JP6528050B2 - アーク式成膜装置および成膜方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金型、自動車部品、工具等の基材の表面にカーボンを主成分とする薄膜を成膜するアーク式成膜装置および前記アーク式成膜装置を用いた成膜方法に関する。
一般にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜と呼ばれるカーボンを主成分とする硬質炭素膜は、低摩擦性および耐溶着性に優れた材料として近年注目されている。このようなDLC膜は、カーボン原料として炭化水素ガスを使用して成膜される水素含有のDLC膜と、カーボン原料として固体カーボンを使用して成膜される水素フリーのDLC膜とに大別され、この内でも、特に、水素フリーのDLC膜は、高硬度で耐熱性が高く、また、油中における摩擦係数が小さいため、レンズ成形用の金型、自動車部品、工具等の基材の表面処理膜として使用されている。
このような水素フリーのDLC膜は、一般にスパッタ法やアーク法を用いて成膜されているが、スパッタ法では生産性を上げることが難しく、また、成膜されたDLC膜の膜質も十分とは言えなかったため、近年では、アーク法を用いた成膜が好ましく行なわれている(例えば特許文献1参照)。
特開2014−62326号公報
しかしながら、アーク式成膜装置を用いて基材表面にDLC膜を成膜した場合、成膜時、アーク放電中に陰極から直径数μm〜数百μmの大きな粒子(粉砕粒子)が放出されて、成膜中のDLC膜に取り込まれて、平滑であるべきDLC膜の表面が粗くなってしまうことがある。
このような粉砕粒子が取り込まれたDLC膜が成膜されたレンズ成形用の金型を用いてレンズを成形すると、成形後のレンズにピンホールが形成されてしまいレンズの品質が低下する恐れがある。このため、ダクトや磁場を用いて、DLC膜内に粉砕粒子が取り込まれることを抑制するための技術として、FVA(Filtered Vacuum Arc)法が開発され、実用化されているが、ダクトや磁場を設けることで装置が高価となる上、成膜レートが従来のアーク法の1/5程度と遅くなるという問題点があった。
また、ピストンリング、バルブリフター、ピストンピンなどの自動車部品や工具等にDLC膜を成膜する際に粉砕粒子が取り込まれると、その粉砕粒子が剥離の起点となり、自動車部品や工具等の品質の低下を招く恐れがある。
また、一般的には粉砕粒子をラップ等で取り除くという処理も行なわれているが、余分な工数(コスト)がかかるという問題がある。
そこで、本発明は、アーク式成膜装置を用いてDLC膜を成膜するに際して、アーク放電中に陰極から粉砕粒子が放出されることを抑制することにより、平滑なDLC膜を安定して成膜することができるアーク式成膜技術を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題の解決について検討するにあたって、まず、粉砕粒子の放出のメカニズムについて詳細に検討を行い、この粉砕粒子がアーク放電中の陰極においてアークスポットとその周辺の部分との間で大きな温度差が生じることにより発生していることを見出した。
図7は従来のアーク式成膜装置の陰極に形成されたアークスポット近傍の様子を模式的に示す断面図である。図7に示すように、一般に真空アーク蒸着法においては、アーク放電によって陰極4の表面にアークスポット31が形成され、このアークスポット31の高温によってカーボンが昇華して、昇華したカーボン44が基材(図示省略)の表面に蒸着されることによりDLC膜が成膜される。
このとき、アーク法では、比較的大きな電流(30〜200A)がアークスポット31に集中するため、3000℃を超える高温になって陰極4のカーボンを昇華させるが、アークスポット直近部分41の周囲42は通常陰極4の裏面側から水冷されているため、アークスポット直近部分41の周囲42の温度は一般的に500℃以下に留まっており、アークスポット31との間で大きな温度差が生じる。
そして、このような大きな温度差がアークスポット直近部分41とその周囲42という隣り合った領域で生じると、そこに大きな熱歪みが生じてクラックの発生を招いてしまう。そして、このようなクラックの発生は陰極4の粉砕を招いて、粉砕されたカーボンが粉砕粒子43として放出され、アークスポット31の周辺から火花(スパーク)が発生する。
本発明者は、上記の知見に基づき、陰極4全体が高温になっていれば、アークスポット直近部分41と周囲42との間に生じる温度差が小さくなって、粉砕粒子43やスパークの発生(以下、単に「粉砕粒子の発生」という)を抑制することができると考え、具体的に陰極4における温度をどの程度にしておけば、粉砕粒子43の発生が抑制されるのか、種々の実験と検討を行った。
その結果、少なくとも従来、粉砕粒子43が発生していた部分、即ち、アークスポット31近傍の領域が、500〜3000℃、好ましくは1000〜3000℃という高温になっていれば、陰極4の表面にアークスポット31が形成された際にアークスポット直近部分41と周囲42との間に大きな温度差が生じず、粉砕粒子43の発生が抑制され、平滑なDLC膜、具体的には、表面粗さ(十点平均粗さ)が0.5μm以下というDLC膜を安定して成膜できることが分かった。そして、本発明者は成膜中の少なくとも陰極4のアークスポット近傍の領域の温度を500〜3000℃にできるようなアーク式成膜装置について検討を進めた。
また、上記のように陰極4のうち少なくともアークスポット31近傍の領域を高温にすることができるアーク式成膜装置を用いた場合、アーク放電によってアークスポット31近傍のカーボンを短時間で容易に昇華させることができるため、アークスポット31をスムーズに移動させることができ、また、陰極4のカーボンが均等に消費されて陰極4の利用効率を上昇させることができることが分かった。
なお、ここでいうアークスポット近傍の領域とは、加熱しなければ粉砕が発生する場所であり、陰極材料やアーク放電の条件により異なるが、図8に示すように、概ねアークスポット31の中心から半径3mm以内、深さ3mm以内の領域である。
但し、アークスポットは、磁場や陰極の表面状態により移動していくため、新しい移動先が既に高温になっていることが好ましく、高温領域は大きい方が好ましい。実質的な放電面全体が高温になっていることが最も好ましい。
次に、陰極の利用効率を従来よりも向上させるという観点から、陰極の周囲に磁界を発生させる磁界発生手段を設け、所定の向きに磁界を生じさせることが好ましい。具体的には、一般に、円柱状の陰極を用いたアーク式成膜装置の場合、図6に示すように、アーク放電中におけるアークスポット31は、陰極4の先端Tから根本(図示省略)に向かって陰極4の側面をスパイラル状に移動する。このとき、アークスポット31が通過した部分のカーボンのみが昇華してDLC膜の成膜に用いられ、通過しなかった部分のカーボンは昇華せずDLC膜の成膜に用いられない。このため、円柱状の陰極4を用いたアーク式成膜装置の場合、陰極4の利用効率は低く留まっていた。
これに対して、図5に示すように、アーク式成膜装置に磁界発生手段としてのコイル12を設けて、陰極4の軸方向と磁力線Mとのなす角度θが陰極4の先端T側が鋭角になるように磁界を生じさせた場合、アークスポットは角度θが鋭角になっている方向に向けて移動する性質があるため、アークスポットが陰極4の先端Tに留まり、陰極4の先端T側から順次カーボンが消費される。この結果、陰極4の利用効率を従来よりも向上させることができる。なお、磁界発生手段として図5では、コイル12を用いているが、これに限定されず、永久磁石を用いてもよい。
請求項1、2に係る発明は、以上の知見に基づくものであり、請求項1に記載の発明は、
カーボンを主成分とする陰極材料を用いてアーク放電を行うことにより、前記陰極表面に形成されたアークスポットから前記カーボンを昇華させて、基材表面にカーボンを主成分とする炭素膜を成膜するアーク式成膜装置であって、
前記陰極を保持する陰極保持手段と、
前記基材を保持する基材保持手段と、
前記陰極保持手段および前記基材保持手段が収容された真空チャンバーとを備えており、
成膜中、少なくとも前記陰極の前記アークスポット近傍の領域の温度を500〜3000℃にする手段を備えており、
前記陰極が円柱状の陰極であり、
前記円柱状の陰極の軸方向と磁力線とのなす角度が、前記陰極の先端側が鋭角になるように磁界を生じさせる磁界発生手段を備えていることを特徴とするアーク式成膜装置である。
そして、請求項2に記載の発明は、
成膜中の少なくとも前記陰極の前記アークスポット近傍の領域の温度を1000〜3000℃にする手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のアーク式成膜装置である。
次に、本発明者は、少なくとも陰極4のアークスポット近傍の領域の温度を上記した温度にする具体的な手段について実験と検討を行い、大きく分けて、以下に示す2つの手段が好ましく採用できることを見出した。
まず、第1の手段としては、陰極を外部から加熱する加熱手段を設ける。即ち、外部からの加熱によってアーク放電時に少なくとも陰極のアークスポット近傍の領域が高温に加熱されていれば、成膜中の陰極においてアークスポット直近部分とその周囲との間の温度差を小さくして、粉砕粒子の発生を抑制することができる。
請求項3に記載の発明は、上記の知見に基づいたものであり、
少なくとも前記陰極の前記アークスポット近傍の領域を加熱して前記陰極の温度を500〜3000℃にする加熱手段を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアーク式成膜装置である。
そして、上記した陰極を外部から加熱する具体的な加熱手段としては、ヒーターによる加熱が最も好適であることが分かったが、誘導加熱装置、電子ビーム加熱装置およびレーザー加熱装置においても、同じ効果が期待できる。
即ち、請求項4に記載の発明は、
前記加熱手段が、前記陰極を外部から加熱するヒーターであることを特徴とする請求項3に記載のアーク式成膜装置である。
加熱手段としてヒーターを用いた場合、陰極の温度制御を容易に行うことができるため好ましい。また、ヒーターと陰極とを接続して、ヒーターに流れる電流を陰極にも流すことにより、一つの電源でヒーター加熱とアーク放電の両方を行うこともできる。
また、請求項5に記載の発明は、
前記加熱手段が、前記陰極を誘導加熱する誘導加熱装置であることを特徴とする請求項3に記載のアーク式成膜装置である。
誘導加熱装置は、離れた位置からでも陰極を加熱することができるため、設置位置の自由度が高くなり、上記したヒーターを設けることが難しい場合でも好ましく用いることができる。
また、請求項6に記載の発明は、
前記加熱手段が、前記陰極に電子ビームを照射して前記陰極を加熱する電子ビーム加熱装置であることを特徴とする請求項3に記載のアーク式成膜装置である。
上記した誘導加熱装置と同様に、電子ビーム加熱装置も、離れた位置から陰極を加熱することができる。
また、請求項7に記載の発明は、
前記加熱手段が、前記陰極にレーザー光を照射して前記陰極を加熱するレーザー加熱装置であることを特徴とする請求項3に記載のアーク式成膜装置である。
レーザー加熱装置についても、上記した誘導加熱装置や電子ビーム加熱装置と同様に、離れた位置から陰極を加熱できる。
上記した第1の手段の外部からの陰極の加熱は容易ではあるが、加熱手段を設けるためアーク式成膜装置の大型化やコストの増大を招きやすい。そこで、本発明者は、次に、第2の手段として、外部から陰極を加熱するのではなく、アーク放電によって陰極自体に生じた熱で陰極を加熱する陰極の自己加熱によって少なくとも陰極のアークスポット近傍の領域の温度を500〜3000℃にする手段について考えた。
例えば、アークスポット31近傍のアークスポット直近部分41ではカーボンの昇華温度(3500℃程度)以上まで陰極4が昇温するため、このアークスポット直近部分41における熱により陰極4全体が加熱される。さらに、陰極4は、アーク電流による抵抗発熱によっても全体が加熱される。
そして、これら陰極4の自己加熱による熱を少なくとも陰極4のアークスポット近傍の領域に留めて陰極4を500〜3000℃にすることができれば、新たな加熱手段を外部に設けなくても、アークスポット直近部分41の周囲42を高温に加熱することが可能となり、装置の大型化を招くことがない。
請求項8〜10に係る発明は、上記の知見に基づくものであり、請求項8に記載の発明は、
前記陰極の自己加熱によって、少なくとも前記陰極の前記アークスポット近傍の領域の温度が500〜3000℃となるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアーク式成膜装置である。
そして、請求項9に記載の発明は、
前記陰極の自己加熱が、前記アークスポットにおいて発生した熱により行われることを特徴とする請求項8に記載のアーク式成膜装置である。
また、請求項10に記載の発明は、
前記陰極の自己加熱が、アーク電流により発生した抵抗発熱により行われることを特徴とする請求項8に記載のアーク式成膜装置である。
そして、上記した陰極の自己加熱によって少なくとも陰極のアークスポット近傍の領域の温度を500〜3000℃にする具体的な手法としては、まず、従来の一般的な陰極よりも細い陰極を用いることが考えられる。このような細い陰極を使用した場合、アークスポットで発生した熱が細い陰極に溜まるため、アークスポットで発生した熱のみで陰極を十分高温にすることができる。また、細い陰極の場合には抵抗が大きくなるため、アーク電流による抵抗発熱で陰極を十分に加熱することができる。そして、実験の結果、少なくとも陰極のアークスポット近傍の領域の温度を500〜3000℃にするには、陰極として直径20mm以下の円柱状の陰極が用いられていればよいことが分かった。
即ち、請求項11に記載の発明は、
前記陰極が、直径20mm以下の円柱状の陰極であることを特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載のアーク式成膜装置である。
また、陰極として多孔質の陰極を用いた場合には、空孔の存在により、同じ太さの陰極であっても陰極の実体積が小さくなり、アークスポットで発生した熱が実体積の小さな陰極に溜る一方で、空孔の存在により抵抗が大きくなるため、アーク電流による抵抗発熱により陰極を十分に加熱することができる。また、空孔の存在により、陰極における熱伝導が低下するため、アークスポットで発生した熱が陰極材内部に逃げにくくなり、発生した熱を有効に利用することができる。
即ち、請求項12に記載の発明は、
前記陰極が多孔質の陰極であることを特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載のアーク式成膜装置である。
また、一般的なアーク式成膜装置には、アーク放電中の温度上昇によって陰極全体が溶融あるいは昇華して陰極保持手段から脱落することを防止するために、陰極を冷却するための冷却手段が設けられている。しかし、本発明のようにDLC膜を成膜する際には陰極の昇華温度が高いため、陰極を冷却する必要性が低い。
このため、この冷却手段を制御して、陰極の冷却を従来よりも弱めれば、陰極自体の温度を従来よりも高温にすることができ、少なくとも陰極のアークスポット近傍の領域の温度を500〜3000℃にすることができる。
請求項13に係る発明は、上記した知見に基づくものであり、
前記陰極を冷却する冷却手段と、少なくとも前記陰極の前記アークスポット近傍の領域の温度が500〜3000℃となるように前記冷却手段を制御する冷却制御手段とを備えていることを特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載のアーク式成膜装置である。
なお、上記した陰極を外部から加熱する加熱手段を設けて陰極を昇温させる第1の手段と、陰極の自己加熱によって陰極を昇温させる第2の手段は組み合わせて使用することもできる。
即ち、請求項14に記載の発明は、
前記陰極を加熱する加熱手段による熱と、前記陰極の自己加熱によって発生する熱を併用することにより少なくとも前記陰極の前記アークスポット近傍の領域の温度が500〜3000℃となるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアーク式成膜装置である。
そして、請求項15に記載の発明は、
前記陰極を加熱する加熱手段が、ヒーター、誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱のいずれかであり、
前記陰極の自己加熱が、前記アークスポットにおいて発生した熱および/または前記陰極の抵抗発熱により行なわれることを特徴とする請求項14に記載のアーク式成膜装置である。
また、円柱状の陰極を用いる場合には、この陰極を基材に向けて送り出す送り出し機構を設けることが好ましい。これにより、アーク放電により陰極が短くなった際に陰極を送り出すことができ、安定したアーク放電を長時間持続させることができる。
即ち、請求項1に記載の発明は、
前記円柱状の陰極を前記基材に向けて送り出す送り出し機構を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載のアーク式成膜装置である。
また、請求項1に記載の発明は、
請求項1ないし請求項1のいずれか1項に記載のアーク式成膜装置を用いて、
少なくとも前記陰極の前記アークスポット近傍の領域の温度を500〜3000℃にしながら前記炭素膜を成膜することを特徴とする成膜方法である。
請求項17に記載の発明においては、上記したように、成膜に際して粉砕粒子の発生が抑制されるため、平滑なDLC膜を安定して成膜することができる。また、陰極の利用効率を上昇させることもできる。
本発明によれば、アーク式成膜装置を用いてDLC膜を成膜するに際して、アーク放電中に陰極から粉砕粒子が放出されることを抑制することにより、平滑なDLC膜を安定して成膜することができるアーク式成膜技術を提供することができる。
本発明の一実施の形態に係るアーク式成膜装置の基本的な構成を示す概略図である。 本発明の一実施の形態に係るアーク式成膜装置におけるアークスポット近傍の様子を模式的に示す断面図である。 本発明の他の実施の形態に係るアーク式成膜装置を示す概略図である。 本発明の一実施の形態に係るアーク式成膜装置の陰極の一例を模式的に示す斜視図である。 本発明の他の実施の形態に係るアーク式成膜装置の磁界発生手段を説明する図である。 従来のアーク式成膜装置におけるアークスポットの移動を説明する図である。 従来のアーク式成膜装置におけるアークスポット近傍の様子を模式的に示す断面図である。 アークスポット近傍の領域を説明する図である。
以下、実施の形態に基づき、図面を参照しつつ本発明を説明する。具体的には、先ず、アーク式成膜装置の基本的な構成について説明し、その後、本発明の特徴部分である成膜中の陰極の温度について説明をし、その後、成膜方法について説明する。
[1]アーク式成膜装置
1.基本的な構成
最初に、本実施の形態に係るアーク式成膜装置の基本的な構成について説明する。図1は本実施の形態に係るアーク式成膜装置の基本的な構成を示す概略図である。
本発明に用いられるアーク式成膜装置10の基本的な構成は、従来のアーク式成膜装置と同様である。具体的には、アーク式成膜装置10は、真空チャンバー1と、基材保持手段2と、陰極保持手段3と、陰極4と、電源6、7と、トリガー電極8を備えている。なお、図1中の符号5はシャッターであり、9は抵抗である。
(1)真空チャンバー
真空チャンバー1には排気口11が設けられており、排気口11に連結されたターボ分子ポンプやロータリーポンプなどの排気手段(図示省略)によって真空チャンバー1の内部を真空排気することができる。また、真空チャンバー1は電気的にアースされている。
(2)基材および基材保持手段
基材保持手段2は、真空チャンバー1内に収容されており、成膜対象となる基材20を保持する。また、基材保持手段2は真空チャンバー1と絶縁されている。なお、図1においては、1つの基材20を保持する基材保持手段2を示しているが、複数の基材を保持することができるような基材保持手段を用いることもできる。
(3)陰極および陰極保持手段
陰極保持手段3は、真空チャンバー1内に収容されており、基材保持手段2に保持された基材20と対向するように陰極4を保持できるように構成されている。なお、陰極4はカーボンを主成分とする材料で構成されており、等方性黒鉛、異方性黒鉛、多孔質黒鉛、C/Cコンポジットなどを用いることができる。また、これらの粉体の集合体に替えて、グラッシーカーボンやパイロカーボンを用いてもよい。このようなグラッシーカーボンやパイロカーボンを用いることにより、スパークや粉砕粒子の発生をより適切に抑制することができる。
(4)電源
このアーク式成膜装置10においては、基材保持手段2に電源6が接続されており、基材保持手段2を介して基材20に負の電圧を印加できるように構成されている。同様に、陰極保持手段3にも電源7が接続されており、陰極保持手段3を介して陰極4に負の電圧を印加できるように構成されている。
(5)トリガー電極
トリガー電極8は、先端が陰極4の先端と対向するように取り付けられている。トリガー電極8は、例えばモリブデン(Mo)から構成されており、負の電圧が印加された陰極4にトリガー電極8の先端を接触させることにより、陰極4と真空チャンバー1との間でアーク放電を発生させることができる。
(6)磁界発生手段
また、アークスポットの移動を制御するために磁界発生手段、例えば図5に示すコイル12が設けられていることが好ましい。このコイル12は、磁力線Mと陰極4の側面とのなす角度θが、陰極4の先端T側が鋭角になるように陰極4の周囲に磁界を発生させるように構成されている。
前記したように、このような磁界を生じさせる磁界発生手段を設けた場合、アークスポットは磁力線Mが鋭角になっている方向に向けて移動する性質があるため、アークスポットが陰極4の先端に留まり、陰極4の先端T側から順次カーボンを消費させることができ、陰極4の利用効率を従来よりも向上させることができる。
2.成膜中の陰極の温度について
次に、本発明の特徴部である成膜中の陰極の温度について説明する。図2は本実施の形態に係るアーク式成膜装置におけるアークスポット近傍の様子を模式的に示す断面図である。
本実施の形態に係るアーク式成膜装置は、少なくとも、従来、粉砕粒子43が発生していた部分、即ち、陰極4のアークスポット31近傍の領域での温度を500〜3000℃(好ましくは1000〜3000℃)にする手段を備えていることを特徴とする。これにより、図2に示すアークスポット31近傍のアークスポット直近部分41とその周囲42との温度差を小さくして、アークスポット直近部分41の周囲42において発生する熱歪みを小さくすることができる。この結果、熱歪みによるクラックの発生を防止し、粉砕粒子43(図7参照)の発生を抑制することができる。なお、陰極4のカーボンの昇華温度(3500℃程度)を考慮して、成膜中の陰極4の温度は3000℃以下に設定される。
本実施の形態においては、アークスポット直近部分41とその周囲42との温度差を小さくする手段として、陰極4を外部から加熱する加熱手段を設ける手段と、陰極4を自己加熱によって昇温させる手段の少なくとも一方の手段を用いて、成膜中の少なくとも陰極4のアークスポット近傍の領域の温度を500〜3000℃にする。以下、各々の手段の具体的な例を説明する。
(1)加熱手段の場合
先ず、陰極4を外部から加熱する加熱手段を設けて、少なくとも陰極4のアークスポット31近傍の領域の温度を500〜3000℃にする手段の具体例について説明する。
(a)ヒーター
陰極4を外部から加熱する加熱手段としては、例えばヒーターが挙げられる。このヒーターとしては、例えば、電熱線を利用したヒーターを用いることができる。このようなヒーターは、構造が簡単で温度制御も容易であるため、少なくとも陰極4のアークスポット31近傍の領域を500〜3000℃に確実に加熱することができ、好ましく用いることができる。なお、加熱手段としてヒーターを用いる場合には、例えば、陰極保持手段3にヒーターを内蔵させて陰極保持手段3を介して陰極4を加熱する方法など挙げられる。
(b)誘導加熱装置
次に、加熱手段として誘導加熱装置を用いることもできる。この誘導加熱装置としては、周知の誘導加熱装置を用いることができる。加熱手段として誘導加熱装置を用いる場合、加熱手段を陰極4から離れた位置に設置しても、少なくとも陰極4のアークスポット31近傍の領域を500〜3000℃に加熱できるため、アーク式成膜装置10の構造上、ヒーターなどを設けることが難しい場合に好ましく用いることができる。
(c)電子ビーム加熱装置
次に、加熱手段として電子ビーム加熱装置を用いることもできる。電子ビーム加熱装置を用いる場合には、電子銃を真空チャンバー内に設けて、この電子銃から電子ビームを陰極に照射することによって陰極を加熱する。この電子ビーム加熱装置についても、誘導加熱装置と同様に、離れた位置から陰極4を加熱できるため、設置位置の自由度が高い。
(d)レーザー加熱装置
加熱手段としてレーザー加熱装置を用いた場合も、上記と同様に、離れた位置から陰極を加熱できるため好ましい。
(2)陰極の自己加熱による場合
次に、上記したような加熱手段を別途設けることなく、陰極4の自己加熱により陰極4の温度を500〜3000℃にする手段について説明する。この手段においては、アークスポット31で発生した熱やアーク電流による陰極4の抵抗発熱など、アーク放電中に陰極4で生じた熱により陰極4自体を加熱し、少なくとも陰極4のアークスポット31近傍の領域の温度を500〜3000℃にする。以下、具体的な手段について説明する。
(a)直径が細い陰極の使用
従来のアーク式成膜装置においては、図4に示すような円柱状の陰極4を用いる場合、陰極4の直径Dを50〜70mmにしている。しかし、この陰極4を従来よりも細くして直径Dを20mm以下にすると、アークスポットで発生した熱が細い陰極に溜まるため、アークスポットで生じた熱により少なくとも陰極4のアークスポット31近傍の領域の温度を500〜3000℃にすることができる。
具体的には、従来のように直径D50〜70mmの一般的な陰極4を用いた場合、アークスポット31(図7参照)で生じた熱は陰極4の広い範囲に分散するため、陰極4が昇温しにくい。このため、陰極4の温度が500℃以下になってアークスポット直近部分41とその周囲42との間に大きな温度差が生じてクラックの発生を招きやすい。
これに対して、直径D20mm以下という細い陰極4を用いた場合は、上記したようにアークスポットで発生した熱が細い陰極に溜まるため、アークスポット31(図2参照)で生じた熱によって、少なくとも陰極4のアークスポット31近傍の領域を500〜3000℃に昇温させることができる。なお、陰極4の直径Dは5mm以下であるとより好ましく、3mm以下であるとさらに好ましい。
また、直径D20mm以下という細い陰極4を用いた場合、アーク電流が流れる際の断面積が小さくなるため、従来の太さの陰極を用いた場合よりも抵抗が高くなる。これにより、アーク電流が陰極4に流れた際に陰極4を十分に発熱させることができる。
このように、直径D20mm以下という細い陰極4を用いることにより、アークスポット31で発生した熱と、陰極4の抵抗発熱により陰極4全体を昇温させて500〜3000℃に容易にすることができる。
細い円柱状の陰極4を用いる場合、円柱状の陰極4の一端を保持するような陰極保持手段3(図3参照)が用いられるが、このときの陰極保持手段3に、円柱状の陰極4を基材20に向けて順次送り出す送り出し機構を設けることが好ましい。これにより、陰極が短くなった際に適宜送り出すことができるようになり、陰極4を交換する回数を減らして、安定したアーク放電を長時間持続させることができる。
(b)多孔質陰極の使用
陰極の自己加熱により陰極を500〜3000℃にする手段としては、陰極4に多孔質の陰極を用いることも好ましい。このよう多孔質の陰極を用いた場合には、同じ太さであっても、空孔により陰極の実体積が小さくなるため、上記した細い陰極を用いた場合と同様に、アークスポットにおいて生じる熱と、アーク電流による抵抗発熱の両方で陰極4を昇温させることができ、少なくとも陰極4のアークスポット31近傍の領域の温度を500〜3000℃に容易にすることができる。
(c)冷却手段の制御
また、上記した各手段に替えて、一般的なアーク式成膜装置に設けられている陰極の冷却手段を制御して、少なくとも陰極4のアークスポット31近傍の領域の温度を500〜3000℃にすることも1つの手段である。
具体的には、一般的なアーク式成膜装置には、アーク放電中の温度上昇によって陰極全体が溶融あるいは昇華して陰極保持手段から脱落することを防止するために、陰極を冷却するための冷却手段が設けられている。
しかし、このような陰極の脱落は、前記したように、比較的に融点が低い金属材料(Tiなど)を陰極に用いた場合に生じるものであり、本発明のようにDLC膜を成膜する際には昇華温度の高いカーボンを主成分とする陰極が用いられるため、陰極を冷却する必要性が低い。
このため、DLC膜を成膜する際に、この冷却手段による冷却の程度を従来よりも弱めるように制御すれば、陰極の温度を従来よりも高くすることができる。
[2]アーク式成膜方法
次に、上記構成のアーク式成膜装置を用いて行う本実施の形態に係るアーク式成膜方法について説明する。先ず、図1に示すようなアーク式成膜装置を用いた成膜方法の内、従来の成膜方法と同様である成膜方法の概要について説明した後、本発明の成膜方法の特徴的な部分について説明する。
1.成膜方法の概要
先ず、陰極4を陰極保持手段3にセットすると共に、基材20を基材保持手段2にセットした後、真空チャンバー1内を排気して所定の真空度(10−4〜10−3Pa)にする。
次に、電源6から基材20に負のバイアス電圧(0〜−300V)を印加し、電源7から陰極4に(−15〜−50V)の負の電圧を印加する。
そして、トリガー電極8の先端を陰極4に接触させた後に離間させる。これにより、真空チャンバー1と陰極4との間にアーク放電(80A程度)を生じさせる。これにより、陰極4にアークスポット31が形成され、このアークスポット31において陰極4のカーボンが昇華する。
この状態で、シャッター5を開くことによって、昇華したカーボンが基材20の表面に蒸着してDLC膜が成膜される。
2.本実施の形態に係るアーク式成膜方法の特徴
本実施の形態においては、上記した成膜中の少なくとも陰極4のアークスポット31近傍の領域の温度を500〜3000℃にすることにより、図2に示すように、アークスポット31近傍のアークスポット直近部分41と、その周囲42との温度差を小さくして、熱歪みによるクラックの発生を抑制し、粉砕粒子の放出を抑制する。
例えば、上記したヒーター等の加熱手段を用いて陰極4の温度を500〜3000℃にする場合には、トリガー電極8の先端を陰極4に接触させる前に加熱手段を稼働させ、アーク放電の開始前に少なくとも陰極4のアークスポット31近傍の領域の温度を500〜3000℃に予め昇温させる。これにより、アークスポット31近傍のアークスポット直近部分41と、その周囲42との温度差を小さくした状態でアーク放電を行うことができるため、クラックによる粉砕粒子の放出を抑制することができる。
また、陰極4の自己加熱により少なくとも陰極4のアークスポット31近傍の領域の温度を500〜3000℃にする場合には、例えば、図4に示す直径Dが20mm以下の細い陰極4を取り付けてアーク放電を開始する。そして、アークスポット31で発生した熱とアーク電流による抵抗発熱によって陰極4全体が昇温するが、このときに細い陰極が使用されているため、発生した熱が細い陰極に留まり、十分高温にすることができる。
そして、陰極4が500℃以上になった時点で、シャッター5を開いて成膜を開始する。これにより、成膜中の陰極4において、アークスポット直近部分41とその周囲42との温度差を小さくしてクラックによる粉砕粒子の放出を抑制することができる。
そして、上記のように粉砕粒子の放出を抑制することにより、基材上に平滑なDLC膜を安定して成膜することができるため、例えば、レンズ成形用の金型においてはピンホールが少なく、高品質のレンズの成形が可能となり、また、ピストンリング、バルブリフター、ピストンピンなどの自動車部品や工具等においては、剥離の起点となる粉砕粒子が取り込まれることが防止されるため、長期間に亘って品質の低下を招かない。
[1]実験1
実験1においては、陰極を加熱する加熱手段としてヒーターを設け、成膜中の陰極をヒーターで加熱して、粉砕粒子の放出を抑制することができる陰極の温度を調べた。
1.実験例1〜4
具体的には、従来のアーク式成膜装置にヒーターを設置して、表1に示す陰極の温度となるように制御して実験例1〜4を行った。なお、ヒーター温度以外の具体的な成膜条件は以下の通りにした。
陰極 :長さ 30mm
直径 50mm
基材 :テスト用の基材(高速度工具鋼製)
真空度 :1×10−3Pa
バイアス電圧 :−50V
アーク電圧 :−20V
アーク放電電流 :50A
成膜時間 :20min
2.評価
(1)陰極の温度
各実験例において、赤外放射温度計を用いて、成膜中の陰極の温度を測定した。結果を表1に示す。
(2)DLC膜の表面粗さ
各実験例において成膜されたDLC膜について、表面粗さ計を用いて表面形状を測定し、測定結果に基づいて表面粗さ(十点平均粗さ)を算出した。結果を表1に示す。
(3)火花放出量の観察
アーク放電中の陰極のアークスポットの周辺から火花が放出される量を目視で観察した。結果を表1に示す。
Figure 0006528050
表1より、ヒーターにより陰極を加熱して、成膜中の陰極の温度を500℃以上にした実験例2〜4では、成膜されたDLC膜の表面粗さが、陰極の温度を500℃未満にした実験例1よりも小さくなっていることが分かる。このことから、ヒーターを用いて、成膜中の陰極の温度を500℃以上にすることにより、クラックによる粉砕粒子の放出を適切に抑制できることが確認できた。なお、カーボンの昇華温度を考慮すると、成膜中の陰極4の温度の上限は3000℃である。
また、陰極の温度を1000℃にした実験例4においては、表面粗さが実験例2、3よりも顕著に小さくなっていることが分かる。このことから、成膜時の陰極の温度は1000℃以上が好ましいことが分かる。
また、陰極を500℃以上に加熱している実験例2〜4では、実験例1よりも火花の放出量が少なくなっており、スパークの発生を抑制できることが確認できた。
[2]実験2
実験2においては、陰極4の自己加熱によって粉砕粒子の放出を抑制することができるかについて実験を行った。
1.実験例5〜9
具体的には、陰極4の直径がそれぞれ異なるアーク式成膜装置を用いて、DLC膜の成膜を行った(実験例5〜9)。具体的には、表2に示すように、陰極4の直径について、実験例5〜9でそれぞれ異ならせて5種類の成膜を行った。
陰極 :長さ30mmの焼結カーボン
基材 :テスト用の基材(高速度工具鋼製)
真空度 :1×10−3Pa
バイアス電圧 :−50V
アーク電圧 :−20V
アーク電流 :50A
成膜時間 :5min
2.評価
実験1と同じ方法を用いて、陰極の温度、成膜後のDLC膜の表面粗さを測定すると共に、火花の放出量を観察した。結果を表2に示す。
Figure 0006528050
表2より、陰極の直径が20mm以下の実験例5〜実験例7では、成膜中の陰極が500℃以上に加熱されていることが分かり、また、陰極の直径が小さくなるに従って、成膜中の陰極の温度が高くなっていることが分かる。
そして、実験例5〜7においては、実験例8、9に比べて成膜されたDLC膜の表面粗さが小さくなっており、陰極の直径が小さい方が、成膜されたDLC膜の表面粗さが小さくなっていることが分かる。また、火花の放出量も少なくなっていることが分かる。このことから、直径が20mm以下の陰極を用いることにより陰極の温度を500℃以上にすることができ、クラックによる粉砕粒子の放出を適切に抑制できることが確認できた。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
1 真空チャンバー
2 基材保持手段
3 陰極保持手段
4 陰極
5 シャッター
6、7 電源
8 トリガー電極
9 抵抗
10 アーク式成膜装置
11 排気口
12 コイル
20 基材
31 アークスポット
41 アークスポット直近部分
42 アークスポット直近部分の周囲
43 粉砕粒子
44 昇華したカーボン
D 陰極の直径
M 磁力線
T 陰極の先端
θ 陰極の軸方向と磁力線のなす角度

Claims (17)

  1. カーボンを主成分とする陰極材料を用いてアーク放電を行うことにより、前記陰極表面に形成されたアークスポットから前記カーボンを昇華させて、基材表面にカーボンを主成分とする炭素膜を成膜するアーク式成膜装置であって、
    前記陰極を保持する陰極保持手段と、
    前記基材を保持する基材保持手段と、
    前記陰極保持手段および前記基材保持手段が収容された真空チャンバーとを備えており、
    成膜中、少なくとも前記陰極の前記アークスポット近傍の領域の温度を500〜3000℃にする手段を備えており、
    前記陰極が円柱状の陰極であり、
    前記円柱状の陰極の軸方向と磁力線とのなす角度が、前記陰極の先端側が鋭角になるように磁界を生じさせる磁界発生手段を備えていることを特徴とするアーク式成膜装置。
  2. 成膜中の少なくとも前記陰極の前記アークスポット近傍の領域の温度を1000〜3000℃にする手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のアーク式成膜装置。
  3. 少なくとも前記陰極の前記アークスポット近傍の領域を加熱して前記陰極の温度を500〜3000℃にする加熱手段を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアーク式成膜装置。
  4. 前記加熱手段が、前記陰極を外部から加熱するヒーターであることを特徴とする請求項3に記載のアーク式成膜装置。
  5. 前記加熱手段が、前記陰極を誘導加熱する誘導加熱装置であることを特徴とする請求項3に記載のアーク式成膜装置。
  6. 前記加熱手段が、前記陰極に電子ビームを照射して前記陰極を加熱する電子ビーム加熱装置であることを特徴とする請求項3に記載のアーク式成膜装置。
  7. 前記加熱手段が、前記陰極にレーザー光を照射して前記陰極を加熱するレーザー加熱装置であることを特徴とする請求項3に記載のアーク式成膜装置。
  8. 前記陰極の自己加熱によって、少なくとも前記陰極の前記アークスポット近傍の領域の温度が500〜3000℃となるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアーク式成膜装置。
  9. 前記陰極の自己加熱が、前記アークスポットにおいて発生した熱により行われることを特徴とする請求項8に記載のアーク式成膜装置。
  10. 前記陰極の自己加熱が、アーク電流により発生した抵抗発熱により行われることを特徴とする請求項8に記載のアーク式成膜装置。
  11. 前記陰極が、直径20mm以下の円柱状の陰極であることを特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載のアーク式成膜装置。
  12. 前記陰極が多孔質の陰極であることを特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載のアーク式成膜装置。
  13. 前記陰極を冷却する冷却手段と、少なくとも前記陰極の前記アークスポット近傍の領域の温度が500〜3000℃となるように前記冷却手段を制御する冷却制御手段とを備えていることを特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載のアーク式成膜装置。
  14. 前記陰極を加熱する加熱手段による熱と、前記陰極の自己加熱によって発生する熱を併用することにより少なくとも前記陰極の前記アークスポット近傍の領域の温度が500〜3000℃となるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアーク式成膜装置。
  15. 前記陰極を加熱する加熱手段が、ヒーター、誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱のいずれかであり、
    前記陰極の自己加熱が、前記アークスポットにおいて発生した熱および/または前記陰極の抵抗発熱により行なわれることを特徴とする請求項14に記載のアーク式成膜装置。
  16. 前記円柱状の陰極を前記基材に向けて送り出す送り出し機構を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載のアーク式成膜装置。
  17. 請求項1ないし請求項1のいずれか1項に記載のアーク式成膜装置を用いて、
    少なくとも前記陰極の前記アークスポット近傍の領域の温度を500〜3000℃にしながら前記炭素膜を成膜することを特徴とする成膜方法。
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