JP6536181B2 - 原油槽用鋼、原油槽及び原油槽の防食方法 - Google Patents

原油槽用鋼、原油槽及び原油槽の防食方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6536181B2
JP6536181B2 JP2015111411A JP2015111411A JP6536181B2 JP 6536181 B2 JP6536181 B2 JP 6536181B2 JP 2015111411 A JP2015111411 A JP 2015111411A JP 2015111411 A JP2015111411 A JP 2015111411A JP 6536181 B2 JP6536181 B2 JP 6536181B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
crude oil
steel
oil tank
amount
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015111411A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016222983A (ja
Inventor
金子 道郎
道郎 金子
伊藤 実
実 伊藤
誠二 西村
誠二 西村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2015111411A priority Critical patent/JP6536181B2/ja
Publication of JP2016222983A publication Critical patent/JP2016222983A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6536181B2 publication Critical patent/JP6536181B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)

Description

本発明は、原油タンカーの油槽や、浮体式生産貯蔵積出設備(Floating Production, Storage and Offloading、FPSO)、地上又は地下に設置された原油タンクなど、原油の輸送又は貯蔵に使用される鋼製油槽に好適な原油槽用鋼、及び、当該原油槽用鋼を使用して構成された原油槽、更に原油槽の防食方法に関する。
タンカーのカーゴオイルタンクなどの原油槽の腐食形態は、大きくは2つの形態に分類される。一つは天板部で生じる全面腐食、もう一つは底板部で生じる局部腐食である。天板部の腐食速度は、速い場合で約0.3mm/年であるが、底板部の局部腐食の腐食速度は、数mm/年になる場合もある。
原油槽の腐食の進行に起因する油流出事故を防ぐため、2013年に発効された国際条約では、天板部と底板に防食塗装を施すこと、又は、耐食鋼を用いることが義務付けられている。しかし、防食塗装では、初期の施工費用に加えて、塗り替えなどのメンテナンスのコストが必要になるため、腐食を抑制できる耐食鋼の開発が望まれている。
このような実情から、原油槽に使用される種々の耐食鋼が提案されている(例えば、特許文献1〜4、参照)。特許文献1〜4には、Cuを必須成分として含む鋼が提案されている。
特開2000−017381号公報 特開2003−082435号公報 特開2004−204344号公報 特開2005−021981号公報
原油槽内での耐食鋼の耐全面腐食性と耐局部腐食性との両方を向上させるためには、Cuの添加が必要である。一方、Cuは、熱間圧延の加熱時に地鉄と酸化スケールとの界面に濃縮し、融解して割れや表面疵を生じる原因となり、耐食鋼の表面性状を損なうことがある。
本発明は、このような実状に鑑み、製造時の割れや表面疵の発生を抑制し、表面性状の劣化の防止が可能な、全面腐食や局部腐食に対する抵抗性に優れる原油槽用鋼、これを使用した原油槽、更に原油槽の防食方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決する方法について鋭意検討した。原油槽内での耐食鋼の耐全面腐食性及び耐局部腐食性の両方を向上させるためには、Cuを添加することが必要であるが、Cuは耐食鋼の表面の割れや疵の発生の原因となる。本発明者らは、Cuを含む耐食鋼の製造時の割れや表面疵の発生を抑制するための検討を行った。その結果、高温でのCuの融解に起因する割れや表面疵の発生を防止するには、結晶粒径の粗大化の抑制及びFe系酸化物の融点を低下させることが有効であるという知見を得た。
また、Tiを添加して高温で安定なTiNを生成させると、結晶粒の粗大化が抑制され、結晶粒界へのCuの融液の浸入が分散し、割れや表面疵の発生を軽減できることが判明した。更に、Nbを添加してFe系酸化物の融点を低下させると、Cuの融液がFe系酸化物に取り込まれて、結晶粒界へのCuの融液の浸入が抑制されるという知見を得た。
そして、Ti及びCuの添加について更に検討を行った結果、Ti/N>3.0、Nb/Cu≧0.010を満足することにより、Cuに起因する割れや表面疵の発生を軽減できることを見出した。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]質量%で、
C :0.001〜0.200%、
Si:0.01〜2.50%、
Mn:0.10〜1.45%、
Cu:0.10〜0.45%、
Ni:0.10〜0.60%、及び、
N :0.0010〜0.0100%
を含有し、更に、Ti、及び、Nbを、
Ti:0.035%以下、かつ、Ti/N>3.0、
Nb:0.020%以下、かつ、Nb/Cu≧0.010
を満たすように含有し、更に、
Mo:0.010〜1.000%、及び、
W :0.010〜1.000%
の少なくとも一方を含有し、
P :0.030%以下、
S :0.010%以下、及び、
Al:0.300%以下
に制限し、残部がFe及び不可避的不純物からなる
ことを特徴とする原油槽用鋼。
[2]更に、質量%で、
Cr:0.100%未満
に制限することを特徴とする上記[1]に記載の原油槽用鋼。
[3]更に、質量%で、
Sb:0.30%以下、及び、
Sn:0.30%以下
の少なくとも一方を含有することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の原油槽用鋼。
[4]更に、質量%で、
Co:3.00%以下、
V :0.500%以下、
Zr:0.500%以下、
Hf:0.500%以下、及び、
B :0.008%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]〜[3]の何れかに記載の原油槽用鋼。
[5]更に、質量%で、
Mg:0.010%以下、
Ca:0.010%以下、及び、
REM:0.010%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]〜[4]の何れかに記載の原油槽用鋼。
[6]表面にジンクリッチプライマー層、及び、塗膜の少なくとも一方を有することを特徴とする上記[1]〜[5]の何れかに記載の原油槽用鋼。
[7]原油槽において、底板、デッキプレート、ロンジ、側板及び骨材の一部又は全部が、上記[1]〜[5]の何れかに記載の原油槽用鋼からなることを特徴とする原油槽。
[8]原油槽において、底板、デッキプレート、ロンジ、側板及び骨材の一部又は全部が、上記[6]に記載の原油槽用鋼からなることを特徴とする原油槽。
[9]上記[7]に記載の原油槽の表面に、ジンクリッチプライマー、及び、塗膜の少なくとも一方を形成することを特徴とする原油槽の防食方法。
本発明によれば、全面腐食や局部腐食に対する抵抗性に優れる原油槽用鋼の製造時の割れや表面疵の発生を抑制し、表面性状の劣化を防止することができ、原油槽用鋼の歩留りの低下や、表面疵の手入れ等に伴う製造コストの上昇を抑えることができる。
次に、本発明の原油槽用鋼に至った検討の経緯について説明するとともに、本発明の原油槽用鋼について説明する。
本発明者らは、国際海事機関(International Maritime Organization、IMO)で定められた腐食評価試験方法に基づいて、種々の鋼の耐食性を評価する試験を行った。この試験方法は、10質量%のNaClを含むpH0.85、30℃の溶液に、20ml/cm2となるように試験片を浸漬し、24時間毎に溶液を交換して72時間後に腐食速度(mm/y)を評価する、というものである。その結果、0.1質量%以上のCuを含む鋼は、原油槽内の腐食環境中での耐食性が良好であることが確認された。
一方、鋼中に含まれるCu量が増加すると、熱間加工後の鋼材の表面に割れや疵が発生し、表面性状が劣化する。これは、Cuを含む鋼を加熱すると、表面が酸化する際に、Cuが酸化物を形成せず、スケールと地鉄との間に濃縮し、融解して鋼の結晶粒界に侵入することが主な原因である。
したがって、Cuに起因する割れや表面疵の発生を防止するためには、結晶粒径の粗大化を抑制して、Cuの融液が浸入する結晶粒界を増加させることが有効である。即ち、Cuの融液が浸入する箇所を分散させることにより、深さ方向への浸入が軽減されて、割れの発生を抑制することができる。
また、結晶粒径の粗大化を抑制するためには、Tiを添加して高温で安定なTiNを生成させることが有効であり、Nの原子数とほぼ同等のTiを確保することが好ましい。そして、本発明者らの検討の結果、質量%で表わされるTi及びNの含有量の比Ti/Nを3.0以上にすることにより、結晶粒の粗大化が抑制され、割れや表面疵の発生を軽減できることを知見した。
更に、Nbを添加するとFe系酸化物の融点が低下し、Cuの融液がFe系酸化物に取り込まれて、結晶粒界へのCuの融液の浸入が抑制される。このような効果を得るには、Cuの含有量に応じてNbを増加させることが好ましい。そして、本発明者らの検討の結果、Nb/Cu≧0.010を満足することにより、Cuに起因する割れや表面疵の発生を防止できることを見出した。
本発明は、以上のような検討過程を経て上記[1]に記載の発明に至ったものであり、そのような本発明について、必要な要件や好ましい要件について順次説明する。
まず、本発明の原油槽用鋼の成分について説明する。なお、成分の「%」は「質量%」を意味する。
(C:0.001〜0.200%)
Cは、鋼の強度を上昇させるのに有効な元素であるが、0.200%を超えて過剰に含有させると、溶接性や継手靭性の劣化等が生じるため、C量の上限を0.200%とする。好ましくはC量を0.180%以下とし、より好ましくは0.150%以下とする。一方、C量を0.001%未満にするとコストが上昇するため、0.001%以上とする。Cを強化元素として用いる場合、C量は0.010%以上が好ましい。より好ましくはC量を0.030%以上、更に好ましくは0.050%以上とする。
(Si:0.01〜2.50%)
Siは、脱酸元素であり、効果を得るためにSi量を0.01%以上とする。好ましくはSi量を0.05%以上とする。また、Siは耐全面腐食性の向上に有効であり、また、局部腐食性も向上させる元素であり、0.10%以上を含有させることが好ましい。一方、Siを過度に含有させると、スケールの剥離性が低下し、表面疵が発生することがあるため、Si量を2.50%以下とする。溶接性や母材及び継手靭性が要求される場合は、Si量を0.50%以下とすることが好ましい。Si量は、より好ましくは0.40%以下、更に好ましくは0.30%以下とする。
(Mn:0.10〜1.45%)
Mnは、鋼の強度を高める元素であり、0.10%以上を添加する。好ましくは0.50%以上、より好ましくは0.70%以上とする。しかし、1.45%を超えてMnを添加すると、MnSが局部腐食の起点となり、耐食性が低下するため、Mn量を1.45%以下とする。好ましくはMn量を1.20%以下、より好ましくは1.10%以下、更に好ましくは1.00%以下とする。
(Cu:0.10〜0.45%)
Cuは、原油槽内での耐全面腐食性及び耐局部腐食性を向上させる重要な元素である。本発明の原油槽用鋼では、効果を得るために、Cu量を0.10%以上とする。一方、Cuを過剰に含有すると、鋼材の表面の割れや疵の発生を抑制することが困難になるため、Cu量を0.45%以下とする。好ましくはCu量を0.40%以下とする。
(Ni:0.10〜0.60%)
Niは、鋼の靭性を高め、耐食性の向上にも有効な元素であり、含有量を0.10%以上とする。一方、Niは高価な元素であり、0.60%以下とする。好ましくはNi量を0.50%以下、より好ましくは0.40%以下とする。
(Mo:0.010〜1.000%、W:0.010〜1.000%)
Mo、Wは、一方又は両方を添加することにより、原油槽内での耐全面腐食性及び耐局部腐食性を向上させる元素である。本発明の原油槽用鋼では、効果を得るために、Mo、Wの含有量を何れも0.010%以上とする。一方、Mo、Wを過剰に含有させても効果が飽和するため、Mo、Wの含有量を何れも1.000%以下とする。好ましくは、Mo、Wの含有量を何れも0.500%以下とする。
(Ti:0.035%以下、かつ、Ti/N>3.0)
Tiは、TiNを形成し、結晶粒径の粗大化を抑制し、Cuに起因する割れや表面疵の発生の防止に寄与する重要な元素である。効果を得るには、Nの含有量に対するTiの含有量(Ti/N)が3.0超となるように添加することが必要である。好ましくはTi/N≧3.4を満足するように添加する。一方、Tiを過剰に添加すると靱性が低下するため、0.035%以下とする。好ましくはTi量を0.025%以下、より好ましくは0.020%以下、更に好ましくは0.015%以下とする。Ti/Nの上限は、Tiの含有量の上限値及びNの含有量の下限値から定まるが、好ましくはTi/Nの上限は20、より好ましくは10、更に好ましくは5.0である。
(Nb:0.020%以下、かつ、Nb/Cu≧0.010)
Nbは、Fe系酸化物の融点を低下させ、Cuの融液を取り込んで、Cuに起因する割れや表面疵の発生の防止に寄与する重要な元素である。効果を得るには、Cuの含有量に対して、Nb/Cuが0.010以上になるように添加することが必要である。好ましくはNb/Cu≧0.013、更に好ましくはNb/Cu≧0.015を満足するように添加する。一方、Nbを過剰に添加すると靱性が低下するため、0.020%以下とする。好ましくはNb量を0.015%以下とする。Nb/Cuの上限は、Nbの含有量の上限値及びCuの含有量の下限値から定まるが、好ましくはNb/Cuの上限は0.18、より好ましくは0.10、更に好ましくは0.070、より一層好ましくは0.045である。
(N:0.0010〜0.0100%)
Nは、TiNを形成する元素であり、結晶粒径の粗大化を抑制するために、N量を0.0010%以上とする。一方、N量が過剰になると、靱性や溶接性が劣化するため、0.0100%以下とする。好ましくはN量を0.0080%以下、より好ましくは0.0060%以下とする。
(P:0.030%以下)
Pは、不純物元素であり、含有量が0.030%を超えると、局部腐食の進展速度が加速され、溶接性が劣化するため、P量を0.030%以下とする。また、Pは、鋼の母材や溶接部の靭性を劣化させるため、好ましくはP量を0.015%以下とし、より好ましくは0.005%以下とする。P量の下限は0%でもよいが、製造コストの観点から、0.001%であってもよい。
(S:0.010%以下)
Sは、MnSを形成する元素であり、過剰に含有すると耐食性を低下させるため、S量を0.010%以下とする。好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.002%以下とする。S量の下限は0%でもよいが、製造コストの観点から、0.0001%であってもよい。
(Al:0.300%以下)
Alは、脱酸元素であるが、Si等、Al以外の脱酸元素を用いることも可能であり、下限は0%でもよい。一方、Alを過剰に添加すると粗大な酸化物を形成し、靭性を劣化させるため、Al量を0.300%以下に制限する。好ましくはAl量を0.100%以下、より好ましくは0.050%以下とする。Alは強力な脱酸元素であり、Al量は0.001%以上が好ましい。
本発明の原油槽用鋼は、上述した成分を基本成分(必須元素)とし、残部がFe及び不可避的不純物よりなるものとして、必要に応じて、Cr、Sb、Sn、V、Zr、Hf、B、Mg、Ca、及び、REMの1種又は2種以上を選択元素として含有させることができる。
(Cr:0.100%未満)
Crは、鋼の強度を向上させる元素であり、必要に応じて添加してもよい。しかし、原油槽内の腐食環境では、Crは耐食性を劣化させる元素であり、Cr量を0.100%未満に制限することが好ましい。より好ましくはCr量を0.050%以下、更に好ましくは0.020%以下に制限する。
(Sb:0.30%以下、Sn:0.30%以下)
Sb、Snは、耐食性を向上させる元素であり、一方又は両方を含有させることができる。Sb量、Sn量は、それぞれ、0.01%以上が好ましい。一方、Sb、Snは、過剰に含有すると製造性を損なう恐れがあり、Sb量、Sn量は、それぞれ、0.30%以下が好ましい。
(Co:3.00%以下)
Coは、鋼の靭性を高め、耐食性の向上にも有効な元素であり、0.01%以上を含有させてもよい。一方、Coは高価な元素であり、3.00%以下とすることが好ましい。好ましくはCo量を1.00%以下、より好ましくは0.50%以下とする。
(V:0.500%以下、Zr:0.500%以下、Hf:0.500%以下)
V、Zr、Hfは、鋼の強度を向上させる元素であり、必要に応じて添加してもよい。V量、Zr量、Hf量は、それぞれ、0.010%以上が好ましい。一方、V、Zr、Hfは、過剰に含有すると靭性を低下させる恐れがある。V量、Zr量、Hf量は、それぞれ、0.500%以下が好ましく、より好ましくは0.1%以下、更に好ましくは0.050%以下とする。
(B:0.008%以下)
Bは、微量の添加で鋼の強度を顕著に向上させる元素であり、0.0003%以上を含有させてもよい。一方、Bを過剰に添加すると靭性が低下することがあるため、B量は0.008%以下が好ましい。より好ましくはB量を0.005%以下とする。
(Mg:0.010%以下、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下)
Mg、Ca、REMは、介在物の形態の制御に有効な元素であり、製造性や靭性を向上させるために、それぞれ、0.0001%以上を含有させることができる。Mg量、Ca量、REM量は、それぞれ、0.0010%以上がより好ましい。一方、Mg、Ca、REMは、過剰に含有すると靭性を低下させる恐れがある。Mg量、Ca量、REM量は、それぞれ、0.010%以下が好ましく、より好ましくは0.005%以下とする。
次に、本発明の原油槽用鋼の表面に設けるジンクリッチプライマー層、及び、塗膜について説明する。
(ジンクリッチプライマー層)
本発明の原油槽用鋼は、表面にジンクリッチプライマー層を設けてもよい。ジンクリッチプライマー層は、ジンクリッチプライマーを塗布し、乾燥させて形成される皮膜である。ジンクリッチプライマー層に含まれる亜鉛(金属亜鉛又は亜鉛合金)は、耐食鋼材の犠牲防食に寄与する。ジンクリッチプライマー層に含まれる亜鉛は粉末状(亜鉛末と呼ばれることがある)である。ジンクリッチプライマーは、防食性能に優れる無機ジンクリッチプライマーが好ましい。
ジンクリッチプライマー層は、厚みが5μm未満では防食効果が早期に失われることが懸念されるため、5μm以上が好ましい。より好ましくは10μm以上とする。一方、ジンクリッチプライマー層の厚みは、100μmを超えると、割れやダレを生じ易くなるため、100μm以下が好ましい。ジンクリッチプライマー層の厚みは80μm以下がより好ましく、更に好ましくは50μm以下とする。また、厚いジンクリチプライマー層を形成する場合は、2回塗りするなど多層塗りを行ってもよい。
(塗膜)
また、本発明の原油槽用鋼の地鉄又はジンクリッチプライマー層の表面に塗膜を設けてもよい。塗膜は、例えば、エポキシ系樹脂層又はシリコン系樹脂層であってもよい。塗膜の厚みは、20μm未満では早期に塗膜が破損又は剥離して効果が失われる場合があり、20μm以上とすることが好ましい。一方、塗膜の厚みは、400μmを超えると効果が飽和し、経済性に不利になる場合があり、400μm以下が好ましい。塗膜の厚みは100μm以下がより好ましく、75μm以下が更に好ましい。また、厚みは同じでも、2回塗りするなど多層塗りすることが好ましい。
なお、ジンクリッチプライマー層、及び、塗膜は、必ずしも耐食鋼材の全面に形成する必要はなく、腐食環境に曝される面としての鋼材の片面(鋼管であれば外面又は内面)だけ、すなわち鋼材表面の少なくとも一部を防食処理するだけでもよい。
ジンクリッチプライマー層の形成方法については、特に限定されるものではない。例えば、鋼材にジンクリッチプライマーを刷毛又はスプレーにて塗布することによって、鋼材表面にジンクリッチプライマー層を形成することができる。ジンクリッチプライマーを塗布又はスプレーする前に、ショットブラストやサンドブラストにより、鋼材表面の錆落としをしておくことが、密着性の点で好ましい。ブラスト処理を施す場合は、ISO 8501−1に示すSa2・1/2以上とすることが好ましい。また、ブラスト処理された鋼材表面にジンクリッチプライマーをスプレーする場合、エアレススプレーによりスプレーすることが、作業効率の点で好ましい。
塗膜の施工方法も特に限定されるものではない。例えば、原油槽用鋼の表面又はジンクリッチプライマー層の表面に、刷毛、エアレス又はエアスプレー等により、乾燥塗膜の厚さが所望の厚みになるよう、塗料を塗装し、常温で硬化させて仕上げればよい。
次に、本発明の原油槽用鋼の形状及び使用態様について説明する。
本発明の原油槽用鋼の形状としては、鋼板、鋼帯、形鋼、鋼管、棒鋼、鋼線等がある。また、本発明の原油槽用鋼を用いて、溶接構造や鋼構造物を構築することができる。原油槽用鋼の厚さは特に限定されないが、通常3〜50mmである。好ましい下限は6mm、より好ましくは10mmであり、好ましい上限は40mm、より好ましくは30mmである。また、本発明の原油槽用鋼は、通常の一般的な製鉄工程を経て製造され、本発明の原油槽用鋼には、製鉄工程で表面に形成された酸化物の皮膜(スケール)をそのまま有するもの、スケールが機械的又は化学的に除去されたものも含まれる。
本発明の原油槽用鋼を、原油槽の底板、デッキプレート、ロンジ、側板及び骨材の一部又は全部に用いることが好ましい。原油槽の底板、デッキプレート、ロンジ、側板及び骨材の一部又は全部に本発明の原油槽用鋼を用いることによって、局部腐食や全面腐食の腐食速度を低減し、原油槽の補修頻度の低減、安全性の向上が図られる。
次に、本発明の原油槽用鋼の製造方法について説明する。
本発明の原油槽用鋼は、常法で製造することができる。例えば、上述した各種成分を加えた溶鋼を転炉、電気炉等の公知の方法で溶製し、連続鋳造法、造塊法等の公知の方法でスラブやビレット等の鋼素材とし、熱間圧延に供する。なお、溶鋼に、取鍋精錬や真空脱ガス等の処理を施してもよい。鋳造や造塊後の鋼素材をそのまま熱間圧延してもよい。熱間圧延後に熱処理や冷間加工を施すことができる。
熱間圧延では、鋼素材を、1050〜1250℃の温度に加熱し、圧延機への負荷を軽減するため、700℃以上で仕上圧延を終了することが好ましい。熱間圧延後、加速冷却を施すか、放冷した後、焼ならし又は焼入れ、焼戻しなどの熱処理を施してもよい。
タンカーの原油槽には、通常、引張強さが400〜650MPaの鋼板が用いられている。このような強度の鋼板の製造方法は、ロイド船級協会(Lloyd's Register of Shipping、略号LR)、アメリカ船級協会(American Bureau of Shipping、略号ABS)、日本海事協会(Nippon Kaiji Kyokai、略号NK)などの各船級協会の規則に定められているように、圧延まま、熱加工制御(Thermo-Mechanical Control Process、TMCP)又は焼ならし熱処理(Normalizing)によるものが一般的である。
タンカーの原油槽には、焼入れ又は焼入れ焼き戻し処理された鋼板はほとんど用いられていない。このため、本発明の原油槽用鋼は、圧延まま、TMCP又は焼きならしにより製造された鋼板であってもよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1及び表2(表1の続き)に示した成分組成を有する鋼を真空溶解炉又は転炉で溶製して、鋳塊又は鋼スラブとし、加熱後、熱間圧延して鋼板とし、製造時の割れの発生の有無を確認した。得られた鋼板の板厚を測定し、引張試験及び腐食試験を行った。
引張試験はJIS Z 2241に準拠して室温で行い、降伏強さ、引張強さを測定した。鋼板から試験片を採取し、10質量%のNaClを含むpH0.85、30℃の溶液に、20ml/cm2となるように浸漬し、24時間毎に溶液を交換して72時間後に腐食速度を評価し、1mm/y以下を合格とした。
結果を表3及び表4(表3の続き)に示す。「製造時の割れ発生」に、鋼板を製造する際に割れが発生したものを「有り」、割れが発生しなかったものを「無し」として示した。「腐食試験結果」の「○」は腐食速度が1mm/y以下、「×」は腐食速度が1mm/y超であることを示している。
表3及び表4(表3の続き)に示すように、発明例No.1〜56の鋼は、製造時に割れが発生せず、良好な耐食性を有していることがわかる。一方、比較例No.101はTi/Nが小さく、比較例No.102はNb/Cuが小さいため、何れも製造時に割れが発生した。Cu量が多い比較例No.103も製造時に割れが発生した。Cuを含まない比較例104は耐食性が劣化している。
Figure 0006536181
Figure 0006536181
Figure 0006536181
Figure 0006536181
本発明によれば、全面腐食や局部腐食に対する抵抗性に優れる原油槽用鋼の製造時の割れや表面疵の発生を抑制し、表面性状の劣化を防止することができ、原油槽用鋼の歩留りの低下や、表面疵の手入れ等に伴う製造コストの上昇を抑えることができる。したがって、本発明は産業上の貢献が極めて顕著なものである。

Claims (9)

  1. 質量%で、
    C :0.001〜0.200%、
    Si:0.01〜2.50%、
    Mn:0.10〜1.45%、
    Cu:0.10〜0.45%、
    Ni:0.10〜0.60%、及び、
    N :0.0010〜0.0100%
    を含有し、更に、Ti、及び、Nbを、
    Ti:0.035%以下、かつ、Ti/N>3.0、
    Nb:0.020%以下、かつ、Nb/Cu≧0.010
    を満たすように含有し、更に、
    Mo:0.010〜1.000%、及び、
    W :0.010〜1.000%
    の少なくとも一方を含有し、
    P :0.030%以下、
    S :0.010%以下、及び、
    Al:0.300%以下
    に制限し、残部がFe及び不可避的不純物からなる
    ことを特徴とする原油槽用鋼。
  2. 更に、質量%で、
    Cr:0.100%未満
    に制限することを特徴とする請求項1に記載の原油槽用鋼。
  3. 更に、質量%で、
    Sb:0.30%以下、及び、
    Sn:0.30%以下
    の少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の原油槽用鋼。
  4. 更に、質量%で、
    Co:3.00%以下、
    V :0.500%以下、
    Zr:0.500%以下、
    Hf:0.500%以下、及び、
    B :0.008%以下
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の原油槽用鋼。
  5. 更に、質量%で、
    Mg:0.010%以下、及び、
    REM:0.010%以下
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の原油槽用鋼。
  6. 表面にジンクリッチプライマー層、及び、塗膜の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の原油槽用鋼。
  7. 原油槽において、底板、デッキプレート、ロンジ、側板及び骨材の一部又は全部が、請求項1〜5の何れか1項に記載の原油槽用鋼からなることを特徴とする原油槽。
  8. 原油槽において、底板、デッキプレート、ロンジ、側板及び骨材の一部又は全部が、請求項6に記載の原油槽用鋼からなることを特徴とする原油槽。
  9. 請求項7に記載の原油槽の表面に、ジンクリッチプライマー、及び、塗膜の少なくとも一方を形成することを特徴とする原油槽の防食方法。
JP2015111411A 2015-06-01 2015-06-01 原油槽用鋼、原油槽及び原油槽の防食方法 Active JP6536181B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015111411A JP6536181B2 (ja) 2015-06-01 2015-06-01 原油槽用鋼、原油槽及び原油槽の防食方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015111411A JP6536181B2 (ja) 2015-06-01 2015-06-01 原油槽用鋼、原油槽及び原油槽の防食方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016222983A JP2016222983A (ja) 2016-12-28
JP6536181B2 true JP6536181B2 (ja) 2019-07-03

Family

ID=57747360

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015111411A Active JP6536181B2 (ja) 2015-06-01 2015-06-01 原油槽用鋼、原油槽及び原油槽の防食方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6536181B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109881099A (zh) * 2019-03-18 2019-06-14 新疆八一钢铁股份有限公司 一种高强度结构钢的低成本生产方法
JP7192824B2 (ja) * 2020-03-31 2022-12-20 Jfeスチール株式会社 耐火性および塗装耐食性に優れた構造用鋼材および構造物

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5272739B2 (ja) * 2002-06-19 2013-08-28 新日鐵住金株式会社 原油油槽用鋼およびその製造方法、原油油槽およびその防食方法
JP4267367B2 (ja) * 2002-06-19 2009-05-27 新日本製鐵株式会社 原油油槽用鋼およびその製造方法、原油油槽およびその防食方法
JP4189206B2 (ja) * 2002-11-15 2008-12-03 新日本製鐵株式会社 溶接熱影響部靭性に優れた原油油槽用鋼
JP2013227610A (ja) * 2012-04-25 2013-11-07 Jfe Steel Corp 石炭船または石炭・鉱石兼用船ホールド用の耐食鋼
JP6165088B2 (ja) * 2013-03-29 2017-07-19 株式会社神戸製鋼所 耐水素誘起割れ性と溶接熱影響部の靭性に優れた鋼板およびラインパイプ用鋼管
JP2015157969A (ja) * 2014-02-21 2015-09-03 Jfeスチール株式会社 石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド用の耐食鋼

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016222983A (ja) 2016-12-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
TWI391499B (zh) 船舶用熱軋型鋼及其製造方法
JP5119595B2 (ja) 造船用耐食鋼
JP4687531B2 (ja) 原油タンク用鋼およびその製造方法
JP5617191B2 (ja) 耐塗膜膨れ性に優れた船舶用鋼材
JP4525687B2 (ja) 船舶用耐食鋼材
JP5453835B2 (ja) 船舶用耐食鋼材
JP5481980B2 (ja) 耐塗膜膨れ性に優れた船舶用鋼材
JP5375246B2 (ja) 原油タンク用耐食形鋼材とその製造方法
JP5958102B2 (ja) 耐食性に優れる船舶バラストタンク用耐食鋼材およびその製造方法
TWI636142B (zh) Steel and ship for ship ballast tanks
JP5526667B2 (ja) 耐食性に優れる船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼およびその製造方法
JP5365187B2 (ja) 耐食性に優れる船舶用形鋼の製造方法
JP6772942B2 (ja) バラストタンク用耐食鋼材
JP2010229526A (ja) 高耐食性塗装鋼材
JP6536181B2 (ja) 原油槽用鋼、原油槽及び原油槽の防食方法
JP6079074B2 (ja) 地上石油タンク用塗装耐食鋼材
JP5862166B2 (ja) 船舶艤装用耐食鋼材
JP5413392B2 (ja) 造船用耐食鋼
JP6287791B2 (ja) 石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド内底板用の耐食鋼
JP2011094184A (ja) 高耐食性塗装鋼材
JP2011162849A (ja) ジンクプライマー塗布耐食鋼材
JP6736255B2 (ja) バラストタンク用耐食鋼材
JP6906335B2 (ja) 鋼材およびその製造方法
JP2023013973A (ja) 厚鋼板、厚鋼板の製造方法、および構造物
JP2012188737A (ja) 船舶艤装用耐食鋼材

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180205

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20181030

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181225

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20190122

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190314

A911 Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20190326

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190507

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190520

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6536181

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151