本発明は、装飾品に関し、より詳細には、宝石等からなる装飾物が宙に浮いたように見えて揺動し、人目を惹き付ける、魅力的な装飾品に関する。
宝石や金銀等の装飾物は、光を反射することで輝き、見る人を魅了する。そして、装飾物が揺動することで、その輝きに微妙な変化が生じ、さらに美しさが増すため、装飾物が揺動しやすいように構成された装飾品が提案されている。
例えば、宝石に少なくとも1つの貫通孔が形成され、該貫通孔に挿通されると共に装身具本体に連結された連結部を備え、宝石が装身具本体に対して揺動可能に支持された装身具が提案されている(下記の特許文献1)。
また、ダイヤモンド等が揺動するように、ダイヤモンド等を回動可能に2点で支持するフレームが設けられた装身具が提案されている(下記の特許文献2)。
さらには、ダイヤモンド等が揺動するように、ダイヤモンド等を回動可能に2点で支持するフレームが設けられ、該2点が装飾物の重心に対して上方位置になるように、装飾物に錘部を取り付けた装身具が提案されている(下記の特許文献3)。
このほか、装飾物を微妙に揺動させることを目的として、宝石背面と台座との間をコイルばねで連結した装身具、あるいは、宝石背面のL字形の支持部上面と台座下部の棒体との間をコイルばねで連結した装身具が提案されている(下記の特許文献4)。
[発明が解決しようとする課題]
上記特許文献1〜4に記載の装身具にあっては、宝石あるいは宝石を保持した装飾物の揺動機構を支持するための台座やフレームを、前記宝石の周囲に必ず設けなければならず、これらが装身具をデザインする上で大きな制限となっており、また装身具の審美的価値を低下させる要因の一つとなっていた。
また、上記特許文献1〜3に記載の装身具にあっては、装飾物が2点で支持されており、2点間を中心とする揺動になり、揺動の動きに限界があった。また、上記特許文献4に記載のコイルばねが用いられている場合には、宝石などと台座との間が密に巻かれたコイルばねで連結されているために、コイルの胴部(巻き線部)の揺れの効果しか得られず、揺動が制限され、十分な揺動効果が得られないという課題があった。
特開2007−61336号
特許5424435号
特許5279324号
特開2010−46218
課題を解決するための手段及びその効果
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、装飾物が中空に浮いたように見えた状態で揺動し、装飾物の輝きの変化をより幻想的で、より魅惑的なものとすることができるとともに、デザインの自由度や審美的価値をより一層高めることができる装飾品を提供することを目的としている。
また、シンプルな構造でありながら、小さな振動に対しても、前後、左右、さらには回動状の揺動など、装飾物に対して様々な態様の揺動を生じさせることができる装飾品を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明に係る装飾品(1)は、
線状体の一端に装飾物が固定され、
前記線状体の他端には基体が固定され、
前記線状体が前記装飾物の重力荷重によっては屈曲変形を生じない剛性を有するものであることを特徴としている。
剛性とは、曲げやねじりの力に対する、寸法変化(変形)のしづらさの度合いのことをいい、弾性とは、外力を加えた後に、その外力を取り去ると形状が元に戻る性質のことをいい、弾性変形とは、外力を加えた後に、その外力を取り去ると変形が元に戻る変形をいい、塑性変形とは、外力を加えた後に、その外力を取り去っても変形が元に戻らなくなる変形をいう。
ここで、上記「重力荷重によっては屈曲変形を生じない剛性を有する」とは、弾性変形の範囲のうち、大きな変形を生じさせない範囲の剛性を有するとの意味であり、弾性変形の範囲での変形を利用したものである。
すなわち、「装飾物の重力荷重に対して屈曲変形を生じない剛性を有する」とは、装飾品の振動、取り扱いなどによって前記装飾物が揺動した際にも、前記線状体が折れ曲がるほど大きく変形することはなく、ほぼ元の状態に戻る小さな弾性変形しか生じさせない剛性を有していることを意味している。
剛性は線状体を太くする、あるいは短くするなどで、重力荷重に対して相対的に高めることができ、つまり、線状体が材料的には同じ剛性を有するものであったとしても、太さを太くし、長さを十分に短くすれば、装飾物の重力荷重に対して屈曲変形を生じさせない高い剛性を確保することが可能になる。
上記装飾品(1)によれば、線状体の一端に装飾物が固定され、該装飾物は前記線状体に片持ち状に支持されているだけなので、この装飾物に対する支持状態は極めて不安定なものとなり、装飾品にほんのわずかな振動が伝わっただけでも、前記装飾物は、前後、左右、あるいは回動方向に小刻みに揺動し続けることとなる。
また、前記線状体が前記装飾物の重力荷重によっては屈曲変形を生じない剛性を有するものであるので、鉛直方向に配置した前記線状体の上部に前記装飾物を配置することもでき、あるいは、水平方向に配置した前記線状体の先端部に前記装飾物を配置することもでき、さらには、鉛直方向、水平方向を除くどのような斜め方向に配置された前記線状体の先端部にも前記装飾物を配置することができる。このため、鉛直方向下方にぶら下げたように前記装飾物を配置する場合に比べ、上記配置を実施すれば、前記装飾物に対する支持状態を不安定なものとすることができ、装飾品にほんのわずかな振動が伝わっただけでも、装飾物は、前後、左右、あるいは回動方向に小刻みに揺動し続けることとなる。
また、前記線状体を視認容易でないほどに細く設定することにより、前記装飾物があたかも宙に浮いたように見せることもでき、人々に驚きを与える、幻想的で、魅惑的な装飾物の輝きを演出することができる。
また、本発明に係る装飾品(2)は、上記装飾品(1)において、前記線状体が形状記憶合金で構成されたものであることを特徴としている。
上記装飾品(2)によれば、前記線状体が形状記憶合金で構成されたものであるので、望みの形状の線状体を安定的に供給することができ、前記装飾物の望みの揺動状況を安定的に実現することができる。
また、本発明に係る装飾品(3)は、上記装飾品(2)において、前記形状記憶合金が、常温で直線形状を維持するように、直線形状を記憶したものであることを特徴としている。
上記装飾品(3)によれば、前記形状記憶合金が、直線形状を記憶したものであるので、直線形状の線状体を安定的に供給することができ、前記装飾物の想定された揺動状況を安定的に実現することができる。また、前記基体と前記装飾物をつなぐ前記線状体の長さを最も短くすることができ、前記線状体が視認されにくく、前記装飾物があたかも宙に浮いたように見せることが容易になる。
また、本発明に係る装飾品(4)は、上記装飾品(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記線状体が、常温において超弾性特性を有する金属で構成されたものであることを特徴としている。
上記装飾品(4)によれば、前記線状体が、常温において超弾性特性を有する金属で構成されたものであるので、前記線状体をより一層細いもので構成することができ、装飾品にほんのわずかな振動が伝わっただけでも、装飾物が、前後、左右、あるいは回動方向に小刻みに揺動し続けるものとすることができる。
また、前記線状体を視認容易でないほどに細くすることが容易となり、前記装飾物が宙に浮いたように見せることが容易となり、人々に驚きを与える、幻想的で、魅惑的な装飾物の輝きを演出することが容易となる。
また、本発明に係る装飾品(5)は、上記装飾品(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記装飾物および前記基体の少なくとも一方に、さらに別の線状体及び装飾物が固定されていることを特徴としている。
上記装飾品(5)によれば、複数の前記装飾物を宙に浮いたように見せることが可能となり、人目をより引き、人々に驚きを与える、幻想的で、魅惑的な装飾物の動きを演出することが容易となる。
また、本発明に係る装飾品(6)は、上記装飾品(1)〜(5)のいずれかにおいて、前記基体と前記装飾物との間の前記線状体に、少なくとも1つの装飾物がさらに固定されていることを特徴としている。
上記装飾品(6)によれば、前記線状体に、複数の装飾物が固定されるため、複数の前記装飾物が宙に浮いたように見せることが容易となり、人目をより引き、人々に驚きを与える、幻想的で、魅惑的な装飾物の動きを演出することが容易となる。
また、本発明に係る装飾品(7)は、上記装飾品(1)〜(6)のいずれかにおいて、前記線状体又はその延長線が、前記装飾物の重心位置を通過しないように、前記装飾物が前記線状体に取付けられたものであることを特徴としている。
上記装飾品(7)によれば、前記線状体又はその延長線が、前記装飾物の重心位置を通過しないように、前記装飾物が前記線状体に取付けられたものであるので、前記線状体の前記装飾物に対する支持状態をより一層不安定なものとすることができ、装飾品にほんのわずかな振動が伝わっただけでも、装飾物は、前後、左右、あるいは回動方向に小刻みに揺動し、この揺動が永く維持されるものとなる。
また、本発明に係る装飾品(8)は、上記装飾品(1)〜(7)のいずれかにおいて、前記線状体又はその延長線が示す方向が、前記装飾物の重心を起点とする重力のベクトル方向と一致しないように、前記装飾物が前記線状体に取付けられていることを特徴としている。
上記装飾品(8)によれば、前記線状体又はその延長線が示す方向が、前記装飾物の重心を起点とする重力のベクトル方向と一致しないように、前記装飾物が前記線状体に取付けられているので、前記線状体の前記装飾物に対する支持状態をより一層不安定なものとすることができ、装飾品にほんのわずかな振動が伝わっただけでも、装飾物は、前後、左右、あるいは回動方向に小刻みに揺動し、この揺動が永く維持されるものとなる。
また、本発明に係る装飾品(9)は、上記装飾品(1)〜(8)のいずれかにおいて、前記装飾物が錘部を備えたものであることを特徴としている。
上記装飾品(9)によれば、前記装飾物が錘部を備えたものであるので、該錘部の取付け位置を調整することにより、前記装飾物の正面方向に対する向きや前記装飾体の動きを調整することができ、正面に位置する看者に対し、より適切な方向からの揺動を見せることができるようになるとともに、前記装飾物の揺動の振幅や周期を任意に調整するができる。このため、装飾物の審美的価値をより一層高めることができる。
また、本発明に係る装飾品(10)は、上記装飾品(9)において、前記錘部が着脱可能であることを特徴としている。
上記装飾品(10)によれば、前記装飾品(9)の効果をより大きなものにすることができる。すなわち、前記錘部が着脱可能であるので、前記装飾物の正面方向に対する向きを装着者の好みに応じて、自由に変えることが可能となる。さらには、前記装飾物の特性や好みに応じて、前記錘部を取付けたり、外したりと、前記装飾物の揺動の状況を容易に調整することができる。また、前記錘部の形状や重量を変えることで、さまざまな揺動状況を実現することができる。
また、本発明に係る装飾品(11)は、上記装飾品(9)又は(10)において、前記線状体及び前記錘部が前記装飾物の正面側からは見えないように構成されていることを特徴としている。
上記装飾品(11)によれば、前記線状体及び前記錘部が前記装飾物の正面側からは見えないように構成されているので、正面に位置する看者に対し、前記基体が静止しているにもかかわらず、前記装飾物のみが不思議に揺動しているように見せることができるため、装飾品の審美的価値をより一層高めることができる。
また、本発明に係る装飾品(12)は、上記装飾品(11)において、前記基体が前記装飾物の正面側からは見えないように構成されていることを特徴としている。
上記装飾品(12)によれば、前記線状体、前記錘部のみならず前記基体までもが前記装飾物の正面側からは見えないので、正面に位置する看者に対し、前記装飾物のみが不思議に揺動しているように見せることができ、装飾品の審美的価値をより一層高めることができる。
また、本発明に係る装飾品(13)は、上記装飾品(1)〜(12)のいずれかにおいて、前記線状体の他部材への取付けが、前記線状体を挟持する取付け部材を介して行われていることを特徴としている。
上記装飾品(13)によれば、前記線状体の他部材への取付けが、前記線状体を挟持する取付け部材を介して行われているため、前記線状体を屈曲させることなく、また強固に前記他部材へ取付けることができる。
また、本発明に係る装飾品(14)は、上記装飾品(1)〜(13)のいずれかにおいて、前記基体に振動を付加する機構が添設されていることを特徴としている。
上記装飾品(14)によれば、前記基体に振動を付加する機構が添設されているので、揺動を長期間に渡り永続的に継続させることができ、前記装飾品を人目によりつきやすくし、また審美的価値をより一層高めることができる。
また、本発明に係る装飾品(15)は、上記装飾品(1)〜(14)のいずれかにおいて、前記装飾品が装身具であることを特徴としている。
上記装飾品(15)によれば、宝石や特殊ガラス、貴金属などを前記装飾物とする前記装身具とすることで、正面に位置する看者に対し、前記装飾物が中空に浮いて不思議に揺動している装身具に見せることができ、該装身具を人目につきやすい、また審美的価値の高いものとすることができる。
線状体の材質は弾性材、形状記憶合金、超弾性特性を有する合金であることが望ましい。
弾性材としては、弾性特性を示す材質からなる線状体であれば、特に限定されるものではなく、たとえば、SUS316の真直線、抗張力鋼線であるピアノ線、もしくはアモルファス線あるいは純鉄等のウィスカー(ひげ結晶)、バネ材としてよく用いられるリン青銅などを挙げることができる。
また、形状記憶合金および超弾性特性を有する合金としては、ニッケル−チタン系合金、銅−亜鉛系合金などを挙げることができる。
さらには、超弾性特性を有する合金としては、株式会社豊田中央研究所が製造・販売している、無転位塑性変形機構による多機能新合金(基本合金組成:Ti-25mol%(Ta+Nb+V)-(Zr,Hf)-O、商品名:ゴムメタル)などの新規素材も含まれる。
線状体の線径は、周囲から視認されにくいという条件からすれば、直径300μm以下が好ましく、直径100μm以下であることがより好ましい。一方、周囲から視認されても問題が無い場合には、線状体の線径には特に制限は無い。
本発明で言う装飾品は、揺動することで装飾品としての価値を増すものであれば、材質やデザインなどが特に限定されるものではない。また、揺動することで装飾的価値が高まる、表示や看板、掲示なども含まれる。
また、車内インテリアや室内インテリアの他に、日用装飾品も含まれる。たとえば、自然の花を透明樹脂板に内包し、線状体に固定することで揺動可能とし、パソコンや冷蔵庫、携帯電話のカバーなどに取り付け、風が吹くとあたかも自然の花が中空を舞っているかの如く構成することで、装飾品としての価値を高めることができる。また、宝石や特殊ガラスを装飾物として、バッグや携帯電話などにつけるチャームとして楽しむこともできる。
本発明における装飾品を装身具に適用した場合は、宝石や特殊ガラス材あるいは貴金属などに細工を施した装飾物を様々な態様で揺動可能にし、宝石や特殊ガラス材、貴金属などが中空に浮いて揺動しているように見せることができるため、審美性が高められた装身具を提供することができる。装身具は、ネックレス、ブローチ、指輪、ピアス、イヤリング、ブレスレット等、如何なるものであってもよい。
本発明の第1の実施の形態に係る、装飾物が線状体の上部に配置された装身具を示す正面図である。
第1の実施の形態に係る装身具を示す部分断面側面図である。
第1の実施の形態に係る装身具を示す背面図である。
第2の実施の形態に係る、線状体が水平方向に配置された装身具を示す正面図である。
第3の実施の形態に係る、線状体が斜め方向に配置された装身具を示す正面図である。
第4の実施の形態に係る、錘部を備えた装飾物が線状体の上部に配置された装身具を示す部分断面側面図である。
第5の実施の形態に係る、錘部を備えた装飾物が線状体の下部に配置された装身具を示す部分断面側面図である。
(a)は第6の実施の形態に係る、線状体及び基体が装飾品の正面側からは見えないように構成された装身具を示す正面図、(b)は部分断面側面図である。
本発明の第7の実施の形態に係る、複数の装飾物が取付けられた装身具を示す部分断面側面図である。
(a)は第8の実施の形態に係る、線状体が取付け部材を介して他部材に取付けられた装身具を示す正面図、(b)は部分断面側面図である。
(a)は第9の実施の形態に係る、線状体が取付け部材を介して他部材に取付けられた装身具を示す正面図、(b)は部分断面側面図である。
(a)は第10の実施の形態に係る、錘部を備えた装飾物が線状体に取付け部材を介して他部材に取付けられた装身具を示す正面図、(b)は部分断面側面図である。
(a)は第11の実施の形態に係る、装飾物が水平方向に配置された線状体に取付け部材を介して他部材に取付けられた装身具を示す正面図、(b)は部分断面側面図である。
(a)は第12の実施の形態に係る、装飾物が水平方向に配置された線状体に取付け部材を介して他部材に取付けられ、線状体及び基体が装飾品の正面側からは見えないように構成された装身具を示す正面図、(b)は部分断面側面図である。
第13の実施の形態に係る、複数の装飾物がそれぞれ複数の線状体に取付けられた装飾品を示す正面図である。
以下、本発明に係る装飾品の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明に関する好適な一例を示すものであり、本発明を各実施の形態に限定することを意図するものではない。例えば、各実施の形態において開示する装飾品の形状等は、好適な一例を示すに過ぎず、その他の形状の如何なる可能性をも否定するものでは全くない。
本発明に係る装飾品は、宝石や貴金属等に細工を施した装飾物を様々な態様で揺動可能にし、正面に位置する看者から見ると特に審美性が高められた装飾品を提供することができるものである。装飾物は、ネックレス、ブローチ、指輪、ピアス、イヤリング、ブレスレット等、あるいはカーアクセサリー等、如何なる装飾品にも適用可能である。
本発明を構成する重要な要素は、装飾物と線状体と基体とで構成される装飾品の態様にある。また、以下の説明では、装飾品を服装あるいは身に付けるためのクリップ、ピンなどの留め具、鎖等の付属物については特に図示せず、また説明も行わないが、それらの付属物も装飾品に含まれるものとする。
図1は、第1の実施の形態に係る装飾品1を示す正面図である。装飾品1は、リング形状をした基体10と、装飾物本体20a及び保持手段20bとで構成された装飾物20と、線状体30とを含んで構成されている。
装飾物本体20aを構成するダイヤモンド、ルビーなどの宝石類は光の入射、反射を良好に確保するため、石座などの保持手段20bに固定・保持される場合が多い。本実施の形態ではそのような保持手段20bを含めて装飾物20と記す。
基体10の下部内側には、線状体30の一端が固定され、この線状体30の他端上端部に装飾物20が固定されており、基体10と装飾物20との間には、装飾物20の揺動を確保する空間が形成されている。また、基体10の上部外側には鎖などの付属物を取付けるための取付け部10aが形成されている。基体10の形状は図示したリング形状に何ら限定されるものではなく、花模様等装飾性の高いデザインを採用してもよく、装飾物20を安定的に支持でき、装飾物20の揺動を確保する空間が形成されているものであればどのような形状のものであっても差し支えない。
図2は、装飾品1を示す部分断面側面図である。図2に示したように、線状体30の延長線が、装飾物20の重心位置Gを通過しないように、装飾物20が線状体30に取付けられている。この様に線状体30の延長線と、装飾物20の重心位置Gとの関係を設定することにより、延長線が重心位置Gを通過する場合に比べて、線状体30の装飾物20に対する支持状態をより不安定なものとすることができる。このため、装飾品1にほんのわずかな振動が伝わっただけでも、装飾物20は、前後、左右、あるいは回動方向に小刻みに揺動し、この揺動が永く維持されるものとなる。
また、図2に示した状態よりも、より一層重心位置Gを線状体30の後方にずらした状態で装飾物20を線状体30に取付けると、装飾物20に作用している重力が装飾物20の正面に関して上向きに回動させる力となって作用する。このため、ブローチなど正面に位置する看者の目線よりも装飾物20の位置が通常下方にある場合には、装飾物20の向きを正面上向きに調整できることとなり、正面に位置する看者に対し、より適切な方向からの揺動を見せることができるようになり、装飾物20の審美的価値をより一層高めることができる。
また、装飾物20をイヤリングなど身体の高い位置に身に付けるものに適用する場合には、上記したように重心位置Gを線状体30の後方にずらした状態で装飾物20を線状体30に取付ける必要はなく、線状体30の延長線が、装飾物20の重心位置Gを通過するように取付けてもよい。この様に線状体30の延長線が、装飾物20の重心位置Gを通過するように設定することにより、前後、左右方向に関する揺動は少し減少するかもしれないが、回動方向に関する揺動は多くすることができる。このため、審美性を高めるうえでより望ましい回動方向の揺動が永く維持されるものとすることができる。
線状体30は、装飾物20の重力荷重によっては屈曲変形を生じない剛性を有するものであり、かつ装飾品1の振動により、装飾物20に最大限の揺動を生じさせることができるものであることが好ましい。
線状体30は、例えば、小型の装置のばね材料としてよく用いられている炭素鋼(ピアノ線)、ステンレス鋼、チタン合金、銅合金などで構成される。線状体30の径(太さ)、帯状体とした場合の断面の幅、厚さなどは、それぞれの金属材料の剛性、弾性などの特性を考慮して適宜選択することが好ましい。
線状体30を構成する材料の一つとして、チタン合金で形成された、常温で直線形状を維持するように、直線形状を記憶した形状記憶合金を挙げることができる。形状記憶合金を常温において超弾性特性を有しているものとし、さらに極めて細いもので線状体30を構成することができる。このため、装飾品1にほんのわずかな振動が伝わっただけでも、装飾物20が、前後、左右、あるいは回動方向に小刻みに揺動し続けることとなる。
また、線状体20を視認容易でないほどに細くすることも容易となり、装飾物20が宙に浮いたように見せることも可能となり、人々に驚きを与える、幻想的で、魅惑的な装飾物20の輝きを演出することができる。
また、常温で直線形状を維持するように、直線形状を記憶した形状記憶合金を使用することにより、直線形状の線状体30を安定的に供給することができ、装飾物20の想定された揺動状況を安定的に実現することができることとなる。また、線状体30の形成が容易となり、装飾品1の製造を容易なものとすることができる。
線状体30と基体10との固定は、両者が金属材料で構成されている場合にはろう付けが望ましく、あるいは樹脂系の接着剤を使用してもよい。この場合、両者の固定をより堅固なものとするために、基体10に線状体30を通せる孔10bを設けておき、この孔10bに線状体30を通し、線状体30を基体10の内周面に巻き付けて固定してもよい。
線状体30と装飾物20との固定は、装飾物20の保持手段20bが金属製のものである場合には、ろう付けが望ましい。線状体30と装飾物20との固定にも、基体10との場合と同様に、保持手段20bに、線状体30を通せる孔(図示せず)を設けておき、この孔に線状体30を通すことにより、両者の固定をより堅固なものとすることができる。
図4は、第2の実施の形態に係る装飾品2を示す正面図である。装飾品2は、リング形状をした基体10と、装飾物本体20a及び保持手段20bとで構成された装飾物20と、線状体30とを含んで構成されている点は、上記した第1の実施の形態に係る装飾品1の場合と同様であるが、線状体30が垂直方向ではなく水平方向に配置されて基体10の内側側面に取付けられている点が相違している。
この様に、線状体30又はその延長線が示す方向が、装飾物20の重心を起点とする重力のベクトル方向と一致しないように、装飾物20が線状体30に取付けられることにより、線状体30の装飾物20に対する支持状態をより一層不安定なものとすることができる。従って、装飾品2にほんのわずかな振動が伝わっただけでも、装飾物20は、前後、左右、あるいは回動方向に小刻みに揺動し、この揺動が永く維持されるものとなる。
図5は、第3の実施の形態に係る装飾品3を示す正面図である。装飾品3は、リング形状をした基体10と、装飾物本体20a及び保持手段20bとで構成された装飾物20と、線状体30とを含んで構成されている点は、上記した第1の実施の形態に係る装飾品1の場合と同様であるが、線状体30が垂直方向でも水平方向でもなく、斜め方向に配置されて基体10の内側側面に取付けられている点が相違している。
この様に、線状体30又はその延長線が示す方向が、装飾物20の重心を起点とする重力のベクトル方向と一致しないように、装飾物20が線状体30に取付けられることにより、線状体30の装飾物20に対する支持状態をより一層不安定なものとすることができる。従って、装飾品3にほんのわずかな振動が伝わっただけでも、装飾物20は、前後、左右、あるいは回動方向に小刻みに揺動し、この揺動が永く維持されるものとなる。
図6は、第4の実施の形態に係る装飾品4を示す部分断面側面図である。装飾品4は、リング形状をした基体10と、装飾物本体20a及び保持手段20bとで構成された装飾物20と、線状体30とを含んで構成されている点は、上記した第1の実施の形態に係る装飾品1の場合と同様であるが、装飾物20が着脱可能な錘部20cを備えたものである点が相違している。
図6に示した装飾品4の場合、線状体30の上部に装飾物20が配置されており、この装飾物20の保持手段20bの後端部近傍に錘部20cが配置されている。このため、この錘部20cにより、装飾物20には、装飾物20の正面側を上向きに回動させるモーメントが作用し、装飾物20の向きを正面上向きに調整できることとなる。従って、ブローチなど正面に位置する看者の目線よりも装飾物20が通常下方に位置する場合には、正面に位置する看者に対し、より適切な方向からの揺動を見せることができるようになり、装飾物20の審美的価値をより一層高めることができることとなる。また、装飾物20の揺動状態を調節することもできる。
また、錘部20cをネオジム製の磁石などで構成すれば、金属製の保持手段20bに対して着脱自在の構成とすることができる。装飾物20をイヤリングなど身体の高い位置で身に付けるものに適用する場合には、錘部20cを外して使用することも可能である。この様に、装飾物20の重心位置Gを線状体30の後方にずらした状態にする必要のない場合には、錘部20cを外して使用することにより、正面に位置する看者に対し、より適切な方向からの揺動を見せることができるようにもなり、装飾物20の審美的価値をより一層高めることができることとなる。
図7は、第5の実施の形態に係る装飾品5を示す部分断面側面図である。装飾品5は、リング形状をした基体10と、装飾物本体20a及び保持手段20bとで構成された装飾物20と、線状体30とを含んで構成されている点は、上記した第1の実施の形態に係る装飾品1の場合と同様であるが、装飾物20が着脱可能な錘部20cを備えている点、装飾物20が線状体30の上端部ではなく、下端部に配置されている点が相違している。
図7に示した装飾品5の場合、線状体30の下端部に装飾物20が配置されており、この装飾物20の保持手段20bの後端部近傍に錘部20cが配置されている。このため、この錘部20cにより、装飾物20には、装飾物20の正面側を上向きに回動させるモーメントが作用し、装飾物20の向きを正面上向きに調整できることとなる。従って、ブローチなど正面に位置する看者の目線よりも装飾物20が通常下方位置にある場合には、正面に位置する看者に対し、より適切な方向からの揺動を見せることができるようになり、装飾物20の審美的価値をより一層高めることができることとなる。
また、錘部20cは保持手段20bに対し、着脱可能な構成となっているので、装飾物20をイヤリングなど身体の高い位置で身に付けるものに適用する場合には、錘部20cを外して使用することも可能である。この様に、装飾物20の重心位置Gを線状体30の後方に大きくずらした状態にする必要のない場合には、錘部20cを外して使用することにより、正面に位置する看者に対し、より適切な方向からの揺動を見せることができるようにもなり、装飾物20の審美的価値をより一層高めることができることとなる。また、装飾物20の揺動状態を調節することもできる。
図8(a)は第6の実施の形態に係る装飾品6を示す正面図、図8(b)は部分断面側面図である。本実施の形態に係る装飾品6は、リング形状をした基体10Aと、装飾物本体20a及び保持手段20bとで構成された装飾物20と、線状体30Aとを含んで構成されている点は、上記した第1の実施の形態に係る装飾品1の場合と同様である。装飾物20が着脱可能な錘部20cを備え、線状体30A、錘部20c及び基体10Aが装飾物20の正面側からは見えないように構成されている点が第1の実施の形態に係る装飾品1と相違している。
装飾品6の場合、基体10Aの外形が、装飾物20の外形よりも小さな大きさに設定され、線状体30Aも短く設定され、線状体30A、錘部20c及び基体10A(取付け部10aを含む)が装飾物20の後方に隠れ、装飾物20の正面側からは見えない構造となっている。このため、正面に位置する看者に対し、装飾物20のみが宙に浮き、不思議に揺動しているように見せることができるので、装飾品6の審美的価値をより一層高めることができる。
図9は、第7の実施の形態に係る装飾品7を示す部分断面側面図である。
装飾品7では、装飾物20の上方に線状体30を介してさらに装飾物20が配置されている点が第1の実施の形態に係る装飾品1と相違している。
装飾品7によれば、複数の装飾物20が宙に浮いたように見せることが可能となり、人目をより引き、人々に驚きを与える、幻想的で、魅惑的な装飾物の動きを演出することが容易となる。
図10(a)(b)は、第8の実施の形態に係る装飾品8を示す正面図及び部分断面側面図である。装飾品8は、リング形状をした基体10と、装飾物本体20a及び保持手段20bとで構成された装飾物20と、線状体30とを含んで構成されている点は、上記した第1の実施の形態に係る装飾品1の場合と同様であるが、線状体30が垂直方向ではなく、装飾物本体20aの後方へ水平方向に配置されて基体10に取付けられている点が相違している。
また、線状体30の基体10及び保持手段20bへの取付けが、線状体30を挟持する取付け部材60を介して行われている点も相違している。
取付け部材60は、線状体30の固定治具であり、線状体固定部60aとハブ部60bとから構成され、線状体30は、二つの線状体固定部60aに挟持され、接着剤等で固定されるとともに、保持手段20bと基体10に固定されている。
装飾品8によれば、線状体30の他部材への取付けが、線状体30を挟持する取付け部材60を介して行われているため、線状体30を屈曲させることなく、また強固に保持手段20bと基体10に取付けることができる。
取付け部10aをつければ、ピアス、イヤリング、ブローチなど様々な装身具を製作することができる。
また、基体10の裏面に強力な両面テープなどをつけて、直接耳たぶに貼りつけてピアスとして使用することもできる。さらには、基体10に磁性体を張り付けて、磁石で耳たぶを挟むようにして、ピアスとして使用することもできる。
また、装飾品8では、線状体30又はその延長線が示す方向が、装飾物20の重心を起点とする重力のベクトル方向と一致しないように、装飾物20が線状体30に取付けられているので、線状体30の装飾物20に対する支持状態をより一層不安定なものとすることができる。従って、装飾品8にほんのわずかな振動が伝わっただけでも、装飾物20は、前後、左右、あるいは回動方向に小刻みに揺動し、この揺動が永く維持されるものとなる。
また、装飾品8では、線状体30が装飾品8の正面側からは見えないため、正面に位置する看者に対し、基体10は静止しているのに、装飾物20のみが宙に浮き、不思議に揺動しているように見せることができ、装飾品8の審美的価値をより一層高めることができる。
図11(a)(b)は、第9の実施の形態に係る装飾品9を示す正面図及び部分断面側面図である。装飾品9が、第1の実施形態に係る装飾品1と相違している点は、装飾物が特殊ガラス材を用いたドーム型装飾物本体20dで構成され、そのため保持手段も装飾品1の保持手段20bと相違して、平板状の保持手段20eで構成されている点である。
このため、線状体30の取付け手段も装飾品1の場合とは異なり、平板状の保持手段20eへの取付けには、平板状の線状体固定部60cが用いられ、接着剤で固定され、基体10への取付けには、線状体固定円環60eが用いられ、線状体固定円環60eは、基体10後部との間に、線状体30の下端部を挟持するように配置され、接着剤等を用いて基体10に固定されている。
装飾品9は、上記した装飾品1と同様の効果を有している。
図12(a)(b)は、第10の実施の形態に係る装飾品9Aを示す正面図及び部分断面側面図である。装飾品9Aが、上記した第9の実施形態に係る装飾品9と相違している点は、装飾物20Bが着脱可能な錘部20cを備えたものである点である。
そのため、装飾品9Aは、図6に示した上記装飾品4と同様の効果を有している。
図13(a)(b)は、第11の実施の形態に係る装飾品9Bを示す正面図及び部分断面側面図である。装飾品9Bが、上記した第10の実施形態に係る装飾品9Aと相違している点は、線状体30が装飾物20Bの後方へ水平方向に配置されている点である。
そのため、装飾品9Bは、図10に示した上記装飾品8と同様の効果を有している。
図14(a)(b)は、第12の実施の形態に係る装飾品9Cを示す正面図及び部分断面側面図である。装飾品9Cが、上記した第11の実施形態に係る装飾品9Bと相違している点は、基体10Aが装飾物20Bの正面側からは見えないように構成されている点である。
そのため、装飾品9Cは、図8に示した上記装飾品6と同様の効果を有している。
図15は、第13の実施の形態に係る装飾品100を示す正面図である。装飾品100は、基体10Bと、装飾物20C、線状体30及び支持部40、41とを含んで構成されている。
線状体30の下端部は基体10Bと線状体固定板(図示せず)に挟持され、接着剤等で固定されている。他方、線状体30の上端部は、装飾物20Cと線状体固定板(図示せず)に挟持され、接着剤で固定されている。基体10Bには支持部40が固定され、支持部40は支持部41に接続されている。支持部41は装飾品100を支持できるものならどのような形態のものであっても差し支えなく、支持台のような形態、吸盤状の形態、磁石を用いた吸着形態、あるいはペンやマウスコードなどを挟むU字型のプラスティック成型物形態であってもよい。
線状体30と基体10Bあるいは装飾物20Cとは、各々線状体固定板に挟持され、接着剤等で固定されているが、固定は必ずしもこの方法によらなくても良い。たとえば、ロウ付け、はんだ付け、溶接、あるいは線状体固定板を用いない接着剤だけによる固定であっても良い。
但し、線状体30が直径100μm以下の場合は、上記したように線状体固定板で挟持し、接着剤で固定する方法が簡便で、かつ確実に接着の強度を確保することができる。
装飾物20Cは、線状体30に線状体固定板で固定された片持ち構造になっているため、この装飾物20Cに対する支持状態は極めて不安定なものとなり、装飾品100にほんのわずかな振動が伝わっただけでも、装飾品100に加えられた外力や振動が、線状体30で増幅されて装飾物20Cに伝達され、装飾物20Cは、前後、左右、あるいは回動方向に小刻みに揺動し続けることとなる。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、9A、9B、9C、100 装飾品
10、10A、10B 基体
10a 取付け部
10b 孔
20、20A、20B、20C 装飾物
20a、20d 装飾物本体
20b、20e 保持手段
20c 錘部
30、30A 線状体
60 取付け部材
60a、60c 線状体固定部
60b ハブ部
60e 線状体固定円環