JP6648559B2 - 細菌の検査方法、プライマーセット、細菌検査用担体、及び細菌検査用キット - Google Patents

細菌の検査方法、プライマーセット、細菌検査用担体、及び細菌検査用キット Download PDF

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Description

本発明は、細菌が保有するインチミン遺伝子のサブタイプを判別する細菌の検査方法、プライマーセット、細菌検出用担体、及び細菌検出用キットに関する。
牛挽肉及び牛挽肉材料が含まれる食品に関する米国の細菌規格において、病原性大腸菌の中でもヒトに重篤な症状を引き起こすものとして、O157に加え、6つの血清型(O26、O45、O103、O111、O121、O145)が規定されている。このうち、O157については牛肉加工業者に対する検査義務があり、流通品で検出された場合はリコール勧告の対象となる。また、その他のものについては、一般に牛肉加工業者による自主検査が行われており、流通品で検出された場合には同様にリコール勧告の対象となっている。このため、検査でこれらの病原性大腸菌が検出されると、その牛挽肉や食品は不良品(adulterated)とされ、回収の対象となる。病原性大腸菌O26、O45、O103、O111、O121、O145は、通称BIG6またはTOP6と呼ばれており、さらにこれにO157を加えたものは通称TOP7と呼ばれている。
BIG6の定義は、1個体で、O抗原合成遺伝子領域の遺伝子(血清型がO26、O45、O103、O111、O121、O145のいずれかのもの)、インチミン遺伝子(eae)、及び志賀毒素遺伝子(stx)の3因子を全て保有している病原性大腸菌とされている。このため、これらの病原性大腸菌の検査は、これら3因子を分析することにより行うことができる。
これらの病原性大腸菌の検査方法として、例えば、Du Pont社の病原性大腸菌検査キットである「BAX」を用いた方法が知られている。この方法は、一次スクリーニングと二次スクリーニングの二段階で行われる。一次スクリーニングではリアルタイムPCRによってeae遺伝子と志賀毒素遺伝子の検査が行われ、個体毎に片方のみが陽性の場合又は両方が陰性の場合には、陰性との判定が行われる。両方が陽性の場合には、二次スクリーニングが行われる。二次スクリーニングではリアルタイムPCRによってO抗原合成遺伝子領域の遺伝子の検査が行われる。O抗原合成遺伝子領域の遺伝子の検査は、O157用のキット、O26, O111, O121用のキット、及びO45, O103, O145用のキットの3種類のキットを用いることにより、各個体のO抗原合成遺伝子領域の遺伝子の血清型の識別が行われる。
また、タカラバイオ株式会社のEHEC(O antigens) PCR Typing Kitを用いた検査方法も知られている。この方法では、血清型毎のO抗原合成遺伝子領域の遺伝子と、eae遺伝子、及び志賀毒素遺伝子を増幅させるためのプライマーセットを用いてPCRを行い、得られた増幅産物を電気泳動で解析することによって、病原性大腸菌の検出が行われる。
特開2015−57048号公報 特表2013−501516号公報
しかしながら、このような従来の検査キットを用いた場合、検査環境における大腸菌の状態によっては、誤判定を生じ得るという問題があった。
すなわち、図8に示すように、培地中において、1菌種の大腸菌が、O抗原合成遺伝子領域の遺伝子(例えばO26)、eae遺伝子、及び志賀毒素遺伝子(stx)の3因子を全て保有している場合、従来の検査キットによって陽性として適切に検出することが可能である。
一方、培地中において、2菌種以上の大腸菌がこれら3因子を分け持っている場合、本来はこれらの大腸菌は陽性のものではないにも拘わらず、従来の検査キットでは、3因子が全て検出されるため、陽性と誤判定されてしまうという問題があった。
ここで、eae遺伝子には20種類のサブタイプ(亜型)が存在することが知られている。具体的には、eae遺伝子及び志賀毒素遺伝子(stx)を保有するO26大腸菌のeae遺伝子のサブタイプはβ型、O45、O103、及びO121大腸菌のeae遺伝子のサブタイプはε型、O111大腸菌のeae遺伝子のサブタイプはθ型、O145、及びO157大腸菌のeae遺伝子のサブタイプはγ型であることが知られている。
そこで、大腸菌の検査において、大腸菌が保有するeae遺伝子のサブタイプを判別することで、誤判定を低減できると考えられる。
例えば、図8に示すように、培地中に3因子を全て保有するO26大腸菌が存在する場合には、eae遺伝子のサブタイプとしてβ型が検出される。
一方、培地中にeae遺伝子を保有しないO26大腸菌と、eae遺伝子を保有する他の細菌とが混在している場合であって、そのeae遺伝子のサブタイプがε型、θ型、又はγ型である場合には、3因子が検出されるものの、eae遺伝子のサブタイプがO26大腸菌に対応するものではないことから、陰性と判定することが可能となる。したがって、eae遺伝子のサブタイプを判別することで、誤判定となる可能性を低減させることが可能となる。
このようなeae遺伝子のサブタイプを判別する技術としては、PCR−RFLPによる方法がある。すなわち、PCRによってeae遺伝子のほぼ全てのサブタイプの共通配列を増幅した後、制限酵素を用いて処理し、得られた核酸断片を電気泳動させて、ラダーパターンからeae遺伝子のサブタイプを決定する方法がある。
しかしながら、この方法では、1つの反応系に2種類以上のサブタイプのeae遺伝子が混在している場合は、分析できないという問題があった。
また、eae遺伝子のサブタイプを判別する技術として、例えば、特許文献1、2に記載のリアルタイムPCRによる方法がある。この方法では、eae遺伝子の4つのサブタイプのそれぞれの固有配列を有する領域(固有領域)をPCRによって増幅し、その増幅産物の存否にもとづいて、あるいは増幅産物に相補的に結合するプローブを用いることにより、eae遺伝子のサブタイプの決定が行われる。
しかしながら、このようなリアルタイムPCRによる方法は、各サブタイプの固有領域に個別にプライマーを設計して、各領域を増幅するものであるため、プライマー添加濃度等の条件設定が煩雑になるという問題があった。
また、リアルタイムPCRによる方法は、蛍光色の違いにより増幅産物を判別するものであるため、4種類を超える増幅産物の判別は、蛍光波長が重なることから行うことができず、1反応系で判別可能なサブタイプ数が最大4種類に限定されるという問題もあった。
そこで、本発明者らは鋭意研究し、eae遺伝子の各サブタイプを共通して増幅可能なプライマーセットを設計可能にすることで、PCRの反応条件をサブタイプ毎に設定する必要がなく、プローブを追加すること等で検査したいサブタイプを容易に追加可能とすることに成功した。
すなわち、本発明は、細菌が保有するeae遺伝子の各サブタイプをPCRにより共通して増幅するためのプライマーセットを設計可能にして、PCRによる増幅反応の条件などの設定を簡素化すると共に、その増幅産物を検出することで、細菌を精度高く検査することが可能な細菌の検査方法、プライマーセット、細菌検査用担体、及び細菌検査用キットの提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の細菌の検査方法は、細菌のDNAにおけるeae遺伝子を標的領域としてPCRにより増幅させ、eae遺伝子のサブタイプを判別する細菌の検査方法であって、eae遺伝子を標的領域とするプライマーセットのリバースプライマーをeae遺伝子における3’非翻訳領域から選択すると共に、前記プライマーセットのフォワードプライマーをeae遺伝子における翻訳領域の一部である共通領域又はeae遺伝子における5’非翻訳領域から選択し、且つ、前記リバースプライマー及び前記フォワードプライマーの選択において、判別の対象とする全てのサブタイプに共通する塩基配列から前記リバースプライマー及び前記フォワードプライマーを設計したプライマーセットを用いる方法としてある。
また、本発明のプライマーセットは、細菌のDNAにおけるeae遺伝子をPCRにより増幅するための、配列番号1に示す塩基配列からなるフォワードプライマー、及び配列番号2に示す塩基配列からなるリバースプライマーからなる構成としてある。
また、本発明の細菌検出用担体は、細菌のDNAにおけるeae遺伝子のサブタイプを判別するための、以下の(a)、(b)、又は(c)に記載の塩基配列からなるプローブ群から選択された一又は二以上のプローブを固定化した構成としてある。
(a)配列番号3〜21に示す塩基配列からなるプローブ。
(b)配列番号3〜21に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるプローブ。
(c)(a)又は(b)のプローブに対して相補的な塩基配列からなるプローブ。
また、本発明の細菌検出用キットは、細菌のDNAにおける標的領域をPCRにより増幅させるためのプライマーセットと、PCRにより増幅して得られた増幅産物の有無を確認するためのプローブが固定化された担体を含む細菌検査用キットであって、前記プライマーセットが、上記のものを含み、前記担体が、上記のものを含み、前記プライマーセットを用いてPCRにより増幅して得られた増幅産物を、前記担体に滴下して、前記増幅産物と相補的な塩基配列を有するプローブと結合させて、細菌が保有するeae遺伝子のサブタイプを判別する構成としてある。
本発明によれば、細菌が保有するeae遺伝子の各サブタイプをPCRにより共通して増幅するためのプライマーセットを設計可能にして、PCRによる増幅反応の条件などの設定を簡素化すると共に、その増幅産物を検出することで、細菌を精度高く検査することが可能となる。
細菌のDNAにおけるeae遺伝子領域の概要について説明するための図である。 本発明の実施形態に係る細菌の検査方法で用いられるプライマーの塩基配列を示す図である。 本発明の実施形態に係る細菌検出用担体に固定化されるプローブの塩基配列を示す図である。 本発明の実施形態に係る細菌検出用担体に固定化されたプローブ(サブタイプβ型検出用:配列番号3〜7)について検出された蛍光強度(S/N比値)を示す図である。 本発明の実施形態に係る細菌検出用担体に固定化されたプローブ(サブタイプε型検出用:配列番号8〜10)について検出された蛍光強度(S/N比値)を示す図である。 本発明の実施形態に係る細菌検出用担体に固定化されたプローブ(サブタイプθ型検出用:配列番号11〜15)について検出された蛍光強度(S/N比値)を示す図である。 本発明の実施形態に係る細菌検出用担体に固定化されたプローブ(サブタイプγ型検出用:配列番号16〜21)について検出された蛍光強度(S/N比値)を示す図である。 本発明の細菌の検査方法において、細菌が保有するeae遺伝子のサブタイプを判別する効果について説明するための図である。
以下、本発明の細菌の検査方法、プライマーセット、細菌検査用担体、及び細菌検査用キットの一実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態及び後述する実施例の具体的な内容に限定されるものではない。
本実施形態の細菌の検査方法は、細菌のDNAにおけるeae遺伝子を標的領域としてPCRにより増幅させ、eae遺伝子のサブタイプを判別する細菌の検査方法であって、eae遺伝子を標的領域とするプライマーセットのリバースプライマーをeae遺伝子における3’非翻訳領域から選択すると共に、プライマーセットのフォワードプライマーをeae遺伝子における翻訳領域の一部である共通領域又はeae遺伝子における5’非翻訳領域から選択し、且つ、リバースプライマー及びフォワードプライマーの選択において、判別の対象とする全てのサブタイプに共通する塩基配列からリバースプライマー及びフォワードプライマーを設計したプライマーセットを用いる方法とすることが好ましい。
また、本実施形態の細菌の検査方法は、プライマーセットを用いてPCRにより増幅して得られた増幅産物を、eae遺伝子におけるフォワードプライマーとリバースプライマーの結合位置の間の領域から選択されたeae遺伝子のサブタイプを識別可能な一又は二以上のプローブと結合させる工程、増幅産物を制限酵素処理して得られた核酸断片を電気泳動で分離する工程、又は、増幅産物の塩基配列をシーケンサーで決定する工程を含むものとすることが好ましい。
本実施形態における細菌としては、例えば病原性大腸菌を挙げることができる。病原性大腸菌の中でも、O抗原合成遺伝子領域の遺伝子がO26、O45、O103、O111、O121、O145のいずれかであるBIG6またはTOP6と呼ばれるもの、およびそれにO157を加えたTOP7を好適な検査対象とすることができる。ここで、血清型とは、特異抗体を用いて細菌表面抗原の相違を検出することにより、同種の細菌をより細かく分類する時に用いられる型を意味する。大腸菌のO抗原としては、184種類が知られている。
BIG6の病原性大腸菌は、1個体で、O抗原合成遺伝子領域の遺伝子(血清型がO26、O45、O103、O111、O121、O145のいずれかのもの)、eae遺伝子、及び志賀毒素遺伝子(stx)の3因子を全て保有している。eae遺伝子は、腸管付着性因子というタンパク質をコードする遺伝子である。また、志賀毒素遺伝子(stx)は、「志賀毒素(Shiga toxin)」というタンパク質をコードする遺伝子であり、志賀毒素1型遺伝子(stx1)と、志賀毒素2型遺伝子(stx2)の2種類が知られている。
本実施形態における細菌は、病原性大腸菌に限定されるものではなく、その他に例えば、非病原性の大腸菌、Escherichia albertii、Shigella boydii、Citrobacter rodentium、Citrobacter freundii等を好適な検査対象とすることができる。
大腸菌のeae遺伝子には、20種類のサブタイプが存在することが知られている。
例えば、eae遺伝子及び志賀毒素遺伝子(stx)を保有するO26大腸菌のeae遺伝子のサブタイプはβ型、O45、O103、及びO121大腸菌のeae遺伝子のサブタイプはε型、O111大腸菌のeae遺伝子のサブタイプはθ型、O145、及びO157大腸菌のeae遺伝子のサブタイプはγ型であるが、本実施形態は、これら4種類のサブタイプに限定されず、その他のサブタイプについても同様に適用することが可能であることは言うまでもない。
後述する実施例の試験1においては、上記4種類のサブタイプのeae遺伝子を保有する大腸菌について実験を行ったが、その理由は、微生物株保存機関から入手可能な大腸菌の菌株のうち、eae遺伝子のサブタイプが明らかなものは、上記のβ型、ε型、θ型、γ型の4種類であるためである。
後述する実施例の試験2においては、大腸菌のDNAにおけるeae遺伝子をPCRにより増幅して得られた増幅産物の塩基配列をシーケンサーで決定することによって、eae遺伝子のサブタイプがζ型(ゼータ型)のものを検出している。
具体的には、eae遺伝子のサブタイプがζ型の大腸菌について記載された論文(Genetic diversity of intimin genes of attaching and effacing Escherichia coli strains.)のTable1に記載のstrain 4795/95という菌株は、ζ型のeae遺伝子を保有していることが明らかになっており、このζ型のeae遺伝子の塩基配列がデータベースに登録されている(Accession No. AJ271407.1)。本発明者らが、微生物株保存機関から入手した大腸菌の特定の菌株(RIMD 05091872, O156)について、そのeae遺伝子の塩基配列をシーケンサーにより決定した結果、当該シーケンサーにより決定した特定の菌株の塩基配列と、上記データベースに登録されているζ型のeae遺伝子の塩基配列とがほぼ一致することが判明し、その特定の菌株のサブタイプがζ型であることが明らかとなった。
これにより、本実施形態の検査方法及びプライマーセットによれば、サブタイプがζ型の大腸菌のeae遺伝子を適切に増幅でき、当該大腸菌を検出できることが分かった。
細菌のDNAにおけるeae遺伝子領域は、図1に示すように、タンパク質の設計図となる部分である翻訳領域(コーディング領域,構造遺伝子領域)と、それ以外の非翻訳領域とからなっている。
非翻訳領域には、5’側の5’非翻訳領域と、3’側の3’非翻訳領域とが存在する。
また、翻訳領域には、サブタイプ間で配列が類似する共通領域と、サブタイプ間で配列が大きく異なる固有領域とが存在する。
共通領域は、eae遺伝子の開始コドンより下流でかつ終止コドンより800塩基以上上流の領域である。
固有領域は、終止コドンの上流800塩基以内の領域である。固有領域は、サブタイプ間で配列が大きく異なるため、サブタイプの判別に好適に利用することができる。一方、固有領域において、複数のサブタイプの固有領域を一括してPCRにより増幅させることが可能なプライマーセット(共通プライマー)を設計することは難しい。
そこで、本実施形態の細菌の検査方法では、このような共通プライマーを設計するために、eae遺伝子を標的領域とするプライマーセットのリバースプライマーをeae遺伝子における3’非翻訳領域から選択すると共に、そのプライマーセットのフォワードプライマーをeae遺伝子における翻訳領域の一部である共通領域又はeae遺伝子における5’非翻訳領域から選択し、且つ、リバースプライマー及びフォワードプライマーの選択において、判別の対象とする全てのサブタイプに共通する塩基配列からリバースプライマー及びフォワードプライマーの塩基配列を決定する。
このとき、プライマーセットのフォワードプライマーをeae遺伝子における翻訳領域の一部である共通領域又はeae遺伝子における5’非翻訳領域から選択して、プライマーセットのリバースプライマーをeae遺伝子における3’非翻訳領域より下流の領域から選択することもできる。
また、プライマーセットのリバースプライマーをeae遺伝子における3’非翻訳領域から選択して、プライマーセットのフォワードプライマーをeae遺伝子における5’非翻訳領域より上流の領域から選択することもできる。
さらに、本実施形態の細菌の検査方法では、eae遺伝子のサブタイプを識別可能な一又は二以上のプローブをeae遺伝子におけるフォワードプライマーとリバースプライマーの結合位置の間の領域、特に翻訳領域の一部である固有領域から選択して、上記のように選択された共通プライマーを用いてPCRにより増幅して得られた増幅産物を、当該プローブとハイブリダイズさせ、増幅産物の標識を検出することによって、eae遺伝子のサブタイプを判別可能にすることができる。
また、本実施形態の細菌の検査方法では、共通プライマーを用いてPCRにより増幅して得られた増幅産物を制限酵素処理して、得られた核酸断片を電気泳動で分離することによって、eae遺伝子のサブタイプを判別可能にすることもできる。
さらに、本実施形態の細菌の検査方法では、共通プライマーを用いてPCRにより増幅して得られた増幅産物の塩基配列を、シーケンサーで決定することによって、eae遺伝子のサブタイプを判別することも可能である。
このように、本実施形態の細菌の検査方法によれば、リバースプライマーをeae遺伝子における3’非翻訳領域から選択すると共に、フォワードプライマーをeae遺伝子における翻訳領域の一部である共通領域又は5’非翻訳領域から選択し、且つ、判別の対象とする全てのサブタイプに共通する塩基配列からリバースプライマー及びフォワードプライマーの塩基配列を決定することによって、共通プライマーの設計を可能としている。
これによって、PCR用反応液におけるプライマーの添加濃度等の条件の設定を容易にすることができ、PCRによる増幅反応の条件を都度改変することなく、プローブを追加すること等で判別の対象のサブタイプを容易に追加することができる。
本実施形態の細菌の検査方法で用いる共通プライマーは、当該方法で設計されてなるものであり、具体的には、例えば、図2に示すように、配列番号1に示す塩基配列からなるフォワードプライマー、及び配列番号2に示す塩基配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセットを好適に用いることができる。このリバースプライマーはeae遺伝子領域における3’非翻訳領域から選択されたものであり、このフォワードプライマーは、eae遺伝子領域における翻訳領域の一部である共通領域から選択されたものである。なお、図2において、「F/R」は、フォワードプライマー(F)とリバースプライマー(R)の区別を示している。また、「修飾」は、蛍光標識のCy5を用いて、リバースプライマーの5’末端に標識を好適に行い得ることを示している。
ここで、大腸菌のeae遺伝子における翻訳領域の一部である固有領域は、複数のサブタイプの間でその塩基配列が変化に富んでいるため、複数のサブタイプのeae遺伝子を共通して増幅可能なプライマーセットにおけるプライマーの両方又は一方を、その翻訳領域において設計することは、非常に難しいという問題があった。
そこで、本実施形態の細菌の検査方法では、上記の通り、リバースプライマーをeae遺伝子領域における3’非翻訳領域から選択すると共に、フォワードプライマーをeae遺伝子領域における翻訳領域の一部である共通領域又は5’非翻訳領域から選択することによって、複数のサブタイプのeae遺伝子を適切に増幅可能なプライマーセットを設計することを可能にしている。
図2及び配列表において、フォワードプライマーの塩基配列における「Y」は、C又はTを意味する。すなわち、当該部分の塩基は、サブタイプによって異なり、CであるものとTであるものが存在する。このため、当該部分の塩基がどちらの場合であっても増幅できるように、フォワードプライマーとしてこれら2種類のオリゴDNA(核酸断片)を使用することが好ましい。例えば、これらのオリゴDNAを等モル濃度で混合してPCRに用いることが好ましい。
本実施形態の細菌の検査方法で用いるプローブは、具体的には、例えば、図3に示すように、配列番号3〜21によりそれぞれ特定される塩基配列からなるオリゴDNAを好適に用いることができる。これらのプローブは、大腸菌のeae遺伝子における翻訳領域の一部である固有領域から選択したものである。
このうち、配列番号3〜7に示す塩基配列を有するプローブは、サブタイプβ型のeae遺伝子から選択され、サブタイプβ型を判別するためのものである。β型は、例えばeae遺伝子及び志賀毒素遺伝子(stx)を保有するO26大腸菌に特徴的なeae遺伝子のサブタイプとして知られている。
配列番号8〜10に示す塩基配列を有するプローブは、サブタイプε型のeae遺伝子から選択され、サブタイプε型を判別するためのものである。ε型は、例えばeae遺伝子及び志賀毒素遺伝子(stx)を保有するO45、O103、及びO121大腸菌に特徴的なeae遺伝子のサブタイプとして知られている。
配列番号11〜15に示す塩基配列を有するプローブは、サブタイプθ型のeae遺伝子から選択され、サブタイプθ型を判別するためのものである。θ型は、例えばeae遺伝子及び志賀毒素遺伝子(stx)を保有するO111大腸菌に特徴的なeae遺伝子のサブタイプとして知られている。
配列番号16〜21に示す塩基配列を有するプローブは、サブタイプγ型のeae遺伝子から選択され、サブタイプγ型を判別するためのものである。γ型は、例えばeae遺伝子及び志賀毒素遺伝子(stx)を保有するO145、及びO157大腸菌に特徴的なeae遺伝子のサブタイプとして知られている。
本実施形態の細菌の検査方法において、配列番号3〜21に示す塩基配列からなるプローブ群から選択された一又は二以上のプローブを基板上に固定化した細菌検査用担体を用いることが好ましい。また、細菌検査用担体を、配列番号3〜21に示す塩基配列からなる全てのプローブを基板上に固定化したものとすることも好ましい。
このような細菌検査用担体は、例えばスポット型又は合成型のDNAチップやDNAマイクロアレイなどとして製造することができる。
さらに、細菌検査用担体として、以下の(a)、(b)、又は(c)に記載の塩基配列からなるプローブ群から選択された一又は二以上のプローブを固定化したものを用いることも好ましい。また、細菌検査用担体を、これら全てのプローブを基板上に固定化したものとすることもできる。
(a)配列番号3〜21に示す塩基配列からなるプローブ。
(b)配列番号3〜21に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるプローブ。
(c)(a)又は(b)のプローブに対して相補的な塩基配列からなるプローブ。
そして、上述した共通プライマーを用いてPCRにより増幅して得られた増幅産物を、このような細菌検査用担体に滴下して、増幅産物と相補的な塩基配列を有するプローブと結合させ、増幅産物の標識を検出する。
これによって、細菌が保有するeae遺伝子のサブタイプを判別することができ、サブタイプに対応するO抗原合成遺伝子領域の遺伝子の血清型を一定の範囲で特定することができる。このため、細菌の検査において、従来生じていた偽陽性の判定を低減させることが可能となっている。
本実施形態の細菌検査用担体に固定化される上記プローブは、いずれも21〜31塩基程度の長さであり、一般的なDNA合成装置により合成できる。後述する実施例で細菌検査用担体に固定化した配列番号3〜21に示す塩基配列からなるプローブは、いずれもDNA合成装置により合成したものを使用した。なお、後述する実施例でPCRに用いた配列番号1、2に示す塩基配列からなるプライマーも18、27塩基程度の長さであり、DNA合成装置により合成したものを使用した。
また、本実施形態における配列番号3〜21に示す塩基配列からなるプローブは、当該配列そのものに限定されず、配列番号3〜21に示す塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換又は付加されたプローブを用いることができる。さらに、上記の通り、配列番号3〜21に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるプローブを用いることもできる。また、これらのプローブや配列番号3〜21に示す塩基配列からなるプローブに対して、相補的な塩基配列を有するプローブを用いることもできる。
なお、ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、配列番号3に示す塩基配列からなるDNAに対して高い相同性(相同性が90%以上、好ましくは95%以上)を有するDNAが、配列番号3に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAと、ハイブリダイズする条件が挙げられる。通常、完全ハイブリッドの溶解温度(Tm)より約5℃〜約30℃、好ましくは約10℃〜約25℃低い温度でハイブリダイゼーションが起こる場合をいう。ストリンジェントな条件については、J.Sambrookら,Molecular Cloning,A Laboratory Mannual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、特に11.45節「Conditions for Hybridization of Oligonucleotide Probes」に記載されている条件等を使用することができる。
なお、図2に示す配列番号1、2の塩基配列からなるプライマーについても同様に、当該配列そのものに限定されず、配列番号1、2に示す塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換又は付加されたプライマーであって、配列番号1、2に示す塩基配列からなるプライマーを用いた場合と同一の領域を増幅できるものを用いることもできる。また、配列番号1、2に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸断片からなるプライマーであって、配列番号1、2に示す塩基配列からなるプライマーを用いた場合と同一の領域を増幅できるものを用いることもできる。
本実施形態の細菌検査用担体は、配列番号3〜21に示す塩基配列を有するプローブを用いて、既存の一般的な方法で製造することができる。
例えば、本実施形態の細菌検査用担体として貼り付け型のDNAチップを作成する場合は、DNAスポッターによりプローブをガラス基板上に固定化して、各プローブに対応するスポットを形成することにより作成することができる。また、合成型DNAチップを作成する場合は、光リソグラフィ技術により、ガラス基板上で上記配列を備えた一本鎖オリゴDNAを合成することにより作成することができる。さらに、基板はガラス製に限定されず、プラスチック基板やシリコンウエハー等を用いることもできる。また、基板の形状は平板状のものに限定されず、様々な立体形状のものとすることもでき、その表面に化学反応が可能となるように官能基を導入したものなどを用いることもできる。
本実施形態の細菌の検査方法は、具体的には、以下のように行うことができる。
まず、細菌を取得して必要に応じて増菌する。そして、得られた細菌からゲノムDNAを抽出する。ゲノムDNAの抽出は、CTAB法(Cetyl trimethyl ammonium bromide)による方法やDNA抽出装置を用いる方法など、一般的な手法により行うことができる。
次に、抽出したゲノムDNAにおける標的領域のeae遺伝子を増幅させる。すなわち、ゲノムDNAにおけるeae遺伝子を含むDNA断片を増幅させる。このeae遺伝子の増幅方法としては、PCR法を好適に用いることができる。PCR法では、標的領域を増幅させるためのプライマーセットを含有するPCR用反応液を用いて、標的領域を増幅させる。PCR装置としては、一般的なサーマルサイクラーなどを用いることができる。
本実施形態の細菌の検出方法では、例えば以下のような反応条件でPCRを行うことにより、細菌が保有するeae遺伝子を好適に増幅させることができる。
(a)95℃ 2分、(b)95℃(DNA変性工程) 10秒、(c)60℃(アニーリング工程) 20秒、(d)72℃(DNA合成工程) 90秒((b)〜(d)を40サイクル)、(e)72℃ 2分
PCR用反応液としては、例えば以下の組成からなるものを使用することが好ましい。すなわち、核酸合成基質(dNTPmixture(dCTP、dATP、dTTP、dGTP))、プライマーセット、核酸合成酵素(EX Taq HotStart DNA polymeraseなど)、試料のゲノムDNA、緩衝液、及び残りの成分として水を含むPCR用反応液を好適に使用することができる。
次に、増幅産物を本実施形態の細菌検査用担体に滴下し、この細菌検査用担体に固定化されたプローブにハイブリダイズした増幅産物の標識を検出することで、増幅産物の有無を確認する。これによって、検査対象に存在している細菌を特定することができる。
標識の検出は、蛍光スキャニング装置など一般的な標識検出装置を用いて行うことができ、例えば東洋製罐グループホールディングス株式会社のGENOGATE(登録商標)readerを用いて、増幅産物の蛍光強度を測定することにより行うことができる。測定結果は、S/N比(Signal to Noise ratio)値として得ることが好ましい。S/N比値にもとづいて、測定結果が陽性であるか陰性であるかを精度高く判定することができるためであり、一般にS/N比値が3以上の場合に、陽性と判定することができる。本明細書中に記載のS/N比値は、(メディアン蛍光強度値−バックグラウンド値)÷バックグラウンド値にて算出される。なお、標識としては蛍光に限定されず、その他のものを用いることもできる。
本実施形態の細菌検査用キットには、細菌のDNAにおけるeae遺伝子を増幅させるためのプライマーセットと、増幅産物の有無を確認するためのプローブが固定化された細菌検査用担体とが含まれる。これらのプライマーセットと細菌検査用担体は、上述したものを好適に用いることができる。
そして、プライマーセットを用いてPCRにより増幅して得られた増幅産物を、細菌検査用担体に滴下して、増幅産物と相補的な塩基配列を有するプローブと結合させて、細菌が保有するeae遺伝子のサブタイプを判別する。
以上のように、本実施形態の細菌の検査方法によれば、リバースプライマーをeae遺伝子における3’非翻訳領域から選択すると共に、フォワードプライマーをeae遺伝子における翻訳領域の一部である共通領域又は5’非翻訳領域から選択し、且つ、判別の対象とする全てのサブタイプに共通する塩基配列からリバースプライマー及びフォワードプライマーの塩基配列を決定することによって、細菌が保有するeae遺伝子の各サブタイプを一括して増幅可能な共通プライマーを設計できる。このため、PCR用反応液におけるプライマーの添加濃度等の条件の設定を容易にすることができ、PCRによる増幅反応の条件を都度改変することなく、プローブを追加すること等で検査対象のサブタイプを容易に追加することが可能である。
さらに、本実施形態の細菌の検査方法、プライマーセット、細菌検査用担体、及び細菌検査用キットによれば、このような共通プライマーを用いてその増幅産物を検出することで、細菌が保有するeae遺伝子のサブタイプを判別し、サブタイプに対応するO抗原合成遺伝子領域の遺伝子の血清型を一定の範囲で特定することができる。このため、偽陽性の判定を低減でき、細菌を精度高く検査することが可能である。
以下、本発明の実施形態に係る細菌の検査方法、プライマーセット、細菌検査用担体、及び細菌検査用キットの効果を確認するために行った試験について、具体的に説明する。
(試験1)
eae遺伝子のサブタイプがβ型、ε型、θ型、γ型である大腸菌を用いて、本実施形態の細菌の検査方法に従って設計されたプライマーセットを使用してPCRによるeae遺伝子の増幅反応を行い、得られた増幅産物をeae遺伝子のサブタイプを識別可能なプローブと結合させることによって、各大腸菌を適切に検出できるかを確認するための試験を行った。
細菌検査用担体としては、ジーンシリコン(登録商標)(東洋鋼鈑株式会社製)を用い、図3に示される配列番号3〜21のプローブを固定化したものを使用した。各プローブは、ライフテクノロジーズジャパン株式会社により合成したものを使用した。また、各プローブの基板への固定化は、マイクロアレイヤーにより行った。
細菌としては、大阪大学微生物病研究所(Research Institute for Microbial Diseases (RIMD), Osaka University)から入手した大腸菌の菌株と、岐阜大学大学院医学系研究科 病原微生物遺伝子資源保存センター(Gifu Type Culture Collection (GTC), Department of Microbiology, Gifu University School of Medicine)から入手した大腸菌の菌株を使用した。具体的には、以下の9種類の菌株を使用した。
No.1 RIMD 05091932(血清型O26)、No.2 RIMD 05091858(血清型O45)、No.3 RIMD 05091878(血清型O103)、No.4 RIMD 05091875(血清型O121)、No.5 RIMD 05092026(血清型O111)、No.6 RIMD 05091870(血清型O145)、No.7 RIMD 05091904(血清型O157)、No.8 GTC 03590(血清型O45)No.9 RIMD 0509516(血清型O157)
このうち、No.8 GTC 03590(血清型O45)、及びNo.9 RIMD 0509516(血清型O157)は病原性を有さず、eae遺伝子も保有しない菌株であり、残りは病原性及びeae遺伝子を保有するものである。
これらの大腸菌の菌株をそれぞれ入れた各アンプルに、ニュートリエントブロス(日本ベクトン・ディッキソン株式会社)を注ぎ、均一な菌液になるまで静かなピペッティング操作で懸濁した。得られた菌懸濁液をハートインヒュージョン寒天培地(日水製薬株式会社)に塗抹し、37℃で一晩好気培養して復生、増菌した。増菌した菌のコロニーを白金耳でかき集め、これらをDNA抽出用菌体とした。
次に、DNeasy Blood&Tissue Kit(株式会社キアゲン)を用い、マニュアルに記載のグラム陰性菌の抽出方法に従って、上記各DNA抽出用菌体からDNAを抽出した。このDNA抽出液をPCRにおいて使用するテンプレートとした。
そして、PCR法により、eae遺伝子を菌株毎に増幅した。プライマーセットとしては、図2に示す共通プライマーを使用して、各PCR用反応液に含有させた。このプライマーセットは、シグマアルドリッチジャパン合同会社により合成したものを使用した。リバースプライマーの5’末端には、Cy5により蛍光標識を行った。
PCR用反応液としては、Ex Taq Buffer(タカラバイオ株式会社製)を使用し、菌株毎に、次の組成のものを作成した。なお、フォワードプライマーとしては、配列番号1に示す塩基配列における「Y」をC又はTとした2種類のオリゴDNAを等モル濃度で混合したものを使用した。
1.10x Ex Taq buffer(20mM Mg2+ plus) 2.5μl
2.dNTP Mixture(各20mM) 2.0μl
3.フォワードプライマー(10μM) 0.3125μl
4.リバースプライマー(10μM) 1.5625μl
5.TaKaRa Ex Taq HotStart DNA polymerase 0.125μl
6.Template DNA(20pg/μl) 5.0μl
7.水(全体が25.0μlになるまで加水)
上記PCR用反応液を使用して、核酸増幅装置(サーマルサイクラーepグラジエント エッペンドルフ株式会社製)により、次の条件でDNAの増幅を行った。
(a)95℃ 2分
(b)95℃ 10秒
(c)60℃ 20秒
(d)72℃ 90秒((b)〜(d)を40サイクル)
(e)72℃ 2分
次に、PCR増幅産物に緩衝液(3×SSCクエン酸−生理食塩水+0.3%SDS)を混合して、95℃で1分間加熱処理を行った後、上記細菌検査用担体(DNAチップ)に滴下した。この細菌検査用担体を45℃で1時間静置し、上記緩衝液を用いてハイブリダイズしなかったPCR産物をDNAチップから洗い流した。
そして、標識検出装置(GENOGATE reader)を用いて、細菌検査用担体に固定化された各プローブにおける蛍光強度(プローブに結合した増幅産物の蛍光強度)を測定して、各プローブにおけるS/N比値を取得した。その結果を図4〜7に示す。
まず、eae遺伝子を保有するNo.1からNo.7に示す血清型O26、O45、O103、O111、O121、O145、O157の全ての大腸菌について、増幅産物が検出されている。したがって、本実施形態の細菌の検査方法により設計して作成され、当該試験において用いられたプライマーセットは、各サブタイプのeae遺伝子のいずれについても増幅できたことが分かる。
また、β型のサブタイプを判別するための配列番号3〜7に示す塩基配列を有するプローブは、β型のサブタイプのeae遺伝子を保有するO26大腸菌の菌株について、全て陽性となっており、β型のサブタイプ以外のeae遺伝子を保有する大腸菌の菌株について、全て陰性となっている。したがって、配列番号3〜7に示す塩基配列を有するプローブは、β型のサブタイプを適切に判別できることが分かる。
また、ε型のサブタイプを判別するための配列番号8〜10に示す塩基配列を有するプローブは、ε型のサブタイプのeae遺伝子を保有するO45、O103、及びO121大腸菌の菌株について、全て陽性となっており、ε型のサブタイプ以外のeae遺伝子を保有する大腸菌の菌株について、全て陰性となっている。したがって、配列番号8〜10に示す塩基配列を有するプローブは、ε型のサブタイプを適切に判別できることが分かる。
また、θ型のサブタイプを判別するための配列番号11〜15に示す塩基配列を有するプローブは、θ型のサブタイプのeae遺伝子を保有するO111大腸菌の菌株について、全て陽性となっており、θ型のサブタイプ以外のeae遺伝子を保有する大腸菌の菌株について、全て陰性となっている。したがって、配列番号11〜15に示す塩基配列を有するプローブは、θ型のサブタイプを適切に判別できることが分かる。
また、γ型のサブタイプを判別するための配列番号16〜21に示す塩基配列を有するプローブは、γ型のサブタイプであるO145、O157大腸菌の菌株について、全て陽性となっており、γ型のサブタイプ以外の大腸菌の菌株について、全て陰性となっている。したがって、配列番号16〜21に示す塩基配列を有するプローブは、γ型のサブタイプを適切に判別できることが分かる。
さらに、eae遺伝子を保有していないNo.8、No.9に示される大腸菌について、配列番号3〜21に示す塩基配列を有するプローブは、全て陰性となっており、偽陽性が生じていないことが分かる。
(試験2)
特定の大腸菌を用いて、本実施形態の細菌の検査方法に従って設計されたプライマーセットを使用してPCRによる増幅反応を行い、得られた増幅産物の塩基配列をシーケンサーで決定することによって、当該大腸菌を同定するための試験を行った。
細菌としては、大阪大学微生物病研究所(Research Institute for Microbial Diseases (RIMD), Osaka University)から入手した大腸菌の菌株(RIMD 05091872(血清型O156))を使用した。
この大腸菌の菌株を入れたアンプルに、ニュートリエントブロス(日本ベクトン・ディッキソン株式会社)を注ぎ、均一な菌液になるまで静かなピペッティング操作で懸濁した。得られた菌懸濁液をハートインヒュージョン寒天培地(日水製薬株式会社)に塗抹し、37℃で一晩好気培養して復生、増菌した。増菌した菌のコロニーを白金耳でかき集め、これをDNA抽出用菌体とした。
次に、DNeasy Blood&Tissue Kit(株式会社キアゲン)を用い、マニュアルに記載のグラム陰性菌の抽出方法に従って、上記DNA抽出用菌体からDNAを抽出した。このDNA抽出液をPCRにおいて使用するテンプレートとした。
そして、PCR法により、eae遺伝子を増幅した。プライマーセットとしては、図2に示す共通プライマーを使用して、PCR用反応液に含有させた。このプライマーセットは、シグマアルドリッチジャパン合同会社により合成したものを使用した。リバースプライマーの5’末端には、Cy5により蛍光標識を行った。
PCR用反応液としては、Ex Taq Buffer(タカラバイオ株式会社製)を使用し、次の組成のものを作成した。なお、フォワードプライマーとしては、配列番号1に示す塩基配列における「Y」をC又はTとした2種類のオリゴDNAを等モル濃度で混合したものを使用した。
1.10x Ex Taq buffer(20mM Mg2+ plus) 2.5μl
2.dNTP Mixture(各20mM) 2.0μl
3.フォワードプライマー(10μM) 0.3125μl
4.リバースプライマー(10μM) 1.5625μl
5.TaKaRa Ex Taq HotStart DNA polymerase 0.125μl
6.Template DNA(20pg/μl) 5.0μl
7.水(全体が25.0μlになるまで加水)
上記PCR用反応液を使用して、核酸増幅装置(サーマルサイクラーepグラジエント エッペンドルフ株式会社製)により、次の条件でDNAの増幅を行った。
(a)95℃ 2分
(b)95℃ 10秒
(c)60℃ 20秒
(d)72℃ 90秒((b)〜(d)を40サイクル)
(e)72℃ 2分
次に、PCR増幅産物に酵素処理を行って、シーケンシング用のサンプルを調製した。具体的には、illustra ExoProStar(GEヘルスケア社製)を使用して、マニュアルの記載に従って調整した。
そして、Applied Biosystems 3730xl DNAアナライザ(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いて、シーケンシングを行い、PCR増幅産物の塩基配列を決定した。
さらに、遺伝情報処理ソフトウェアGENETYX Ver.12を用いて、PCR増幅産物の塩基配列と、データベース上の塩基配列(Accession No. AJ271407)を比較した。
その結果、これらの塩基配列は、99.8%(932/934)一致していた。このデータベース上の塩基配列(Accession No. AJ271407)は、上述したように、eae遺伝子のサブタイプがζ型の大腸菌のeae遺伝子の塩基配列を示している。
したがって、本実施形態の細菌の検査方法、及びプライマーセットによれば、eae遺伝子のサブタイプがζ型の大腸菌のeae遺伝子を適切に増幅でき、その増幅産物の塩基配列をシーケンサーで決定することで、ζ型のサブタイプを適切に判別できることが分かる。
本発明は、以上の実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、本実施形態の細菌検査用担体において、各プローブを1スポットずつ、又は複数スポットずつ固定化することができる。また、本実施形態における病原性大腸菌以外の細菌を検出するためのその他のプローブを、本実施形態におけるプローブと共に固定化することもでき、適宜変更することが可能である。
本発明は、eae遺伝子を保有する細菌の検査を行う場合に好適に利用することが可能である。

Claims (10)

  1. 細菌のDNAにおけるeae遺伝子を標的領域としてPCRにより増幅させ、eae遺伝子のサブタイプを判別する細菌の検査方法であって、
    eae遺伝子を標的領域とするプライマーセットのリバースプライマーをeae遺伝子における3’非翻訳領域から選択すると共に、前記プライマーセットのフォワードプライマーをeae遺伝子における翻訳領域の一部である共通領域又はeae遺伝子における5’非翻訳領域から選択し、且つ、前記リバースプライマー及び前記フォワードプライマーの選択において、判別の対象とする全てのサブタイプに共通する塩基配列から前記リバースプライマー及び前記フォワードプライマーを設計したプライマーセットを用いる
    ことを特徴とする細菌の検査方法。
  2. 前記プライマーセットを用いてPCRにより増幅して得られた増幅産物を、eae遺伝子における前記フォワードプライマーと前記リバースプライマーの結合位置の間の領域から選択されたeae遺伝子のサブタイプを識別可能な一又は二以上のプローブと結合させる工程、前記増幅産物を制限酵素処理して得られた核酸断片を電気泳動で分離する工程、又は、前記増幅産物の塩基配列をシーケンサーで決定する工程を含む
    ことを特徴とする請求項1記載の細菌の検査方法。
  3. 前記プライマーセットが、配列番号1に示す塩基配列からなるフォワードプライマー、及び配列番号2に示す塩基配列からなるリバースプライマーからなることを特徴とする請求項1又は2記載の細菌の検査方法。
  4. 前記プライマーセットを用いてPCRにより増幅して得られた増幅産物を、以下の(a)、(b)、又は(c)に記載の塩基配列からなるプローブ群から選択された一又は二以上のプローブを固定化した担体に滴下して、前記増幅産物と相補的な塩基配列を有するプローブと結合させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の細菌の検査法。
    (a)配列番号3〜21に示す塩基配列からなるプローブ。
    (b)配列番号3〜21に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるプローブ。
    (c)(a)又は(b)のプローブに対して相補的な塩基配列からなるプローブ。
  5. 前記プライマーセットを用いてPCRにより増幅して得られた増幅産物を、配列番号3〜21に示す塩基配列からなるプローブ群から選択された一又は二以上のプローブを固定化した担体に滴下して、前記増幅産物と相補的な塩基配列を有するプローブと結合させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の細菌の検査方法。
  6. 前記細菌が大腸菌であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の細菌の検査方法。
  7. 細菌のDNAにおけるeae遺伝子をPCRにより増幅するための、配列番号1に示す塩基配列からなるフォワードプライマー、及び配列番号2に示す塩基配列からなるリバースプライマーからなることを特徴とするプライマーセット。
  8. 細菌のDNAにおけるeae遺伝子のサブタイプを判別するための、以下の(a)、(b)、又は(c)に記載の塩基配列からなるプローブ群から選択された一又は二以上のプローブを固定化したことを特徴とする細菌検査用担体。
    (a)配列番号3〜21に示す塩基配列からなるプローブ。
    (b)配列番号3〜21に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるプローブ。
    (c)(a)又は(b)のプローブに対して相補的な塩基配列からなるプローブ。
  9. 細菌のDNAにおけるeae遺伝子のサブタイプを判別するための、配列番号3〜21に示す塩基配列からなるプローブ群から選択された一又は二以上のプローブを固定化したことを特徴とする細菌検査用担体。
  10. 細菌のDNAにおける標的領域をPCRにより増幅させるためのプライマーセットと、PCRにより増幅して得られた増幅産物の有無を確認するためのプローブが固定化された担体を含む細菌検査用キットであって、
    前記プライマーセットが、請求項7に記載のものを含み、
    前記担体が、請求項8又は9に記載のものを含み、
    前記プライマーセットを用いてPCRにより増幅して得られた増幅産物を、前記担体に滴下して、前記増幅産物と相補的な塩基配列を有するプローブと結合させて、eae遺伝子のサブタイプを判別する
    ことを特徴とする細菌検査用キット。
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