JP6535596B2 - 接触用部品、および該接触用部品を含む構造体 - Google Patents
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Description
これらの軋み音は、自動車室内やオフィス内、住宅室内の快適性や静粛性を損ねる大きな原因となっており、軋み音の低減が強く要求されている。
1.ビニル系グラフト重合体(A)、ビニル系非グラフト重合体(B)および艶消し剤(C)を含む熱可塑性樹脂組成物(X)の成形体からなり、
前記ビニル系グラフト重合体(A)がエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体(a1)を含有し、
艶消し剤(C)の含有量が、ビニル系グラフト重合体(A)、ビニル系非グラフト重合体(B)および艶消し剤(C)の合計を100質量%として、1〜30質量%であり、そして
艶消し剤(C)が、ジエン系ゴム変性共重合樹脂を含むことを特徴とする接触用部品。
2.ビニル系グラフト重合体(A)の含有量が、ビニル系グラフト重合体(A)、ビニル系非グラフト重合体(B)および艶消し剤(C)の合計を100質量%として、1〜40質量%であることを特徴とする上記1に記載の接触用部品。
3.ビニル系グラフト重合体(A)の融点(JIS K 7121−1987に準拠して測定)が、0〜100℃に存在することを特徴とする上記1または2に記載の接触用部品。
4.ビニル系グラフト重合体(A)が、融点(JIS K 7121−1987に準拠して測定)が0〜100℃に存在するエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体(a1)を含有することを特徴とする上記1乃至3の何れかに記載の接触用部品。
5.ビニル系グラフト重合体(A)が、更にジエン系ゴム質重合体(a2)を含有することを特徴とする上記1乃至4の何れかに記載の接触用部品。
6.ビニル系重合体(A)及び/又はビニル系非グラフト重合体(B)が、α,β−不飽和グリシジルエステル化合物に由来する構造単位を含有し、該構造単位の含有量がビニル系グラフト重合体(A)、ビニル系非グラフト重合体(B)および艶消し剤(C)の合計100質量%に対して、0.01〜5質量%であることを特徴とする上記1乃至5の何れかに記載の接触用部品。
7.艶消し剤(C)が、アクリロニトリルとスチレンまたはα−メチルスチレンとの共重合体樹脂(c1)及び不飽和ニトリル−共役ジエン系共重合体ゴムを含む成分(c2)を含有しかつ該共重合体ゴムが架橋されてなる樹脂組成物(C2)の形態で、ジエン系ゴム変性共重合樹脂を含有することを特徴とする上記1乃至6の何れかに記載の接触用部品。
8.更に、ポリカーボネート樹脂(D)を含有することを特徴とする上記1乃至7のいずれかに記載の接触用部品。
9.ポリカーボネート樹脂(D)の含有量が、ビニル系グラフト重合体(A)、ビニル系非グラフト重合体(B)および艶消し剤(C)の合計100質量%に対して、30〜400質量%であることを特徴とする上記8に記載の接触用部品。
10.ジグラ(ZIEGLER)社のスティックスリップ測定装置SSP−02を使用して測定した異音リスク指数が、以下の測定条件において3以下であることを特徴とする上記1乃至9の何れかに記載の接触用部品。
測定条件:
縦60mm、横100mm、厚さ4mmの大試験片、及び、縦50mm、横25mm、厚さ4mmの小試験片を用意し、温度23℃、湿度50%R.H.、荷重40N、速度10mm/秒、振幅20mmの条件下で、これら大小2枚の試験片を3回擦り合わせる時の異音リスク指数を測定。
11.少なくとも2個の互いに接触する部品を含み、前記部品の少なくとも1つが上記1乃至10の何れかに記載の接触用部品であることを特徴とする構造体。
12.車両内装用機器であることを特徴とする上記11に記載の構造体。
13.計器であることを特徴とする上記11に記載の構造体。
14.上記1乃至10の何れかに記載の接触用部品を用いることを特徴とする軋み音の低減方法。
15.上記11乃至13の何れかに記載の構造体を用いることを特徴とする軋み音の低減方法。
また、本発明によれば、上記接触用部品や構造体を用いることにより、軋み音を低減する方法が提供される。
また、「(メタ)アクリル」とはアクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
1.ビニル系グラフト重合体(A)およびビニル系非グラフト重合体(B)(以下、「成分(A)」、「成分(B)」ともいう。):
本発明のビニル系グラフト重合体(A)は、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体(a1)と、芳香族ビニル系化合物に由来する構造単位を含むビニル系グラフト重合体(A1)と、必要に応じ、更にジエン系グラフト重合体(a2)と、芳香族系化合物に由来する構造単位を含むビニル系グラフト重合体(A2)を含有する。
ビニル系グラフト重合体(A1)は、通常、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体(a1)を含有するゴム質重合体部と、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む重合体部(グラフト部)を含有し、重合体部はゴム質重合体部にグラフト結合した組成物である。グラフト部を構成する重合体部は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の他に、芳香族ビニル化合物と共重合可能な、他のビニル系化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。重合体部がゴム質重合体部にグラフト結合していることは、後述するグラフト率の測定や、公知のオゾノリシス法、電子顕微鏡を用いたモルフォロジーの観察等により明らかにすることができる。
上記ビニル系グラフト重合体(A1)は、代表的にはエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体(a1)の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b1)をグラフト重合したゴム強化芳香族ビニル樹脂(P1)を製造することにより、得ることができる。(a1)成分と(b1)成分の質量比は、上記成分(P1)の生産性と、得られる成形品の耐衝撃性、外観等の観点から、通常5〜80:95〜20、好ましくは10〜75:90〜25である。
上記ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(P1)は、通常、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体(a1)にビニル系単量体(b1)に由来する構造単位を含む重合体がグラフト重合したビニル系グラフト重合体(A1)と、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体(a1)にグラフトしていないビニル系単量体(b1)に由来する構造単位を含む重合体からなるフリーの重合体(B1)を含む組成物であるが、場合により、該重合体がグラフトしていないエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体(a1)をさらに含むこともある。
上記ビニル系グラフト重合体(A2)は、代表的にはジエン系ゴム質重合体(a2)の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b2)をグラフト重合したゴム強化芳香族ビニル樹脂(P2)を製造することにより、得ることができる。(a2)成分と(b2)成分の質量比は、 上記成分(P2)の生産性と、得られる成形品の耐衝撃性、外観等の観点から、通常5〜80:95〜20、好ましくは10〜75:90〜25である。
上記ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(P2)は、通常、ジエン系ゴム質重合体(a2)にビニル系単量体(b2)に由来する構造単位を含む重合体がグラフト重合したビニル系グラフト重合体(A2)と、ジエン系ゴム質重合体(a2)にグラフトしていないビニル系単量体(b2)に由来する構造単位を含む重合体からなるフリーの重合体(B2)を含む組成物であるが、場合により、該重合体がグラフトしていないジエン系ゴム質重合体(a2)をさらに含むこともある。
本発明のビニル系非グラフト重合体(B)は、代表的には、ゴム質重合体の非存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b3)を重合することで製造される重合体(B3)である。尚、上記ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(P1)に含まれるフリーの重合体(B1)、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(P2)に含まれるフリーの重合体(B2)は、ビニル系非グラフト重合体(B)に含まれる。
グラフト率(質量%)=((S−T)/T)×100 (1)
上記式中、Sはゴム強化芳香族ビニル系樹脂(P1)又は(P2)1グラムをアセトン20mlに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tは成分(P1)又は(P2)1グラムに含まれるゴム質重合体(a)の質量(g)である。このゴム質重合体(a)の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトル(IR)、熱分解ガスクロマトグラフィー、CHN元素分析等により求める方法等により得ることができる。
上記成分(B3)は、1種単独の化合物であっても、2種以上の化合物を混合したものであってもよい。
本発明で使用する艶消し剤(C)としては、粉体、粒状、不定形状、マイクロバルーン状、繊維状、ウィスカ状または微粒子状の、無機および有機の艶消し剤が挙げられる。例えば、粉体、粒状または不定形状のものとしては、炭酸カルシウム、タルク、ケイ酸、ケイ酸塩、アスベスト、マイカ等が、マイクロバルーン状のものとしては、ガラスバルーン、フェノール樹脂バルーン等が、繊維状のものとしては、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維、炭素繊維等が、ウィスカ状のものとしては、セラミックウィスカ、チタンウィスカ等が、および、微粒子状のものとしては、プラスチック微粒子、例えばポリエチレンおよび/またはポリプロピレン等のポリオレフィン微粒子等が挙げられる。
共重合体ゴムを含む成分(c2)としては、不飽和ニトリル−共役ジエン系共重合体ゴムに更に、架橋剤により架橋可能なその他のゴムを含有してもよく、その含有量は適宜選択して決定すればよいが、(c2)において不飽和ニトリル−共役ジエン系共重合体ゴム10〜100質量%に対して、その他のゴムは0〜90質量%である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)は、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(P)を構成する、ビニル系グラフト重合体(A)とビニル系非グラフト重合体(B)および艶消し剤(C)を混合し、溶融混練することにより得られる。
ビニル系グラフト重合体(A)の含有量は、軋み音低減性の観点から、ビニル系グラフト重合体(A)、ビニル系非グラフト重合体(B)および艶消し剤(C)の合計を100質量%として、1〜40質量%が好ましく、より好ましくは2〜35質量%、更に好ましくは3〜30質量%である。
艶消し剤(C)の含有量は、艶消し性の観点から、ビニル系グラフト重合体(A)、ビニル系非グラフト重合体(B)および艶消し剤(C)の合計を100質量%として、1〜30質量%が好ましく、より好ましくは1〜20質量%、更に好ましくは1〜10質量%である。
尚、ビニル系非グラフト重合体(B)の含有量は、上記ビニル系グラフト重合体(A)と艶消し剤(C)の含有量から導き出すことができる残量である。
また、(A)成分及び/又は(B)成分が、α,β−不飽和グリシジルエステル化合物に由来する構造単位を含む場合は、艶消し性の観点から、該構造単位の含有量は、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量%に対して、通常0.01〜5質量%、好ましくは0.02〜3質量%、より好ましくは0.1〜2質量%はである。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)は、必要に応じて、他の樹脂、本発明の成分(A)、(B)及び(C)以外のスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリカーボネート樹脂等を、本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。これらの中では、特にポリカーボネート樹脂が耐衝撃性の観点から好ましい。ポリカーボネート樹脂(D)の含有量は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量%に対して、通常、30〜400質量%、好ましくは60〜300質量%、より好ましくは75〜250質量%である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)で成形された成形体は、2つの部材が接触する接触用部品及び該接触用部品を含む構造体として有用である。具体的には、少なくとも2個の互いに接触する部品を含む構造体の少なくとの1つの部品として使用することにより、当該構造体に軋み音が発生するのを抑制することができる。したがって、本発明によれば、少なくとも2個の互いに接触する部品を含む構造体であって、前記部品の少なくとも1つが本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)からなる成形体であることを特徴とする物品が提供され、2個以上の部品が本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)からなる成形体であることが好ましく、全ての部品が本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)からなる成形体であることが特に好ましい。
具体的には、図3に示されるように部品、10の一面と部品20の一面が互いに突き合わせされた状態で接着している物品、図4〜8に示されるように、部品10の一部が部品20に形成された凹部に嵌合した状態で接触している物品などが挙げられる。
電気若しくは電子機器及び光学機器の接触用部品としては、デジタルビデオカメラ、スチルカメラ等のカメラのハウジング、ハンドヘルドコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末等のハウジング等が挙げられる。
(1−1)軋み音評価I(異音リスク指数):
表1に記載の熱可塑性樹脂組成物を、東芝機械製の射出成形機「IS−170FA」(商品名)を用いて、シリンダー温度240℃、射出圧力80MPa、金型温度60℃の条件で射出成形することにより得た、縦150mm、横100mm、厚さ4mmの成形品から、縦60mm、横100mm、厚さ4mm、及び、縦50mm、横25mm、厚さ4mmの大小2枚の試験片をディスクソーで切り出した。次に、番手#100のサンドペーパーで試験片の端部を面取りした後、細かなバリをカッターナイフで除去し、大小2枚の軋み音評価用試験片を得た。尚、異種材としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA:三菱レイヨン社製のメタクリル樹脂「アクリペット VH001」)を用いた。
異種材相手の軋み音評価は、表1に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる大きな試験片と、PMMAからなる小さな試験片を組み合わせて異音リスク指数を評価した。
(同種材の場合)
表1に記載の各熱可塑性樹脂組成物を株式会社日本製鋼所製の射出成形機「J−100E」(型式名)を用い、それぞれISOダンベル試験片10枚を射出成形し、その後、これらの試験片を80℃のギアオーブンに400時間放置した。次に、ギアオーブンに放置した接触用部品であるISOダンベル試験片10枚を重ね合わせて構造体とし、この両端を手でひねって軋み音の発生の状況を評価した。評価は5回行い、下記評価基準に基づき判定を行った。
(異種材)
表1に記載の各熱可塑性樹脂組成物とPMMAを株式会社日本製鋼所製の射出成形機「J−100E」(型式名)を用い、それぞれISOダンベル試験片5枚を射出成形し、その後、これらの試験片を80℃のギアオーブンに400時間放置した。次に、ギアオーブンに放置した接触用部品である表1記載の各熱可塑性樹脂組成物5枚とPMMA製のISOダンベル試験片5枚を交互に重ね合わせて構造体とし、この両端を手でひねって軋み音の発生の状況を評価した。評価は5回行い、下記評価基準に基づき判定を行った。PMMAは、三菱レイヨン社製のメタクリル樹脂「アクリペット VH001」を用いた。
評価基準:
○:5回の評価全てにおいて、軋み音の発生は僅かであった。
×:5回の評価において、軋み音の発生が顕著なものが、1回以上含まれていた。
表1に記載の熱可塑性樹脂組成物を、日精樹脂工業株式会社製の射出成形機「エルジェクト NEX30」(型式名)を用いて、80mm×55mm×2.4mmの平板型の試験片を射出成形した。試験片は、55mmの一方の辺の中央に4mm×1mmのサイドゲートを備え、成形時の樹脂温度は240℃、金型温度は50℃、射出速度は30mm/秒であった。JIS K 7105に準じて、得られた試験片表面の光沢を、デジタル光沢計(形式名「GM−26D」、村上色彩技術研究所製)を用いて測定した。測定角度は60°であった。
ISO179に準じて、室温におけるシャルピー衝撃強さ(Edgewise Impact、ノッチ付き)を測定した。単位はKJ/m2である。測定条件は、以下の通りである。
試験片タイプ : Type 1
ノッチタイプ : Type A
荷重 : 2J
(2−1)ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(P):成分(A)(A1)、成分(B)(B1)
P1−1:AES−1
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計などを装備した容積20リットルのステンレス製オートクレーブに、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体(a)として、エチレン・プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=78/22(%)、ムーニー粘度(ML1+4 ,100℃)20、融点(Tm)は40℃、ガラス転移温度(Tg)は−50℃)22部、スチレン55部、アクリロニトリル23部、t−ドデシルメルカプタン0.5部、トルエン110部を仕込み、内温を75℃に昇温して、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.45部を添加し、内温を更に昇温して、100℃に達した後は、この温度を保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合反応を行った。重合反応開始後4時間目から、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合反応を終了した。重合添加率は98%であった。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部、ジメチルシリコーンオイル;KF−96−100cSt(商品名:信越シリコーン株式会社製)0.02部を添加した後、反応混合物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去し、さらに40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化した。得られたエチレン・α−オレフィン系ゴム強化ビニル系樹脂において、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体(a)の含有量は22%(重合転化率から計算)、グラフト率は70%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.47dl/gであった。
P2−1:ABS−1
攪拌機付き重合器に、水280部およびジエン系ゴム質重合体として、重量平均粒子径0.26μm、ゲル分率90%のポリブタジエンラテックス60部(固形分換算)、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部、硫酸第一鉄0.0025部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部を仕込み、脱酸素後、窒素気流中で撹拌しながら60℃に加熱した後、アクリロニトリル10部、スチレン30部、t−ドデシルメルカプタン0.2部、クメンハイドロパーオキサイド0.3部からなる単量体混合物を60℃で5時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合温度を65℃にし、1時間撹拌続けた後、重合を終了させ、グラフト共重合体のラテックスを得た。重合転化率は98%であった。その後、得られたラテックスに、2,2′−メチレン−ビス(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し、塩化カルシウムを添加して凝固し、洗浄、濾過および乾燥工程を経てパウダー状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のジエン系ゴム質重合体の含有量は60%、グラフト率は40%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.38dl/gであった。
攪拌機付き重合器に、水280部およびジエン系ゴム質重合体として、重量平均粒子径0.26μm、ゲル分率90%のポリブタジエンラテックス70部(固形分換算)、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部、硫酸第一鉄0.0025部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部を仕込み、脱酸素後、窒素気流中で撹拌しながら60℃に加熱した後、アクリロニトリル7部、スチレン20部、グリシジルメタクリレート(GMA)3部、t−ドデシルメルカプタン0.2部、クメンハイドロパーオキサイド0.3部からなる単量体混合物を60℃で5時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合温度を65℃にし、1時間撹拌続けた後、重合を終了させ、グラフト共重合体のラテックスを得た。重合転化率は98%であった。その後、得られたラテックスに、2,2′−メチレン−ビス(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し、塩化カルシウムを添加して凝固し、洗浄、濾過および乾燥工程を経てパウダー状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のジエン系ゴム質重合体の含有量は70%、グラフト率は35%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.45dl/gであった。
Q−1:AS−1
撹拌機付き重合容器に、水250部およびパルミチン酸ナトリウム1.0部を投入し、脱酸素後、窒素気流中で撹拌しながら70℃まで加熱した。さらにナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部、硫酸第一鉄0.0025部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部を仕込んだ後、α−メチルスチレン70部(単量体混合物の70%)、アクリロニトリル26部(同26%)、スチレン4部(同4%)からなる単量体混合物100部と、tert−ドデシルメルカプタン0.45部を混合して、重合温度70℃で連続的に7時間かけて滴下した。滴下終了後、重合温度を75℃にし、1時間撹拌を続けて重合を終了させラテックスを得た。このラテックスを塩化カルシウムで塩析し、洗浄、濾過及び乾燥工程を経てパウダー状の共重合体を得た。重合転化率は98%、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は0.40dl/g、ガラス転移温度(Tg)は140℃であった。
内容積30Lのリボン翼を備えたジャケット付き重合反応容器を2基連結し、窒素置換した後、1基目の反応容器に、スチレン75部、アクリロニトリル25部、トルエン20部、及び分子量調節剤としてtert−ドデシルメルカプタン0.12部とトルエン5部からなる溶液、更に重合開始剤として1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)0.1部とトルエン5部からなる溶液を連続的に添加した。1基目の重合温度は110℃にコントロールし、平均滞留時間は2.0時間、重合転化率は57%であった。
得られた重合体溶液は、1基目の反応容器の外部に設けられたポンプにより、スチレン、アクリロニトリル、トルエン、分子量調節剤、および重合開始剤の供給量と同量を連続的に取り出し、2基目の反応容器に供給した。2基目の反応容器の重合温度は、130℃で行い、重合転化率は57%であった。
2基目の反応容器で得られた重合体溶液は、2軸3段ベント付き押出機を用いて、直接、未反応単量体と溶媒を脱揮し、ペレット化した。極限粘度[η]は、0.48dl/gであった。
撹拌機付き重合容器に、水250部およびパルミチン酸ナトリウム1.0部を投入し、脱酸素後、窒素気流中で撹拌しながら70℃まで加熱した。さらにナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部、硫酸第一鉄0.0025部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部を仕込んだ後、スチレン70部、アクリロニトリル27部、グリシジルメタクリレート(GMA)3部からなる単量体混合物100部と、tert−ドデシルメルカプタン0.2部を混合して、重合温度70℃で連続的に7時間かけて滴下した。滴下終了後、重合温度を75℃にし、1時間撹拌を続けて重合を終了させラテックスを得た。このラテックスを塩化カルシウムで塩析し、洗浄、濾過及び乾燥工程を経てパウダー状の共重合体を得た。重合転化率は98%、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は0.45dl/gであった。
R−1(有機の艶消し剤:不定形状:ジエン系ゴム変性共重合樹脂):ゼオン化成社製のABS樹脂用艶消し剤「レビタルマットエース AM−808」(商品名)を用いた。R−1を含有する樹脂組成物を透過型電子顕微鏡で観察したところ、R−1はアメーバ状の不定形粒子として存在していた。
S−1;三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製のポリカーボネート樹脂「ノバレックス7022 PJ−LHI」を用いた。
表1〜3に記載の配合割合で、上記成分(A)、(B)、(C)、又は、これらに更に成分(D)からなる熱可塑性樹脂組成物をヘンシェルミキサーにより混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製、TEX44α、バレル設定温度250℃)で溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットで上記したように評価用の各試験片を成形した。そして得られた試験片を用いて、前記の方法で評価した。評価結果を表1〜3に示した。
実施例4〜8は、他の艶消し剤(C)を使用した場合であるが、実施例1〜3と同様の効果が得られる。
表2に示すように、実施例9〜11は、ビニル系グラフト重合体(A)としてGMA変性ABSを併用した例であるが、艶消し効果が格段に優れている。
実施例12〜13は、ビニル系非グラフト重合体(B)としてGMA変性ASを併用した例であるが、実施例9〜11と同様、艶消し効果が格段に優れている。
実施例14は、ビニル系グラフト重合体(A)としてGMA変性ABSを併用し、ビニル系非グラフト重合体(B)としてGMA変性ASを併用した例であるが、艶消し効果が一層顕著である。
表3に示すように、実施例15〜18は、ポリカーボネート樹脂(D)を含有した例であるが、耐衝撃性に優れている。
これに対し、ビニル系グラフト重合体(A)がエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体(a1)を含有しない比較例1の熱可塑性樹脂組成物の成形体からなる接触用部品は、軋み音低減性能に劣っている。また、艶消し剤(C)を含有しない比較例2の熱可塑性樹脂組成物の成形体は、艶消し性に劣っている。
実施例1の熱可塑性樹脂組成物を用いて図9の部品10を成形し、比較例1の熱可塑性樹脂組成物を用いて図9の部品20を成形し、両者を図9に示されるように嵌め込んで組み立てた後、図9の矢印の方向に繰り返し荷重をかけたところ、軋み音は発生しなかった。この組立体を、80℃のギアーオーブンに400時間放置した後、図9の矢印の方向に繰り返し荷重をかけたところ、同様に軋み音は発生しなかった。
カーボンブラック1部を加えた実施例1の熱可塑性樹脂組成物を用いて、図15に示すように、底面の周縁4箇所に、先端部に切欠部34aを有するリブ34bを立設した円筒形の部品34を成形した。部品34の底面に白色の文字盤“METER”を貼り付けた。次に、三菱レイヨン社製のメタクリル樹脂「アクリペット VH001」を用いて、円盤状の部品(透明板)35を成形し、該部品35を部品34のリブ34bの切欠部34aに嵌め込み、メーター状の構造体を得た。得られた構造体に振動を加えたが、嵌合部での軋み音は発生しなかった。また、部品34は艶消し性であるので、円盤状の部品(透明板)35への反射や写りこみもなく、文字盤の視認性も良好だった。該構造体を、80℃のギアオーブンに400時間放置した後、振動を加えたが、同様に軋み音は発生しなかった。また、円盤状の部品(透明板)35への反射や写りこみもなく、文字盤の視認性も良好だった。
また、本発明によれば、上記接触用部品や構造体を用いることにより、軋み音を低減する方法を提供することができる。
V 駆動速度
μs ノコギリ波形上端の摩擦係数(静摩擦係数)
μl ノコギリ波形下端の摩擦係数
Δμ μs−μl
10、18、20、28、34、35 部品
19 軸
29 開口部
30 突起
31 接着剤
33 ボルトナット
34a 切欠部
34b リブ
Claims (15)
- ビニル系グラフト重合体(A)、ビニル系非グラフト重合体(B)および艶消し剤(C)を含む熱可塑性樹脂組成物(X)の成形体からなり、
前記ビニル系グラフト重合体(A)がエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体(a1)を含有し、
艶消し剤(C)の含有量が、ビニル系グラフト重合体(A)、ビニル系非グラフト重合体(B)および艶消し剤(C)の合計を100質量%として、1〜30質量%であり、そして
艶消し剤(C)が、ジエン系ゴム変性共重合樹脂を含むことを特徴とする接触用部品。 - ビニル系グラフト重合体(A)の含有量が、ビニル系グラフト重合体(A)、ビニル系非グラフト重合体(B)および艶消し剤(C)の合計を100質量%として、1〜40質量%であることを特徴とする請求項1に記載の接触用部品。
- ビニル系グラフト重合体(A)の融点(JIS K 7121−1987に準拠して測定)が、0〜100℃に存在することを特徴とする請求項1または2に記載の接触用部品。
- ビニル系グラフト重合体(A)が、融点(JIS K 7121−1987に準拠して測定)が0〜100℃に存在するエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体(a1)を含有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の接触用部品。
- ビニル系グラフト重合体(A)が、更にジエン系ゴム質重合体(a2)を含有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の接触用部品。
- ビニル系重合体(A)及び/又はビニル系非グラフト重合体(B)が、α,β−不飽和グリシジルエステル化合物に由来する構造単位を含有し、該構造単位の含有量がビニル系グラフト重合体(A)、ビニル系非グラフト重合体(B)および艶消し剤(C)の合計100質量%に対して、0.01〜5質量%であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の接触用部品。
- 艶消し剤(C)が、アクリロニトリルとスチレンまたはα−メチルスチレンとの共重合体樹脂(c1)及び不飽和ニトリル−共役ジエン系共重合体ゴムを含む成分(c2)を含有しかつ該共重合体ゴムが架橋されてなる樹脂組成物(C2)の形態で、ジエン系ゴム変性共重合樹脂を含有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の接触用部品。
- 更に、ポリカーボネート樹脂(D)を含有することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の接触用部品。
- ポリカーボネート樹脂(D)の含有量が、ビニル系グラフト重合体(A)、ビニル系非グラフト重合体(B)および艶消し剤(C)の合計100質量%に対して、30〜400量%であることを特徴とする請求項8に記載の接触用部品。
- ジグラ(ZIEGLER)社のスティックスリップ測定装置SSP−02を使用して測定した異音リスク指数が、以下の測定条件において3以下であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の接触用部品。
測定条件:
縦60mm、横100mm、厚さ4mmの大試験片、及び、縦50mm、横25mm、厚さ4mmの小試験片を用意し、温度23℃、湿度50%R.H.、荷重40N、速度10mm/秒、振幅20mmの条件下で、これら大小2枚の試験片を3回擦り合わせる時の異音リスク指数を測定。 - 少なくとも2個の互いに接触する部品を含み、前記部品の少なくとも1つが請求項1乃至10の何れか1項に記載の接触用部品であることを特徴とする構造体。
- 車両内装用機器であることを特徴とする請求項11に記載の構造体。
- 計器であることを特徴とする請求項11に記載の構造体。
- 請求項1乃至10の何れか1項に記載の接触用部品を用いることを特徴とする軋み音の低減方法。
- 請求項11乃至13の何れか1項に記載の構造体を用いることを特徴とする軋み音の低減方法。
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