JP2017163970A - 黄色ブドウ球菌を検出するためのオリゴヌクレオチド - Google Patents

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Abstract

【課題】従来技術では、Staphylococcus argenteusあるいはStaphylococcus schweitzeriは、Staphylococcus aureusとして誤検出されることがあった。したがって、これらの菌と区別してS. aureusを迅速に検出する方法が求められていた。
【解決手段】Staphylococcus aureusのゲノム配列の中の少なくとも連続した10塩基からなる塩基配列を有し、かつ、前記塩基配列をStaphylococcus argenteusおよびschweitzeriのゲノム配列と対比させたときに1塩基以上のミスマッチを有するオリゴヌクレオチド。
【選択図】図2

Description

本発明は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を検出するためのオリゴヌクレオチドに関する。更に詳しくは、オリゴヌクレオチドプローブを用いて、試料中に含まれる黄色ブドウ球菌を検出する方法及びそのためのキットに関する。
ブドウ球菌とは、ブドウ球菌属(Staphylococcus属)(以下、属名をS.と略記することもある。)に属するグラム陽性球菌である。特に、黄色ブドウ球菌(S. aureus)はヒトに対して病原性を示すとともに、メチシリン耐性遺伝子(mecA)などの薬剤耐性遺伝子を持つことで薬剤耐性を示すことが知られている(特許文献1)。したがって、治療薬の選択、感染拡大防止、食中毒予防等を目的として、S. aureusを表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)などの他のブドウ球菌とは区別して迅速に検出、分類できる方法が求められており、そのような方法として、各微生物が保有する遺伝子配列の差を利用し、一部の塩基配列を検出することにより分別検出できる方法が、多く提案されてきている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。
[S. argenteusおよびS. schweitzeriについて]
ところで、近年、これまでS. aureusに分類されていた菌株のいくつかが、全ゲノム解析の結果、系統学的に別種の菌であることが判明した(非特許文献1)。例えば、新しく分類されるようになった菌株に、S. argenteus、S. schweitzeriがある。例えば、S. argenteusはヒトに対して病原性を示すことが明らかになっている(非特許文献1)。したがって、S. aureusとこれらの菌種を正確に分離検出することは臨床診断上、極めて重要である。
しかしながら、従来技術では、S. argenteusがS. aureusとして誤検出されると報告されてきた(非特許文献1、特許文献4)。S. aureusと同定された株のうち、実に4.1%はS. argenteusであったという報告もある(非特許文献3)。また、臨床現場で一般的に用いられている同定感受性検査(例えば、Vitek(登録商標)2,bioMerieux社)を用いてもS. argenteusとS. aureusを区別することは困難であると報告されてきた(非特許文献1)。
また、S. argenteusと同様に、S. schweitzeriも、S. aureusと同じくコアグラーゼテストで陽性を示すだけでなく、臨床現場で一般的に用いられている同定感受性検査(例えば、Vitek(登録商標)2,bioMerieux社)や、細菌同定に一般的に用いられる16SrRNA遺伝子シークエンスを使用してもS. aureusとして同定される(非特許文献5)。
S. aureusは院内感染症の代表的な原因菌として知られており、院内感染の監視と対策のために、S. aureusをS. argenteusあるいはS. schweitzeriと区別することは非常に重要である。
なお、Multilocus Sequence Typing法(MLST)や、次世代シークエンシングを使用した全ゲノム解析等を行うことで、S. aureus、S. argenteus、S. schweitzeriの同定が可能であった(非特許文献1、非特許文献3)。しかしながら、該方法らは高コスト、操作が煩雑、試験時間が長い等の課題があった。
特開2013−048620 特表2013−535951 特表2001−518283 特開2015−073457
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology(2015),65,15−22 JOURNAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY,July 1992,p.1654−1660 JOURNAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY,March 2015,p.1005−1008 Nucleic Acids Research,2006,Vol.34,No.8 e60 JOURNAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY,November 2014,p.4036−4038
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、S. argenteus、S. schweitzeriと区別して、S. aureusを検出する方法及びそのためのキットを提供することにある。
本発明者らは鋭意研究の結果、特定の核酸配列を含むオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって、簡便な方法で、S. argenteus、S. schweitzeriと区別して、S. aureusを検出できることを見出し、本発明に到達した。即ち、本発明の概要は以下の通りである。
[項1]
以下の(X)かつ(Y)かつ(Z)を特徴として有するオリゴヌクレオチド。
(X)Staphylococcus aureusのゲノム配列の中の少なくとも連続した10塩基からなる塩基配列を有する。
(Y)前記(X)に記載の塩基配列をStaphylococcus argenteusのゲノム配列と対比させたときに1塩基以上のミスマッチを有する。
(Z)前記(X)に記載の塩基配列をStaphylococcus schweitzeriのゲノム配列と対比させたときに、1塩基以上のミスマッチを有する。
[項2]
前記(X)の代わりに以下の(X2)を特徴として有する項1に記載のオリゴヌクレオチド。
(X2)配列番号1あるいは配列番号2で示される塩基配列の中の少なくとも連続した10塩基からなる塩基配列を有する。
[項3]
前記(Y)に記載の1塩基以上のミスマッチと前記(Z)に記載の1塩基以上のミスマッチが互いに異なっている項1または項2に記載のオリゴヌクレオチド。
[項4]
以下の(1A)または(2A)で示される塩基配列からなる、項1〜項3のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
(1A)配列番号1で示される塩基配列の中の少なくとも連続した10塩基からなる塩基配列であって、その配列が、下記の(I)で示される群のうち少なくとも一つの塩基配列である塩基配列。
(2A)前記(1A)の塩基配列に相補的な塩基配列。
(I)配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16および配列番号20からなる群。
[項5]
前記(I)で示される群が、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号13、配列番号20である項4に記載のオリゴヌクレオチド。
[項6]
1つ以上の標識物質で標識されている、項1〜項5のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
[項7]
以下の(1)〜(3)の工程を含むStaphylococcus aureusを検出する方法。
(1)項4の(1A)もしくは(2A)で示される塩基配列を含む核酸断片を増幅する第一工程。
(2)第一工程で得られうる増幅産物と、項4〜項6のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドのうち第一工程で得られうる増幅産物にハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる第二工程。
(3)第二工程で得られうる複合体を検出する第三工程。
[項8]
(3)の工程が融解曲線分析を含む、項7に記載の方法。
[項9]
以下の(P)および(Q)を含むStaphylococcus aureusの検出キット。
(P)項4の(1A)もしくは(2A)で示される塩基配列を含む核酸断片を増幅できるオリゴヌクレオチドプライマーセット。
(Q)項4〜項6のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
本発明により、S. argenteus、S. schweitzeriと区別して、S. aureusを検出することができるようになった。すなわち、本発明に記載の方法又はキットを使用することで、S. argenteusおよびS. schweitzeriがS. aureusと誤判定されなくなった。該方法及び該キットを使用することは、ブドウ球菌感染症に対する治療薬の選択、感染拡大防止、食中毒予防等に大きく貢献できる。
S. aureus、S. argenteus、S. schweitzeriのゲノムDNAの一部をアライメントした図である。 実施例1の結果を示す図である。「S. aureus」は配列番号1の塩基配列で示される合成オリゴヌクレオチドを鋳型として融解曲線分析を行った結果を示す。「S. argenteus」は配列番号3の塩基配列で示される合成オリゴヌクレオチドを鋳型として用いた場合、「S. schweitzeri」は配列番号4の塩基配列で示される合成オリゴヌクレオチドを鋳型として用いた場合、「水」は合成オリゴヌクレオチドの代わりに精製水を用いた場合の結果をそれぞれ示す。 実施例2の結果を示す図である。「検体1」「検体2」「検体3」「検体4」はそれぞれの検体について核酸を増幅し、融解曲線分析を行った結果を示す。「水」は各検体の代わりに精製水を用いた場合の結果を示す。 参考例1の結果(検体1のシークエンス解析で得られた配列)を示す図である。S. aureusのゲノムDNAの一部と高い相同性を示した。 参考例1の結果(検体2のシークエンス解析で得られた配列)を示す図である。S. argenteusのゲノムDNAの一部と高い相同性を示した。 参考例1の結果(検体3のシークエンス解析で得られた配列)を示す図である。S. schweitzeriのゲノムDNAの一部と高い相同性を示した。 実施例3の結果を示す図である。 比較例1の結果を示す図である。 S. aureus、S. argenteus、S. schweitzeriのゲノムDNAの一部をアライメントした図である。
[オリゴヌクレオチド]
[1]
本発明の実施態様の一つは、以下の(X)かつ(Y)かつ(Z)を特徴として有するオリゴヌクレオチドである。
(X)Staphylococcus aureusのゲノム配列の中の少なくとも連続した10塩基からなる塩基配列を有する。
(Y)前記(X)に記載の塩基配列をStaphylococcus argenteusのゲノム配列と対比させたときに1塩基以上のミスマッチを有する。
(Z)前記(X)に記載の塩基配列をStaphylococcus schweitzeriのゲノム配列と対比させたときに、1塩基以上のミスマッチを有する。
本発明のオリゴヌクレオチドの用途は特に限定されない。例えば、試料中に含まれるS. aureusを検出する方法において、プローブとして使用することができ、それによって、S. aureusをS. argenteusあるいはS. schweitzeriと区別して検出できる。
S. aureusのゲノム配列は、非特許文献1により公知である。特徴(X)に関して、本発明のオリゴヌクレオチドは、前記ゲノム配列の中の少なくとも連続した10塩基からなる塩基配列を有していれば、特に限定されない。好ましくは、後述の配列番号1または配列番号2に記載の塩基配列中の少なくとも連続した10塩基からなる塩基配列を有していればよい。
S. argenteusのゲノム配列は、非特許文献1により公知である。特徴(Y)に関して、本発明のオリゴヌクレオチドは、前記ゲノム配列と対比させたときに1塩基以上のミスマッチを有していれば、特に限定されない。
S. schweitzeriのゲノム配列は、非特許文献1により公知である。特徴(Z)に関して、本発明のオリゴヌクレオチドは、前記ゲノム配列と対比させたときに1塩基以上のミスマッチを有していれば、特に限定されない。
また、前記(Y)に記載の1塩基以上のミスマッチと前記(Z)に記載の1塩基以上のミスマッチが互いに異なっているオリゴヌクレオチドはさらに好ましい。ミスマッチが互いに異なっていることで、S. aureusだけでなく、S. argenteusとS. schweitzeriも区別して検出することができる。本発明における「ミスマッチが互いに異なっている」とは、ミスマッチの数や位置が異なっていることや、対比させたときの塩基がそれぞれ異なることをいう。
塩基配列を対比したときのミスマッチの数はアラインメント解析によって判断することができる。アライメント解析は、当分野において一般的に行われており、本明細書においては、The European Bioinformatics Institute(EMBL−EBI)が提供する多重整列プログラムであるClustal Omega(クラスタルオメガ)を使用する。該プログラムでS. aureus、S. argenteus、S. schweitzeriのゲノム配列をそれぞれ整列させることで、ミスマッチの数や位置を特定する。
前記対比において、前記ゲノム配列のどの部分と対比させるかについては、特に限定されない。例えば、S. aureusに特異的な遺伝子として知られているnuc遺伝子や、塩基配列の差を利用して他のブドウ球菌と区別できるfemA遺伝子、tuf遺伝子等の中から選択すれば良い。これらの遺伝子との対比ができるオリゴヌクレオチドは、例えば、
S. aureusの検出プローブとして使用する場合に、S. argenteusあるいはS. schweitzeriと区別できるだけでなく、Staphylococcus属以外の微生物(例えば、Enterococcus属、Streptococcus属、Escherichia属、Klebsiella属、Serratia属、Pseudomonas属、Acinetobacter属、Haemophilus属、Mycobacterim属、Corynebacterium属、Mycoplasma属、Enterobacter属、Citrobacter属等が挙げられる)と区別できる特異性を有する点で、好ましい。とりわけ、nuc遺伝子、femA遺伝子は、Staphylococcus属のなかでも、S. aureus、S. argenteus、S. schweitzeri以外の他のStaphylococcus属の微生物(例えば、S. epidermidis、S. capitis、S. caprae、S. carnosus、S. chromogenes、S. cohnii、S. condimenti、S. delphini、S. equorum、S. felis、S. fleurettii、S. gallinarum、S. haemolyticus、S. hominis、S. hyicus、S. intermedius、S. kloosii、S. lentus、S. lugdunensis、S. lutrae、S. muscae、S. nepalensis、S. pasteuri、S. piscifermentans、S. saccharolyticus、S. saprophyticus、S. schleiferi、S. sciuri、S. simulans、S. succinus、S. vitulinus、S. warneri、S. xylosus等が挙げられる)と区別できる特異性を有するという意味で、より好ましい。
[1−1]
配列番号1で示される塩基配列は、S. aureusのnuc遺伝子の塩基配列である。nuc遺伝子は、S. aureus同定マーカーとして従来から使用されてきた(非特許文献1、非特許文献2、特許文献4)。従来技術では、nuc遺伝子をターゲットにした核酸増幅検査では、S. aureusとS. argenteusを区別できない、あるいはS. schweitzeriを検出できないと報告されてきた(非特許文献1、非特許文献5、特許文献4)。
しかしながら、本発明者らは、S. aureus、S. argenteus、S. schweitzeriのnuc遺伝子配列をアライメント解析することによって、nuc遺伝子の特定の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプローブを使用することで、S. argenteusあるいはS. schweitzeriと区別してS. aureusを検出できることを見出した。
S. aureus 3株、S. argenteus 3株、S. schweitzeri 3株のnuc遺伝子の塩基配列の一部(配列番号1の421番目から600番目に該当)をアライメント解析した結果を図1に示す。
アライメント解析の結果、S. aureusのnuc遺伝子において、その塩基配列がS. argenteusあるいはS. schweitzeriと異なる箇所があることが明らかとなった。S. aureusとS. argenteusのゲノム配列を対比させたときのミスマッチあるいはS. aureusとS. schweitzeriのゲノム配列を対比させたときのミスマッチを含むオリゴヌクレオチドは、S. argenteusあるいはS. schweitzeriと区別してS. aureusを検出するためのオリゴヌクレオチドプローブとして好ましい。
さらに、S. aureusとS. argenteusのゲノム配列を対比させたときのミスマッチと、S. aureusとS. schweitzeriのゲノム配列を対比させたときのミスマッチが互いに異なる塩基配列をオリゴヌクレオチドプローブとして使用することで、S. aureus、S. argenteus、S. schweitzeriの3菌種を互いに区別して検出できることを見出した。
[1−2]
配列番号2で示される塩基配列は、S. aureusのfemA遺伝子の塩基配列である。femA遺伝子も、S. aureus同定マーカーとして従来から使用されてきた(特許文献2、特許文献3)。
S. aureus 3株、S. argenteus 3株、S. schweitzeri 3株のfemA遺伝子の塩基配列の一部(配列番号2の421番目から600番目に該当)をアライメント解析した結果を図9に示す。
アライメント解析の結果、S. aureusのfemA遺伝子において、その塩基配列がS. argenteusあるいはS. schweitzeriと異なる箇所があることが明らかとなった。S. aureusとS. argenteusのゲノム配列を対比させたときのミスマッチあるいはS. aureusとS. schweitzeriのゲノム配列を対比させたときのミスマッチを含むオリゴヌクレオチドは、S. argenteusあるいはS. schweitzeriと区別してS. aureusを検出するためのオリゴヌクレオチドプローブとして好ましい。
[2]
前記のオリゴヌクレオチドとして、具体的には、以下の(1A)または(2A)で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを例示することができる。
(1A)配列番号1で示される塩基配列の中の少なくとも連続した10塩基からなる塩基配列であって、その配列が、下記の(I)で示される群のうち少なくとも一つの塩基配列である塩基配列。
(2A)前記(1A)の塩基配列に相補的な塩基配列。
(I)配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16および配列番号20からなる群。
前記のオリゴヌクレオチドとして、以下の(3A)または(4A)で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いてもよい。
(3A)配列番号2で示される塩基配列の中の少なくとも連続した10塩基からなる塩基配列であって、その配列が、下記の(II)で示される群のうち少なくとも一つの塩基配列を含む塩基配列。
(4A)前記(3A)の塩基配列に相補的な塩基配列。
(II)配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33からなる群。
本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号1または配列番号2で示される塩基配列のうち、前記で見出された箇所のうち少なくとも一つの塩基を含む、少なくとも連続した10塩基からなる塩基配列を有する。
本明細書において、「少なくとも連続した10塩基」の塩基数は特に限定されない。
オリゴヌクレオチドプローブとしての使用を想定した場合、ターゲット核酸に対してハイブリダイズする領域の塩基数は、その検査法によって異なるが、好ましい上限は50塩基であり、より好ましくは35塩基であり、さらに好ましくは30塩基である。一方、塩基数の好ましい下限は10塩基であり、より好ましくは15塩基である。長いオリゴヌクレオチドプローブは十分な特異性が得られないことがある。一方で、短いオリゴヌクレオチドプローブはハイブリダイゼーション効率が低下することがある。
また、本明細書において、「少なくとも一つ」の箇所数は特に限定されないが、S. argenteusあるいはS. schweitzeriに対して数塩基の一塩基多型があることが好ましい。オリゴヌクレオチドが含む一塩基多型の数によって、該オリゴヌクレオチドの融解温度(Melting Temperature、Tm)が変化する。Tmとは、オリゴヌクレオチドがその相補鎖と二本鎖を形成している割合と二本鎖を形成せず一本鎖になっている割合が等しいときの温度をいう。オリゴヌクレオチドが標的核酸(例えば、S. argenteusゲノムあるいはS. schweitzeriゲノム)に対して一塩基多型を含む場合、標的核酸との相互作用が弱くなるため一般的にTm値は小さくなる。したがって、標的核酸に対してオリゴヌクレオチドの一塩基多型の数が多いほど一塩基多型がないときと比べてTm値が小さくなるため、標的核酸(例えば、S. aureusゲノム、S. argenteusゲノムあるいはS. schweitzeriゲノム)に対するオリゴヌクレオチドの一塩基多型を融解曲線分析等によって測定することで、S. aureusとS. argenteusあるいはS. schweitzeriを明確に区別することができる。しかしながら、一塩基多型の数が多すぎると、該オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション効率が低下する。そのため、好ましい一塩基多型の数は1箇所から4箇所である。より好ましくは、1箇所から3箇所であり、さらに好ましくは、1箇所から2箇所である。
前記のオリゴヌクレオチドは、試料中に含まれるS. aureusを検出する方法において、プローブとして使用することができ、それによって、簡便、短時間にS. argenteusあるいはS. schweitzeriと区別してS. aureusを検出できる。
本発明者らは、該オリゴヌクレオチドがそれぞれの菌種で株間差がないことをアライメント解析によって見出した。したがって、該オリゴヌクレオチドはS. argenteusあるいはS. schweitzeriと区別してS. aureusを検出するためのオリゴヌクレオチドプローブとして好ましい。
前記(I)で示される群のうち、特に配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号13、配列番号20で示される塩基配列は、S. aureusとはミスマッチがなく、S. argenteusあるいはS. schweitzeriとは1〜2塩基のミスマッチを含んでいるため、S. aureusとS. argenteusあるいはS. schweitzeriを区別するためのヌクレオチドプローブとしてより好ましい。
また、融解曲線分析における一塩基多型でのTm値の差は一般的に小さい。例えば、一つのミスマッチがある場合、ないときと比べてオリゴヌクレオチドプローブのTm値の差は0.5〜3℃という報告がある(非特許文献4)。そのため、Tm値の差を大きくするために、LNA(Locked Nucleic Acid)などのヌクレオチドアナログを含むオリゴヌクレオチドプローブが使用される(非特許文献4)。しかしながら、LNAを含むオリゴヌクレオチドプローブは、設計が難しい、価格が高い等の課題があるため、Tm値の差を大きくするために別の方法が求められてきた。
しかしながら、本発明者らは鋭意研究を続けた結果、請求項に記載のオリゴヌクレオチドをオリゴヌクレオチドプローブと使用することで、融解曲線分析におけるS. aureusと、S. argenteusあるいはS. schweitzeriとのTm値の差が予想以上に大きくなることを見出した。該オリゴヌクレオチドはLNAなどのヌクレオチドアナログを含まなくともTm値の差が大きく、S. aureusと、S. argenteusあるいはS. schweitzeriを明確に区別することができるため、誤判定を容易に防ぐことができる。
例えば、配列番号17、配列番号18、配列番号19で示される塩基配列はそれぞれS. aureus、S. argenteus、S. schweitzeriのnuc遺伝子配列の一部である。これらの領域に結合する蛍光オリゴヌクレオチドプローブ(配列番号20)を使用して融解曲線分析を行った結果、簡便、短時間にS. aureus、S. argenteus、S. schweitzeriをそれぞれ分離できた(実施例1)。
さらに驚くべきことに、S. aureusとS. argenteus、S. aureusとS. schweitzeriの融解曲線ピークの温度差はそれぞれ約5℃、10℃であった(図2)。配列番号20で示される蛍光オリゴヌクレオチドプローブは、S. aureusとはミスマッチがなく、S. argenteus、S. schweitzeriとはそれぞれ一つおよび二つのミスマッチがある。一つあるいは二つのミスマッチであっても約5℃あるいは10℃のTm値の差があるため、ハイブリダイゼーション効率を低下させることなく、S. aureus、S. argenteus、S. schweitzeriの3菌種を明確に区別することができる。
一方で、nuc遺伝子の一部の塩基配列をターゲットにしてS. aureusを検出する技術はすでに公開されているが(例えば、特許文献4)、該文献に示されている塩基配列では、S. aureusとS. argenteusを分離することはできなかった(比較例1)(図8)。また、該文献に示されている塩基配列では、S. schweitzeriに対してミスマッチが多かったため融解曲線分析では適切な測定結果が得られなかった(比較例1)(図8)。
[3]
本発明のオリゴヌクレオチドは、1つ以上の標識物質で標識されていることが好ましい。このようなオリゴヌクレオチドは、例えば、オリゴヌクレオチドプローブとして使用することができる。
オリゴヌクレオチドプローブを使用した核酸検査法は、従来から実施されており、既に当該技術分野において確立されている(例えば、特許文献4)。
オリゴヌクレオチドプローブは、その目的に応じて、一つ以上の標識物質を付加することができる。標識物質には、蛍光物質、化学発光物質、放射性物質、ビオチン、アルカリホスファターゼ、ジゴキシゲニン、ペルオキシダーゼなどがあるが、本発明では請求項に記載の事項以外は特に限定されず、検査法に応じて公知の標識物質が標識されたオリゴヌクレオチドプローブを使用することができる。また、オリゴヌクレオチドプローブの標識化のためにリンカーなどを付加してもよい。
例えば、蛍光物質で標識された蛍光オリゴヌクレオチドプローブには、Taqman(登録商標)プローブ、モレキュラービーコン、サイクリングプローブ、QProbe(登録商標)、Eprobe(登録商標)等が挙げられるが、本発明においてこれらに限定されない。
また、オリゴヌクレオチドプローブを構成する塩基には、イノシン、ペプチド核酸(PNA)、LNAといったヌクレオチドアナログを含めてもよい。ヌクレオチドアナログを使用することで、特異性の向上などが期待できる。
[4]
[S. aureusを検出する方法]
本発明の別の実施態様の一つは、以下の(1)〜(3)の工程を含むS. aureusを検出する方法である。
(1)前記の(1A)もしくは(2A)で示される塩基配列を含む核酸断片を増幅する第一工程。
(2)第一工程で得られうる増幅産物と、前記の本発明のオリゴヌクレオチドのうち第一工程で得られうる増幅産物にハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる第二工程。
(3)第二工程で得られうる複合体を検出する第三工程。
[第一工程(核酸増幅工程)]
核酸増幅方法は、本発明において請求項に記載の事項以外は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、PCR、リアルタイムPCR、デジタルPCR、定量PCR(qPCR)、LA−PCR(Long and Accurate PCR)、ABC−PCRを含む競合的PCR、In situ PCR、RNA−primered PCR、multiplex PCR、シャトルPCR、PCR/GC−calmp法、Immuno PCR、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、NASBA法、TMA法、TRC法、SDA法、LAMP法等が挙げられる。なお、各方法における核酸増幅反応の条件は特に制限されず、それぞれの条件にて行うことができる。
核酸増幅酵素には、その核酸増幅方法に応じて、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素等が使用できる。また、核酸増幅酵素は、天然由来酵素だけでなく、人工的にアミノ酸配列を改変した組換え体酵素を使用してもよい。例えば、核酸増幅方法にPCRを用いる場合、使用できるDNAポリメラーゼは、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、KODポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ等が挙げられるが、本発明においてこれらに限定されない。
核酸増幅反応の組成物には、その方法に応じていくつかの反応成分が必要である。一例として、PCRを用いた核酸増幅方法においては、測定試料、DNAポリメラーゼ、オリゴヌクレオチドプライマー、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs)、反応バッファー、マグネシウム塩が一般的に必要である。また、目的に応じてUNG(Uracil−N−Glycosylase)、BSA、DMSO、ベタイン、グリセロール、糖類、アミノ酸、ペプチド、アミン、カリウム塩等を添加物として含めてもよいが、本発明においてこれらに限定されない。
オリゴヌクレオチドプライマーは、核酸増幅反応において核酸増幅の起点として使用されるオリゴヌクレオチドであり、当該技術分野において常用されている(例えば、特許文献4、非特許文献2)。また、核酸増幅方法に応じて複数種類のオリゴヌクレオチドプライマーが使用される。オリゴヌクレオチドプライマーは、ターゲット核酸に対して相補的な塩基配列を含んでいることを特徴とし、ターゲット核酸に対してハイブリダイズする領域の塩基数は、その核酸増幅方法によって異なるが、好ましい上限は50塩基であり、より好ましくは35塩基であり、さらに好ましくは30塩基である。一方、塩基数の好ましい下限は10塩基であり、より好ましくは15塩基である。長いオリゴヌクレオチドプライマーは非特異産物の増加、アニーリング効率の低下が発生することがあり、短いオリゴヌクレオチドプライマーは十分な特異性が得られないことがある。
一般的に、特異性の高いオリゴヌクレオチドプライマーは、3’末端がターゲット配列に対して相補的であることが重要であり、言い換えれば、3’末端が相補的であれば5’末端が相補的でなくとも有効なプライマーとしてはたらくとされている。このことから、本発明で使用するオリゴヌクレオチドプライマーも3’末端がゲノム配列に対して相補的な配列を有するように設計することが好ましい。
例えば、一般的なPCRでは、少なくとも2本のオリゴヌクレオチドプライマーを使用する。それらのオリゴヌクレオチドプライマーは、標的核酸の相補鎖にそれぞれハイブリダイズできるように設計され、かつその増幅領域にオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイズできる領域があることが好ましい。好ましいものとして、配列番号21、配列番号22で示されるオリゴヌクレオチドプライマーの組合せが例示できる。
オリゴヌクレオチドプライマーは、その目的に応じて、一つ以上の標識物質を付加することができる。標識物質には、蛍光物質、化学発光物質、放射性物質、ビオチン、アルカリホスファターゼ、ジゴキシゲニン、ペルオキシダーゼなどがあるが、本発明では請求項に記載の事項以外は特に限定されず、核酸増幅方法に応じて公知の標識物質が標識されたオリゴヌクレオチドプライマーを使用することができる。また、オリゴヌクレオチドプライマーの標識化のためにリンカーなどを付加してもよい。
また、オリゴヌクレオチドプライマーを構成する塩基には、混合塩基のみならず、イノシン、ペプチド核酸(PNA)、LNAといったヌクレオチドアナログを含めてもよい。ヌクレオチドアナログ等を使用することで、特異性の向上などが期待できる。
[第二工程および第三工程(増幅産物を検出する工程)]
増幅産物の検出方法は、本発明において請求項に記載の事項以外は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的な方法として、融解曲線分析、DNAプローブ法、核酸ハイブリダイゼーション、ノーザンブロッティング等が挙げられるが、本発明ではこれらに限定されない。中でも、Tm値の差を利用してS. aureus、S. argenteus、S. schweitzeriを区別して検出できることから、融解曲線分析が増幅産物の検出方法として好ましい。
融解曲線分析は、反応液の温度を低温から高温に変化させながら、各温度における蛍光強度等を測定してモニタリングすることで、Tm値を測定する分析法である。得られた蛍光強度について温度で一次微分することにより、使用するオリゴヌクレオチドプローブに固有の融解温度(Tm値)を求めることができる。Tm値は、塩基配列に固有の値であるため、融解曲線分析は塩基配列を測定する手法として使用できる。そのため、一例として、融解曲線分析はSNP解析などにも応用されている。
例えば、増幅産物を検出する方法として融解曲線分析を使用する場合、前記核酸増幅反応の組成物にさらに蛍光オリゴヌクレオチドプローブを加えてもよい。
1例として、QProbe(登録商標)を用いた融解曲線分析を行う場合、KODポリメラーゼの濃度は0.001〜1.0U/μL、より好ましくは0.01〜0.1U/μL、プライマー濃度は0.01〜10μM、より好ましくは0.1μM〜8μMであり、dNTPs濃度は0.01〜2mM、より好ましくは0.1〜0.5mMであり、反応バッファーのpHは2〜13、より好ましくは4〜10であり、マグネシウム塩濃度は0.1〜10mM、より好ましくは1.0〜5mMであり、QProbe濃度は、0.01〜2μM、より好ましくは0.1〜0.8μMである。PCRや融解曲線分析は、公知の条件にて行うことができる。また、QProbeは測定に応じて複数種類加えてもよい。
[試料について]
本発明において使用できる測定試料は、生体試料や食品だけでなく、調製した核酸等を用いることができるが、これらに限定されない。
生体試料としては、特に制限されないが、血液、血液培養液、膿、髄液、胸水、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、喀痰、組織切片、皮膚、吐瀉物、糞便、分離培養コロニー、カテーテル洗浄液等が挙げられる。生体試料を測定試料とする場合、各生体試料に応じて、希釈や懸濁などの前処理を行ってもよい。
食品としては、水、アルコール飲料、清涼飲料水、加工食品、野菜、畜産物、海産物、卵、乳製品、生肉、生魚、惣菜等が挙げられるが、これらに限定されない。食品を測定試料とする場合、その食品の一部あるいは全部を使用できるだけでなく、食品表面を拭き取ったものも使用できる。また、試料によって、細かく破砕する、精製水に懸濁させる等の前処理を行ってもよい。
また、調理器具やドアノブを拭き取った材料あるいはそれらを洗浄した洗浄液も試料として用いることができる。
調製した核酸とは、各試料から抽出したDNAやRNA、人工合成した核酸等を指すが、これらに限定されない。核酸抽出には、各メーカーから販売されているキットを使用してもよい。
試料の採取方法、調製方法等は、特に制限されず、試料の種類、目的に応じて公知の方法を用いることができる。
[該方法を行うためのキットについて]
本発明の別の態様としては、オリゴヌクレオチドプローブを用いて、試料中に含まれるS. aureusを検出するためのキットが挙げられる。
そのようなものとして、以下の(P)および(Q)を含むS. aureusの検出キットが例示できる。
(P)項4の(1A)もしくは(2A)で示される塩基配列を含む核酸断片を増幅できるオリゴヌクレオチドプライマーセット。
(Q)項4〜項6のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
本発明のキットに適用できるプライマー、および本発明のオリゴヌクレオチドについては、上述のとおりである。
本発明の方法を実施するためのキットに含まれる組成としては、請求項に記載の事項以外は特に限定されず、核酸増幅・核酸検出に必要な試薬を適宜用いることができる。核酸の増幅・検出法としては、前記の種々の方法を用いることができ、これらの方法は既に当該技術分野において確立されている。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1:蛍光プローブを用いた融解曲線分析
(1)方法
配列番号20で示される蛍光オリゴヌクレオチドプローブ(QProbe(登録商標))を用いた融解曲線分析を行った。具体的には、配列番号1、配列番号3、配列番号4で示される塩基配列の合成オリゴヌクレオチドを鋳型にして融解曲線分析を行った。試薬はジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社)を使用した。添付のプライマー・プローブ希釈液を使用して以下のようにプローブ、鋳型DNA等を混合した。
蛍光オリゴヌクレオチドプローブ 0.3μM
鋳型合成オリゴヌクレオチド 1μM
測定装置にGENECUBE(登録商標)(東洋紡社)を用いて融解曲線分析を行った。
(2)結果
測定結果を図2に示す。測定に用いた鋳型合成オリゴヌクレオチドによってTm値が異なることが明らかになった。配列番号1、配列番号3、配列番号4で示される塩基配列はそれぞれS. aureus、S. argenteus、S. schweitzeriのnuc遺伝子であり、配列番号17、配列番号18、配列番号19で示される塩基配列をそれぞれ含んでいる。使用した蛍光オリゴヌクレオチドプローブはこれらの領域に結合するプローブであって、その一塩基多型によって融解曲線分析でのTm値が異なった。したがって、Tm値を比較することによってS. aureus、S. argenteus、S. schweitzeriの3菌種をそれぞれ分類できることが示された。
実施例2:融解曲線分析による生体試料の測定
(1)方法
生体試料(血液培養液)4検体を融解曲線分析によって測定した。配列番号21、配列番号22で示されるプライマー、配列番号20で示される蛍光オリゴヌクレオチドプローブ(QProbe(登録商標))を用いて、核酸増幅とそれに続く融解曲線分析を行った。試薬はジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社)を使用し、測定機器はGENECUBE(登録商標)(東洋紡社)を使用した。なお、増幅反応条件、融解曲線分析条件は以下に示す条件で行い、反応液の調製等はジーンキューブ(登録商標)テストベーシックの取扱説明書に従った。また、測定試料は、同定感受性検査で黄色ブドウ球菌(S.aureus)あるいは表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)と判定された血液培養液検体を使用した。

増幅反応条件
94℃ 30秒
98℃ 1秒−60℃ 3秒−63℃ 5秒 (サイクル数50回)

融解曲線分析条件
94℃ 30秒
39℃ 30秒
40−75℃ 0.09℃/秒

(2)結果
測定結果を図3に示す。検体1、検体2、検体3は、同定感受性検査で黄色ブドウ球菌(S.aureus)と判定された検体であり、検体4は、同定感受性検査で表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)と判定された検体であった。検体1、検体2、検体3を参考例1の方法でシークエンス解析を行ったところ、検体1で得られた配列はS. aureusと高い相同性を示した。また、検体2で得られた配列はS. argenteusと高い相同性を示し、検体3で得られた配列はS. schweitzeriと高い相同性を示した。以上の結果より、融解曲線分析によって、生体試料に含まれるS. aureus、S. argenteus、S. schweitzeriの3菌種をそれぞれ区別して検出できることが示された。したがって、同定感受性検査で黄色ブドウ球菌(S.aureus)として誤判定された株をS. argenteusあるいはS. schweitzeriに正しく分類できた。また、該プライマー、該プローブは表皮ブドウ球菌を検出しないことが示された。
参考例1:シークエンス解析
(1)方法
実施例2で使用した検体1、検体2、検体3の3株について、シークエンス解析を行った。具体的には、検体1、検体2については、非特許文献2で示されているプライマーセット(配列番号23及び配列番号24で示されるオリゴヌクレオチドプライマー)を用いて核酸増幅を行った。また、検体3については、配列番号21、配列番号22で示されるプライマーを用いて核酸増幅を行った。続いて、各検体から得られた核酸増幅産物をシークエンス解析した。
(a)核酸増幅
反応液はBlend Taq(登録商標) −Plus−(東洋紡社)の取扱説明書に従って以下のように調製した。また、測定試料は反応液の1/40容量に相当する量を加えた。
PCR Buffer for Blend Taq 1×
Blend Taq(登録商標) −Plus− 0.025U/μL
プライマー 0.2μM each
dNTPs 0.2mM
また、核酸増幅反応は以下の条件で行った。
94℃、1分−55℃、30秒−72℃、1分30秒(サイクル数37回)
72℃、3分30秒
(b)シークエンス解析
試薬はBigDye(登録商標) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社)を使用し、反応液の調製等は該試薬の取扱説明書に従った。測定機器は、3730 DNA Analyzer(Applied Biosystems社)を使用した。
(2)結果
検体1、検体2、検体3のシークエンス解析結果をそれぞれ図4、図5、図6に示す。図4(検体1)で示される塩基配列の相同性検索を行ったところ、配列番号1で示される塩基配列の一部と高い相同性を示した。配列番号1で示される塩基配列はS. aureusのnuc遺伝子であることから、この株はS. aureusに分類された。一方で、図5(検体2)で示される塩基配列の相同性検索を行ったところ、配列番号3で示される塩基配列の一部と高い相同性を示した。配列番号3で示される塩基配列はS. argenteusのnuc遺伝子であることから、この株はS. argenteusに分類された。図6(検体3)で示される塩基配列の相同性検索を行ったところ、配列番号4で示される塩基配列の一部と高い相同性を示した。配列番号4で示される塩基配列はS. schweitzeriのnuc遺伝子であることから、この株はS. schweitzeriに分類された。以上の結果から、検体1、検体2、検体3はそれぞれS. aureus、S. argenteus、S. schweitzeriであった。したがって、実施例2のように、オリゴヌクレオチドプローブを使用することによってS. aureus、S. argenteus、S. schweitzeriの3菌種をそれぞれ区別して検出できることが示された。
実施例3および比較例1:従来技術との比較
(1)方法
配列番号21、配列番号22で示されるプライマー、配列番号20で示される蛍光オリゴヌクレオチドプローブ(QProbe(登録商標))を用いて、核酸増幅とそれに続く融解曲線分析を行った(実施例3)。同様にして、特許文献4に記載のプライマー、蛍光ヌクレオチドプローブ(配列番号25、配列番号26で示されるプライマー、配列番号27で示されるプローブ)を用いて、核酸増幅とそれに続く融解曲線分析を行った(比較例1)。試薬はジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社)を使用し、測定機器はGENECUBE(登録商標)(東洋紡社)を使用した。なお、増幅反応条件、融解曲線分析条件、反応液の調製等は実施例2と同様にジーンキューブ(登録商標)テストベーシックの取扱説明書に従った。測定試料はS.aureus、S.argenteus、S. schweitzeriの分離培養コロニーを使用した。
(2)結果
測定結果を図7、図8に示す。図7は本発明による測定結果(実施例3)であり、図8は特許文献4に記載の方法による測定結果(比較例1)である。図7では、S.aureus、S.argenteus、S. schweitzeriのピークのTm値が異なるためそれぞれを分離可能であった。一方で、図8では、S. aureusとS. argenteusのピークがほぼ同じTm値を示したため、菌種の分離ができなかったとともに、ピークのTm値が低すぎたためにS. schweitzeriは適切な測定結果が得られなかった。ピークのTm値が低すぎた原因を検討するために、使用した検体のシーケンスを行い、各試験で使用したオリゴヌクレオチドプローブと比較したところ、比較例1で使用したオリゴヌクレオチドプローブのS. schweitzeriに対するミスマッチの個数(3個)が実施例3で使用したオリゴヌクレオチドプローブのミスマッチの個数(2個)より多かった。以上の結果より、本発明によって従来技術では困難であったS.aureus、S.argenteus、S. schweitzeriの分離検出が可能になったことが示された。
本発明に記載の方法又はキットを使用することで、S.argenteus、S. schweitzeriと区別して、S.aureusを検出することができるようになった。本発明に記載の方法又はキットを使用することは、ブドウ球菌感染症に対する治療薬の選択、感染拡大防止、食中毒予防等に特に有用であり、本発明は研究用途のみならず臨床検査や環境検査、食品検査等にも大きく貢献することができる。

Claims (9)

  1. 以下の(X)かつ(Y)かつ(Z)を特徴として有するオリゴヌクレオチド。
    (X)Staphylococcus aureusのゲノム配列の中の少なくとも連続した10塩基からなる塩基配列を有する。
    (Y)前記(X)に記載の塩基配列をStaphylococcus argenteusのゲノム配列と対比させたときに1塩基以上のミスマッチを有する。
    (Z)前記(X)に記載の塩基配列をStaphylococcus schweitzeriのゲノム配列と対比させたときに、1塩基以上のミスマッチを有する。
  2. 前記(X)の代わりに以下の(X2)を特徴として有する請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
    (X2)配列番号1あるいは配列番号2で示される塩基配列の中の少なくとも連続した10塩基からなる塩基配列を有する。
  3. 前記(Y)に記載の1塩基以上のミスマッチと前記(Z)に記載の1塩基以上のミスマッチが互いに異なっている請求項1または請求項2に記載のオリゴヌクレオチド。
  4. 以下の(1A)または(2A)で示される塩基配列からなる、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
    (1A)配列番号1で示される塩基配列の中の少なくとも連続した10塩基からなる塩基配列であって、その配列が、下記の(I)で示される群のうち少なくとも一つの塩基配列である塩基配列。
    (2A)前記(1A)の塩基配列に相補的な塩基配列。
    (I)配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16および配列番号20からなる群。
  5. 前記(I)で示される群が、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号13、配列番号20である請求項4に記載のオリゴヌクレオチド。
  6. 1つ以上の標識物質で標識されている、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
  7. 以下の(1)〜(3)の工程を含むStaphylococcus aureusを検出する方法。
    (1)請求項4の(1A)もしくは(2A)で示される塩基配列を含む核酸断片を増幅する第一工程。
    (2)第一工程で得られうる増幅産物と、請求項4〜請求項6のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドのうち第一工程で得られうる増幅産物にハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる第二工程。
    (3)第二工程で得られうる複合体を検出する第三工程。
  8. (3)の工程が融解曲線分析を含む、請求項7に記載の方法。
  9. 以下の(P)および(Q)を含むStaphylococcus aureusの検出キット。
    (P)請求項4の(1A)もしくは(2A)で示される塩基配列を含む核酸断片を増幅できるオリゴヌクレオチドプライマーセット。
    (Q)請求項4〜請求項6のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
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