JP6536701B2 - バインダ樹脂組成物、バインダ樹脂組成物の製造方法、リチウムイオン二次電池電極形成用組成物、リチウムイオン二次電池電極形成用組成物の製造方法、リチウムイオン二次電池用電極、及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents
バインダ樹脂組成物、バインダ樹脂組成物の製造方法、リチウムイオン二次電池電極形成用組成物、リチウムイオン二次電池電極形成用組成物の製造方法、リチウムイオン二次電池用電極、及びリチウムイオン二次電池 Download PDFInfo
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Description
また、特許文献2には、電池の発熱に応じて電気抵抗(直流抵抗)が上昇するPTC導電材料を電極活物質層内に使用する方法が提案されている。
<1> ポリオレフィン粒子と、有機溶媒と、前記有機溶媒に可溶なポリマと、酸性物質とを含有するバインダ樹脂組成物。
<2> 前記ポリオレフィン粒子の平均粒径が0.1μm〜30μmである、<1>に記載のバインダ樹脂組成物。
<3> 前記ポリオレフィン粒子の含有率が1質量%〜60質量%である、<1>又は<2>に記載のバインダ樹脂組成物。
<4> 前記ポリマが、ニトリル基を有する樹脂及びポリフッ化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、<1>〜<3>のいずれか1項に記載のバインダ樹脂組成物。
<5> 前記有機溶媒がN−メチル−2−ピロリドンを含む、<1>〜<4>のいずれか1項に記載のバインダ樹脂組成物。
<6> pHが1.0〜7.0である、<1>〜<5>のいずれか1項に記載のバインダ樹脂組成物。
<7> 水性ポリオレフィン粒子分散液に有機溶媒及び酸性物質を加えて混合液を調製する工程と、
前記混合液に脱水処理を施す工程と、
前記有機溶媒に可溶なポリマを脱水処理後の前記混合液に添加する工程と、
を有する<1>〜<6>のいずれか1項に記載のバインダ樹脂組成物の製造方法。
<8> 電極活物質と、<1>〜<6>のいずれか1項に記載のバインダ樹脂組成物とを含有するリチウムイオン二次電池電極形成用組成物。
<9> 電極活物質と、<1>〜<6>のいずれか1項に記載のバインダ樹脂組成物と、を混合する、リチウムイオン二次電池電極形成用組成物の製造方法。
<10> 前記電極活物質が、正極活物質又は負極活物質である<9>に記載のリチウムイオン二次電池電極形成用組成物の製造方法。
<11> 集電体と、<8>に記載のリチウムイオン二次電池電極形成用組成物を用いて前記集電体上に形成される電極活物質層とを有するリチウムイオン二次電池用電極。
<12> <11>に記載のリチウムイオン二次電池用電極を備えるリチウムイオン二次電池。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において組成物中の各成分の含有率は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本開示において組成物中の各成分の粒径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本実施形態のバインダ樹脂組成物は、ポリオレフィン粒子と、有機溶媒と、上記有機溶媒に可溶なポリマと、酸性物質とを含有する。
本実施形態のバインダ樹脂組成物は、ポリオレフィン粒子を含有する。ポリオレフィン粒子とは、分子中におけるオレフィン構造単位の割合が50質量%以上であるオレフィン重合体(ポリオレフィン樹脂)の粒子を意味する。ポリオレフィン粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリオレフィン粒子を2種以上用いる態様としては、例えば、同じ樹脂で平均粒径が異なるポリオレフィン粒子を2種以上用いる態様、平均粒径が同じで樹脂の異なるポリオレフィン粒子を2種以上用いる態様、並びに平均粒径及び樹脂の異なるポリオレフィン粒子を2種以上用いる態様が挙げられる。ポリオレフィン粒子の樹脂が異なる態様としては、例えば、構造単位の種類が異なる態様、及び構造単位の種類が同じで構造単位の含有比率が異なる態様が挙げられる。
また、未変性ポリオレフィン樹脂としては、エチレン及びα−オレフィンからなる群より選択される少なくとも1種と共役ジエン又は非共役ジエンとの共重合体が挙げられる。具体的には、エチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン共重合体等が挙げられる。該共重合体は、ゴム状であってもよい。
α,β−不飽和カルボン酸としては、モノカルボン酸及びジカルボン酸が挙げられる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、メザコン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の脂肪族カルボン酸;5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸の核メチル置換体、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸のエンドメチレン基のハロゲン置換体などが挙げられる。なお、ジカルボン酸は酸無水物となっていてもよい。
ポリオレフィン粒子の平均粒径は、例えば、ポリオレフィン粒子を含む電極活物質層を、厚さが約70μmになるように形成した集電体について、その中央部の縦50μm×横50μmの範囲の透過型電子顕微鏡写真の画像内における全てのポリオレフィン粒子の長軸方向の長さを算術平均化した数値とすることができる。ポリオレフィン粒子の長軸方向の長さとは、透過型電子顕微鏡を用いて観察されるポリオレフィン粒子の2次元画像において、ポリオレフィン粒子の外周に外接する2本の平行な接線間の距離が最大となるときの接線間の距離を意味する。
ポリオレフィン粒子の融点(Tm)は、例えば、示差走査熱量計を用いて、温度関数として不活性ガス中におけるポリオレフィン粒子の比熱容量を測定後、吸熱ピーク温度から算出できる。
本実施形態のバインダ樹脂組成物は、後述する有機溶媒に可溶なポリマを含有する。ここで、「有機溶媒に可溶」とは、室温(25℃)で100mLの有機溶媒に1g以上溶解することを意味する。
有機溶媒に可溶なポリマとしては、特に制限されない。有機溶媒に可溶なポリマとしては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のカルボキシメチルセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸誘導体、ポリアクリル酸誘導体、ニトリル基を有する樹脂、ポリフッ化ビニリデンなどが挙げられる。有機溶媒に可溶なポリマは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。有機溶媒に可溶なポリマの中でも、接着性、可撓性、及びバインダ樹脂組成物を用いて作製されるリチウムイオン二次電池の電池特性の観点から、ニトリル基を有する樹脂及びポリフッ化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
(式中、R1はH又はCH3であり、R2はH又は1価の炭化水素基であり、nは1〜50の数である。)
(式中、R3はH又はCH3であり、R4は炭素数4〜100のアルキル基である。)
ニトリル基含有単量体としては、特に制限されない。ニトリル基含有単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリル系ニトリル基含有単量体、α−シアノアクリレート、ジシアノビニリデン等のシアン系ニトリル基含有単量体、フマロニトリル等のフマル系ニトリル基含有単量体などが挙げられる。これらの中では、重合のし易さ、コストパフォーマンス、バインダ樹脂組成物を用いて作製される電極の柔軟性、可撓性等の点で、アクリロニトリルが好ましい。これらのニトリル基含有単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ニトリル基含有単量体としてアクリロニトリルとメタクリロニトリルとを使用する場合、ニトリル基含有単量体の全量に対して、アクリロニトリルを、例えば、5質量%〜95質量%の範囲で含むことが好ましく、50質量%〜95質量%の範囲で含むことがより好ましい。
式(I)で表される単量体としては、特に制限されない。
nは1〜50の数、好ましくは2〜30の数、より好ましくは2〜10の数である。括弧内の構造単位数であるnは、単一の分子については整数値を示すが、複数種の分子の集合体としては平均値である有理数を示す。
R2はH又は1価の炭化水素基であり、例えば、炭素数1〜50の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜25の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1〜12の炭化水素基であることが更に好ましい。炭化水素基の炭素数が50以下であれば、バインダ樹脂組成物を用いてリチウムイオン二次電池の電極を作製したときに、電解液に対する十分な耐膨潤性を得ることができる傾向にある。ここで、炭化水素基としては、例えば、アルキル基及びフェニル基が好ましい。R2は、特に、炭素数1〜12のアルキル基又はフェニル基であることが好ましい。このアルキル基は、直鎖及び分岐鎖のいずれであってもよい。R2がアルキル基又はフェニル基である場合、アルキル基又はフェニル基が有する水素原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、窒素原子含有基、リン原子含有基、酸素原子含有基、芳香族基、炭素数3〜10のシクロアルキル基などの置換基で置換されていてもよい。なお、R2が置換基を有する場合、R2の炭素数には置換基の炭素数を含めないものとする。
式(II)で表される単量体としては、特に制限されない。
カルボキシ基含有単量体としては、特に制限されない。カルボキシ基含有単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル系カルボキシ基含有単量体、クロトン酸等のクロトン系カルボキシ基含有単量体、マレイン酸及びその無水物等のマレイン系カルボキシ基含有単量体、イタコン酸及びその無水物等のイタコン系カルボキシ基含有単量体、シトラコン酸及びその無水物等のシトラコン系カルボキシ基含有単量体などが挙げられる。これらの中でも、重合のし易さ、コストパフォーマンス、バインダ樹脂組成物を用いて作製される電極の柔軟性、可撓性等の点で、アクリル酸が好ましい。これらのカルボキシ基含有単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カルボキシ基含有単量体としては、アクリル酸とメタクリル酸とを併用してもよい。カルボキシ基含有単量体としてアクリル酸とメタクリル酸とを併用する場合、カルボキシ基含有単量体の全量を基準にして、アクリル酸を、例えば、5質量%〜95質量%の範囲で含むことが好ましく、50質量%〜95質量%の範囲で含むことがより好ましい。
ニトリル基を有する樹脂は、ニトリル基を有する構造単位と、カルボキシ基を有する構造単位と、式(I)で表される単量体由来の構造単位及び式(II)で表される単量体由来の構造単位からなる群より選択される少なくとも1つの構造単位との他、これらの構造単位とは異なる他の単量体由来の構造単位を適宜有することもできる。他の単量体としては、特に制限されない。他の単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル化合物、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル化合物、スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等のスチレン化合物、マレイミド、N−フェニルマレイミド等のイミド化合物、(メタ)アクリルアミド等のアミド化合物、酢酸ビニル、(メタ)アリルスルホン酸ナトリウム、(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩などが挙げられる。なお、「(メタ)アクリルアミド」はアクリルアミド又はメタクリルアミドを意味し、「(メタ)アリル」はアリル又はメタリルを意味する。これらの他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ニトリル基を有する樹脂が、ニトリル基を有する構造単位と、カルボキシ基を有する構造単位と、式(I)で表される単量体由来の構造単位及び式(II)で表される単量体由来の構造単位からなる群より選択される少なくとも1つの構造単位とを有する場合、ニトリル基を有する構造単位と、カルボキシ基を有する構造単位と、式(I)で表される単量体由来の構造単位及び式(II)で表される単量体由来の構造単位からなる群より選択される少なくとも1つの構造単位とのモル比は、例えば、ニトリル基を有する構造単位1モルに対して、カルボキシ基を有する構造単位が、好ましくは0.01モル〜0.2モル、より好ましくは0.02モル〜0.1モル、更に好ましくは0.03モル〜0.06モルであり、式(I)又は式(II)で表される単量体由来の構造単位の合計が、好ましくは0.001モル〜0.2モル、より好ましくは0.003モル〜0.05モル、更に好ましくは0.005モル〜0.03モルである。カルボキシ基を有する構造単位が0.01モル〜0.2モルであり、式(I)又は式(II)で表される単量体由来の構造単位の合計が0.001モル〜0.2モルであれば、バインダ樹脂組成物を用いて作製されるリチウムイオン二次電池において、集電体、特に銅箔を用いた集電体との接着性及び電解液に対する耐膨潤性に優れ、電極の柔軟性及び可撓性が良好となる傾向にある。
また、他の単量体を使用する場合、他の単量体由来の構造単位の含有量は、例えば、ニトリル基を有する構造単位1モルに対して、好ましくは0.005モル〜0.1モル、より好ましくは0.01モル〜0.06モル、更に好ましくは0.03モル〜0.05モルの割合である。
本実施形態のバインダ樹脂組成物は、有機溶媒を含有する。有機溶媒としては、特に制限されない。有機溶媒としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の窒素原子含有溶剤、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤などが挙げられる。これらの有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。有機溶媒は、ポリオレフィン粒子の溶解性が低い点から、N−メチル−2−ピロリドンを含むことが好ましい。
本実施形態のバインダ樹脂組成物は、酸性物質を含有する。酸性物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸性物質としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸等の無機酸;及び酢酸、乳酸、グルコール酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸等の有機酸が挙げられる。これらの中でも、酸性物質の含有量を低減できる点から、無機酸が好ましい。
バインダ樹脂組成物のpHは、バインダ樹脂組成物に水を加えた後、pHメータで測定できる。水/有機溶媒の質量比が10/90〜30/70となるように水を加えた後のバインダ樹脂組成物のpHは、1.0〜7.0であることが好ましく、2.0〜6.0であることがより好ましく、3.0〜5.0であることが更に好ましい。バインダ樹脂組成物のpHが1.0以上であると、集電体の安定性が向上する傾向にあり、バインダ樹脂組成物のpHが7.0以下であると、ポリオレフィン粒子の分散性が向上する傾向にある。
本実施形態のバインダ樹脂組成物の製造方法は、特に制限されない。本実施形態のバインダ樹脂組成物は、例えば、水性ポリオレフィン粒子分散液に有機溶媒及び酸性物質を加えて混合液を調製する工程(以下、「混合工程」ともいう。)と、混合液に脱水処理を施す工程(以下、「脱水工程」ともいう。)と、有機溶媒に可溶なポリマを脱水処理後の混合液に添加する工程(以下、「添加工程」ともいう。)とを経て製造することができる。以下、この製造方法について説明する。
混合工程では、水性ポリオレフィン粒子分散液に有機溶媒及び酸性物質を加えて混合液を調製する。
水性ポリオレフィン粒子分散液は、市販品を使用してもよく、常法に従って製造してもよい。水性ポリオレフィン粒子分散液の市販品としては、三井化学(株)製のケミパールW100、ケミパールW200、ケミパールW300、ケミパールW308、ケミパールW310、ケミパールW400、ケミパールW401、ケミパールW4005、ケミパールW410、ケミパールW500、ケミパールWF640、ケミパールW700、ケミパールW800、ケミパールW900、ケミパールWH201、ケミパールWP100等が挙げられる。
また、水性ポリオレフィン粒子分散液に酸性物質を加える際には、粒子相互の凝集を抑える観点から、水性ポリオレフィン粒子分散液を撹拌しながら、酸性物質を少量ずつ添加することが好ましい。その際、水又は有機溶媒で希釈した酸性物質を使用することがより好ましい。
有機溶媒及び酸性物質は、いずれか一方を先に添加してもよく、両方を同時に添加してもよい。粒子相互の凝集を抑える観点から、有機溶媒を添加した後に酸性物質を添加することが好ましい。
脱水工程では、混合液に脱水処理を施す。
混合液から水を除去する方法としては、例えば、混合液を減圧下で加熱して水を除去する方法、混合液に脱水剤を添加して水を除去する方法、及び混合液に遠心処理を施して水相と有機溶媒相とに分離した後に水相を除去する方法が挙げられる。
なお、混合液を減圧下で加熱して水を除去する場合、水と共沸し易い有機溶媒を必要に応じて添加してもよい。有機溶媒を追加する時期及び回数は制限されない。
なお、最適な遠心条件は、ポリオレフィン粒子の種類、ポリオレフィン粒子の平均粒径、ポリオレフィン粒子の含有率、水と有機溶剤との質量比等に応じて、適宜調整することが好ましい。
添加工程では、有機溶媒に可溶なポリマを脱水処理後の混合液に添加し、本実施形態のバインダ樹脂組成物を得る。
有機溶媒に可溶なポリマは、有機溶媒に溶解した状態で添加することが好ましい。
本実施形態のバインダ樹脂組成物は、ポリオレフィン粒子の分散安定性に優れ、リチウムイオン二次電池電極形成用組成物の調製及びリチウムイオン二次電池用電極の作製に応用できる。本実施形態のバインダ樹脂組成物を用いて作製されるリチウムイオン二次電池用電極は、電極活物質層の均一性及び密着強度に優れ、且つ、電極の可撓性が高い。更に、上記電極を備えるリチウムイオン二次電池は、温度が上昇した場合に電池の内部抵抗を上昇させる機能を備え、通常作動時には優れた電池特性を有し、且つ、製造工程も簡便である。
本実施形態のリチウムイオン二次電池電極形成用組成物(以下、単に「本実施形態の電極形成用組成物」ともいう。)は、電極活物質と、本実施形態のバインダ樹脂組成物とを含有する。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極は、集電体と、本実施形態の電極形成用組成物を用いて集電体上に形成される電極活物質層とを有する。
正極形成用組成物は、正極活物質と、本実施形態のバインダ樹脂組成物とを含有する。正極形成用組成物は、例えば、正極活物質と前述した本実施形態のバインダ樹脂組成物とを混合し、必要に応じて導電材及び分散媒を更に混合することにより製造することができる。
また、オリビン型リチウム塩としては、例えば、LiFePO4が挙げられる。
カルコゲン化合物としては、例えば、二硫化チタン及び二硫化モリブデンが挙げられる。
分散媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
正極は、正極集電体と、正極形成用組成物を用いて正極集電体上に形成される正極活物質層とを有する。
また、放電容量及び放電レート特性の観点から、正極活物質層の厚さは、50μm〜150μmであることが好ましく、60μm〜120μmであることがより好ましく、70μm〜110μmであることが更に好ましい。
なお、上記の電流遮断温度は、電池の25℃における直流抵抗に対して、直流抵抗上昇率が110%以上となる温度とする。
負極形成用組成物は、負極活物質と、本実施形態のバインダ樹脂組成物とを含有する。負極形成用組成物は、例えば、負極活物質と前述した本実施形態のバインダ樹脂組成物とを混合し、必要に応じて導電材及び分散媒を更に混合することにより製造することができる。
また、炭素材料の中でも特に、充放電サイクル特性及び安全性をより向上できる観点からは、X線広角回折法における炭素六角平面の間隔(d002)が3.5Å〜3.95Åである非晶質炭素が好ましい。
負極は、負極集電体と、負極形成用組成物を用いて負極集電体上に形成される負極活物質層とを有する。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、前述した本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極を備える。より具体的に、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極、負極、絶縁層、及び非水電解質を備える。
正極及び負極は、例えば、絶縁層を介して互いに対向するように設けられる。正極及び負極の少なくとも一方の電極は、前述した本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極である。正極及び負極のいずれか一方の電極が本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極ではない場合、当該電極としては、従来公知の電極を使用することができる。
絶縁層(以下、「セパレータ」ともいう。)は、正極と負極との間に介在するように設けられ、正極と負極とを絶縁する。絶縁層としては、樹脂製多孔質シート、無機多孔質膜等のイオン透過性を有するものを使用できる。
非水電解質としては、液状非水電解質、ゲル状非水電解質、固体状電解質(例えば、高分子固体電解質)等が挙げられる。液状非水電解質は、溶質(支持塩)と非水溶媒とを含み、更に必要に応じて各種添加剤を含む。溶質は通常非水溶媒中に溶解する。液状非水電解質は、例えば、絶縁層に含浸される。
また、電池特性をより向上できる観点から、非水溶媒にビニレンカーボネート(VC)を含有することが好ましい。ビニレンカーボネート(VC)を含有する場合の含有率は、非水溶媒全量に対して、0.1質量%〜2質量%であることが好ましく、0.2質量%〜1.5質量%であることがより好ましい。
本実施形態のリチウムイオン二次電池がコイン型電池である場合の構成について説明する。
コイン型電池は、例えば、次のようにして作製できる。まず、正極と負極とをコイン外装缶よりも小さい円形に切断する。正極、絶縁層、及び負極を、この順番に積層した積層体を作製し、その状態でコイン外装缶内に収容し、非水電解質をコイン外装缶内に注液後、コイン外装缶を密封する。これにより、リチウムイオン二次電池が得られる。
ラミネート型のリチウムイオン二次電池は、例えば、次のようにして作製できる。まず、正極と負極とを角形に切断し、それぞれの電極にタブを溶接し、正負極端子を作製する。正極、絶縁層、及び負極をこの順番に積層した積層体を作製し、その状態でアルミニウム製のラミネートパック内に収容し、正負極端子をラミネートパックの外に出し密封する。次いで、非水電解質をラミネートパック内に注液し、ラミネートパックの開口部を密封する。これにより、リチウムイオン二次電池が得られる。
図1に示すように、リチウムイオン二次電池1は、ニッケルメッキが施されたスチール製で有底円筒状の電池容器6を有している。電池容器6には、帯状の正極板2及び負極板3がセパレータ4を介して断面渦巻状に捲回された電極群5が収容されている。電極群5は、正極板2及び負極板3がポリエチレン製多孔質シートのセパレータ4を介して断面渦巻状に捲回されている。セパレータ4は、例えば、幅が58mm、厚さが30μmに設定される。電極群5の上端面には、一端部を正極板2に固定されたアルミニウム製でリボン状の正極タブ端子が導出されている。正極タブ端子の他端部は、電極群5の上側に配置され正極外部端子となる円盤状の電池蓋の下面に超音波溶接で接合されている。一方、電極群5の下端面には、一端部を負極板3に固定された銅製でリボン状の負極タブ端子が導出されている。負極タブ端子の他端部は、電池容器6の内底部に抵抗溶接で接合されている。したがって、正極タブ端子及び負極タブ端子は、それぞれ電極群5の両端面の互いに反対側に導出されている。なお、電極群5の外周面全周には、図示を省略した絶縁被覆が施されている。電池蓋は、絶縁性の樹脂製ガスケットを介して電池容器6の上部にカシメ固定されている。このため、リチウムイオン二次電池1の内部は密封されている。また、電池容器6内には、図示しない非水電解液が注液されている。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、高い安全性を有し、しかも高出力であり、従来の非水電解質二次電池と同様の用途に好適に使用できる。特に、携帯電話、ノート型パソコン、携帯用情報端末、電子辞書、ゲーム機器等の各種携帯用電子機器類の電源として好適に使用できる。このような用途に利用する場合、充電時に万が一過充電状態になっても、発熱が抑制されるので、電池の高温化、膨れ等が防止される。また、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、電力貯蔵用、電気自動車、ハイブリット自動車等の輸送機器用などの用途にも応用可能である。
本開示における全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本開示中に参照により取り込まれる。
撹拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を装備した3リットルのセパラブルフラスコに、精製水1804gを仕込み、窒素ガス通気量200mL/分の条件下で、撹拌しながら74℃まで昇温した後、窒素ガスの通気を止めた。次いで、重合開始剤の過硫酸アンモニウム0.968gを精製水76gに溶かした水溶液を添加し、直ちに、ニトリル基含有単量体のアクリロニトリル183.8g、カルボキシ基含有単量体のアクリル酸9.7g(アクリロニトリル1モルに対して0.039モルの割合)、及び式(I)で表される単量体のメトキシトリエチレングリコールアクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名:NKエステルAM−30G)6.5g(アクリロニトリル1モルに対して0.0085モルの割合)の混合液を、反応系の温度を74℃±2℃に保ちながら、2時間かけて滴下した。続いて、懸濁した反応系に、過硫酸アンモニウム0.25gを精製水21.3gに溶かした水溶液を追加添加し、84℃まで昇温した後、反応系の温度を84℃±2℃に保ちながら、2.5時間反応を進めた。その後、1時間かけて40℃まで冷却した後、撹拌を止めて一晩室温(25℃)で放冷し、ニトリル基を有する樹脂が沈殿した反応液を得た。この反応液を吸引濾過し、回収した湿潤状態の沈殿を精製水1800gで3回洗浄した後、80℃で10時間真空乾燥して、ニトリル基を有する樹脂Aを得た。
撹拌機、温度計、及び冷却管を装着した1.0リットルのセパラブルフラスコ内に、窒素雰囲気下、ニトリル基含有単量体のアクリロニトリル(和光純薬工業(株)製)45.0g、式(II)で表される単量体のラウリルアクリレート(Aldrich社製)5.0g(アクリロニトリル1モルに対して0.0232モルの割合)、重合開始剤の過硫酸カリウム(和光純薬工業(株)製)1.175mg、連鎖移動剤のα−メチルスチレンダイマー(和光純薬工業(株)製)135mg、精製水(和光純薬工業(株)製)450mLを加えて反応液を調製した。反応液を激しく撹拌しながら、60℃で3時間反応を進めた後、80℃で3時間反応を進めた。室温(25℃)に冷却後、反応液を吸引濾過し、析出した樹脂を濾別した。濾別した樹脂を精製水(和光純薬工業(株)製)300mL及びアセトン(和光純薬工業(株)製)300mLで順に洗浄した。洗浄した樹脂を60℃、1torr(133Pa)の真空管乾燥機で24時間乾燥して、ニトリル基を有する樹脂Bを得た。
(1)バインダ樹脂組成物の調製
十分に乾燥させた1リットルのナス型フラスコに、ケミパールW310(水性ポリエチレン分散液、固形分濃度:40質量%、ポリエチレン粒子の平均粒径:9.5μm(三井化学(株)カタログ値)、ポリエチレン粒子の融点:132℃(三井化学(株)カタログ値)、三井化学(株)製)45gを仕込み、撹拌しながらN−メチル−2−ピロリドン(NMP)(有機溶媒、和光純薬工業(株)製、特級)108gを加え、更に5分間撹拌した。次いで、撹拌しながら、塩酸(酸性物質、0.5M HCl、和光純薬工業(株)製、容量分析用)9.0gを加え、更に5分間撹拌した後、エバポレータを用いて、分散液のポリエチレン粒子の濃度が17質量%になるまで減圧濃縮した。得られた分散液に、合成例1で得られた樹脂A(有機溶媒に可溶なポリマ)をN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液(樹脂Aの含有率:6質量%)67gを加えて5分間撹拌し、バインダ樹脂組成物(1)を得た。
LiMn2O4(正極活物質、三井金属鉱業(株)製)、アセチレンブラック(導電材、商品名:HS−100、平均粒径:48nm(電気化学工業(株)カタログ値)、電気化学工業(株)製)、及びバインダ樹脂組成物(1)を、固形分の質量比(正極活物質:導電材:樹脂A:ポリエチレン粒子)が90:4.5:1.0:4.5となるように混合し、N−メチル−2−ピロリドン(分散媒、和光純薬工業(株)製、特級)中に十分に分散させ、正極形成用組成物を調製した。この正極形成用組成物を厚さ17μmのアルミニウム箔(正極集電体、三菱アルミニウム(株))の片面に塗布し、60℃で5時間乾燥後、圧延して、厚さ75μm、塗布量200g/m2、密度2.55g/cm3の正極活物質層を形成し、正極Aを作製した。正極Aを160℃に設定した恒温槽で15分間加熱し、正極Bを得た。
非晶質炭素(負極活物質)、アセチレンブラック(導電材、商品名:HS−100、平均粒径:48nm(デンカ(株)カタログ値)、デンカ(株)製)、及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)溶液(結着材、固形分濃度:12質量%)を、固形分の質量比(負極活物質:導電材:結着材)が87.6:4.8:7.6となるように混合し、N−メチル−2−ピロリドン(分散媒、和光純薬工業(株)製、特級)中に十分に分散させ、負極形成用組成物を調製した。この負極形成用組成物を厚さ10μmの銅箔(負極集電体)の片面に塗布し、100℃で30分間乾燥後、圧延して、厚さ62μm、塗布量60g/m2、密度0.97g/cm3の負極活物質層を形成し、負極を作製した。
作製した正極A及び正極Bを、それぞれ直径14mmの円形に切断し、2種類の評価用正極を得た。作製した負極を直径16mmの円形に切断し、評価用負極を得た。ポリエチレン微多孔膜からなるセパレータ(商品名:ハイポア、旭化成イーマテリアルズ(株)製、直径19mmの円形に切断したもの)を介し、2種類の評価用正極のそれぞれと評価用負極とを活物質層が対向するよう重ね合わせた2種類の積層体を作製した。この2種類の積層体のそれぞれをコイン外装缶(東洋システム(株)製)に入れ、電解液(1MのLiPF6を含むエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート=3/7(体積比)の混合溶液)に対してビニレンカーボネートを0.5モル%添加したもの)を1mL添加後、コイン外装缶を密閉し、2種類の電極評価用電池を作製した。
ケミパールW310の代わりに、ケミパールW308(水性ポリエチレン分散液、固形分濃度:40質量%、ポリエチレン粒子の平均粒径:6.0μm(三井化学(株)カタログ値)、ポリエチレン粒子の融点:132℃(三井化学(株)カタログ値)、三井化学(株)製)を使用し、塩酸の添加量を10.8gとした以外は、実施例1と同様にしてバインダ樹脂組成物(2)を調製した。そして、バインダ樹脂組成物(1)の代わりにバインダ樹脂組成物(2)を使用した以外は、実施例1と同様にして2種類の電極評価用電池を作製した。
ケミパールW310の代わりに、ケミパールW300(水性ポリエチレン分散液、固形分濃度:40質量%、ポリエチレン粒子の平均粒径:3.0μm(三井化学(株)カタログ値)、ポリエチレン粒子の融点:132℃(三井化学(株)カタログ値)、三井化学(株)製)を使用し、塩酸の添加量を13.5gとした以外は、実施例1と同様にしてバインダ樹脂組成物(3)を調製した。そして、バインダ樹脂組成物(1)の代わりにバインダ樹脂組成物(3)を使用した以外は、実施例1と同様にして2種類の電極評価用電池を作製した。
ケミパールW310の代わりに、ケミパールW900(水性ポリエチレン分散液、固形分濃度:40質量%、ポリエチレン粒子の平均粒径:0.6μm(三井化学(株)カタログ値)、ポリエチレン粒子の融点:132℃(三井化学(株)カタログ値)、三井化学(株)製)を使用し、塩酸の添加量を21.6gとした以外は、実施例1と同様にしてバインダ樹脂組成物(4)を調製した。そして、バインダ樹脂組成物(1)の代わりにバインダ樹脂組成物(4)を使用した以外は、実施例1と同様にして2種類の電極評価用電池を作製した。
ケミパールW310の代わりに、ケミパールW4005(水性ポリエチレン分散液、固形分濃度:40質量%、ポリエチレン粒子の平均粒径:0.6μm(三井化学(株)カタログ値)、ポリエチレン粒子の融点:110℃(三井化学(株)カタログ値)、三井化学(株)製)を使用し、塩酸の添加量を21.6gとした以外は、実施例1と同様にしてバインダ樹脂組成物(5)を調製した。そして、バインダ樹脂組成物(1)の代わりにバインダ樹脂組成物(5)を使用した以外は、実施例1と同様にして2種類の電極評価用電池を作製した。
ケミパールW310の代わりに、ケミパールW410(水性ポリエチレン分散液、固形分濃度:40質量%、ポリエチレン粒子の平均粒径:9.5μm(三井化学(株)カタログ値)、ポリエチレン粒子の融点:110℃(三井化学(株)カタログ値)、三井化学(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてバインダ樹脂組成物(6)を調製した。そして、バインダ樹脂組成物(1)の代わりにバインダ樹脂組成物(6)を使用した以外は、実施例1と同様にして2種類の電極評価用電池を作製した。
ケミパールW310の代わりに、ケミパールW408(水性ポリエチレン分散液、固形分濃度:40質量%、ポリエチレン粒子の平均粒径:6.0μm(三井化学(株)カタログ値)、ポリエチレン粒子の融点:110℃(三井化学(株)カタログ値)、三井化学(株)製)を使用し、塩酸の添加量を10.8gとした以外は、実施例1と同様にしてバインダ樹脂組成物(7)を調製した。そして、バインダ樹脂組成物(1)の代わりにバインダ樹脂組成物(7)を使用した以外は、実施例1と同様にして2種類の電極評価用電池を作製した。
ケミパールW310の代わりに、ケミパールWP100(水性ポリエチレン分散液、固形分濃度:40質量%、ポリエチレン粒子の平均粒径:1.0μm(三井化学(株)カタログ値)、ポリエチレン粒子の融点:148℃(三井化学(株)カタログ値)、三井化学(株)製)を使用し、塩酸の添加量を20.7gとした以外は、実施例1と同様にしてバインダ樹脂組成物(8)を調製した。そして、バインダ樹脂組成物(1)の代わりにバインダ樹脂組成物(8)を使用した以外は、実施例1と同様にして2種類の電極評価用電池を作製した。
樹脂A(有機溶媒に可溶なポリマ)の代わりに樹脂B(有機溶媒に可溶なポリマ)を使用した以外は、実施例6と同様にしてバインダ樹脂組成物(9)を調製した。そして、バインダ樹脂組成物(1)の代わりにバインダ樹脂組成物(9)を使用した以外は、実施例1と同様にして2種類の電極評価用電池を作製した。
樹脂A(有機溶媒に可溶なポリマ)を含有する溶液の代わりにポリフッ化ビニリデン溶液(固形分:12質量%)を使用した以外は、実施例6と同様にしてバインダ樹脂組成物(10)を調製した。そして、バインダ樹脂組成物(1)の代わりにバインダ樹脂組成物(10)を使用した以外は、実施例1と同様にして2種類の電極評価用電池を作製した。
LiMn2O4(正極活物質、三井金属鉱業(株)製)、アセチレンブラック(導電材、商品名:HS−100、平均粒径:48nm(デンカ(株)カタログ値)、デンカ(株)製)、上記合成例1に記載の樹脂A、及び粉末状のポリエチレン粒子(ケミパールW410を乾燥して粉末状にしたもの)を、固形分の質量比(正極活物質:導電材:樹脂A:ポリエチレン粒子)が90.0:4.5:1.0:4.5となるように混合し、N−メチル−2−ピロリドン(分散媒、和光純薬工業(株)製、特級)中に十分に分散させた。次いで、撹拌しながら、固形分20gあたり、塩酸(酸性物質、0.5M HCl、和光純薬工業(株)製、容量分析用)を9g加え、正極形成用組成物を調製した。そして、この正極形成用組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして2種類の電極評価用電池を作製した。
十分に乾燥させた1リットルのナス型フラスコに、ケミパールW900(水性ポリエチレン分散液、固形分濃度:40質量%、ポリエチレン粒子の平均粒径:0.6μm(三井化学(株)カタログ値)、ポリエチレン粒子の融点:132℃(三井化学(株)カタログ値)、三井化学(株)製)45gを仕込み、撹拌しながらN−メチル−2−ピロリドン(有機溶媒、和光純薬工業(株)製、特級)108gを加え、更に5分間撹拌した後、エバポレータを用いて、分散液のポリエチレン粒子の濃度が17質量%になるまで減圧濃縮した。得られた分散液に、合成例1で得られた樹脂A(有機溶媒に可溶なポリマ)をN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液(樹脂Aの含有率:6質量%)67gを加えて5分間撹拌し、バインダ樹脂組成物(11)を得た。そして、バインダ樹脂組成物(1)の代わりにバインダ樹脂組成物(11)を使用した以外は、実施例1と同様にして2種類の電極評価用電池を作製した。
ケミパールW310の代わりに、ケミパールW4005(水性ポリエチレン分散液、固形分濃度:40質量%、ポリエチレン粒子の平均粒径:0.6μm(三井化学(株)カタログ値)、ポリエチレン粒子の融点:110℃(三井化学(株)カタログ値)、三井化学(株)製)を使用した以外は、比較例2と同様にしてバインダ樹脂組成物(12)を調製した。そして、バインダ樹脂組成物(1)の代わりにバインダ樹脂組成物(12)を使用した以外は、実施例1と同様にして2種類の電極評価用電池を作製した。
(1)分散性の評価
実施例1〜10及び比較例2〜3で得られたバインダ樹脂組成物を静置し、静置直後、24時間経過後、7日間経過後、14日間経過後、及び28日間経過後の分散状態を観察した。ポリエチレン粒子がバインダ樹脂組成物の全体に分散している状態をA、ポリエチレン粒子がバインダ樹脂組成物の上層に分離している状態をBとして評価した。なお、比較例1ではバインダ樹脂組成物を調製していないため、分散性の評価を行っていない。
実施例1〜10及び比較例1〜3で正極Aを使用した電極評価用電池を25℃に設定した恒温槽内に入れ、充放電装置(東洋システム(株)製、商品名:TOSCAT−3200)を用いて25℃で、以下の条件で充放電した。4.2V且つ0.5Cで定電流定電圧(CCCV)充電を行った後、0.5Cで2.7Vまで定電流(CC)放電を行い、放電容量を測定した。次いで、4.2V且つ0.5Cで定電流定電圧(CCCV)充電を行った後、3.0Cで2.7Vまで定電流(CC)放電を行い、下記の式から算出される値を放電レート特性とした。なお、放電電流値を示すCとは“電流値(A)/電池容量(Ah)”を意味する。
放電レート特性(%)=(3Cでの放電容量/0.5Cでの放電容量)×100
実施例1〜10及び比較例1〜3で正極Aを使用した電極評価用電池を25℃に設定した恒温槽内に入れ、25℃での直流抵抗(DCR)を測定し、これを初期抵抗とした。次に、実施例1〜10及び比較例1〜3で正極Bを使用した電極評価用電池を25℃に設定した恒温槽内に入れ、25℃での直流抵抗(DCR)を測定し、これを加熱後抵抗とした。初期抵抗及び加熱後抵抗から下記式に従って抵抗上昇率(%)を算出し、160℃でのPTC機能の指標とした。
抵抗上昇率(%)=(加熱後抵抗/初期抵抗)×100
なお、直流抵抗(DCR)は、下記の式より算出した。
また、酸性物質を含有しない比較例2〜3のバインダ樹脂組成物は、ポリエチレン粒子の分散性に劣り、静置後24時間又は7日間経過した時点で、ポリエチレン粒子がバインダ樹脂組成物の上層に分離した。このことから、比較例2〜3のバインダ樹脂組成物を用いた場合には、均一な電極活物質層を作製することが困難になると予想される。
Claims (11)
- ポリオレフィン粒子と、有機溶媒と、前記有機溶媒に可溶なポリマと、酸性物質とを含有し、前記ポリマが、ニトリル基を有する樹脂及びポリフッ化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、バインダ樹脂組成物。
- 前記ポリオレフィン粒子の平均粒径が0.1μm〜30μmである、請求項1に記載のバインダ樹脂組成物。
- 前記ポリオレフィン粒子の含有率が1質量%〜60質量%である、請求項1又は請求項2に記載のバインダ樹脂組成物。
- 前記有機溶媒がN−メチル−2−ピロリドンを含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のバインダ樹脂組成物。
- pHが1.0〜7.0である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のバインダ樹脂組成物。
- 水性ポリオレフィン粒子分散液に有機溶媒及び酸性物質を加えて混合液を調製する工程と、
前記混合液に脱水処理を施す工程と、
前記有機溶媒に可溶なポリマを脱水処理後の前記混合液に添加する工程と、
を有する、ポリオレフィン粒子と、有機溶媒と、前記有機溶媒に可溶なポリマと、酸性物質とを含有するバインダ樹脂組成物の製造方法。 - 電極活物質と、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のバインダ樹脂組成物とを含有するリチウムイオン二次電池電極形成用組成物。
- 電極活物質と、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のバインダ樹脂組成物と、を混合する、リチウムイオン二次電池電極形成用組成物の製造方法。
- 前記電極活物質が、正極活物質又は負極活物質である請求項8に記載のリチウムイオン二次電池電極形成用組成物の製造方法。
- 集電体と、請求項7に記載のリチウムイオン二次電池電極形成用組成物を用いて前記集電体上に形成される電極活物質層とを有するリチウムイオン二次電池用電極。
- 請求項10に記載のリチウムイオン二次電池用電極を備えるリチウムイオン二次電池。
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