JP6529120B2 - 帯電防止性樹脂組成物およびそれからなるフィルム - Google Patents

帯電防止性樹脂組成物およびそれからなるフィルム Download PDF

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Description

本発明は、透明性が良好で、経時によるブリードアウトが少なく、且つ帯電防止性能に優れたポリエステル樹脂組成物およびそれからなるポリエステルフィルム、特に、電子機器、電化製品、自動車、建材などを保護する表面保護フィルム用途に関するものである。
熱可塑性樹脂材料は、易型性に富み、安価であることから、それぞれの特性に応じて、包装分野を始めとして多くの分野で使用されている。中でも、比較的耐熱性に富み、環境負荷の少ないポリエステル系樹脂材料が多く使用されている。しかしながら、ポリエステル系樹脂は電気抵抗率が高く帯電し易いため、成形品の表面に静電気に起因する埃や塵が付着して、透明性を要求される包装材などの価値を低下させるという問題が起こりやすい。
かかる問題を解決するために、制電性を有した樹脂組成物が広く普及している。このような制電性樹脂組成物としては、例えば種々の樹脂にカーボンブラックなどの導電性フィラーを高充填練り込みした組成物があり、非常に高い制電性能(体積抵抗率で10Ω・cmレベル)を有しているものの、成形物の透明性が無い、フィラーの脱落により被着体を汚染しやすい、あまり高くないレベルの制電性(10〜1010Ω・cm)を付与するには安定生産が困難であるという問題があった。
一方、いわゆる親水性の活性剤を用いたものが多く提案されているが、これらは末端基にヒドロキシル化合物を有しているので、温度や湿度等の環境変化によって制電性能が左右され、特に低湿度下では性能が低下するという問題や、ブリードアウトが生じやすいという問題があった。
例えば、特許文献1には、有機スルホン酸型帯電防止剤を樹脂に練り込む方法、特許文献2には、ポリアルキレンオキシドとモノグリコールとスルホン化フタル酸金属塩もしくはそのエステルを反応させて得られるポリエーテルエステル系帯電防止剤を用いることが記載されている。
しかしながら、特許文献1のように界面活性剤を樹脂内部に添加する方法では、界面活性剤が経時的に樹脂成形物表面にブリードアウトし、被着体を汚染しやすい、経時的に帯電防止性能が低下するなどの問題があり、さらなる改良が求められる。また、特許文献2のように、分子量を高くした内部添加型帯電防止剤の場合は、実用上支障ないレベルの帯電防止効果を得ようとすれば、大量に添加する必要があり、その場合はベース樹脂との屈折率差によって白濁してしまい、透明性を落とすものであった。
また、表面保護フィルム材料としては、特許文献3、特許文献4、特許文献5などに記載されるようにフィルムの片面あるいは両面へ水溶性イオン導電性樹脂や4級アンモニウム塩を主体とした樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する方法が記載されている。
かかる手法の場合、帯電防止剤が経時的にブリードアウトすることがなく、帯電防止剤が表面に存在するために、帯電防止効果が得られることが広く知られている。しかしながら、フィルム表面に液剤を塗布する場合、塗布、乾燥を別の工程で実施する必要があるため、効率的ではない。また、表面に塗膜を形成しているため、外部からの衝撃などによって傷が付き易い、あるいは剥がれ易く帯電防止性組成物が脱落して被着体を汚す等の課題が残っている。
また、上記の問題を解決するため、特許文献6には、室温付近の広い温度範囲において液体であり、蒸気圧が極めて低くカチオンとアニオンからなる塩であるイオン液体を、熱可塑性樹脂に含有させる手法が提案されている。しかしながら、かかる文献における熱可塑性樹脂はポリカーボネート系樹脂にイオン液体を単に分散させるものであり、この場合の帯電防止性能は満足いくものではなく、またポリエステル樹脂に言及したものではない。
ポリエステル系樹脂とイオン液体の併用に関しては、特許文献7に、側鎖に炭化水素基を含有した分子量を特定したポリエステルとイオン液体を含有した粘着剤組成物が記載されている。
しかしながら、かかる技術は保護フィルムなどの粘着剤に限定したものであり、そのために脂肪族ポリステルを主体としたガラス転移温度が0℃よりも低く、また、水溶液としての帯電防止性液体にかかるものであり、このような組成物ではフィルムや成型物を単独で成型することはできない。
上記の課題を解決するため、本発明者らは以前、特許文献8に記載されているように、特定の含有比率からなる脂環式炭化水素基を含有するポリエステル樹脂と、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びイオン液体からなる帯電防止樹脂組成物であれば、帯電防止性能に優れ、ブリードアウトによる被着体への汚染が低減できることを提案した。
しかしながら、かかる手法では、フィルムの後加工処理を溶液コーティング法で行なうと、使用する溶媒(水、エチルアルコール、トルエン等)により、イオン液体成分がブリードアウトして帯電防止性能が低下してしまうという問題があった。
特開平9−40855号公報 特開平9−59601号公報 特開平5−1164号公報 特開平10−330518号公報 特開2004−123932号公報 特開2005−15573号公報 特開2007−8985号公報 特許5126840号公報
本発明は上記課題に鑑みて行われたものであり、その目的は、透明性が損なわれること無く、ブリードアウトによる被着体への汚染が少なく、また、優れた帯電防止性能(特に表面抵抗率が1010Ω/sq.以下)が付与され、且つ溶剤拭取り後においても性能低下の生じないポリエステル樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、エチレンナフタレートと所定の平均分子量を有するポリエチレングリコールとを共重合させた共重合ポリエステル樹を調製し、この樹脂へとイオン液体を添加することによって、透明性が良好で、ブリードアウトによる被着体への汚染が少なく、また、優れた帯電防止性能を示すとともに、溶剤拭取り後の性能低下も小さいポリエステル樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の帯電防止性樹脂組成物は、主たるジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸、グリコール成分としてエチレングリコールを含み、共重合成分として、樹脂成分全量に対して10〜35質量%の平均分子量1000〜4000のポリエチレングリコールを含む共重合ポリエステル樹脂(A)80〜99質量%と、イオン液体(B)1〜20質量%とを含むことを特徴とする。
また、本発明の帯電防止性樹脂組成物は、共重合ポリエステル樹脂(A)の共重合成分として、さらに樹脂成分全量に対して0.01〜2.0質量%の平均分子量10000〜50000のポリエチレングリコールを含むことが好適である。また、共重合ポリエステル樹脂(A)のジカルボン酸成分として、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を75〜100モル%含むことが好適である。また、イオン液体(B)がカチオンとしてイミダゾリウムイオンを含有するイオン液体であることが好適である。
また、本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも一つの層が前記帯電防止性樹脂組成物からなる単層又は多層のポリエステルフィルムであることを特徴とする。また、少なくとも一つの層が表面抵抗率1010Ω/sq.以下の帯電防止性樹脂組成物からなることが好適である。
本発明によれば、優れた帯電防止性能を有しており、溶剤等で表面コーティング加工や拭き取りを行っても帯電防止性能の低下が少なく、また、透明性が良好で、ブリードアウトによる被着体への汚染が少ない帯電防止性樹脂組成物を得ることができる。また、このような帯電防止性樹脂組成物を少なくとも一層に用いたポリエステルフィルムは、電子機器、電化製品、自動車、建材などを保護する表面保護フィルムに供するに好適なものとなる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の帯電防止樹脂組成物は、主たる繰り返し単位がエチレンナフタレートからなるポリエステルに、所定の平均分子量のポリエチレングリコールを共重合して得られた共重合ポリエステル樹脂(A)と、イオン液体(B)とを含有するものである。
本発明における共重合ポリステル樹脂(A)には、主たるジカルボン酸成分として、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が用いられる。2,6−ナフタレンジカルボン酸は、少なくとも全ジカルボン酸成分に対して70モル%以上含有することが好ましい。他のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、例えば、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,12−ドデカン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。その他のジカルボン酸成分としてはテレフタル酸成分を用いることが望ましい。ジカルボン酸成分は、通常、未置換体あるいはメチルエステル等のアルキルエステルとして反応に供される。
2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の含有比率が75モル%以上の場合、得られる帯電防止樹脂組成物の融点が、フィルム用のポリエステル樹脂として広く用いられるポリエチレンテレフタレートに近くなるため、一般的な設備を用いた製膜が容易となり、また、フィルム使用時の耐熱性が維持される。耐熱性を向上させるためには、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を100モル%とすることが望ましいが、その他のジカルボン酸成分として、テレフタル酸成分を25モル%以下共重合させることで、フィルムの透明性をさらに向上させることもできる。
また、主たるジカルボン酸成分として、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を用いているため、例えば、本発明の帯電防止樹脂組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂にブレンド製膜したフィルムの表面を、水、エチルアルコール、トルエン、酢酸ビニル等の溶剤によって拭き取っても、イオン液体がブリードアウトして帯電防止性能が低下することが無い。
また、本発明における共重合ポリステル樹脂(A)には、グリコール成分として、エチレングリコールが用いられる。エチレングリコールは、後述するポリエチレングリコールを除いた全グリコール成分に対して70モル%以上含有することが好ましい。他のグリコール成分としては、例えば、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロへキサンジメタノール等、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられ、これらをエチレングリコールに混合して用いてもよい。
本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)には、共重合成分として、樹脂成分全量に対して0.01〜2.0質量%の平均分子量1000〜4000のポリエチレングリコールが用いられる。また、さらなる共重合成分として、樹脂成分全量に対して0.01〜2.0質量%の平均分子量10000〜50000のポリエチレングリコールを用いることが好ましい。以下、本発明の共重合成分として用いる上記ポリエチレングリコールのうち、平均分子量1000〜4000(1500〜2000)のポリエチレングリコールを低分子量ポリエチレングリコール、平均分子量10000〜50000(10000〜30000)のポリエチレングリコールを高分子量ポリエチレングリコールと呼んで区別する。
共重合成分として用いる低分子量ポリエチレングリコールの平均分子量は、1000〜4000であり、さらに好ましくは1500〜2000である。この範囲であれば、さらにイオン液体(B)を添加することで、樹脂組成物の表面抵抗値が1010Ω/sq.以下となり、加えて透明性に優れた樹脂組成物を得ることができる。また、樹脂組成物の体積抵抗値を10Ω・cm以下とすることができる。
低分子量ポリエチレングリコールの平均分子量が1000未満の場合、あるいは4000を超える場合、イオン液体(B)を添加しても、樹脂組成物の表面抵抗値は1010Ω/sq.以下とならず、加えて平均分子量が4000を超える場合では、樹脂組成物が白濁してしまうため、透明性に優れたフィルムを得ることができない。
低分子量ポリエチレングリコールの添加量は、共重合ポリエステル樹脂(A)全量に対して10〜35質量%であり、さらに好ましくは20〜30質量%である。この範囲であれば、表面抵抗値が1010Ω/sq.以下、体積抵抗値が10Ω・cm以下と優れた帯電防止性能を付与することができる。また、樹脂組成物の融点が220℃を超えているため、ポリエチレンテレフタレート(PET)との多層フィルム製膜が容易であり、耐熱性に優れた樹脂組成物が得られる。これに対して、低分子量ポリエチレングリコールの添加量が10質量%未満であると、表面抵抗値が1010Ω/sq.を超えてしまい、35質量%を超えると樹脂の柔軟性が高くなり過ぎてしまい、製膜性が不良となる。
また、高分子量ポリエチレングリコールの平均分子量は、10000〜50000であり、さらに好ましくは10000〜30000である。この範囲であれば、共重合ポリエステル樹脂の減圧重縮合反応時にイオン液体を添加した際の、急激な発泡による液面レベル上昇を抑制することができる。ここで、重縮合反応時の液面レベル上昇が激しい場合には、減圧ラインが飛沫同伴した樹脂によって閉塞してしまうため、反応が阻害され、所望の分子量の共重合ポリエステル樹脂が得られない場合がある。
高分子量ポリエチレングリコールの添加量は、共重合ポリエステル樹脂(A)全量に対して0.01〜2.0質量%であることが望ましい。本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)には、必ずしも高分子量ポリエチレングリコールが添加されている必要はないものの、0.01質量%以上共重合させることで、前述したように、重縮合反応時にイオン液体(B)を添加した際の発泡を抑制することができ、より望ましい共重合ポリエステル樹脂が得られる。一方で、2質量%を超えると、共重合ポリエステル樹脂が白濁し、透明性が阻害される場合がある。
共重合ポリエステル樹脂(A)の製造は、従来公知の方法で行なえばよい。通常、ジカルボン酸の末端にメチル基が付加された出発物質を用いて触媒添加によりグリコール成分とエステル交換反応を行なうか、あるいは未置換のジカルボン酸を出発物質としてグリコール成分と直接エステル化反応を行ない、エチレンナフタレートを主たる繰り返し単位とするエステルプレポリマー(ビス−β−ヒドロキシエチルナフタレートまたはそのオリゴマー)を得る。その後、このエステルプレポリマーに、低分子量ポリエチレングリコール(及び高分子量ポリエチレングリコール)を添加して、さらに高真空下で重縮合反応を行ない、共重合ポリエステル樹脂(A)を得ることができる。あるいは、エステル交換反応又はエステル化反応を行なう前に、他のモノマー原料とともに低分子量ポリエチレングリコール(及び高分子量ポリエチレングリコール)を仕込み、順次反応を進行させてもよい。
共重合ポリエステル樹脂(A)には、成形する目的等に応じて、滑剤、耐熱剤、紫外線吸収剤、顔料などを適量配合することができる。
共重合ポリエステル樹脂(A)の重合度、溶融粘度は、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜調整することができる。通常の場合、その分子量は1,000,000〜50,000,000程度である。
イオン液体(B)は、カチオンとアニオンとから構成される塩であって、800℃程度の融点を有する一般的な無機塩に比べて比較的低温で液体状態になり、融点が−90℃〜100℃の塩をいう。かかるイオン液体は、不揮発性、低粘度という特徴に加えて、非プロトン性のイオン構造に基づく高い極性により有機化合物及び無機化合物に対して優れた溶解力を有するという特徴がある。イオン液体の合成方法としては、アニオン交換法や酸エステル法、中和法等の方法を採用することができる。
イオン液体を構成するカチオンとしては、第4級窒素含有カチオン、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン等が挙げられ、中でも第4級窒素含有カチオンが好ましい。第4級窒素含有カチオンとしては特に限定されないが、環状及び脂肪族第4級窒素含有カチオンをも包含する概念である。第4級窒素含有カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、第4級アンモニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、トリアゾリウムカチオンが挙げられ、中でもイミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、第4級アンモニウムカチオンが好ましい。好適なカチオンとしては、例えば、下記式(1)、(2)、(3)又は(4)で表されるカチオン種が挙げられ、中でも融点の低いイオン液体を数多く多様に調製できるという点から、下記式(1)で表されるイミダゾリウムカチオンがより好ましい。
Figure 0006529120
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上記式(1)において、R1〜R5は、それぞれ独立に、水素原子、ビニル基、炭素数1〜25のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は炭素数6〜25のアリール基若しくはアラルキル基を表す。上記アルキル基及びアルコキシ基は、直鎖、分岐状及び環状のいずれの形態であってもよいが、中でも直鎖が好ましい。また、上記アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びアラルキル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
炭素数1〜25のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基等が挙げられ、また炭素数1〜25のアルコキシ基としては、上記アルキル基に酸素原子が結合して形成されるアルコキシ基(例えば、メトキシ基)が例示できる。炭素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、p位がフッ素原子又は塩素原子で置換されたフェニル基、3,4位が塩素原子で置換されたフェニル基、m位がトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基等が挙げられる。炭素数6〜25のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、芳香環の3,4位が塩素原子で置換されたベンジル基等が挙げられる。
R1としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。R3としては、炭素数2〜18のアルキル基が好ましく、炭素数2〜12のアルキル基がより好ましい。R2、R4及びR5としては、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
具体的には、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−プロピルイミダゾリウムなどが挙げられ、中でも1−エチル−3−メチルイミダゾリウムが好ましい。
上記式(2)において、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜25のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は炭素数6〜25のアリール基若しくはアラルキル基を表す。上記アルキル基及びアルコキシ基は、直鎖、分岐状若しくは環状のいずれの形態であってもよいが、中でも直鎖が好ましい。また、上記アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びアラルキル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びアラルキル基としては、上述と同様の基が例示される。
R11としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキル基がより好ましい。R12としては、炭素数2〜8のアルキル基が好ましく、炭素数2〜4のアルキル基がより好ましい。なお、R11とR12は、非対称のもの(同一基でないもの)が好ましい。
具体的には、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−ブチルピロリジニウム、1−エチル−1−メチルピロリジニウム、1−エチルピロリジニウムなどが挙げられ、中でも1−エチル−1−メチルピロリジニウムが好ましい。
上記式(3)において、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜25のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は炭素数6〜25のアリール基若しくはアラルキル基を表す。上記アルキル基及びアルコキシ基は、直鎖、分岐状若しくは環状のいずれの形態であってもよいが、中でも直鎖が好ましい。また、上記アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びアラルキル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びアラルキル基としては、上述と同様の基が例示される。
R21としては、炭素数2〜12のアルキル基が好ましく、炭素数4〜6のアルキル基がより好ましい。R22としては、水素原子、又は炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
具体的には、1−メチルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−メチル−3−メチルピリジニウム、1−ブチル−3−メチルピリジニウム、1−ブチル−2−メチルピリジニウムなどが挙げられ、中でも1−メチルピリジニウムが好ましい。
また、上記式(4)において、R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜25のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は炭素数6〜25のアリール基若しくはアラルキル基を表す。上記アルキル基及びアルコキシ基は、直鎖、分岐状若しくは環状のいずれの形態であってもよいが、中でも直鎖が好ましい。また、上記アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びアラルキル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びアラルキル基としては、上述と同様の基が例示される。
R31、R32、R33及びR34としては、水素原子又は炭素数1〜17のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましい。
具体的には、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、メチルトリ−n−オクチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどが挙げられ、中でもメチルトリ−n−オクチルアンモニウムが好ましい。
また、イオン液体を構成するアニオンとしては、上記カチオンと組み合わせた場合に融点を低くすることが可能なアニオンが好適に用いられる。かかるアニオンとしては、無機アニオン及び有機アニオンのいずれであってもよく、特に限定されるものではない。具体的なアニオン種としては、AlCl 、AlCl 、AlCl 等のクロロアルミネートアニオン、BF 、PF 、F(HF)n等のフッ素系無機アニオン、CFCOO、CFSO 、(CFSO(TFSI)、(FSO)N(FSI)、(CFSO(TFSM)等のフッ素系有機アニオン、及びNO 、CHCOO等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の帯電防止性樹脂組成物は、上記共重合ポリエステル樹脂(A)及び上記イオン液体(B)を混合することによって得られる。混合する方法としては下記が挙げられる。
(1)あらかじめ共重合ポリエステル樹脂(A)を重縮合反応後、ペレット化し、単軸あるいは二軸混練機を用いてイオン液体(B)を投入口より適当な配合比で添加して混練する方法。
(2)共重合ポリエステル樹脂(A)の重縮合工程の途中あるいは重縮合終了後に、イオン液体(B)を添加し、ペレット状の樹脂組成物を得る方法。
(3)共重合ポリエステル樹脂(A)のエステル交換反応あるいはエステル化反応後、イオン液体(B)を添加し、重縮合反応を行ない、ペレット状の樹脂組成物を得る方法。
これらのうち、(3)のエステル交換反応あるいはエステル化反応後にイオン液体(B)を添加する手法を採用することによって、イオン液体(B)が共重合ポリエステル樹脂(A)の分子鎖間中に均一に取り込まれるため、得られた帯電防止樹脂組成物からイオン液体(B)がブリードアウトしにくく、また、水、エチルアルコール、メチルアルコール、トルエン、酢酸エチル等の溶剤を用いて表面処理した後でも帯電防止性能が維持される。
また、(1)の混練による手法では、イオン液体(B)を高配合比で混合出来るため、フィルム製膜時において他樹脂とブレンドする際に、容易に濃度を変更できる。
本発明の帯電防止性樹脂組成物における、イオン液体(B)の含有量は、1〜20質量%であり、さらに好ましくは3〜18質量%である。1質量%よりも少ない場合には帯電防止性能に劣り、20質量%を超えると帯電防止性能は良好なるものの、得られた樹脂組成物が白濁し、またイオン液体(B)のブリードアウトが生じやすくなるだけでなく、樹脂がイオン液体(B)に溶解してしまい、製膜化できない場合がある。
本発明の帯電防止性樹脂組成物の成形方法としては、射出成形、ブロー成形、フィルム成形、圧縮成形などが挙げられ、目的とする成形物に対して任意の方法を選択できる。
また、本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも1層に本発明のポリエステル帯電防止樹脂組成物を含有するものである。本発明の帯電防止性樹脂組成物は、単独でもフィルムや成形品への成形が可能であり、また、汎用のポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂との共押し出しによる多層フィルムとすることも可能である。本発明の帯電防止性樹脂組成物は、ポリエステル樹脂の透明性を損なうことなく優れた帯電防止性を付与することができ、また、汎用のポリエステル樹脂と融点が近いので、共押し出しによって容易に多層フィルムを成形することができる。このような多層フィルムは、機械特性に優れており、フィルムの表面が剥離することなく、さらにフィルム表面の傷付きも防ぐことができる。本発明の帯電防止樹脂組成物以外の層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等を積層することができるが、特にPETが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムの成形方法としては、下記が挙げられる。
(1)本発明の帯電防止性樹脂組成物のペレットを押出機にて溶融し、別の押出機にて溶融したポリエステル系樹脂をT−ダイに供給して2層以上の多層フィルムを得る方法。
(2)本発明の帯電防止性樹脂組成物のペレットを押出機にて溶融し、T−ダイへ導入して単層フィルムを得る方法。
(3)上記多層フィルムまたは単層フィルムを一軸あるいは二軸延伸機にて延伸して、延伸フィルムを得る方法。
これらのフィルムは、コロナ放電処理等により表面活性化を行い印刷加工や防汚加工などを付与することができる。
以上のようにして、本発明の帯電防止性樹脂組成物を用いて得られたポリエステルフィルムは、透明性が良好で、且つ経時的に被着体を汚染することが少ないために、特に、電子機器、電化製品、自動車、建材などを保護する表面保護フィルムや、包装材フィルム、建築材用シート、テープ基材などの材料として用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、以下の実施例における特性値は、次に示す方法で評価したものである。
<評価基準>
(1)樹脂外観
各実施例及び比較例の帯電防止性樹脂組成物を重縮合反応した際に、樹脂の白濁状態を目視で判定した。なお、反応時に白濁している場合、フィルム製膜時においても透明性が損なわれる。
(2)表面汚染性
各実施例及び比較例で得られた帯電防止性樹脂組成物よりフィルムを作成し、得られたフィルムの表面状態を目視観察し、イオン液体のブリードによる汚染性について、以下の基準より判定した。
○:ブリードによる汚染無し
×:ブリードによる汚染有り
(3)融点
各実施例及び比較例で得られた帯電防止性樹脂組成物の融点を、Perkin ELmer社製DSC7を用い、室温から10℃/分で300℃まで昇温した際の、融解ピークより求めた。
(4)フィルム製膜性
各実施例及び比較例で得られた帯電防止性樹脂組成物を、Tダイを備えた製膜機に供給して押出フィルムを作成し、得られたフィルムの厚さの不均一性、外観について目視により判定した。なお、樹脂が脈動しながら出てくるとフィルムの厚さが不均一となる。
◎:膜厚が均一でかつ外観良好
〇:膜厚が均一
△:膜厚が部分的に不均一
×:膜厚が不均一
(5)帯電防止性評価
各実施例及び比較例で得られた帯電防止性樹脂組成物より作成したフィルムを温度23℃相対湿度50%の恒温恒湿条件下で、高抵抗率計ハイレスターUP(三菱化学株式会社製)にて、MCC−A法により直流電圧10〜250Vを30秒間印加して表面抵抗率(Ω/sq.)を測定した。数値が小さい程、帯電防止性が優れていることを示す。また、体積抵抗率(Ω・cm)についても、同様の装置・方法を用いて測定した。
また、耐溶剤性評価として、上記フィルム表面をエチルアルコール(EtOH)にて拭き取り、乾燥した後に、EtOH拭き取り後の表面抵抗率を測定した。拭き取り前の表面抵抗率との差が少ないほど、耐溶剤拭取り性が高い。
(6)反応時発泡状況
各実施例及び比較例の帯電防止性樹脂組成物を重縮合反応した際に、その初期の発泡による液面レベル上昇有無を、ガラス製フラスコ重合装置を目視観察することにより評価した。また、ステンレス製オートクレーブを使用した場合は、オートクレーブ上面に設置した温度計の温度上昇度合いにより、レベル上昇有無を判定した。
また、各実施例及び比較例で用いたイオン液体は、以下に示す方法で作成した。
<イオン液体(B)の製造>
B−1
N−メチルイミダゾール214.8gに臭化エチル342.2gを滴下し、反応による発熱を抑えながら100℃にて5時間還流した。アセトニトリルおよび過剰の臭化エチルを減圧留去した後、ジエチルエーテル中に滴下した。析出した結晶を濾別し、結晶を室温で48時間減圧乾燥後、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドの結晶494.2gを得た。カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド700gをイオン交換水400mlに60℃で加熱溶解し、そこに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド水溶液(80%)500gを混合後、1時間撹拌した。この反応液を静置した後、上層の水層を分離除去した。下層の油層部分をイオン交換水で3回洗浄した後、100℃で減圧脱水を行い、目的の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(以下、EMI−TFSI)を回収量811g、収率99%で得た。回収物のNMR測定によりEMI−TFSIが高純度で得られていることを確認した。
B−2
カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド 480gをイオン交換水300mlに60℃で加熱溶解し、そこに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド水溶液(80%)500gを混合後、1時間撹拌した。この反応液を静置後、上層の水層を分離除去した。さらに下層の油層部分をイオン交換水で3回洗浄した後、100℃で減圧脱水を行い、目的の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(以下、EMI−FSI)を回収量605g、収率99%で得た。回収物のNMR測定によりEMI−FSIが高純度で得られていることを確認した。
B−3
N−メチルピロリジン100gに臭化エチル141gを滴下し、反応による発熱を抑えながら100℃にて8時間還流した。アセトニトリルおよび過剰の臭化エチルを減圧留去した後、ジエチルエーテル中に滴下した。析出した結晶を濾別し、結晶を室温で48時間減圧乾燥した。1−エチル−1−メチルピロリジニウムブロミドの結晶225gを得た。カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド380gをイオン交換水200mlに60℃で加熱溶解し、そこに1−エチル−1−メチルピロリジニウムブロミド水溶液(80%)275gを混合後、1時間撹拌した。この反応液を静置した後、上層の水層を分離除去した。下層の油層部分をイオン交換水で3回洗浄した後、100℃で減圧脱水を行い、目的の1−エチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(以下、EMPO−TFSI)を回収量442g、収率99%で得た。回収物のNMR測定によりEMPO−TFSIが高純度で得られていることを確認した。
B−4
ピリジン100gに炭酸ジメチル171g、メタノール127gを加えて130℃まで昇温後、 11時間撹拌し、1−メチルピリジニウムメチルカーボネート溶液398gを得た。得られた1−メチルピリジニウムメチルカーボネート溶液186gにトリフルオロメタンスルホン酸89gを脱炭酸による発泡に注意しながら 60℃で滴下を行った。滴下終了後、1時間撹拌、100℃で減圧脱気を行いメタノール、炭酸ジメチルを取り除くことにより目的の1−メチル−ピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート(以下、MPI−TFS)を回収量140g、収率97%で得た。回収物のNMR測定によりMPI−TFSが高純度で得られていることを確認した。
B−5
トリオクチルアミン100gに炭酸ジメチル76g、メタノール54gを加えて135℃まで昇温後、15時間撹拌し、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムメチルカーボネート溶液230gを得た。得られたメチルトリ−n−オクチルアンモニウムメチルカーボネート溶液185gにテトラフルオロホウ酸42%水溶液47gを脱炭酸による発泡に注意しながら 60℃で滴下を行った。滴下終了後、1時間撹拌、100℃で減圧脱気を行い水、メタノール、炭酸ジメチルを取り除くことにより目的のメチルトリ−n−オクチルアンモニウムテトラフルオロボレート(MTO−BF4)を回収量100g、収率97%で得た。回収物のNMR測定によりMTO−BF4が高純度で得られていることを確認した。
<帯電防止性樹脂組成物の製造>
実施例1
2,6−ナフタレンジカルボン酸メチル80.2質量部、エチレングリコール385質量部をエステル交換反応槽にて内温180℃で溶融撹拌後、反応触媒として酢酸マンガン・4水和物を0.022質量部添加し、3時間で内温を240℃まで引き上げながら、反応によって留出するメチルアルコールを精留塔より系外へ抜出し、エステル交換反応率93%以上のプレポリマーを得た。次いで、平均分子量2000のポリエチレングリコール20質量部とヒンダードフェノール系酸価防止剤AO60(ADEKA製)を0.3質量部を添加し、240℃にて追加反応を行った。引き続き、エステル交換反応触媒失活剤としてトリメチルリン酸0.023質量部を添加し撹拌後、イオン液体B−1(EMI−TFSI)5質量部を添加撹拌した後、重縮合反応槽へ全量を送液した。重合触媒として三酸化アンチモンを0.032質量部添加し、重縮合反応槽内の槽内圧を大気圧から1.3kPaまで90分かけて減圧すると同時に、内温を240℃から270℃まで引き上げた後、最終の槽内圧を150Pa以下となる高真空下で所定の溶融粘度となるまで約3時間、重縮合反応を行った。所定の溶融粘度に到達後、重縮合反応槽を0.5MPaへ加圧し、反応槽下部に取り付けた口金より押出し、ポリエステル重縮合体のペレット試料を得た。該ポリエステル重縮合体のフェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)混合溶媒中23℃での、ウベローデ法によるPET換算極限粘度は0.93であった。
実施例2〜4,7〜11
エステル交換反応後に、平均分子量2000のポリエチレングリコール及び平均分子量20000のポリエチレングリコールを表1記載の質量%で添加したほかは、実施例1と同様にして、帯電防止性樹脂組成物を得た。
比較例1〜2
エステル交換反応後に、平均分子量2000のポリエチレングリコールを表2記載の質量%で添加したほかは、実施例1と同様にして、帯電防止樹脂組成物を得た。
実施例5〜6,比較例3〜4
エステル交換反応後に、表1,2記載の平均分子量のポリエチレングリコールを同表に記載の質量%で添加したほかは、実施例1と同様にして、帯電防止樹脂組成物を得た。
比較例5,6
重縮合反応前に、イオン液体B−1を表2記載の質量%で添加したほかは、実施例1と同様にして、帯電防止樹脂組成物を得た。
実施例12〜16,比較例7
エステル交換反応及び重縮合反応工程でイオン液体を添加しなかったほかは、実施例1と同様にして、表5記載の量比にて共重合ポリエステル樹脂のペレット試料を得た。なお、イオン液体を重縮合工程で添加していないため、反応時の発泡は見られなかった。
この後、得られた共重合樹脂をスクリューフィーダーを備えた重量フィーダー(クボタ製)にて10kg/時間の吐出量で排出し、同方向回転の二軸押出混練機TEM−35B(東芝機械製)へ供し、混練機途中の添加口より、表3記載の質量%となるようにイオン液体B−1(EMI−TFSI)をギアポンプを備えた定量ポンプで添加し、スクリュー回転数120rpm、溶融温度270℃で混練後、ペレット状の帯電防止樹脂組成物を得た。
実施例17〜20
イオン液体をB−1(EMI−TFSI)を表7記載のイオン液体へ変更したほかは、実施例12と同様に、混練時にイオン液体を添加して帯電防止樹脂組成物を得た。
<帯電防止性樹脂組成物からなる2軸延伸フィルムの製造>
以上で得られた各実施例及び比較例の帯電防止性樹脂組成物を、真空乾燥機で130℃にて10時間以上乾燥後、ヘッド部分に一軸押出機およびT−ダイを備えたラボプラストミル(東洋精機製)へ該帯電防止樹脂組成物を供給して、スクリュー回転数60〜65rpmにて280℃でシート状に押し出しして、冷却ローラー、引き取りローラーを経て巻き取り機にてシート幅120mm、厚み約250μmのポリエステルシートを得た。その後、バッチ式二軸延伸機を用いて、該シートを90℃で30秒の予熱後に延伸倍率が経方向3.4倍、緯方向3.4倍となるように同時二軸延伸して厚み約20μmの延伸フィルムを得た。該フィルムは、235℃、10秒の熱セットを行い、帯電防止性ポリエステルフィルムを得た。
上記実施例1〜20,比較例1〜7の帯電防止性樹脂組成物の各種評価結果を、下記表1〜8に示す。なお、同表中の略号は以下のとおりである。
NDCA:2,6−ナフタレンジカルボン酸
TPA:テレフタル酸
PEG:ポリエチレングリコール
B−1:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMI−TFSI)
B−2:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(EMI−FSI)
B−3:1−エチル−3−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMPO−TFSI)
B−4:1−メチル−ピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート(MPI−TFS)
B−5:メチルトリ−n−オクチルアンモニウムテトラフルオロボレート(MTO−BF4)
Figure 0006529120
Figure 0006529120
Figure 0006529120
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表1,3に示すように、ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなるポリエステルに平均分量1000〜4000のポリエチレングリコールを10〜34.5質量%共重合して得られた共重合ポリエステル樹脂と、イオン液体B−1とからなる実施例1〜11の帯電防止性樹脂組成物は、透明性が良好であり、表面汚染も生じておらず、フィルム製膜性も良好であるとともに、表面抵抗率が1×10Ω/sq以下となり、帯電防止性能にも優れていた。また、エタノールで表面拭き取りを行なった後も、表面抵抗率の低下をそれほど生じておらず、耐溶剤性にも優れていた。さらに、共重合成分として平均分子量20000のポリエチレングリコールを添加した実施例2,3,7〜11では、重縮合反応時にイオン液体を添加しても発泡が生じず、反応をスムーズに進行させることができた。
これに対して、表2,4に示すように、平均分子量2000のポリエチレングリコールを40質量%共重合した比較例1では、フィルム製膜性が不良となってしまい、一方、同ポリエチレングリコールを8質量%共重合した比較例2では、表面抵抗率が1×1010Ω/sqを超え、帯電防止性能が十分でなかった。また、平均分子量200のポリエチレングリコールを用いた比較例3、平均分子量6000のポリエチレングリコールを用いた比較例4においても、いずれも表面抵抗率が高くなり、帯電防止性能に劣っていたほか、比較例4ではフィルムが白濁してしまった。また、イオン液体の添加量を0.5質量%とした比較例5は表面抵抗率が高く、一方で22質量%とした比較例6では、フィルムが白濁し、且つフィルムの表面汚染が生じてしまったのみならず、フィルム製膜性も悪化した。
Figure 0006529120
Figure 0006529120
表5,6に示すように、共重合ポリエステル樹脂の混練時にイオン液体B−1を5〜17.5質量%混合して得られた実施例12〜14では、透明性、表面汚染性、フィルム製膜性、帯電防止性能のいずれの評価においても優れていた。これに対して、イオン液体B−1を22質量%添加した比較例7では、製膜時の脈動がひどくフィルム化することができなかった。また、テレフタル酸成分を20モル%用いた実施例15,30モル%用いた実施例16においても、前記実施例と同様、いずれも良好な評価が得られたが、融点が低下し、耐熱性に劣る傾向にあった。
Figure 0006529120
Figure 0006529120
表7,8に示すように、異なる種類のイオン液体B−2〜B−5を用いた実施例17〜20の帯電防止性樹脂組成物においても、イオン液体B−1を用いた前記実施例と同様、透明性、表面汚染性、帯電防止性能のいずれの評価も良好であった。ただし、イミダゾリウムイオンを含むイオン液体B−2を用いた実施例17が、他のイオン液体B−3〜B−5を用いた実施例18〜20と比較して、特に透明性の点で優れていた。

Claims (6)

  1. 主たるジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸、グリコール成分としてエチレングリコールを含み、共重合成分として、樹脂成分全量に対して10〜35質量%の平均分子量1000〜4000のポリエチレングリコールを含む共重合ポリエステル樹脂(A)80〜99質量%と、
    イオン液体(B)1〜20質量%と
    を含むことを特徴とする帯電防止性樹脂組成物。
  2. 共重合ポリエステル樹脂(A)が、共重合成分として、さらに樹脂成分全量に対して0.01〜2.0質量%の平均分子量10000〜50000のポリエチレングリコールを含むことを特徴とする請求項1記載の帯電防止性樹脂組成物。
  3. 共重合ポリエステル樹脂(A)のジカルボン酸成分として、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を75〜100モル%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の帯電防止樹脂組成物。
  4. イオン液体(B)がカチオンとしてイミダゾリウムイオンを含有するイオン液体であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の帯電防止性樹脂組成物。
  5. 少なくとも一つの層が請求項1から4のいずれかに記載の帯電防止性樹脂組成物からなることを特徴とする単層又は多層ポリエステルフィルム。
  6. 少なくとも一つの層が表面抵抗率1010Ω/sq.以下である請求項1から4のいずれかに記載の帯電防止性樹脂組成物からなることを特徴とするポリエステルフィルム。


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