプレート315が設けられている。ロックプレート315は、回動軸316を中心に回動可能に設けられている。さらに、ロックプレート315は、ロッド317を介してロックレバー314と連結されている。したがって、ロックプレート315は、ロックレバー314を上下に操作することによって回動軸316の軸まわりに回動する。このようなロックプレート315は、ペダル連結操作部310の第1凸部313aや、ロッド317およびロックレバー314などと共に、左右のブレーキペダル12L,12Rの連結状態を解除するペダル連結操作部310を操作不可の状態でロックするロック機構318を構成している。
図10Aに示すように、ロック機構318は、ペダル連結操作部310がオペレータに踏み込まれていない場合、すなわち、ペダル連結操作部310が基準姿勢(略水平姿勢)にある場合は、第1凸部313aが基端部312を中心に所定角度傾斜した状態である。この状態では、ワイヤ306が引っ張られておらず、ペダル連結部303の連結片304は受け部305に嵌り込んでいるため、左右のブレーキペダル12L,12Rは連結されている。このとき、ロックレバー314が下げられた位置で固定されると、ペダル連結操作部310をオペレータが踏み込もうとしても、第1凸部313aがロックプレート315の一端部315aに当接するため、左右のブレーキペダル12L,12Rの連結が解除されることはない。
図10Bに示すように、ロックレバー314が上げられると、ロックプレート315が回動してペダル連結操作部310に対して踏み込み操作可能となる。ペダル連結操作部310がオペレータに踏み込まれると、ワイヤ306が引っ張られて、ペダル連結部303の連結片304が引き上げられる。これにより、左右のブレーキペダル12L,12Rの連結が解除される。
また、図9に示すように、ペダル連結操作部310付近には、ペダル連結操作部310による連結操作を検出する検出部(ペダル連結操作検出スイッチ)137が設けられている。具体的には、ペダル連結操作検出スイッチ137は、ペダル連結操作部310の基端部312の上方に設けられており、ペダル連結操作部310が回動すると、これに伴い第2凸部313bが回動して、第2凸部313bにアクチュエータ137aが押圧され、アクチュエータ137aを介して感知部137bが押圧される。これにより、ペダル連結操作部310の操作によって、上述した左右のブレーキペダル12L,12Rの連結/連結解除を検出することができる。なお、図9の例では、ペダル連結操作部310が基本姿勢(略水平姿勢)の場合に、ペダル連結操作検出スイッチ137が押圧され、ペダル連結部303による左右のブレーキペダル12L,12Rの連結を検出する。また、ペダル連結操作部310が傾倒姿勢の場合に、ペダル連結部303による左右のブレーキペダル12L,12Rの連結解除を検出する。
また、図9に示すように、ロックプレート315付近には、ロックプレート315の回転動作を検出するロック操作検出部(ロック操作検出スイッチ)138が設けられている。具体的には、ロック操作検出スイッチ138は、ロックプレート315の上方に設けられており、ロックプレート315が回動すると、これに伴い、ロックプレート315の上部に設けられた凸部319が所定角度回動して、凸部319にアクチュエータ138aが押圧され、アクチュエータ138aを介して感知部138bが押圧される。これにより、ロック機構318によって、上述したロック/ロック解除を検出することができる。なお、図9の例では、ロックレバー314が下げられている場合に、ペダル連結部303のロックを検出する。また、ロックレバー314が上げられている場合に、ロック操作検出スイッチ138が押圧され、ペダル連結部303のロック解除を検出する。
次に、図11を参照してトラクタ1の制御部(走行制御部)120の制御構成の一例について説明する。図11は、制御部120のブロック図である。図11に示すように、制御部として、走行制御部120は、エンジンE(図2参照)などを制御するエンジン制御部121、PTO連結装置に装着される作業機を昇降する作業機昇降制御部122、メータパネル9および操作パネル206などにCAN通信ライン(図11中におけるCAN1,CAN2)を介して交互に交信可能に接続されている。
エンジン制御部121には、上述したエンジンモード選択スイッチ192からエンジンモード、エンジン排気温度センサ203から排気の温度、エンジン回転センサ125からエンジン回転数、エンジンオイル圧力センサ193からエンジン潤滑オイルの圧力、エンジン水温センサ194から冷却水の温度、レール圧センサ198からエンジンEのコモンレールの圧力、アクセル操作位置検出センサ195からのアクセルペダル10(図5参照)のペダル操作位置およびアクセルレバー351の操作位置がそれぞれ入力される。また、エンジン制御部121は、燃料タンクから汲み上げた燃料を加圧してコモンレールに圧送する燃料高圧ポンプ196と、コモンレールに蓄圧された高圧燃料をエンジンEのシリンダ内に噴射する各高圧インジェクタ197とを動作するための制御信号を出力する。
作業機昇降制御部122には、ポジションレバー358に設けられたポジションコントロールセンサ199の操作信号と、リフトアームセンサ200の昇降信号と、上げ位置規制ダイアル201の上げ位置規制信号と、下げ速度調整ダイアル202の降下速度設定信号とがそれぞれ入力される。また、作業機昇降制御部122は、メイン上昇ソレノイド204と、メイン下降ソレノイド205とに作業機昇降信号を出力して、作業機昇降シリンダを作動する。
走行制御部120は、主変速装置、副変速装置、前後進切替機構、PTO出力機構、前輪側動力伝達機構などを制御して、トラクタ1の走行を制御するものである。走行制御部120には、左右のブレーキペダル12L,12Rのブレーキ操作(または、片ブレーキ操作)信号が入力される。また、走行制御部120は、定回転スイッチ126、回転数増加調整スイッチ123および回転数減少調整スイッチ124によってエンジン回転数を指示した場合に、上述した表示部(液晶モニタ)356(図5参照)に表示されるエンジン回転数を実測されたエンジン回転数、すなわち、エンジン回転計(タコメータ)357(図5参照)に表示されるエンジン回転数に近似させるように指示する。なお、エンジン回転指示されたエンジン回転数および実測されたエンジン回転数を近似させるための具体的な制御方法については、図16、図17および図18を用いて後述する。
走行制御部120には、上述したペダル連結操作検出スイッチ137およびロック操作検出スイッチ138からそれぞれ上述した連結/連結解除および上述したロック/ロック解除の検出信号が入力される。また、走行制御部120には、ブレーキ踏込検知スイッチ139からブレーキ踏込信号、車速検出部(車速センサ)140から走行速度、エンジン回転センサ125からエンジン回転数が入力される。
また、走行制御部120には、走行クラッチ48における前進クラッチ圧力センサ128、前後進レバー操作位置センサ130の検出結果がそれぞれ入力される。また、走行制御部120には、主変速レバー15(図7参照)の操作位置を検出する主変速レバー位置センサ136、副変速レバーの操作位置を検出する副変速位置センサ131からのそれぞれの検出結果が入力される。さらに、走行制御部120には、油温センサ133からミッションオイルの温度が入力される。
また、走行制御部120には、操縦席7(図1参照)の周りに設けられ、PTO軸111の回転数を検出するPTO回転センサ220、PTO入り切りスイッチ221、PTO自動/手動切替スイッチ222、走行/作業切替スイッチ223からそれぞれの検出結果が入力される。また、走行制御部120には、オペレータが片ブレーキ操作する場合に走行クラッチ48を自動的に遮断するように設定するクラッチ自動遮断設定スイッチ134から出力された設定信号が入力される。さらに、走行制御部120には、主変速レバー15による変速感度を調整する変速感度ダイヤル135から出力された感度信号が入力される。
また、走行制御部120には、エンジン回転数をオペレータが具体的に数値で設定した所定の回転数にする、「定回転モード」を実行するための定回転スイッチ126、定回転スイッチ126に対応した所定のエンジン回転数設定の増減を調整する回転数増加調整スイッチ123および回転数減少調整スイッチ124からの設定信号が入力される。なお、回転数増加調整スイッチ123および回転数減少調整スイッチ124によって、高低(たとえば、高回転を2600[rpm]、低回転を1600[rpm])の2種類のエンジン回転数を任意に設定して記憶させる。
走行制御部120は、走行クラッチ48における前後進出力第1ギヤ側のクラッチを作動させる前進切替ソレノイド141Fと、前後進出力第2ギヤ側のクラッチを作動させる後進切替ソレノイド141Rと、前進および後進の切り替え時のショックを軽減するために走行クラッチ48の作動時における油圧を制御する前後進昇圧ソレノイド142とが接続されて、これらの制御信号を出力する。
また、走行制御部120は、第1主変速シフタを作動させる第1主変速第1ソレノイド207および第1主変速第2ソレノイド208が接続されて、これらの制御信号を出力する。さらに、走行制御部120は、第2主変速シフタを作動させる第2主変速第1ソレノイド209および第2主変速第2ソレノイド210が接続されて、これらの制御信号を出力する。
また、走行制御部120は、第1Hi−Lo変速Lo側ギヤ側のクラッチを作動させる第1Lo側ソレノイド211aと、第1Hi−Lo変速クラッチにおける第1Hi−Lo変速Hi側ギヤ側のクラッチを作動させる第1Hi側ソレノイド211bとが接続されて、これらの制御信号を出力する。さらに、走行制御部120は、第2Hi−Lo変速Lo側ギヤ側のクラッチを作動させる第2Lo側ソレノイド212aと、第2Hi−Lo変速クラッチにおける第2Hi−Lo変速Hi側ギヤ側のクラッチを作動させる第2Hi側ソレノイド212bとが接続されて、これらの制御信号を出力する。
また、走行制御部120は、4WDクラッチ79(図2参照)を作動させる4WDソレノイド213および前輪増速ソレノイド214と、PTOクラッチ97(図2参照)を作動させるPTOクラッチソレノイド216とが接続されて、これらの制御信号を出力する。さらに、走行制御部120は、オペレータに各種警報などを与えるブザー215が接続されて制御信号を出力する。
なお、上述したような走行制御部120においてトラクタ1の制御を行う場合には、たとえば、主変速レバー位置センサ136などの検出結果に基づいて、処理部が上述したコンピュータプログラムをこのような処理部に組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算結果に応じて第1Hi側ソレノイド211bなどのアクチュエータ類を制御することでトラクタ1を走行制御する。この場合、処理部は、適宜記憶部へ演算途中の数値を格納し、また、格納した数値を取り出して演算を実行する。
次に、図12、図13、図14および図15を参照してブレーキ操作および片ブレーキ操作時のブレーキ制御における各部のタイミング制御について説明する。図12は、左右のブレーキペダル12L,12Rが連結状態の場合のブレーキ制御のタイミングチャートである。図13は、左右のブレーキペダル12L,12Rが連結解除状態の場合のブレーキ制御のタイミングチャートである。図14は、ロック機構318によるロック状態の場合のブレーキ制御のタイミングチャートである。図15は、ロック機構318によるロック解除状態の場合のブレーキ制御のタイミングチャートである。なお、図14および図15に示す制御構成は、図12および図13に示す制御構成とは別形態である。
図12に示すように、左右のブレーキペダル12L,12Rが連結された状態では、ペダル連結操作検出スイッチ137がON状態であることを走行制御部120へ出力する。ここで、オペレータが、クラッチ自動遮断設定スイッチ134をONにした状態で、クラッチペダル10を踏んで、かつ、前後進レバー14を前進側へ操作すると、前進切替ソレノイド141Fによって走行クラッチ48の前後進出力第1ギヤ側、すなわち、前側クラッチを作動させ、前後進昇圧ソレノイド142によって前側クラッチの油圧を圧力P1まで増大させる。このとき、前進クラッチ圧力センサ128が、前側クラッチの油圧が圧力P1まで増大したことを検出する。図12の例では、走行制御部120は、前側クラッチの油圧が、前後進レバー14を前進に切り替えた直後に増大せずに、クラッチペダル10のペダル操作が開放された直後に増大している。そして、走行制御部120は、アクセルペダル11のペダル操作などに応じた速度などで機体を前進走行させる。
そして、左右のブレーキペダル12L,12Rが同時に踏み込まれる(通常)ブレーキ操作がなされる(ON状態)と、前側クラッチの油圧を圧力P2まで減少させてエンストを防止しつつ機体を停止させる。その後、ブレーキペダル12L,12Rのペダル操作が開放される(OFF状態)と、前側クラッチの油圧を圧力P2から圧力P1まで標準パターンにしたがって増大させて、アクセルペダル11のペダル操作などに応じた速度などで機体を前進させる。そして、ブレーキペダル12L,12Rが再度操作されると、走行制御部120は、前側クラッチの油圧を圧力P2まで減少させてエンストを防止しつつ機体を停止させ、その後、前後進レバー14が中立に切り替えられると、前側クラッチの油圧を0まで減少させる。なお、走行制御部120は、前後進レバー14が後進に切り替えられると、後側クラッチの油圧を圧力P2まで増大させ、ブレーキペダル12L,12Rのペダル操作が開放されると、後側クラッチの油圧を圧力P1まで増大させ、アクセルペダル11のペダル操作などに応じた速度などで機体を後進させる。
また、左右のブレーキペダル12L,12Rが連結された通常のブレーキ操作では、走行制御部120は、制動性を高めるために、走行クラッチ48を遮断し、4WDクラッチ79を二輪駆動から四輪駆動に切り替える「4WD切替モード」を実行する。このときにエンジン回転数を設定した所定の回転数とする「定回転モード」を実行している場合は、ブレーキ操作検出に基づいて「定回転モード」の実行を終了する。なお、図12に示すように、走行/作業切替スイッチ223を操作して「作業モード」に切り替えると、常時四輪駆動となる。
図13に示すように、左右のブレーキペダル12L,12Rの連結が解除された状態では、ペダル連結操作検出スイッチ137がON状態からOFF状態となったことを走行制御部120へ出力する。ここで、オペレータが、クラッチ自動遮断設定スイッチ134をONにした状態で、クラッチペダル10を踏んで、かつ、前後進レバー14を前進側へ操作すると、前側クラッチの油圧(圧力)を圧力P1まで増大させて、アクセルペダル11の操作などに応じた速度などで機体を前進させる。そして、片ブレーキ操作がなされる(ON状態)と、走行制御部120は、前側クラッチの油圧は圧力P1としたまま、上述した(通常)ブレーキ操作のような走行クラッチ48の遮断、4WDクラッチ79を切り替える「4WD切替モード」の実行、「定回転モード」の終了制御をそれぞれ行わない。具体的には、走行制御部120は、ブレーキ踏込検知スイッチ139の検出結果を無視して、走行クラッチ48の接続状態を継続し、「4WD切替モード」およびエンジンの「定回転モード」の終了制御を実行しない。なお、図13の例では、走行クラッチ48の接続継続、「4WD切替モード」および「定回転モード」終了制御の不実行をすべて行うようにしているが、これらの制御の少なくともいずれか1つの制御が行われるようにしてもよい。
また、図14に示すように、ロック機構318によって左右のブレーキペダル12L,12Rの連結を解除することができない状態、すなわち、ロック機構318によるロック状態(ロック操作検出スイッチ138がOFF状態)が検出されていると、ブレーキ操作がなされた(ON状態)場合、走行制御部120は、図12の場合と同様の通常のブレーキ制御、すなわち、走行クラッチ48を遮断し、4WDクラッチ79を二輪駆動から四輪駆動に切り替える「4WD切替モード」を実行し、エンジン回転数を設定した所定の回転数とする「定回転モード」の終了制御を実行する。
また、図15に示すように、ロック機構318によって左右のブレーキペダル12L,12Rの連結を解除することができる状態、すなわち、ロック機構318によるロック解除状態(ロック操作検出スイッチ138がON状態)が検出されていると、ブレーキ操作がなされた(ON状態)場合、走行制御部120は、図13の場合と同様の通常のブレーキ制御、すなわち前側クラッチの油圧は圧力P1としたままで、上述した(通常)ブレーキ操作のような走行クラッチ48の遮断、4WDクラッチ79を切り替える「4WD切替モード」の実行、エンジン回転数を設定した所定の回転数とする「定回転モード」の終了制御の実行をそれぞれ行わない。具体的には、走行制御部120は、ブレーキ踏込検知スイッチ139の検出結果を無視して、走行クラッチ48の接続状態を継続し、「4WD切替モード」およびエンジンの「定回転モード」終了制御を実行しない。なお、図15の例でも、走行クラッチ48の接続継続、「4WD切替モード」および「定回転モード」終了制御の不実行をすべて行うようにしているが、これらの制御の少なくともいずれか1つの制御が行われるようにしてもよい。
上述したようなブレーキ制御を行うことで、片ブレーキ操作に伴う走行クラッチ48の遮断を回避して、オペレータの意図しない車両(トラクタ1)の停止を防止することができる。これにより、操作性を良好にすることができる。
また、片ブレーキ操作に伴う四輪駆動の切り替えを回避して、オペレータの意図するとおりに車両(トラクタ1)を操縦することができる。これにより、操作性を良好にすることができる。
また、片ブレーキ操作に伴うエンジンEの所定の回転数指示の中止を回避して、片ブレーキ操作前の作業を継続することができる。これにより、操作性を良好にすることができる。
また、走行制御部120は、ペダル連結操作検出スイッチ137から連結解除信号が入力されていると、車速センサ140によって所定速度(たとえば、10km/h)以上の走行速度が検出された場合に、メータパネル9の液晶モニタ356に、たとえば、左右のブレーキペダル12L,12Rが連結解除状態である旨を報知する警告を表示させるように制御する。さらに、走行制御部120は、ロック操作検出スイッチ138によってロック機構318によるロック解除が検出されていて、車速センサ140によって所定速度(たとえば、10km/h)以上の走行速度が検出された場合に、メータパネル9の液晶モニタ356に、たとえば、ロック解除状態である旨を報知する警告を表示させるように制御する。
上述したようなブレーキ制御において所定速度以上の走行速度の場合に警告表示させることで、片ブレーキ操作するオペレータに注意を喚起することができる。これにより、安全性を高めることができる。
次に、図16および図17を参照して走行制御部120およびエンジン制御部121によるエンジン制御について説明する。図16は、通常のエンジン制御における回転数−トルクの関係の説明図である。図17は、本実施形態のエンジン制御における回転数―トルクの関係の一例の説明図である。なお、図16は、本実施形態(図17の例)の比較例として示している。また、以下では、走行制御部120またはエンジン制御部121が図11などに示す各部を制御し、走行制御部120は、エンジン制御部121に対して、オペレータが設定した指示値に基づいてエンジン回転数を指示する。
図16に示すように、通常のエンジン制御では、アクセルレバー351やアクセルペダル11(いずれも、図5参照)の操作によってエンジン回転数が指示される(図中(a)参照)。ここで、エンジンE(図2参照)に負荷がかかると、エンジン回転数が低下してくる(図中(b)参照)。エンジン回転数が低下してくると、エンジン回転数を維持する場合、燃料噴射量を増やしてトルクを増大させる(図中(c)参照)。とくに、作業機を用いて作業する場合、PTO軸111(図2参照)を駆動するエンジン回転数を一定とする方が均一に作業することができる。そして、燃料噴射量が規定のトルクカーブを超える(上述した負荷率が100%を超える)と、これ以上の燃料噴射がされないため、エンジン回転数は徐々に低下していく(図中(d)参照)。
ここで、負荷上昇時に燃料噴射量調整を自動で行い、回転数を維持するように制御する制御(アイソクロナス制御)すると、PTO軸111の回転を一定にすることができるものの、負荷上昇に伴ってエンジン音も大きくなるため、オペレータは違和感を感じることがある。負荷が上昇すると徐々にエンジン回転数が低下するように制御(ドループ制御)することで、このような違和感を感じることなく、オペレータが機体を操作することができる。ところが、上述したように、ドループ制御ではエンジン制御部121により回転数が調整されるため、オペレータが指示したエンジン回転数の指示値と実際のエンジン回転数とが異なる場合があった。アクセルレバー351やアクセルペダル10によるエンジン操作は、感覚でエンジン回転数を指示するため、この回転数の相違による違和感は感じにくいが、上述した「定回転モード」ではオペレータは数値でエンジン回転数を指示するため、表示部356に表示される指示値とタコメータ357に表示される実際のエンジン回転数が異なることにより、違和感を感じることがあった。そこで、本実施形態においては、オペレータが設定したエンジン回転数の指示値および実際のエンジン回転数(実測されたエンジン回転数)の誤差ができるだけ少なくなるようにする。
上述したドループ制御を実行するために、エンジン制御部121では、所定の調整係数DおよびエンジンEの負荷率Lに基づいてエンジン回転数を調整する。図17に示すように、走行制御部120によりエンジン回転数の指示値Niを修正しない、従来のエンジン制御例C3では、オペレータによるエンジン回転指示部(定回転スイッチ)126(図7参照)の操作によって指示値Ni(たとえば、Ni=2600[rpm])が設定された場合(図中(e)参照)、指示値Niが走行制御部120からエンジン制御部121へ出力される。エンジン制御部121は、走行クラッチ48が遮断するような負荷率が0%の場合は所定の調整係数Dに基づいてエンジン回転数が調整される(図中(f)参照)。たとえば、調整係数D=0.05(5%)の場合、指示値Niを5%増加した値を、調整後のエンジン回転数Nf(Nf=Ni+Nd=Ni(1+D−L×D:調整値Nd=Ni(1+D−L×D)、エンジン負荷率L=0)=2600[rpm]×1.05=2730[rpm])として、エンジン制御部121によって設定された後、エンジン制御する。
また、本実施形態の第1エンジン制御例C1では、エンジン負荷率0%の場合において、調整後のエンジン回転数(調整値Nf)が指示値Niと一致する(Nf=Niとなる)ように上記Nfの計算式から逆算して修正指示値Ni’を算出する(たとえば、Nf=Ni=Ni’(1+D)、Ni’=Ni/(1+D)=2600[rpm]/1.05=2476[rpm])(図中(g)参照)。なお、このような修正指示値Ni’は、走行制御部120によって算出され、エンジン制御部121へ出力される。そして、修正指示値Ni’に基づいて調整後のエンジン回転数が算出され(図中(h)参照)、このとき、負荷率0%であれば、オペレータが設定した指示値Niと略一致する(Nf=Ni(1+D)=2476[rpm]×1.05≒2600[rpm])。
さらに、走行制御部120は、指示値Niを液晶モニタ356(図5参照)に表示させるように制御する。
このようなエンジン制御を行うことで、液晶モニタ356に表示されるエンジン回転数の指示値Niと、タコメータ357(図5参照)に表示されるエンジン回転数の実測値とを略一致させることができる。したがって、オペレータは、自身が指示したエンジン回転数(指示値Ni)と実測されたエンジン回転数(実測値)とが略一致しているため、違和感なく操作を行うことができる。これにより、操作性を向上させることができる。
次に、図18を参照してエンジン制御の他の例について説明する。図18は、エンジン制御における回転数―トルクの関係の他の例の説明図である。本実施形態のエンジン制御の他の例である、第2エンジン制御例C2において制御を実行するために、エンジン制御部121では、エンジン負荷率を算出して、算出結果を走行制御部120へ出力する。また、走行制御部120では、上述した修正指示値Ni’の算出式にエンジンEの負荷率Lをさらに用いて修正指示値Ni’を算出して、算出結果をエンジン制御部121へ出力する。
図18に示すように、走行制御部120によりエンジン回転数の指示値Niを修正しない、従来のエンジン制御例C3では、オペレータによるエンジン回転指示部(定回転スイッチ)126(図7参照)の操作によって指示値Ni(たとえば、Ni=2600[rpm])が設定された場合(図中(h)参照)、たとえば、走行中のようなエンジンEに負荷がかかっているような状態では、そのときの負荷率Lの関数としてエンジン回転数が調整される(図中(i)参照)。ここでは、たとえば、負荷率L=0.5(50%)の場合、指示値Niを2.5%増加した値を、調整後のエンジン回転数Nf(Nf=Ni+Nd=2600[rpm]+65=2665[rpm]:調整値Nd=Ni(D−L×D)=2600[rpm](0.05−0.025)=65)として、エンジン制御部121によって設定された後、エンジン制御する。
また、本実施形態のエンジン制御の他の例である、第2エンジン制御例C2では、走行制御部120は、所定の調整係数Dに加え、エンジン制御部121によって取得される負荷率L(たとえば、50%)を基に修正指示値Ni’を算出してエンジン制御部121へ出力する(Nf=Ni=Ni’(1+D−L×D)、Ni’=Ni/(1+D−L×D)=2600[rpm]/(1.05−0.05×L))=2600[rpm]/1.025≒2537[rpm])(図中(j)参照)。このように、修正指示値Ni’に基づいて調整後のエンジン回転数Nfが算出され、エンジンEに負荷がかかっている状態でも、オペレータが設定した指示値Niと略一致する(図中(k)参照)。
さらに、走行制御部120は、指示値Niを液晶モニタ356(図5参照)に表示させるように制御する。
このように、エンジン制御部121からリアルタイムに得られるエンジンEの負荷率Lを反映させた修正指示値Ni’で指示することで、走行中のようなエンジンEに負荷がかかっているときにエンジン回転数を指示する場合でも、液晶モニタ356に表示されるエンジン回転数の指示値Niと、タコメータ357(図5参照)に表示されるエンジン回転数の実測値とを近似させることができる。したがって、オペレータは、走行中などのエンジンE負荷時においても、自身が指示したエンジン回転数(指示値Ni)と実測されたエンジン回転数(実測値)とが略一致しているため、違和感なく操作を行うことができる。これにより、操作性を向上させることができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。