JP6519632B2 - マイクロニードルデバイス - Google Patents
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Description
このうち、ソリッドタイプのマイクロニードルは、成形加工時の量産化が容易であること、上記マイクロニードルの製造工程とは別工程で薬剤の塗布工程を設けることができることから、薬剤に対して安定的な生産工程を選択することができるため注目されている。
しかしながら、従来のマイクロニードルデバイス110に用いられるマイクロニードル102としては、主として図32に例示するように、錐状の立体形状(図32においては四角錐)、すなわち先端から基材101側の根元に向かって側面に連続的な傾斜を有するものが用いられていることから、マイクロニードル102に通常の吐出法や浸漬法を用いて薬剤を塗布した場合は、図33に例示するように、マイクロニードル102の先端部分よりも根元部分により多くの薬剤40が塗布されてしまうという問題がある。そのため、このようなマイクロニードルデバイス110を用いて薬剤を投与した場合は、図34に例示するように、根元部分に保持された薬剤40が角質層表面に付着しやすくなり、角質層の貫通孔から角質層の下層へ十分な量の薬剤40を到達させることが困難となるといった問題がある。
なお、図32は、従来のマイクロニードルデバイスの一例を示す概略斜視図であり、図33は図32に例示するマイクロニードルに薬剤が塗布されたものを示す概略図であり、図34は図32に例示するマイクロニードルデバイスを用いた薬剤の投与方法の一例を説明する説明図である。
また、先端側に薬剤を選択的に塗布した場合は、マイクロニードル1本当たりに保持される薬剤の量が限られることから、投与に必要な量の薬剤を塗布することが困難となる場合がある。これに対しては、マイクロニードルデバイスに形成される単位面積当たりのマイクロニードルの数を増やして、マイクロニードルデバイス全体の薬剤の保持量を増やすことが検討されている。しかしながら、マイクロニードルデバイスにおいては、個々のマイクロニードルの立体形状が一定水準を満たすように形成される必要があることから、マイクロニードルの本数が多くなるほど欠陥が生じやすくなる傾向にある。また、薬剤塗布後のマイクロニードルデバイスについても個々のマイクロニードルに薬剤が塗布される必要があり、薬剤が塗布されていない部分を有する場合は投与の際に用いられなくなる場合がある。よって、マイクロニードルの数を増やした場合は、マイクロニードルデバイス自体の製造工程が煩雑になるといった問題や、得られたマイクロニードルデバイスに薬剤を塗布した後の検査が煩雑になるといった問題がある。
また、断面積増大面の高さを調整することにより、マイクロニードルの断面積増大面から先端側の表面に保持される薬剤の量を調整することが可能となる。
また、本発明によれば、上記断面積増大面を有することから、マイクロニードルの先端から根元に向かって薬剤を塗布する際に、先端から根元に向かう薬剤の流れを断面積増大面で抑制することができるため、断面積増大面から先端側の表面に選択的に薬剤を塗布することが可能となる。また、従来の薬剤の塗布方法に比べて、薬剤の粘度および塗布条件等の制限を緩和して薬剤を選択的に塗布することが可能となることから、薬剤の塗布工程を簡便な方法により行うことが可能となる。
また、上記断面積増大面を有することにより、マイクロニードル自体の表面積を大きくすることができるため、マイクロニードル1本当たりの薬剤の保持量を多くすることが可能となる。よって、マイクロニードルデバイスに形成されるマイクロニードルの本数を少なくした場合もマイクロニードルデバイス自体の薬剤の保持量を所望のものとすることが可能となる。よってマイクロニードルデバイスに形成されるマイクロニードルの数を少ないものとすることができることから、マイクロニードルデバイスの製造工程や、薬剤塗布後のマイクロニードルデバイスの検査工程等をより簡便に行うことが可能となる。
本発明のマイクロニードルデバイスは、基材と、上記基材上に形成され、皮膚を穿刺可能な錐体構造を含むマイクロニードルとを有し、上記マイクロニードルが、その先端から根元に向かって、上記基材表面に対して平行な断面積の増大の割合が非連続的に増大する部分に形成された断面積増大面を有することを特徴とする。
また、「基材表面に対して平行な断面積の増大の割合が非連続的に増大する」とは、マイクロニードルの断面積を横軸(x軸)に、マイクロニードルの高さを縦軸(y軸)にとったグラフにおいて、上記グラフの傾きが変化する部分が2箇所以上存在し、断面積の小さい値においては下に凸となる部分を、断面積の大きい値においては上に凸となる部分を有する部分が一箇所は存在していることをいう。
また、本発明における断面積増大面は、上記グラフにおいて、2つの部分の間に含まれる断面積の変化を示すものである。
また、断面積増大面の高さを調整することにより、マイクロニードルの断面積増大面から先端側の表面に保持される薬剤の量を調整することが可能となる。
また、本発明によれば、上記断面積増大面を有することから、マイクロニードルの先端から根元に向かって薬剤を塗布する際に、先端から根元に向かう薬剤の流れを断面積増大面で抑制することができるため、断面積増大面から先端側の表面に選択的に薬剤を塗布することが可能となる。また、従来の薬剤の塗布方法に比べて、薬剤の粘度および塗布条件等の制限を緩和して薬剤を選択的に塗布することが可能となることから、薬剤の塗布工程を簡便な方法により行うことが可能となる。
また、上記断面積増大面を有することにより、マイクロニードル自体の表面積を大きくすることができるため、マイクロニードル1本当たりの薬剤の保持量を多くすることが可能となる。よって、マイクロニードルデバイスに形成されるマイクロニードルの本数を少なくした場合もマイクロニードルデバイス自体の薬剤の保持量を所望のものとすることが可能となる。よってマイクロニードルデバイスに形成されるマイクロニードルの数を少ないものとすることができることから、マイクロニードルデバイスの製造工程や、薬剤塗布後のマイクロニードルデバイスの検査工程等をより簡便に行うことが可能となる。
以下、各態様についてそれぞれ説明する。
まず、本発明のマイクロニードルデバイスの第1態様について説明する。
本態様のマイクロニードルデバイスは、基材と、上記基材上に形成され、皮膚を穿刺可能な錐体構造を含むマイクロニードルとを有し、上記マイクロニードルが、その先端から根元に向かって、上記基材表面に対して平行な断面の断面積の増大の割合が非連続的に増大する部分に形成された断面積増大面を有し、上記マイクロニードル全体が上記錐体構造を有し、上記断面積増大面から先端側に、上記マイクロニードルの側面を上記錐体構造の軸方向に除去して形成された除去部を有することを特徴とする。
図1〜4に例示するように、本態様のマイクロニードルデバイス10は、基材1と、基材1上に形成され、皮膚を穿刺可能な錐体構造を含むマイクロニードル2とを有する。また、マイクロニードル2が、その先端から根元に向かって、基材1表面に対して平行な断面の断面積が非連続的に増大する部分に形成された断面積増大面21を有する。また、マイクロニードル2全体が錐体構造を有し、断面積増大面21から先端側に、マイクロニードル2の側面を錐体構造の軸Y方向に除去して形成された除去部22を有することを特徴とする。
本態様におけるマイクロニードル2は、図3(a)、(b)に例示するように、断面積増大面21と基材1表面とが平行であり、断面積増大面21に沿う断面において、根元側の断面(図3(b))の断面積が、先端側の断面(図3(a))の断面積よりも大きくなるものである。
また、図2に例示されるマイクロニードル2は、その全体が図3(c)に例示するように、錐体の頂点から底面まで連続する側面を有するものである。この例においては、マイクロニードル2の原型の立体形状が四角錐である例について示している。
また、図2、図3(d)および図4においては、断面積増大面21から先端側において、マイクロニードル2の側面に除去部22として、除去部22におけるマイクロニードル2の側面22a(以下、除去部の側面22aと称する場合がある)が曲面となる溝部22’が形成されている例について示している。また、この例において溝部22’については、その基材1表面に対して平行な断面形状が半楕円状であり、側面における溝部22’の形状が略三角形であるものを示している。
図8は、本態様のマイクロニードルデバイスを用いた薬剤の投与方法の一例について説明する説明図である。本態様のマイクロニードルデバイス10を用いて薬剤を投与する場合、薬剤40が塗布されたマイクロニードル2を皮膚の角質層に穿刺して角質層に貫通孔を開け、上記貫通孔からマイクロニードル2を角質層の下層の表皮等に到達させることによって投与が行われる。本態様のマイクロニードルデバイス10においては、マイクロニードル2が断面積増大面21を有する除去部22を有することにより、マイクロニードル2の先端側に保持される薬剤40の量を多く、マイクロニードル2の根元側に保持される薬剤40の量を少なくすることができるため、角質層の下層に到達する薬剤40の量を多くすることができ、また角質層表面に付着する薬剤40の量を少なくすることができる。また、除去部22に薬剤40が保持できることから、角質層と接触するマイクロニードル2の表面よりも内側にも薬剤40を保持することが可能となるため、穿刺の際に角質層に付着する薬剤40の量をより少なくすることができ、角質層の内部に到達する薬剤40の量をより多くすることが可能となる。
まず、本態様におけるマイクロニードルについて説明する。ここで、マイクロニードルは、本態様のマイクロニードルデバイスを用いて薬剤を体内に投与する際に、薬剤が塗布されるものであり、皮膚に穿刺して角質層に貫通孔を設け、貫通孔から角質層の下層へと薬剤を到達させるために用いられるものである。
本態様におけるマイクロニードルの構造について説明する。
本態様におけるマイクロニードルは、その先端から根元に向かって、上記基材表面に対して平行な断面の断面積の増大の割合が非連続的に増大する部分に形成された断面積増大面を有し、上記マイクロニードル全体が上記錐体構造を有し、上記断面積増大面から先端側に、上記マイクロニードルの側面を上記錐体構造の中心方向に除去して形成された除去部を有するものである。
また、上記原型の立体形状としてはより具体的には、上記原型の立体形状が錐体である場合は、円錐、多角錐を挙げることができ、錐体を有する柱体である場合は、円柱の一方の底面に円錐を有するものや、多角柱の一方の底面に多角錐を有するものを挙げることができる。また、本態様においては、錐体または錐状柱体の軸が錐体または錐状柱体の底面の中心を通るものを好適に用いることができるが、これに限定されるものではない。
本態様における断面積増大面について説明する。
本態様における断面積増大面は、マイクロニードルの先端から根元に向かって、基材表面に対して平行な断面の断面積の増大の割合が非連続的に増大する部分に形成されたものである。
また、上記断面積増大面は、マイクロニードルの側面に形成される除去部の根元側の端部に位置するものである。
上記断面積増大面と基材表面とのなす角を上記範囲以下とすることにより、上述した薬剤の流れをより好適に抑制し、その表面に薬剤を好適に堆積させることが可能となるからである。また、本態様においては、さらに断面積増大面と基材表面とのなす角が0°、すなわち、断面積増大面と基材表面とが平行となることが好ましい。薬剤の流れを効率的に制御することが可能となるからである。上記断面積増大面と基材表面とのなす角とは、例えば図9(b)においてθで示される角度をいう。また、図9(b)においては上記断面積増大面と基材表面とのなす角が+の値をとる例について示しているが、図示はしないが、断面積増大面の基材表面とのなす角が−の値、すなわち断面積増大面の傾きが図9(b)に例示される傾きと逆向きとなっていてもよい。
なお、図9は本態様におけるマイクロニードルデバイスの他の例について説明する説明図であり、図9(a)は本態様におけるマイクロニードルデバイスの他の例を示す概略斜視図であり、図9(b)は図9(a)のD’−D’線断面図である。また、図9(a)、(b)においては対向する2面に形成される断面積増大面の高さが同等であり、隣り合う面に形成される断面積増大面の高さが異なるものについて例示している。また、図9(a)、(b)において説明していない符号については図2等における符号と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。また、断面積増大面の高さとは図3(d)においてp1で示される距離をいう。また、断面積増大面が傾斜を有する場合は、基材表面から断面積増大面における高さの中間点までの垂直方向の距離をいい、例えば図9(b)においてp1’で示される距離をいうものとする。
具体的な断面積増大面の面積としては、マイクロニードルの原型の立体形状等により適宜選択されるものであるが、1000μm2〜225000μm2の範囲内、なかでも10000μm2〜150000μm2の範囲内、特に17500μm2〜125000μm2の範囲内であることが好ましい。
上記断面積増大面から先端側に、上記マイクロニードルの側面を上記錐体構造の軸方向に除去して形成された除去部を有するものである。
ここで溝部とは、上記除去部の側面が、除去部を有しないマイクロニードルの側面に対して凹部となるものであり、除去部の側面が曲面または2面以上となることをいう。
除去部が溝部である場合は、上述したように、本態様におけるマイクロニードルを用いて薬剤を投与した場合に、皮膚の角質層と接触するマイクロニードルの表面よりも内側に薬剤を保持し易くなることから、皮膚に穿刺の際に角質層に付着する薬剤をより少ないものとすることができ、また、穿刺により開いた角質層の孔から体内へより多くの薬剤を投与することが可能となる。
以下、本態様における溝部について説明する。
マイクロニードルの側面における溝部の形状(以下、溝部の形状と称する場合がある。)としては、例えば、略多角形状を挙げることができる。また、上記溝部の形状が略多角形状である場合、図1、図10(a)に例示するように、上記溝部22’の形状が略三形状であることが好ましい。溝部の体積を大きくすることが可能となることから薬剤をより多く保持することが可能となるからである。略多角形とは、多角形だけではなく、図1に例示するように角部の一部が曲線状に形成されている場合を含むものとする。
また、上記溝部22’の形状としては図11(a)、図12に例示するように線状を挙げることができる。また、溝部の形状が線状である場合は、図示はしないがその幅を一定のものとしてもよく、部分的に幅が異なっていてもよい。溝部の幅が部分的に異なる場合は、図11(a)、図12に例示するように根元側から先端側へ幅が小さくなるものであることが好ましい。また、上記溝部22’の形状が線状である場合は、マイクロニードルの側面に図11(a)に例示するように先端から根元方向に直線状に形成してもよく、図12に例示するようにらせん状に形成してもよい。
本態様における除去部としては、マイクロニードルの断面積増大面から先端側の表面積が、原型の立体形状における断面積増大面に相当する位置から先端側の表面積に対して、1.2倍以上、なかでも1.2倍〜2.0倍の範囲内、特に1.2倍〜1.5倍の範囲内となるように形成することが好ましい。マイクロニードルの断面積増大面から先端側の表面積が上述した範囲内となるように除去部を形成することにより、本態様におけるマイクロニードルの一本当たりの薬剤量を多くすることができることから、基材上に形成されるマイクロニードルの数を少なくすることができる。よって、本態様のマイクロニードルデバイスの製造工程や、薬剤塗布後のマイクロニードルデバイスの検査工程等を簡便に行うことが可能となる。
上述した説明においては、除去部として溝部を例に説明したが、本態様においては溝部以外の除去部についても用いることができる。このような除去部22としては、例えば、図13に例示するように、除去部の側面22aが1つの平面を有する切り欠き部22”を挙げることができる。切り欠き部の深さおよび幅については錐体構造の先端を損なわない程度であれば特に限定されない。
なお、図13は、本態様におけるマイクロニードルの他の例について説明する説明図であり、図13(a)は、本態様におけるマイクロニードルの他の例を示す概略斜視図であり、図13(b)は図13(a)に例示するマイクロニードルの断面積増大面を示す概略図である。
本態様におけるマイクロニードルは、その全体が錐体構造を有するものである。より具体的には、マイクロニードルの立体形状が、錐体の頂点から底面まで連続する側面を少なくとも一部に有する立体形状、また錐状柱体の頂点から底面まで連続する側面を少なくとも一部に有する立体形状である。
なお、図14は本態様におけるマイクロニードルの先端形状を説明する説明図である。
本態様のマイクロニードルデバイスに形成されるマイクロニードルの数としては、所望の薬剤を保持することが可能な程度であれば特に限定されず、マイクロニードルデバイスの用途等に応じて適宜選択されるものであるが、基材の単位面積当たり、1本/cm2〜5000本/cm2の範囲内、なかでも25本/cm2〜2500本/cm2の範囲内、
特に50本/cm2〜1000本/cm2の範囲内であることが好ましい。
また、本態様においては、マイクロニードルデバイスの製造の容易のため、および薬剤塗布後のマイクロニードルの検査の容易のため、上述した範囲内のなかでも、特に少ない本数であることが好ましい。
本態様に用いられるマイクロニードルの材料としては、所望のマイクロニードルを形成することが可能であれば特に限定されず、一般的なマイクロニードルデバイスに用いられるものと同様とすることができる。
具体的には、無機材料や、樹脂材料を挙げることができる。
無機材料としては、具体的には、シリコン、二酸化ケイ素、セラミック等を挙げることができる。また、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、モリブデン、クロム、コバルト等の金属を挙げることができる。
一方、樹脂材料としては、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリ乳酸−co−ポリグリコリド、プルラン、カプロノラクトン、ポリウレタン、ポリ無水物等の生分解性ポリマーを挙げることができる。また、非分解性ポリマーであるポリカーボネート、ポリメタクリル酸、エチレンビニルアセテート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオキシメチレン、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)を挙げることができる。
本態様に用いられるマイクロニードルは、通常、基材と一体で形成される。具体的な形成方法については、後述する「4.マイクロニードルの製造方法」と項で説明するため、ここでの説明は省略する。
本態様に用いられる基材は、上述したマイクロニードルを保持するものである。
このような基材としては、上述したマイクロニードルと一体であってもよく、別体であってもよいが、通常は、マイクロニードルと基材とは一体で形成される。
本態様のマイクロニードルデバイスは、上述した基材およびマイクロニードルを有するものであれば特に限定されず、上記以外にも必要な構成を適宜選択して追加することが可能である。
本態様のマイクロニードルデバイスの製造方法としては、基材上に上述したマイクロニードルを形成することが可能な製造方法であれば特に限定されず、一般的なマイクロニードルの製造方法と同様の製造方法を用いることができる。
本態様のマイクロニードルデバイスにおけるマイクロニードルへの薬剤の塗布方法としては、マイクロニードルの先端から根元部分に向かって薬剤を塗布することが可能な塗布方法であれば特に限定されない。例えば、インクジェット法、ディスペンサ法等の吐出法、ディップ法等の浸漬法を挙げることができる。
次に、本発明のマイクロニードルデバイスの第2態様について説明する。
本態様のマイクロニードルデバイスは、基材と、上記基材上に形成され、皮膚を穿刺可能な錐体構造を含むマイクロニードルとを有し、上記マイクロニードルが、その先端から根元に向かって、上記基材表面に対して平行な断面積の増大の割合が非連続的に増大する部分に形成された断面積増大面を有し、上記基材上に形成され、上記断面積増大面が段表面である少なくとも1つの段差部と、最上段の上記段差部の上記段表面に形成され、上記錐体構造を有する最上部とを有することを特徴とする。
図16〜図19に例示するように、本態様のマイクロニードルデバイス10は、基材1と、基材1上に形成され、皮膚を穿刺可能な錐体構造を含むマイクロニードル2とを有する。また、マイクロニードル2が、その先端から根元に向かって、基材1表面に対して平行な断面の断面積が非連続的に増大する部分に形成された断面積増大面21を有し、基材1上に形成され、上記断面積増大面21を段表面23aとする少なくとも1つの段差部23と、最上段の段差部23の段表面23aに形成され、錐体構造を有する最上部24とを有することを特徴とする。
図18(a)、(b)に例示するように、断面積増大面21が基材1表面に対して平行であり、断面積増大面21を含む断面においては、根元側の断面(図18(b))の断面積が、先端側の断面(図18(a))の断面積よりも大きくなるものである。
また、図17に例示されるマイクロニードル2は、四辺形状の底面形状を有し、基材表面に対して垂直方向の断面形状が台形状となる1つの段差部23と、四角錐の錐体構造を有する最上部21を有する例について示している。
また、図19に例示するように、段表面23である断面積増大面21の外周よりも内側に最上部の底面が存在するものである。
本態様においても、マイクロニードル2が段差部23を有することにより断面積増大面21を有することから、上述した「I.第1態様」の項で説明したように、先端から根元に向かう薬剤の流れを断面積増大面21によって抑制することが可能となる。よって、本態様においても、マイクロニードル2の断面積増大面21から先端側の表面、すなわち断面積増大面21および最上部24の表面に塗布される薬剤量を多くすることが可能となる。また、本態様においては、段差部23を有することから、最上部24の側面と段差部23の側面とが連続する部分を有さないため、先端から根元に向かう薬剤の流れをより効果的に抑制することが可能となる。また、図23、図24に例示するように、段差部23を複数形成することにより、最上部24が形成された段差部231の段表面231aから根元方向へ薬剤が流れだしたとしても、下段に位置する段差部232の段表面232aによりさらに根元方向へ薬剤が流れることを抑制することが可能となることから、マイクロニードルの根元部分に塗布される薬剤量をより少なくすることが可能となる。
図26は、本態様のマイクロニードルデバイスを用いた薬剤の投与方法の一例を示す説明図である。本態様のマイクロニードルデバイス10においては、マイクロニードル2が段差部を有することにより、断面積増大面21を有することが可能となることから、マイクロニードル2の先端側に保持される薬剤40の量を多く、マイクロニードルの根元側に保持される薬剤40の量を少なくすることができるため、角質層の下層に到達する薬剤40の量を多くすることができ、また角質層表面に付着する薬剤40の量を少なくすることができる。また、本態様においては最上部24の形状をより先鋭な形状とすることにより、より皮膚に穿刺して貫通孔を形成し易くすることができるため、体内に薬剤40をより良好に投与することが可能となる。
(1)マイクロニードルの構造
まず、本態様におけるマイクロニードルの構造について説明する。
本態様におけるマイクロニードルは、その先端から根元に向かって、上記基材方向に対して平行な断面の断面積の増大の割合が非連続的に増大する部分に形成された断面積増大面を有し、上記基材上に形成され、上記断面積増大面を段表面とする少なくとも1つの段差部と、最上段の上記段差部の上記段表面に形成され、上記錐体構造を有する最上部とを有するものである。
本態様における断面積増大面は、マイクロニードルの先端から根元に向かって、基材方向に対して平行な断面の断面積の増大の割合が非連続的に増大する部分に形成されたものである。
また、上記断面積増大面は、後述する段差部の段表面に位置するものである。
なお、本態様においてマイクロニードルが複数の段差部を有する場合は、最上部が形成されている断面積増大面の高さをいうものとし、図18(c)、図22においてp2で示される距離をいう。
本態様における段差部は、基材上に形成されるものであり、上述した断面積増大面を段表面とするものである。また、最上段の段表面上に後述する最上部が形成される。
1以上、なかでも1〜10の範囲内、特に1〜5の範囲内であることが好ましい。上記段差の数を上記範囲内とすることにより、より選択的にマイクロニードルの先端部分に薬剤を塗布することが可能となる。
また、上記段差の数の上限としては、マイクロニードルの用途等に応じて適宜選択されうものであるが、例えば、50程度である。上記値を超える場合は、マイクロニードルを安定的に形成することが困難となる可能性があるからである。
本態様における最上部は、最上段の段差部の段表面に形成され、錐体構造を有するものである。
本態様におけるマイクロニードルは、上述した段差部と、最上部とを有するものである。このようなマイクロニードル全体の立体形状としては、錐体構造を構成しないものとなる。
マイクロニードルについては、上述したマイクロニードルの構造以外については、上述した「I.第1態様」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本態様のマイクロニードルデバイスについては、上述したマイクロニードル以外の事項については、上述した「I.第1態様」の項目で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本発明のマイクロニードルデバイスは、上述した第1態様または第2態様で説明したいずれかのマイクロニードルを有するものであればよく、第1態様におけるマイクロニードルおよび第2態様におけるマイクロニードルの両方を有するものであってもよく、第1態様または第2態様におけるマイクロニードル以外の立体形状を有するマイクロニードルを含むものであってもよい。
(マイクロニードルデバイス用版の作製)
金属への切削加工にて底辺が0.35mm×0.35mm、高さ0.5mm、かつ先端から高さ0.25mmのところに段差があるように側面に凹部が形成された図29のような突起部を1mmピッチで縦横に10本ずつ配置した100本のマイクロニードルのマスター形状を作製してマスター版を得た。
次に、作成したマイクロニードルデバイスのマスター版のマイクロニードルの微細突起部を複製するために、上記マスター版から複製原版(マイクロニードルデバイス用版)を造るためニッケルを用いて電鋳を行い、上記マスター形状とは逆の凹版を有するマイクロニードル用デバイス用版を得た。
マイクロニードルデバイスの成形材料として、環状オレフィン系樹脂である、シクロオレフィンポリマーであるゼオノア(日本ゼオン社製:型番Zeonor 1060R)の厚さ2mmのシートを準備した。因みに、使用したシクロオレフィンポリマー1060Rのガラス転移温度:100℃、MFR:280℃、21.18N、60g/minである。
上記シクロオレフィンポリマーであるゼオノアシートをガラス転移温度(100℃)以上の120℃に加熱し、上述したマイクロニードルデバイス用版をガラス転移温度以上の120℃に加熱しながら、12MPaの圧力でゼオノアシートをプレス成型し、加圧プレスした状態のまま上記マイクロニードルデバイス用版を冷却し、十分に室温付近まで温度が下がってから、錐長方向に剥離するホットプレス(熱インプリント)を実施することで、上述したマスター形状と同様の形状を有する樹脂製のマイクロニードルデバイスが得られた。
マイクロニードルデバイス用版を以下のように作製したこと以外は実施例1と同様にしてマイクロニードルデバイスを作製した。
金属への切削加工にて底辺が0.35mm×0.35mm、高さ0.5mm、かつ先端から高さ0.25mmのところに段差を形成し、先端から0.25mmの高さまでの四角推状突起部の側面4面に対しては、さらに切削加工にてザグリ処理を実施することで凹部が形成された突起部を1mmピッチで縦横に10本ずつ配置した100本のマイクロニードルのマスター形状を作製してマスター版を得た。
次に、作成したマイクロニードルデバイスのマスター版のマイクロニードルの微細突起部を複製するために、上記マスター版から複製原版(マイクロニードルデバイス用版)を造るためニッケルを用いて電鋳を行い、上記マスター形状とは逆の凹版を有するマイクロニードル用デバイス用版を得た。
マイクロニードルデバイス用版を以下のように作製したこと以外は実施例と同様にしてマイクロニードルデバイスを作製した。
金属への切削加工にて底辺が0.25mm×0.25mm、高さ0.5mmの四角錘形状の突起部を1mmピッチで縦横に10本ずつ配置した100本のマイクロニードルのマスター形状を作製した(図30)。次に、作成したマイクロニードルデバイスのマスター版のマイクロニードルの微細突起部を複製するために、上記マスター版から複製原版(マイクロニードルデバイス用版)を造るためニッケルを用いて電鋳を行い、上記マスター形状とは逆の凹版を有するマイクロニードル用デバイス用版を得た。
(薬剤塗布後におけるマイクロニードルの表面の様子)
次のような薬液を調製して、ディスペンサ装置(武蔵エンジニアリング社製:SHOTminiα)を採用し、薬液を薬液供給ノズル開口部に定量分注することで、実施例1、2および比較例で製造したマイクロニードルデバイスのマイクロニードルに分注した薬液を接触転着し、塗着させた。
調製した薬液は、ポリビニルピロリドン(日本触媒社製:PVP K−90)0.06g)、カフェイン(和光純薬社製)0.02gを精製水1gに溶解させたものを使用した。
上記薬液をディスペンサ薬液分注装置の薬液収容部内に充填し、上記ディスペンサ薬液分注装置をセットし、マイクロニードルデバイスの基材上の100本のマイクロニードルの先端部分に対して上記ディスペンサ薬液分注装置のノズル(武蔵エンジニアリング社製:SN−LFシリーズ32G、ノズル開口部内径:0.1mmφ)に0.1MPa、0.05secで吐出できる所定量を定量分注した薬液を接触させ、マイクロニードル表面に転着塗着した。塗着工程は1本のマイクロニードルに対して1回行い、薬剤がコーティングされたマイクロニードルデバイスを得た。
塗着された際のコーティング形状を光学顕微鏡にて確認した。結果を図31に示す。なお、図31(a)は実施例1を光学顕微鏡によって撮影した写真であり、図31(b)は比較例を光学顕微鏡によって撮影した写真である。
実施例1、2、および比較例におけるマイクロニードルの先端から高さ0.25mmまでの表面に搭載されているカフェイン量を以下のようにして求めた。まず、薬剤塗着後のマイクロニードルデバイスをメタノール中で一昼夜攪拌し、高速液体クロマトグラフィー(High performance liquid chromatography)(HPLC)で定量し、平均値からそれぞれのデバイス上における100本のマイクロニードル当たりの薬物搭載量を確認した。比較例のサンプルは約0.25mm付近の高さに塗布が可能であったサンプルを用いて測定を行った。結果を表1に示す。なお、実施例1における最上部の側面の表面積と比較例における先端から0.25mm付近の高さまでの側面の表面積とは同等とすることができるものである。
2 … マイクロニードル
10 … マイクロニードル
21 … 断面積増大面
22 … 除去部
23、231、232 … 段差部
23a、231a、232a … 段表面
24 … 最上部
Claims (4)
- 基材と、
前記基材上に形成され、皮膚を穿刺可能な錐体構造を含むマイクロニードルと、を有し、
前記マイクロニードルの側面には、前記マイクロニードルの軸に対し、前記マイクロニードルの側面の傾きが2か所以上変化する領域である除去部が、前記錐体構造の周方向に2か所以上形成され、
前記除去部では、前記基材表面に対する前記マイクロニードルの側面の傾きの絶対値が小さい部分が前記マイクロニードルの側面の傾きの絶対値が大きい部分に挟まれており、
前記2か所以上形成された除去部の前記錐体構造の周方向の間には、前記マイクロニードルの軸に対する前記マイクロニードルの側面の傾きが、前記錐体構造の頂点から底辺まで変化しない領域である一定領域が形成され、かつ前記一定領域は前記除去部より外側に突出していることを特徴とするマイクロニードルデバイス。 - 前記マイクロニードルの原型の立体形状が、多角錐形状であり、
前記除去部は、前記多角錐形状の側面が前記多角錐形状の軸方向に凹む除去部により構成され、
前記一定領域は、前記多角錐形状の頂点から底辺に伸びる辺の部分で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードルデバイス。 - 前記マイクロニードルの原型の立体形状が、円錐形状であり、
前記除去部は、前記円錐形状の側面の一部が、前記円錐形状の軸方向に凹む除去部により構成され、
前記一定領域は、前記原型の円錐形状の側面で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードルデバイス。 - 前記基材表面に対する前記マイクロニードルの側面の傾きの絶対値が小さい部分の前記基材表面からの距離が、前記錐体構造の頂点から底面までの距離を1とした場合に、底面から0.3〜0.7の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のマイクロニードルデバイス。
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