以下、図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
(実施の形態)
本実施の形態のトラクターの構成および動作について説明する。
はじめに、図1〜3を主として参照しながら、本実施の形態のトラクターの構成について説明する。
ここに、図1は本発明における実施の形態のトラクターの模式的なブロック図であり、図2は本発明における実施の形態のトラクターの模式的な側面図であり、図3は本発明における実施の形態のトラクターのブレーキペダル1210近傍の模式的な斜視図である。
なお、本実施の形態のトラクターは、本発明の車両の一例である。
本実施の形態のトラクターは、前輪2、後輪3、エンジン5、前後進クラッチ48および制御機構1000などを備えている。
前後進クラッチ48は、動力の伝達をオンオフするとともに、前進または後進の選択を行うためのクラッチである。
なお、前後進クラッチ48は、本発明の所定のクラッチの一例であり、本発明の油圧クラッチの一例でもある。
本発明の所定のクラッチは、本実施の形態においては本発明の油圧クラッチと同じクラッチであるが、本発明の油圧クラッチとは異なるクラッチであってももちろんよい。
たとえば、本発明の油圧クラッチが前後進クラッチであって、本発明の所定のクラッチがその前後進クラッチとは異なるメカクラッチであってもよい。
ブレーキペダル1210は、エンジン5から伝達されてくる動力によって駆動される後輪3の制動を、作業者のペダル操作に応じて行うためのペダルである。
なお、後輪3は、本発明の車輪の一例である。
ブレーキ操作検出器1200は、ブレーキペダル1210に対する作業者のペダル操作に関する検出を行う手段である。
ブレーキペダル1210は、左ブレーキペダル1211および右ブレーキペダル1212から構成される。
左右ブレーキペダル連結器1310は、左ブレーキペダル1211と右ブレーキペダル1212との間の連結および非連結を行うための連結器である。
左右ブレーキペダル連結検出器1300は、左右ブレーキペダル連結器1310の連結および非連結に関する検出を行う手段である。
クラッチペダル1410は、動力の伝達をオンオフする前後進クラッチ48の接続および切断を、作業者のペダル操作に応じて行うためのペダルである。そして、クラッチペダル1410は、第一高・低クラッチ24(図9参照)および第二高・低クラッチ25(図9参照)の接続および切断を行うためのペダルでもある。
クラッチ操作検出器1400は、クラッチペダル1410に対する作業者のペダル操作に関する検出を行う手段である。
ノークラッチモード選択スイッチ1110は、(1)ブレーキペダル1210に対する作業者のペダル踏み込み操作がブレーキ操作検出器1200によって検出されるときには、前後進クラッチ48に対して動力の伝達をオフするための制御を行い、(2)ブレーキペダル1210に対する作業者のペダル開放操作がブレーキ操作検出器1200によって検出されるときには、前後進クラッチ48に対して動力の伝達をオンするための制御を行うノークラッチモードの、選択または非選択を行うための手段である。
つぎに、図4を主として参照しながら、制御機構1000の構成についてより具体的に説明する。
ここに、図4は、本発明における実施の形態のトラクターの制御機構1000主要部の模式的なブロック図である。
コントローラー1100は、さまざまなスイッチおよびセンサーなどに対する読み込み処理によって読み込まれた信号に応じて制御動作を実行したり、CAN(Controller Area Network)通信を利用してメーターパネル1120への表示動作を実行したりする走行系ECU(Engine Control Unit)の演算装置である。
ノークラッチモード選択スイッチ1110は、ブレーキペダル1210に対する作業者のペダル踏み込み操作に応じて、クラッチペダル1410に対する作業者のペダル操作がなくても、前後進クラッチ48の接続圧力を低圧にする、いわゆる半クラッチ停止を利用したブレーキ停止制御の作動と非作動とを自由自在に選択するための手段である。
副変速の減速比が最も大きい極低速が副変速部154(図9参照)での副変速段数として選択されている場合には、第一高・低クラッチ24(図9参照)および第二高・低クラッチ25(図9参照)の接続がオフされる。
なぜならば、トルクが高くなり、エンジンブレーキが利用できずに車両が慣性で動いてしまう現象である、このような場合において発生しやすい突き回りを防止することができるからである。
そして、前後進クラッチ48の接続圧力を完全なゼロではない低圧にすることで、作業者の足がブレーキペダル1210から離されて再発進が行われる際の応答性を向上させることができる。
もちろん、副変速の減速比がより大きい場合には、上記の応答性を向上させるために、前後進クラッチ48の昇圧をより短い時間で行うことが望ましい。
作業者は同ブレーキ停止制御を作動させることも作動させないこともできるので、ノークラッチモードによらないで旧来と同様にクラッチペダル1410を利用してトラクターの運転を行いたいといったニーズにも柔軟に対応することが可能であり、ユーザー適応性が増大する。
もちろん、ノークラッチモードによらないで旧来と同様にクラッチペダル1410を利用してトラクターの運転を行いたい場合には、クラッチペダル1410を踏み込み操作に応じて前後進クラッチ48の接続をオフし、第一高・低クラッチ24(図9参照)および第二高・低クラッチ25(図9参照)の接続もオフする。
前後進切替操作検出器1500は、作業者の前後進切替レバー1510の切替操作に応じた、前進、中立または後進の何れかであるトラクターの進行方向の切替を行うための前後進切替スイッチ1501を有する。
ブレーキ操作検出器1200は、ブレーキペダル1210が作業者によって踏まれているか否かに応じてオンオフされるブレーキスイッチ1201を有する。
クラッチ操作検出器1400は、たとえばポテンショメーター式の、クラッチペダル1410が作業者によって踏まれているか否かに応じたオンオフを検出することができるクラッチセンサー1402を有する。
左右ブレーキペダル連結検出器1300は、作業者の金具の嵌め外し操作(太矢印で図示されている)に応じた、連結または非連結の何れかである左右ブレーキペダル連結器1310の状態の検出を行うためのスイッチ(図示省略)を有する。
基本的には、前述されたブレーキ停止制御は、左側の後輪3の制動を行うための左ブレーキペダル1211と、右側の後輪3の制動を行うための右ブレーキペダル1212と、が連結されているときにおいてのみ作動させられる。
つぎに、本実施の形態のトラクターの制御機構1000の動作について具体的に説明する。
ノークラッチモードの選択と非選択との切替は前述のようにもちろんノークラッチモード選択スイッチ1110を利用して簡便に行うことができるが、たとえば、ある条件下では安全性を重視してこのような切替を行うことができないようにすることが望ましい。
そこで、以下では、ノークラッチモードの選択と非選択との切替の当否が状況に応じて判断される種々の実施例を挙げながら、制御機構1000の動作を詳しく説明する。
(1)まず、ノークラッチモードが選択されていない状態からノークラッチモードが選択されている状態への変更をともなう制御機構1000の動作について説明する。
(1a)ノークラッチモードが選択されていない状態において、左右ブレーキペダル連結器1310の非連結が左右ブレーキペダル連結検出器1300によって検出されるときには、ノークラッチモード選択スイッチ1110を利用してノークラッチモードを選択状態にする操作は無効である、といった制御機構1000の動作が、考えられる。
このような制御機構1000の動作によれば、左ブレーキペダル1211と右ブレーキペダル1212とが連結されているときにおいてのみ、ノークラッチモード選択スイッチ1110を利用する、ノークラッチモードが選択されていない状態からノークラッチモードが選択されている状態への変更を許可するようにでき、安全性を向上させることが可能になる。
なお、左ブレーキペダル1211と右ブレーキペダル1212とが連結されていないときには、ブレーキペダル1210の状態は片効きが発生し得る不安定な状態であると考えられ、もしもノークラッチモードが選択されていない状態からノークラッチモードが選択されている状態への変更がこのようなときにも許可されてしまうとすると、作業者が前述されたブレーキ停止制御を事故が発生しやすい状況で作動させる操作を行ってしまうことがある。
ここで、そのような一実施例を、本発明における実施の形態のトラクターの制御機構1000の動作を説明する流れ図(その1)である図5を主として参照しながら説明すると、つぎの通りである。
当該サブルーチンの呼び出しをスタートし、さまざまなスイッチおよびセンサーなどに対する読み込み処理を行い、ノークラッチモードの選択が行われていないかどうかを判断する(ステップS11)。
ノークラッチモードの選択が行われていないかどうかを判断した結果(ステップS11)、ノークラッチモードの選択が行われていないと判断したときにはノークラッチモードを選択状態にするスイッチ操作がノークラッチモード選択スイッチ1110を利用して行われたかどうかを判断し(ステップS12)、ノークラッチモードの選択が行われていると判断したときには当該サブルーチンの呼び出しにリターンする。
ノークラッチモードを選択状態にするスイッチ操作が行われたかどうかを判断した結果(ステップS12)、ノークラッチモードを選択状態にするスイッチ操作が行われたと判断したときには左右ブレーキペダル連結器1310による左ブレーキペダル1211と右ブレーキペダル1212との連結が左右ブレーキペダル連結検出器1300によって検出されたかどうかを判断し(ステップS13)、ノークラッチモードを選択状態にするスイッチ操作が行われていないと判断したときには当該サブルーチンの呼び出しにリターンする。
左ブレーキペダル1211と右ブレーキペダル1212との連結が検出されたかどうかを判断した結果(ステップS13)、連結が検出されたと判断したときにはノークラッチモードを選択状態にし(ステップS14)ついで当該サブルーチンの呼び出しにリターンし、連結が検出されていないと判断したときにはノークラッチモードを継続的に非選択状態にし(ステップS15)ついで当該サブルーチンの呼び出しにリターンする。
なお、ノークラッチモード選択スイッチ1110は、たとえば、プッシュオンタイプの押しボタンとして実装されるが、押しボタンを押し下げても操作は無効である、または押しボタンを押し下げることがそもそもできないようにすることで、ノークラッチモード選択スイッチ1110を利用してノークラッチモードを選択状態にする操作は無効であるという機能を実現することができる。
(2)ついで、ノークラッチモードが選択されている状態からノークラッチモードが選択されていない状態への変更をともなう制御機構1000の動作について説明する。
(2a)ノークラッチモードが選択されている状態において、ブレーキペダル1210に対する作業者のペダル操作がブレーキ操作検出器1200によって検出されるときには、左右ブレーキペダル連結器1310の非連結が左右ブレーキペダル連結検出器1300によって検出されても、ノークラッチモードが選択されている状態は解除されない、といった制御機構1000の動作が、考えられる。
このような制御機構1000の動作によれば、ブレーキペダル1210に対する作業者のペダル操作が行われているときには、左ブレーキペダル1211と右ブレーキペダル1212とが非連結にされても、ノークラッチモードが選択されている状態からノークラッチモードが選択されていない状態への変更が行われてしまわないないようにでき、安全性を向上させることが可能になる。
なお、ブレーキペダル1210に対する作業者のペダル踏み込み操作が行われるときには、変速装置のギヤの状態は通常はそのままであると考えられ、もしもノークラッチモードが選択されている状態からノークラッチモードが選択されていない状態への変更がこのようなときにも行われてしまうとすると、前後進クラッチ48はノークラッチモードが選択されている状態からノークラッチモードが選択されていない状態への変更にともなって接続され、ギヤの状態によってはトラクターが作業者の意図に反する動きをしてしまうことがある。
ここで、そのような一実施例を、本発明における実施の形態のトラクターの制御機構1000の動作を説明する流れ図(その2)である図6を主として参照しながら説明すると、つぎの通りである。
当該サブルーチンの呼び出しをスタートし、さまざまなスイッチおよびセンサーなどに対する読み込み処理を行い、ノークラッチモードの選択が行われているかどうかを判断する(ステップS21)。
ノークラッチモードの選択が行われているかどうかを判断した結果(ステップS21)、ノークラッチモードの選択が行われていると判断したときには左右ブレーキペダル連結器1310による左ブレーキペダル1211と右ブレーキペダル1212との非連結が左右ブレーキペダル連結検出器1300によって検出されたかどうかを判断し(ステップS22)、ノークラッチモードの選択が行われていないと判断したときには当該サブルーチンの呼び出しにリターンする。
左ブレーキペダル1211と右ブレーキペダル1212との非連結が検出されたかどうかを判断した結果(ステップS22)、非連結が検出されたと判断したときにはブレーキスイッチ1201がオンされているかどうかを判断し(ステップS23)、非連結が検出されていないと判断したときにはノークラッチモードを選択状態にし(ステップS26)ついで当該サブルーチンの呼び出しにリターンする。
ブレーキスイッチ1201がオンされているかどうかを判断した結果(ステップS23)、ブレーキスイッチ1201がオンされていると判断したときにはノークラッチモードを実効中の選択状態にし(ステップS24)ついで非連結が検出されたかどうかを再び判断し(ステップS22)、ブレーキスイッチ1201がオンされていないと判断したときにはノークラッチモードを中断中の選択状態にし(ステップS25)ついで非連結が検出されたかどうかを再び判断する(ステップS22)。
ブレーキスイッチ1201がオンされていると判断された場合でも、ブレーキスイッチ1201がオンされていないと判断された場合でも、ノークラッチモードは非選択状態にはされないが、ブレーキスイッチ1201がオンされているときにはノークラッチモードにおける前後進クラッチ48に対して動力の伝達をオンオフするための制御がまさに行われるので選択状態は実効中であり(ステップS24)、ブレーキスイッチ1201がオンされていないときにはそのような制御が行われないので選択状態は中断中であり(ステップS25)、制御ループ(ステップS22〜S25)においては選択状態が実効中であったり中断中であったりする。
そして、非連結が検出されたかどうかを再び判断した結果(ステップS22)、非連結が検出されていないと判断したときにはノークラッチモードを通常の選択状態にし(ステップS26)ついで当該サブルーチンの呼び出しにリターンする。
もちろん、同制御ループ(ステップS22〜S25)を経由しないとき、すなわち、非連結が検出されたかどうかを判断した結果(ステップS22)、非連結が検出されていないと判断したときには、ノークラッチモードは継続的に選択状態にされる(ステップS26)
なお、選択状態が前述のように実効中であったり中断中であったりするとき、特に選択状態が中断中であるときには、ノークラッチモードの選択が行われているかどうかが作業者には分かりづらいので、ノークラッチモード選択スイッチ1110を利用する、ノークラッチモードが選択されている状態からノークラッチモードが選択されていない状態への変更を許可しないことが望ましい。
また、左ブレーキペダル1211と右ブレーキペダル1212との非連結が検出されるときには、左ブレーキペダル1211の挙動と右ブレーキペダル1212の挙動とは通常は異なると考えられるので、必要に応じて、たとえば、それぞれに対するブレーキスイッチ1201の出力値の論理積を利用して制御機構1000の動作を実行すればよい。
ここで、図6を参照しながら説明された実施例について、その要点がより分かりやすいように具体的な説明を補足すると、つぎの通りである。
すなわち、ノークラッチモードの選択が行われており、左ブレーキペダル1211と右ブレーキペダル1212とが連結されていた(ステップS21)が、左ブレーキペダル1211と右ブレーキペダル1212との非連結が検出された(ステップS22)ときには、
左ブレーキペダル1211および右ブレーキペダル1212の少なくとも一方が踏まれる(ステップS23)ノークラッチ停止時には、ノークラッチモードを実効状態で維持し(ステップS24)、
左ブレーキペダル1211および右ブレーキペダル1212の両方ともが踏まれない(ステップS23)非ノークラッチ停止時には、ノークラッチモードを中断状態で維持する(ステップS24)。
(2b)ノークラッチモードが選択されている状態において、(1)ブレーキペダル1210に対する作業者のペダル操作がブレーキ操作検出器1200によって検出されるときには、ノークラッチモード選択スイッチ1110を利用してノークラッチモードを非選択状態にする操作は無効であり、(2)ブレーキペダル1210に対する作業者のペダル操作がブレーキ操作検出器1200によって検出されないときには、ノークラッチモード選択スイッチ1110を利用してノークラッチモードを非選択状態にする操作は有効である、といった制御機構1000の動作が、考えられる。
このような制御機構1000の動作によれば、(1)ブレーキペダル1210に対する作業者のペダル操作が行われているときには、ノークラッチモード選択スイッチ1110を利用する、ノークラッチモードが選択されている状態からノークラッチモードが選択されていない状態への変更を許可しないようにでき、安全性を向上させることが可能になり、(2)ブレーキペダル1210に対する作業者のペダル操作が行われていないときには、ノークラッチモード選択スイッチ1110を利用する、ノークラッチモードが選択されている状態からノークラッチモードが選択されていない状態への変更を許可するようにでき、安全性を確保しつつ利便性を向上させることが可能になる。
なお、ブレーキペダル1210に対する作業者のペダル踏み込み操作が行われるときには、変速装置のギヤの状態は通常はそのままであると考えられ、もしもノークラッチモードが選択されている状態からノークラッチモードが選択されていない状態への変更がこのようなときにも許可されてしまうとすると、前後進クラッチ48はノークラッチモードが選択されている状態からノークラッチモードが選択されていない状態への変更にともなって接続され、ギヤの状態によってはトラクターが作業者の意図に反する動きをしてしまうことがある。
ここで、そのような一実施例を、本発明における実施の形態のトラクターの制御機構1000の動作を説明する流れ図(その3)である図7を主として参照しながら説明すると、つぎの通りである。
当該サブルーチンの呼び出しをスタートし、さまざまなスイッチおよびセンサーなどに対する読み込み処理を行い、ノークラッチモードの選択が行われているかどうかを判断する(ステップS31)。
ノークラッチモードの選択が行われているかどうかを判断した結果(ステップS31)、ノークラッチモードの選択が行われていると判断したときにはノークラッチモードを非選択状態にするスイッチ操作がノークラッチモード選択スイッチ1110を利用して行われたかどうかを判断し(ステップS32)、ノークラッチモードの選択が行われていないと判断したときには当該サブルーチンの呼び出しにリターンする。
ノークラッチモードを非選択状態にするスイッチ操作がノークラッチモード選択スイッチ1110を利用して行われたかどうかを判断した結果(ステップS32)、ノークラッチモードを非選択状態にするスイッチ操作がノークラッチモード選択スイッチ1110を利用して行われたと判断したときにはブレーキスイッチ1201がオンされているかどうかを判断し(ステップS33)、ノークラッチモードを非選択状態にするスイッチ操作がノークラッチモード選択スイッチ1110を利用して行われていないと判断したときには当該サブルーチンの呼び出しにリターンする。
ブレーキスイッチ1201がオンされているかどうかを判断した結果(ステップS33)、ブレーキスイッチ1201がオンされていると判断したときにはノークラッチモードを継続的に選択状態にし(ステップS34)ついで当該サブルーチンの呼び出しにリターンし、ブレーキスイッチ1201がオンされていないと判断したときにはノークラッチモードを非選択状態にし(ステップS35)ついで当該サブルーチンの呼び出しにリターンする。
(2c)ノークラッチモードが選択されている状態において、クラッチペダル1410に対する作業者のペダル操作がクラッチ操作検出器1400によって検出されるときには、ノークラッチモード選択スイッチ1110を利用してノークラッチモードを非選択状態にする操作は有効である、といった制御機構1000の動作が、考えられる。
このような制御機構1000の動作によれば、クラッチペダル1410に対する作業者のペダル操作が行われているときには、ノークラッチモード選択スイッチ1110を利用する、ノークラッチモードが選択されている状態からノークラッチモードが選択されていない状態への変更を許可するようにでき、利便性を向上させることが可能になる。
なお、クラッチペダル1410に対する作業者のペダル操作が行われているときには、前後進クラッチ48が接続される恐れはないと考えられ、ノークラッチモードが選択されている状態からノークラッチモードが選択されていない状態への変更がこのようなときには許可されていると、上り坂での停車後にクラッチペダル1410に対するペダル踏み込み操作を行い、ノークラッチモード選択スイッチ1110を利用してノークラッチモードが選択されている状態からノークラッチモードが選択されていない状態への変更を行い、ついでクラッチペダル1410に対するペダル開放操作をゆっくりと行って、トラクターを発進させることができる。
ここで、そのような一実施例を、本発明における実施の形態のトラクターの制御機構1000の動作を説明する流れ図(その4)である図8を主として参照しながら説明すると、つぎの通りである。
当該サブルーチンの呼び出しをスタートし、さまざまなスイッチおよびセンサーなどに対する読み込み処理を行い、ノークラッチモードの選択が行われているかどうかを判断する(ステップS41)。
ノークラッチモードの選択が行われているかどうかを判断した結果(ステップS41)、ノークラッチモードの選択が行われていると判断したときにはノークラッチモードを非選択状態にするスイッチ操作がノークラッチモード選択スイッチ1110を利用して行われたかどうかを判断し(ステップS42)、ノークラッチモードの選択が行われていないと判断したときには当該サブルーチンの呼び出しにリターンする。
ノークラッチモードを非選択状態にするスイッチ操作がノークラッチモード選択スイッチ1110を利用して行われたかどうかを判断した結果(ステップS42)、ノークラッチモードを非選択状態にするスイッチ操作がノークラッチモード選択スイッチ1110を利用して行われたと判断したときにはブレーキスイッチ1201がオンされているかどうかを判断し(ステップS43)、ノークラッチモードを非選択状態にするスイッチ操作がノークラッチモード選択スイッチ1110を利用して行われていないと判断したときには当該サブルーチンの呼び出しにリターンする。
ブレーキスイッチ1201がオンされているかどうかを判断した結果(ステップS43)、ブレーキスイッチ1201がオンされていると判断したときにはクラッチセンサー1402がオンを検出しているかどうかを判断し(ステップS44)、ブレーキスイッチ1201がオンされていないと判断したときにはノークラッチモードを非選択状態にし(ステップS45)ついで当該サブルーチンの呼び出しにリターンする。
クラッチセンサー1402がオンを検出しているかどうかを判断した結果(ステップS44)、クラッチセンサー1402がオンを検出していると判断したときにはノークラッチモードを非選択状態にし(ステップS45)ついで当該サブルーチンの呼び出しにリターンし、クラッチセンサー1402がオンを検出していないと判断したときにはノークラッチモードを継続的に選択状態にし(ステップS46)ついで当該サブルーチンの呼び出しにリターンする。
ここで、図6〜8を参照しながら説明された実施例について、それらの相違点がより分かりやすいように具体的な説明を補足すると、つぎの通りである。
すなわち、図6を参照しながら説明された実施例は、ノークラッチモードにとって重要な左右ブレーキペダルの連結操作(ステップS22)を特別に取り扱う実施例であるといえるが、図7および8を参照しながら説明された実施例は、左右ブレーキペダルの連結操作と必ずしも関係のない、何らかのノークラッチモードを非選択状態にする操作(ステップS32またはS42)をより一般的に取り扱う実施例であるといえる。
そして、図6を参照しながら説明された実施例においては、上述されたように、ノークラッチモードの選択が行われており、左右ブレーキペダルが連結されていた(ステップS21)が、左右ブレーキペダルの非連結が検出された(ステップS22)ときには、左右ブレーキペダルの少なくとも一方が踏まれる(ステップS23)ノークラッチ停止時にはノークラッチモードを実効状態で維持し(ステップS24)、左右ブレーキペダルの両方ともが踏まれない(ステップS23)非ノークラッチ停止時にはノークラッチモードを中断状態で維持する(ステップS24)。
もちろん、図8を参照しながら説明された実施例は、図7を参照しながら説明された実施例に類似しているが、ステップS44における動作を追加的に有している。
つまり、図8を参照しながら説明された実施例においては、ノークラッチモードの選択が行われていた(ステップS41)が、何らかのノークラッチモードを非選択状態にする操作が検出された(ステップS42)ときには、
ブレーキペダル1210が踏まれる(ステップS43)ノークラッチ停止時には、クラッチペダル1410が踏まれていなければ(ステップS44)、ノークラッチモードを継続的に選択状態にし(ステップS46)、
それ以外の時には、ノークラッチモードを非選択状態にする(ステップS45)。
ただし、ノークラッチモードを非選択状態にする(ステップS45)代わりにノークラッチモードを中断状態で維持する(ステップS24)ような変形例も、もちろん考えられる。
つぎに、図9〜12を主として参照しながら、制御機構1000によって制御される、本実施の形態のトラクターの動力伝動機構の構成および動作について具体的に説明する。
ここに、図9は本発明における実施の形態のトラクターの動力伝動機構の模式的な伝動線図であり、図10は本発明における実施の形態のトラクターの動力伝動機構の模式的な展開図であり、図11は本発明における実施の形態のトラクターの動力伝動機構の模式的な正面図であり、図12は本発明における実施の形態のトラクターの動力伝動機構の模式的な斜視図である。
以下では、フロントケースとリアケースとが一体に組み付けられたミッションケース8内の変速装置の動力伝動機構について、エンジン5から、(1)前輪2および後輪3、ならびに(2)ロータリ作業機(図示省略)に接続されるPTO出力軸111、への変速伝動機構を説明する。
はじめに、主変速部150について説明する。
エンジン5のエンジン出力軸20の回転は、入力軸21に伝動される。
すなわち、クラッチペダル1410によっての動力断続は前後進クラッチ48で行われ、前後進クラッチ48がメインクラッチの役割を果たす。
そして、入力軸21に固着の第一入力ギヤ22は第一高・低クラッチ24の第一低速ギヤ26および第二高・低クラッチ25の第二低速ギヤ27に噛み合い、入力軸21に固着の第二入力ギヤ23は第一高・低クラッチ24の第一高速ギヤ30および第二高・低クラッチ25の第二高速ギヤ31に噛み合う。
第一高・低クラッチ24が第一低速ギヤ26側に繋がれると、回転は第一低速ギヤ26から第一クラッチ軸28に伝動され、第一高・低クラッチ24が第一高速ギヤ30側に繋がれると、回転は第一高速ギヤ30から第一クラッチ軸28に伝動される。
第二高・低クラッチ25が第二低速ギヤ27側に繋がれると、回転は第二低速ギヤ27から第二クラッチ軸29に伝動され、第二高・低クラッチ25が第二高速ギヤ31側に繋がれると、回転は第二高速ギヤ31から第二クラッチ軸29に伝動される。
同一の油圧多板クラッチである第一高・低クラッチ24および第二高・低クラッチ25はそれぞれ、入力軸21の回転を同一減速比で高・低の二段に減速して第一クラッチ軸28および第二クラッチ軸29に伝動する。
第一高・低クラッチ24および第二高・低クラッチ25は潤滑オイルに浸かり、第一クラッチ軸28および第二クラッチ軸29は潤滑オイルの液面OLより若干上に位置している。
そして、第一クラッチ軸28および第二クラッチ軸29をミッションケース8に支持する前仕切壁181に形成された肉盛部181aにはケースの左右開口部側からドリルで加工した給油孔8bが設けられており、給油が給油孔8bから第一高・低クラッチ24および第二高・低クラッチ25の軸に行われている。
給油孔8bは、ケース内の配管に代えて、軸受け部を避けて上下方向および左右方向の油路として集中して設けられている。
オイルフィルター(図示省略)が給油孔8bの近くに取り付けられると、配管を簡略化出来る。
第一高・低クラッチ24および第二高・低クラッチ25は、ミッションケース8の下り傾斜部8cの下部で左右に配置されている。
第一クラッチ軸28に固着の第一ギヤ113が低速伝動軸34に固着の第二ギヤ35と噛み合って、回転は減速して伝動され、第二クラッチ軸29に固着の第三ギヤ149が高速伝動軸32に固着の第四ギヤ33と噛み合って、回転は増速して伝動される。
ここまでの変速伝動では、低速伝動軸34が低速で二段に変速され、高速伝動軸32が高速で二段に変速されることで、計四段に変速がされる。
低速伝動軸34および高速伝動軸32の回転はそれぞれ、第一シンクロチェンジ42および第二シンクロチェンジ36に伝動される。
第一シンクロチェンジ42の第一シンクロ小ギヤ43および第二シンクロチェンジ36の第二シンクロ小ギヤ37が第一伝動軸39の第五ギヤ40と噛み合い、第一シンクロチェンジ42の第一シンクロ大ギヤ44および第二シンクロチェンジ36の第二シンクロ大ギヤ38が第一伝動軸39の第六ギヤ41と噛み合い、回転が伝動される。
第一シンクロチェンジ42の第一シンクロ小ギヤ43と、第二シンクロチェンジ36の第二シンクロ小ギヤ37と、は全く同一のギヤであり、第一シンクロチェンジ42の第一シンクロ大ギヤ44と、第二シンクロチェンジ36の第二シンクロ大ギヤ38と、は全く同一のギヤである。
低速伝動軸34が低速回転し、高速伝動軸32が高速回転している。
したがって、第一シンクロチェンジ42を切換えると、低速でのさらなる二段の変速がされ、第二シンクロチェンジ36を切換えると、高速でのさらなる二段の変速がされる。
すなわち、第一入力軸21の回転は、第一伝動軸39で低速四段および高速四段に変速される。
第一シンクロチェンジ42および第二シンクロチェンジ36は、シフターステーとシフターとをサブ組付けしてミッションケース8内に収められている。
そして、その変速操作部のケース開口部は、ケースの左右側面に設けられ、ミッションケース8の潤滑オイルの液面OLよりも上側に設けられている。
かくして、主変速部150は、操縦者が操作する主変速レバー9200の変速位置を読み取って、走行系ECUで自動的に高・低油圧多板クラッチである第一高・低クラッチ24および第二高・低クラッチ25、ならびに第一シンクロチェンジ36および第二シンクロチェンジ42を制御し、低速四段および高速四段への変速を行う。
ミッションケース8内では、第一高・低クラッチ24および第二高・低クラッチ25が左右に配置されている。
そして、その下側には、第一シンクロチェンジ42が装着された低速伝動軸34、および第二シンクロチェンジ36が装着された高速伝動軸32が左右に配置されている。
かくして、ミッションケース8の左右幅が狭く高さの低いコンパクトな構成が、実現される。
さらに、第一伝動軸39は、第二伝動軸45に軸連結で連結されている。
第二伝動軸45には、第七ギヤ46および第八ギヤ47が固着されている。
第七ギヤ46は、油圧多板の前後進クラッチ48の正転クラッチギヤ49に噛み合わされる。
第八ギヤ47は逆転軸52の逆転ギヤ51に噛み合わされ、逆転ギヤ51は前後進クラッチ48の逆転クラッチギヤ50に噛み合わされる。
したがって、前後進クラッチ48が正転クラッチ48aへの昇圧によって正転クラッチギヤ49に繋がれると、第七ギヤ46の回転は正転状態で前後進クラッチ48に連結された副変速軸53に伝動され、前後進クラッチ48が逆転クラッチ48bへの昇圧によって逆転クラッチギヤ50に繋がれると、第八ギヤ47の回転は逆転状態で副変速軸53に伝動される。
正転と逆転とでは減速比が異なり、逆転がより低速になる。また、正転伝動(前進)と逆転伝動(後進)の選択は、ハンドルが立設されているハンドルコラムの左側に設けられている前後進切替レバー1510の操作で行われる。
つぎに、副変速部154について説明する。
副変速軸53に固着された第九ギヤ54および第十ギヤ55はそれぞれ、第三シンクロチェンジ58の第三シンクロ大ギヤ56および第三シンクロ小ギヤ59に噛み合っている。
したがって、第三シンクロチェンジ58が第三シンクロ大ギヤ56側に繋がれると、第五伝動軸60は第九ギヤ54から第三シンクロ大ギヤ56に伝動した回転で増速して高速で駆動され、第三シンクロチェンジ58が第三シンクロ小ギヤ59側に繋がれると、第五伝動軸60は第十ギヤ55から第三シンクロ小ギヤ59に伝動した回転で減速して中速で駆動される。
第三シンクロチェンジ58の第三シンクロ小ギヤ59側に固着された第十一ギヤ57は、第四シンクロチェンジ71の第四シンクロ小ギヤ69と噛み合っている。
第四シンクロ小ギヤ69側に固着された第十五ギヤ70は第二筒軸114の第十七ギヤ75と噛み合って、回転は第二筒軸114に固着された第十八ギヤ76から第四シンクロ大ギヤ72に伝動される。
第四シンクロチェンジ71が装着された第一筒軸73には、第十六ギヤ74が固着されている。
したがって、第三シンクロチェンジ58が中立にされると、第十ギヤ55の回転が第三シンクロ小ギヤ59に伝動され、回転は第三シンクロ小ギヤ59側に固着された第十一ギヤ57から第四シンクロ小ギヤ69に伝動される。
この状態で、第四シンクロチェンジ71が第四シンクロ小ギヤ69側に繋がれると、第四シンクロ小ギヤ69の回転が第十六ギヤ74の回転となって低速となり、第四シンクロチェンジ71が第四シンクロ大ギヤ72側に繋がれると、第四シンクロ小ギヤ69の回転が第十五ギヤ70から第十七ギヤ75、第十八ギヤ76および第四シンクロ大ギヤ72に伝動され、第十六ギヤ74が極低速となる。
第三シンクロチェンジ58が第三シンクロ大ギヤ56側または第三シンクロ小ギヤ59側に繋がれるときには、第四シンクロチェンジ71は中立にされる。
かくして、主変速部150変速された副変速軸53の低速四段および高速四段の回転については、副変速部154での四段の変速がされ、低速十六段および高速十六段への変速がされる。
第十六ギヤ74は、第五伝動軸60に固着された第十二ギヤ61と噛み合って第五伝動軸60を駆動する。
第五伝動軸60の軸端に固着された第一ベベルギヤ62は、リアベベルケース64の第二ベベルギヤ63と噛み合っていて、リアベベルケース64のベベル出力軸65から第十三ギヤ66および第十四ギヤ67を介して後輪出力軸68を回転し、後輪3を駆動する。
第五伝動軸60には第二十一ギヤ117が固着されており、回転は副変速軸53に軸支された第二筒軸119に固着された第二十二ギヤ118および第二十二ギヤ148を介して第一前輪駆動軸78の第十九ギヤ77に伝動され、第十六ギヤ74の低速十六段と高速十六段の回転が第一前輪駆動軸78に伝動されている。
この回転は、第一前輪駆動軸78から前輪増速クラッチ79を介して第二前輪駆動軸84に伝動され、第三前輪駆動軸85、第四前輪駆動軸86および前輪駆動ベベル軸87に引き継いで伝動される。
前輪駆動ベベル軸87の軸端に固着された第一前ベベルギヤ88は、前ベベルケース89の第二前ベベルギヤ115と噛み合っており、前ベベルケース89の前ベベル出力軸90、第一前ベベルギヤ組91、前縦軸116および第二前ベベルギヤ組92を介して前輪出力軸93を回転し、前輪2を駆動する。
前輪増速クラッチ79の第一増速クラッチギヤ82および第二増速クラッチギヤ80はそれぞれ、第一増速ギヤ83および第二増速ギヤ81に噛み合っており、前輪増速クラッチ79の切換によって増速率を変更する。
かくして、副変速部154は、副変速レバー(図示省略)の変速位置を読み取って、走行系ECUで自動的に第三シンクロチェンジ58および第四シンクロチェンジ71を制御し、変速を行う。
そして、第四シンクロチェンジ71が装着された第一筒軸73は、第三シンクロチェンジ58が装着された第五伝動軸60の下側に配置されている。
かくして、ミッションケース8の長さが短い構成が、実現される。
つぎに、PTO出力軸111の伝動経路について説明する。
第二入力ギヤ23にはPTOメインクラッチ97のメインクラッチギヤ96が噛み合わされており、動力の断続がPTOメインクラッチ97で行われる。
PTOメインクラッチ97は、第一高・低クラッチ24および第二高・低クラッチ25の下側に位置しており、ミッションケース8の内部に溜まる潤滑オイルで冷却および潤滑される。
PTOメインクラッチ97が装着された第一PTO軸95には、PTO変速部157が設けられている。
第一PTOギヤ98、第二PTOギヤ99、ならびに第五シンクロチェンジ151の第五シンクロ小ギヤ100および第五シンクロ大ギヤ101が、装着されている。
第二PTO軸104には第二十ギヤ102、第二十三ギヤ152、第二十一ギヤ103および第二十四ギヤ153が固着されており、カウンタ軸106にはPTO逆転ギヤ105が軸支されている。
第一PTOギヤ98がスライドされて第二十ギヤ102に噛み合わせられると、第三PTO軸107においては二速が得られる。
第一PTOギヤ98がスライドされて第二PTOギヤ99に噛合されると、第一PTO軸95の回転が第二PTOギヤ99と第二十三ギヤ152を介して第三PTO軸107に伝わり、四速が得られる。
第五シンクロチェンジ151が第五シンクロ小ギヤ100に繋がれると、回転は第五シンクロ小ギヤ100から第二十一ギヤ103に伝動し、一速が得られる。
第五シンクロチェンジ151が第五シンクロ大ギヤ101に繋がれると、回転は第五シンクロ大ギヤ101から第二十四ギヤ153に伝動し、三速が得られる。
そして、PTO逆転ギヤ105が第一PTOギヤ98と第二十ギヤ102に噛み合わせられると、第一PTO軸95の回転は第一PTOギヤ98からPTO逆転ギヤ105を経て第二十ギヤ102に伝動されて第三PTO軸107に伝わり、逆回転が得られる。
第一PTOギヤ98、第二PTOギヤ99および第五シンクロチェンジ151は、第一高・低クラッチ24および第二高・低クラッチ25と、第一シンクロチェンジ42および第二シンクロチェンジ36と、の間でこれらの下側に配置されている。
第三PTO軸107の回転は、第四PTO軸156を介して第五PTO軸108に伝動され、第一PTO出力ギヤ109および第二PTO出力ギヤ110を駆動し、さらに減速されてPTO出力軸111を駆動する。
ミッションケース8の左右中央には入力軸21および第四前輪駆動軸86が位置し、第一高・低クラッチ24および第二高・低クラッチ25が左右対称位置に配置され、高速伝動軸32および低速伝動軸34が左右対称位置に配置され、第四PTO軸156および副変速軸53が左右対称位置に配置されている。
そして、第四PTO軸156、副変速軸53および第四前輪駆動軸86は、ミッションケース8の内部下方に配置されており、正面視において略二等辺三角形の頂点を形成している。
以上においては、本実施の形態のトラクターの構成および動作について詳細に説明を行った。
以下においては、同トラクターのより具体的なその他の仕様などについて、さらに説明を行う。
(A)最初に、ノークラッチモードの選択が行われているかどうかをメーターパネル1120などのモニターに表示する仕様について説明する。
たとえば、図13に示されているように、ノークラッチモードの選択が行われているときに点灯または点滅し、それ以外のときに消灯するノークラッチモードランプ9110を利用して分かりやすくモニターへの表示を行う。
ここに、図13は、本発明における実施の形態のトラクターのメーターパネル1120近傍の模式的な斜視図である。
ノークラッチモードの選択が行われていても、ブレーキスイッチ1201がオフされているときには、ノークラッチモードの選択が行われているかどうかが作業者には分かりづらいが、ノークラッチモードランプ9110が実装されていれば、作業者はノークラッチモードの選択が行われているかどうかを目視で容易に確認することができる。
より具体的には、ノークラッチモードの選択が行われているとき、ノークラッチモードランプ9110は、ブレーキスイッチ1201がオンされていれば点滅し、ブレーキスイッチ1201がオフされていれば点灯してもよい。
さらに、ノークラッチモードの選択が行われているとき、ノークラッチモードランプ9110は、ブレーキスイッチ1201がたとえば二分間以上にわたってオンされていればより高速で点滅してもよい。
なお、ノークラッチモードの選択が行われていても、ノークラッチモードが前述された中断中の選択状態であるとき、ノークラッチモードランプ9110は消灯してもよい。
ノークラッチモードの選択が行われているとき、前後進クラッチ48の接続圧力は、ブレーキスイッチ1201がオンされていれば低圧または降圧途中であり、ブレーキスイッチ1201がオフされていれば全圧または昇圧途中である、と考えられる。
そこで、ノークラッチモードの選択が行われており、ブレーキスイッチ1201がオンされているときに点灯または点滅し、それ以外のときに消灯するクラッチランプ9120を利用して分かりやすくモニターへの表示を行ってもよい。
より具体的には、ノークラッチモードの選択が行われているとき、クラッチランプ9120は、(1)ブレーキスイッチ1201がオンされていれば点灯し、ブレーキスイッチ1201がさらにたとえば二分間以上にわたってオンされていれば点滅してもよいし、(2)ブレーキスイッチ1201がオンされていれば点滅し、ブレーキスイッチ1201がさらにたとえば二分間以上にわたってオンされていればより高速で点滅してもよい。
前述された、ノークラッチモードランプ9110の点滅、ならびにクラッチランプ9120の点灯および/または点滅を利用して、トラクターの発進、および/またはクラッチペダル1410に対するペダル踏み込み操作を、作業者に促すことができる。
なお、ノークラッチモードの選択が行われブレーキペダル1210が踏まれるノークラッチ停止時においては、前後進クラッチ48の接続圧力が継続的に低圧とされているので、クラッチ油温が上昇してしまい、前後進クラッチ48の損傷が発生し、前後進クラッチ48の短寿命が惹起される恐れがある。そこで、前述のようにブレーキスイッチ1201がたとえば二分間以上にわたってオンされていることを作業者に知らせることで、前後進クラッチ48の損傷を防止できる。
(B)つぎに、ノークラッチモード選択スイッチ1110をトラクター機体にレイアウトする仕様について説明する。
たとえば、図14に示されているように、ノークラッチモード選択スイッチ1110をメーターパネル1120のパネルダッシュ部分にレイアウトする。
ここに、図14は、本発明における実施の形態のトラクターのメーターパネル1120のパネルダッシュ部分近傍の模式的な斜視図である。
作業者が前方を注視していることが多いトラクターの操縦中においても、ノークラッチモードの選択と非選択との切替を、ノークラッチモード選択スイッチ1110を利用して作業者の手許の操作で容易に行うことができる。
なお、図15に示されているように、ノークラッチモード選択スイッチ1110を主変速レバー9200の近くの箇所にレイアウトしてもよいし、ノークラッチモード選択スイッチ1110を主変速レバー9200自体にレイアウトしてもよい。
ここに、図15は、本発明における実施の形態のトラクターの主変速レバー9200近傍の模式的な斜視図である。
主変速レバー9200は走行系に関するものであるので、作業者はノークラッチモード選択スイッチ1110も同様に走行系に関するものであることを直感的に容易に理解することができる。
(C)つぎに、前後進クラッチ48の接続圧力を出力する仕様について説明する。
前後進クラッチ48の接続圧力の出力制御は、クラッチペダル1410および前後進切替レバー1510からの出力に基づくが、ノークラッチモードの選択が行われているときにはノークラッチモードの出力制御設定にも基づく。
つまり、ノークラッチモードの選択が行われているとき、前後進クラッチ48の接続圧力は、基本的には、ブレーキスイッチ1201がオンされていればノークラッチモードの出力制御設定における低圧であり、ブレーキスイッチ1201がオフされていれば全圧であって、オフされていたブレーキスイッチ1201がブレーキペダル1210に対するペダル踏み込み操作にともなってオンされれば降圧され、オンされていたブレーキスイッチ1201がブレーキペダル1210に対するペダル開放操作にともなってオフされれば昇圧される。
(C1)ノークラッチモードの出力制御設定における低圧の具体的な設定について説明する。
たとえば、副変速部154での副変速段数は前述のように極低速、低速、中速および高速の四段であるので、ノークラッチモードの出力制御設定における低圧を与える保持圧P0の設定は同副変速段数に応じて行う。
より具体的には、副変速段数が極低速または低速であるときにはP0=1.3kgf/cm2であり、副変速段数が中速であるときにはP0=1.8kgf/cm2であり、副変速段数が高速であるときにはP0=2.3kgf/cm2である、といった設定を行う。このように、再発進するときに目標とする速度に短い時間で到達するためには、副変速段数がより大きい場合には保持圧P0をより大きく設定することが望ましい。
このような設定が行われているときの制御機構1000の動作は、つぎの通りである。
すなわち、当該サブルーチンの呼び出しをスタートし、さまざまなスイッチおよびセンサーなどに対する読み込み処理を行い、ノークラッチモードの選択が行われていてブレーキスイッチ1201がオンされているかどうかを判断する。
ノークラッチモードの選択が行われていてブレーキスイッチ1201がオンされているかどうかを判断した結果、ノークラッチモードの選択が行われていてブレーキスイッチ1201がオンされていると判断したときには副変速段数を判断し、そうではないと判断したときには当該サブルーチンの呼び出しにリターンする。
副変速段数を判断した結果、副変速段数が極低速または低速であると判断したときには保持圧を1.3kgf/cm2にしついで当該サブルーチンの呼び出しにリターンし、副変速段数が中速であると判断したときには保持圧を1.8kgf/cm2にしついで当該サブルーチンの呼び出しにリターンし、副変速段数が高速であると判断したときには保持圧を2.3kgf/cm2にしついで当該サブルーチンの呼び出しにリターンする。
変速比の差異を考慮して、高速の変速に対応する保持圧が大きい目に設定されていると、トラクターが上り坂での停車後に発進するときに後退してしまう恐れは少ない。
(C2)前後進クラッチ48の接続圧力の昇圧について説明する。
たとえば、図16に示されているように、ノークラッチモードの選択が行われているときのブレーキペダル1210に対する作業者のペダル開放操作に応じた昇圧時間T1を、前後進切替レバー1510の切替操作に応じた昇圧時間T2と比較して長い目にする。
ここに、図16(a)および(b)は、本発明における実施の形態のトラクターの前後進クラッチ48の接続圧力の昇圧カーブの説明図(その1および2)である。
昇圧時間T1は、ノークラッチモードの選択が行われているときのブレーキペダル1210に対する作業者のペダル開放操作に応じた、オンされていたブレーキスイッチ1201がオフされる操作の開始から前後進クラッチ48の昇圧の完了までの時間である。
昇圧時間T2は、前後進切替レバー1510の切替操作に応じた、中立から前進または後進への前後進切替レバー1510の切替操作の開始から前後進クラッチ48の昇圧の完了までの時間である。
ノークラッチモードの選択が行われているときのブレーキペダル1210に対する作業者のペダル開放操作にはアクセル操作がしばしばともなうことを考慮して、昇圧時間T1が昇圧時間T2と比較して長い目に設定されていると、トラクターが上り坂などでも急発進してしまう恐れは少ない。
なお、前述された前後進クラッチ48の接続圧力の昇圧カーブは、アクセル操作に応じて決定されてもよい。
たとえば、図17に示されているように、アクセル操作が行われている場合の昇圧時間T3を、アクセル操作が行われていない場合の昇圧時間T4と比較して短い目にする。
ここに、図17(a)および(b)は、本発明における実施の形態のトラクターの前後進クラッチ48の接続圧力の昇圧カーブの説明図(その3および4)である。
昇圧時間T3は、アクセル操作が行われている場合の、ブレーキペダル1210に対する作業者のペダル開放操作に応じた前後進クラッチ48の昇圧の完了までの時間である。
昇圧時間T4は、アクセル操作が行われていない場合の、ブレーキペダル1210に対する作業者のペダル開放操作に応じた前後進クラッチ48の昇圧の完了までの時間である。
昇圧時間T3が昇圧時間T4と比較して短い目に設定されていると、トラクターは速やかに加速するので、作業者が違和感を覚える可能性が低い。
また、前後進クラッチ48の接続圧力の昇圧カーブは、前述された副変速段数などに応じて決定されてもよい。
(C3)クラッチペダル1410および前後進切替レバー1510からの出力による指令、ならびにノークラッチモードの出力制御設定の三者間での競合の解決について説明する。
たとえば、ノークラッチモードの選択が行われており、ブレーキスイッチ1201がオンされているとき、クラッチペダル1410からの出力に応じた接続圧力の値、前後進切替レバー1510からの出力に応じた接続圧力の値、および前述されたノークラッチモードの出力制御設定における低圧の値のmin値(すなわち、三つの値の最小値)を利用して、採用する接続圧力の値を決定する。
なお、前後進切替レバー1510からの出力に応じた接続圧力の値は、前進の五段数、中立、および後進の五段数に対応している。
小さい目の接続圧力を採用すると、トラクターが作業者の意図に反する動きをしてしまう恐れは少ないので、安全性が高く、作業者が違和感を覚える可能性が低い。
もちろん、本発明の所定のクラッチは前述のように本発明の油圧クラッチとは異なるクラッチであってもよいのであるが、このような競合の解決は本発明の所定のクラッチ本発明の油圧クラッチと同じクラッチである場合に有効である。
そして、前後進切替レバー1510からの出力については、500msec程度である切替操作時の出力ディレーが前後進クラッチ48に対する負荷を低減するために通常は設定されているが、ノークラッチモードの選択が行われているときにはこのような出力ディレーが廃止されてもよい。
クラッチ油充填時間が無視できないことを考慮して、切替操作に応じた出力が即座に行われると、ノークラッチモードの選択が上り坂の後進中に行われた場合であっても、トラクターが停車後に前進するときに後退してしまう恐れは少ない。
(D)最後に、第一高・低クラッチ24および第二高・低クラッチ25の接続および切断について説明する。
たとえば、ノークラッチモードの選択が行われており、ブレーキスイッチ1201がオンされているとき、トラクターの車速が時速3km以上である場合には第一高・低クラッチ24および第二高・低クラッチ25を切断し、それ以外の場合には第一高・低クラッチ24および第二高・低クラッチ25を接続する。
第一高・低クラッチ24および第二高・低クラッチ25が切断されれば、前後進クラッチ48にはエンジン5からの動力が伝達されなくなることを考慮して、トラクターの車速が時速3km以上である場合には第一高・低クラッチ24および第二高・低クラッチ25が切断されると、前後進クラッチ48の短寿命が後輪3からの慣性の回転力による滑りに起因するクラッチ摩耗のために惹起される恐れは少なく、それ以外の場合には第一高・低クラッチ24および第二高・低クラッチ25が接続されると、トラクターはエンジンブレーキによって速やかに停止する。
なお、前後進クラッチ48の接続圧力は速やかに降圧されるので、エンジンストップが惹起される恐れは少ない。