JP6524542B2 - 培地用繊維基材および繊維集合体の製造方法、ならびに培地用繊維基材の製造装置 - Google Patents

培地用繊維基材および繊維集合体の製造方法、ならびに培地用繊維基材の製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、培地および繊維集合体の製造方法、ならびに培地の製造装置に関し、特に、一方向に配列した繊維を備える培地および繊維集合体の生産性の向上に関する。
近年、生物組織や微生物を培養するための培地として、繊維基材が注目されている(特許文献1参照)。繊維基材は、例えば、織物、編物あるいは不織布であり、三次元の構造を備える。そのため、in vitroで生理的環境に近い状態で、生物組織や微生物を培養することができる。
特表2010−517590号公報
生物組織や微生物の成長に方向性が見られる場合、繊維基材を構成する繊維は、ある一方向に配列していることが望ましい。生物組織や微生物が成長し易くなるためである。しかし、通常、繊維基材は、繊維同士の交絡によって形状が保持されており、上記のような配列性を有さない。
本発明の一局面は、繊維の原料液をノズルから吐出して、前記繊維を生成させるとともに、前記繊維を、巻取回転体の周面に周回するように堆積させて、繊維集合体を形成する堆積工程と、前記巻取回転体を回転させながら、前記繊維集合体を基材に転写する転写工程と、を備え、前記巻取回転体の前記周面に、前記巻取回転体の回転軸に沿う方向に延伸する複数の帯状の凸部を備える、培地用繊維基材の製造方法に関する。
本発明の他の一局面は、一方向に配列した複数の繊維を備える繊維集合体の製造方法であって、繊維の原料液をノズルから吐出して、前記繊維を生成させるとともに、前記繊維を、巻取回転体の周面に周回するように堆積させる工程を備え、前記巻取回転体の前記周面に、前記巻取回転体の回転軸に沿う方向に延伸する複数の帯状の凸部を備える、繊維集合体の製造方法に関する。
本発明の他の一局面は、繊維の原料液をノズルから吐出して、前記繊維を生成させるとともに、前記繊維を、巻取回転体の周面に周回するように堆積させて、繊維集合体を形成する堆積部と、前記巻取回転体を回転させながら、前記繊維集合体を基材に転写する転写部と、を備え、前記巻取回転体が、その周面に、前記巻取回転体の回転軸に沿う方向に延伸する複数の帯状の凸部を備える、培地用繊維基材の製造装置に関する。
本発明に係る製造方法および製造装置によれば、一方向に配列した繊維を備える培地(培地用繊維基材)および繊維集合体を、効率よく製造することができる。
本発明に係る巻取回転体の一例を示す斜視図(a)および平面図(b)である。 本発明に係る巻取回転体の他の例を示す分解側面図である。 本発明に係る巻取回転体のさらに他の例を示す斜視図である。 回転基体の複数の溝の間に形成されたリブを利用して周面に凸部を備える巻取回転体を得る方法の各工程における回転基体の一例を模式的に示す要部側面図である((a)、(b))。 回転基体の複数の溝の間に形成されたリブを利用して周面に凸部を備える巻取回転体を得る方法の各工程における回転基体の他の一例を模式的に示す要部側面図である((a)、(b))。 回転基体の複数の溝の間に形成されたリブを利用して得られた周面に凸部を備える巻取回転体の一例を示す要部側面図である。 回転基体の複数の溝の間に形成されたリブを利用して得られた周面に凸部を備える巻取回転体の他の例を示す要部側面図である。 回転基体の複数の溝の間に形成されたリブを利用して得られた周面に凸部を備える巻取回転体のさらに他の例を示す要部側面図である。 本発明に係る製造方法の各工程における巻取回転体および基材を模式的に示す側面図である((a)〜(c))。 本発明に係る他の製造方法の各工程における巻取回転体および基材を模式的に示す側面図である((a)、(b))。 本発明に係る製造方法の加熱工程における巻取回転体および基材を模式的に示す側面図である。 本発明に係る他の製造方法の加熱工程における巻取回転体および基材を模式的に示す側面図である。 本発明に係る製造方法のプラズマ処理工程における巻取回転体および基材を模式的に示す側面図である。 本発明に係るさらに他の製造方法の各工程における巻取回転体および基材を模式的に示す側面図である((a)〜(c))。 本発明に係るさらに他の製造方法の転写工程における巻取回転体および基材を模式的に示す側面図である。 転写工程における巻取回転体および基材の一部を模式的に示す側面図である((a)、(b))。 繊維の配列を説明するための繊維集合体の一部の領域の概略上面図である。
繊維を紡糸しながら巻取回転体で巻き取っていくことにより、巻取回転体の周面に形成される繊維集合体は、高い配列性を備える培地として有用である。しかし、その配列性を保持したまま基材に転写することは容易ではない。繊維同士は、巻取回転体から繊維集合体を剥離したときに、その配列を維持できる程度に交絡していないためである。
本実施形態では、繊維の一方向への配列を維持した状態で繊維集合体を基材に転写するために、図1(a)および(b)に示すように、巻取回転体10の周面に、巻取回転体10の回転軸Aに沿う方向に延伸する複数の帯状の凸部10Pを配置する。これにより、巻取回転体10の周面に周回するように配列した繊維21の集合体(繊維集合体20)は、巻取回転体10から剥離され易くなる。その結果、繊維21の配列を維持したまま、繊維集合体20を基材に容易に転写することができる。図1(a)は、巻取回転体10の一例を示す斜視図であり、図1(b)は、その平面図である。図1では、巻取回転体10の周面に堆積する繊維集合体20の一部も併せて示している。
繊維21は、巻取回転体10の周面を周回する方向(以下、配列方向D21)に配列しながら、巻取回転体10の周面に堆積される。配列方向D21は、例えば、巻取回転体10の回転方向(すなわち、巻取回転体10の回転軸Aに垂直な方向)に沿う方向である。配列方向D21と回転軸Aとのなす角度θ21(ただし、θ21≦90°)は、例えば、60°以上、90°以下でもよい。なお、配列方向D21は、繊維21を巻取回転体10の周面の法線方向から見たときの、繊維21の長手方向である(図1(b)参照)。繊維21の長手方向は、巻取回転体10の周面の法線方向から見たときの繊維21の近似直線をとって、求めてもよい。角度θ21は、複数の繊維21の配列方向D21と回転軸Aとのなす角度の平均値である。巻取回転体10に堆積する複数の繊維21の配列方向D21は、上記範囲内で互いに異なっていてもよい。
凸部10Pは、帯状であって、巻取回転体10の周面において、巻取回転体10の回転軸Aに沿う方向(以下、延伸方向D)に延伸している。延伸方向Dは、回転軸Aに平行である場合に限られず、延伸方向Dと回転軸Aとのなす角度θ(ただし、θ<90°)は、例えば、0°以上、30°以下である。なかでも、繊維集合体20の剥離性の観点から、角度θは0°以上、20°以下であることが好ましい。
また、延伸方向Dは、繊維21の配列方向D21と交差する方向である。延伸方向Dと配列方向D21とのなす角度θ(ただし、θ≦90°)は、例えば、60°以上、90°以下である。なお、延伸方向Dは、凸部10Pを巻取回転体10の周面の法線方向から見たとき、凸部10Pの長手方向の中心線LCPが延伸する方向である。中心線LCPが曲線を含む場合、延伸方向Dは、中心線LCPを囲む最小の矩形の中心線が延伸する方向である。後述するリブ10Rの延伸方向Dも同様にして求められる。
凸部10Pの形状は、帯状である限り特に限定されない。帯状とは、凸部10Pの延伸方向Dの長さが、延伸方向Dに垂直な方向の長さよりも長い形状である。凸部10Pを巻取回転体10の周面の法線方向から見たときの形状としては、例えば、矩形、台形等が挙げられる。
凸部10Pの数は特に限定されず、2本以上であればよい。なかでも、繊維集合体20の剥離性の観点から、巻取回転体10の周面に3本以上配置されることが好ましく、10本以上配置されることが好ましい。また、同様の観点から、凸部10Pは等間隔に配置されることが好ましい。なお、後述するように、繊維集合体20の基材30(図9(c)参照)への転写工程に先立って、繊維集合体20が巻取回転体10に捲回された状態で切断される場合、切断後の繊維集合体20の少なくとも一部が凸部10Pに接触した状態になるよう、繊維集合体20は凸部10P同士の間で切断される。これにより、繊維21の配列が維持され易くなる。この場合、切断予定箇所C(図2参照)の凸部10P同士の間隔を、他の部分の凸部10P同士の間隔よりも小さくすることが好ましい。
凸部10Pの短手方向の長さ(幅)は特に限定されない。なかでも、繊維集合体20の剥離性の観点から、すべての凸部10Pの巻取回転体10の周面に当接する総面積が、巻取回転体10の周面の表面積の10%以上、80%以下、特に30%以上、70%以下になるように、各凸部10Pの幅を決定することが好ましい。凸部10Pの延伸方向Dの長さも特に限定されない。なかでも、巻取回転体10の周面のうち、少なくとも繊維21が堆積し得る領域にわたって、凸部10Pが延伸していることが好ましい。
凸部10Pの高さは特に限定されない。なかでも、繊維21の弛みを抑制し、一方向への配列を維持し易い点で、凸部10Pの高さは過度に高くないことが好ましい。繊維集合体20の剥離性および繊維21の弛み抑制の観点から、凸部10Pの高さは100〜5000μmであることが好ましい。凸部10Pの高さは、巻取回転体10の周面の法線方向における平均値である。
凸部10Pの材質は特に限定されず、各種樹脂材料が挙げられる。なかでも、凸部10Pは、少なくとも繊維21との接触部にシリコーンゴム層を備えることが好ましい。繊維集合体20の剥離性がさらに向上するためである。一方で、シリコーンゴムは適度な粘着性を備えるため、転写工程の前に繊維集合体20が巻取回転体10の周面から剥離することが抑制される。
シリコーンゴムとは、主鎖がケイ素−酸素結合(シロキサン結合)により形成される、非熱可塑性の化合物である。シリコーンゴムとしては、例えば、メチルシリコーンゴム、ビニル−メチルシリコーンゴム、フェニル−メチルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、フロロシリコーンゴム等が挙げられる。もちろん、凸部10Pの全体がシリコーンゴムにより形成されていてもよい。なお、後述するように、繊維21が電界紡糸法により生成される場合、凸部10Pは導電性を備えることが好ましい。
取扱い性の観点から、凸部10Pは、巻取回転体10に着脱可能な状態で配置されることが好ましい。例えば、図2に示すように、支持シート121と、支持シート121の表面に帯状に配置されたシリコーンゴム122とを備える凹凸シート12を準備し、この凹凸シート12を回転基体11の周囲に捲回してもよい。このとき、シリコーンゴム122が凸部10Pに対応する。この構成により、凸部10Pの配設が容易となるとともに、凸部10Pが劣化した場合の交換も容易となる。
支持シート121の材質は特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリイミド等が挙げられる。繊維21が電界紡糸法により生成される場合、支持シート121もまた導電性を備えることが好ましい。支持シート121の厚みも特に限定されず、支持シート121の材質等に応じて適宜設定すればよい。シリコーンゴム122としては、上記した化合物が例示できる。
また、基材30への転写工程の際に、繊維21の配列が維持され易い点で、巻取回転体10の周面に、図3に示すように、回転軸Aと交差する方向に延伸するリブ10Rを配置することが好ましい。
転写工程は、巻取回転体10を回転させながら行われる。巻取回転体10の周面あるいは凸部10Pの表面に形成された繊維集合体20が、順次、基材30に当接することにより、繊維集合体20は基材30に転写される。繊維集合体20は、図15(a)に示すように、複数の凸部10Pの近傍では、巻取回転体10の周面から浮き上がった状態で形成されている。転写の際、凸部10Pは、図15(b)に示すように、基材30に当接して変形する。そのため、凸部10Pの近傍の浮き上がった繊維集合体20に弛みが生じ易く、転写によって繊維21の配列が乱れる場合がある。
リブ10Rが配置される場合、基材30は、巻取回転体10の周面ではなく、リブ10Rに当接する。よって、凸部10Pの変形の程度が小さくなる。そのため、転写の際に生じる繊維集合体20の弛みが抑制されて、繊維21の配列性が維持される。リブ10Rの高さは、転写工程における凸部10Pの変形を抑制する観点から、凸部10Pの高さ以上であることが好ましい。
リブ10Rは、例えば図3に示すように、回転軸Aと交差する方向に延伸している。図3では、リブ10Rは、巻取回転体10の周面を回転方向に沿って周回するとともに、複数の凸部10Pの端部を連結するように、巻取回転体10の端部近傍に配置されている。リブ10Rの延伸方向Dと回転軸Aとのなす角度(ただし、≦90°)は、例えば、60°以上、90°以下である。
リブ10Rは、図3で示される形状に限定されない。例えば、巻取回転体10を回転軸A方向から見たとき、リブ10Rは、凸部10P同士の間を埋めるように、断続的に配置されていてもよい。リブ10Rの数は特に限定されないが、転写の安定性の観点から、2以上であることが好ましい。リブ10Rの材質は特に限定されず、凸部10Pと同じであってもよい。
図4(b)に示すように、周面に複数の凸部210Pを有する巻取回転体210は、回転基体211を備えることが好ましい。回転基体211は、その表面(周面)に、回転基体211の回転軸に沿う方向に延伸する複数の溝213を備え、互いに隣り合う溝213の間に、リブ212が形成されている。すなわち、回転基体211の周面に、回転基体211の回転軸に沿う方向に延伸する複数のリブ212と溝213とが、交互に形成されている。リブ212は、凸部210Pの一部を構成している。図4(b)に示すように、凸部210Pは、シリコーンゴム層214を備える。この場合、リブ212を利用することで、シリコーンゴム層214の厚みを大きくしなくても、巻取回転体210の周面に、高さの大きな凸部210Pを形成することができる。シリコーンゴム層214の厚みは、例えば、0.01〜3mmである。凸部210Pの高さは、例えば、1〜15mmである。
繊維集合体を、巻取回転体から剥離し易くするために、シリコーンゴム層の厚みを大きくすると、シリコーンゴム層の側面が大きくなり、巻取回転体の回転によりシリコーンゴム層の側面が受ける空気抵抗が大きくなる。また、シリコーンゴム層の重量が増えて、巻取回転体の回転時にシリコーンゴム層にかかる遠心力が大きくなる。一方、リブ212を利用してシリコーンゴム層214を薄くすることで、シリコーンゴム層214の側面が受ける空気抵抗やシリコーンゴム層214にかかる遠心力を小さくすることができ、シリコーンゴム層214の剥離を抑制することができる。
以下、回転基体の複数の溝の間に形成されたリブを利用して周面に凸部を備える巻取回転体を得る方法の一例を示す。まず、図4(a)に示すように、回転基体211の前駆体となる柱状体211Sの平滑な周面に、成膜技術を用いてシリコーンゴム層214を形成する。次に、図4(b)に示すように、柱状体211Sの周面をシリコーンゴム層214とともに削り取り、柱状体211Sの回転軸に沿う方向に延伸する溝213を形成する。同様の操作を、柱状体211Sの周面に沿って所定間隔で繰り返す。このようにして、周面に複数のリブ212と溝213とが交互に形成された回転基体211を得るとともに、互いに隣り合う溝213の間にリブ212およびシリコーンゴム層214を備える複数の凸部210Pを形成することができる。すなわち、凸部210Pを周面に備える巻取回転体210を得ることができる。上記において、成膜技術を用いて柱状体211Sの表面にシリコーンゴム層214を形成する代わりに、支持シート(PETシートなど)と、支持シートの表面に配されたシリコーンゴム層とを備える複合シートを、柱状体211Sの周面に接着剤などを用いて貼り付けてもよい。
以下、回転基体の複数の溝の間に形成されたリブを利用して周面に凸部を備える巻取回転体を得る方法の他の例を示す。
図5(a)に示すように、周面に、回転基体311の回転軸に沿う方向に延伸する複数のリブ312と溝313とが交互に形成された回転基体311を準備し、成膜技術を用いて回転基体311の周面にシリコーンゴム層314を形成する。次に、図5(b)に示すように、シリコーンゴム層314のうち、複数の溝313に形成された部分を削り取る。このようにして、互いに隣り合う溝313の間にリブ312およびシリコーンゴム層314を備える複数の凸部310Pを形成することができる。すなわち、複数の凸部310Pを周面に備える巻取回転体310を得ることができる。
回転基体311の代わりに、図6に示す回転基体411を用いてもよい。回転基体411は、その周面に、2段階の凸形状を有するリブ412と、溝413とを交互に備える。上記と同様の手法により、図6に示すように、互いに隣り合う溝413の間に、2段階の凸形状を有するリブ412と、シリコーンゴム層414とを備える複数の凸部410Pを形成することができる。すなわち、複数の凸部410Pを周面に備える巻取回転体410を得ることができる。リブ412を2段階の凸形状とすることで、繊維集合体を巻取回転体410から更に剥離し易くなる。
また、図7に示すように、周面に、回転基体511の回転軸に沿う方向に延伸する複数のリブ512と溝513とが交互に形成された回転基体511を準備し、回転基体511の周面全体に複合シート514を接着剤などを用いて貼り付けてもよい。複合シート514は、支持シート(PETシートなど)と、支持シートの表面に配されたシリコーンゴム層とを備える。このとき、互いに隣り合う溝513の間にリブ512および複合シート514を備える複数の凸部510Pを形成することができる。すなわち、複数の凸部510Pを周面に備える巻取回転体510を得ることができる。この場合、複合シート514は、複数のリブ512の表面だけでなく、互いに隣り合うリブ512の間に形成される溝513の表面にも配される。
上記において、回転基体511の周面に配された複合シート514のうち、複数の溝513の表面に配された部分を取り除いてもよい。また、回転基体511の複数のリブ512の表面のみに複合シート514を貼り付けてもよい。ただし、回転基体511の周面全体に複合シート514を貼り付けるほうが作業し易い。また、回転基体511の周面全体に複合シート514を貼り付ける場合、巻取回転体の回転時にシリコーンゴム層の側面が受ける空気抵抗によりシリコーンゴム層が巻取回転体から脱落することがない。
回転基体511の代わりに、図8に示す回転基体611を用いてもよい。回転基体611は、その周面に、2段階の凸形状を有するリブ612と、溝613とを交互に備える。複合シート514と同じ構成の複合シート614を、回転基体611の周面全体に貼り付けることで、図8に示すように、互いに隣り合う溝613の間に、2段階の凸形状を有するリブ612と、複合シート614とを備える複数の凸部610Pを形成することができる。すなわち、複数の凸部610Pを周面に備える巻取回転体610を得ることができる。
以下、図面を参照しながら、上記巻取回転体10を用いる本発明を詳細に説明する。
本実施形態に係る培地(培地用繊維基材)の製造方法は、繊維21の原料液をノズルから吐出して、繊維21を生成させるとともに、繊維21を、巻取回転体10の周面に周回するように堆積させて、繊維集合体20を形成する堆積工程と、巻取回転体10を回転させながら、繊維集合体20を基材30に転写する転写工程と、を具備する。
上記の製造方法は、繊維21の原料液をノズルから吐出して、繊維21を生成させるとともに、繊維21を、巻取回転体10の周面に周回するように堆積させて、繊維集合体20を形成する堆積部と、巻取回転体10を回転させながら、繊維集合体20を基材に転写する転写部と、を備える装置により製造される。
さらに、本実施形態では、繊維21の原料液をノズルから吐出して、繊維21を生成させるとともに、繊維21を、巻取回転体10の周面を周回するように堆積させる工程を備える方法により、繊維集合体20が製造される。巻取回転体10の周面に形成された繊維集合体20は、必要に応じて離型紙に転写される。繊維集合体20は、単独で培地として使用され得る。
以下、本実施形態に係る製造方法および製造装置について、主に図9を参照しながら、詳細に説明する。図9(a)〜(c)は、本実施形態の各工程における巻取回転体10および基材30等を模式的に示す側面図である。
(1)堆積工程(図9(a))
本工程では、原料液22から繊維21を生成させるとともに、繊維21を巻取回転体10の周面を1周以上、周回させながら堆積させる。これにより、巻取回転体10の周面には、繊維集合体20が形成される。
原料液22から繊維21を生成する方法(紡糸法)は特に限定されず、生成させる繊維21の種類等に応じて適宜選択すればよい。紡糸法としては、例えば、溶液紡糸法、溶融紡糸法および電界紡糸法等が挙げられる。
溶液紡糸法は、繊維21の原料を溶媒に溶解して得られた溶液を、原料液22として用いる方法である。溶媒を用いる溶液紡糸法には、いわゆる湿式紡糸法および乾式紡糸法がある。湿式紡糸法では、原料液22を凝固液中に吐出して、繊維21の原料と凝固液との化学反応により、あるいは、溶媒と凝固液との置換により、繊維が形成される。乾式紡糸法では、原料液22を空気中に吐出した後、加熱等により溶媒を除去することにより、繊維21が形成される。なかでも、繊維21を一方向に配列させた状態で堆積させ易い点で、乾式紡糸法が好ましい。
溶融紡糸法は、繊維21の原料を加熱して溶融させた溶融液を、原料液22として用いる方法である。得られた原料液22は、空気中に吐出された後、冷却されることにより、繊維状に固化する。この場合、通常、繊維21の原料を溶解するための溶媒は使用しない。よって、溶融紡糸法は、溶媒の除去作業が省略できる点で好ましい。
溶液紡糸法および溶融紡糸法では、原料液22の吐出開始前に、ノズル51の吐出口を、巻取回転体10の周面あるいはその他の部材(以下、吐出端保持部材。図示せず)に当接させた後、この状態で原料液22の吐出を開始する。これにより、原料液22の吐出端は、巻取回転体10の周面あるいは吐出端保持部材によって確保され、そのまま保持される。巻取回転体10の周面に吐出端を保持させた場合には、そのまま原料液22の吐出を継続しながら、巻取回転体10を回転させることにより、繊維21は、巻取回転体10の周面を周回しながら堆積していく。吐出端保持部材に吐出端を保持させた場合には、そのまま原料液22の吐出を継続しながら、ノズル51の吐出口を吐出端保持部材の近傍から回転する巻取回転体10の近傍にまで移動させることにより、生成した繊維21は巻取回転体10に堆積していく。このとき、巻取回転体10あるいはノズル51を、例えば回転軸A方向に移動させながら原料液22を吐出することにより、巻取回転体10の周面の少なくとも一部を覆い、配列方向D21に配列する繊維21を備える繊維集合体20が形成される。
電界紡糸法は、繊維21の原料を溶媒に溶解して得られた溶液を原料液22として用いる点で、溶液紡糸法と共通する。しかし、電界紡糸法では、原料液22に高電圧を印加しながら空気中に吐出する。原料液22に含まれる溶媒は、巻取回転体10の周面に到達するまでの過程において揮発する。
電界紡糸法では、原料液22に高電圧を印加するため、原料液22をプラスあるいはマイナスに帯電させる。このとき、巻取回転体10をグランドさせるか、あるいは、原料液22とは逆の極性に帯電させることにより、空気中に吐出された原料液22の吐出端は巻取回転体10に引き寄せられて、その周面に付着する。そして、原料液22を吐出しながら巻取回転体10を回転させることにより、溶液紡糸法および溶融紡糸法と同様に、繊維21は、巻取回転体10の周面に周回しながら堆積し、巻取回転体10の周面の少なくとも一部を覆い、配列方向D21に配列する繊維21を備える繊維集合体20が形成される。
(原料液)
溶液紡糸法や電界紡糸法で利用する原料液22は、繊維21の原料と溶媒とを含む。溶融紡糸法で利用する原料液22は、溶融した繊維21の原料を含む。繊維21の原料としては、生物組織や微生物の培地として用いることができる限り特に限定されない。なかでも、生物組織や微生物に対する親和性が高く、培養する際、生物組織や微生物にストレスを与え難い点で、繊維21の原料は、ポリスチレンブロックおよびポリブタジエンブロックを含むブロックポリマーと、当該ブロックポリマーとは異なるスチレン樹脂と、を含むことが好ましい。
ブロックポリマーは、例えば、ポリブタジエン(PB)ブロックとポリスチレン(PS)ブロックとが連結したジブロック体であってもよいが、PBブロックとPSブロックとが交互に連結したトリブロック体以上のポリブロック体が好ましい。ブロックポリマーは、スチレン樹脂との親和性を確保する観点から、少なくとも末端にPSブロックを含むことが好ましい。PBブロックは、得られる繊維21の柔軟性や伸度を高める。
ブロックポリマー中のPBブロックの含有量は、例えば、10〜30質量%であり、15〜30質量%であることが好ましく、20〜30質量%または20〜25質量%であることがさらに好ましい。PBブロックの含有量がこのような範囲である場合、スチレン樹脂との親和性が高くなって、均質な繊維21が生成され易くなる。また、得られる繊維21は高い柔軟性および伸度を備える。さらに、繊維21を電界紡糸法により生成させる場合、高い曳糸性が確保される。
スチレン樹脂としては、上記のブロックポリマーとは異なるポリマーが使用される。スチレン樹脂としては、例えば、ポリスチレン(スチレンホモポリマー)、スチレンと他の共重合性モノマーとの共重合体が挙げられる。スチレン樹脂は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせてもよい。
繊維21の柔軟性と形成し易さとを両立させる観点から、ブロックポリマーとスチレン樹脂との質量比(=ブロックポリマー:スチレン樹脂)は、例えば、2:1〜1:5であり、好ましくは1:1〜1:4である。特に、溶液を用いる電界紡糸法により繊維集合体20を形成する場合には、質量比がこのような範囲であると、ブロックポリマーおよびスチレン樹脂を溶媒に溶解し易く、高い紡糸性を確保することもできる。
溶媒としては、繊維21の原料を溶解し、揮発などにより除去可能なものであれば特に制限されず、原料の種類や製造条件に応じて、水および有機溶媒から適宜選択して使用できる。溶媒としては、非プロトン性の極性有機溶媒が好ましい。このような溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド(鎖状または環状アミドなど);ジメチルスルホキシドなどのスルホキシドなどが挙げられる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
原料液22の固形分濃度は、溶媒の種類などに応じて調節できるが、例えば、5〜50質量%であり、10〜30質量%であってもよい。原料液22は、必要に応じてさらに添加剤を含んでもよい。
(繊維)
上記原料液22から生成される繊維21は、上記ブロックポリマーおよびスチレン樹脂、さらには、必要に応じて添加剤を含む。繊維21の平均繊維径は、例えば、0.5μm〜10が好ましく、1〜5μmがより好ましく、1.5〜4μmが特に好ましい。
なお、平均繊維径とは、繊維21の直径の平均値である。繊維21の直径とは、繊維21の長さ方向に対して垂直な断面の直径である。そのような断面が円形でない場合には、最大径を直径と見なしてよい。また、繊維集合体20の1つの主面の法線方向から見たときの、繊維21の長さ方向に対して垂直な方向の幅を、繊維の直径と見なしてもよい。平均繊維径は、例えば、繊維集合体20に含まれる任意の10本の繊維の任意の箇所の直径の平均値である。
(繊維集合体)
繊維集合体20は、複数の繊維21の集合体である。繊維集合体20において、複数の繊維21は一方向に配列している。複数の繊維21が一方向に配列しているとは、繊維集合体20において、繊維21同士が交差していないか、繊維21同士が交わる平均的な角度が、0°を超え60°以下であることをいう。このように、複数の繊維21が配列した状態である場合、その繊維21の配列方向に沿って繊維21が伸び易いため、生物組織や微生物へのストレスも低減できる。よって、繊維21の配列方向に沿って生物組織や微生物が成長し易くなる。
ここで、繊維21同士が交わる平均的な角度は、繊維21の平均的な長さ方向の交わりから決定できる。繊維21の平均的な長さ方向は、例えば、繊維集合体20をその法線方向から見たときのSEM写真に基づいて決定することができる。図16は、繊維の配列を説明するための繊維集合体の概略上面図である。図16では、繊維集合体20を法線方向から撮影したSEM写真における繊維集合体20の状態を模している。複数の繊維21で構成される繊維集合体20を法線方向から見て、所定のサイズ(例えば、100μm×100μm)の正方形の領域Rを設定する。このとき、領域Rは、領域R内に12本以上の繊維21が入り、かつ領域R内に位置する繊維21の50%以上が領域Rの対向する2辺と交差するように決定する。この領域Rにおいて、ある繊維21が、上記の対向する2辺と交差する2点間を結んだ直線(図16では点線)の方向を、その繊維21の平均的な長さ方向とする。
繊維21同士が交わる平均的な角度は、例えば、上記領域Rにおいて、任意に選択した複数(例えば、20本)の繊維21から、さらに任意に2本の繊維21を選択し、各繊維21の平均的な長さ方向が交わる角度(例えば、図16のθ1)を求める。別の2本の繊維21を選択し、各繊維21の平均的な長さ方向が交わる角度(例えば、図16のθ2)を求める。このような作業を、選択した残りの繊維21(例えば、16本)について行う。そして、それぞれの角度の平均を算出し、繊維21同士が交わる平均的な角度とする。
繊維集合体20の単位面積に占める繊維21の面積の割合は10〜90%から選択できる。例えば、心筋細胞の培養や電位測定装置に利用する場合には、繊維集合体20はごく薄く、単位面積当たりに占める繊維21の割合は20〜50%であり、30〜40%で均一に分散して堆積していることが好ましい。なお、繊維21の面積の割合は、繊維集合体20の一方の主面(例えば、上面)において、繊維集合体20における所定の面積(例えば、短軸3mm×長軸6mmの楕円形)の領域において、光沢度計により光沢度を測定し、繊維21と繊維21以外の領域との光沢度の違いに基づき、繊維21が占める面積を算出し、単位面積当たりの面積比率(%)に換算することにより求めることができる。
(基材)
基材30は特に限定されず、従来の培地(足場も含む)に利用されるものを用いることができる。基材30としては、培養する生物組織や微生物の種類などに応じて、樹脂フィルム、カンテン層、ゼラチン層、不織布などの多孔質基材、あるいは、これらの組み合わせが挙げられる。
不織布に含まれる繊維の材質は特に限定されず、例えば、ガラス繊維、セルロース、セルロース誘導体(エーテル、エステルなど)、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが例示される。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。不織布に含まれる繊維は、これらの材質を一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。
(巻取回転体)
巻取回転体10(回転基体11)の構成は、回転可能である限り特に限定されず、ドラム状であってもよいし、複数のロールで張架されたベルトであってもよい。後者の場合、少なくとも1本のロールを回転駆動させて、ベルトを回転させる。巻取回転体10の材質としては、例えば、金属材料、各種樹脂、各種ゴム、セラミックスおよびこれらの組み合わせが挙げられる。巻取回転体10がベルトである場合、ベルトは、金属ベルトであってもよいし、樹脂ベルトであってもよい。電界紡糸法により繊維21が紡糸される場合、樹脂ベルトは導電性を備えることが好ましく、さらには、樹脂ベルトのノズル51に対向する部分の裏側に、導電性の部材(例えば金属部材)を配置することが好ましい。巻取回転体10の外形は、例えば、円柱または角柱であってもよい。
(2−1)接着剤付与工程(図9(b)、図10)
後述する転写工程の前に、繊維集合体20および基材30の少なくとも一方に、接着剤4aを付与する接着剤付与工程を備えることが好ましい。繊維集合体20と基材30との接着性が高まり、剥離が抑制されるためである。
繊維集合体20に接着剤4aを付与する場合、接着剤付与工程(図9(b))は、堆積工程(図9(a))の後、転写工程(図9(c))の前に行われる。接着剤4aの種類は特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、ホットメルト樹脂または紫外線硬化樹脂等が挙げられる。
シリコーン樹脂は、感圧接着剤とも言われており、その粘着性により、繊維集合体20と基材30とを接着する。シリコーン樹脂としては、例えば、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等が挙げられる。ホットメルト樹脂は、加熱されながら繊維集合体20に塗布され、冷却されることによって、繊維集合体20と基材30とを接着する。ホットメルト樹脂の材質は特に限定されず、例えば、ポリウレタン(PU)、PET等のポリエステル、ウレタン変性共重合ポリエステル等の共重合ポリエステル、PA、ポリオレフィン(例えば、PP、PE)等の熱可塑性樹脂を主成分(50質量%以上を占める成分)として含む。
紫外線硬化樹脂は、紫外線照射により重合して硬化することにより、繊維集合体20と基材30とを接着する。紫外線硬化樹脂の種類は特に限定されず、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。紫外線硬化樹脂を用いる場合、転写工程の前に紫外線硬化樹脂に紫外線を照射し、半硬化状態にしておくことが好ましい。この場合、転写工程において繊維集合体20と基材30とが当接した後、さらに紫外線照射を行って、紫外線硬化樹脂を完全に硬化させる。転写工程における紫外線照射は、例えば基材30側から行う。
接着剤4aとしては、硬化させるための特別なステップが省略できる点で、ホットメルト樹脂およびシリコーン樹脂が好ましく、さらに、接着剤を溶融させるための加熱装置が不要である点で、シリコーン樹脂が好ましい。また、硬化が速やかに進行する点で、紫外線硬化樹脂が好ましい。接着剤4aは、例えばディスペンサー55により付与される。
接着剤4aは、繊維集合体20の凸部10Pに対応する領域に付与されることが好ましい。この場合、繊維集合体20および基材30は、接着剤4aを介在させた状態で、凸部10PとXZステージ52に支持された架台53とで押圧される。よって、繊維集合体20と基材30との接着性が向上する。XZステージ52は、架台53、ひいては架台53に載置される基材30を、回転軸Aに垂直な方向(X軸方向)および上下方向(Z軸方向)に搬送することができる。
シリコーン樹脂等の感圧接着剤は、フィルム状に成形された後、繊維集合体20あるいは基材30に付与されてもよい。図10に、フィルム状の感圧接着剤4bを基材30に付与する場合の接着剤付与工程を示す。この場合、フィルム状の感圧接着剤4bを基材30に付与するタイミングは、転写工程の前であれば特に限定されない。例えば、架台53に載置される前に、基材30にフィルム状の感圧接着剤4bを付与してもよい。図10(a)は、図9(a)に対応している。
接着剤(4aまたは4b)の付与量は、特に限定されない。なかでも、繊維集合体20と基材30との接着性を確保しながら生物組織や微生物の培養を阻害しないようにする観点から、0.5〜100mg/cmであることが好ましい。
(2−2)加熱工程(図11A、図11B)
転写工程の前に、接着剤付与工程に替えて、あるいは、接着剤付与工程に加えて、繊維集合体20および基材30の少なくとも一方を加熱する加熱工程を備えていてもよい。転写工程の前に繊維集合体20を加熱することにより、繊維集合体20は軟化した状態で基材30に転写される。これにより、繊維集合体20と基材30との密着性が向上する。また、転写工程の前に基材30を加熱することにより、転写後、繊維集合体20に熱が伝わって軟化する。これにより、繊維集合体20と基材30との密着性が向上する。なかでも、基材30を加熱する方法は、繊維21の劣化が抑制できる点で好ましい。
繊維集合体20を加熱する場合、例えば、図11Aに示すように、基材30の近傍に加熱装置54Aを配置して、転写される直前の繊維集合体20を加熱することが好ましい。このとき、繊維集合体20は、例えば、回転軸Aに沿ったライン状に加熱される。繊維21の配列が維持できる点で、加熱装置54Aは非接触式であることが好ましい。非接触式の加熱装置54Aとしては特に限定されず、ハロゲンランプ等、公知のものを適宜選択すればよい。加熱温度は、繊維21の軟化点あるいは融点等を考慮して、適宜設定すればよい。加熱温度は、例えば、繊維21が80〜140℃になるように調整する。
基材30を加熱する場合、例えば図11Bに示すように、基材30が載置される架台53とXZステージ52との間に加熱装置54Bを配置する。この場合、加熱装置54Bとしては、基材30全体を加熱することのできるパネルヒータ等を用いることが好ましい。基材30の温度ムラが抑制されるためである。この場合の加熱温度も、繊維21の軟化点あるいは融点等を考慮して、適宜設定すればよい。加熱温度は、例えば、基材30の表面が80〜140℃になるように調整する。
(2−3)プラズマ処理工程(図12)
転写工程の前に、接着剤付与工程および加熱工程に替えて、あるいは、接着剤付与工程および/または加熱工程に加えて、繊維集合体20にプラズマ照射するプラズマ処理工程を備えていてもよい。繊維集合体20の少なくとも基材30に当接する主面にプラズマを照射することにより、繊維集合体20と基材30との密着性が向上する。なお、繊維集合体20を基材30に転写した後、繊維集合体20の基材30とは反対側の主面に、さらにプラズマ照射してもよい。培地100で培養される生物組織や微生物の電位の変化を測定するために、繊維集合体20と電極(例えば、白金電極)とを接続する場合、プラズマ照射によって電極と繊維集合体20との密着性も向上する。
繊維集合体20にプラズマ照射する場合、例えば図12に示すように、巻取回転体10の周面に対峙するようにプラズマ照射装置56を配置する。プラズマ照射装置56としては特に限定されないが、真空チャンバを用いることなく処理できる点で、大気圧下でプラズマ照射可能な装置であることが好ましい。プラズマ照射等の条件も特に限定されず、繊維集合体20が損傷しないよう適宜設定すればよい。
(3)切断工程(図9(b))
転写工程に先立って、繊維集合体20は、巻取回転体10に捲回された状態で切断予定箇所Cにおいて切断される。切断予定箇所Cは、例えば、基材30の形状に沿って設定される。繊維集合体20は、例えば、回転軸Aに沿う方向に切断される。この切断部をきっかけにして、繊維集合体20は基材30に転写される。切断装置57としては特に限定されず、例えば、長尺カッター等が挙げられる。
基材30の回転軸Aに垂直な方向(X軸方向)の長さLが、巻取回転体10の円周よりも短い場合、図13(a)に示すように、繊維集合体20は、切断予定箇所C(C1、C2)に加えて、分離予定箇所Ca(Ca1、Ca2)およびCb(Cb1、Cb2)でさらに長さLに対応する長さに切断されてもよい。このときも、繊維集合体20は、例えば、基材30の形状に沿って切断される。なお、図13では、2箇所の分離予定箇所(CaおよびCb)が設定されており、巻取回転体10の周面には、3つの基材30に転写される3つの繊維集合体20が形成されている。
切断予定箇所C1とC2との間、分離予定箇所Ca1とCa2との間、および、分離予定箇所Cb1とCb2との間に位置する繊維集合体20は、基材30に転写されない不要な切断片である。このように、切断工程により不要な切断片が生じる場合、切断工程の後、転写工程の前に、切断片を除去するクリーニング工程を備えることが好ましい。工程が簡略化されて生産性が向上するとともに、得られる培地の品質が高まる。
クリーニングは、粘着層を備える粘着部材58(図13(b)参照)により行われる。粘着部材58としては、例えば、粘着テープや図13(b)に示す粘着ロール等が挙げられる。粘着ロールは、周面に粘着層(図示せず)を備え、例えば、巻取回転体10とは反対向きに回転可能である。粘着部材58は、巻取回転体10に対して接近および後退が可能である。巻取回転体10の回転によって不要な切断片が粘着部材58に対向するタイミングに合わせて、粘着部材58を巻取回転体10に接近させる。これにより、不要な切断片は粘着部材58の粘着層に粘着されて、巻取回転体10の周面から除去される。粘着層の材質は特に限定されず、例えば、アクリル粘着剤等が挙げられる。
(4)転写工程(図9(c))
本工程では、巻取回転体10を回転させながら、繊維集合体20を基材30に転写する。これにより、繊維集合体20および基材30を備える培地100が得られる。
基材30は、XZステージ52に支持された架台53に載置されて、搬送される。このとき、基材30は、巻取回転体10の周面の移動速度(周速)よりも相対的に速い速度で、X軸方向に搬送されることが好ましい。これにより、弛みがさらに抑制された状態で、繊維集合体20は基材30に転写される。
一方、転写工程では、基材30を、巻取回転体10の回転により搬送させてもよい。すなわち、図14に示すように、基材30を所定の位置にまで搬送した後、架台53を上昇して基材30を巻取回転体10に押し付ける。次いで、巻取回転体10を回転させて、凸部10Pと基材30との間に生じる摩擦力により基材30を搬送させてもよい。これにより、基材30の相対的な搬送速度が巻取回転体10の周速と同じになり、繊維集合体20の弛みが抑制される。また、基材30の位置合わせが容易となるため、繊維集合体20の転写ずれが抑制される。繊維集合体20が転写された後、速やかに架台53を降下して、基材30を巻取回転体10から離間させる。
(培地)
培地100は、繊維集合体20と基材30とを備える。基材30は、主に、繊維集合体20を支持するために用いられる。繊維集合体20は、単独でも培地として用いられ得る。
本発明により得られる培地および繊維集合体は、一方向に配列した繊維を備えるため、特に、成長に方向性がある生物組織または微生物を培養するための培地として有用である。
10、210、310、410、510、610:巻取回転体
10P、210P、310P、410P、510P、610P:凸部
10R:リブ
11、211、311、411、511、611:回転基体
12:凹凸シート
121:支持シート
122:シリコーンゴム
20:繊維集合体
21:繊維
22:原料液
30:基材
4a:接着剤
4b:フィルム状の感圧接着剤
51:ノズル
52:XZステージ
53:架台
54A、54B:加熱装置
55:ディスペンサー
56:プラズマ照射装置
57:切断装置
58:粘着部材
100:培地
211S:柱状体
212、312、412、512、612:リブ
213、313、413、513、613:溝
214、314、414:シリコーンゴム層
514、614:複合シート

Claims (17)

  1. 繊維の原料液をノズルから吐出して、前記繊維を生成させるとともに、前記繊維を、巻取回転体の周面に周回するように堆積させて、繊維集合体を形成する堆積工程と、
    前記巻取回転体を回転させながら、前記繊維集合体を基材に転写する転写工程と、を備え、
    前記巻取回転体の前記周面に、前記巻取回転体の回転軸に沿う方向に延伸する複数の帯状の凸部を備える、培地用繊維基材の製造方法。
  2. 前記凸部の少なくとも前記繊維との接触部に、シリコーンゴム層を備える、請求項1に記載の培地用繊維基材の製造方法。
  3. 前記巻取回転体が、回転基体と、前記回転基体の周囲に捲回された支持シートとを備え、
    前記凸部が、前記支持シートに配置されたシリコーンゴムにより形成される、請求項1に記載の培地用繊維基材の製造方法。
  4. 前記転写工程の前に、前記繊維集合体および前記基材の少なくとも一方に接着剤を付与する接着剤付与工程を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の培地用繊維基材の製造方法。
  5. 前記接着剤が、フィルム状の感圧接着剤である、請求項4に記載の培地用繊維基材の製造方法。
  6. 前記接着剤が、シリコーン樹脂、ホットメルト樹脂または紫外線硬化樹脂である、請求項4に記載の培地用繊維基材の製造方法。
  7. 前記転写工程の前に、前記繊維集合体および前記基材の少なくとも一方を加熱する加熱工程を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の培地用繊維基材の製造方法。
  8. 前記繊維集合体にプラズマ照射するプラズマ処理工程を備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の培地用繊維基材の製造方法。
  9. 前記巻取回転体の前記周面が、前記回転軸と交差する方向に延伸するリブを備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の培地用繊維基材の製造方法。
  10. 前記転写工程において、前記基材が前記巻取回転体の回転により搬送される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の培地用繊維基材の製造方法。
  11. 前記転写工程において、前記巻取回転体の前記周面の移動速度よりも速い速度で、前記基材を搬送する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の培地用繊維基材の製造方法。
  12. 前記基材の前記回転軸に垂直な方向の長さLが、前記巻取回転体の円周よりも短く、
    前記転写工程の前に、前記繊維集合体を、前記長さLに対応する長さに切断する切断工程を備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の培地用繊維基材の製造方法。
  13. 前記切断工程の後、粘着層を備える粘着部材を前記繊維集合体に当接させて、切断片を除去するクリーニング工程を備える、請求項12に記載の培地用繊維基材の製造方法。
  14. 前記巻取回転体が、回転基体を備え、
    前記回転基体の表面に、前記回転基体の回転軸に沿う方向に延伸する複数の溝が形成され、前記凸部の一部が、互いに隣り合う前記溝の間に形成されている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の培地用繊維基材の製造方法。
  15. 一方向に配列した複数の繊維を備える繊維集合体の製造方法であって、
    繊維の原料液をノズルから吐出して、前記繊維を生成させるとともに、前記繊維を、巻取回転体の周面に周回するように堆積させる工程を備え、
    前記巻取回転体の前記周面に、前記巻取回転体の回転軸に沿う方向に延伸する複数の帯状の凸部を備える、繊維集合体の製造方法。
  16. 繊維の原料液をノズルから吐出して、前記繊維を生成させるとともに、前記繊維を、巻取回転体の周面に周回するように堆積させて、繊維集合体を形成する堆積部と、
    前記巻取回転体を回転させながら、前記繊維集合体を基材に転写する転写部と、を備え、
    前記巻取回転体が、その周面に、前記巻取回転体の回転軸に沿う方向に延伸する複数の帯状の凸部を備える、培地用繊維基材の製造装置。
  17. 前記巻取回転体が、回転基体を備え、
    前記回転基体が、その表面に、前記回転基体の回転軸に沿う方向に延伸する複数の溝を備え、前記凸部の一部が、互いに隣り合う前記溝の間に形成されている、請求項16に記載の培地用繊維基材の製造装置。
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