JP5851395B2 - 食中毒菌検出用担体、及び食中毒菌の検出方法 - Google Patents

食中毒菌検出用担体、及び食中毒菌の検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、食中毒菌を検出するためのマイクロアレイなどの担体に関し、特に複数の食中毒菌を特異的に同時に検出可能な食中毒菌検出用担体、及び食中毒菌の検出方法に関する。
従来、食品検査や環境検査、臨床試験、家畜衛生などにおいて、食中毒菌の存否の検査が行われている。このような検査では、近年PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)により検査試料中に含まれるDNAを増幅し、得られた増幅産物にもとづき対象菌を検出することが行われている。
このとき、食中毒菌の検出には電気泳動が広く用いられ、これによって対象菌の存否が判定されている。また、検出された増幅産物を精製し、シークエンスを行うことでより正確な菌株の同定も行われている。
しかし、電気泳動による検出では、増幅サイズが近いものを識別することが難しいため、菌株を判別しづらく、その同定が困難であるという問題があった。また、電気泳動による検出では、ゲル作成などの操作が煩雑であり、発がん性物質(エチジウムブロマイドなど)を用いた染色が行われるという問題もあった。また、シークエンスは迅速性が無く、操作が簡便でないという問題もあった。
このため、電気泳動による検出の他、最近ではDNAマイクロアレイを用いた検出も行われるようになってきている。DNAマイクロアレイには対象菌とハイブリダイズするプローブが固定化されており、このプローブにPCRにより得られた増幅産物をハイブリダイズさせることで、増幅サイズに関係なく菌株レベルでの判別が可能である。また、DNAマイクロアレイによる検出は、発がん性物質などを用いた染色を必要とせず、シークエンスと比較しても迅速性があり、操作が簡便である。
また、インサイチューハイブリダイゼーション法などにより、PCRで得られた増幅産物をプローブにハイブリダイズさせて、対象菌を検出することなども行われている。
例えば、特許文献1には、Alicyclobacillus acidocaldarius、Bacillus caldotenax、Bacillus cereus、Bacillus subtilis、Thermoactinomyces vulgaris、及びStaphylococcus epidermidisを検出することが可能なプローブ及びDNAマイクロアレイが開示されている。
また、特許文献2には、エロモナス属細菌、リステリア菌、ウエルシュ菌、腸炎ビブリオ、サルモネラ菌、病原性大腸菌等の食中毒細菌を検出することが可能なプローブ及びこれを用いてインサイチューハイブリダイゼーション法により食中毒細菌を検出する方法が開示されている。
特開2008−200012号公報 特開2006−166912号公報
ここで、大腸菌、リステリア、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌、サルモネラ、セレウスの七種類の食中毒菌は、細菌性食中毒の原因の90%以上を占めている。
したがって、これら七種類の食中毒菌が、食品や環境などに存在しているか否かを同時かつそれぞれ特異的に検出することができれば、大変有用である。
ところが、これらの複数の食中毒菌を、それぞれ特異的に一括同時検出するためには、プローブに優れた特異性が必要である。そのようなプローブの設計は容易ではなく、これらの複数の食中毒菌を一括検出可能なプローブを固定化したDNAマイクロアレイなどは、従来見られなかった。
そこで、本発明者らは鋭意研究し、数多くの実験を繰り返し行った結果、上記七菌種における八領域の毒素領域遺伝子又は生体内必須遺伝子を検出の対象とし、これら七菌種の食中毒菌をそれぞれ特異的に一括検出可能なプローブを開発することに成功し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、大腸菌(Escherichia coli)、リステリア(Listeria 属)、カンピロバクター(Campylobacter属)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、サルモネラ(Salmonella属)、セレウス(Bacillus cereus)のうちの二種以上の食中毒菌を同時に特異的に一括検出可能な食中毒菌検出用担体、及び食中毒菌の検出方法を提供することを目的とする。
本発明の食中毒菌検出用担体は、大腸菌を検出するための配列番号1〜6に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第一のプローブ群、リステリアを検出するための配列番号7〜13に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第二のプローブ群、カンピロバクターを検出するための配列番号14〜19に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第三のプローブ群、腸炎ビブリオを検出するための配列番号20〜24に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第四のプローブ群、黄色ブドウ球菌を検出するための配列番号25〜29に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第五のプローブ群、サルモネラを検出するための配列番号30〜40に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第六のプローブ群、及び、セレウスを検出するための配列番号41〜49に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第七のプローブ群のうち二群以上からそれぞれ一又は二以上選択されたプローブを固定化した構成としてある。
また、本発明の食中毒菌の検出方法は、大腸菌のDNAを増幅するための配列番号50に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号51に示す塩基配列からなるプライマーを備えた第一のプライマーセットと、リステリアのDNAを増幅するための配列番号52に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号53に示す塩基配列からなるプライマーを備えた第二のプライマーセットと、カンピロバクターのDNAを増幅するための配列番号54に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号55に示す塩基配列からなるプライマーを備えた第三のプライマーセットと、腸炎ビブリオのDNAを増幅するための配列番号56に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号57に示す塩基配列からなるプライマーを備えた第四のプライマーセットと、黄色ブドウ球菌のDNAを増幅するための配列番号58に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号59に示す塩基配列からなるプライマーを備えた第五のプライマーセットと、サルモネラのDNAを増幅するための配列番号60に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号61に示す塩基配列からなるプライマーを備えた第六のプライマーセットと、セレウスのDNAを増幅するための配列番号62に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号63に示す塩基配列からなるプライマーを備えた第七のプライマーセットと、セレウスのDNAを増幅するための配列番号64に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号65に示す塩基配列からなるプライマーを備えた第八のプライマーセットと、からなる群のうち、二以上のプライマーセットと、試料のゲノムDNAと、核酸合成酵素と、核酸合成基質とを含有するPCR用反応液を用いて、試料中に二以上のプライマーセットの少なくともいずれかに対応する食中毒菌のゲノムDNAが含まれている場合、PCR法により当該食中毒菌の核酸の増幅を行い、大腸菌を検出するための、配列番号1〜6に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第一のプローブ群、リステリアを検出するための配列番号7〜13に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第二のプローブ群、カンピロバクターを検出するための配列番号14〜19に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第三のプローブ群、腸炎ビブリオを検出するための配列番号20〜24に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第四のプローブ群、黄色ブドウ球菌を検出するための配列番号25〜29に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第五のプローブ群、サルモネラを検出するための配列番号30〜40に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第六のプローブ群、及び、セレウスを検出するための配列番号41〜49に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第七のプローブ群のうち、二以上のプライマーセットに対応する食中毒菌に対応する二群以上からそれぞれ一又は二以上選択されたプローブを固定化した食中毒菌検出用担体に、増幅により得られた増幅産物を接触させ、固定化されたプローブにハイブリダイズさせることにより、食中毒菌を検出する方法としてある。
本発明によれば、大腸菌、リステリア、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌、サルモネラ、セレウスのうちの二種以上の食中毒菌を同時に特異的に一括検出することが可能となる。
本発明の実施形態の食中毒菌検出用担体における大腸菌用、リステリア用、カンピロバクター用、及び腸炎ビブリオ用の各新規プローブ及びその検出対象領域と、配列番号及びその塩基配列との対応関係を示す図である。 本発明の実施形態の食中毒菌検出用担体における黄色ブドウ球菌用、サルモネラ用、及びセレウス用の各新規プローブ及びその検出対象領域と、配列番号及びその塩基配列との対応関係を示す図である。 本発明の実施形態の食中毒菌の検出方法において用いられる新規プライマーセット及びその増幅対象領域と、配列番号及びその塩基配列との対応関係を示す図である。 本発明の実施形態の食中毒菌の検出方法による対象食中毒菌のDNAの増幅結果を示す図である。 本発明の実施形態の食中毒菌検出用担体における配列番号1〜49に示すプローブの食中毒菌検出用担体上の配置を示す図である。 本発明の実施形態の食中毒菌検出用担体による検出結果(蛍光写真)を示す図である。 本発明の実施形態の食中毒菌検出用担体による検出結果(蛍光強度数値)を示す図である。 PCRによる増幅対象領域におけるプローブ位置と蛍光強度の関係を示すグラフである。 本発明の実施形態の食中毒菌の検出方法による対象食中毒菌のDNAのマルチプレックスPCRの増幅結果を示す図である。 本発明の実施形態の食中毒菌検出用担体による一括検出結果(蛍光写真)を示す図である。 本発明の実施形態の食中毒菌検出用担体による一括検出結果(蛍光強度数値)を示す図である。 本発明の実施形態の食中毒菌検出用担体における新規プローブの検出結果のまとめを示すマトリックスである。 本発明の実施形態の食中毒菌検出用担体による偽陽性反応の有無確認のための検出結果1(結果,蛍光写真)を示す図である。 本発明の実施形態の食中毒菌検出用担体による偽陽性反応の有無確認のための検出結果2(結果,蛍光写真)を示す図である。 本発明の実施形態の食中毒菌検出用担体による偽陽性反応の有無確認のための検出結果1(蛍光強度数値)を示す図である。 本発明の実施形態の食中毒菌検出用担体による偽陽性反応の有無確認のための検出結果2(蛍光強度数値)を示す図である。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
[プローブ]
まず、図1及び図2を参照して本実施形態の食中毒菌検出用担体、及び食中毒菌の検出方法において用いるプローブについて説明する。
これらの図において、検出対象食中毒菌の欄には、プローブを用いて検出する対象の食中毒菌の和名及び学名を示している。対象領域の欄には、対応する食中毒菌における検出対象領域の遺伝子の名称を示している。配列番号及び塩基配列の欄には、配列表に記載の配列番号及び塩基配列を示している。この塩基配列には、対象領域の遺伝子から選択された新規プローブの塩基配列が示されている。
配列番号1〜4には、大腸菌(Escherichia coli)のヒートショックタンパク遺伝子(dnaJ)を検出するためのプローブの塩基配列を示している。
配列番号5及び6には、大腸菌(Escherichia coli)のウリジンモノリン酸キナーゼ遺伝子(pyrH)を検出するためのプローブの塩基配列を示している。
配列番号7〜13には、リステリア(Listeria 属)のヒートショックタンパク遺伝子(dnaJ)を検出するためのプローブの塩基配列を示している。
配列番号14〜19には、カンピロバクター(Campylobacter 属)のリボソーム遺伝子(16S rRNA)を検出するためのプローブの塩基配列を示している。
配列番号20〜24には、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)の耐熱性溶血毒素遺伝子(tdh)を検出するためのプローブの塩基配列を示している。
配列番号25〜29には、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のヒートショックタンパク遺伝子(dnaJ)を検出するためのプローブの塩基配列を示している。
配列番号30〜40には、サルモネラ(Salmonella 属)の侵入性因子関連遺伝子(invA)を検出するためのプローブの塩基配列を示している。
配列番号41〜45には、セレウス(Bacillus cereus)の溶血活性を示さないエンテロトキシン分泌遺伝子(nhe)を検出するためのプローブの塩基配列を示している。
配列番号46〜49には、セレウス(Bacillus cereus)のセレウリド合成酵素遺伝子(cesB)を検出するためのプローブの塩基配列を示している。
これらの配列番号に示される塩基配列は、5’末端から3’末端方向の配列を示している。
本実施形態の食中毒菌検出用担体、及び食中毒菌の検出方法において用いるプローブは、上記の塩基配列そのものに限定されず、それぞれの塩基配列において1又は数個の塩基が欠損、置換又は付加されたものとすることができる。また、それぞれの塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるものとすることもできる。さらに、このようなプローブや、配列番号1〜49に示す塩基配列からなるプローブに対して相補的な塩基配列を有するプローブを用いることもできる。
なお、ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、配列番号1〜49で表される配列からなるDNAに対し高い相同性(相同性が90%以上、好ましくは95%以上)を有するDNAが、それぞれ配列番号1〜49で表される配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとハイブリダイズする条件が挙げられる。通常、完全ハイブリッドの溶解温度(Tm)より約5℃〜約30℃、好ましくは約10℃〜約25℃低い温度でハイブリダイゼーションが起こる場合をいう。ストリンジェントな条件については、J.Sambrookら,Molecular Cloning,A Laboratory Mannual,Second Edition,Cold Spring
Harbor Laboratory Press(1989)、特に11.45節「Conditions for Hybridization of Oligonucleotide Probes」に記載されている条件等を使用することができる。
本実施形態の食中毒菌検出用担体、及び食中毒菌の検出方法において用いるプローブは、いずれも20〜33mer(塩基)程度の長さであり、DNA合成装置により合成することができる。
[食中毒菌検出用担体]
本実施形態の食中毒菌検出用担体は、特定の食中毒菌を検出するための媒体装置であり、マイクロアレイなどを用いて構成することができる。
この食中毒菌検出用担体は、検出対象の食中毒菌を検出するための上記プローブの少なくとも1つを固定化したものであれば、特に限定されるものではなく、例えばスポット型DNAマイクロアレイ、合成型DNAマイクロアレイなどを用いることができる。
また、本実施形態の食中毒菌検出用担体は、配列番号1〜49の配列を備えたプローブを用いて、既存の一般的な方法で製造することができる。
例えば、本実施形態の食中毒菌検出用担体として、貼り付け型のDNAマイクロアレイを作成する場合は、DNAスポッターによりプローブをスライドガラス上に固定化することによって、作成することができる。また、合成型DNAマイクロアレイを作成する場合は、光リソグラフィ技術により、ガラス基板上で上記配列を備えた一本鎖オリゴDNAを合成することによってプローブを生成し、本実施形態の食中毒菌検出用担体を作成することができる。
[PCR用プライマー]
次に、図3を参照して本実施形態の食中毒菌の検出方法において用いるPCR用プライマーについて説明する。
PCR用プライマーは、PCR法により試料中のゲノムDNAの一部を増幅するために用いられ、フォワードプライマー及びリバースプライマーの二種類のプライマーセットにより特定される領域を増幅する。PCR用プライマーセットは、PCR反応液に含有される。PCR反応液には、その他に核酸合成基質、核酸合成酵素、試料のゲノムDNA、標識成分、緩衝液などが含有される。そして、このPCR反応液を用いてサーマルサイクラーなどの核酸増幅装置により、試料中のゲノムDNAの一部が増幅され得る。すなわち、PCR用プライマーセットによる増幅対象領域を有するゲノムDNAが試料中に存在している場合、その対象領域が増幅される。本実施形態で使用するPCR用プライマーセットは、一般的なPCR法において使用することができる。
図3において、増幅対象食中毒菌(学名)の欄には、PCR用プライマーセットにより増幅する対象の食中毒菌の和名及び学名を示している。対象領域の欄には、対応する食中毒菌における増幅対象領域の遺伝子の名称を示している。増幅産物の欄には、PCR用プライマーセットを用いて、対象領域を増幅した場合の増幅産物の塩基配列の長さ(bp:base pair)を示している。配列番号の欄には、配列表に示される塩基配列の配列番号を示している。F/Rの欄には、フォワードプライマー及びリバースプライマーの区別を示しており、Fがフォワードプライマー、Rがリバースプライマーを示している。塩基配列の欄には、配列表に記載の塩基配列を示している。この塩基配列には、それぞれ対応する対象領域を特異的に増幅するために設計された新規プライマーセットの塩基配列が示されている。
配列番号50及び51は、大腸菌(Escherichia coli)のゲノムDNAに含まれる生体内必須領域のウリジンモノリン酸キナーゼ遺伝子(pyrH)を増幅するためのプライマーセットの塩基配列を示しており、増幅産物は157bpである。
配列番号52及び53は、リステリア(Listeria属)のゲノムDNAに含まれる生体内必須領域のヒートショックタンパク遺伝子(dnaJ)を増幅するためのプライマーセットの塩基配列を示しており、増幅産物は176bpである。
配列番号54及び55は、カンピロバクター(Campylobacter属)のゲノムDNAに含まれる生体内必須領域のリボソーム遺伝子(16S rRNA)を増幅するためのプライマーセットの塩基配列を示しており、増幅産物は263bpである。
配列番号56及び57は、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)のゲノムDNAに含まれる毒素領域の耐熱性溶血毒素遺伝子(tdh)を増幅するためのプライマーセットの塩基配列を示しており、増幅産物は380bpである。
配列番号58及び59は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のゲノムDNAに含まれる生体内必須領域のヒートショックタンパク遺伝子(dnaJ)を増幅するためのプライマーセットの塩基配列を示しており、増幅産物は236bpである。
配列番号60及び61は、サルモネラ(Salmonella 属)のゲノムDNAに含まれる毒素領域の侵入性因子関連遺伝子(invA)を増幅するためのプライマーセットの塩基配列を示しており、増幅産物は180bpである。
配列番号62及び63は、セレウス(Bacillus cereus)のゲノムDNAに含まれる毒素領域の溶血活性を示さないエンテロトキシン分泌遺伝子(nhe)を増幅するためのプライマーセットの塩基配列を示しており、増幅産物は195bpである。
配列番号64及び65は、セレウス(Bacillus cereus)のゲノムDNAに含まれる毒素領域のセレウリド合成酵素遺伝子(cesB)を増幅するためのプライマーセットの塩基配列を示しており、増幅産物は238bpである。
これらの配列番号に示される塩基配列は、5’末端から3’末端方向の配列を示している。
また、本実施形態のPCR用プライマーセットにおける各プライマーは、上記の塩基配列そのものに限定されず、それぞれの塩基配列において1又は数個の塩基が欠損、置換又は付加されたものとすることができる。また、それぞれの塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸断片からなるものを用いることもできる。
さらに、本実施形態のPCR用プライマーセットに対して、相補的な塩基配列を有するプライマーからなるPCR用プライマーセットを用いることもできる。
上記八種類のPCR用プライマーセットをPCR反応液に含有させてPCR法による増幅反応を行った場合、PCR反応液に含有される試料中に、上記増幅対象の食中毒菌のゲノムDNAのいずれかが含まれていれば、そのゲノムDNAにおける増幅対象領域を特異的に増幅することができる。
また、試料中に、上記増幅対象の食中毒菌のゲノムDNAが二種類以上含まれている場合、それぞれのゲノムDNAの増幅対象領域を同時かつ特異的に増幅することができる。
さらに、試料中に、七種類の増幅対象の食中毒菌のゲノムDNAにおける八領域の遺伝子が全て含まれている場合でも、本実施形態の食中毒菌検出用担体、及び食中毒菌の検出方法によれば、各ゲノムDNAの増幅対象領域を同時かつ特異的に一括して増幅することが可能である。
すなわち、本実施形態の食中毒菌の検出方法におけるPCR用プライマーセットによれば、それぞれの対象の食中毒菌以外のゲノムDNAによる増幅が行われない。また、複数のPCR用プライマーセットを同時に使用しても、異なるプライマーセットのプライマーの組み合わせによる非特異的な増幅も行われない。
このため、このようなPCR用プライマーセットをPCR反応液に加えることで、試料に増幅対象領域をもつ食中毒菌のゲノムDNAが含まれている場合には、その領域を特異的に増幅することが可能である。
また、試料に増幅対象の食中毒菌が複数種類含まれている場合でも、それぞれの増幅対象領域を同時かつ特異的に増幅することが可能である。
勿論、PCR反応液に、上記八種類のPCR用プライマーセットの全てではなく、このうち一種類から七種類のPCR用プライマーセットが含まれている場合であっても、そのPCR用プライマーセットの増幅対象領域をもつ食中毒菌のゲノムDNAがPCR反応液に含まれている場合には、その対象領域を特異的に増幅することが可能である。
[PCR用反応液]
次に、本実施形態の食中毒菌の検出方法において用いるPCR用反応液について説明する。
本実施形態のPCR反応液は、少なくとも上記八種類のPCR用プライマーセットのいずれかを含有し、好ましくはその二種類以上を含有し、より好ましくは、八種類全てのPCR用プライマーセットを含有するものである。PCR反応液におけるそれ以外の成分は、一般的なものを用いることができる。
具体的には、例えば以下の組成からなるものを用いることができるが、これに限定されるものではない。特に、プライマー、試料のDNA、及び滅菌水の容量は、増幅対象とする食中毒菌の種類数によって相違する。
・緩衝液(10容量%)
・核酸合成基質(8容量%)
・フォワードプライマー(10ng/μl、2容量%〜16容量%)
・リバースプライマー(10ng/μl、2容量%〜16容量%)
・核酸合成酵素(0.5容量%)
・標識成分 Cy5 10pmol/μl(1〜8容量%)
・試料のDNA(5容量%〜35容量%)
・水(71.5容量%〜6.5容量%)
[食中毒菌の検出方法]
次に、本実施形態の食中毒菌の検出方法について説明する。
まず、上記のPCR反応液を用いて、PCR法により試料中に含まれるゲノムDNAを増幅する。
なお、実用上、食中毒菌の検出を行う場合には、例えば食品や設備などからサンプルを採取して、そのサンプル中に含まれる菌の培養等が行われる。そして、培養された菌からゲノムDNAが抽出され、この抽出されたゲノムDNA等が、上記PCR反応液における試料として使用される。したがって、実用上は、試料中に増幅対象の食中毒菌が存在するか否かは不明であり、本実施形態の食中毒菌の検出方法は、試料中に増幅対象の食中毒菌が存在する場合に、これを検出することを可能とするものである。したがって、PCR反応液に上記八種類のPCR用プライマーセットが全て含有されている場合、試料中に上記七菌種八領域の遺伝子の少なくともいずれかが存在していれば、その増幅対象領域を特異的に増幅することが可能である。
PCR法による遺伝子の増幅には、核酸増幅装置を使用する。この核酸増幅装置としては、一般的なサーマルサイクラーなどを用いることができる。PCRの反応条件は、例えば以下のようにすることができるが、これに限定されるものではない。
(1)95℃ 2分
(2)95℃ 10秒(DNA鎖の乖離工程)
(3)68℃ 30秒(アニーリング工程)
(4)72℃ 30秒(DNA合成工程)
(5)72℃ 2分
(2)〜(4)を40サイクル
次に、得られたPCR増幅産物を、本実施形態の食中毒菌検出用担体上に滴下して、当該担体に固定化されたプローブにハイブリダイズしたPCR増幅産物の標識を検出する。
具体的には、例えば次のように行うことができる。
まず、PCR増幅産物に所定の緩衝液を混合し、食中毒菌検出用担体に滴下する。
次に、食中毒菌検出用担体を45℃で1時間静置し、その後、所定の緩衝液によりハイブリダイズしなかったPCR産物を食中毒菌検出用担体から洗い流す。
そして、食中毒菌検出用担体を標識検出装置にかけて標識の検出を行い、試料中に対象の食中毒菌が存在するか否かを検出する。
[プローブの設計]
次に、本実施形態の食中毒菌検出用担体、及び食中毒菌の検出方法で使用するプローブの特異性を高めるために案出したプローブの設計方法について説明する。
本実施形態で使用するプローブは、七菌種の食中毒菌の八領域を一括して特異的に検出するために使用される。このように多数の対象を特異的に検出可能にするため、本実施形態で使用するプローブには、高い特異性が求められる。そこで、本発明者らは、このようなプローブの特異性を向上させ得るプローブの設計方法を検討し、以下の基準に従えば、プローブの特異性を向上させ得ることを見いだした。
(1)GC含量
プローブの塩基配列におけるGC含量を40%以下とする。このように、GC含量をAT含量よりも一定量少なくすることで、プローブをより乖離しやすくさせることができる。これにより、ハイブリダイゼーションにおける非特異結合を低減させることができ、プローブの特異性を向上させることが可能となる。なお、このGC含量の百分率は、プローブの塩基配列におけるGCの配列数の百分率を示している。
(2)PCR増幅対象領域の3’末端側から選択
センス鎖のプローブ(増幅対象領域のセンス鎖から選択されるプローブ)は、検出対象であるPCR増幅産物の3’末端側半分の領域から選択して設計する。すなわち、プローブの検出対象の食中毒菌用のプライマーセットによる増幅対象領域の3’末端側半分の領域から選択して設計する。
これによって、プローブを同5’末端側半分の領域から選択する場合に比較して、得られる蛍光強度をより大きくさせることが可能となる。
一方、プローブのアンチセンス鎖(増幅対象領域のアンチセンス鎖から選択されるプローブ)については、上記センス鎖のプローブとは反対に、プローブの検出対象の食中毒菌用のプライマーセットによる増幅対象領域の相補的配列における5’末端側半分の領域から選択して設計することが好ましい。
(3)非対象の塩基配列との連続マッチ数が12塩基以内
プローブを、検出対象ではない非対象菌の遺伝子配列などとの連続マッチ数が12塩基以内となるように設計する。
本実施形態の食中毒菌の検出方法では、七菌種の食中毒菌の八領域の増幅産物を対象としたハイブリダイズが行われる。このため、それぞれのプローブを、少なくとも検出対象の領域以外の七領域の配列に対し、連続マッチ数が12塩基以内となるように設計することが好ましい。
本実施形態の食中毒菌検出用担体、及び食中毒菌の検出方法で使用するプローブは、当該基準にもとづき設計しており、七菌種の食中毒菌における八領域において、非特異的なハイブリダイズが行われないものになっている。
このように(1)〜(3)のいずれかの基準を用いてプローブ設計を行うことで、従来のプローブよりもその特異性、すなわち検出対象の遺伝子領域と特異的にハイブリダイズする性質を、より向上させることが可能になる。
本実施形態の食中毒菌検出用担体、及び食中毒菌の検出方法は、これら全ての基準に適合するプローブを設計して用いることで、七菌種の食中毒菌の八領域を同時に特異的に検出することが可能な優れたものとなっている。
(4)検出対象領域
また、本実施形態で使用するプローブは、図1及び図2を用いて上述した通り、各食中毒菌の特定の領域から選択して設計している。
すなわち、これらの食中毒菌の毒素領域の遺伝子、及び/又は、生体内必須領域の遺伝子を検出対象としている。
具体的には、検出対象領域として、大腸菌についてはヒートショックタンパク遺伝子(dnaJ)、及びウリジンモノリン酸キナーゼ遺伝子(pyrH)を、リステリアについてはヒートショックタンパク遺伝子(dnaJ)を、カンピロバクターについてはリボソーム遺伝子(16S rRNA)を、腸炎ビブリオについては耐熱性溶血毒素遺伝子(tdh)を、黄色ブドウ球菌についてはヒートショックタンパク遺伝子(dnaJ)を、サルモネラについては侵入性因子関連遺伝子(invA)を、セレウスについては溶血活性を示さないエンテロトキシン分泌遺伝子(nhe)、及びセレウリド合成酵素遺伝子(cesB)を、それぞれ選択している。
本実施形態の食中毒菌検出用担体、及び食中毒菌の検出方法で使用するプローブは、上記領域を検出対象領域とし、これらの領域から選択することにより、その特異性を向上させることが可能となっている。
以上説明したように、本実施形態の食中毒菌検出用担体、及び食中毒菌の検出方法によれば、大腸菌、リステリア、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌、サルモネラ、セレウスの七種類の食中毒菌における八領域を、同時に特異的に検出することができる。
また、本実施形態のプローブの設計方法によれば、特異性の高いプローブを設計することが可能である。
まず、本実施形態の食中毒菌の検出方法において使用するPCR用プライマーセットにより、増幅対象領域が正しく増幅されるかを確認するための試験を行った。
試験方法は、上記実施形態で説明した方法により、本実施形態におけるPCR用プライマーセットを含有するPCR反応液を用いてPCR法により増幅反応を行い、増幅産物を電気泳動することで、正しい増幅産物が得られることを、以下のように確認した。
(試験1)
PCR反応液は、以下の組成のものを使用した。これらの成分のうち、プライマー(primerF(フォワード),primerR(リバース))は、ライフテクノロジージャパン株式会社により合成されたものを使用した。それ以外は、タカラバイオ株式会社製のものを使用した。
・緩衝液 10×Ex Taq buffer(20mM Mg 2+ plus) 2.0μl
・核酸合成基質 dNTP Mixture(dATP、dCTP、dGTP、dTTP各2.5mM) 1.6μl
・primerF(10ng/μl、final conc.4ng) 0.4μl
・primerR(10ng/μl、final conc.4ng) 0.4μl
・核酸合成酵素 EX Taq(5U/μl) 0.1μl
・標識成分 Cy5 0.2μl
・試料のDNA(1ng/μl) 1.0μl
・滅菌水 14.3μl
(全量 20μl)
プライマーセットには、図3に示すものを増幅対象の食中毒菌ごとに個別に使用した。また、試料のDNAには、プライマーセットごとに対応する食中毒菌について、以下の菌株を使用した。そして、食中毒菌ごとに、PCRによる増幅反応を行った。
1.セレウス Bacillus cereus TIFT 114011
2.カンビロバクター Campylobacter jejuni ATCC 33560
3.大腸菌 Escherichia coli NBRC 102203
4.リステリア Listeria monocytogenes ATCC 15313
5.サルモネラ Salmonella enterica ATCC 9270
6.黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus NBRC 100910
7.腸炎ビブリオ Vibrio parahaemolyticus RIMD 22210050
これらの食中毒菌の菌株は、次の機関から分譲されたものである。
・TIFT 東洋食品研究所
・ATCC American type culture collection
・NBRC 独立行政法人製品評価基盤機構
・RIMD 大阪大学微生物研究所
PCR法による遺伝子の増幅は、epグラジエント(エッペンドルフ株式会社製)を使用して、上記試料ごとに個別に以下の条件で行った。
(1)95℃ 2分
(2)95℃ 10秒(DNA鎖の乖離工程)
(3)68℃ 30秒(アニーリング工程)
(4)72℃ 30秒(DNA合成工程)
(5)72℃ 2分
(2)〜(4)を40サイクル
次に、PCRによる増幅産物を電気泳動により泳動させ、正しい増幅産物が得られているか否かを確認した。電気泳動は、MultiNA(株式会社島津製作所製)を用いて行った。その結果を、図4に示す。
同図において、供試菌株1〜7の列に示すバンドは、それぞれ対応する番号の食中毒菌のゲノムDNAを含有するPCR反応液を用いて行ったPCRによる増幅産物を、電気泳動した結果を示している。
ここで、PCRによる増幅産物を電気泳動した場合、機械の測定誤差により、理論上の増幅産物の塩基配列と完全には一致せず、近似する値の結果が得られることがある。
図4では、試料のDNAとしてセレウスのゲノムDNAを使用した供試菌株1において、200bp付近と250bp付近にバンドが見られる。
この結果から、セレウスの溶血活性を示さないエンテロトキシン分泌遺伝子(nhe)と、セレウリド合成酵素遺伝子(cesB)におけるそれぞれの増幅対象領域が増幅されていると判断できる。
また、試料のDNAとしてカンピロバクターのゲノムDNAを使用した供試菌株2において275bp付近にバンドが見られ、この結果から、カンピロバクターのリボソーム遺伝子(16S rRNA)における増幅対象領域が増幅されていると判断できる。
また、試料のDNAとして大腸菌のゲノムDNAを使用した供試菌株3において160bp付近にバンドが見られ、この結果から、大腸菌のウリジンモノリン酸キナーゼ遺伝子(pyrH)における増幅対象領域が適切に増幅されていると判断できる。
また、試料のDNAとしてリステリアのゲノムDNAを使用した供試菌株4において、200bp付近にバンドが見られ、この結果から、リステリアのヒートショックタンパク遺伝子(dnaJ)おける増幅対象領域が増幅されていると判断できる。
ここで、リステリアのヒートショックタンパク遺伝子の理論上の増幅産物の長さ(176bp)と、供試菌株4の増幅産物の長さには、20bp程度の差が見られる。これは、供試菌株4のヒートショックタンパク遺伝子(dnaJ)において、何らかの配列の挿入が起こったためであると推定される。
また、試料のDNAとしてサルモネラのゲノムDNAを使用した供試菌株5において190bp付近にバンドが見られ、この結果から、サルモネラの侵入性因子関連遺伝子(invA)における増幅対象領域が適切に増幅されていると判断できる。
また、試料のDNAとして黄色ブドウ球菌のゲノムDNAを使用した供試菌株6において240bp付近にバンドが見られ、この結果から、黄色ブドウ球菌のヒートショックタンパク遺伝子(dnaJ)における増幅対象領域が適切に増幅されていると判断できる。
また、試料のDNAとして腸炎ビブリオのゲノムDNAを使用した供試菌株7において400bp付近にバンドが見られ、この結果から、腸炎ビブリオの耐熱性溶血毒素遺伝子(tdh)における増幅対象領域が適切に増幅されていると判断できる。
以上の通り、PCRによって、本実施形態の食中毒菌検出用担体、及び食中毒菌の検出方法におけるプローブの検出対象である食中毒菌の増幅対象領域が適切に増幅され、それぞれの領域に対応するPCR増幅産物が得られていることが確認された。
(実施例1)
次に、これらのPCR増幅産物を用いて、本実施形態の食中毒菌検出用担体に固定化されたプローブにより、検出対象の食中毒菌が検出できることを確認するための実験を行った。
本実施形態の食中毒菌検出用担体は、図5に示すように、プローブを固定化したものを使用した。すなわち、スポット1〜4には、配列番号1〜4の大腸菌のヒートショックタンパク遺伝子検出用プローブを固定化した。スポット5,6には、配列番号5,6の大腸菌のウリジンモノリン酸キナーゼ遺伝子検出用プローブを固定化した。スポット7〜13には、配列番号7〜13のリステリアのヒートショックタンパク遺伝子検出用プローブを固定化した。スポット14〜19には、配列番号14〜19のカンピロバクターのリボソーム遺伝子検出用プローブを固定化した。スポット20〜24には、配列番号20〜24の腸炎ビブリオの耐熱性溶血毒素遺伝子検出用プローブを固定化した。スポット25〜29には、配列番号25〜29の黄色ブドウ球菌のヒートショックタンパク遺伝子検出用プローブを固定化した。スポット30〜40には、配列番号30〜40のサルモネラの侵入性因子関連遺伝子検出用プローブを固定化した。スポット41〜45には、配列番号41〜45のセレウスのゲノムに含まれる溶血活性を示さないエンテロトキシン分泌遺伝子検出用プローブを固定化した。スポット46〜49には、配列番号46〜49のセレウスのゲノムに含まれるセレウリド合成酵素遺伝子検出用プローブを固定化した。
この食中毒菌検出用担体に、試験例1において得られたPCR増幅産物を、食中毒菌ごとに滴下し、当該担体に固定化されたプローブにハイブリダイズしたPCR増幅産物の標識を検出した。また、試料のDNAとして供試菌株3の大腸菌のゲノムDNAを使用するとともに、プライマーとして配列番号66及び67に示すプライマー対(増幅対象領域:dnaJ,増幅産物の大きさ 218bp)を使用し、その他の条件は試験1と同様にして増幅して得られたPCR増幅産物も、同様に使用した。具体的には、次のように行った。
まず、PCR増幅産物に、緩衝液(3×SSC クエン酸−生理食塩水)に0.3%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を添加したものを混合し、マイクロアレイに滴下した。
このマイクロアレイを45℃で1時間静置した。次に、上記緩衝液を用いてハイブリダイズしなかったPCR産物をマイクロアレイから洗い流した。
そして、マイクロアレイを標識検出装置(BIOSHOT,東洋鋼鈑株式会社製)にかけて蛍光強度を測定した。蛍光強度は、レーザー光で励起して標識成分(Cy5)を発光させ、その光量を検出器内に取り付けたCCDカメラにより検出し、これを撮影した。その結果を図6に示す。また、光量を電気信号に置換し、これを数値化して蛍光強度を得た。その結果を図7に示す。この蛍光強度は、当該装置での強度指標であり、単位はなく、バックグラウンドの数値が0になるように補正して算出される。
図6及び図7において、「大腸菌」は供試菌株3(大腸菌 Escherichia coli NBRC 102203)のPCR増幅産物(dnaJ,pyrHの各増幅産物)をそれぞれハイブリダイズさせた結果を、「リステリア」は供試菌株4(リステリア Listeria monocytogenes ATCC 15313)のPCR増幅産物をハイブリダイズさせた結果を、「カンビロバクター」は供試菌株2(カンビロバクター Campylobacter jejuni ATCC 33560)のPCR増幅産物をハイブリダイズさせた結果を、「腸炎ビブリオ」は供試菌株7(腸炎ビブリオ Vibrio parahaemolyticus RIMD 22210050)のPCR増幅産物をハイブリダイズさせた結果を、「黄色ブドウ球菌」は供試菌株6(黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus NBRC 100910)のPCR増幅産物をハイブリダイズさせた結果を、「サルモネラ菌」は供試菌株5(サルモネラ Salmonella enterica ATCC 9270)のPCR増幅産物をハイブリダイズさせた結果を、「セレウス」は供試菌株1(セレウス Bacillus cereus TIFT 114011)のPCR増幅産物をハイブリダイズさせた結果を、それぞれ示している。
大腸菌については、図6においてスポット2〜4,6に蛍光が明瞭に検出されている。また、図7によりスポット1,5についても一定の蛍光強度数値が得られており、蛍光が検出されていることがわかる。よって、本実施形態の食中毒菌検出用担体によれば、PCR増幅産物に、大腸菌のヒートショックタンパク遺伝子又はウリジンモノリン酸キナーゼ遺伝子の増幅産物が含まれている場合に、大腸菌を検出し得ることが明らかとなった。
なお、PCR増幅産物には、これらのプローブとハイブリダイズする核酸断片に対して相補的な塩基配列を有する核酸断片も含まれる。したがって、配列番号1〜6に対して相補的な塩基配列からなるプローブは、このような相補的な塩基配列を有する核酸断片とハイブリダイズすることができる。よって、配列番号1〜6に対して相補的な塩基配列からなるプローブを、本実施形態の食中毒菌検出用担体に固定化した場合も、同様にして大腸菌を検出することが可能である。これは、以下の食中毒菌についても同様である。
リステリアについては、図6においてスポット7,9〜13に蛍光が明瞭に検出されている。また、図7によりスポット8についても一定の蛍光強度数値が得られており、蛍光が検出されていることがわかる。よって、本実施形態の食中毒菌検出用担体によれば、PCR増幅産物に、リステリアのヒートショックタンパク遺伝子の増幅産物が含まれている場合に、リステリアを検出し得ることが明らかとなった。なお、スポット7に固定化したプローブは、アンチセンス鎖のもの(配列番号7に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列を有するプローブ)である。
カンピロバクターについては、図6においてスポット14〜19に蛍光が明瞭に検出され、図7においてもこれらのスポットに蛍光が検出されている。よって、本実施形態の食中毒菌検出用担体によれば、PCR増幅産物に、リステリアのヒートショックタンパク遺伝子の増幅産物が含まれている場合に、リステリアを検出し得ることが明らかとなった。なお、スポット14,15に固定化したプローブは、アンチセンス鎖のもの(それぞれ配列番号14,15に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列を有するプローブ)である。
腸炎ビブリオについては、図6においてスポット20〜24に蛍光が明瞭に検出され、図7においてもこれらのスポットに蛍光が検出されている。よって、本実施形態の食中毒菌検出用担体によれば、PCR増幅産物に、腸炎ビブリオの耐熱性溶血毒素遺伝子の増幅産物が含まれている場合に、腸炎ビブリオを検出し得ることが明らかとなった。
黄色ブドウ球菌については、図6においてスポット25〜29に蛍光が明瞭に蛍光が検出され、図7においてもこれらのスポットに蛍光が検出されている。よって、本実施形態の食中毒菌検出用担体によれば、PCR増幅産物に、黄色ブドウ球菌のヒートショックタンパク遺伝子の増幅産物が含まれている場合に、黄色ブドウ球菌を検出し得ることが明らかとなった。
サルモネラについては、図6においてスポット30〜35に蛍光が明瞭に検出されている。また、図7によりスポット36〜40についても一定の蛍光強度数値が得られており、蛍光が検出されていることがわかる。よって、本実施形態の食中毒菌検出用担体によれば、PCR増幅産物に、サルモネラの侵入性因子関連遺伝子の増幅産物が含まれている場合に、サルモネラを検出し得ることが明らかとなった。
セレウスについては、図6においてスポット41〜45,48,49に蛍光が明瞭に検出されている。また、図7によりスポット46,47についても一定の蛍光強度数値が得られており、蛍光が検出されていることがわかる。よって、本実施形態の食中毒菌検出用担体によれば、PCR増幅産物に、セレウスの溶血活性を示さないエンテロトキシン分泌遺伝子又はセレウリド合成酵素遺伝子が含まれている場合に、セレウスを検出し得ることが明らかとなった。
以上のように、本実施形態の食中毒菌検出用担体、及び食中毒菌の検出方法によれば、PCR増幅産物に、それぞれのプローブにハイブリダイズする食中毒菌のPCR増幅産物が含まれている場合に、これを適切に検出できることが確認された。
<PCRによる増幅対象領域におけるプローブの位置と蛍光強度の関係>
ここで、図8を参照して、PCRによる増幅対象領域におけるプローブの位置が、蛍光強度にどのような影響を与えるのかについて考察する。
プローブの設計は、検出対象の食中毒菌の遺伝子の増幅対象領域(プライマーセットにより増幅される領域)から、当該食中毒菌を特異的に検出することができる塩基配列を選択することにより行われる。
そこで、このような増幅対象領域におけるプローブの位置と、蛍光強度に関連性があるかどうかを調査するための試験を行った。
(試験2)
まず、リステリアのヒートショックタンパク遺伝子を増幅対象領域とし、この領域の様々な位置にそれぞれハイブリダイズする複数のプローブを作成した。そして、配列番号52及び53に示すプライマーセットを用いて、リステリアのゲノムDNAを増幅し、得られた増幅産物に上記作成したプローブをハイブリダイズさせて、それぞれの蛍光強度を実施例1と同様にして計測した。その結果を図8(a)に示す。
図8において、縦軸は蛍光強度を、横軸は増幅対象領域におけるプローブの位置を示しており、横軸の左端(0)は増幅対象領域の5’末端を、右端(図8(a)の場合、176)は同3’末端の位置を表し、各プロットはこれにハイブリダイズするプローブの3’末端の位置を表している。また、各プローブの塩基配列の長さは21〜31merである。
図8(a)では、横軸50のプロットはアンチセンス鎖のプローブによる蛍光強度を表し、横軸65〜120における各プロットはセンス鎖のプローブによる蛍光強度を表している。
この図から、センス鎖のプローブでは、プローブの位置が増幅対象領域の3’末端側であるほど蛍光強度が大きくなることがわかる。特に、増幅対象領域の3’末端側半分に位置する場合に、蛍光強度が大きくなっている。
一方、アンチセンス鎖のプローブについては、横軸50の位置において、横軸65の位置のセンス鎖のプローブよりも大きな蛍光強度が得られている。アンチセンス鎖のプローブについては、試験4において、図8(c)を参照してさらに説明する。
(試験3)
次に、サルモネラの侵入性因子関連遺伝子を増幅対象領域とし、この領域の様々な位置にそれぞれハイブリダイズする複数のプローブを作成した。そして、配列番号60及び61に示すプライマーセットを用いて、サルモネラのゲノムDNAを増幅し、得られた増幅産物に上記作成したプローブをハイブリダイズさせて、それぞれの蛍光強度を実施例1と同様にして計測した。その結果を図8(b)に示す。
図8(b)における各プロットはセンス鎖のプローブによる蛍光強度を表している。この図からも、センス鎖のプローブでは、プローブの位置が増幅対象領域の3’末端側であるほど蛍光強度が大きくなることがわかる。特に、増幅対象領域の3’末端側半分に位置する場合に、蛍光強度が大きくなっている。
なお、横軸118の位置のプローブの蛍光強度は、横軸112の位置のプローブの蛍光強度よりもやや低くなっている。これは、蛍光強度が飽和しているためであると推測される。
(試験4)
次に、カンピロバクターのリボソーム遺伝子を増幅対象領域とし、この領域の様々な位置にそれぞれハイブリダイズする複数のプローブを作成した。そして、配列番号54及び55に示すプライマーセットを用いて、カンピロバクターのゲノムDNAを増幅し、得られた増幅産物に上記作成したプローブをハイブリダイズさせて、それぞれの蛍光強度を実施例1と同様にして計測した。その結果を図8(c)に示す。
図8(c)における各プロットはアンチセンス鎖のプローブによる蛍光強度を表している。この図から、アンチセンス鎖のプローブについては、センス鎖とは逆に、プローブの位置が増幅対象領域の5’末端側であるほど蛍光強度が大きく、特に、増幅対象領域の5’末端側半分に位置する場合に、蛍光強度が大きくなっている。
以上の通り、試験2〜4の結果から、PCRによる増幅対象領域におけるプローブの位置と蛍光強度には、次の関係があることが明らかとなった。
すなわち、センス鎖のプローブの場合、プローブの位置が、増幅対象領域の3’末端側になると蛍光強度が増加し、5’末端側になると蛍光強度が減少する。
一方、アンチセンス鎖のプローブの場合、プローブの位置が、増幅対象領域の5’末端側になると蛍光強度が増加し、3’末端側になると蛍光強度が減少する。
(実施例2)
次に、本実施形態の食中毒菌検出用担体が、検出対象である七種類の食中毒菌を同時に検出可能であることを検証するための試験を行った。
PCR反応液としては、以下の組成のものを使用した。プライマーは、ライフテクノロジージャパン株式会社により合成されたものを使用した。それ以外は、タカラバイオ株式会社製のものを使用した。
・緩衝液 10×Ex Taq buffer(20mM Mg 2+ plus) 2.0μl
・核酸合成基質 dNTP Mixture(dATP、dCTP、dGTP、dTTP各2.5mM) 1.6μl
・primerF(10ng/μl、final conc.2ng) 0.2μl×7
・primerR(10ng/μl、final conc.2ng) 0.2μl×7
・Vibrio検出用primerF 0.4μl
・Vibrio検出用primerR 0.4μl
・核酸合成酵素 EX Taq(5U/μl) 0.1μl
・標識成分 Cy5 0.2μl
・試料のDNA 1.0μl×7
・滅菌水 5.5μl
(全量 20μl)
PCR用プライマーセットには、図3に示す七菌種八領域を増幅する全てのプライマーセットを使用した。また、試料のDNAには、試験1と同様に以下のものを使用し、これら全てを一括してPCR反応液に含有させた。
供試菌株1.セレウス(Bacillus cereus TIFT 114011)
供試菌株2.カンビロバクター(Campylobacter jejuni ATCC 33560)
供試菌株3.大腸菌(Escherichia coli NBRC 102203)
供試菌株4.リステリア(Listeria monocytogenes ATCC 15313)
供試菌株5.サルモネラ(Salmonella enterica ATCC 9270)
供試菌株6.黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 100910)
供試菌株7.腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus RIMD 22210050)
そして、epグラジエント(エッペンドルフ株式会社製)を使用して、以下の条件によりそれぞれの食中毒菌の対象領域の増幅を、PCR法を用いて一括して行った。
(1)95℃ 2分
(2)95℃ 10秒(DNA鎖の乖離工程)
(3)68℃ 30秒(アニーリング工程)
(4)72℃ 30秒(DNA合成工程)
(5)72℃ 2分
(2)〜(4)を40サイクル
次に、PCRによる増幅産物を電気泳動により泳動させ、正しい増幅産物が得られているか否かを確認した。電気泳動は、MultiNA(株式会社島津製作所製)を用いて行った。その結果を、図9に示す。同図に示す通り、電気泳動の結果、増幅産物には次の8つのピークが存在していた。
(1)168bp (2)172bp (3)187bp (4)201bp
(5)224bp (6)243bp (7)273bp (8)387bp
試験1の結果と照らし合わせると、これらのピークは、それぞれ以下の供試菌株の増幅産物を示していると考えられる。
(1)供試菌株3.大腸菌(Escherichia coli NBRC 102203)
(2)供試菌株5.サルモネラ(Salmonella enterica ATCC 9270)
(3)供試菌株4.リステリア(Listeria monocytogenes ATCC 15313)
(4)供試菌株1.セレウス(Bacillus cereus TIFT 114011)
(5)供試菌株6.黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 100910)
(6)供試菌株1.セレウス(Bacillus cereus TIFT 114011)
(7)供試菌株2.カンピロバクター(Campylobacter jejuni ATCC 33560)
(8)供試菌株7.腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus RIMD 22210050)
よって、本実施例のPCR増幅産物には、図3に示す全てのプライマーセットによりそれぞれ得られた七菌種の食中毒菌の八領域の全ての増幅産物が含まれていると判断できる。
次に、このPCR増幅産物を本実施形態の食中毒菌検出用担体に摘下し、実施例1と同様にして、当該担体に固定化されたプローブにハイブリダイズしたPCR増幅産物の標識を検出した。検出された蛍光を撮影した結果を図10に、蛍光強度を数値化したものを図11に示す。
図10を参照すると、大腸菌については、スポット6に蛍光が明瞭に検出されている。リステリアについては、スポット9〜13に蛍光が明瞭に検出されている。カンピロバクターについては、スポット14〜19に蛍光が明瞭に検出されている。腸炎ビブリオについては、スポット20〜24に蛍光が明瞭に検出されている。黄色ブドウ球菌については、スポット25〜29に蛍光が明瞭に検出されている。サルモネラについては、スポット30〜35に蛍光が明瞭に検出されている。セレウスについては、スポット41〜45,48,49に蛍光が明瞭に検出されている。
また、図11を参照すると、配列番号5〜49に示す全てのプローブについて、蛍光が検出されている。
図12に実施例1及び実施例2の結果をまとめたマトリックスを示す。この図に示される通り、本実施形態の食中毒菌検出用担体は、大腸菌、リステリア、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌、サルモネラ、セレウスをそれぞれ個別に検出できることがわかる。また、PCR増幅産物にこれら七菌種における八領域の増幅産物が混合している場合でも、それぞれを全て一括して検出することが可能となっている。
以上の通り、本実施形態の食中毒菌検出用担体、及び食中毒菌の検出方法によれば、これら七菌種八領域のPCR増幅産物を同時に一括して検出できることが明らかとなった。
(実施例3)
次に、本実施形態の食中毒菌検出用担体に固定化されたプローブに、偽陽性反応が生じないことを確認するための実験を行った。
本実施例では、実施例2のPCR反応液から一種類の食中毒菌のゲノムDNAを除いた、六種類の食中毒菌のゲノムDNAを含めたものを準備し、その他の点は実施例2と同様にして実験を行った。
そして、PCR反応液にゲノムDNAが含まれていない一種類の食中毒菌用のプローブが固定化されたスポットに、蛍光が検出されないかどうかを確認した。蛍光写真の撮影結果を図13及び図14に、蛍光強度数値を図15及び図16に示す。
図13及び図14において、各列1〜7は個別に行った実験の番号を示し、PCR反応液にゲノムDNAを含有させた食中毒菌を○で、含有させなかった食中毒菌を×で表している。また、「チップの結果」において、蛍光写真の撮影結果を示し、含有させなかった食中毒菌のスポット部分を四角で囲んでいる。また、「プローブ特異性」において、含有させなかった食中毒菌のスポットに蛍光が検出されていない場合に○を表示している。
これらの図に示される通り、いずれの実験においてもPCR反応液に含有させなかった一種類の食中毒菌のスポットには、蛍光が検出されなかった。
また、図15及び図16における蛍光強度数値を参照しても、含有させなかった食中毒菌のスポットには、いずれも蛍光が検出されなかった。
よって、以上の結果から、本実施形態の食中毒菌検出用担体、及び食中毒菌の検出方法で用いられるプローブは特異性に優れており、対象の七種類の食中毒菌を同時に特異的に検出できることが明らかとなった。
本発明は、以上の実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、PCR反応液の組成は、上記PCR用プライマーセットと試料を含有させ、同様の効果を得ることができるものであれば、その他の成分については上記実施形態及び実施例と異なるものにするなど、適宜変更することが可能である。また、本実施形態のプローブの設計方法を、その他の菌のゲノムDNAを検出するためのプローブ設計に適用することも可能である。
本発明は、食品や設備などに、大腸菌、リステリア、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌、サルモネラ、セレウスが存在しているか否かを同時かつ特異的に短期間で検査する場合などに好適に利用することが可能である。

Claims (7)

  1. 大腸菌(Escherichia coli)を検出するための配列番号1〜6に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第一のプローブ群、
    リステリア(Listeria属)を検出するための配列番号7〜13に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第二のプローブ群、
    カンピロバクター(Campylobacter属)を検出するための配列番号14〜19に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第三のプローブ群、
    腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)を検出するための配列番号20〜24に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第四のプローブ群、
    黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を検出するための配列番号25〜29に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第五のプローブ群、
    サルモネラ(Salmonella属)を検出するための配列番号30〜40に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第六のプローブ群、及び、
    セレウス(Bacillus cereus)を検出するための配列番号41〜49に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第七のプローブ群のうち群以上からそれぞれ一又は二以上選択されたプローブを固定化した
    ことを特徴とする食中毒菌検出用担体。
  2. 前記第一から第七のプローブ群の全ての群からそれぞれ一又は二以上選択されたプローブを固定化したことを特徴とする請求項1記載の食中毒菌検出用担体。
  3. 配列番号1〜49に示す塩基配列を有するプローブ及び/又はこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブを固定化したことを特徴とする請求項1又は2記載の食中毒菌検出用担体。
  4. 前記プローブが、以下の(a)〜(g)の基準に従って選択されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の食中毒菌検出用担体。
    (a)大腸菌(Escherichia coli)を検出するためのプローブは、当該食中毒菌のゲノムに含まれるヒートショックタンパク遺伝子(dnaJ)及び/又はウリジンモノリン酸キナーゼ遺伝子(pyrH)から選択する。
    (b)リステリア(Listeria 属)を検出するためのプローブは、当該食中毒菌のゲノムに含まれるヒートショックタンパク遺伝子(dnaJ)から選択する。
    (c)カンピロバクター(Campylobacter 属)を検出するためのプローブは、当該食中毒菌のゲノムに含まれるリボソーム遺伝子(16S rRNA)から選択する。
    (d)腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)を検出するためのプローブは、当該食中毒菌のゲノムに含まれる耐熱性溶血毒素遺伝子(tdh)から選択する。
    (e)黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を検出するためのプローブは、当該食中毒菌のゲノムに含まれるヒートショックタンパク遺伝子(dnaJ)から選択する。
    (f)サルモネラ(Salmonella属)を検出するためのプローブは、当該食中毒菌のゲノムに含まれる侵入性因子関連遺伝子(invA)から選択する。
    (g)セレウス(Bacillus cereus)を検出するためのプローブは、当該食中毒菌のゲノムに含まれる溶血活性を示さないエンテロトキシン分泌遺伝子(nhe)及び/又はセレウリド合成酵素遺伝子(cesB)から選択する。
  5. 大腸菌(Escherichia coli)のDNAを増幅するための配列番号50に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号51に示す塩基配列からなるプライマーを備えた第一のプライマーセットと、リステリア(Listeria属)のDNAを増幅するための配列番号52に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号53に示す塩基配列からなるプライマーを備えた第二のプライマーセットと、カンピロバクター(Campylobacter 属)のDNAを増幅するための配列番号54に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号55に示す塩基配列からなるプライマーを備えた第三のプライマーセットと、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)のDNAを増幅するための配列番号56に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号57に示す塩基配列からなるプライマーを備えた第四のプライマーセットと、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のDNAを増幅するための配列番号58に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号59に示す塩基配列からなるプライマーを備えた第五のプライマーセットと、サルモネラ(Salmonella属)のDNAを増幅するための配列番号60に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号61に示す塩基配列からなるプライマーを備えた第六のプライマーセットと、セレウス(Bacillus cereus)のDNAを増幅するための配列番号62に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号63に示す塩基配列からなるプライマーを備えた第七のプライマーセットと、セレウス(Bacillus cereus)のDNAを増幅するための配列番号64に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号65に示す塩基配列からなるプライマーを備えた第八のプライマーセットと、からなる群のうち、以上のプライマーセットと、試料のゲノムDNAと、核酸合成酵素と、核酸合成基質とを含有するPCR用反応液を用いて、前記試料中に前記以上のプライマーセットの少なくともいずれかに対応する食中毒菌のゲノムDNAが含まれている場合、PCR法により当該食中毒菌の核酸の増幅を行い、
    大腸菌を検出するための、配列番号5及び6に示す塩基配列を有するプローブ並びにこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第一のプローブ群、リステリアを検出するための配列番号7〜13に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第二のプローブ群、カンピロバクターを検出するための配列番号14〜19に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第三のプローブ群、腸炎ビブリオを検出するための配列番号20〜24に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第四のプローブ群、黄色ブドウ球菌を検出するための配列番号25〜29に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第五のプローブ群、サルモネラを検出するための配列番号30〜40に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第六のプローブ群、及び、セレウスを検出するための配列番号41〜49に示す塩基配列を有するプローブ及びこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブからなる第七のプローブ群のうち、前記以上のプライマーセットに対応する食中毒菌に対応する群以上からそれぞれ一又は二以上選択されたプローブを固定化した食中毒菌検出用担体に、前記増幅により得られた増幅産物を接触させ、前記固定化されたプローブにハイブリダイズさせることにより、食中毒菌を検出する
    ことを特徴とする食中毒菌の検出方法。
  6. 配列番号50〜65に示す塩基配列からなる各プライマーと、試料のゲノムDNAと、核酸合成酵素と、核酸合成基質とを含有するPCR用反応液を用いて、前記試料中に、少なくとも大腸菌、リステリア、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌、サルモネラ、及びセレウスのいずれかの食中毒菌が含まれている場合、PCR法により当該食中毒菌の核酸の増幅を行い、
    前記第一から第七のプローブ群の全ての群からそれぞれ一又は二以上選択されたプローブを固定化した食中毒菌検出用担体に、前記増幅により得られた増幅産物を接触させ、前記固定化されたプローブにハイブリダイズさせることにより、食中毒菌を検出する
    ことを特徴とする請求項記載の食中毒菌の検出方法。
  7. 配列番号5〜49に示す塩基配列を有するプローブ及び/又はこれらに対して相補的な塩基配列を有するプローブを固定化した食中毒菌検出用担体に、前記増幅により得られた増幅産物を接触させ、前記固定化されたプローブにハイブリダイズさせることにより、食中毒菌を検出する
    ことを特徴とする請求項記載の食中毒菌の検出方法。
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