JP6530198B2 - 乳酸菌の検出方法、乳酸菌検出キット、及び乳酸菌検出器具 - Google Patents
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Description
具体的には、例えば、菌種毎に菌液を調製して、それぞれの菌種毎に数十種類の炭素源へ接種し、2日間生育させた後の炭素源の色調変化にもとづいて菌種の判定を行う方法がある。この方法では、分離培養工程が必要であり、また一定以上の菌数が必要であった。このため、特定の乳酸菌の有無の判定に最低1週間を要し、また作業員の手間も非常に掛かるものであった。このような判定に時間がかかることは、迅速性が求められる飲食品の検査においては問題であった。
具体的には、特許文献1に記載の手法によれば、ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)とラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)を電気泳動法によって検出できるとされている。また、特許文献2に記載の手法によれば、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)とラクトバチルス・ブフネリを電気泳動法とDNAチップによって検出できるとされている。さらに、特許文献3に記載の手法によれば、ラクトバチルス・フルクチボランス(Lactobacillus fructivorans)を電気泳動法などによって検出できるとされている。
そこで、本発明者らは、特にラクトバチルス・プランタラムのRNAポリメラーゼ遺伝子(rpo)を標的遺伝子として選択することによって当該乳酸菌を高い精度で検出可能にすると共に、上記4種類の乳酸菌を同時にそれぞれ特異的に検出することに成功し、本発明を完成させた。このようにRNAポリメラーゼ遺伝子(rpo)を標的遺伝子として増幅して乳酸菌を検出することはこれまで見られず、また上記4種類の乳酸菌を同時にそれぞれ特異的に検出可能な本発明におけるプローブもこれまで見られなかった。
また、本発明は、ラクトバチルス・プランタラムをRNAポリメラーゼ遺伝子(rpo)を標的遺伝子として検出できると共に、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ブフネリ、及びラクトバチルス・フルクチボランスの4種類の乳酸菌を同時にそれぞれ特異的に検出可能な乳酸菌検出器具の提供を目的とする。
また、本発明の乳酸菌検出器具によれば、ラクトバチルス・プランタラムをRNAポリメラーゼ遺伝子(rpo)を標的遺伝子として検出できると共に、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ブフネリ、及びラクトバチルス・フルクチボランスの4種類の乳酸菌を同時にそれぞれ特異的に検出することができる。
[乳酸菌の検出方法]
本実施形態の乳酸菌の検出方法は、試料に含まれる細胞からDNAを抽出し、抽出されたDNAと、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)のRNAポリメラーゼ遺伝子を標的とする配列番号1及び配列番号2に示される塩基配列からなるプライマーセットとを用いてPCRによる増幅反応を行い、得られた増幅産物にもとづき試料におけるラクトバチルス・プランタラムの有無を判定することを特徴とする。
DNAの抽出方法は、特に限定されないが、例えば次のように行うことができる。
まず、培養液を1mLずつ回収し、5000×gで、10分間の遠心分離を行う。次に、上清を廃棄し、得られた沈殿に、20mg/mL濃度のリゾチーム溶液(20mM Tris−HCl,pH8.0/2mM EDTA,1.2%TritonX−100)を加えて、37℃で30分間溶菌処理を行う。さらに、カラム精製を行うことにより、DNA抽出液を得ることができる。そして、このDNA抽出液をPCRにおいて使用する試料として用いることができる。
抽出したDNAとプライマーを用いて、増幅の標的とする遺伝子領域(増幅対象領域)をPCR法により増幅させる。
具体的には、図1に示すように、プライマーとして、配列番号1に示される塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号2に示される塩基配列からなるリバースプライマーとからなるプライマーセットを用いることによって、ラクトバチルス・プランタラムのRNAポリメラーゼ遺伝子(rpo)を増幅させることができる。
また、プライマーとして、配列番号3に示される塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号4に示される塩基配列からなるリバースプライマーとからなるプライマーセットを用いることによって、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ブフネリ、及びラクトバチルス・フルクチボランスの16SrRNA遺伝子を増幅させることができる。
また、PCRによる増幅産物の有無をDNAチップで特定する場合、PCRによって増幅産物に標識が付加される。標識の方法は特に限定されないが、蛍光標識を好適に用いることができる。
さらに、標識として、ジコキシゲニン、ビオチン、放射性同位体などの蛍光以外のその他の方式のものを用いることも可能である。
PCRの反応条件としては、例えば以下の通りに行うことができる。
(a)94℃ 2分、(b)94℃(DNA変性工程) 30秒、(c)60℃(アニーリング工程) 30秒、(d)72℃(DNA合成工程) 60秒((b)〜(d)を35サイクル)、(e)72℃ 3分
乳酸菌の有無の判定方法としては、例えば電気泳動法により行うことができる。電気泳動法は、アガロースゲル電気泳動やアクリルアミド電気泳動、マイクロチップ電気泳動等の一般的な方法により行うことができる。電気泳動法では増幅産物の大きさにもとづいて、乳酸菌の有無の判定が行われる。
したがって、複数の種類の乳酸菌を一つの系で同時にそれぞれ特異的に識別するためには、DNAチップを用いることが好ましい。
例えば、貼り付け型のDNAチップを作成する場合は、DNAスポッターによりプローブをガラス基板上に固定化して、各プローブに対応するスポットを形成することにより作成することができる。また、合成型DNAチップを作成する場合は、光リソグラフィ技術により、ガラス基板上で上記配列を備えた一本鎖オリゴDNAを合成することにより作成することができる。さらに、基板はガラス製に限定されず、プラスチック基板やシリコンウエハー等を用いることもできる。また、基板の形状は平板状のものに限定されず、様々な立体形状のものとすることもでき、その表面に化学反応が可能となるように官能基を導入したものなどを用いることもできる。
標識の検出は、蛍光スキャニング装置などの一般的な標識検出装置を用いて行うことができ、例えば東洋鋼鈑株式会社のBIOSHOT(R)を用いて、増幅産物における蛍光標識の蛍光強度を測定することにより行うことができる。
本実施形態の乳酸菌検出キットは、ラクトバチルス・プランタラムのRNAポリメラーゼ遺伝子を標的とする配列番号1及び配列番号2に示される塩基配列からなるプライマーセットと、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ブフネリ、及びラクトバチルス・フルクチボランスの16SrRNA遺伝子を標的とする配列番号3及び配列番号4に示される塩基配列からなるプライマーセットとを含有することを特徴とする。
本実施形態の乳酸菌検出器具は、ラクトバチルス・プランタラムのRNAポリメラーゼ遺伝子に相補的に結合する配列番号5〜7及びこれらの相補的配列の少なくともいずれかに示される塩基配列からなるプローブと、ラクトバチルス・ブレビスの16SrRNA遺伝子に相補的に結合する配列番号8,9及びこれらの相補的配列の少なくともいずれかに示される塩基配列からなるプローブと、ラクトバチルス・ブフネリの16SrRNA遺伝子に相補的に結合する配列番号10〜14及びこれらの相補的配列の少なくともいずれかに示される塩基配列からなるプローブと、ラクトバチルス・フルクチボランスの16SrRNA遺伝子に相補的に結合する配列番号15及びこれの相補的配列の少なくともいずれかに示される塩基配列からなるプローブとを固定化したことを特徴とする。
また、従来法に比較して検出感度に優れ、低濃度の汚染サンプルを試料とする場合でも乳酸菌の検出を好適に行うことが可能である。
さらに、本実施形態によれば、一回の操作で検査対象の4種類の乳酸菌の有無を同時に判定できるため、1菌種のみを判定する場合に比較して、PCRなどの試薬量を削減でき、作業を省力化することも可能である。
本実施形態の乳酸菌の検出方法、及び乳酸菌検出キットを用いて、特定の乳酸菌の標的遺伝子をPCR法により増幅し、その増幅産物にもとづき乳酸菌を検出できるかを確認するための検証試験を行った。
乳酸菌としては、以下の4種類について、合計5つの試料を準備した。これらの供試菌株は、独立行政法人製品評価基盤機構から分譲されたものである。
(2)ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)NBRC15891
(3)ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)NBRC107147
(4)ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)NBRC107764
(5)ラクトバチルス・フルクチボランス(Lactobacillus fructivorans)NBRC14747
まず、培養液を1mLずつ回収し、5000×gで、10分間の遠心分離を行った。次に、上清を廃棄し、得られた沈殿に、20mg/mL濃度のリゾチーム溶液(20mM Tris−HCl,pH8.0/2mM EDTA,1.2%TritonX−100)を加えて、37℃で30分間溶菌処理を行った。さらに、DNeasy Blood&Tissue Kit(株式会社キアゲン製)を用いて、カラム精製を行うことにより、DNA抽出液を得た。このDNA抽出液をPCRにおいて使用する試料とした。
また、プライマーセットとして、配列番号3に示される塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号4に示される塩基配列からなるリバースプライマーとからなるプライマーセットを用いた。その増幅対象領域は、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ブフネリ、及びラクトバチルス・フルクチボランスの16SrRNA遺伝子(16SrRNA)であり、推定増幅産物長はそれぞれ約500bpである。
・緩衝液 10×Ex Taq buffer(20mM Mg 2+ plus) 2.0μl
・核酸合成基質 dNTP Mixture(dATP、dCTP、dGTP、dTTP各2.5mM) 1.6μl
・16SrRNA検出用フォワードプライマー(10μM) 0.5μl
・16SrRNA検出用リバースプライマー (10μM) 0.5μl
・rpo検出用フォワードプライマー(10μM) 0.2μl
・rpo検出用リバースプライマー (10μM) 0.3μl
・核酸合成酵素 EX Taq(5U/μl) 0.1μl
・試料のDNA 1.0μl
・滅菌水 13.8μl
(全量 20μl)
(a)94℃ 2分
(b)94℃ 30秒(DNA鎖の乖離工程)
(c)60℃ 30秒(アニーリング工程)
(d)72℃ 60秒(DNA合成工程)
(e)72℃ 3分
(b)〜(d)を35サイクル
同図において、供試菌株(1)〜(5)のいずれについても、16SrRNA遺伝子(16SrRNA)の増幅産物を示す500bp付近にバンドが示された。また、供試菌株(1),(2)については、RNAポリメラーゼ遺伝子(rpo)の増幅産物を示す266bp付近にバンドが示された。
本実施形態の乳酸菌の検出方法、乳酸菌検出キット、及び乳酸菌検出器具を用いて、特定の乳酸菌の標的遺伝子をPCR法により増幅し、その増幅産物を乳酸菌検出器具に固定化されたプローブとハイブリダイズさせることによって、これらの乳酸菌を同時にそれぞれ特異的に検出できるかを確認するための検証試験を行った。
また、プライマーセット及びPCR反応液として試験1と同様のものを使用し、試験1と同様にPCR法による遺伝子の増幅を行った。PCRにおいては、蛍光標識された核酸合成基質を用いて、標識された増幅産物を生成した。
まず、PCR増幅産物に、緩衝液(3×SSC クエン酸−生理食塩水)に0.3%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を添加したものを混合し、DNAチップに滴下した。
次に、DNAチップを45℃で1時間静置し、上記緩衝液を用いてハイブリダイズしなかったPCR産物をDNAチップから洗い流した。
同図に示されるように、供試菌株(1)〜(5)のいずれについても、それらの乳酸菌が、各プローブの検出対象菌である場合にのみ陽性反応(S/N比値≧3)が示されており、偽陽性反応が生じていないことが確認された。
よって、配列番号5〜15に示される塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるプローブをDNAチップに固定化した場合にも、上記の4種類の乳酸菌を同時にそれぞれ特異的に検出することが可能である。
Claims (4)
- 試料に含まれる細胞からDNAを抽出し、
抽出されたDNAと、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)のRNAポリメラーゼ遺伝子を標的とする配列番号1及び配列番号2に示される塩基配列からなるプライマーセットと、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、及びラクトバチルス・フルクチボランス(Lactobacillus fructivorans)の16SrRNA遺伝子を標的とする配列番号3及び配列番号4に示される塩基配列からなるプライマーセットと、を用いて前記PCRによる増幅反応を行い、
得られた増幅産物にもとづき前記試料におけるラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ブフネリ、及びラクトバチルス・フルクチボランスの有無を同時に判定する
ことを特徴とする乳酸菌の検出方法。 - ラクトバチルス・プランタラムのRNAポリメラーゼ遺伝子に相補的に結合する配列番号5〜7及びこれらの相補的配列の少なくともいずれかに示される塩基配列からなるプローブと、
ラクトバチルス・ブレビスの16SrRNA遺伝子に相補的に結合する配列番号8,9及びこれらの相補的配列の少なくともいずれかに示される塩基配列からなるプローブと、
ラクトバチルス・ブフネリの16SrRNA遺伝子に相補的に結合する配列番号10〜14及びこれらの相補的配列の少なくともいずれかに示される塩基配列からなるプローブと、
ラクトバチルス・フルクチボランスの16SrRNA遺伝子に相補的に結合する配列番号15及びこれの相補的配列の少なくともいずれかに示される塩基配列からなるプローブと、を固定化した乳酸菌検出器具に、標識された前記増幅産物を接触させ、
前記プローブと相補的に結合した前記増幅産物の標識を検出する
ことを特徴とする請求項1記載の乳酸菌の検出方法。 - ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)のRNAポリメラーゼ遺伝子を標的とする配列番号1及び配列番号2に示される塩基配列からなるプライマーセットと、
ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、及びラクトバチルス・フルクチボランス(Lactobacillus fructivorans)の16SrRNA遺伝子を標的とする配列番号3及び配列番号4に示される塩基配列からなるプライマーセットと、を含有する
ことを特徴とする乳酸菌検出キット。 - ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)のRNAポリメラーゼ遺伝子に相補的に結合する配列番号5〜7及びこれらの相補的配列の少なくともいずれかに示される塩基配列からなるプローブと、
ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)の16SrRNA遺伝子に相補的に結合する配列番号8,9及びこれらの相補的配列の少なくともいずれかに示される塩基配列からなるプローブと、
ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)の16SrRNA遺伝子に相補的に結合する配列番号10〜14及びこれらの相補的配列の少なくともいずれかに示される塩基配列からなるプローブと、
ラクトバチルス・フルクチボランス(Lactobacillus fructivorans)の16SrRNA遺伝子に相補的に結合する配列番号15及びこれの相補的配列の少なくともいずれかに示される塩基配列からなるプローブと、を固定化した
ことを特徴とする乳酸菌検出器具。
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