本発明にかかる車両操向システムが適用されるトランスミッション1の構成について、図1より説明する。トランスミッション1は、ミッションケース20を有し、該ミッションケース20にて、互いに同一軸心上に配した左右一対の車軸4L・4R(総称して「車軸4」とする)を支持している。車軸4は、例えばコンバインのようなクローラ式走行装置を有する車両の駆動スプロケット軸として適用される。以下に述べるトランスミッション1における各構成部材や部分の位置や方向は、この車軸4の延伸方向がトランスミッション1の左右方向であることを前提とする。
トランスミッション1のミッションケース20内には、車軸4に対し平行な左右延伸状のサイドクラッチ軸21が、ミッションケース20に回転自在に軸支されている。サイドクラッチ軸21の左右中央部には、分配ギア22が固設されている。ミッションケース20内にて、分配ギア22から左右一対の車軸4L・4Rへと動力を分配するための一対の駆動列3L・3R(総称して「駆動列3」とする)が設けられている。左右各駆動列3L・3Rを構成すべく、ミッションケース20内にて、互いに同一軸心上に配置される左右延伸状の左右一対の中間軸24L・24R(総称して「中間軸24」とする)が、サイドクラッチ軸21及び左右一対の車軸4L・4Rに対し平行に設けられ、ミッションケース20に回転自在に軸支されている。
なお、本実施例のトランスミッション1には、図外のエンジン等の原動機の動力にて駆動される図外の変速装置(例えば油圧式無段変速装置)が設けられており、その出力が分配ギア22に伝達されるものとしている。
分配ギア22の左側におけるサイドクラッチ軸21の左部には左シフタ5Lが、分配ギア22の右側におけるサイドクラッチ軸21の右部には右シフタ5Rが、それぞれ、左右軸心方向摺動自在かつ相対回転自在に装着されている(左右シフタ5L・5Rを総称して「シフタ5」とする)。以下、各シフタ5について、分配ギア22側を内側、分配ギア22に対し反対側を外側とする。左シフタ5Lの右端部には左サイドギア23Lが形成されており、右シフタ5Lの左端部には右サイドギア23Rが形成されている(左右サイドギア23L・23Rを総称して「サイドギア23」とする)。すなわち、各シフタ5の内側端部にサイドギア23が形成されている。
分配ギア22の左右各端部にはクラッチ爪6aが形成され、左右各シフタ5L・5Rにおけるサイドギア23L・23Rの内側端部にはクラッチ爪6bが形成されている。こうして、分配ギア22の左端部のクラッチ爪6aと左サイドクラッチ23Lのクラッチ爪6bとで、噛み合い式の左サイドクラッチ6Lが形成され、分配ギア22の右端部のクラッチ爪6aと右サイドクラッチ23Rのクラッチ爪6bとで、噛み合い式の右サイドクラッチ6Rが構成されている(左右サイドクラッチ6L・6Rを総称して「サイドクラッチ6」とする)。
サイドクラッチ軸21の左右端部に、左右一対のバネ5aが巻装され、各バネ5aにて、各シフタ5が分配ギア22寄りに付勢されている。すなわち、各バネ5aが各サイドクラッチ6を「入」方向に付勢している。各シフタ5の外側端部は筒状になっていて、各バネ5a周りに配設される。左シフタ5Lの筒状の外(左)側端部とミッションケース20の左側部との間にて、左サイドブレーキ7Lが構成され、右シフタ5Rの筒状の外(右)側端部とミッションケース20の右側部との間にて、右サイドブレーキ7Rが構成されている(左右サイドブレーキ7L・7Rを総称して「サイドブレーキ7」とする)。各サイドブレーキ7は、摩擦板7a・7b及び押圧板7cよりなる。摩擦板7aは、各シフタ5の筒状の外側端部に相対回転不能に係合されており、摩擦板7bは、ミッションケース20の左右各側部に相対回転不能に係合されている。押圧板7cは、各シフタ5に固定されている。
各シフタ5が内側方の最大摺動位置にあって各サイドクラッチ6が係合している状態において、押圧板7cは摩擦板7a・7bから離れ、摩擦板7a・7b同士も離れている。この状態が、サイドブレーキ7の非作動状態(非制動状態)である。シフタ5がサイドクラッチ軸21に沿ってバネ5aに抗して左右外側方に摺動する(サイドクラッチ6は切れた状態となる)につれ、該シフタ5と一体に移動する押圧板7cが摩擦板7a・7bに接近し、やがて、押圧板7cにより摩擦板7a・7b同士が圧接する。この状態が、サイドブレーキ7の作動状態(制動状態)である。摩擦板7a・7b同士が圧接し始めてからシフタ5が外側方に摺動するにつれ、摩擦板7a・7b間の摩擦圧が増大し、シフタ5(すなわち、分配ギア22から離れた状態でのサイドギア23)に付加されるサイドブレーキ7の制動力が増大する。
ミッションケース20には、前後方向に延設された左右一対の回動軸30L・30R(総称して「回動軸30」とする)が内外貫通状に枢支されている。ミッションケース20の外側には、シフタ5L・5R操作用の車両操向用アクチュエータセット2が設けられている。該車両操向用アクチュエータセット2は、油圧シリンダである左右一対の操向用アクチュエータ34L・34R(総称して「操向用アクチュエータ34」)を有し、各操向用アクチュエータ34より延出されるピストンロッド36を各回動軸30の外端に連結している。
一方、ミッションケース20の内側における各回動軸30より係合部材(クランプ等)30aが延設され、各シフタ5に係合されている。回動軸30の軸心回りの回動により、係合部材30aが該回動軸30の軸心を中心に回動し、これにより、シフタ5がサイドクラッチ軸21に沿って左右方向に摺動する。なお、操向用アクチュエータ34の動きに応じてシフタ5をサイドクラッチ軸21に沿って摺動できるものであれば、操向用アクチュエータ34とシフタ5との連係構造は、このような回動軸30・係合部材30aの構造に限らず、どのようなものでもよい。
左中間軸24Lの右端には左大径ギア25Lが固設されており、該左大径ギア25Lは、左シフタ5Lの摺動にかかわらず、常時、左サイドギア23Lと噛合している。また、左中間軸24Lに固設された左小径ギア26Lと、左車軸4Lに固設された左大径ギア27Lとが噛合している。こうして、分配ギア22、左サイドギア23L、左大径ギア25L、左小径ギア26L、左大径ギア27Lにより、分配ギア21から左車軸4Lへと動力を伝達する左駆動列3Lが構成されている。一方、右中間軸24Rの左端には右大径ギア25Rが固設されており、該右大径ギア25Rは、右シフタ5Rの摺動にかかわらず、常時、右サイドギア23Rと噛合している。また、右中間軸24Rに固設された右小径ギア26Rと、右車軸4Rに固設された右大径ギア27Rとが噛合している。こうして、分配ギア22、右サイドギア23R、右大径ギア25R、右小径ギア26R、右大径ギア27Rにより、分配ギア21から右車軸4Rへと動力を伝達する右駆動列3Rが構成されている。なお、以下、左右大径ギア25L・25R、左右小径ギア26L・26R、左右大径ギア27L・27Rをそれぞれ総称して「大径ギア25」「小径ギア26」「大径ギア27」とする。
ここで、図1は車両の直進状態(左右車軸4L・4Rが同一速度で回転する状態)を示すものであり、左右両シフタ5L・5Rは、それぞれのバネ5aの付勢力に基づく各内側方の最大摺動位置にあり、左右両サイドクラッチ6L・6Rが接合し、かつ、左右両サイドブレーキ7L・7Rが切れていて、左右両サイドギア23L・23Rが分配ギア22と一体状に回転自在な状態となっている。したがって、各駆動列3、すなわち、各サイドギア23に噛合する大径ギア25、小径ギア26、大径ギア27を介して、左右車軸4L・4Rには、原則的には均等に、分配ギア22の回転力が伝達される。
車両の旋回時におけるトランスミッション1の状態について説明する。なお、ここでは、後述の補助クラッチ8は切れているものとする。図1にて示す直進状態から、車両を左旋回させる場合は、右サイドクラッチ6Rを接合した位置に右シフタ5Rを保持したまま、左シフタ5Lを外側方、すなわち左側に摺動する。これにより、左サイドクラッチ23Lのクラッチ爪6bが分配ギア22の左側のクラッチ爪6aより外れる。すなわち、左サイドクラッチ6Lが切れる。
さらに、左シフタ5Lに固設された押圧板7cが左サイドブレーキ7Lの摩擦板7a・7bを圧接し、左シフタ5Lの左側方摺動につれて摩擦板7a・7b間の摩擦圧を増し、左シフタ5Lに付加する制動力を増す。左シフタ5Lに付加された左サイドブレーキ7Lの制動力は、左サイドクラッチ6Lを切って分配ギア22から離間した状態である左サイドギア23Lから、左駆動列3Lとしての左大径ギア25L・左小径ギア26L・左大径ギア27Lを介して、左車軸4Lに伝達され、右車軸4Rの回転速度よりも小さくなることで、車両は左旋回することとなる。やがて、左側に摺動する左シフタ5Lがその最大摺動位置に達すると、左サイドブレーキ7Lの摩擦板7a・7bは完全に圧着し、左シフタ5Lが制動され、左駆動列3Lを介して、左サイドギア23Lに付加された制動力が左車軸4Lに伝達されることとなり、旋回内側の左車軸4Lを完全に制動しての左ブレーキターンが実現する。
なお、右旋回時においては、左サイドクラッチ6Lを接合した位置に左シフタ5Lを保持したまま、右シフタ5Rを外側方、すなわち右側に摺動することで、右サイドクラッチ6Rを切り、さらに右サイドブレーキ7Rをかけるものであり、その状態の詳細については、上述の左旋回時の説明を参照するものとし、図示も省略する。
左中間軸24Lの右端の左大径ギア25Lと、右中間軸24Rの左端の右大径ギア25Rとの間には、接合力を可変とする補助クラッチ8が介設されている。本実施例では、補助クラッチ8を、左大径ギア25Lに相対回転不能に係合された摩擦板8aと、右大径ギア25Rに相対回転不能に係合された摩擦板8bとよりなる、摩擦板式クラッチとしており、摩擦板8a・8b同士の押圧度の調整により、接合力を可変としている。なお、補助クラッチ8は、接合力が可変のものであれば、どのような構造でもよい。この補助クラッチ8を接合する(入れる)ことにより、左右の大径ギア25L・25R間、すなわち、左右の駆動列3L・3R間にて、動力(トルク)の伝達がなされる。そして、補助クラッチ8の接合力の調整により、左右の駆動列3L・3R間で伝達されるトルク量が調整されることとなる。
補助クラッチ8にはさらに、中間軸24の軸心方向(左右方向)に摺動可能な図外の押圧部材が設けられており、この押圧部材を左右一側(以後、「クラッチ接合側」とする)に摺動することで、摩擦板8a・8bを圧接し(補助クラッチ8を入れ)、また、その圧接度(すなわち、補助クラッチ8の接合力)を高めるものであり、左右他側(以後、「クラッチ離間側」とする)に摺動することで、摩擦板8a・8bの圧接力を低減し、さらには摩擦板8a・8bを離間させる(補助クラッチ8を切る)ものとしている。
ミッションケース20内には、補助クラッチ用シフタ9が設けられている。補助クラッチ用シフタ9は、フォーク軸9a及びフォーク9bを有する。左右延伸状のフォーク軸9aは、ミッションケース20内にて、左右軸心方向に摺動自在に支持されている。フォーク9bの一端部はフォーク軸9aに固着されている。該フォーク9bの他端部は、補助クラッチ8の前記押圧部材に係合している。こうして、フォーク軸9aの前記クラッチ接合側への摺動により、摩擦板8a・8b同士の押圧力、すなわち、補助クラッチ8の接合力が増大し、フォーク軸9aの前記クラッチ離間側への摺動により、摩擦板8a・8b同士の押圧力を低減し、さらには補助クラッチ8を離間する(切れる)ものとしている。このフォーク軸9aは、バネ9eにて該クラッチ離間側に付勢されている。
ミッションケース20には、回動軸17が内外貫通状に枢支されている。ミッションケース20の外側における回動軸17の外端には、アーム16が固設されている。一方、ミッションケース20の内側における回動軸17の内端部には半割状のカム面17aが形成されている。フォーク9bの前記一端部は、カム面17aを受けるカム受け面9dとして形成されている。このように、アーム16及び回動軸17等にて、補助クラッチ用シフタ9を操作するための操作機構15が構成されている。
図1に示すようにカム面17aがカム受け面9dと平行になっていて、カム面17aとカム受け面9dと密着した状態のときは、フォーク軸9aは、前記クラッチ離間側の最大摺動位置に配置されており、前述の如く補助クラッチ8は切れている。そして、回動軸16をその軸心回りに回動してカム面17aをカム受け面9dに対し斜めにすることで、フォーク軸9aが前記クラッチ接合側に摺動し、その摺動量に応じた接合力で、フォーク9bを介して補助クラッチ9を接合する。
したがって、例えば前述の如く車両を左旋回させるべく、旋回内側である左サイドクラッチ6Lを切った状態にしても、右大径ギア25Rから左大径ギア25Lへと、すなわち、右駆動列3Rから左駆動列3Lへと、補助クラッチ8を介して、設定された接合力に応じたトルクが伝達され、旋回内側となる左車軸4Lに、若干の駆動力が付与される。これにより、旋回中に予想外の走行抵抗を受けて旋回内側の左車軸4Lが停止するということなく、想定していたとおりの左右車軸4L・4Rの差動状態での旋回を得ることができる。
次に、操向レバー11の操作に基づくサイドクラッチ6、サイドブレーキ7の作動の流れについて説明する。操向レバー11は、図5に示すように、その基端のボス部11aを、前後水平方向の枢軸51上に装着しており、枢軸51の軸心を中心に左右回動自在であり、その傾倒角度Tを0とする直進位置から左右各側に最大角度Tmaxまで傾動可能な構成となっている。なお、直進位置(傾倒角度T=0)から左方の傾倒角度Tを左傾倒角度LT、該直進位置から右方の傾倒角度Tを右傾倒角度RTとする。後述の如きコントローラ10による操向用アクチュエータ34の制御にて、操向レバー11を直進位置から左側に傾動して左傾倒角度LTを増大させるにつれ、左シフタ5Lが左方(外側方)へと摺動し、操向レバー11を直進位置から右側に傾動して右傾倒角度RTを増大させるにつれ、右シフタ5Rが右方(外側方)へと摺動する。
該直進位置から左右各側での操向レバー11の傾倒角度TがT1に達するまでは旋回内側のサイドクラッチ6は接合したまま、すなわち、両サイドクラッチ6L・6Rが接合したままで、直進状態が保持される。傾倒角度TがT1に達すると、旋回内側のサイドクラッチ6が切れる。傾倒角度TをT1からT2まで増大させる間は、旋回内側のサイドクラッチ6が切れているが、旋回内側のサイドブレーキ7はまだ作動しない状態であり、旋回内側の車軸4は慣性力で回転可能な状態である。
傾倒角度TがT2に達すると、旋回内側のサイドブレーキ7の摩擦板7a・7bが圧接し始める。すなわち、旋回内側のサイドブレーキ7が効き始める。傾倒角度TがT2から最大角度Tmaxに向けて増大するにつれて、旋回内側のサイドブレーキ7の摩擦板7a・7bの圧接度が増し、すなわち、その制動力が増大する。傾倒角度Tが最大角度Tmaxに達した時点では、旋回内側のサイドブレーキ7の摩擦板7a・7bは完全に圧接しており、旋回内側の車軸4は確実に制動される。
次に、前記車両操向用アクチュエータセット2の構造について、図1乃至図5により説明する。車両操向用アクチュエータセット2は、油路ブロック38に、電磁式方向制御弁32、可変のリリーフ圧を有するリリーフ弁33、左右一対の操向用アクチュエータ(油圧シリンダ)34L・34Rを組み付けてなるものである。なお、図1のみに図示されているが、図2乃至図4では図示されない一対のチェック弁39L・39R(総称して「チェック弁39」)も油路ブロック38に組み入れられている。
油路ブロック38には、平行な左右一対のシリンダ孔が形成されていて、各シリンダ孔に、ピストン35、ピストン35より延設されるピストンロッド36、ピストンロッド36に巻装されて該ピストン35を初期位置へと付勢するバネ37を組み入れることで、左右一対の操向用アクチュエータ(油圧シリンダ)34L・34Rを構成している。両ピストンロッド36は、油路ブロック38より延出されて、それらの先端が、前述の如く左右の回動軸30L・30Rの外端に各別に接続される。
各操向用アクチュエータ34を構成するシリンダ孔の、ピストンロッド36に対しては反対側となるピストン35の一側が、作動油室34aとなり、また、ピストン35の軸心方向における途中部にはリリーフポート34bが設けられている。油路ブロック38には、図1に示す油圧ポンプ31からの吐出油を受けるポンプポート38aが設けられており、また、油路ブロック38内から油路ブロック38の外部へと油を排出するためのドレンポート38dが設けられている。
入口ポート38aより油路ブロック38に流入した油圧ポンプ31からの油は、電磁弁である方向制御弁32を介して、左操向用アクチュエータ34Lの作動油室34a、右操向用アクチュエータ34Rの作動油室34a、ドレンポート38dのうちのいずれかに送られるよう構成されている。また、左右操向用アクチュエータ34L・34Rのリリーフポート34bからの油は、各別のチェック弁39を介して合流し、ドレンポート38dへと送られるよう構成されている。
左右一対の操向用アクチュエータ34L・34Rは、電磁式の方向制御弁32がコントローラ10からの指令信号に基づいて位置制御されることで、操向用アクチュエータ34L・34Rの作動油室34aに対する油の流れが制御され、それにより、ピストンロッド36の伸長量が制御されるものである。このように、方向制御弁32のソレノイド制御に基づいて制御されるという意味において、操向用アクチュエータ34(34L・34R)は、電子制御式アクチュエータである。
以下、各操向用アクチュエータ34については、該当するシフタ5を内側方の最大摺動位置にしてサイドクラッチ6を接合させるようセットされた状態を、操向用アクチュエータ34の非作動状態とし、内側方の最大摺動位置から少しでも外側方にシフタ5を摺動させるようセットされた状態を操向用アクチュエータ34の作動状態とする。
方向制御弁32は、図1に示すように、3位置切換式の方向制御弁となっており、コントローラ10からの指令信号に基づき、ソレノイド32aの励磁・ソレノイド32bの解磁により左旋回位置Lに、ソレノイド32bの励磁・ソレノイド32aの解磁により右旋回位置Rに、両ソレノイド32a・32bの解磁により中立位置Nに、位置制御される。
方向制御弁32は、左旋回位置Lにあるときは、左旋回用アクチュエータ34Lの作動油室34aをポンプポート38aに連通して、左旋回用アクチュエータ34Lを作動状態にするとともに、右旋回用アクチュエータ34Rの作動油室34aをタンクポート38dに連通して、右旋回用アクチュエータ34Rを非作動状態にする。また、右旋回位置Rにあるときは、右旋回用アクチュエータ34Rの作動油室34aをポンプポート38aに連通して、右旋回用アクチュエータ34Rを作動状態にするとともに、左旋回用アクチュエータ34Lの作動油室34aをタンクポート38dに連通して、左旋回用アクチュエータ34Lを非作動状態にする。そして、中立位置Nにあるときは、ポンプポート38a及び左右両旋回用アクチュエータ34L・34Rの作動油室34aをタンクポート38dに連通して、左右両旋回用アクチュエータ34L・34Rを非作動状態にする。
方向制御弁32は、図2に示すように、油路ブロック38に組み入れられており、また、油路ブロック38に、方向制御弁32のソレノイドセット32cが外付けされている。ソレノイドセット32cには、図1の油圧回路図に示す両ソレノイド32a・32bが組み込まれている。該ソレノイドセット32cは、コントローラ10からの指令信号32La・32Raを受けるべく、ハーネス32dにてコントローラ10に接続されている。指令信号32Lsを受けることで、ソレノイド32aが励磁され、指令信号32Rsを受けることで、ソレノイド32bが励磁されるものとしている。
一方、図5に示すように、操向レバー11の基端ボス11aより扇形アーム52が延設されており、該扇形アーム52の円弧形縁の一部に凹みを設け、これをデテント溝52aとしている。扇形アーム52の近傍には、バルブスイッチ53が配設されており、その押当子53aが扇形アーム52に向けて付勢され、扇形アーム52の(すなわち操向レバー11の)回動に伴って、デテント溝52aに対し進退するものとなっている。操向レバー11が直進位置(傾倒角度T=0)の位置にあるときは、押当子53aがデテント溝52aに嵌入し、これにより、バルブスイッチ53はスイッチオフの状態となり、コントローラ10は、バルブスイッチ53がOFFであるときに、方向制御弁32を中立位置Nにする。
操向レバー11を、直進位置から左側または右側に回動させると、押当子53aは、デテント溝52aから抜け、扇形アーム52の円弧縁に押されて後退し、バルブスイッチ53がスイッチオンの状態となる。これにより、ソレノイド32a・32bのいずれかが励磁されるようコントローラ10より指令信号が発せられ、方向制御弁32が左旋回位置Lまたは右旋回位置Rに切り換えられ、左・右操向用アクチュエータ34L・34Rのうちのいずれかの作動油室34aに油圧ポンプ31からの油を供給する。
なお、操向レバー11(すなわち扇形アーム52)が左右いずれに回動したことでバルブスイッチ53がスイッチオンの状態になったのかについては、図示されない検出手段等によりコントローラ10にて把握されるものとする。すなわち、操向レバー11を直進位置から左に傾倒して扇形アーム52のデテント溝52aよりも右側の円弧縁が押当子53aに押当してバルブスイッチ53がスイッチオンの状態になった場合には方向制御弁32を左旋回位置Lにする(ソレノイド32aを励磁する)一方、操向レバー11を直進位置から右に傾倒して扇形アーム52のデテント溝52aよりも左側の円弧縁が押当子53aに押当してバルブスイッチ53がスイッチオンの状態になった場合には方向制御弁32を右旋回位置Rにする(ソレノイド32bを励磁する)。なお、後述のカム操作アーム46の回動方向の検知に基づいて、方向制御弁32を左旋回位置Lとするか右旋回位置Rとするかを決定するものとしてもよい。
リリーフ弁33は、図1乃至図4に示すように、バネ受け41の位置調整によりバネ43の圧縮度を調整することで、その圧縮度にて画されるリリーフ圧が調整される可変リリーフ弁となっている。このリリーフ圧の調整により、作動状態とされた油圧アクチュエータ34のピストンロッド36の伸長量が調整され、すなわち、旋回内側のシフタ5の外側方への摺動量が設定され、その摺動量に応じて、サイドブレーキ7の制動力(摩擦板7a・7bの圧接度)が決定される。
リリーフ弁33の構造について詳述する。リリーフ弁33は、図3、図4に示すように、油路ブロック38に鉛直状に組み入れられている。リリーフ弁33は、油路ブロック38に固定されたポート部材40、ポート部材40の下部に上下摺動自在に係合されたバネ受け41、該ポート部材40内に上下摺動自在に嵌入されたピストン42、バネ受け41内に配設され、その上端がピストン42に押当し、その下端がバネ受け41の底端部内面に押当するバネ43よりなる。
ポート部材40の上端部には、鉛直の吸入ポート33aが形成されており、該ポート部材40の上下途中部には、水平径方向の吐出ポート33bが形成されている。吸入ポート33aは、図2に示す両操向用アクチュエータ34L・34Rのリリーフポート34bに連通しており、吐出ポート33bは、油路ブロック38内に形成された油路38bを介して、前記ドレンポート38dに連通している。なお、図2乃至図4では図示されていないが、各操向用アクチュエータ34L・34Rのリリーフポート34bと吸入ポート33aとの間に介設される各油路の途中には、図1に示すように、リリーフポート38d側への逆流を防ぐチェック弁39L・39Rが各別に設けられているものとしている。
ピストン42が上方摺動することで、ピストン42が吸入ポート33aを閉じ、リリーフ弁33が閉弁する。すなわち、いずれか一方の操向用アクチュエータ34のピストン35の摺動により作動油室34aがリリーフポート34bに連通する状態になっていても、そのリリーフポート34bからリリーフ弁33までリリースされた油が、ドレンポート38dまでドレンされることはないので、作動油室34a内の油圧においては、ピストン35に対するストローク圧が保たれる。
一方、ピストン42が下方摺動することで、吸入ポート33aが吐出ポート33bに連通し、リリーフ弁33が開弁する。すなわち、いずれか一方の操向用アクチュエータ34のピストン35の摺動により作動油室34aがリリーフポート34bに連通する状態になっていれば、そのリリーフポート34bからリリーフ弁33までリリースされた油が、ドレンポート38dへとドレンされることとなる。したがって、作動油室34a内の油圧は、それ以上ピストン35をストロークすることができない状態にまで低減する。
ピストン42とバネ受け41の底端部内面との間に介設されるバネ43は圧縮バネであって、ピストン42を上方に付勢している。ポート部材40に対し上下摺動可能なバネ受け41の上下位置の調整により、バネ43の圧縮度が調整され、これにより、リリーフ弁33のリリーフ圧が調整される。
さらに、ポート部材40に対するバネ受け41の相対位置を、所定位置から下方にすると、ピストン42とバネ受け41の底端部内面との間の距離が、バネ42の自然長よりも大きくなって、ピストン42にはバネ43による付勢力がかからない状態となる。つまり、当該所定位置から、バネ受け41の上下摺動の最下位置までの間で、バネ受け41を上下に移動させても、バネ43は圧縮せず、自然長のままで、ピストン42にはバネ43の付勢力がかからない。この、バネ43を自然長に保つ(すなわち、ピストン42にバネ43の付勢力をかけない)バネ受け41の摺動領域は、後に詳述するように、旋回内側のサイドクラッチ6が入ったままの状態に保たれる操向レバー11の傾倒範囲(すなわち、傾倒角度TがT1未満の範囲)に対応する。
バネ受け41を上下に移動させる手段として、図3、図4に示すように、油路ブロック38内にて、リリーフ弁33の下方にカム板44が配設されている。ここで、図3に示すように、バネ受け44の底端部の外面は、正(後)面視、円弧状に下向きに突出しており、その形状に合わせて、カム板44の上端部には、正(後)面視において、円弧状の凹部44aが形成されている。この、カム板44における凹部44aの左右両側部分がカムとなって、ここにバネ受け41の底端部が乗り上げることで、バネ受け41が上昇する構造となっている。
油路ブロック38には、前後方向に軸心を有するカム枢軸部材45が挿入されており、その内端部が、図4に示す如きブッシュ45aに嵌入されて、油路ブロック38内で回動自在に軸受けされている。この油路ブロック38内にて、カム枢軸部材45に前記カム板44が固設されている。カム枢軸部材45の外端部は、油路ブロック38の外側に配されており、この外端部に、カム操作アーム46が固設されている。
なお、図2及び図4に示すように、油路ブロック38内で、前記油路38bの下方にて、該油路38bと平行の油路38cを形成しており、両油路38b・38cをドレンポート38dに連通させている。カム板44を備えたカム枢軸部材45は、油路ブロック38内で、この油路38cの一部を拡張して構成した室内に配置されており、前記ブッシュ45は、この室を乾室とすべく、油路38c内の油から遮断するためのシールを兼ねている。
図3乃至図5に示すように、カム操作アーム46は、リンク機構50を介して、操向レバー11の扇形アーム52に連結されている。リンク機構50は、扇形アーム52側のリンクロッド47、カム操作アーム46側のリンクロッド49、該リンクロッド47とリンクロッド49とを連結するリンクアーム48より構成される。リンクロッド47の一端部47aは、扇形アーム52に枢結され、リンクロッド47の他端部47bはリンクアーム48の一端部に枢結されている。リンクロッド49の一端部49aは、リンクアーム48の他端部に枢結され、リンクロッド49の他端部49bはカム操作アーム46の先端に枢結されている。リンクアーム48は、リンクロッド47・49に枢結される両端部の間の部分にて、枢軸48aに枢支されている。
操向レバー11の回動により、リンクロッド47が押し引きされることにより、リンクアーム48が枢支軸48aを中心にして回動し、これによりリンクロッド49を押し引きして、カム操作アーム46を回動させる。図3において、カム操作アーム46の操作位置Sは、操向レバー11の直進位置(傾倒角度T=0)に対応する。カム操作アーム46は、この直進位置Sから上方・下方に回動可能となっており、上方の位置Lmは、操向レバー11の左傾倒角度LTを最大角度Tmaxにした状態に対応する。一方、直進位置Sより下方の位置Rmは、操向レバー11の右傾倒角度RTを最大角度Tmaxにした状態に対応する。なお、設計により、カム操作アーム46の上下回動方向と操向レバー11の左右回動方向との関係を、上述と逆にしてもよい。カム板44は、凹部44aの左右両側がバネ受け41を押し上げるカムとなっていて、カム操作アーム46が直進位置Sから上方に回動しても下方に回動しても、すなわち、操向レバー11を直進位置から左右いずれに傾動しても、カム板44における該凹部44aの左右両側のカムのいずれかが、カム操作アーム46の回動角度に応じたリフト量にて、バネ受け41を押し上げる。
以上の如く操向レバー11に連係されているリリーフ弁33において、直進位置から右方または左方に傾倒した操向レバー11の傾倒角度TがT1となるときに、バネ受け41の位置が、バネ43を自然長に保つ範囲の限界位置である前記所定位置となる。一方、作動状態の操向用アクチュエータ34において、作動油室34aがリリーフポート34bに連通開始するときのピストン35の摺動位置(ピストンロッド36の伸長量)が、クラッチ爪6bを分配ギア22のクラッチ爪6aから外すときの、すなわち、サイドクラッチ6を切るときの、シフタ5の摺動位置に対応するものとしている。
したがって、操向レバー11を直進位置から角度T1まで傾倒させた場合は、サイドクラッチ6が切れた時点で、作動状態(旋回内側)の旋回用アクチュエータ34のリリーフポート34bからリリーフ弁33の吸入ポート33aへと作動油室34a内の油がリリーフされる。ここで、バネ受け41は前記所定位置に達していることにより、前記の、ピストン42とバネ受け41の底端部内面との間隔がバネ43の自然長に一致し、ピストン42はその摺動上端位置にあって、吸入ポート33aを閉じ、リリーフ弁33を閉弁しているものの、この時点ではバネ43の付勢力(すなわちリリーフ圧)が略0の状態なので、吸入ポート33aにリリーフポート34bからの油が流入するや、直ちにピストン42は、その油の流入圧で押し下げられ、吸入ポート33aと吐出ポート33bとを連通し、リリーフ弁33を開弁する。したがって、この時点で作動油室34a内の油圧が低減して、ピストン35のストロークを停止し、シフタ5は、サイドクラッチ6が切れた(まだサイドブレーキ7がかかっていない)時点での摺動位置にとどめられる。
リリーフポート34bが作動油室34aに連通して以後は、操向レバー11の傾倒角度Tの、角度T1から最大角度Tmaxまでの範囲での任意設定に基づき、バネ受け41の上下位置が定められ、それに基づき、ピストン42に対しての付勢力に相当するバネ43の圧縮度、すなわち、リリーフ弁33のリリーフ圧が設定されることとなる。したがって、作動状態(旋回内側)の操向用アクチュエータ34のピストン35は、作動油室34a内の油圧が、このように設定されたリリーフ圧になるまで押動されてシフタ5を摺動し、該油圧がリリーフ圧となってリリーフ弁33が開弁した時点でピストン35及びシフタ5の摺動が停止する。そのときの操向レバー11の傾倒角度TがT2以上になっているのであれば、その傾倒角度Tに対応する圧接度で旋回内側のサイドブレーキ7の制動板7a・7b同士が圧接し、その圧接度に相応する制動力が旋回内側の車軸4に対してはたらくこととなる。
なお、操向レバー11の傾倒角度Tが0〜T1の範囲にあるときは、バネ受け41の位置が前記所定位置より下方にあって、ピストン42とバネ受け41の底端部内面との間隔がバネ43の自然長よりも長いので、ピストン42は自重で自然に下降し、吸入ポート33aと吐出ポート33bとが連通してリリーフ弁33が開弁しているものの、この時点でのピストン35は、その外周面にて、リリーフポート34bを閉じており、吸入ポート33aに作動油室34aからの油が流入することはないので、リリーフ弁33の開弁にかかわらず、作動油室34a内には、作動油室34aがリリーフポート34bに連通開始するまでピストン35に対するストローク圧に相当する油圧は確保される。
以上の如き構成の車両操向用アクチュエータセット2における、操向レバー11の操作に基づく方向制御弁32、リリーフ弁33、操向用アクチュエータ34の動きについて、操向レバー11を直進位置から左方に回動する場合を例に説明する。操向レバー11を、傾倒角度T=0の直進位置から左方に少し回動すると、バルブスイッチ53の押当子53aが扇形アーム52のデテント溝52aから抜け、バルブスイッチ53がオンし、これに伴い、コントローラ10から指令信号32Lsが発せられて、ソレノイド32aが励磁し、方向制御弁32が左旋回位置Lへと移動する。これにより、左操向用アクチュエータ34Lの作動油室34aに油が供給され、ピストン35を押動し、ピストンロッド36を伸長させて、左シフタ5Lを外側へと移動させる。
一方、操向レバー11の左方傾倒角度Tを0からTmaxまで増大させるにつれ、リンク機構50を介して操向レバー11に連係されるカム操作アーム46が、図3に示すS位置からLm位置まで回動し、これにつれ、カム板44が回動してリリーフ弁33のバネ受け41を押し上げ、その押し上げ量に応じて、バネ43の圧縮度、すなわち、リリーフ弁33のリリーフ圧が設定される。ただし、操向レバー11の傾倒角度0〜T1までの傾動によるバネ受け41の押し上げは、バネ43を自然長に保っている範囲のものであり、このバネ受け41の押し上げ範囲を、左操向用アクチュエータ34Lの、リリーフポート34bを作動油室34aに連通させるまでのピストン35のストローク範囲に合わせている。したがって、操向レバー11の傾倒角度TをT1まで傾倒するまでは、リリーフ弁33の開閉とは関係なく、ピストン35が摺動し、ピストンロッド36が伸長していく。
操向レバー11の傾倒角度TがT1に到達し、左操向用アクチュエータ34Lのピストン35及びこれに連係されるシフタ5Lがそれに対応する位置まで摺動すると、左シフタ5L側のクラッチ爪6bが分配ギア22側のクラッチ爪6aから外れ、左サイドクラッチ5Lが切れる。この時点で、リリーフポート34bは作動油室34aに連通しており、ここからの左操向用アクチュエータ34Lのピストンロッド36の伸長量及び左シフタ5Lの外側(左側)への摺動量は、操向レバー11の、角度T1〜最大角度Tmaxの範囲での操向レバー11の左傾倒角度LTの設定に対応してのリリーフ弁33のバネ受け41の位置、すなわち、リリーフ弁33のリリーフ圧の設定によって決まる。操向レバー11の設定傾倒角度TがT2〜Tmaxの範囲にあるときは、その設定傾倒角度に対応して設定されるリリーフ弁33のリリーフ圧にて決まる左シフタ5Lの位置に応じて、左サイドブレーキ7Lの制動力が決まることとなる。操向レバー11の左傾動角度LTが最大角度Tmaxになると、カム操作アーム46の位置が、図3に示す「Lm」位置となり、カム板44によるバネ受け41の押し上げ量が最大になり、バネ43の付勢力(圧縮度)、すなわちリリーフ弁33のリリーフ圧が最大になって、左シフタ5Lは最大外側方摺動位置に達し、左サイドブレーキ7Lの制動力は最大になる。
次に、補助クラッチ8の接合圧設定操作手段及び接合圧増大操作手段について説明する。図1に示すように、トランスミッション1を備えた車両には、補助クラッチ8の接合圧の設定用操作具として、補助クラッチ接合圧設定用レバー(以下、単に「レバー」)12が設けられている。前記のアーム16は、レバー12の操作位置に対応した位置へと回動し、これにより、補助クラッチ用シフタ9の位置を制御し、補助クラッチ8における摩擦板8a・8b同士の圧接度を、レバー12にて設定した値に対応したものとする。
さらに、図1に示すように、トランスミッション1を備えた車両に、補助クラッチ接合圧を、レバー12で設定した値から任意で増大させることができるように、補助クラッチ接合圧増大用ペダル(以下、単に「ペダル」)13が設けられている。ペダル13は、リンク機構14を用いて、補助クラッチ用シフタ9制御用のアーム16に機械的に連係されている。このペダル13の使用態様としては、例えば、車両が旋回中にぬかるみにはまった場合に、レバー12で設定した接合圧で接合している補助クラッチ8を介して、旋回外側の駆動列3から、サイドクラッチ6が切れた状態の旋回内側の駆動列3へと駆動力が伝達されるが、その設定された補助クラッチ8の接合圧では、ぬかるみを脱するには動力の伝達量が足りないと感じた場合等に、緊急的にペダル13を踏み込み、その踏込み量に応じて、補助クラッチ8の接合力を増大させるものである。
ここで、ペダル13は、その踏込み操作により、補助クラッチ8の接合圧を、レバー12で設定した接合圧よりも高い値へと増大させるものであるから、ペダル13を踏み込んでいないときの位置を、レバー12にて設定したクラッチ接合圧を現出させる位置に固定しておくことが考えられる。逆にいえば、アーム16に対してリンク機構14を介して連係されるのは、レバー12及びペダル13のうち、ペダル13のみとし、レバー12の操作は、ペダル13の非踏込み位置を設定するためのものとすることが考えられる。
図7に示す実施例では、ペダル13の非踏込み位置を画定するストッパ68を上下に可動とし、この可動ストッパ68の位置が、レバー12の操作位置の検出に基づきコントローラ10にて制御される電子制御式アクチュエータ67にて制御されものとしている。この図7の実施例におけるレバー12、ペダル13、アーム16の関連構造について詳述する。
ペダル13は、基端に形成したボス13aを、左右方向の軸心を有する枢軸70に装着しており、枢軸70を中心に上下に回動自在となっている。ボス13aからは下方にアーム13bが延設されており、ペダル13を踏み込んで下降させると、アーム13bが前方に回動する構造となっている。アーム13bの直後方にはアウタワイヤ受け63が設置されており、該アーム13bの先端(下端)とアウタワイヤ受け63との間にバネ64を介設している。バネ64はアーム13bを後方に付勢し、これによりペダル13を上方(非踏込み位置)へと付勢している。ペダル13の踏み込みは、このバネ64に抗して行われることとなり、ペダル13への踏込みを解除すると、ペダル13は、バネ64の付勢力にて上方回動して非踏込み位置に復帰する。
アーム16の近傍にもアウタワイヤ受け65が設置されていて、アウタワイヤ63・65にアウタワイヤ62の両端の各々が固定されている。アウタワイヤ62にはインナワイヤ61が挿通されていて、アウタワイヤ受け63に固定されるアウタワイヤ62の一端部より延出されるインナワイヤ61の一端部61aがアーム13bに枢結され、アウタワイヤ受け65に固定されるアウタワイヤ62の他端部より延出されるインナワイヤ61の他端部61bがアーム13bの先端に枢結されている。こうして、インナワイヤ61、アウタワイヤ62、アウタワイヤ受け63・65にて、ペダル13とアーム16とを連係する前記リンク機構14が構成されており、ペダル13を踏み込むと、アーム13bがバネ64に抗して回動してインナワイヤ61を引っ張り、これにより、アーム16を補助クラッチ8の接合圧の増大方向に回動させる。
レバー12は、その基端のボス12aを、左右方向の枢軸71に装着することで、枢軸71周りに前後に回動可能となっている。レバー12は、例えば車両のコンソールに設けた前後方向のレバーガイド溝19に挿通しており、レバーガイド溝19の前端から後端までの範囲で回動可能とされている。こうしてレバーガイド溝19にて画定されるレバー12の前後回動範囲において、その前端位置となるレバー12の操作位置を、補助クラッチ8の接合圧を最小値(例えば0)に設定するための操作位置である「最小接合圧設定位置Cmin」とし、後端位置となるレバー12の操作位置を、補助クラッチ8の接合圧をレバー12での設定範囲内での最大値に設定するための操作位置である「最大接合圧設定位置Cmax」としている。すなわち、レバー12を後方に回動することで、設定される補助クラッチ8の接合圧が高くなる構成としている。
レバーガイド溝19には、補助クラッチ8の接合圧の各設定値に対応するレバー12の操作位置ごとに、デテント用のノッチ(鋸歯)が形成されている。補助クラッチ8の接合圧を設定する際には、オペレータは、レバー12に手をかけてこれをガイド溝19に沿って回動し、目標の接合圧に対応する操作位置に配置する。ここで、当該操作位置に形成されたノッチにレバー12を係止させることで、レバー12から手を離しても、該レバー12は、その操作位置に固定されることとなる。こうして、レバー12がその操作位置にて固定されていて、かつ、ペダル13を非踏込み位置にしている限り、補助クラッチ8の接合圧は、レバー12の操作位置に対応する設定値で保持される。補助クラッチ8の接合圧を変更する場合には、レバー12を、元の操作位置のノッチから外し、該レバー12を他の操作位置へと回動し、該他の操作位置に該当するノッチに該レバー12を係止するものである。
レバー12の近傍には、レバー12の回動位置(操作位置)を検出する位置検出センサ66が配設されている。コントローラ10は、位置検出センサ66の検出信号に基づいてアクチュエータ67に指令信号を送り、アクチュエータ67は、該指令信号に対応してストッパ68を位置決めする。バネ64にて上方付勢されるペダル13がストッパ68に押接する位置が、そのときにレバー12にて補助クラッチ8の接合圧を設定した状態においてのペダル13の非踏込み位置となる。レバー12にて設定する補助クラッチ8の接合圧が高いほど、ストッパ68の位置が低くなり、その位置のストッパ68にて規定される非踏込み位置にあるペダル13の位置も低くなり、リンク機構14、アーム16、シフタ9を介して、補助クラッチ8の接合圧も高められる。
こうして、レバー12の操作にて、ペダル13を非踏込み位置にしている状態での補助クラッチ8の接合圧が設定されるものであり、その接合圧では足りないと感じたときに、オペレータがその非踏込み位置からペダル13を踏み込むことで、補助クラッチ8の接合圧が、レバー12にて設定された値から、ペダル13の踏込み量に応じた値まで増大する。
なお、アクチュエータ67は、前述の如く、レバー12の位置検出に基づいてコントローラ10にて電子制御される構造であれば、どのような構造でもよい。例えば、車両操向用アクチュエータセット2の構成のように、油圧シリンダと電磁弁とを油路ブロックに組み込んだ構造として、コントローラにて電磁弁の位置調整をするものとしてもよいし、あるいは、コントローラにて制御される電動モータを備えたものとし、電動モータの駆動でストッパ68の位置決めをする構造のものとしてもよい。
車両旋回のための操向レバー11の操作時において、旋回内側のサイドブレーキ7の制動板7a・7bの圧接度は、前述の如く、操向レバー11の、T2〜Tmaxの範囲での傾倒角度Tの設定に応じて決まる。このとき、旋回内側のサイドクラッチ6は切れているが、レバー12で補助クラッチ8の接合圧を設定していると、サイドブレーキ7は、補助クラッチ8を介して旋回外側の駆動列3の駆動力の一部を受けて駆動する旋回内側の駆動列3を制動することとなる。ここで、ペダル13を踏み込んだ場合、旋回内側の駆動列3にはさらに駆動力が伝達され、サイドブレーキ7に対する抵抗が増大し、サイドブレーキ7の摩擦板7a・7b及び補助クラッチ8の摩擦板8a・8bの双方に焼き付きが生じやすくなる。一方で、ペダル13を踏み込む場面として考えられるのは、旋回内側の車軸4の回転速度が、想定した速度よりも落ちてしまう場合であり、つまり、この状態でさらにサイドブレーキ7をかけるよりも、補助クラッチ8の接合圧を上げて旋回外側の駆動列3から旋回内側の駆動列3への動力の伝達量を増やしてまで、旋回内側の車軸4の回転速度を上げたい場合である。
そこで、ペダル13の踏込みとサイドブレーキ7の作動とが同時に行われないように(すなわち、これらのうちの一方が行われているときは他方が行われないように)、操向レバー11に、図5乃至図7に示すような牽制機構18を設けている。この牽制機構18の構造について、図5乃至図7の実施例により説明する。牽制機構18は、前記扇形アーム52に設けた押当子54、規制部材55、枢軸部材56等より構成されている。操向レバー11の近傍に規制部材55が配設されており、この規制部材55がリンク機構60を介してペダル13に連係されていることで、ペダル13の踏込みに連動して、規制部材55が操向レバー11の傾動を規制する状態に切り換えられるものとなっている。
図5に示すように、操向レバー11の近傍には、枢軸部材56が設置されている。枢軸部材56は、車両の運転室の壁等に固設された上下一対の水平板状のブラケット56b・56b間に鉛直の枢軸56aを介設してなるものである。規制部材55は、鉛直のボス55cを有している。該規制部材55は、該ボス55cより一方に、上下一対の水平板状の規制部55a・55bを平行状に延設している。さらに、該規制部材55は、該ボス55cより他方に、すなわち、該規制部55a・55bに対し枢軸56aを介して反対側にて、該ボス55cより水平板状のアーム55dを延設している。
一方、操向レバー11に一体に形成されている前記扇形アーム52の、前記リンク機構50におけるリンクロッド47の一端部47aが枢結される部分が、操向レバー11を直進位置にしているときに水平に延出する状態となる延出部52bとして形成されており、その先端部に、前記規制部材55の規制部55aまたは55bに押当可能な押当子54が設けられている。操向レバー11を直進位置に配しているときの延出部52b及び押当子54の位置は、上下方向において、上・下の規制部55a間の丁度中間の位置となる。
また、この実施例では、車両の右旋回のために操向レバー11を右方に回動すると、延出部52b及び押当子54が上方に回動し、車両の左旋回のために操向レバー11を左方に回動すると、延出部52b及び押当子54が下方に回動する構成としている。したがって、上側の規制部55aが、直進位置から右方への操向レバー11の回動を規制するためのものであり、下側の規制部55bが、直進位置から左方への操向レバー11の回動を規制するためのものであるが、この操向レバー11の左右の回動方向と上下の規制部55a・55bとの関係は、逆でもよい。
逆に、押当子54が、上側の規制部55aより上方にあるか、下側の規制部55bより下方にある場合、すなわち、上・下の規制部55a・55bの間の範囲から外れている場合は、押当子54及び扇形アーム52の延出部52bが、上・下の規制部55a・55bの、扇形アーム52に向かっての回動を規制するものとなる。これにより、後述の如く規制部材55に連係されているペダル13の踏込みを規制するものである。
規制部材55のアーム55dの近傍にはアウタワイヤ受け59が設置されており、アウタワイヤ58の一端部がアウタワイヤ受け59に固定されている一方、アウタワイヤ58の他端部が、前記アウタワイヤ受け63に固定されている。アウタワイヤ58にはインナワイヤ57が挿通されている。インナワイヤ57は、アウタワイヤ受け59に固定されたアウタワイヤ58の一端部より延出されて、その一端部57aを、アーム55dの先端に枢結している。一方、インナワイヤ57は、アウタワイヤ受け63に固定されたアウタワイヤ58の他端部より延出されて、その他端部57bを、ペダル13のアーム13bに枢結されている。このように、インナワイヤ57、アウタワイヤ58、アウタワイヤ受け59・63にて、規制部材55とペダル13とを連係するリンク機構60が構成されている。
なお、図7に示す実施例では、アウタワイヤ受け63において、アウタワイヤ58がアウタワイヤ62の上方に配置され、該アウタワイヤ受け63からアーム13bまで延出されるインナワイヤ57・61のうち、インナワイヤ57をインナワイヤ61の上方に配置しているが、この上下関係は逆でもよい。また、両インナワイヤ57・61の端部57b・61bがアーム13bの一側に枢結されているが、これらをアーム13bの他側に枢結してもよいし、あるいは、インナワイヤ57の端部57bをアーム13bの一側に、インナワイヤ61の端部61bをアーム13bの他側に、それぞれ枢結するものとしてもよい。
以上のようなリンク機構60の構成により、ペダル13を踏み込むにつれ、インナワイヤ57がアーム13bに引っ張られて、規制部材55におけるアーム55dが鉛直の枢軸56a周りにて水平回動し、それと一体状に上・下の規制部55a・55bが水平回動する。
ここで、図5乃至図7には、上・下の規制部55a・55bの規制解除位置X及び規制位置Yが図示されている。上・下規制部55a・55bが規制解除位置Xにあるときは、操向レバー11とともに扇形アーム52が回動する中で、押当子54が上側の規制部55aまたは下側の規制部55bに押当することはなく、すなわち、扇形アーム52の回動は規制されないので、操向レバー11を、その傾倒角度Tが最大角度Tmaxに至るまで回動することができる。したがって、旋回内側のサイドブレーキ7を制動状態に作動することができる。
上・下規制部55a・55bが規制位置Yにあるときは、操向レバー11を直進位置からある角度まで傾倒すると、押当子54が上側の規制部55aまたは下側の規制部55bに押当し、その角度より先に操向レバー11を傾倒することができない。すなわち、操向レバー11及び扇形アーム52の回動が規制される。この、押当子54が上側の規制部55aまたは下側の規制部55bに押当するときの操向レバー11の傾倒角度Tは、T1〜T2の範囲にある角度とする。これにより、旋回内側のサイドクラッチ6は切れるものの、旋回内側のサイドブレーキ7はかからないものとなる。
また、上・下規制部55a・55bが規制解除位置Xにある間に、操向レバー11の傾倒角度TをT2〜Tmaxの範囲にまで到達させて、旋回内側のサイドブレーキ7をかけた状態において、補助クラッチ8の接合圧を増大させるべくペダル13を踏み込もうとすると、ペダル13の踏込みにより規制部材55が回動するものの、上側の規制部55aまたは下側の規制部55b(例えば操向レバー11を右方に傾倒している場合は上側の規制部55a)が、扇形アーム52の延出部52b及び押当子54に阻まれて、規制位置Yまで到達することはできない。このように、規制部材55の回動が阻まれることにより、それがリンク機構60を介して伝わって、ペダル13の下方回動も阻まれることとなる。これにより、旋回内側のサイドブレーキ7がかかっている場合は、ペダル13の踏込みによる補助クラッチ8の接合圧の増大が規制されるものである。
図7では、ペダル13がストッパ68に押当して非踏込み位置にあるときに、上・下規制部55a・55bが前記規制解除位置Xに配置され、ペダル13を踏込み位置Dまで踏み込んだときに、上・下規制部55a・55bが前記規制位置Yに配置される態様を図示している。ここで、前述の如く、ペダル13の非踏込み位置は、レバー12の操作に基づくストッパ68の位置決めにより画定されるが、補助クラッチ8の接合圧がレバー12で設定された範囲内で設定されている間は、サイドブレーキ7がかかるようにしておく必要がある。そのため、踏込み位置Dは、レバー12にて設定される範囲での補助クラッチ8の最大接合圧(レバー12を最大接合圧設定位置Cmaxに配置することにより得られる接合圧)に対応するペダル13の位置(上下可動域の最下位置に位置するストッパ68で規定されるペダル13の非踏込み位置)よりも下方の、最大踏込み位置までの範囲で設定されている。後述の、図8乃至図17の各実施例でも、このように設定されたペダル13の踏込み位置Dを採用するものとする。
車両の直進中や、車両旋回時で旋回内側のサイドクラッチ6は切れているがサイドサイドブレーキ7はかかっていない段階において、ペダル13を踏込み位置Dまで踏み込むと、補助クラッチ8の接合圧は、レバー12での設定範囲での最大値を超えて増大される。この状態から操向レバー11をさらに傾倒させてサイドブレーキ7をきかせようとしても、規制部材55の上・下規制部55a・55bが規制位置Yに配置されていて、そこから操向レバー11の傾倒角度Tを、T2を超える範囲にまで到達させることはできず、サイドブレーキ7がかかることはない。
一方、ペダル13は非踏込み位置にある状態においては、上・下規制部55a・55bは規制解除位置Xにあり、車両旋回のために操向レバー11を傾倒させて、その傾倒角度TをT2〜Tmaxの範囲に到達させると、旋回内側のサイドブレーキ7が作用する(制動状態となる)。この状態から、補助クラッチ8の接合圧を高めようとペダル13を踏込み位置Dまで踏み込もうとしても、押当子54や扇形アーム52の延出部52bが、規制部材55の回動を阻んで、上・下規制部55a・55bは規制位置Yまで回動することはできず、したがって、ペダル13を踏込み位置Dまで踏み込むことはできない。
以上のような構成により、補助クラッチ8の接合圧の値がレバー12にて設定可能な範囲内にあるときは、操向レバー11を傾倒角度T2から最大角度Tmaxまでの範囲に傾倒させることができて、旋回内側のサイドブレーキ7を効かせることができる。そして、ペダル13の踏込みにて、補助クラッチ8の接合圧がレバー12で設定可能な範囲を超えるまで増大された場合に、牽制機構18において規制部材55が扇形アーム52・押当子54の回動を阻むことにより、操向レバー11の傾倒角度Tは、T2に達するまでのところで規制され、サイドブレーキ7が効かない状態となる。一方、操向レバー11を傾倒角度T2から最大角度Tmaxまでの範囲に傾倒させて旋回内側のサイドブレーキ7を効かせた状態のときに、牽制機構18において扇形アーム52・押当子54が規制部材55の回動を阻むことにより、ペダル13は、踏込み位置Dに達するまでのところで規制され、レバー12で設定可能な範囲を超えて増大させようとした補助クラッチ8の接合圧を、当該踏込み位置Dに対応する接合圧の値まで増大することはできない。
以上のように、図5乃至図7に示す実施例においては、操向レバー11に牽制機構18を設けるとともに、リンク機構60を介して該牽制機構18をペダル13に連係させる構成としており、該牽制機構18及びリンク機構60は、サイドブレーキ7をかけるための操向レバー11の傾倒操作と、設定範囲を超えて補助クラッチ8の接合圧を増大させるためのペダル13の踏込み操作とが同時に行われようとするときに、一方の操作を規制するように機能するよう構成されているのである。
以上、図5乃至図7に示される、車両旋回のための操向操作手段としての操向レバー11、補助クラッチ8の接合圧の設定のための操作手段としてのレバー12、及び、補助クラッチ8の接合圧の設定値からの増大のためのペダル13の連関構造に関しての第一実施例について説明した。図8乃至図15には、このような連関構造に関するいくつかの他実施例が示されている。以下、これらの実施例について説明する。なお、各実施例を示す図面の中で、その実施例の説明の前に説明したものと同じ部材や部分、あるいは同じ機能を有する部材や部分には、同じ符合を付しており、これらについては、原則的に説明を省略する。
まず、図8及び図9に示す第二実施例について説明する。この第二実施例においては、レバー12の操作位置の検出に基づきペダル13の非踏込み位置を画定するストッパ68の位置をアクチュエータ67にて制御する構造は、第一実施例のものと同じである。
操向レバー11のボス11aからは、扇形アーム72が延出されており、前述の扇形アーム52と同様に、操向レバー11を直進位置にしたときにバルブスイッチ53の押当子53aが嵌入するように構成されたデテント溝72aを扇形アーム72の円弧縁の一部に形成しており、また、リリーフ弁33のリリーフ圧制御用のカム操作アーム46に連結されるリンク機構50のリンクロッド47の端部47aが扇形アーム72に枢結されている。
本実施例においては、操向レバー11とペダル13との同時操作を規制するための牽制機構として別形態の牽制機構18Aが操向レバー11に設けられている。扇形アーム72の円弧縁の他の部分には、規制溝72bが形成されている。扇形アーム72の近傍には、操向レバー11の回動支点軸としての枢支軸51に対し平行な前後水平方向に延設された枢軸73周りに回動可能である規制部材74が配置されている。規制部材74は、枢軸73の外周面に装着されるボス74aを有し、ボス74aより規制アーム74b及び連結アーム74cを延設している。規制アーム74bの先端にはローラ75が枢支されており、規制アーム74bが扇形アーム72に向けて回動することで、ローラ75が扇形アーム72の規制溝72bに嵌入する構成となっている。こうして、扇形アーム72、枢軸73、規制部材74、ローラ75により、本実施例における牽制機構18Aが構成されている。
一方、枢軸70には、ペダル13に隣接配置される押動部材81が枢支されている。押動部材81は、ボス81aを有し、これを、ペダル13のボス13aに隣接するように、枢軸70に装着している。ボス81aからは押当杆81bが延出されている。該押当杆81bは、枢軸70の径方向に延出された後、曲折して、枢軸70に対し平行に延出し、この延出部分を、ペダル13のアーム13bの直前方に配置している。なお、押動部材81は、図外の付勢手段にて、押当杆81bがアーム13bの前端に押圧されるように付勢されている。
押動部材81には、さらに、連結アーム81cが、枢軸70の他の径方向にボス81aより延出するように形成されている。前記の規制部材74の連結アーム74cの近傍にはアウタワイヤ受け78が配置され、押動部材81の連結アーム81cの近傍にはアウタワイヤ受け79が配置されている。アウタワイヤ受け78にはアウタワイヤ77の一端部が固定され、アウタワイヤ受け79にはアウタワイヤ77の他端部が固定されている。アウタワイヤ77にはインナワイヤ76が挿通されて、アウタワイヤ受け78に固定されるアウタワイヤ77の一端部より延出されるインナワイヤ76の一端部76aが連結アーム74cの先端に枢結され、アウタワイヤ受け79に固定されるアウタワイヤ77の他端部より延出されるインナワイヤ76の他端部76bが連結アーム81cの先端に枢結されている。こうして、インナワイヤ76、アウタワイヤ77、アウタワイヤ受け78・79にて、操向レバー11側の規制部材74と、ペダル13側の押動部材81とを連係するリンク機構80が構成されている。
ペダル13を下降させると、アーム13bが前方回動して、アーム13bの前端に押接される押当杆81bを押動する。これにより、押動部材81が枢軸70を中心に回動し、連結アーム81cが、リンク機構80のインナワイヤ76を介して、連結アーム74cを引っ張り、枢軸73を中心に規制部材74を回動させる。この回動により、規制アーム74aが扇形アーム72に向かって回動する。ペダル13が踏込み位置Dまで踏み込まれると、扇形アーム72に向かって回動する規制アーム74bのローラ75が扇形アーム72の規制溝72bに嵌入する。
規制溝72bは、扇形アーム72の円弧縁の方向に、ある程度の幅をもっており、規制溝72bに嵌入した場合のローラ75が、操向レバー11の直進位置からの傾動による扇形アーム72の回動に伴って、規制溝72b内での相対位置を移動可能となっている。この規制溝72bの幅は、直進位置から左方または右方に傾動した操向レバー11の傾倒角度TがT1〜T2の範囲での角度に達したときに、ローラ75が、規制溝72bの端部に達して、それ以上扇形アーム72を回動できないようにするよう、設定されている。
以上のように牽制機構18Aやリンク機構80等が構成されていることにより、車両の直進時や、サイドブレーキ7がかからない状態での旋回時において、ペダル13を踏込み位置Dまで踏み込むと、規制部材74のローラ75が扇形アーム72の規制溝72bに嵌入して、扇形アーム72の回動が規制されることとなり、これにより、操向レバー11の直進位置からの傾倒が、傾倒角度T2までの範囲で制限され、旋回内側のサイドブレーキ7が効かないものである。
一方、傾倒角度TがT2を超えるまで操向レバー11を傾倒して、旋回内側のサイドブレーキ7が作動している状態においては、扇形アーム72の規制溝72bは、規制アーム74b先端のローラ75の回動軌跡から外れる。この状態から、ペダル13を踏込み位置Dまで踏み込もうとしても、ローラ75は、規制溝72bの外の、扇形アーム72の円弧縁に押当し、規制部材74の回動が規制されることとなり、これにより、ペダル13の踏込みが、踏込み位置Dまでの範囲で制限され、補助クラッチ8の接合圧をそこまで増大できないものである。
次に、図10及び図11に示す第三実施例について説明する。この実施例では、操向レバー11には第一実施例のものと同様の牽制機構18が設けられている一方、レバー12及びペダル13とは別体のアーム82が設けられており、補助クラッチ用シフタ9に連係されるアーム16に接続されるリンク機構14は、このアーム82とアーム16との間に介設されている。アーム82は、レバー12及びペダル13に機械的に連係されており、レバー12の操作により回動して、リンク機構14を介してアーム16を回動(補助クラッチ8の接合圧を変更)するものであり、また、レバー12が補助クラッチ8の接合圧をその設定範囲において最大値とする操作位置に達してからは、ペダル13の踏込みにより回動して、リンク機構14を介してアーム16を回動するものである。
アーム82の基端にはボス82aが形成されており、該ボス82aを、レバー12のボス12aに隣接した状態で、枢軸71に装着することで、アーム82が、レバー12から独立して枢軸71周りに前後方向に回動可能となっている。
レバー12には、ボス12aより延出される押当杆12bが形成されている。該押当杆12bは、枢軸71の径方向に延出された後、曲折して、枢軸71に対し平行に延出し、この延出部分を、アーム82の直前方に配置している。
アーム82の近傍にアウタワイヤ受け87が配設されており、該アウタワイヤ受け87に、リンク機構14のアウタワイヤ62の端部及びリンク機構60のアウタワイヤ58の端部が固定されている。アウタワイヤ62に挿通されて補助クラッチ用シフタ9の位置制御用アーム16に連結されているリンク機構14のインナワイヤ61がアウタワイヤ受け87より延出して、その端部61aをアーム82に枢結している。また、アウタワイヤ58に挿通されて規制部材55のアーム55dに連結されているリンク機構60のインナワイヤ57がアウタワイヤ受け87より延出して、その端部57bをアーム82に枢結している。
さらに、アーム82には、インナワイヤ83の一端部83aが枢結されており、インナワイヤ83の他端部83bがペダル13のアーム13bに枢結されている。インナワイヤ83はアウタワイヤ84に挿通されている。アウタワイヤ84の一端部が、ペダル13のアーム13b近傍のアウタワイヤ受け63に固定されている。一方、アウタワイヤ84の他端部が、レバー12に形成されたアウタワイヤ受け12cに固定されている。こうして、インナワイヤ83、アウタワイヤ84、アウタワイヤ受け12c・63により、アーム82とペダル13とを連係するリンク機構85が構成されている。
なお、第一実施例におけるペダル13のアーム13bへのインナワイヤの取付態様が図7に示すものに限定されないという点と同様に、本実施例において、アーム82に取り付けられるインナワイヤ57・61・83の端部57b・61a・83aの上下位置関係や、それぞれの端部57b・61a・83aをアーム82の左右どちらの側に取り付けるかという点は、図10及び図11に示すものに限定されない。後述の、図12及び図13に示す第四実施例におけるアーム82へのインナワイヤ57・61の端部57b・61aの取付、及び、図14に示す第五実施例におけるペダル13のアーム13bへのインナワイヤ61・101の端部61a・101bの取付についても同様である。
ペダル13のアーム13bとアウタワイヤ受け63との間には、ペダル13を上方付勢するためのバネ64が介設されている。アーム82には、リンク機構85を介してバネ64の付勢力が伝達され、該アーム82は前方回動するように付勢されており、直前に配置されるレバー12の押当杆12bに押圧されている。
なお、バネ64により上方付勢されるペダル13の回動範囲における上端位置を画定するストッパ86が設けられている。前記第一・第二実施例では、レバー12で設定される補助クラッチ8の接合圧の変化に応じて上下移動可能としたストッパ68が用いられていたが、この第三実施例で用いられるストッパ86は、固定されたものである。このストッパ86に押当しているときのペダル13は、補助クラッチ8の接合力を最小値(例えば0)とする位置に配置される。
この第三実施例において、レバー12を用いて補助クラッチ8の接合圧の設定値を上げる場合は、レバー12を後方に回動する。このレバー12の後方回動に伴って、押当杆12bが、バネ64の付勢力に抗して、アーム82を後方へと押動する。このレバー12の後方回動は、リンク機構60を介して規制部材55にも伝達され、規制部材55の上・下の規制部55a・55bを回動するが、レバー12の、最小接合圧設定位置Cminから最大接合圧設定位置Cmaxまでの回動に基づいての規制部材55の回動範囲内では、規制部55a・55bは、例えば図示の規制解除位置Xにあり、扇形アーム52の回動を規制して旋回内側のサイドブレーキ7を効かないようにすることはない。
なお、このレバー12の回動の間、アーム82がレバー12とともに後方回動してリンク機構85のインナワイヤ83を後方に押動するが、アウタワイヤ受け12cがレバー12に一体形成されているため、インナワイヤ83はアウタワイヤ84ごと移動して撓むこととなる。したがって、インナワイヤ83がアウタワイヤ84に対し相対的に移動するわけではなく、アウタワイヤ受け63からペダル13のアーム13bへのインナワイヤ83の延出長に変化はない。このため、ペダル13は、ストッパ86に押当した位置のままで動かない。すなわち、本実施例では、アーム16に連結されるリンク機構14が、ペダル13とは別のアーム82に連結されており、レバー12の操作中に、ペダル13は、補助クラッチ8の接合圧を最小値(例えば0)とする操作位置に該当する、ストッパ86と押当する位置にて保持されている。言い換えれば、本実施例では、レバー12の操作とは関係なく、常に、ストッパ86と押当する位置がペダル13の非踏込み位置となる。
レバー12を最小接合圧設定位置Cminから最大接合圧設定位置Cmaxまでの範囲でのいずれかの設定位置に固定した状態で、ペダル13を踏み込んで、ストッパ86との押当位置である非踏込み位置から下降させると、ペダル13と一体にアーム13bが回動し、アーム13bは、リンク機構85のインナワイヤ83を引っ張り、これにより、アーム82を後方に回動する。
こうして、アーム82は、(前述のガイド溝19のノッチにて)設定位置に固定された状態のレバー12の押当杆12bから後方に離れて、さらに後方に回動する。このアーム82の後方回動が、リンク機構14を介してアーム16に伝達されて、補助クラッチ8の接合圧を増大させる方向にシフタ9を作動する一方、リンク機構60を介して規制部材55にも伝達され、上・下の規制部55a・55bを回動させる。踏み込んだペダル13が、前記踏込み位置Dに達すると、規制部材55の上・下規制部55a・55bは規制位置Yに達し、操向レバー11の扇形アーム52の回動を規制し、旋回内側のサイドブレーキ7を効かないようにする。
一方、レバー12の操作位置を、最小接合圧設定位置Cminから最大接合圧設定位置Cmaxまでの範囲で変化させると、レバー12の動きがアーム82及びリンク機構60を介して規制部材55に伝わって、規制部材55が回動するものの、ペダル13を非踏込み位置に配している限り、上・下規制部55a・55bは、例えば図示の規制解除位置Xにある状態で、規制位置Yにまで至ることはなく、扇形アーム52・押当子54の回動を規制することはない。この状態で、操向レバー11の傾倒角度TをT2〜Tmaxの範囲まで到達させて、旋回内側のサイドブレーキ7を効かせてから、補助クラッチ9の接合圧を増大させようとペダル13を踏み込むと、それにつれて規制部材55も回動するが、扇形アーム52の延出部52a及び押当子54に阻まれて、上・下規制部55a・55bが規制位置Yまで回動することができない。この規制部材55の回動規制により、アーム82の後方回動も規制されて、リンク機構85を介してペダル13を踏込み位置Dまで下降させることはできず、かつ、ペダル13の踏込み位置Dに対応した値にまで補助クラッチ8の接合圧を増大させるまで、リンク機構14を介してアーム16を回動することができない。こうして、サイドブレーキ7が効いているときには、ペダル13の踏込みによる補助クラッチ8の接合圧の増大が規制される。
なお、前述の、レバー12を回動してのアーム82の回動時には、リンク機構85において、インナワイヤ83とともに、アウタワイヤ84の端部を固定しているアウタワイヤ受け12cもレバー12と一体に移動するが、ペダル13を踏み込んでのアーム82の回動時には、アウタワイヤ84に対しインナワイヤ83が相対移動し、アウタワイヤ84の端部を固定しているアウタワイヤ受け12cがインナワイヤ83に連れて移動することはないので、ペダル13が踏み込まれる間、レバー12は、そのときの(前記ノッチに係止された)設定位置にとどまる。したがって、ペダル13の踏込みを解除すると、バネ64の付勢力にて、ペダル13が上方回動して、前記非踏込み位置へと戻り、これにより、リンク機構85のインナワイヤ83が押されて、アーム82を、前記設定位置にて固定されているレバー12の押当杆12bに押当する位置まで戻すものである。また、アーム82が、設定位置にあるレバー12で画定される位置まで戻ることで、リンク機構14・60を介して、アーム16・55dも、レバー12の設定位置に対応する位置まで戻る。
次に、図12及び図13に示す第四実施例について説明する。この実施例でも、第三実施例と同様に、レバー12及びペダル13とは別体のアーム82が用いられ、アーム82が、リンク機構14を介してアーム16に連結され、また、リンク機構60を介して、牽制機構18の規制部材55に連結されている。第三実施例との違いは、単一の枢軸70に、レバー12、ペダル13、アーム82の全てが枢支されているという点である。これにより、これらの部材を枢支するための枢軸の数を低減することができ、また、アーム82とペダル13とを連係するリンク機構85も不要となり、部品点数及びコストの低減、レバー12、ペダル13、アーム82のコンパクトな配置を実現できる。
すなわち、本実施例では、図13に示すように、左右水平状の枢軸70に、レバー12のボス12a、アーム82のボス82a、ペダル13のボス13aが隣接して装着されており、アーム82は、レバー12とペダル13との間に配置されている。レバー12においては、ボス12aより押当杆12cが延設されて、その曲折して左右水平に延出した部分をアーム82の直前方に配している。一方、ペダル13においても、ボス13aから枢軸70の径方向に押当杆13cが延設されており、該押当杆13cは曲折してその先端に向かって左右水平方向に延出しており、この延出部を、アーム82の直前方にて、前記の押当杆12cの左右方向延出部に対し上下に位置をずらせて、すなわち、押当杆12c・13c同士がそれぞれの回動を干渉しないように、配置している。
ペダル13のアーム13bの近傍にはバネ止め88が配設され、このバネ止め88とアーム13bとの間にバネ64を介設することで、ペダル13を、ストッパ86と押当する位置へと上方付勢している。アーム82は、バネ64とは別の図外の付勢手段にて前方回動するように付勢されており、これにより、その直前に配置されている押当杆12c・13cと押当している。
補助クラッチ8の接合圧を増大すべくレバー12を後方回動すると、レバー12と一体に回動する押当杆12cが、アーム82を後方に押動する。このアーム82の後方回動が、リンク機構14・60を介して、アーム16・55dへと伝達される。このレバー12とアーム82とが一体的に回動する間、ペダル13はバネ64の付勢力にてストッパ86と押当する非踏込み位置に保持されたままであり、したがって、押当杆13cもその位置にとどまり、アーム82は、この押当杆13cから離れて後方回動するものである。
レバー12を最小接合圧設定位置Cminから最大接合圧設定位置Cmaxまでの範囲でのいずれかの設定位置に固定した状態で、バネ64に抗してペダル13を踏み込んで、ストッパ86との押当位置である非踏込み位置から下降させると、ペダル13と一体に押当杆13cが後方回動する。ここで、ペダル13がレバー12で設定した接合圧に対応する踏込み位置に達するまでは、押当杆13cのこの後方回動は、その後方に離れて配置されているアーム82との間の間隔を埋めるためのものとなり、当該踏込み位置にペダル13が達すると、押当杆13cはアーム82に押当することとなる。
そして、ペダル13が、レバー12で設定した接合圧に対応する踏込み位置よりさらに下降すると、押当杆13cがアーム82を後方に押動する。この際、レバー12は設定位置で固定されていて、アーム82は、その位置にとどまるレバー12の押当杆12cより後方に離れることとなる。このアーム82の後方回動により、補助クラッチ8の接合圧を増大させる方向にシフタ9が作動するものであり、また、踏み込んだペダル13が、前記踏込み位置Dに達すると、規制部材55が操向レバー11の扇形アーム52の回動を規制し、旋回内側のサイドブレーキ7を効かないようにする。
一方、ペダル13を非踏込み位置に配している間に、操向レバー11の傾倒角度TをT2〜Tmaxの範囲まで到達させて、旋回内側のサイドブレーキ7を効かせてから、補助クラッチ9の接合圧を増大させようとペダル13を踏み込むと、それにつれて規制部材55も回動するが、扇形アーム52の延出部52a及び押当子54に阻まれて、上・下規制部55a・55bは規制位置Yまで至ることはできない。この規制部材55の回動規制により、アーム82の後方回動も規制されて、ペダル13の踏込み位置Dまでの下降、及び、ペダル13の踏込み位置Dに対応した値にまで補助クラッチ8の接合圧を増大させるまでのアーム16の回動ができない状態となる。こうして、サイドブレーキ7が効いているときには、ペダル13の踏込みによる補助クラッチ8の接合圧の増大が規制される。
次に、図14乃至図17に示す第五実施例について説明する。図14に示すように、前後水平状の枢軸51に装着される操向レバー11の基端のボス11aから左右一側に、扇形アーム90が延出されており、扇形アーム90の円弧縁の一部にデテント溝90aが形成され、操向レバー11を直線位置にしているときにバルブスイッチ53の押当子53aがデテント溝90aに嵌入するものとなっている。図5等に示す実施例と同様に、バルブスイッチ53は、押当子53aがデテント溝90aに嵌入することでスイッチオフして方向制御弁32を中立位置Nにし、また、押当子53aがデテント溝90aより外れることでスイッチオンして方向制御弁32を左旋回位置Lまたは右旋回位置Rにする。方向制御弁32を旋回位置Lとするか右旋回位置Rとするかは、操向レバー11が直進位置から左方・右方のいずれに回動したかが検知されて決定されるものとしている(カム操作アーム46の回動方向の検知に基づいて決定されるものとしてもよい)。
また、操向レバー11のボス11aから左右他側に、アーム91が延設されており、アーム91に押動ピン91aが突設されている。さらに、枢軸51には、上・下のアーム93・94が枢支されており、枢軸51からは、前記の左右他側、すなわち、アーム91と同じ側にアーム93・94が延出されている。上・下アーム93・94の間には、アーム91の押動ピン91a、及び、操向レバー11の回動にかかわらず位置固定されている固定ピン92が配置されている。上・下アーム93・94の先端部間には、バネ95が介設されている。該バネ95により、上・下アーム93・94は互いに向かって付勢されており、すなわち、両者間の押動ピン91a及び固定ピン92を挟持する方向に付勢されている。
本実施例では、操向レバー11を直進位置から右方に傾倒する(右傾倒角度RTを増大させる)ことで、上側のアーム93を上方に回動し、操向レバー11を直進位置から左方に傾倒する(左傾倒角度LTを増大させる)ことで、下側のアーム93を下方に回動する構成となっている。これについて詳述する。アーム91は操向レバー11と一体状に回動するものであって、図15に示すように、操向レバー11を直進位置から右方に回動すると、アーム91の押動ピン91aが上側のアーム93を上方に押し上げる。この間、位置固定されている固定ピン92は、下側のアーム94が上側のアーム93に追従して上方に回動しないように、操向レバー11が直進位置にあったときの位置に下側のアーム94をとどめている。一方、図示されていないが、図15からわかるように、操向レバー11を直進位置から左方に回動すると、アーム91の押動ピン91aが下側のアーム94を下方に押し下げる。この間、位置固定されている固定ピン92は、上側のアーム93が下側のアーム94に追従して下方に回動しないように、操向レバー11が直進位置にあったときの位置に上側のアーム93をとどめている。
こうして、操向レバー11を直進位置から左方または右方に回動することで、上・下アーム93・94の先端部間の間隔が広がり、バネ95が伸長されて、アーム93・94を互いに向かって付勢する。直進位置から右方または左方に回動した操向レバー11から手を離すと、押動ピン91aにて押し上げまたは押し下げられて回動していたアーム93または94が、固定ピン92にて係止されているアーム93または94に向かって回動し、この回動するアーム93または94にて、押動ピン91aが押動され、押動ピン91aとともにアーム91が回動することにより、操向レバー11が回動する。やがて、図14に示すように、両アーム93・94が、押動ピン91a及び固定ピン92を挟持する状態に戻り、操向レバー11も直進位置へと戻る。
本実施例では、車両操向用アクチュエータセット2のリリーフ弁33制御用のカム操作アーム46に連結されるリンク機構50として、インナワイヤ98・アウタワイヤ99よりなるワイヤ部材を使用している。なお、図5で示すリンク機構50は、操向レバー11の左方回動でカム操作アーム46を上方回動させ、操向レバー11の右方回動でカム操作アーム46を下方回動させる構造となっているが、前述の如く、操向レバー11の回動方向とカム操作アーム46の回動方向との関係はこのように限定されるものではなく、リンク機構50が、アーム93または94の回動に基づいてカム操作アーム46を適切に回動するように構成されていればそれでよい。
アーム93・94のうちの一方にはアウタワイヤ受けを構成して、アウタワイヤ99の端部を固定するものとしており、アーム93・94のうちの他方には、インナワイヤ98の端部を枢結するものとしている。本実施例では、アウタワイヤ99の該端部を固定するアウタワイヤ受け94aを下側のアーム94に形成(または固設)しており、該アウタワイヤ受け94aから延出されるインナワイヤ98の端部98aを上側のアーム93に枢結している。
さらに、下側のアーム94のアウタワイヤ受け94aには、ペダル13に連結されるインナワイヤ101を挿通したアウタワイヤ102の端部が固定されており、インナワイヤ101は、該アウタワイヤ受け94aより延出されて、その端部101aが、規制部材96の両端のうちの一方(本実施例では下端)に固設されている。規制部材96には、該規制部材96の両端間の方向(本実施例では略上下方向)に長く形成された長孔96aが設けられており、該長孔96aに、上側のアーム93より突設される規制ピン93aが嵌入されている。規制部材96の両端のうちの他方(本実施例では上端)と、車両の一部(位置固定されている箇所、例えば運転室の壁や計器パネルの一部)との間に、バネ97が介設されている。
以上の如く、操向レバー11を直進位置に戻すための付勢手段としてアーム93・94やバネ95等を設けた本実施例における操向レバー11には、補助クラッチ8の接合圧増大のためのペダル13の踏込みとサイドクラッチ7の作動とが同時に行われないようにするための牽制機構として、規制部材96及びバネ97よりなる牽制機構18Bが備えられており、リンク機構100を介して、牽制機構18Bの規制部材96をペダル13に連係する構造としている。
リンク機構100は、インナワイヤ101及びアウタワイヤ102とよりなる。アウタワイヤ102の一端部は下側アーム94の前記アウタワイヤ受け94aに固定され、他端部はペダル13のアーム13b近傍のアウタワイヤ受け63に固定されている。インナワイヤ101はアウタワイヤ102に挿通され、アウタワイヤ受け94aより上方に延出されるインナワイヤ101の端部101aが規制部材96の下端部に係止されており、アウタワイヤ受け63より延出されるインナワイヤ101の端部101bがアーム13bに枢結されている。
また、本実施例では、第1実施例と同様に、ペダル13のアーム13bとアーム16との間にインナワイヤ61・アウタワイヤ62等からなるリンク機構14を介設している。レバー12との関係では、第1実施例と同様に、レバー12での補助クラッチ8の接合圧の設定に応じてペダル13の非踏込み位置を画定するストッパ68の位置を変更することが考えられる。あるいは、第3、第4実施例と同様に、固定状のストッパ86を設け、レバー12での補助クラッチ8の接合圧の設定とは関係なく、該ストッパ86と押当するペダル13の非踏込み位置を一定にすることも考えられる。いずれにおいても、本実施例での牽制機構18Bは、レバー12の、前記の最小接合圧設定位置Cminから最大接合圧設定位置Cmaxまでの操作範囲で得られる補助クラッチ8の接合圧については、サイドクラッチ7が作動するか否かとは関係なく、得られるように構成されている。
牽制機構18Bにおける規制部材96は、上下方向の長孔96aを有しており、該長孔96aには、上側のアーム93に突設される規制ピン93aが、上下方向の長孔96aに沿って摺動自在に嵌入されている。長孔96aを挟んで配される規制部材96の上下端のうち、該下端には前述の如くインナワイヤ101の端部101aが係止されている一方、該上端には、バネ97の一端が係止されている。バネ97の他端は、車両の中で固定された(例えば運転室の壁)部分に係止されている。こうして、規制部材96は、リンク機構100の動き及びアーム93または94の動きに応じて上下に移動するものであり、バネ97は、規制部材96の上下動に応じて伸縮し、規制部材96の上下動を許容している。
図14は、操向レバー11を直進位置(傾倒角度T=0)に配し、ペダル13を非踏込み位置に配している場合を示している。上・下のアーム93・94は、操向レバー11の直進位置に対応した位置にあり、アウタワイヤ受け94aより規制部材96の下端までのインナワイヤ101の延出長は、アーム93・94がこの位置にある中では、最も長くなり、規制部材96が、その上下動の範囲での最上位置にあり、バネ97は最も圧縮した状態で、規制ピン93aは長孔96aの下端に当接している。
図14の状態から、ペダル13は非踏込み位置のまま、操向レバー11を直進位置から右方に傾動すると、図15に示すように、規制部材96は前述の位置に保持されたまま(バネ97が最も圧縮された状態のまま)、上側のアーム93が上方回動し、規制部材96aの長孔96a内での相対位置が上方に移動する。この場合、操向レバー11の右傾動角度RTを最大角度Tmaxに達するまでは、上方に移動する規制ピン93aが長孔96aの上端に当たることはなく、したがって、旋回内側の右サイドクラッチ7Rの接合圧を最大値まで増大させて、右駆動列3R及び右車軸4Rを完全な制動状態にまですることが可能である。
一方で、このように上側のアーム93の上方回動で上昇させた規制ピン93aは、長孔96aの上端との距離を短くすることから、規制部材96の下方移動を規制することになる。ここで、操向レバー11の右傾動角度RTがT2までの範囲にあるときは、サイドブレーキ7Rはまだかかっていないが、このときの上側のアーム93の上方回動に伴って上方移動した規制ピン93aと長孔96aの上端との間の距離は、まだ充分にあり、ペダル13の踏込み位置Dまでの下降を許容する分の規制部材96の下降量は確保されている。
しかし、操向レバー11の右傾動角度RTがT2を超えて、サイドブレーキ7Rがかかる状態に至ると、このときの規制ピン93aの長孔96a内での相対位置は高くなって、規制ピン93aと長孔96aの上端との間の距離が短くなり、その距離では、ペダル13を踏込み位置Dまで下降させるだけの規制部材96の下降量には足りない。つまり、ペダル13を踏み込むと、規制部材96が下降するが、その下降が規制ピン93aで阻まれて、ペダル13を踏込み位置Dまで下降させることはできず、これにより、サイドブレーキ7Rが効いている状態での、ペダル13の踏込みによる補助クラッチ8の接合圧の増大を抑制しているのである。
一方、図14に示すように、ペダル13を非踏込み位置にし、操向レバー11を直進位置にしているときの、長孔96a内における規制ピン93aと長孔96aの上端との間の距離は、ペダル13を踏込み位置Dまで下降させるだけの規制部材96の下降量を確保しており、したがって、ペダル13の踏込みによるオペレータの思い通りの補助クラッチ8の接合圧の増大が可能である。
ここで、操向レバー11を直進位置に保持しながら、ペダル13を踏込み位置Dまで踏み込むと、図16に示すように、規制ピン93aの位置は保持されたまま、インナワイヤ101が下方に引かれて、規制部材96が下降し、バネ97が伸長する。したがって、長孔96a内における規制ピン93aの相対位置が上方に移動し、規制ピン93aと長孔96aの上端との間の距離が縮まる。ペダル13を踏込み位置Dにしているときの規制ピン93aと長孔96aの上端との距離は、上側のアーム93の上方回動に伴う規制ピン93aの上方移動量と比較して、操向レバー11の右傾動角度TがT1を超える(すなわち、サイドクラッチ6Rを切る状態とする)までの規制ピン93aの上方移動分については確保するが、操向レバー11の右傾動角度TがT2に至るまでの規制ピン93aの上方移動分には足りないものとなるように設定されている。
したがって、ペダル13を踏込み位置Dまで下降させている状態から、操向レバー11の右傾倒角度RTがT2に到達するまでに上側アーム93が上方回動すると、図17に示すように、規制ピン93aが長孔96aの上端に押接し、それ以上は上側アーム93を上方回動できない状態となる。こうして、操向レバー11の右傾倒角度TがT2以上になるまでの操向レバー11の傾動を規制し、ペダル13を踏込み位置Dに踏み込んでいる間は旋回内側のサイドブレーキ7Rがかからないようにしているのである。
なお、操向レバー11を直進位置から左方に傾動して下側アーム94を下方回動させる場合は図示していないが、図14乃至図17を参照して、この場合について説明する。操向レバー11の左方傾動に伴って下側アーム94が下方回動すると、リンク機構100のインナワイヤ101をアウタワイヤ102とともに一体状に下方に押動する。これにより、規制部材96は下方に移動し、バネ97は伸長してこの規制部材96の動きを許容する。このとき、上側アーム93は操向レバー11を直進位置にしていたときの位置にて保持されているので、規制ピン93aは動かない。したがって、やはり下側アーム94の下方回動とともに、規制ピン93aと長孔96aの上端との間の距離が縮まることになる。
以上のように、リンク機構100においては、操向レバー11の左方傾動の場合には、下側アーム94が回動することにより、アウタワイヤ102がインナワイヤ101とともに移動する一方、ペダル13の踏込みの場合には、アウタワイヤ102はそのままで、インナワイヤ101のみがペダル13のアーム13bに引かれて動く。前述の如く操向レバー11を左方回動して、左傾動角度LTがT2に到達した場合、規制ピン93aと長孔96aの上端との距離は、ペダル13を踏込み位置Dまで下降させるだけのインナワイヤ101の移動による規制部材96の下降量には足りず、したがって、ペダル13を踏込み位置Dまで下降させることはできない。こうして、操向レバー11を左方に傾動して、サイドブレーキ7Lを効かせているときに、ペダル13を踏み込んでの補助クラッチ8の接合圧の増大を抑制している。
一方、操向レバー11を直進位置にしているときにペダル13を踏込み位置Dまで下降させると、図16に示す状態となり、規制ピン93aと長孔96aの上端との間の距離が短くなっており、この距離は、操向レバー11の左傾倒角度LTがT2に至るまでの下側アーム94の下方回動に伴う規制部材96の下降量には足りず、したがって、操向レバー11の左傾倒角度LTをT2まで到達させることはできない。こうして、ペダル13を踏み込んで補助クラッチ8の接合圧を増大させているときに、操向レバー11を左方に傾動しても、サイドブレーキ7Lが効かないようにしている。