JP6518022B1 - 高度不飽和脂肪酸含有組成物の製造方法 - Google Patents

高度不飽和脂肪酸含有組成物の製造方法

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Abstract

銀塩溶液の劣化を抑制しながら高度不飽和脂肪酸を製造する方法の提供。高度不飽和脂肪酸含有組成物の製造方法であって、高度不飽和脂肪酸のアルキルエステルを含有する原料液と銀塩を含む水性溶液とを、流路型攪拌機へ投入してそれらを接触させること;及び、該原料液と接触させた該銀塩を含む水性溶液を回収することを含み、該銀塩を含む水性溶液の、該流路型攪拌機への投入と、該回収とが並行して行われる、方法。

Description

本発明は、高度不飽和脂肪酸含有組成物の製造方法、及び当該製造方法に用いる銀塩溶液の劣化の抑制に関する。
エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)などの高度不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acid、PUFA)は、近年その薬理効果が明らかとなり、医薬品や健康食品の原料として利用されている。PUFAを化学合成によって得ることは容易ではないことから、現状では、工業利用されるPUFAのほとんどは、PUFAを豊富に含む海洋生物由来原料、例えば魚油などから抽出又は精製することによって製造されている。しかしながら、生物由来原料は、炭素数、二重結合の数や位置、さらには立体異性体の構成比などが異なる多種の脂肪酸の混合物であるため、PUFAの含有量は必ずしも高くない。そのため従来、生物由来原料から目的とするPUFAを選択的に精製することが求められていた。
特許文献1〜7には、PUFAを含む原料と銀塩を含む水溶液とを接触させてPUFAと銀との錯体を生成させ、水相に溶出させた後、該水相から有機溶媒を用いて高度不飽和脂肪酸を抽出する方法が記載されている。特許文献1〜7記載の方法では、多量の銀塩水溶液にPUFAを含む原料を投入し、好適にはこれを撹拌することで、該水溶液とPUFAを含む原料との接触を増やし、PUFAと銀との錯体の生成を促進させる。しかしながら、上記従来の方法は、大量のPUFAを得るためには大規模設備を必要とすること、またPUFAの抽出の都度、原料と接触させた銀塩水溶液のバッチを回収しなければならないことから、工業的に効率がよいものではない。また上記従来の方法では、銀塩水溶液と酸素との接触機会が多いため、銀塩水溶液の劣化が進みやすい。さらに、原料中に含まれる過酸化物もまた、銀塩水溶液の劣化の原因となる(特許文献7)。劣化した銀塩水溶液は、回収後、銀に再生し、さらに銀塩に再加工することで再使用することができる。しかし、銀の再生費用、及び銀塩への加工費用は高額であるため、多量の銀塩水溶液の使用とその劣化はPUFAの製造コストを増加させる。
特許第3001954号公報 特許第2786748号公報 特許第2935555号公報 特許第2895258号公報 特開2015−091940号公報 国際公開公報第2014/054435号 国際公開公報第2016/194360号
本発明は、より効率よく低コストにPUFAを製造することができ、かつPUFA製造に用いる銀塩溶液の劣化を抑えることができる方法を提供することに関する。
本発明者らは、銀塩溶液を用いたPUFAの製造において、該銀塩溶液と原料油脂とを接触させるための反応槽として流路型攪拌機を用いて、該銀塩溶液の反応槽への投入と、原料油脂と接触した該銀塩溶液の回収とを並行して行うことによって、PUFAと銀との錯体の生成及び該錯体を含む水相の回収を連続的に実施する方法を見出した。さらに本発明者らは、当該方法によれば、PUFAの製造過程における銀塩溶液の劣化を抑制することができることを見出した。
したがって、本発明は、以下を提供する。
〔1〕高度不飽和脂肪酸含有組成物の製造方法であって:
高度不飽和脂肪酸のアルキルエステルを含有する原料液と銀塩を含む水性溶液とを、流路型攪拌機へ投入してそれらを接触させること;及び
該原料液と接触させた該銀塩を含む水性溶液を回収すること、
を含み、
該銀塩を含む水性溶液の、該流路型攪拌機への投入と、該回収とが並行して行われる、方法。
〔2〕前記流路型攪拌機から回収した銀塩を含む水性溶液と有機溶媒とを抽出槽へ投入してそれらを接触させること;及び
該銀塩を含む水性溶液と接触させた該有機溶媒を回収すること、
をさらに含み、
該銀塩を含む水性溶液の該抽出槽への投入と、該有機溶媒の回収とが並行して行われる、
〔1〕記載の方法。
〔3〕前記原料液と接触させた銀塩を含む水性溶液の回収が、前記銀塩を含む水性溶液と前記原料液との混合液を該流路型攪拌機から回収し、次いで、回収した該混合液から該銀塩を含む水性溶液を分取することを含む、〔1〕又は〔2〕記載の方法。
〔4〕前記銀塩を含む水性溶液と接触させた有機溶媒の回収が、前記銀塩を含む水性溶液と前記有機溶媒との混合液を該抽出槽から回収し、次いで、回収した該混合液から該有機溶媒を分取することを含む、〔2〕又は〔3〕記載の方法。
〔5〕前記流路型攪拌機から回収した後の前記原料液を、再度流路型攪拌機へ投入することをさらに含む、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載の方法。
〔6〕前記銀塩を含む水性溶液の前記流路型攪拌機への投入、前記原料液との接触、及び該流路型攪拌機からの回収が低酸素条件下で行われる、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載の方法。
〔7〕前記流路型攪拌機における前記銀塩を含む水性溶液の線速度が0.5cm/秒以上である、〔1〕〜〔6〕のいずれか1項記載の方法。
〔8〕前記流路型攪拌機が内径0.1〜100cm、長さ0.05〜10mである、〔1〕〜〔7〕のいずれか1項記載の方法。
〔9〕前記流路型攪拌機における前記銀塩を含む水性溶液の滞留時間が0.02〜300秒である、〔1〕〜〔8〕のいずれか1項記載の方法。
〔10〕前記原料液と接触するときの前記銀塩を含む水性溶液の温度が5〜30℃である、〔1〕〜〔9〕のいずれか1項記載の方法。
〔11〕前記抽出槽が流路型攪拌機である、〔2〕〜〔10〕のいずれか1項記載の方法。
〔12〕前記抽出槽における前記銀塩を含む水性溶液の線速度が0.5cm/秒以上である、〔11〕記載の方法。
〔13〕前記抽出槽が内径0.1〜100cm、長さ0.05〜10mである、〔11〕又は〔12〕記載の方法。
〔14〕前記抽出槽における前記銀塩を含む水性溶液の滞留時間が0.02〜300秒である、〔11〕〜〔13〕のいずれか1項記載の方法。
〔15〕前記有機溶媒と接触するときの前記銀塩を含む水性溶液の温度が30〜80℃である、〔2〕〜〔14〕のいずれか1項記載の方法。
〔16〕前記高度不飽和脂肪酸のアルキルエステルを含有する原料液の酸化指標がPOV 10以下、又はAV 0.3以下である、〔1〕〜〔15〕のいずれか1項記載の方法。
〔17〕前記高度不飽和脂肪酸がエイコサペンタエン酸又はドコサヘキサエン酸を含む、〔1〕〜〔16〕のいずれか1項記載の方法。
本発明によるPUFA含有組成物の製造方法では、原料油脂と銀塩溶液の接触と、原料油脂と反応後の銀塩溶液の回収とが並行して連続的に行われる。本発明の方法では、従来のバッチ方式によるPUFAの製造方法と異なり、PUFAの回収の度に銀塩溶液を回収する操作が不要である。さらに本発明の方法によれば、銀塩溶液の使用量を削減できるうえ、該銀塩溶液の劣化を抑制することができる。したがって本発明によれば、PUFA製造にかかる設備の小規模化と、コストの削減とが可能になる。
反応槽及び抽出槽に流路型攪拌機を用いたPUFA含有組成物の製造用装置の模式図。 銀塩溶液の繰り返し使用による遊離脂肪酸含有量の経時的変化。 向流を利用した連続方式での銀塩溶液の繰り返し使用による遊離脂肪酸含有量の経時的変化。
本発明の高度不飽和脂肪酸含有組成物の製造方法は、
高度不飽和脂肪酸のアルキルエステルを含有する原料液と銀塩を含む水性溶液とを、反応槽へ投入してそれらを接触させること;及び、
該原料液と接触させた該銀塩を含む水性溶液を回収すること、
を含む。当該方法においては、該銀塩を含む水性溶液の、該反応槽への投入と、該回収とが並行して行われる。
本明細書において、高度不飽和脂肪酸(PUFA)とは、不飽和結合を2つ以上持つ脂肪酸をいう。PUFAの例としては、リノール酸(LA、18:2n−6)、γ−リノレン酸(GLA、18:3n−6)、アラキドン酸(AA、20:4n−6)、α−リノレン酸(ALA、18:3n−3)、エイコサテトラエン酸(ETA、20:4n−3)、ドコサペンタエン酸(DPA、22:5n−3)、エイコサペンタエン酸(EPA、20:5n−3)、ドコサヘキサエン酸(DHA、22:6n−3)などが挙げられる。本発明のPUFA含有組成物の製造方法において、製造される組成物に含有されるべきPUFAは、好ましくはEPA、DHA及びDPAからなる群より選択される少なくとも1種であり、より好ましくはEPA及びDHAからなる群より選択される少なくとも1種であり、さらに好ましくはEPAである。
本発明の方法では、PUFAの二重結合部に銀塩が錯体を形成することによりPUFAの銀塩溶液への溶解性が変わることを利用して、PUFAアルキルエステルを分離精製する。当該本発明の方法では、不飽和結合を5つ以上もつEPA、DHA及びDPAのアルキルエステルと、AA、ETAなどの不飽和結合が4つ以下である脂肪酸アルキルエステルとを効率よく分離精製することができる。
本発明で用いるPUFA含有組成物の原料としては、主として天然物由来の油脂混合物であって、上述したPUFAが含まれているものが挙げられる。そのような原料の例としては、魚類等の海産動物やプランクトン由来の油脂、藻類等の微生物由来の油脂などが挙げられ、中でもイワシ、ハマチ等の魚類由来の油脂、及び藻類由来の油脂が好ましい。
好ましくは、本発明で用いるPUFA含有組成物の原料は、目的のPUFA(好ましくはEPA、DHA及びDPAからなる群より選択される少なくとも1種、より好ましくはEPA及びDHAからなる群より選択される少なくとも1種、さらに好ましくはEPA)を、含有する脂肪酸の全量に対して15質量%以上、より好ましくは40質量%以上含有する油脂である。該原料は、EPA、DHA及びDPAの合計含有量ができるだけ高いものであることが好ましい。コストや入手しやすさの点からは、該原料のEPA、DHA及びDPAの合計含有量は、含有する全脂肪酸中、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下であればよい。該原料中のPUFAは、遊離脂肪酸の形態で存在していてもよく、又はモノ、ジ若しくはトリグリセリド等の脂肪酸鎖の形態で存在していてもよい。
本発明の方法において、当該原料中のPUFAはアルキルエステル化されている。好ましくは、該原料は、目的のPUFA(好ましくはEPA、DHA及びDPAからなる群より選択される少なくとも1種、より好ましくはEPA及びDHAからなる群より選択される少なくとも1種、さらに好ましくはEPA)のアルキルエステルを含有する。該PUFAのアルキルエステルを構成するアルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基又はエチル基であり、より好ましくはエチル基である。アルキルエステル化の程度は高いほど好適であり、原料中に含まれる目的のPUFA(遊離体を含む)の全量のうち、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上がアルキルエステル化されているとよい。
当該PUFAのアルキルエステルを含有する原料は、PUFAを含有する油脂と所望のアルキル基を有する酸とを公知の方法によりエステル化反応させることにより製造することができる。例えば、PUFAのトリグリセリドを含有する油脂をけん化処理及びエステル交換等することによって、簡便にPUFAのアルキルエステル化物を得ることができる。あるいは、該PUFAのアルキルエステルを含有する原料としては、市販されている油脂類を用いてもよい。例えば、含有するPUFAの種類や量が規格化された市販の魚油由来の油脂類などを用いることが好ましい。
本発明で製造するPUFA含有組成物の品質保持、及び銀塩を含む水性溶液の劣化防止の観点から、本発明で用いるPUFAのアルキルエステルを含有する原料は、酸化指標が低いことが好ましい。脂質の酸化指標は、過酸化物価(POV)、酸価(AV)などで表すことができる。本発明で用いるPUFAのアルキルエステルを含有する原料は、POV(mEq/kg)が、好ましくは10以下、より好ましくは5以下であるか、又はAV(mg/g)が、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下である。さらに好ましくは、本発明で用いるPUFAのアルキルエステルを含有する原料は、POVが10以下かつAVが0.3以下であり、なお好ましくはPOVが5以下かつAVが0.2以下である。POVはヨウ素滴定法(ISO 3960:2007)などによって測定することができる。AVは水酸化カリウム滴定法(ISO 660:2009)などによって測定することができる。
(1.PUFA含有組成物の製造方法)
(1−1.錯体生成)
本発明のPUFA含有組成物の製造方法においては、上述したPUFAのアルキルエステルを含有する原料を、液体(原料液)の形態で、銀塩を含む水性溶液(本明細書において銀塩溶液ともいう)と接触させる。該銀塩溶液と接触するときの温度において液体の状態を維持するために、該原料は、必要に応じて、有機溶媒や他の油に溶解又は希釈されてもよい。該有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、クロロホルム、四塩化炭素、ジエチルエーテル、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。
本発明の方法で用いる銀塩溶液に含まれる銀塩としては、PUFAの不飽和結合と錯体を形成し得るものであれば特に制限されないが、例えば硝酸銀、過塩素酸銀、四フッ化ホウ素酸銀、酢酸銀等が挙げられる。このうち、硝酸銀が好ましい。該銀塩溶液の溶媒としては、水、又は水とグリセリンやエチレングリコール等の水酸基を有する化合物との混合媒体が挙げられるが、好ましくは水が用いられる。該銀塩溶液中の銀塩濃度は、20質量%以上であればよいが、好ましくは30質量%以上である。好ましい実施形態において、該銀塩溶液中の銀塩濃度は、20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%である。
該原料液と銀塩溶液との接触により、PUFAと銀との錯体(本明細書においてPUFA−銀錯体とも称する)が形成される。形成された錯体は、水相、すなわち銀塩溶液の相に移行する。したがって、原料液と接触させた銀塩溶液を回収することによって、PUFA−銀錯体を含む液を取得することができる。
本発明の方法において、該原料液と銀塩溶液との接触に用いられる反応槽には、流路型攪拌機が用いられる。流路型攪拌機とは、液体材料の投入口と排出口を有する流路を備えた、流路内での2種類以上の異なる液体材料の混合又は撹拌を可能とする装置である。該流路型攪拌機は、混合すべき異なる液体材料が流路内を同方向に通過するタイプ(例えば並行流式)でもよく、又は混合すべき異なる液体材料が流路内を逆方向に通過するタイプ(例えば向流式)でもよい。液体材料の流動性、比重、液体材料同士の分離しやすさ、比重差等を考慮して、いずれか適切なタイプの攪拌機を適宜選択すればよい。並行流式の流路型攪拌機は、撹拌効率が良いため、短時間での混合が可能であり、液体材料同士の接触時間を比較的短くすることができるため好ましい。流路型攪拌機に備わる該液体材料の混合又は撹拌のための機構としては、流路内に設置したプロペラ等の可動する撹拌子や、流路内に設けたブレードやオリフィス等(これらに対する液体の抵抗を利用して攪拌する)などが挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明で用いることができる流路型攪拌機の好ましい実施形態の一例として、静止型流体混合器(内部に流体混合のためのブレード、フィン等を備えたスタティックミキサー、インラインミキサー等)、圧入型混合器(ベンチュリーオリフィスを備えたインラインミキサー等)、エレメント積層型ミキサー(流体混合のための多数の貫通孔を有する積層体を備えたインラインミキサー等)、ホモミキサー(ステータ、高速回転するタービン等を備えたインラインミキサー等)などが挙げられる。静止型流体混合器の例としては、スタティックミキサー(T−3、−4型、N10型、N60型等;株式会社ノリタケカンパニーリミテド)、インラインミキサー(TD型;株式会社北斗)、OHRミキサー(MX10型;株式会社OHR流体工学研究所)などが挙げられる。圧入型混合器の例としては、VRラインミキサー(VRX10、VRX20等;株式会社ナゴヤ大島機械)などが挙げられる。エレメント積層型ミキサーの例としては(MSEスタティックミキサー;アイセル株式会社)などが挙げられる。ホモミキサーの例としては(パイプラインホモミクサー;プライミクス株式会社)などが挙げられる。ただし、本発明で用いることができる流路型攪拌機の例はこれらに限定されない。
本発明の方法においては、該反応槽内でPUFAのアルキルエステルを含有する原料液と銀塩溶液とを接触させることができればよい。例えば、反応槽に原料液と銀塩溶液をそれぞれ投入して、該反応槽内でそれらを接触させてもよく、又は予め混合した原料液と銀塩溶液を反応槽に投入することで、該反応槽内でそれらを接触させてもよい。
該原料液と接触するときの銀塩溶液の温度は、好ましくは5〜30℃、より好ましくは15〜30℃である。原料液との接触の際の銀塩溶液の温度を上記範囲に維持するための方法としては、該原料液及び/又は銀塩溶液を上記範囲に加温又は冷却した後、それらを接触させる方法、該原料液と銀塩溶液とを接触させるための反応槽の温度を上記範囲に維持する方法、およびそれらの方法の組み合わせが挙げられる。
本発明の方法においては、銀塩溶液の反応槽への投入と、該反応槽内で原料液と接触させた、錯体を含む銀塩溶液の回収とは並行して行われる。したがって、本発明の方法においては、従来法のバッチ方式のように錯体生成反応後の反応槽の銀塩溶液を全交換する必要がなく、銀塩溶液の反応槽への投入及び原料液との接触を続けながら、錯体を含む銀塩溶液の回収を続けることができる。したがって、本発明の方法においては、原料液と銀塩溶液との接触及び錯体を含む銀塩溶液の回収は、連続的に(すなわち連続方式で)行われる。
本発明の方法においては、PUFAのアルキルエステルを含有する原料液は、連続的又は断続的に反応槽に投入され得る。好ましくは、本発明の方法においては、原料液の反応槽への投入と、銀塩溶液と接触させた該原料液の回収は、並行して行われる。より好ましくは、該原料液の投入と回収のプロセスは、上述した銀塩溶液の投入と回収のプロセスと並行して、連続的に(すなわち連続方式で)行われる。
反応槽への銀塩溶液及び原料液の投入は、好ましくは、該反応槽へと流体連絡した流路(以下の本明細書において、投入路と称する)を介して行われる。当該投入路は、銀塩溶液の投入と原料液の投入のために別々に設けられ、それぞれが、銀塩溶液及び原料液の供給源と該反応槽とを流体連絡する。当該投入路には、弁、ポンプ、バルブなどが設けられていてもよい。また、当該投入路は、それぞれが反応槽に直接接続されていてもよく、又は互いに接続してまとめられた後で反応槽に接続されてもよい。反応槽の内径は、好ましくは0.1〜100cm、より好ましくは0.3〜43cmである。また、反応槽の長さは、好ましくは0.05〜10m、より好ましくは0.1〜4mである。また、銀塩溶液の反応槽内滞留時間は、好ましくは0.02〜300秒程度、より好ましくは0.04〜150秒程度である。さらに好ましくは、銀塩溶液及び原料液の反応槽内滞留時間はそれぞれ0.02〜300秒程度であり、さらに好ましくはそれぞれ0.04〜150秒程度である。
本発明の方法において、該反応槽における銀塩溶液の線速度は、0.5cm/秒以上が好ましく、0.5〜400cm/秒がより好ましい。さらに好ましくは、該反応槽における原料液及び銀塩溶液の線速度はそれぞれ0.5cm/秒以上であり、さらに好ましくはそれぞれ0.5〜400cm/秒である。銀塩溶液の線速度が小さいと、錯体形成の効率が低下し、目的とするPUFAの収率が低下する場合がある。他方、銀塩溶液及び原料液の線速度が大きいと、分配槽で分離不良となる恐れがあり、また反応槽の内圧が上昇し、その損傷のリスクが高まる。
本明細書において、反応槽又は抽出槽における液体(原料液、銀塩溶液又は有機溶媒等)の線速度とは、反応槽又は抽出槽の長さと、該液体が該反応槽又は抽出槽を通過するのに要する時間(すなわち該液体の槽内滞留時間)から算出された値〔反応槽又は抽出槽の長さ/液体が反応槽又は抽出槽を通過するのに要する時間〕をいう。ここで、〔液体が反応槽又は抽出槽を通過するのに要する時間〕(液体の槽内滞留時間)とは、〔反応槽又は抽出槽における液体の容積〕を〔反応槽又は抽出槽内における液体の流速〕で除した値をいう。反応槽又は抽出槽に複数種の液体が存在する場合、ある1種の液体についての〔反応槽又は抽出槽における該液体の容積〕は、〔液体の総容量に占める該液体の割合〕×〔反応槽又は抽出槽の容積〕である。例えば、反応槽を流れる液体が原料液、銀塩溶液及び有機溶媒である場合、〔銀塩溶液が反応槽を通過するのに要する時間〕は、〔反応槽の容積×{銀塩溶液容量/(原料液、銀塩溶液及び有機溶媒の総容量)}〕を〔反応槽内における銀塩溶液の流速〕で除した値をいう。反応槽又は抽出槽における液体の線速度は、反応槽又は抽出槽のサイズ、あるいは液体の流速を調節することで、適宜調整することができる。
反応槽に投入された銀塩溶液及び原料液は、該反応槽内でともに撹拌され、相互に接触する。この接触により銀塩溶液中にPUFA−銀錯体が生成される。
本発明の方法においては、生成されたPUFA−銀錯体を含む銀塩溶液と原料液との混合液を、反応槽からまとめて回収する。次いで、回収した該混合液から該銀塩溶液を分取する。好ましくは、反応槽から流出した原料液と銀塩溶液を含む液体は、反応槽と流体連絡した分配槽(1)(銀塩溶液と原料液との分配のための分配槽)に移行され、そこで比重差によって原料液の相(有機相)と銀塩溶液の相(水相)に分配される。分配された水相を分取すれば、錯体を含む銀塩溶液を回収することができる。さらに、分配された有機相を分取すれば、使用後の原料液を回収することができる。分配槽(1)からの銀塩溶液と原料液の回収は、分配槽(1)に接続されたそれぞれの回収のための流路(以下の本明細書において、回収路と称する)によって行われ得る。分配された有機相と水相の回収を容易にするため、好ましくは、分配槽(1)からの銀塩溶液の出口は、該分配槽(1)の底面もしくは下部壁面に配置され、原料液の出口は、該分配槽(1)の上面もしくは上部壁面に配置される。また好ましくは、銀塩溶液は、分配槽(1)内の下部、好ましくは底面上に配置されたノズルから吸引されて、分配槽(1)から回収されてもよい。これら分配槽(1)における銀塩溶液及び原料液用の出口やノズルは、それぞれの回収路につながる。当該回収路には、弁、ポンプ、バルブなどが設けられていてもよい。
本発明の方法で用いられる反応槽は、1個の槽であってもよいが、流体連絡された2個以上の槽の組み合わせであってもよい。例えば、上述した流路型攪拌機(例えば、上述した静止型流体混合器、圧入型混合器、エレメント積層型ミキサー、ホモミキサー等)を単独で又は2基以上組み合わせて用いることができる。2個以上の反応槽を組み合わせて用いる場合、第1の反応槽から回収された原料液及び錯体を含む銀塩溶液は、必要に応じて追加の原料液、銀塩溶液、銀塩溶液洗浄用の有機溶媒、及び原料液希釈用の有機溶媒のうち1つ以上とともに、さらなる反応槽に投入され、その中で該原料液と銀塩溶液が接触してPUFA−銀錯体がさらに生成される。この操作をさらに繰り返してもよい。その後、該原料液と銀塩溶液は分配槽(1)へと移送され、PUFA−銀錯体を含む銀塩溶液が回収される。
あるいは、第1の反応槽の原料液及び錯体を含む銀塩溶液は、第1の分配槽(1)で分離、回収された後、必要に応じて追加の原料液、銀塩溶液、銀塩溶液洗浄用の有機溶媒、及び原料液希釈用の有機溶媒のうち1つ以上とともに、さらなる反応槽に投入され、その中で新たな原料液と接触してPUFA−銀錯体を蓄える。次いで、該銀塩溶液は、該さらなる反応槽と接続された別の(第2の)分配槽(1)で分離、回収される。この操作をさらに繰り返してもよい。
該2個以上の反応槽のいずれにおいても、該原料液又は銀塩溶液洗浄用の有機溶媒と接触するときの銀塩溶液の温度は、好ましくは5〜30℃、より好ましくは15〜30℃である。該銀塩溶液洗浄用の有機溶媒及び原料液希釈用の有機溶媒としては、上述した原料液の希釈に用いる有機溶媒と同様のものを使用することができる。好ましくは、該第1の反応槽に投入した原料液の希釈に用いた有機溶媒と同じものが用いられる。回収された該PUFA−銀錯体を含む銀塩溶液は、後述する抽出槽へと移送され、PUFAアルキルエステルの抽出工程に供される。
反応槽の構成の例をより詳細に説明する。本発明の方法で用いられる反応槽は、1個の槽であってもよいが、流体連絡された2個以上の槽の組み合わせであってもよい。例えば、上述した流路型攪拌機(例えば、上述した静止型流体混合器、圧入型混合器、エレメント積層型ミキサー、ホモミキサー等)を単独で又は2基以上組み合わせて用いることができる。2個以上の反応槽を組み合わせて用いる場合、原料液及び錯体を含む銀塩溶液は1つ目の反応槽から連結した次なる反応槽へと投入される。反応槽はいくつあってもよく、これら1個または複数個の反応槽を第1の反応槽とする。その後、該原料液と銀塩溶液は分配槽(1)へと移送され、PUFA−銀錯体を含む銀塩溶液及び原料液が回収される。あるいは、第1の反応槽から第1の分配槽(1)へと移送され、該第1の分配槽(1)から回収された銀塩溶液及び原料液は、第2の反応槽(1個または複数個の反応槽からなる)に投入され得る。この際、第1の分配槽(1)から回収された原料液及び銀塩溶液は、必要に応じて追加の原料液、銀塩溶液、銀塩溶液洗浄用の有機溶媒、及び原料液希釈用の有機溶媒のうち1つ以上とともに、第2の反応槽に投入され得る。第2の反応槽の中では、該原料液と銀塩溶液が接触してPUFA−銀錯体がさらに生成される。その後、該原料液と銀塩溶液は、第1の分配槽(1)又は別の(第2の)分配槽(1)へと移送され、PUFA−銀錯体を含む銀塩溶液及び原料液が回収される。これらの操作をさらに繰り返してもよい。分配槽(1)が複数の場合、それぞれの分配槽(1)から回収された該PUFA−銀錯体を含む銀塩溶液は、それらを合一するための混合槽(上述した流路型攪拌機もしくは単なる混合のためのタンクなど)にて均一化してもよいが、しなくてもよい。該銀塩溶液は後述する抽出槽へと移送され、PUFAアルキルエステルの抽出工程に供される。好ましくは、各反応槽は内径0.1〜100cm、長さ0.05〜10mであり、該反応槽における銀塩溶液は、線速度が0.5〜400cm/秒で、反応槽内滞留時間が0.02〜300秒程度であり、かつ必要に応じて、該反応槽における原料液は、線速度が0.5〜400cm/秒で、反応槽内滞留時間が0.02〜300秒程度である。より好ましくは、各反応槽は内径0.3〜43cm、長さ0.1〜4mであり、該反応槽における銀塩溶液は、線速度が0.5〜400cm/秒で、反応槽内滞留時間が0.04〜150秒程度であり、かつ必要に応じて、該反応槽における原料液は、線速度が0.5〜400cm/秒で、反応槽内滞留時間が0.04〜150秒程度である。また、2個以上の反応槽を組み合わせて用いる場合は、上記条件の反応槽を用いることができる。
分配槽(1)から回収された有機相(原料液)には、錯体化されなかったPUFAがなお含まれていることがある。そのため、回収した有機相を該第1又はさらなる反応槽に投入して、再度銀塩溶液と接触させることで、該錯体化されなかったPUFAをPUFA−銀錯体に変換し、銀塩溶液とともに回収することができる。得られた銀塩溶液は、上記と同様に原料液とともに第1の分配槽(1)又は別の分配槽(1)に移送して有機相から分配することで回収することができる。回収された銀塩溶液は、前述の手順で得られたPUFA−銀錯体を含む銀塩溶液と合一して、後述するPUFAアルキルエステルの抽出工程に供することもでき、又はそれ単独で該抽出工程に供することもできる。
好ましくは、以上の本発明の方法の手順は低酸素条件下で行われる。低酸素条件は、例えば、本発明の方法の系(例えば、反応槽(流路型攪拌機)、投入路、回収路、分配槽(1)等)を外気から遮断した密閉系とすること、該反応槽、投入路、回収路、分配槽(1)等の内部を窒素等の不活性ガス雰囲気下におくこと、該反応槽、投入路、回収路、分配槽(1)等に液体(原料液又は銀塩溶液)を満たすこと、などにより達成できる。好ましくは、該反応槽、投入路、回収路、分配槽(1)を外気から遮断した密閉系とし、これに原料液又は銀塩溶液を満たす。反応槽に対する銀塩溶液及び原料液の投入と回収をいずれも連続方式で行う場合、一旦系に液体を満たしてしまえば、あとは低酸素状態を維持することができる。好ましくは、本発明における低酸素条件とは、酸素濃度0.4%未満、より好ましくは0.1%以下の条件をいう。また好ましくは、本発明の方法は遮光下で行われる。本発明の方法を低酸素条件及び遮光下で行うことにより、銀塩溶液のpH低下や原料液及び銀塩溶液中の油脂の酸化を抑制し、銀塩溶液の劣化や精製されるPUFA含有組成物の劣化を防止することができる。
(1−2.PUFAアルキルエステルの抽出)
以上の手順で回収されたPUFAと銀との錯体を含む銀塩溶液から、有機溶媒を用いてPUFAアルキルエステルを抽出することができる。したがって、本発明のPUFA含有組成物の製造方法は、反応槽から回収した銀塩溶液から有機溶媒を用いてPUFAアルキルエステルを抽出する工程をさらに含んでいてもよい。
PUFAアルキルエステルの抽出の手順は、特許文献1〜4に記載された方法等の通常の手順に従って行うことができる。より詳細には、反応槽から回収されたPUFA−銀錯体を含む銀塩溶液を、有機溶媒と接触させる。この接触によって、該銀塩溶液中のPUFAアルキルエステルが有機溶媒に抽出される。該銀塩溶液と接触させた有機溶媒を回収することによって、PUFAアルキルエステルを取得することができる。
当該抽出に用いる有機溶媒としては、ヘキサン、エーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の、EPA、DHA、DPA等のアルキルエステルの溶解性が高く、かつ水と分離可能な溶媒が挙げられるが、ヘキサン又はシクロヘキサンが好ましい。
好ましくは、反応槽から回収された銀塩溶液は、銀塩溶液と有機溶媒との接触のための抽出槽に移送され、そこで有機溶媒と接触する。抽出槽に対する銀塩溶液又は有機溶媒の投入及び回収は、バッチ方式で行われてもよいが、好ましくは連続方式で行われる。好ましくは、本発明の方法においては、該反応槽から回収した銀塩を含む水性溶液と有機溶媒とを抽出槽へ投入してそれらを接触させ、次いで、該銀塩を含む水性溶液と接触させた該有機溶媒を回収する。好ましくは、該銀塩を含む水性溶液の該抽出槽への投入と、該有機溶媒の回収とは並行して行われる。より好ましくは、有機溶媒の抽出槽への投入、反応槽から回収した銀塩溶液の抽出槽への投入、銀塩溶液と有機溶媒との接触、接触後の有機溶媒及び銀塩溶液の抽出槽からの回収は、並行して行われる。
抽出槽への銀塩溶液の投入は、反応槽、又は上述した分配槽(1)(必要に応じて上記混合槽)と該抽出槽とを流体連絡する流路(以下の本明細書において、連絡路と称する)を介して行われる。また、抽出槽への有機溶媒の投入は、好ましくは、有機溶媒の供給源と該抽出槽とを流体連絡する流路(以下の本明細書において、有機溶媒投入路と称する)を介して行われる。当該連絡路及び有機溶媒投入路には、弁、ポンプ、バルブなどが設けられていてもよい。また、当該連絡路及び有機溶媒投入路は、それぞれが抽出槽に直接接続されていてもよく、又は互いに接続してまとめられた後で抽出槽に接続されてもよい。
有機溶媒と接触するときの銀塩溶液の温度は、好ましくは30〜80℃、より好ましくは50〜70℃である。有機溶媒との接触の際の銀塩溶液の温度を上記範囲に維持するための方法としては、銀塩溶液及び/又は有機溶媒を上記範囲に加温した後、それらを接触させる方法、抽出槽の温度を上記範囲に維持する方法、およびそれらの方法の組み合わせが挙げられる。
好ましくは、接触後の銀塩溶液と有機溶媒との混合液を、抽出槽からまとめて回収する。次いで、回収した該混合液からPUFAアルキルエステルを含む有機溶媒を分取する。好ましくは、抽出槽から回収した液体は、抽出槽と流体連絡した分配槽(2)(有機溶媒と銀塩溶液との分配のための分配槽)に移行され、そこで比重差によって有機溶媒の相(有機相)と銀塩溶液の相(水相)に分配される。分配された有機相を分取すれば、PUFAアルキルエステルを含む有機溶媒を回収することができる。さらに、分配された水相を分取すれば、使用後の銀塩溶液を回収することができる。分配槽(2)からの銀塩溶液と有機溶媒の回収は、該分配槽(2)に接続されたそれぞれの回収路によって行われ得る。分配された有機相と水相の回収を容易にするため、好ましくは、該分配槽(2)からの銀塩溶液の出口は、該分配槽(2)の底面もしくは下部壁面に配置され、有機溶媒の出口は、該分配槽(2)の上面もしくは上部壁面に配置される。また好ましくは、銀塩溶液は、該分配槽(2)内の下部、好ましくは底面上に配置されたノズルから吸引されて、該分配槽(2)から回収されてもよく、有機溶媒は、該分配槽(2)内の上部に配置されたノズルから吸引されて、該分配槽(2)から回収されてもよい。これら分配槽(2)における銀塩溶液及び有機溶媒用の出口やノズルは、それぞれの回収路につながる。当該回収路には、弁、ポンプ、バルブなどが設けられていてもよい。
抽出槽の好適な例としては、反応槽とは別に設けられた流路型攪拌機が挙げられる。該抽出槽に用いられる流路型攪拌機としては、上記反応槽に用いられるものと同様の流路型攪拌機を挙げることができ、例えば、上記(1−1)で述べた静止型流体混合器、圧入型混合器、エレメント積層型ミキサー、ホモミキサー等が例示できる。該抽出槽は、1個の槽であってもよいが、流体連絡された2個以上の槽の組み合わせであってもよい。例えば、上述した静止型流体混合器、圧入型混合器、エレメント積層型ミキサー、ホモミキサー等を単独で又は2基以上組み合わせて用いることができる。2個以上の抽出槽を組み合わせて用いる場合、第1の抽出槽から回収された有機溶媒及び錯体を含む銀塩溶液は、必要に応じて、追加の有機溶媒又は錯体を含む銀塩溶液とともに、さらなる抽出槽に投入され、その中で該有機溶媒と銀塩溶液が接触してPUFAがさらに抽出される。この操作をさらに繰り返してもよい。その後、該有機溶媒と銀塩溶液は分配槽(2)へと移送され、PUFAを含む有機溶媒が回収される。あるいは、第1の抽出槽内の銀塩溶液は、分配槽(2)で分離、回収された後、必要に応じて追加の有機溶媒又は錯体を含む銀塩溶液とともに、さらなる抽出槽に投入され、その中で新たな有機溶媒と接触し、該銀塩溶液中に残存するPUFAが有機溶媒に抽出される。次いで、該銀塩溶液と有機溶媒は、該さらなる抽出槽と接続された別の(第2の)分配槽(2)で分離、回収される。この操作をさらに繰り返してもよい。該2個以上の抽出槽のいずれにおいても、有機溶媒と接触するときの銀塩溶液の温度は、好ましくは30〜80℃、より好ましくは50〜70℃である。
該抽出槽が流路型攪拌機である場合、該抽出槽における銀塩溶液の線速度は、0.5cm/秒以上が好ましく、0.5〜400cm/秒がより好ましい。さらに好ましくは、該抽出槽における銀塩溶液及び有機溶媒の線・BR>ャ度はそれぞれ0.5cm/秒以上であり、さらに好ましくはそれぞれ0.5〜400cm/秒である。銀塩溶液の線速度が小さいと、有機溶媒へのPUFAアルキルエステル抽出の効率が低下し、目的とするPUFAの収率が低下する。他方、銀塩溶液及び有機溶媒の線速度が大きいと、分配槽(2)で分離不良となる恐れがあり、また抽出槽の内圧が上昇し、その損傷のリスクが高まる。また、銀塩溶液の抽出槽内滞留時間は、好ましくは0.02〜300秒程度、より好ましくは0.04〜150秒程度である。さらに好ましくは、銀塩溶液及び有機溶媒の抽出槽内滞留時間はそれぞれ0.02〜300秒程度であり、さらに好ましくはそれぞれ0.04〜150秒程度である。好ましくは、各抽出槽は内径0.1〜100cm、長さ0.05〜10mであり、該抽出槽における銀塩溶液は、線速度が0.5〜400cm/秒で、抽出槽内滞留時間が0.02〜300秒程度であり、かつ必要に応じて、該抽出槽における有機溶媒は、線速度が0.5〜400cm/秒で、反応槽内滞留時間が0.02〜300秒程度である。より好ましくは、各抽出槽は内径0.3〜43cm、長さ0.1〜4mであり、該抽出槽における銀塩溶液は、線速度が0.5〜400cm/秒で、抽出槽内滞留時間が0.04〜150秒程度であり、かつ必要に応じて、該抽出槽における有機溶媒は、線速度が0.5〜400cm/秒で、抽出槽内滞留時間が0.04〜150秒程度である。また、2個以上の抽出槽を組み合わせて用いる場合は、上記条件の抽出槽を用いることができる。
抽出したPUFAアルキルエステルや、銀塩溶液中の油脂の酸化を防止するためには、上記PUFAアルキルエステル抽出の手順もまた低酸素条件下又は遮光下で行うことが好ましい。好ましくは、当該手順の系(例えば抽出槽、連絡路、有機溶媒投入路、回収路、分配槽(2)等)を低酸素条件又は遮光下におく。低酸素条件は、上記(1−1)で述べた手順と同様の手順で達成することができる。
(1−3.銀塩溶液の劣化抑制と再利用)
本発明のPUFA含有組成物の製造方法では、反応槽(流路型攪拌機)に対する銀塩溶液の投入と回収のプロセス、さらには必要に応じて抽出槽に対する銀塩溶液の投入と回収のプロセスを並行して連続的に(すなわち連続方式で)行うことにより、好ましくは反応槽への銀塩溶液の投入から抽出槽からの銀塩溶液の回収までのプロセスを連続方式で行うことにより、銀塩溶液のpH低下や原料液及び銀塩溶液中の油脂の酸化、及びそれらによる銀塩溶液の劣化や精製されたPUFA含有組成物の劣化を大きく抑制することができる。例えば、従来のバッチ方式では、反応槽内での原料液と銀塩溶液との撹拌混合や、反応後の銀塩溶液のバッチ回収の過程で銀塩溶液中に取り込まれている油脂が酸化し、これが銀塩溶液の劣化をもたらしていたと考えられる。一方、本発明のような連続方式では、反応槽又は抽出槽内やそれらからの銀塩溶液の回収の過程で、銀塩溶液と外気の接触を極めて少なくすることができるため、銀塩溶液の劣化を抑制することができる。
したがって、本発明の方法においては、抽出槽から回収された銀塩溶液を再利用することができる。より詳細には、本発明の方法では、抽出槽から回収された銀塩溶液を、そのまま、又は銀塩の濃度を適宜調整してから、再び反応槽に投入して原料液と接触させることができる。本発明の方法の好ましい実施形態においては、反応槽に投入される銀塩溶液は、有機溶媒と接触させた後に抽出槽から回収された銀塩溶液を含有する。
したがって、好ましい実施形態において、本発明のPUFA含有組成物の製造方法は、銀塩溶液を反応槽と抽出槽との間で循環させながら、該銀塩溶液と原料液との接触と、それによって得られた錯体を含む銀塩溶液と有機溶媒との接触を連続的に行う方法であり得る。この方法においては、反応槽から回収した銀塩溶液を有機溶媒と接触させて、該銀塩溶液からPUFAアルキルエステルを抽出した後、該有機溶媒と接触した銀塩溶液を、抽出槽から回収して、該反応槽に再度投入する。反応槽に再度投入された銀塩溶液は、原料液と接触してPUFA−銀錯体が形成される。本発明の方法において、銀塩溶液は、好ましくは10回以上、より好ましくは30回以上、さらに好ましくは70回以上、さらに好ましくは100回以上、さらに好ましくは300回以上、繰り返して使用することができる。なお、本発明における銀塩溶液の繰り返し使用に関する「使用」とは、銀塩溶液を、反応槽への投入から抽出槽からの回収までの一連のプロセスに適用することであり、このプロセスを1回行うことは、銀塩溶液の「1回」使用にあたる。当該プロセス1回あたりにおいて、銀塩溶液とPUFAが接触している時間(後述の実施例で示すPUFA接触時間、すなわち、原料液に銀塩溶液を投入した時点から、有機溶媒により銀塩溶液からPUFAエチルエステル含有組成物が抽出されるまでの時間)は、平均で好ましくは10分以内、より好ましくは5分以内である。
銀塩溶液の劣化の程度は、銀塩溶液のpHや色調、又は銀塩溶液に含まれる遊離脂肪酸量、又は該溶液のガードナー色数などを指標に測定することができる。例えば、未使用の銀塩溶液は通常、pHがほぼ7で、無色透明であり、かつ遊離脂肪酸を含まないが、使用に伴い劣化するにつれ、pHは低下し、黄色〜褐色を帯びた色調となり、遊離脂肪酸量が増加する。溶液の遊離脂肪酸量は、後述の参考例2に記載の方法により測定することができる。本発明の方法によれば、錯体形成及びPUFAアルキルエステル抽出のプロセスに10回繰り返し使用した後の銀塩溶液の遊離脂肪酸量を、好ましくは5mEq/L以下、より好ましくは3mEq/L以下に抑えることができる。さらに好ましくは、100回繰り返し使用後の銀塩溶液の遊離脂肪酸量を、好ましくは50mEq/L以下、より好ましくは20mEq/L以下に抑えることができる。
銀塩溶液のガードナー色数は、日本工業規格JIS K0071「化学製品の色試験方法」に従って測定することができる。溶液のガードナー色数が高いほど、銀塩溶液がより劣化していることを意味する。本発明の方法では、使用される銀塩溶液は、30回以上程度繰り返し使用した後でもガードナー色数は5程度であり、好ましくは、さらに繰り返し使用してもガードナー色数9以上にはならない。これに対し、従来のバッチ法では、使用される銀塩溶液は、15回程度の繰り返し使用でガードナー色数11以上まで上昇する。これは、本発明の方法では、バッチ法と比べてはるかに銀塩溶液の劣化が生じにくいことを表す。
また本発明のPUFA含有組成物の製造方法では、連続方式の採用と銀塩溶液の再使用により、従来法(バッチ方式)と比べて、PUFA抽出に必要な銀塩溶液の量を低減することができる。好ましい実施形態において、本発明の方法では、従来法と比べて、PUFA抽出に必要な銀塩溶液の量を1/2〜1/20程度、好ましくは1/5〜1/10程度に減量させることができる。
(1−4.PUFA含有組成物の分離)
本発明において、上記手順で回収されたPUFAアルキルエステルを含む有機溶媒は、PUFA含有組成物として取得される。該PUFA含有組成物は、原料液から分離されたPUFA、好ましくはEPA、DHA、又はDPAのアルキルエステルを含有する。回収された有機溶媒は、必要に応じて濃縮、クロマトグラフィー、蒸留などによってさらに精製されてもよい。本発明の方法により得られたPUFA含有組成物は、含有する全脂肪酸中に、好ましくはEPA、DHA及びDPAからなる群より選択される少なくとも1種のPUFAのアルキルエステル、より好ましくはEPA及び/又はDHAのアルキルエステルを、70質量%以上、より好ましくは80質量%以上含有し、さらに好ましくは、EPAのアルキルエステルを50質量%以上、なお好ましくは70質量%以上含有する。なお好ましくは、本発明の方法により得られたPUFA含有組成物は、含有する全脂肪酸中に、EPAのアルキルエステル及びDHAのアルキルエステルを、合計で70質量%以上、好ましくは80質量%以上含有し、かつEPAアルキルエステルを55質量%以上、好ましくは60質量%以上含有する。
また本発明の方法においては、回収された有機溶媒は、濃縮、クロマトグラフィー、蒸留等によりPUFAアルキルエステルを分離した後、PUFAアルキルエステルの抽出に再使用することができる。より詳細には、PUFAアルキルエステルを分離した有機溶媒を、そのまま、又は新たな有機溶媒と混合した後、再び抽出槽に投入して銀塩溶液と接触させることができる。
本発明の連続方式によるPUFA含有組成物の製造方法では、従来法(バッチ方式)のように錯体を含む銀塩溶液やPUFAを含む有機溶媒のバッチを回収する必要がなく、またその回収のために錯体生成反応やPUFA抽出操作を止める必要がない。また本発明の方法では、銀塩溶液の劣化が抑制され、かつ銀塩溶液の使用量を低減することができる。したがって、本発明は、高効率かつ低コストなPUFA製造法を提供する。
(2.PUFA含有組成物の製造用装置)
本発明の好ましい実施形態として、反応槽及び抽出槽に流路型攪拌機を用いたPUFA含有組成物の製造手順の模式図を図1に開示する。
図1において、反応槽及び抽出槽の流路型攪拌機は、同型の並行流式の静止型流体混合器であり、内部に流体混合のためのブレードを備える。該流路型攪拌機は、原料液供給源と銀塩溶液供給源とに流体連絡する。反応槽に投入された原料液と銀塩溶液は、ブレードの撹拌作用により混合されて互いに接触する。撹拌される原料液と銀塩溶液の量を調節することによって、原料液又は銀塩溶液の液滴を生成することができる。一実施形態において、反応槽内の原料液は連続相であり、銀塩溶液は液滴状である。別の一実施形態において、反応槽内の原料液は液滴状であり、銀塩溶液は連続相である。別の一実施形態において、反応槽内の原料液と銀塩溶液はいずれも連続相である。反応槽は、液体投入口の反対側で分配槽(1)と連絡されているので、反応槽に投入された液体は徐々に分配槽(1)へと移送される。分配槽(1)では原料液(有機相)が上層に、錯体を含む銀塩溶液(水相)は下層に分離される。上層の原料液は回収され、下層の銀塩溶液は抽出槽に移送される。
図1において、抽出槽は、分配槽(1)の下層及び有機溶媒供給源と流体連絡する。抽出槽に投入された有機溶媒と銀塩溶液は、ブレードの撹拌作用により混合されて互いに接触する。一実施形態において、抽出槽内の有機溶媒は連続相であり、銀塩溶液は液滴状である。別の一実施形態において、抽出槽内の有機溶媒は液滴状であり、銀塩溶液は連続相である。別の一実施形態において、抽出槽内の有機溶媒と銀塩溶液はいずれも連続相である。抽出槽は、液体投入口の反対側で分配槽(2)と連絡されているので、抽出槽に投入された液体は徐々に分配槽(2)へと移送される。分配槽(2)ではPUFAを含む有機溶媒(有機相)が上層に、銀塩溶液(水相)は下層に分離される。上層の有機溶媒は回収され、PUFA含有組成物が精製又は濃縮される。下層の銀塩溶液は銀塩溶液供給源に戻され、再び反応槽に投入される。
図1において、反応槽、抽出槽、分配槽、及びそれらを結ぶ流路は、密閉系かつ液体で満たされている。図1に示すように、反応槽及び抽出槽の内部の温度は、それぞれに設けられた冷媒又は熱媒によって制御することができる。また図1に示すように、反応槽及び抽出槽に対する液体の投入及び回収の速度及び量は、ポンプによって制御することができる。反応槽及び抽出槽における銀塩溶液及び原料液の線速度は、好ましくは0.5〜400cm/秒程度である。好ましくは、反応槽における銀塩溶液の温度は5〜30℃である。好ましくは、抽出槽における銀塩溶液の温度は30〜80℃である。
好ましい実施形態において、図1の装置における銀塩溶液のPUFA接触時間は、1回使用あたり平均で好ましくは10分以内、より好ましくは5分以内である。図1に示されるように、本発明で用いるPUFA含有組成物の製造方法では、反応槽及び抽出槽に対する銀塩溶液の投入と回収を並行的かつ連続的に行うことにより、連続的なPUFA含有組成物の抽出を可能にするため、従来のバッチ方式で採用されていたような大規模な反応槽を必要としない。本発明によれば、PUFA製造にかかる設備の小規模化が可能である。
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(参考例1)脂肪酸組成比の分析
測定試料12.5mgをn−ヘキサン1mLに希釈し、ガスクロマトグラフィー分析装置(Type 7890 GC;Agilent Technologies製)を用いて、以下の条件にて全脂肪酸中における各脂肪酸の含有比を分析した。結果は、クロマトグラムの面積から換算した質量%として表した。
<注入口条件>
注入口温度:250℃、スプリット比:10
<カラム条件>
カラム:J&W社製DB−WAX 0.25 mm×30 m、カラム温度:210℃
He流量:1.0 mL/min、He圧力:20 PSI
<検出条件>
流量:40 mL/min、Air流量:450 mL/min
He流量:1.00 mL/min、DET温度:260℃
分析した脂肪酸は、以下のとおりである:AA−E:アラキドン酸エチルエステル、DPA−E:ドコサペンタエン酸エチルエステル、DHA−E:ドコサヘキサエン酸エチルエステル、ETA−E:エイコサテトラエン酸エチルエステル、EPA−E:エイコサペンタエン酸エチルエステル。
(参考例2)銀塩溶液における遊離脂肪酸含有量の測定方法
1.標準溶液の調製
(1)ミリスチン酸0.114gを100mLメスフラスコに取り、ジメチルスルホキシドで100mLにメスアップした。
(2)別に100mLメスフラスコにトリエタノールアミン1.5gを取り、純水で100mLにメスアップした。
(3)別に100mLメスフラスコにエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム四水和物0.10gを取り、純水で100mLにメスアップした。
(4)(1)の溶液20mL、(2)の溶液10mL、(3)の溶液10mLを100mLメスフラスコに取り、純水で100mLにメスアップして標準溶液とした。
2.銅試液の調製
(1)硫酸銅(II)五水和物6.49g及び塩化ナトリウム20.0gをビーカーに取り、純水で溶かし、100mLメスフラスコに移し、ビーカーの洗液をあわせた後、純水で100mLにメスアップした。
(2)別に100mLメスフラスコにトリエタノールアミン14.9gを取り、純水で100mLにメスアップした。
(3)(1)の溶液と(2)の溶液を同量(容量比)で混合し、銅試液とした。
3.発色試液の調製
バソクプロイン0.189gを250mLメスフラスコに取り、2−ブタノールで250mLにメスアップした。
4.操作手順
(1)銀塩溶液5μL、標準溶液500μLをそれぞれキャップ付き試験管に取り、銅試液1mLを加えた。
(2)クロロホルム/ヘプタン混液(容量比1/1)3mLをそれぞれの試験管に加え、キャップを締めて3分間激しく手で振とうした。
(3)振とう後キャップを外して遠心分離(3,000rpm)を行った。
(4)上澄み液2mLを採取し、別の試験管にいれ、発色試液2mLを加えて軽く振り混ぜた。
(5)2〜3分後、純水を対照として475nmの吸光度を測定した。
5.計算式
下記の式(1)により、銀水溶液中の遊離脂肪酸濃度を算出した。
(式1)遊離脂肪酸濃度(meq/L)=(B/A)×(D/C)
A:標準溶液を用いたときの吸光度
B:試料溶液を用いたときの吸光度
C:試料採取量(μL)
D:標準溶液採取量(μL)
(参考例3)銀塩の測定方法
銀塩溶液及び原料液中の銀塩の量は、JIS K 0121に従い、原子吸光分析法により測定した。
(参考例4)銀塩溶液の線速度の測定方法
反応槽及び抽出槽における銀塩溶液の線速度は、反応槽又は抽出槽の長さと銀塩溶液が反応槽又は抽出槽を通過するのに要した時間から算出した。
銀塩溶液の線速度 (cm/sec)
=〔反応槽又は抽出槽の長さ (cm)〕/〔銀塩溶液が反応槽又は抽出槽を通過するのに要する時間 (sec)〕

銀塩溶液が反応槽又は抽出槽を通過するのに要する時間 (sec)
=〔反応槽又は抽出槽における銀塩溶液の容積 (mL)〕/〔反応槽又は抽出槽における銀塩溶液の流速 (mL/sec)〕
(材料)
原料油: AA−E 2.5%、ETA−E 1.7%、EPA−E 44
.5%、
DPA−E 2.1%、DHA−E 7.4%、
過酸化物価(POV)=1.0mEq/kg、
酸価(AV)=0.1mg/g
銀塩溶液: 50質量%硝酸銀水溶液
有機溶媒: シクロヘキサン
反応槽、抽出槽:並行流式の流路型攪拌機(スタティックミキサー、型番T3−27−2PT、内径3.4mm、長さ15.5cm;株式会社ノリタケカンパニーリミテド)
(実施例1)
連続方式により原料油からPUFAエチルエステルを精製した。原料油30gに対し有機溶媒14mLの比率で混合し、溶解させて原料液を得た。得られた原料液と銀塩溶液は、それぞれ15℃に冷却し、反応槽(流路型攪拌機)の一端(投入口)に接続したそれぞれの投入路から反応槽内に圧入し、反応槽内で互いに接触させた。120gの銀塩溶液は30g/分の流量で投入路から流入させ、41gの原料液は10.3g/分の流量で投入路から流入させた。反応槽内を流れる該銀塩溶液の線速度は7.5cm/秒、該反応槽内での該銀塩溶液の滞留時間は2秒であった。反応槽内の温度は20℃であった。
反応槽の反対側の端(回収口)は分配槽(1)に直結させ、該分配槽(1)の下部に水相(PUFA−銀錯体を含む銀塩溶液)を蓄積した。分配槽(1)での該水相の滞留時間は2.1分であった。該水相は、抽出槽(別の流路型攪拌機)の一端に接続した投入路から、33g/分の流量にて該抽出槽内部に圧入した。該抽出槽内の該水相の線速度は14cm/秒であった。並行して、65℃に加熱した140mLの有機溶媒を35mL/分の流量にて該抽出槽の同じ端に接続した投入路から流入させ、該抽出槽内で該水相と有機溶媒を接触させて該水相中のPUFAエチルエステルを有機溶媒に抽出した。抽出槽内の温度は60℃で、該抽出槽内での該水相の滞留時間は1秒であった。該抽出槽の反対側の端(回収口)は分配槽(2)に直結させ、該分配槽(2)の下部に蓄積した水相(銀塩溶液)を有機相と分離し回収した。別途有機相を分配槽(2)から回収し、有機溶媒を留去してPUFAエチルエステル含有組成物を得た。分配槽(2)から回収した水相(銀塩溶液)は、一部を遊離脂肪酸含有量の測定にあて、残りは再使用した。以上の一連の操作を1プロセスとして、このプロセスを10回繰り返した。1プロセスあたりの反応槽、分配槽(1)、抽出槽での水相(銀塩溶液)の滞留時間の合計を、銀塩溶液と原料液の接触時間として計算し、10プロセスでの平均値を求めた。原料液及び有機溶媒は、プロセスの都度新しいものと入れ換えた。該プロセス中、投入路、反応槽、抽出槽、分配槽(1)及び(2)、ならびにそれらを連絡する流路は、常に液体(原料液、銀塩溶液又は有機溶媒)で満たされており、一連の操作は全て低酸素条件下で行われた。
(比較例1)
バッチ法により原料油からPUFAエチルエステルを精製した。原料油30gと有機溶媒14mLとをよく攪拌混合し、溶解させて原料液を得た。フラスコに銀塩溶液120gと原料液41gを加え、窒素雰囲気(酸素濃度0.4%)下、20℃で20分間、300rpmの速度にて攪拌した。攪拌後の液体を15分間、20℃で静置し、分離した有機相を除去し、水相(PUFA−銀錯体を含む銀塩溶液)を回収した。得られた水相を60℃に加温し、有機溶媒140mLを加え、60℃の条件下で20分間、300rpmの速度にて攪拌して、水相中のPUFAエチルエステルを有機相に抽出した。攪拌後の液体を静置し、分離した有機相を回収した後、濃縮して、PUFAエチルエステル含有組成物を得た。残った水相(銀塩溶液)は回収して、一部を遊離脂肪酸含有量の測定にあて、残りは再使用した。以上の一連の操作を1プロセスとして、このプロセスを都度新しい原料を用いて10回行った。1プロセスにおける原料液と銀塩溶液との混合からPUFAエチルエステルを含む有機相の分離までの時間を銀塩溶液と原料液の接触時間として計算し、10プロセスでの平均値を求めた。
(試験例1)PUFA含有組成物の脂肪酸組成及び収量
原料油、実施例1及び比較例1で得られたPUFA含有組成物の脂肪酸組成、ならびに実施例1及び比較例1で得られたPUFA含有組成物の収量を、参考例1に従って測定した。その結果を表1に示す。
(試験例2)酸価(AV)
実施例1及び比較例1の各プロセスで得られたPUFA含有組成物10検体について、それぞれ酸価(AV値)を測定し、10検体の平均値を求めた。また原料液の酸価(AV値)を測定した。その結果を表2に示す。
(試験例3)銀塩溶液中の硝酸銀量
実施例1及び比較例1の各プロセスで使用した後の原料液中の硝酸銀量を参考例3に従って測定した。使用前の銀塩溶液中の硝酸銀量に基づいて、原料液に移行して損失した硝酸銀量(ロス率)を計算した。その結果を10検体の平均値として表2に示す。
表1に示すとおり、実施例1の方法で得られたPUFA含有組成物の収量、及びその脂肪酸組成は、従来のバッチ法(比較例1)と同等であった。一方で、表2に示すとおり、同量の原料油を処理する場合であっても、実施例1の方法で得られたPUFA含有組成物は、従来のバッチ法(比較例1)と比べて酸価の上昇が抑えられていた。実施例1の方法では原料液と銀塩溶液の接触時間をより少なくすることができたために、PUFA含有組成物の酸価上昇を抑制することができたと考えられる。そのため、本発明の方法では、従来法に比べて、収量を低下させることなく品質の良いPUFA含有組成物が得られることが分かった。また、実施例1の方法では、従来法(比較例1)と比べて硝酸銀のロス率が大幅に低下しており、銀塩溶液の利用効率を顕著に向上させることができた。
(試験例4)銀塩溶液の線速度とPUFA収量との関係
反応槽内での銀塩溶液の線速度を表3のように変化させた以外は、実施例1と同様の手順でPUFA含有組成物を製造した。また、反応槽及び抽出槽のサイズを内径8mm、長さ26cmに変更して、実施例1と同様の手順でPUFA含有組成物を製造した(実施例10)。得られたPUFA含有組成物の脂肪酸組成を参考例1に従って測定し、組成物中のEPA−E含有量(%)及び原料油中からのEPA−E回収率(%)を算出した。その結果を表3に示す。
表3に示すとおり、反応槽に投入される銀塩溶液の線速度が0.5cm/秒以上であると、得られたPUFA含有組成物のEPA−Eの含有量が高く、また原料油からのEPA−E回収率も57%以上の高率で精製することができた。
(試験例5)処理時間と銀塩溶液劣化との関係
実施例1及び比較例1における、1プロセスあたりの銀塩溶液のPUFA接触時間と使用後の銀塩溶液中のFFA含有量の増加分の平均値(プロセス10回分)を表4に示す。
(試験例6)銀塩溶液の劣化(色調変化)
実施例1と比較例1において、10プロセス繰り返し使用した銀塩溶液の外観と色調(ガードナー色数)を比較した。溶液のガードナー色数は、ガードナー標準液と比較して目視による官能試験を3人で行い、その平均値を採用することで評価した。結果を表5に示す。
表4に示すとおり、銀塩溶液のFFA含有量は、PUFA接触時間に伴って増加した。連続方式を用いた実施例1では、バッチ方式による比較例1と比べて、銀塩溶液のPUFA接触時間がより短く、FFA含有量の増加も少なかった。また表5に示すとおり、実施例1では、比較例1と比べて銀塩溶液の色調変化が少なかった。このことから、実施例1では銀塩溶液の劣化が抑制されていたことが示された。
(試験例7)銀塩溶液の劣化レベル(遊離脂肪酸含有量)の比較
実施例1及び比較例1と同様の手順で、PUFAエチルエステル精製のプロセスを繰り返した。数プロセスごとに、使用後の銀塩溶液中の遊離脂肪酸(FFA)含有量を、参考例2に従って測定した。銀塩溶液の繰り返し使用回数(プロセス数)に伴う遊離脂肪酸(FFA)含有量の経時的変化を図2に示す。
(試験例8)銀塩溶液の使用量とPUFA収量との関係
実施例1及び比較例1と同様の手順で、銀塩溶液のFFA含有量が10mEq/Lを超過するまで、PUFAエチルエステル精製のプロセスを繰り返した。得られたPUFA含有組成物の累積収量を表6に示す。実施例1のような連続方式では、比較例1のようなバッチ方式と比べて、PUFA含有組成物の収量が8倍以上に増加した。このことから、実施例1のような連続方式では、銀塩溶液の劣化を抑えて繰り返し使用することができること、したがって、PUFA含有組成物の生成に必要な銀塩溶液の量を、バッチ方式と比べて顕著に低減することができることが示された。
(試験例9)原料液POVと銀塩溶液劣化との関係
原料油の酸化劣化が銀塩溶液の劣化に与える影響を調べた。酸化指標(POV及びAV)の異なる下記原料油A〜Dを用いて、実施例1に従ってPUFAエチルエステル精製を行った。また、下記原料油C〜Dを用いて、比較例1に従ってPUFAエチルエステル精製を行った。3回繰り返し使用(3プロセス)後における銀塩溶液のFFA含有量の変化を調べた。結果を表7に示す。
原料油A:POV=1.0mEq/kg、AV=0.2mg/g
原料油B:POV=11.6mEq/kg、AV=0.1mg
原料油C:POV=40.5mEq/kg、AV=0.2mg
原料油D:POV=1.3mEq/kg、AV=5.3mg
(脂肪酸組成はいずれも、AA−E 2.8%、ETA−E 1.8%、EPA−E 44.7%、DPA−E 2.0%、DHA−E 7.7%)
(試験例10)向流を利用した連続方式によるPUFAエチルエステルの精製における銀塩溶液の劣化レベル
(材料)
原料油: AA−E 2.6%、ETA−E 1.7%、EPA−E 44
.5%、
DPA−E 2.1%、DHA−E 7.4%、
過酸化物価(POV)=1.0mEq/kg、
酸価(AV)=0.1mg/g
銀塩溶液: 50質量%硝酸銀水溶液
有機溶媒: シクロヘキサン
反応槽、抽出槽:向流式の流路型攪拌機。有機相を充填したカラムの上部から銀塩溶液を投入し、振動機で微細化しながらカラム内を沈降させて有機相と接触させる。カラム(内径20mm、長さ20cm、円筒型)、銀塩溶液投入口(ノズル、内径約1mm)の先端の位置は、有機相(原料液、有機溶媒)の上面下2cm以内、銀塩溶液回収口はカラム下部。
原料油30gに対し有機溶媒14mLの比率で混合し、溶解させて原料液を得た。得られた原料液47mLを、第一のカラム(反応槽)に充填し、上部からアルゴンガスを吹き込みカラム内から空気を追い出した(カラム内酸素濃度0.1%以下)。カラム内の投入口より、銀塩溶液120gを10g/分の流量で滴下し、原料液と銀塩溶液を接触させた。滴下する銀塩溶液は振動機にて微細化した。銀塩溶液の滴下と並行して、カラム下部に蓄積した水相を11g/分の量で回収した。カラムの投入口のノズル先端から水相上面までの距離は13cmを維持した。反応槽内を流れる該銀塩溶液の線速度は0.1cm/秒、該反応槽内での該銀塩溶液の滞留時間は157秒であった。原料液と銀塩溶液の温度は20℃であった。続いて、60℃の有機溶媒で充填した第二のカラム(抽出槽、アルゴンガスを吹き込み、空気を追い出した)に、カラム内の投入口より、第一のカラムから回収した水相(PUFAエチルエステルを含む銀塩溶液)を11g/分の流量で滴下しながら、カラム下部からは、60℃の有機溶媒を注入した。これにより、水相と有機溶媒を接触させて、水相中のPUFAエチルエステルを有機相に抽出した。水相の滴下及び有機溶媒の注入と並行して、第二のカラム下部に蓄積した銀塩溶液を10g/分の流量で回収しながら、PUFAエチルエステルを抽出した有機相をカラム上部から回収した。第二のカラムの投入口のノズル先端から水相上面までの距離は13cmを維持した。抽出槽内を流れる該水相の線速度は0.1cm/秒、該反応槽内での該銀塩溶液の滞留時間は157秒であった。第二のカラムより回収した有機相(PUFAエチルエステルを含む有機溶媒)は、濃縮して、PUFAエチルエステル含有組成物を得た。第二のカラムより回収した水相(銀塩溶液)は、一部を遊離脂肪酸含有量の測定にあて、残りは再使用した。以上の一連の操作を1プロセスとして、このプロセスを繰り返した。第一のカラム内の原料液は、プロセスの都度新しいものと入れ換えた。
数プロセスごとに、使用後の銀塩溶液中の遊離脂肪酸(FFA)含有量を、参考例2に従って測定した。銀塩溶液の繰り返し使用(プロセス数)に伴う遊離脂肪酸(FFA)含有量の経時的変化を図3に示す。

Claims (18)

  1. 高度不飽和脂肪酸含有組成物の製造方法であって:
    高度不飽和脂肪酸のアルキルエステルを含有する原料液と銀塩を含む水性溶液とを、流路型攪拌機へ投入してそれらを接触させること;及び
    該原料液と接触させた該銀塩を含む水性溶液を回収すること、
    を含み、
    該流路型攪拌機における該銀塩を含む水性溶液の線速度が0.5cm/秒以上であり、
    該銀塩を含む水性溶液の、該流路型攪拌機への投入と、該回収とが並行して行われる、方法。
  2. 前記流路型攪拌機から回収した銀塩を含む水性溶液と有機溶媒とを抽出槽へ投入してそれらを接触させること;及び
    該銀塩を含む水性溶液と接触させた該有機溶媒を回収すること、
    をさらに含み、
    該銀塩を含む水性溶液の該抽出槽への投入と、該有機溶媒の回収とが並行して行われる、
    請求項1記載の方法。
  3. 前記原料液と接触させた銀塩を含む水性溶液の回収が、前記銀塩を含む水性溶液と前記原料液との混合液を前記流路型攪拌機から回収し、次いで、回収した該混合液から該銀塩を含む水性溶液を分取することを含む、請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記銀塩を含む水性溶液と接触させた有機溶媒の回収が、前記銀塩を含む水性溶液と前記有機溶媒との混合液を前記抽出槽から回収し、次いで、回収した該混合液から該有機溶媒を分取することを含む、請求項2又は3記載の方法。
  5. 前記流路型攪拌機から回収した後の前記原料液を、再度流路型攪拌機へ投入することをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
  6. 前記銀塩を含む水性溶液の前記流路型攪拌機への投入、前記原料液との接触、及び該流路型攪拌機からの回収が低酸素条件下で行われる、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  7. 前記流路型攪拌機が内径0.1〜100cm、長さ0.05〜10mである、請求項1〜のいずれか1項記載の方法。
  8. 前記流路型攪拌機における前記銀塩を含む水性溶液の滞留時間が0.02〜300秒である、請求項1〜のいずれか1項記載の方法。
  9. 前記原料液と接触するときの前記銀塩を含む水性溶液の温度が5〜30℃である、請求項1〜のいずれか1項記載の方法。
  10. 前記流路型攪拌機が並行流式又は向流式の流路型攪拌機である、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
  11. 前記抽出槽が流路型攪拌機である、請求項2〜10のいずれか1項記載の方法。
  12. 前記抽出槽が並行流式又は向流式の流路型攪拌機である、請求項11記載の方法。
  13. 前記抽出槽における前記銀塩を含む水性溶液の線速度が0.5cm/秒以上である、請求項11又は12記載の方法。
  14. 前記抽出槽が内径0.1〜100cm、長さ0.05〜10mである、請求項11〜13のいずれか1項記載の方法。
  15. 前記抽出槽における前記銀塩を含む水性溶液の滞留時間が0.02〜300秒である、請求項11〜14のいずれか1項記載の方法。
  16. 前記有機溶媒と接触するときの前記銀塩を含む水性溶液の温度が30〜80℃である、請求項2〜15のいずれか1項記載の方法。
  17. 前記高度不飽和脂肪酸のアルキルエステルを含有する原料液の酸化指標がPOV 10以下、又はAV 0.3以下である、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
  18. 前記高度不飽和脂肪酸がエイコサペンタエン酸又はドコサヘキサエン酸を含む、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
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