次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1を参照して、本実施の形態における部品取出し装置が組み込まれた部品実装装置1の全体構成について説明する。図1において、基台2の上面には、X方向(基板搬送方向)に基板搬送機構3が配設されている。基板搬送機構3は部品実装対象の基板4を上流側装置(図示省略)から受け取ってX方向へ搬送し、以下に説明する部品実装機構による実装作業位置に位置決めして保持する。すなわち基板搬送機構3は基板4を位置決めして保持する基板保持部となっている。
基板搬送機構3の一方側の側方には、部品供給部5が配置されている。部品供給部5にはトレイフィーダ6が配置されており、トレイフィーダ6は実装対象の部品8が収納されたトレイ7を、部品実装機構が備えた部品取出しヘッド13による取り出し位置に供給する。トレイ7の上方には第1のカメラ9が撮像方向を下向きにして配設されている。本実施の形態に用いられる部品供給部5が備えたトレイフィーダ6は、一般に用いられるトレイフィーダのように取り出し対象の部品を格子状の規則配列で供給するのではなく、取り出し対象の部品8を不規則な姿勢で供給する形態を採用している。
基台2のY方向の両端部に配置された1対のフレーム部10の上面にはY軸駆動テーブル11がY方向に配設されており、Y軸駆動テーブル11に架設されたX軸駆動テーブル12には、部品取出しヘッド13がX方向に移動自在に装着されている。Y軸駆動テーブル11、X軸駆動テーブル12はいずれもリニアモータ駆動の直動機構を備えている。Y軸駆動テーブル11、X軸駆動テーブル12を駆動することにより、部品取出しヘッド13はX方向、Y方向に移動し、トレイ7から取り出した部品8を基板搬送機構3に位置決め保持された基板4に移送搭載する。
本実施の形態において、Y軸駆動テーブル11、X軸駆動テーブル12および部品取出しヘッド13は、トレイ7から取り出した部品8を搬送する部品搬送部15を構成し、本実施の形態においては部品搬送部15が部品実装機構としての機能を兼務している。すなわち部品取出しヘッド13は、基板4に部品8を移送搭載する実装ヘッドとしての機能を備えている。
トレイ7から部品8を取り出した部品取出しヘッド13が基板4へ移送する移送経路には、第2のカメラ16が配設されている。第2のカメラ16は、部品取出しヘッド13により部品8を基板保持部である基板搬送機構3に保持された基板4に移送する過程において、部品取出しヘッド13によって保持された状態の部品8を下方から撮像する。
図2に示すように、トレイ7の上方に配設された第1のカメラ9によってトレイ7を撮像する(矢印a)ことにより、トレイ7において不規則な姿勢で供給された部品8の画像を取得することができる。すなわち、第1のカメラ9(カメラ)は、部品供給部5によって供給された複数の部品8を撮像する。部品取出しヘッド13は、下面側から下方に延出する複数(ここに示す例では3つ)のチャックユニット14を備えており、チャックユニット14は1対のチャック爪17によって部品8を両側面から挟持して保持する機能を有している。
図3を参照して、チャックユニット14の構成および機能を説明する。図3(a)に示すように、チャックユニット14は本体部14aから上方に延出して部品取出しヘッド13と結合される昇降・回転軸14bを備えている。部品取出しヘッド13に内蔵された昇降機構およびθ回転機構(いずれも図示省略)を駆動することにより、チャックユニット14を昇降させ(矢印c)、さらに昇降・回転軸14b廻りにθ回転(矢印d)させることが可能となっている。
本体部14aには、下方に延出した1対のチャック爪17が、水平な旋回軸17a廻りの旋回が可能に設けられている。本体部14aに内蔵された開閉機構(図示省略)を駆動することにより、1対のチャック爪17は相互に接近・離隔方向に移動し(矢印e)、これにより保持対象の部品を1対のチャック爪17によって挟持して保持することが可能となっている。さらに本体部14aの前面には、押込み機構18が設けられており、押込み機構18から下方に延出した昇降軸18aの下端部には押込み部材18bが結合されている。
図3(b)に示すように、本体部14aに内蔵された爪旋回機構(図示省略)を駆動することにより、1対のチャック爪17は旋回軸17a廻りに旋回する(矢印f)。これにより、チャックユニット14は水平姿勢で保持した部品8の姿勢を垂直姿勢に変更することができる。また押込み機構18を駆動することにより押込み部材18bが昇降し(矢印g)、これにより、チャック爪17よって垂直姿勢で保持された部品8が押込み部材18bによって押し下げられ、リード8bは基板4の挿入孔4aに挿入される(図14参照)。
部品取出しヘッド13によってトレイ7から部品8を取り出す際には、第1のカメラ9による撮像結果を認識処理部19(図5参照)によって認識処理することにより、トレイ7における個別の部品8の位置や姿勢が取得される。そしてこれらの認識結果に基づいて部品取出しヘッド13、チャックユニット14を制御することにより、各チャックユニット14によって部品8を保持して、トレイ7から取り出す(矢印b)ことができる(図12参照)。
図4に示すように、トレイ7に収納される部品8は、パワートランジスタなど矩形状の部品本体部8aから複数のリード8bが延出した構成のいわゆる挿入部品である。そして基板搬送機構3に位置決め保持された基板4には、リード8bが挿入される挿入孔4aが形成されている。部品8を基板4に実装する際には、各チャックユニット14によって部品8を保持した部品取出しヘッド13が、第2のカメラ16の上方を移動することにより、第2のカメラ16は部品8を下方から撮像する。
そして第2のカメラ16による撮像結果を認識処理部19(図5参照)によって認識処理することにより、各部品8におけるリード8bの位置が認識される。基板4の上方に移動した部品取出しヘッド13によって部品8を基板4に実装する際には、前述の認識結果に基づいて、リード8bを挿入孔4aに対して位置合わせする(図14参照)。
部品8をトレイ7に収納する部品補給作業に際しては、原則として作業者はトレイ7の部品載置面7a上に部品8が相互に重なることなく、1層のみの状態で展開されるよう、部品均しを行う。このとき、トレイ7においては各部品8の方向や表裏は不規則であり、反転状態の部品(符号8*を付している)や2つの部品8が部分的に重なった状態のものが存在する。本実施の形態の部品取り出しにおいては、このような不規則な姿勢で供給される部品8を極力効率よく取り出すために、以下に述べるような構成を用いている。
ここで図5を参照して、制御系の構成を説明する。図5において、部品実装装置1に内蔵された制御装置20は、図1に示す部品供給部5、部品搬送部15、基板搬送機構3による作業動作を制御する。さらに制御装置20は認識処理部19と接続されており、認識処理部19は第1のカメラ9、第2のカメラ16による撮像結果を認識処理し、認識結果を制御装置20に伝達する。認識処理部19が第1のカメラ9による撮像結果を認識処理することにより、トレイ7における部品8の位置や姿勢が判別される。また認識処理部19は、第2のカメラ16による撮像結果を認識処理することにより、部品取出しヘッド13のチャックユニット14に保持された状態の部品8を認識する。
制御装置20は、制御処理部21、プログラム記憶部25、データ記憶部29を備えている。さらに制御処理部21は内部制御機能として実装制御部22、部品検出部23、部品選定部24を備えている。実装制御部22は部品供給部5から取り出された部品8を、基板搬送機構3に位置決め保持された基板4に実装する部品実装動作を制御する。この部品実装動作の制御は、データ記憶部29に記憶された実装データ30を参照しながら、プログラム記憶部25に記憶された実装動作プログラム26を実行することにより行われる。この制御においては、認識処理部19による部品8の認識結果に基づいて前述の部品実装機構を制御して、部品8を基板4に実装する。
部品検出部23は、第1のカメラ9により撮像された画像に基づいて、トレイ7に収納された複数の部品8のうち取出し可能な複数の部品8を検出する部品検出処理を行う。この部品検出処理は、データ記憶部29に記憶された取り出し可否判定データ31を参照しながら、プログラム記憶部25に記憶された部品検出処理プログラム27を実行することにより行われる。
部品選定部24は、部品検出部23によって検出された取出し可能な複数の部品8のうち、取出すべき複数の部品8を選定する部品選定処理を行う。この部品選定処理は、データ記憶部29に記憶された部品選定データ32を参照しながら、プログラム記憶部25に記憶された部品選定処理プログラム28を実行することにより行われる。そして部品選定部24によって選定された取出すべき複数の部品8は、部品取出しヘッド13が備えた複数の部品保持部としてのチャックユニット14によって保持されて取り出される。すなわち前述構成の部品搬送部15は、部品選定部24によって選定された取出すべき複数の部品8を複数の部品保持部によってそれぞれ保持して取出す機能を有している。
本実施の形態においては、部品搬送部15によって取出すべき複数の部品8を取出す過程において、取出すべき複数の部品8を複数の部品保持部としてのチャックユニット14によって同時に保持している状態を必ず経るようにしている。これにより、部品取出しヘッド13の1回の動作によって複数の部品8を取り出すことができ、部品取出しの作業効率を向上させることができる。
図5に示す各構成要素のうち、部品実装装置1において部品供給部5から取り出した部品8を基板4に実装するための要素(具体的には、第2のカメラ16、実装制御部22、実装動作プログラム26、実装データ30)を除いた構成要素は、本実施の形態における部品取出し装置を構成する。
以下、上述構成の部品取出し装置による部品検出処理において参照される部品基本形状データ31a、部品姿勢データ31b、面識別データ31cおよび重なり判定データ31dについて説明する。
図6(a)は、取り出し対象とする部品8の部品基本形状データ31aを示している。すなわち部品基本形状データ31aには、部品8を構成する部品本体部8aの平面寸法A、B、リード8bの幅b、リード長さlおよびリードピッチpが示されている。部品基本形状データ31aを参照することにより、部品取出しヘッド13が備えたチャックユニット14によって当該部品8を保持することが可能であるか否かが、寸法・形状面から判断される。
図6(b)に示す部品姿勢データ31bでは、当該部品8がトレイ7の部品載置面7aに平面的に載置された状態における基本的な姿勢パターンと、それぞれの姿勢パターンに対応する認識画像、すなわち第1のカメラ9によって取得される画像との対応が示されている。まず図6(b)(1)は、部品本体部8aが部品載置面7aに完全に接触し、表面8cが水平な状態で載置された部品姿勢を示している。この状態では、第1のカメラ9による認識画像では、表面8c、リード8bの形状そのままが現れる。図6(b)(2)は、部品本体部8aが部品載置面7a上で傾いた状態となって、リード8bの先端が部品載置面7aに接触した部品姿勢を示している。この状態では、認識画像において表面8c、リード8bが傾斜した状態の形状が現れる。
図6(b)(3)、図6(b)(4)は、部品8が表裏反転した状態で部品載置面7aに載置された姿勢を示しており、それぞれ図6(b)(1)、図6(b)(2)に示す状態に対応している。図6(b)(3)は、部品本体部8aが裏面8dを上向きにして部品載置面7aに完全に接触した状態で載置された部品姿勢を示している。この状態では、第1のカメラ9による認識画像では、裏面8d、リード8bの形状そのままが現れる。図6(b)(4)は、部品本体部8aが裏面8dを上向きにして部品載置面7a上で傾いた状態となって、リード8bの先端が部品載置面7aに接触した部品姿勢を示している。この状態では、認識画像において裏面8d、リード8bが傾斜した状態の形状が現れる。
このような部品姿勢データ31bを予め準備して記憶させておくことにより、第1のカメラ9によって撮像した認識結果に基づいて、実際の部品8の姿勢を判断することができ、取り出しが可能か否かを高い精度で判断することができる。なお図6(b)に示す例は部品姿勢の例示であり、これら以外にも対象とする部品種類や形状の特徴に応じて種々の姿勢パターンを設定することが可能である。
また図6(b)に示す部品8の画像を参照することにより、当該部品8が表面8c、裏面8dのいずれを上面側にして載置されているかを識別することができる。したがって図6(b)に示すデータは、部品8の表裏面を識別する面識別データとなっている。
次に図7を参照して、重なり判定データ31dについて説明する。前述のように、部品8は原則として作業者はトレイ7の部品載置面7a上に相互に重なることなく1層のみの状態となるように均しながら載置される。しかしながら部品ならし作業は必ずしも完全であるとは限らず、部分的に部品相互が重なった状態となっている場合が生じる。このとき部品相互が重なった全ての部品が取り出し対象から排除されるわけではなく、重なり状態によっては部品取り出しの対象とすることができる場合が存在する。重なり判定データ31dはこのような部品取り出し可否を判定する際に参照される参考データである。
まず図7(a)に示す例は、トレイ7の部品載置面7aに供給された部品8のうち、他の部品(8)が部分的に重なった場合にあっても、部品取出しが可能な例を示している。すなわち、図7(a)(1)では、図6(b)(1)に示す状態の部品8において、リード8bに部分的に他の部品(部品(8)と記載して取り出し対象の部品8と区別する)の部品本体部8aが重なった状態を示している。このとき、部品8においてチャックユニット14のチャック爪17による挟持面である挟持側面8eがフリーであれば、部品8を取り出すことができる場合がある。
同様に 図7(a)(2)は、図6(b)(3)に示す状態の部品8において、リード8bに部分的に他の部品(8)の部品本体部8aが重なった状態を示している。この場合においても、チャック爪17による挟持側面8eがフリーであれば部品8を取り出すことができる場合がある。また図7(a)(3)は、図6(b)(1)に示す状態の部品8において、リード8bに部分的に他の部品(8)のリード8bが重なった状態を示している。この場合においても、チャック爪17による挟持側面8eがフリーであれば部品8を取り出すことができる場合がある。このように、図7(a)に示すような状態の場合には、部品検出部23は当該部品8は取り出し可能であると判断する。
すなわち、部品検出部23は、部品供給部5によって供給された複数の部品8のうち、少なくとも一部が他の部品(8)によって隠蔽されていない複数の部品8を、取出し可能な複数の部品8として検出する。なお、ここでは部品保持部としてチャック爪17によって部品8を挟持するチャックユニット14を用いる例を示しているが、部品保持部として吸着ノズルによって部品8を吸着保持する構成のノズルユニット(例えば図15、図16に示すノズルユニット40)を用いる場合には、部品8が取り出し可能であるためには吸着ノズルによる吸着面が露呈されていれば足りる場合が多いことから、少なくとも一部が他の部品(8)によって隠蔽されていない部品8が取出し可能な部品8であると判定される確率が高くなる。
またこの取り出し可否の判断に際し、上述のように、少なくとも一部が他の部品によって隠蔽されていなく、且つ部品8において第1のカメラ9側に向いた面が同一の面(表面8cまたは裏面8d)であるような複数の部品8を、取り出し可能な部品8として検出するようにしてもよい。すなわちこの場合には、重なり判定データ31dと、面識別データ31cとを組み合わせて取り出し可否判定を行う形態となる。
これに対し、図7(b)は、トレイ7の部品載置面7aに供給された部品8のうち、他の部品(8)が部分的に重なった場合において、部品取出しが不可能な例を示している。すなわち、図7(b)(1)(2)では、いずれも図6(b)(1)に示す状態の部品8において、部品本体部8aに部分的に他の部品(8)の部品本体部8aが重なった状態を示している。
この状態では、チャックユニット14のチャック爪17による挟持側面8eが他の部品(8)によって隠蔽されており、チャック爪17による部品8の挟持が不可能であるため、部品8を取り出すことができない。換言すれば、部品検出部23は、取り出し対象とする部品8において、チャックユニット14のチャック爪17による挟持側面8eが他の部品(8)によって隠蔽されているか否かを判断することにより、部品取り出しの可否を判定する。
次に、部品選定部24が部品選定処理プログラム28を実行することによって実行される部品選定処理について説明する。本実施の形態では、この部品選定処理において、第1モード28a、第2モード28b、第3モード28c、第4モード28d、第5モード28eの複数のモードを、単独でまたは組み合わせて実行するようにしている。これらの複数のモードの実行に際しては、部品選定データ32に記憶されたデータが参照される。
まず図8に示す取出し領域データ32aを参照して実行される第1モード28a(領域限定)について説明する。第1モード28aでは、部品選定部24は部品検出部23によって検出された取出し可能な複数の部品8のうち、特定領域に存在する部品を、取出すべき複数の部品8として選定する。ここで特定領域とは、取り出し対象となる領域であるトレイ7を何らかの規則によって分割した領域であり、ここで用いる規則は適宜設定することができる。
例えば図8(a)に示すように、取り出し対象の部品8が不規則な姿勢で供給されたトレイ7において、トレイ7内の領域を幾何学的な規則(例えば象限分割)に基づいて、第1領域R1〜第4領域R4に分割して特定された領域であってもよい。また図8(b)に示すように、取り出し可能な姿勢の部品8が集中していると判断される領域R11、R12、R13を目視などによって見出し、認識処理部19を介して領域入力することにより特定領域を定義するようにしてもよい。
次に図9に示す移動距離・時間算定データ32bを参照して、第2モード28b(移動距離最小)、第3モード28c(移動時間最短)について説明する。ここでは、部品取出しヘッド13が備えた複数(ここでは3つ)のそれぞれに部品8を保持させて取り出す部品取出し動作における部品搬送部15による部品取出しヘッド13の移動距離、または移動時間に基づいて、取り出すべき複数の部品を選定する例を示している。
まず図9(a)を参照して、部品取出し動作における部品取出しヘッド13の移動距離に基づいて、より具体的には部品取出しヘッド13の移動距離が最短となるように、取出すべき複数の部品を選定する例について説明する。図9(a)は、トレイ7によって供給される複数の取り出し対象の部品8のうち、部品8(1)、(2)、(3)(ハッチングにて示す)を、3つのチャックユニット14(1)、(2)、(3)によって順次取り出す取り出し対象と仮定した場合の部品取出しヘッド13の移動経路および移動距離を示している。
図9(a)においてヘッド中心HCは部品取出しヘッド13の中心位置を示しており、チャック中心C(1)、(2)、(3)は、チャックユニット14(1)、(2)、(3)による部品保持位置の中心点をそれぞれ示している。部品取り出し動作が開始されると、まずチャックユニット14(1)によって部品8(1)を保持すべく、チャック中心C(1)を移動させて(矢印i)部品8(1)の上方に位置させるために、ヘッド中心HCをヘッド中心HC1に移動させる(矢印h)。
このときの部品取出しヘッド13の移動距離はD1である。次いで、チャックユニット14(2)によって部品8(2)を保持すべく、チャック中心C(2)を移動させて(矢印k)部品8(2)の上方に位置させるために、ヘッド中心HCをヘッド中心HC1からヘッド中心HC2に移動させる(矢印j)。このときの部品取出しヘッド13の移動距離はD2である。
さらに、チャックユニット14(3)によって部品8(3)を保持すべく、チャック中心C(3)を移動させて(矢印m)部品8(3)の上方に位置させるために、ヘッド中心HCをヘッド中心HC2からヘッド中心HC3に移動させる(矢印l)。このときの部品取出しヘッド13の移動距離はD3である。これにより、複数の取り出し可能な部品8のうち、部品8(1)、(2)、(3)を取り出し対象とした場合の部品取出しヘッド13の合計移動距離ΣD=D1+D2+D3が演算により求められる。
この移動距離演算を取り出し可能な複数の部品8の全ての組み合わせについて実行することにより、最小の合計移動距離ΣDを与える部品8の組み合わせが求められ,この組み合わせによって与えられる複数の部品8が、部品取出しヘッド13の移動距離が最短となる複数の部品8となる。
次に図9(b)を参照して、部品取出し動作における部品取出しヘッド13の移動時間に基づいて、より具体的には部品取出しヘッド13の移動時間が最短となるように、取出すべき複数の部品を選定する例について説明する。図9(b)は、1つの取出し対象の部品8から次の取出し対象の部品8まで部品取出しヘッド13が移動する際の移動速度の時間変化を示す速度パターンを図示している。
この部品取出しヘッド13の移動では、略台形状の速度パターンで速度Vが変化し、台形内の面積(ハッチング部参照)が所定の移動距離Diに相当する。すなわち停止状態から予め設定された加速度α1で加速して規定の最高速度VMに到達すると一定速度で移動し、停止位置に到達する手前で予め設定された制動加速度α2で減速を開始し、移動開始から移動距離Diだけ移動した後に停止する。
この停止動作に際しては、駆動サーボ系からのフィードバックパルスが、指令された移動距離Diに相当するパルス数に収束するまでに必要とされる整定時間TSだけ、完全停止タイミングが遅延する。すなわち、部品取出しヘッド13が1つの取出し対象の部品8から次の取出し対象の部品8まで移動する単位移動動作に要する移動時間Tiは、必ずしも移動距離Diとは比例しない。換言すれば、部品取出しヘッド13による複数の部品8の取り出し動作における所要時間、すなわち部品取出しヘッド13の単位移動動作における合計移動時間ΣTiは、取り出し対象となる部品8の組み合わせによって異なる。
したがって、複数の取り出し可能な部品8のうち、特定の3つの部品8を取り出し対象とした場合の部品取出しヘッド13の合計移動時間ΣTiが演算により求められる。この移動時間演算を取り出し可能な複数の部品8の全ての組み合わせについて実行することにより、最短時間のΣTiを与える部品8の組み合わせが求められ,この組み合わせによって与えられる複数の部品8が、部品取出しヘッド13の移動時間が最短となる複数の部品8となる。
次に図10に示す部品方向データ32cを参照して実行される第4モード28d(部品方向限定)について説明する。トレイ7に収納された複数の部品8のうち部品検出部23によって取り出し可能であると判断されたものの中には、部品の向きがランダムに異なるものが多数存在する。ここで部品の向きとは、図10(a)に示すように、部品8の部品本体部8aの長手方向を示す基準線8g(部品本体部8aの中心点8fを通り部品本体部8aの長手方向に平行な直線)が、トレイ7における基準方向(ここではX方向)に対してなす角度θで表される。
部品実装動作に際しては、実装データによって予め規定された実装方向に部品の向きを合わせる回転位置補正が必要とされるため、トレイ7から部品8を取り出す時点においてこれらの部品の向きが大幅に異なっていると、回転位置補正時に必要とされる回転補正量が大きくなる。この回転位置補正量が大きい場合には、回転位置補正に時間を要して実装動作効率を低下させる。
この効率の低下を防止するために回転位置補正時の回転速度を大きくすると、回転動作の加減速時に部品8に作用する慣性力による部品8の不安定を招く。特に、部品取出しヘッド13に装着される部品保持部として真空吸着によって部品8を保持する吸着ノズルを用いる場合(図15、図16参照)には、吸着ノズルの保持面に滑りが生じやすく、この慣性力による位置ずれなどの不具合が大きくなる。
このような回転位置補正時の不具合を極力防止するため、本実施の形態に示す部品取り出しでは、図10(b)に示すように、部品種類Pa、Pb、Pc・・・のそれぞれに応じて、取出し可能角度範囲θa、θb、θc・・・を予め設定しておき、図10(a)に示す部品の向き、すなわち角度θが取出し可能角度範囲θa、θb、θc・・・を上限とする取出し可能角度範囲以内であるもののみを取り出し対象の部品8とするようにしている。すなわち、部品選定部24は、部品検出部23によって検出された取出し可能な複数の部品8のうち、部品8の向きが所定範囲以内である複数の部品8を、取出すべき複数の部品8として選定するようにしている。
次に第5モード28e(取出し面限定)について説明する。この部品取出しモードでは、トレイ7に不規則な姿勢で収納された複数の部品8のうち、第1のカメラ9に向いた面が同一面である部品8のみを取出し対象とするようにしている。ここでは図6(b)に示す面識別データ31cが参照され、表面8cが上面となっている部品8のみ、または裏面8dが上面となっている部品8のみを取出し対象とする。すなわちこの場合には、部品選定部24は、部品検出部23によって検出された取出し可能な複数の部品8のうち、第1のカメラ9側に向いた面が同一面である複数の部品8を取出すべき複数の部品8として選定するようにしている。
本実施の形態の部品取出し装置が組み込まれた部品実装装置1は上記のように構成されており、以下部品実装装置1によって実行される部品実装動作について、図11のフローに則して各図を参照して説明する。ここに示す部品実装動作においては、部品取出し装置による部品取り出し方法が用いられている。
部品供給部5において、トレイ7上で部品取出しヘッド13による取り出し対象となる複数の部品8を不規則な姿勢で供給する(部品供給工程)(ST1)。ここでは、予め複数の部品8が不規則な姿勢で収容されたトレイ7を、トレイフィーダ6によって部品取出しヘッド13による部品取出し位置に供給する。次いで、供給された複数の部品8を第1のカメラ9で撮像する(撮像工程)(ST2)。
そして撮像された画像に基づいて、部品検出部23によって取り出し可能な部品8を検出する(部品検出工程)(ST3)。すなわち、撮像された画像を認識処理部19によって認識処理した結果に基づき、部品検出部23が部品検出処理プログラム27を実行して前述の取り出し可否判定データ31を参照することにより、個別の部品8が取り出し可能であるか否かを判断する。
次いで検出された取り出し可能な部品のうち取り出すべき複数の部品を選定する(部品選定工程)(ST4)。すなわち、部品検出工程において部品検出部23によって取り出し可能であると判断された部品8を対象として、部品選定部24が部品選定処理プログラム28を実行して部品選定データ32を参照することにより、取り出すべき複数の部品を選定する。
この部品の選定では、以下に述べる部品搬送工程での部品取出し動作における移動距離または移動時間に基づいて、取出すべき複数の部品8を選定するパターンや、取り出し可能な複数の部品8のうち、部品の向きが所定範囲以内である複数の部品8を取出すべき複数の部品8として選定するパターンなど、種々のパターンを適用することができる。
そして選定された複数の部品8を複数の部品保持部であるチャックユニット14によってそれぞれ保持して取り出す(部品搬送工程)(ST5)。図12は、チャックユニット14による部品取り出し動作を示している。すなわち図12(a)に示すように、チャック爪17が開状態で、押込み部材18bが上昇位置にあるチャックユニット14を、トレイ7の部品載置面7a上に位置する部品8の上方へ移動させ、部品8に対して下降させる(矢印n)。
ここでは、部品8は部品本体部8aの表面8cを上に向けた姿勢で部品載置面7a上に載置されており、部品本体部8aの両側面の挟持側面8eはフリーな状態となっている。チャックユニット14を部品8に対して下降させる過程では、チャック爪17によって挟持側面8eを挟持可能なように位置合わせが行われる。そしてこの状態でチャックユニット14を部品8に対して下降させて、チャック爪17に閉動作を行わせることにより、図12(b)に示すように、チャックユニット14はチャック爪17によって部品本体部8aの挟持側面8eを両側から挟持する。これにより、チャックユニット14による部品8の保持が完了する。
そしてこの状態のチャックユニット14を上昇させて、取出し方向へ移動させる(矢印o)。この過程において、チャック爪17を時計回り方向に90度旋回させることにより、チャック爪17によって挟持された部品8は、リード8bを下方に向けた姿勢に姿勢変換される。そしてこれにより、部品取出しヘッド13に設けられた1つのチャックユニット14による部品8の取り出しが終了する。
この部品取り出し動作は部品取出しヘッド13に設けられた複数(ここでは3つ)のチャックユニット14について順次実行され、これにより、図13(a)に示すように、部品取出しヘッド13に設けられた3つのチャックユニット14(1)、(2)、(3)のそれぞれに、部品8をリード8bを下方に向けた姿勢で保持した状態となる。すなわち本実施の形態に示す部品取出し装置では、部品搬送工程にて、部品搬送部15によって取出すべき複数の部品8を取出す過程において、取出すべき複数の部品8を複数の部品保持部であるチャックユニット14(1)、(2)、(3)によって同時に保持している状態を経る形態となっている。
この後、取り出した部品8を保持したチャックユニット14を、第2のカメラ16の上方に移動させる(ST6)。すなわち図13(b)に示すように、チャックユニット14(1)、(2)、(3)のそれぞれに部品8を保持した部品取出しヘッド13を第2のカメラ16の上方に移動させ、第2のカメラ16によって、それぞれのチャックユニット14(1)、(2)、(3)に保持された部品8を下方から撮像する(ST7)。次いで撮像された画像に基づいて部品8の位置ずれを認識する(ST8)。すなわち、撮像結果を認識処理部19によって認識処理することにより、保持された部品8のリード8bの本来位置すべき正規位置に対する位置ずれをそれぞれ認識する。
そしてこれらの認識結果に基づいて、位置ずれを補正して部品8を基板4に実装する(ST9)。すなわち図14(a)に示すように、リード8bを下向きにした姿勢の部品8をチャック爪17によって挟持して保持したチャックユニット14を、基板4における部品8の実装位置に位置合わせして下降させる(矢印p)。ここでは、部品認識により検出されたリード8bの位置ずれを補正して挿入孔4aに一致させる。次いで、図14(b)に示すように、押込み機構18を作動させて押込み部材18bを下降させる(矢印q)ことにより、押込み部材18bによって部品本体部8aを押し下げて、リード8bを挿入孔4a内に挿入する。これにより、1つの部品8を基板4に実装する実装動作が完了する。
なお上述の部品実装動作では、部品供給部5のトレイ7から部品8を取り出す部品取出しヘッド13によって、取り出した部品8を基板4に実装する形態を示したが、トレイ7から部品8を取り出す部品取出しヘッド13とは別個に、基板4への部品実装専用の実装ヘッドを設ける構成であってもよい。この構成では、部品取出しヘッド13はトレイ7から取り出した部品8を部品受け渡しステージに載置し、載置された部品8を実装ヘッドによって保持して基板4に移送して実装する。この場合には、部品取出しヘッド13がトレイ7から取り出した部品8を部品受け渡しステージに載置するまでが部品取出し動作に該当する。
次に図15、図16を参照して、本実施の形態の第2実施例の部品取出しヘッド13Aの構成および機能について説明する。部品取出しヘッド13Aは、部品取出しヘッド13において用いられているメカニカルチャック式のチャックユニット14に替えて、真空吸着により部品8を保持する吸着ノズル方式のノズルユニット40を用いる点で異なっている。
図15(a)に示すように、部品取出しヘッド13Aは複数(ここでは3つ)のノズルユニット40(1)、(2)、(3)を備えている。ノズルユニット40は、下端部に吸着ノズル42によって部品を吸着保持するノズル本体部41を備えている。さらにノズルユニット40には、吸着ノズル42が保持した部品のリードを実装対象の基板の挿入孔に押し込むための押込み機構43が設けられている。
図15(b)を参照して、ノズルユニット40の機能を説明する。ノズルユニット40は、ノズル本体部41を昇降(矢印r)させる昇降機構、ノズル本体部41を軸支点41a廻りに旋回(矢印s)させる旋回機構、ノズル本体部41をθ軸廻りに回転(矢印t)させるθ回転機構を備えている。なお、昇降機構、旋回機構およびθ回転機構の図示は省略している。ノズル本体部41を下降させることにより、吸着ノズル42はトレイ7に収納された部品8の上面に当接してこれを吸着保持する。θ回転機構を駆動することにより、吸着ノズル42に保持された部品8の回転位置を変更することができる。
そして吸着ノズル42が部品8を保持した状態で旋回機構を駆動することにより、吸着ノズル42は保持した部品8とともに下向き姿勢から横向き姿勢に姿勢変換される。さらに押込み機構43は下方に延出した押込み軸43aを備えている。押込み機構43に内蔵された押圧機構(図示省略)を駆動することにより、押込み軸43aは下降し(矢印u)、吸着ノズル42に吸着保持されて横向き姿勢に姿勢変換された状態の部品8を下方に押し下げることができる。
図16は、ノズルユニット40を備えた部品取出しヘッド13Aによって部品8を基板4に実装する部品実装動作の概略を示している。まず図16(a)に示すように、部品供給部5のトレイ7に部品取出しヘッド13Aを移動させ、ノズルユニット40によってトレイ7から部品8を取り出す(矢印v)。すなわちノズル本体部41を昇降させて、吸着ノズル42により部品8の部品本体部8aを吸着保持してトレイ7から取り出す。次いで図16(b)に示すように、ノズル本体部41を旋回させて(矢印w)、吸着ノズル42に保持された部品8の姿勢を、リード8bを下向きにした姿勢に変換する。
そして全てのノズルユニット40によって部品8を保持した後、図13(b)に示す状態と同様に、部品取出しヘッド13Aを第2のカメラ16の上方に移動させて、それぞれのノズルユニット40に保持された部品8を下方から撮像する。次いで撮像された画像に基づいて、保持された部品8のリード8bの位置ずれをそれぞれ認識する。
この後部品取出しヘッド13Aを基板4上に移動させて、図16(c)に示すように、リード8bを下向きにした姿勢の部品8を基板4における実装位置に実装する。すなわち、認識結果に基づいてリード8bの位置ずれを補正して、実装位置の挿入孔4aに一致させる。次いで、押込み機構43を作動させて押込み軸43aを下降させ(矢印x)、押込み軸43aによって部品本体部8aを押し下げて、リード8bを挿入孔4a内に挿入する。これにより、1つの部品8を基板4に実装する実装動作が完了する。
上述の第2実施例におけるノズルユニット40は、真空吸着によって部品8を保持するノズル本体部41を用いていることから、保持対象とすることが可能な部品8の形状やサイズの範囲が大きく、汎用性に優れるという利点がある。すなわち、第1実施例に示すチャックユニット14では、メカニカルチャック方式であることから、保持対象の部品8の形状・サイズが制約されるのに対し、真空吸着方式ではある大きさ以上の吸着面が確保されていれば、形状・サイズの制約は大幅に緩和される。
このため、ノズルユニット40を備えた部品取出しヘッド13Aによれば、図17に示すトレイ7Aのように、形状やサイズが異なる複数種類の部品が収納されている場合においても、共通の部品取出しヘッド13Aによってこれら複数種類の部品を対象として取り出すことが可能となる。例えば、図17(a)に示すトレイ7Aは、部品収納区画71、72、73の3区画に区分されており、部品収納区画71、72、73にはサイズ・種類が異なる部品8A、8B、8Cがそれぞれ不規則な姿勢で収納されている。
図17(b)は、前述構成の部品取出しヘッド13Aによって、部品載置面7aにより供給される3種類の部品8A、8B、8Cを取り出す際の取り出し態様を示している。すなわち、図17(b)(1)に示す例では、部品取出しヘッド13Aが備えたノズルユニット40(1)、(2)、(3)のいずれもが同一種類の部品8Aを取り出す例を示している。また図17(b)(2)に示す例では、ノズルユニット40(1)、(2)、(3)のそれぞれによって、種類の異なる部品8A、8B、8Cを取り出す例を示している。すなわち、真空吸着方式のノズルユニット40を備えた部品取出しヘッド13Aによれば、取出し対象とする部品の形状・種類の範囲を広げるとともに、部品取出し動作における取り出し順序などにおける自由度を拡大して、汎用性に優れた部品取り出し装置を実現することが可能となっている。
上記説明したように、本実施の形態に示す部品実装装置1に用いられた部品取出し装置および部品取出し方法では、取出し対象の複数の部品8を不規則な姿勢で供給し、供給された複数の部品8を第1のカメラ9より撮像し、第1のカメラ9により撮像された画像に基づいて、複数の部品8のうち取出し可能な複数の部品8を検出し、検出された取出し可能な複数の部品8のうち、取出すべき複数の部品8を選定し、選定された取出すべき複数の部品8を複数の部品保持部によってそれぞれ保持して取出し、これらの複数の部品8を取出す過程において、取出すべき複数の部品8を複数の部品保持部によって同時に保持している状態を経る形態となっている。
また取出すべき複数の部品8を選定するに際し、部品取出し動作における部品搬送部である部品取出しヘッド13の移動距離に基づいて取出すべき複数の部品8を選定し、もしくは取り出し可能な複数の部品8のうち、部品の向きが所定範囲以内である複数の部品8を取出すべき複数の部品として選定するようにしている。さらに検出された取出し可能な複数の部品8のうち、予め規定された特定領域に存在する部品を取出すべき複数の部品8として選定することや、第1のカメラ9側に向いた面が同一面である部品を取出すべき複数の部品8として選定することも可能となっている。
このような構成により、共通の設備で部品の形状やサイズが異なる複数種類の部品を取り出し対象とすることができるとともに、部品取出し動作を規定する条件を多様に設定することにより、部品取出し作業の生産効率を向上させることが可能となっている。したがって、部品実装分野での部品取出し作業において汎用性に優れ低コストで高い生産効率を実現することができる。
なお上述の実施例においては、取り出し対象の部品の種類として、部品本体部8aから複数のリード8bが延出した形状の挿入部品である部品8を対象としているが、本発明の対象はこのような挿入部品には限定されない。すなわち、テーピングやトレイを用いた部品供給形態に適さない異形部品であれば本発明の適用対象となる。