JP6514587B2 - ナフテン系炭化水素用の脱水素触媒の製造方法、水素の製造システムの製造方法及び水素の製造方法 - Google Patents

ナフテン系炭化水素用の脱水素触媒の製造方法、水素の製造システムの製造方法及び水素の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭化水素用の脱水素触媒、水素の製造システム及び水素の製造方法に関する。
近年、環境負荷の小さい水素を燃料とする燃料電池を、自動車等の動力源に用いることが期待されている。水素の輸送、貯蔵及び供給の過程では、例えば、ナフテン系炭化水素(環状炭化水素)が利用される。例えば、水素の製造施設において、芳香族炭化水素の水素化により、ナフテン系炭化水素を生成させる。このナフテン系炭化水素を、水素の消費地へ輸送したり、消費地で貯蔵したりする。消費地において、ナフテン系炭化水素の脱水素により、水素と芳香族炭化水素とを生成させる。この水素を燃料電池へ供給する。ナフテン系炭化水素は、常温において液体であり、水素ガスよりも体積が小さく、水素ガスよりも反応性が低く安全である。そのため、ナフテン系炭化水素は水素ガスよりも輸送及び貯蔵に適している。
ナフテン系炭化水素用の脱水素触媒としては、白金‐レニウムのバイメタルをアルミナ担体に担持させた触媒が知られている(下記非特許文献1参照。)。
R.W.Coughlin, K.Kawakami, Akram Hasan, Journal of Catalysis, Vol. 88, 150‐162 (1984).
本発明は、優れた脱水素活性を有する炭化水素用の脱水素触媒、並びに当該脱水素触媒を用いた水素の製造システム及び水素の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一側面に係る炭化水素用の脱水素触媒は、複数の担体と、担体に担持されたPtと、を備える脱水素触媒であって、脱水素触媒の赤色濃度の標準偏差が、0.030以下である。
本発明の一側面に係る上記脱水素触媒では、担体がAlを含んでいてよい。
本発明の一側面に係る上記脱水素触媒では、担体が第3族金属を含んでいてよい。
本発明の一側面に係る上記脱水素触媒では、Ptを含む溶液に担体を浸漬する方法により、Ptが担体に担持されてよい。
本発明の一側面に係る上記脱水素触媒では、担体が、多孔性無機酸化物の成型物であってよい。
本発明の一側面に係る上記脱水素触媒では、複数の担体のうち、少なくとも2つの担体が同一の組成を有してよい。
本発明の一側面に係る水素の製造システムは、上記脱水素触媒を有し、脱水素触媒を用いた炭化水素の脱水素により、水素を生成させる脱水素反応器を備える。
本発明の一側面に係る水素の製造方法は、上記脱水素触媒を用いた炭化水素の脱水素により、水素を生成させる工程を備える。
本発明の一側面に係る上記水素の製造方法では、炭化水素が、ナフテン系炭化水素であってよい。
本発明によれば、優れた脱水素活性を有する炭化水素用の脱水素触媒、並びに当該脱水素触媒を用いた水素の製造システム及び水素の製造方法を提供することができる。
図1は、本発明に係る水素の製造システムの一実施形態を示す模式図である。 図2は、実施例1に係る脱水素触媒の赤色濃度を算出するために用いた画像である。 図3は、比較例1に係る脱水素触媒の写真である。 図4は、実施例3及び比較例1に係る脱水素触媒其々の赤色濃度の分布を示すヒストグラムである。 図5は、実施例3及び比較例1に係る脱水素触媒其々の赤色濃度の確率密度関数を示すグラフである。
本発明者らは、鋭意研究の結果、脱水素触媒におけるPtの担持量のばらつきが、脱水素触媒の活性に影響することを発見した。そして、本発明者らは、脱水素触媒におけるPtの担持量のばらつきを低減することにより、脱水素活性が向上することを発見した。これらの発見に基づき、本発明者らは本発明を完成させた。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。
(脱水素触媒)
本実施形態に係る炭化水素用の脱水素触媒は、複数の担体と、担体に担持されたPtと、を備える。脱水素触媒の赤色濃度xの標準偏差σは、0.030以下である。本実施形態に係る脱水素触媒は、Ptが担持された複数の担体の集合である。ただし、以下では、Ptが担持された個々の担体を脱水素触媒ということもある。例えば、脱水素触媒の赤色濃度xとは、Ptが担持された個々の担体の赤色濃度xと言い換えてよい。
脱水素触媒の赤色濃度xとは、脱水素触媒の赤色の度合いと言い換えてよい。脱水素触媒の赤色濃度xは、後述する画像解析に基づいて算出される。「赤色」とは、RGBカラーモデルにおける赤色(Red)と定義される。本実施形態では、ブラックの赤色濃度を0と定義し、ホワイトの赤色濃度を1と定義する。脱水素触媒の赤色濃度xは、ブラックの赤色濃度(0)及びホワイトの赤色濃度(1)を基準とする相対値である。本実施形態では、ブラックの赤色濃度を最小値と定義し、ホワイトの赤色濃度を最大値と定義する。したがって、脱水素触媒の赤色濃度xは1を超えない。脱水素触媒の赤色濃度xは0を下回らない。つまり、赤色濃度xは0〜1である。赤色濃度xの値が1に近いほど、脱水素触媒の赤色が濃い。脱水素触媒の赤色濃度xの値が0に近いほど、脱水素触媒の赤色が薄い。本実施形態において、高い赤色濃度は、大きい赤色の輝度値に相当する。本実施形態において、低い赤色濃度は、小さい赤色の輝度値に相当する。脱水素触媒の赤色濃度xの測定には、基準(指標)として、日本工業規格「JIS Z 8102:2001 物体色の色名」付表1に示される、「ブラック」及び「ホワイト」を用いてよい。ブラックのマンセル値はN1である。ホワイトのマンセル値はN9.5である。
脱水素触媒の赤色濃度xは、脱水素触媒の画像を解析することにより求めることができる。例えば、以下の手順で脱水素触媒の画像を解析する。
まず、Ptが担持された任意のN個の担体(脱水素触媒)を水平面上に配置する。個々の担体は、互いに接触しないように配置される。これにより、解析ソフトウェアが、各担体を識別することができる。次に、ブラックの色見本及びホワイトの色見本を、脱水素触媒に並置する。脱水素触媒を各色見本と共に撮影して、脱水素触媒の画像を取得する。次に、解析ソフトウェアを用いて、脱水素触媒の画像を解析する。解析ソフトウェアとしては、例えば、(株)日本ローパー製のImage−Pro Plus Version 7.0.1.658を用いてよい。画像解析により、ブラックの色見本の赤色濃度及びホワイトの色見本の濃度を基準とするN個の担体其々の赤色濃度xの標準偏差σを算出する。なお、脱水素触媒を撮影する方法は特に限定されない。例えば、デジタルカメラ又は光学顕微鏡等で脱水素触媒を撮影してよい。
脱水素触媒の赤色濃度xの標準偏差σは、下記式(1)に従って算出される。
式(1)中、Nは、脱水素触媒を構成する担体の個数(サンプル数)である。サンプル数Nは、解析ソフトウェアによって識別された担体の数と言い換えてもよい。Nは、2以上の整数である。Nは、特に限定されないが、50〜1000であってよい。xとは、脱水素触媒を構成するN個の担体のうち、i番目の担体の赤色濃度である。iは1〜Nの整数である。μとは、N個の担体の赤色濃度の平均値である。μは下記式(2)で表される。
標準偏差σは、赤色濃度xのばらつきを示す指標である。標準偏差σが小さいことは、脱水素触媒の赤色濃度xのばらつきが小さいことを意味する。脱水素触媒の赤色濃度xと脱水素触媒におけるPtの担持量との間には、負の相関関係がある。脱水素触媒におけるPtの担持量が多いほど、脱水素触媒の赤色濃度xが小さい。また、脱水素触媒におけるPtの担持量が少ないほど、脱水素触媒の赤色濃度xが大きい。赤色濃度xの標準偏差σが小さいことは、脱水素触媒におけるPtの担持量のばらつきが小さいことを意味する。
上述の通り、本実施形態に係る脱水素触媒の赤色濃度xの標準偏差σは、0.030以下である。本実施形態に係る脱水素触媒におけるPtの担持量が、従来の脱水素触媒におけるPtの担持量と等しい場合、本実施形態に係る脱水素触媒は、赤色濃度xの標準偏差σが0.030を超える従来の脱水素触媒と比較して、優れた脱水素活性を有する。脱水素活性とは、以下のような炭化水素の脱水素反応を促進する活性である。
脱水素触媒による炭化水素の脱水素反応は、例えば、以下のような経路で進行すると考えられる。まず、還元雰囲気において、炭化水素が脱水素触媒の表面近傍に位置するPt(活性点)に接触する。Ptが炭化水素から少なくとも一対の水素原子を引き抜いて、水素分子と不飽和炭化水素が生成する。
脱水素活性は、炭化水素の転化率Rcに基づいて評価される。脱水素触媒の単位体積当たりの転化率Rcが高いことは、脱水素触媒の脱水素活性が高いことを意味する。転化率Rcは、例えば、下記式(3)により定義される。
Rc(単位:%)=(M/M)×100={M/(M+M)}×100 (3)
式(3)中、Mとは、脱水素触媒が配置された反応容器へ供給される炭化水素のモル数である。Mとは、脱水素反応の生成物中に含まれる不飽和炭化水素のモル数である。換言すると、Mとは、炭化水素の脱水素により生成した不飽和炭化水素のモル数である。Mとは、脱水素反応後に残存する原料(脱水素されなかった炭化水素)のモル数である。
本発明者らによる推測によると、標準偏差σと脱水素活性との関係は、以下の通りである。
標準偏差σが大きいほど、赤色濃度xが低過ぎる担体の個数が多い。つまり標準偏差σが大きいほど、過剰量のPtが表面に担持された担体の個数が多い。過剰量のPtが表面に担持された担体では、Ptが凝集し易い。Ptの凝集により、Ptの表面積(活性点の数)が減少する。その結果、脱水素反応が進行し難くなる。つまり、脱水素活性が低下する。以上を要約すれば、標準偏差σが大きいほど、脱水素活性が低下し易い。一方、標準偏差σが小さい場合、Ptが複数の担体に均一に担持されている。つまり、標準偏差σが小さい場合、Ptが複数の担体にわたって斑なく分散している。Ptの分散により、脱水素触媒全体におけるPtの表面積(活性点の数)が増加し、脱水素活性が向上する。特に標準偏差σが0.030以下である場合、優れた脱水素活性が発現する。0.030という標準偏差σの臨界値は、本発明者らによる実験によりはじめて見出された値である。0.030が臨界値であることの理論的な理由は定かでない。
本実施形態に係る脱水素触媒におけるPtの担持量が、標準偏差σが0.030を超える従来の脱水素触媒に比べて少ない場合であっても、本実施形態に係る脱水素触媒は、従来の脱水素触媒と同等以上の触媒活性を有することが可能である。したがって、本実施形態では、脱水素活性を犠牲にすることなく、高価なPtの担持量を低減することが可能となる。
上記の通り、標準偏差σは小さいほど好ましい。標準偏差σは、例えば、0.027以下であってよく、0.020以下であってもよい。標準偏差σの下限値は0.000であってよい。標準偏差σは、0.000以上であってよく、0.007以上であってよい。つまり、標準偏差σは、0.000〜0.030、0.000〜0.027、0.000〜0.020、0.07〜0.030、0.07〜0.027、又は0.07〜0.020であってよい。
標準偏差σは、未使用の脱水素触媒の赤色濃度xから算出される。脱水素触媒を用いて炭化水素を脱水素した場合、炭化水素に由来するコークが脱水素触媒の表面に堆積する。使用後の脱水素触媒の赤色濃度xは、Ptのみならず、コークに影響される。したがって、脱水素触媒の使用前後においてPtの担持量が一定であったとしても、使用後の脱水素触媒の赤色濃度xは、未使用の脱水素触媒の赤色濃度xと必ずしも一致しない。使用後の脱水素触媒の赤色濃度xの標準偏差σも、未使用の脱水素触媒の赤色濃度xの標準偏差σと必ずしも一致しない。使用後の脱水素触媒の赤色濃度xの標準偏差σを求める場合、脱水素触媒を焼成した後に上記の画像解析を行えばよい。焼成によりコークが除去され、コークが赤色濃度xに及ぼす影響が低減される。
担体は、多孔性無機酸化物を含んでいてよい。多孔性無機酸化物の含有により、脱水素触媒の比表面積が増加する。多孔性無機酸化物は、例えば、Al、TiO及びSiOからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。多孔性無機酸化物は、Al、Ti及びSiからなる群より選択される少なくとも一種を含む複合酸化物であってよい。複合酸化物は、AlとTiとの複合酸化物、AlとSiとの複合酸化物、TiとSiとの複合酸化物、又はAlとTiとSiとの複合酸化物等であってよい。
担体は、多孔性無機酸化物のみからなっていてよい。担体は、例えば、Alのみからなっていてよい。Alの種類は限定されないが、Alの具体例としては、α−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、γ−アルミナ又はアルマイトが挙げられる。酸化アルミニウムの比表面積は、特に限定されないが、おおよそ100〜500m/gの範囲内に収まる。
担体におけるAlの含有量は、担体の全質量を基準として、50〜99.5質量%又は50〜100質量%であってよい。Alの含有量が上記範囲である場合、脱水素活性が一層向上する傾向がある。
担体は、長周期表第3族に属する金属元素(第3族金属)を含んでいてよい。
第3族金属は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド及びアクチノイドからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。ランタノイドとしては、例えば、ランタン(La)又はセリウム(Ce)が挙げられる。これらの第3族金属のうち、Ceが最も好ましい。
第3族金属は、金属単体として担体に含有されていてよい。第3族金属は、酸化物として、担体に含有されていてもよい。第3族金属は、多孔性無機酸化物との複合酸化物を構成していてもよい。担体は、多孔性無機酸化物と第3族金属とから構成される複合酸化物のみからなっていてもよい。第3族金属は、多孔性無機酸化物の内部に含まれていてよく、多孔性無機酸化物の表面に担持されていてもよい。
担体が第3族金属を含む場合、脱水素活性がより向上し易い傾向がある。第3族金属を担体に添加すると、その物理的、電子的又は化学的な作用により、触媒表面で活性点として作用するPtが増加したり、活性点としてのPtの機能が増大したりするため、このような効果が得られると本発明者らは考える。また、本発明者らは、担体が第3族金属を含むことにより上記効果が得られる具体的な理由の一つは以下の通りである、と考える。
担体が第3族金属を含有する場合、多孔性無機酸化物又は第3族金属の酸化物を構成する酸素の一部が還元雰囲気において担体から脱離して、担体に多数の格子欠陥が形成される。この格子欠陥にPtが嵌り込むことにより、Ptが担体に固定される。その結果、脱水素反応時の加熱によってPtがより高分散な状態となり、かつPtの担体表面における移動及び凝集がより抑制される。つまり、担体が第3族金属を含有することにより、従来の脱水素触媒に比べて、脱水素反応中のPtの表面積がより増大し、Ptの凝集がより抑制される。これにより、脱水素活性及び耐久性がより向上する。このような効果は、多孔性無機酸化物がAlであり、第3族金属がCeである場合に顕著である。第3族金属に起因する格子欠陥の形成は、例えば、脱水素触媒のX線光電子分光(XPS)のスペクトルにおいて酸化物を構成する第3族金属に由来するピークの化学シフトを観察することによって確認することができる。
担体が第3族金属を含む場合、担体が第3族金属を含まない場合に比べて、脱水素反応中のPtの凝集がより抑制される。そのため、脱水素反応に伴う経時的な失活がより抑制され易く、高い脱水素活性がより長期間にわたり維持され易い。
担体が第3族金属を含まない場合であっても、本実施形態に係る脱水素触媒は優れた脱水素活性を有する。
担体における第3族金属の含有量は、特に限定されないが、第3族金属の酸化物換算で、担体全体の質量に対して、0.1〜5.0質量%であってよい。担体全体の質量とは、第3族金属の酸化物の質量を含む。第3族金属の含有量が上記の下限値以上であることにより、Pt表面積がより増加して、脱水素活性がより向上する傾向がある。第3族金属の含有量が上記の上限値以下であることにより、脱水素触媒の機械的強度を維持しつつ、Pt表面積を増加させ易くなる。また、第3族金属の含有量が上記の上限値以下であることにより、製造過程における担体の成形が容易になる。第3族金属の含有量が上記の上限値を大きく超えた場合、担体の性能が低下して、Pt表面積が減少する傾向がある。しかし、第3族金属の含有量が上記数値範囲を外れる場合であっても、本発明の効果は達成される。例えば、担体における第3族金属の含有量は、第3族金属の酸化物換算で、Al100質量部に対して、0質量部より大きく、20質量部以下であってよい。担体における第3族金属の含有量は、第3族金属の酸化物換算で、Al100質量部に対して、0質量部より大きく、10質量部以下であってもよい。担体における第3族金属の含有量は、第3族金属の酸化物換算で、Al100質量部に対して、0.3〜5.0質量部であってよく、2.0〜3.0質量部であってもよい。担体における第3族金属の含有量が、第3族金属の酸化物換算で、Al100質量部に対して、2.0〜3.0質量部である場合、Pt表面積が特に増大し易く、脱水素活性がより一層向上し易い傾向がある。
本実施形態では、複数の担体のうち、少なくとも2つの担体が同一の組成を有してよい。この場合、Ptが個々の担体に均一に担持され易い。つまり、担体の組成が同じである場合、個々の担体におけるPtの担持速度を均一に制御し易い。その結果、各担体の赤色濃度xが均一になり易く、赤色濃度xの標準偏差σが減少し易い。同様の理由から、脱水素触媒を構成する全ての担体の組成が同一であってもよい。
担体の形状は、特に限定されない。担体は、成形又は成型されていてよい。担体は、例えば、球状又は柱状であってよい。柱状の担体の断面は、円状、三葉状、又は四葉状であってよい。担体は、プレート状、又はハニカム状であってよい。
担体の長径(例えば直径)は、特に限定されないが、1〜4mmであってよい。
Ptは、多数の原子、クラスター又は微粒子として、担体に担持されていてよい。担体に担持されたPtの微粒子の粒径は、特に限定されないが、例えば10nm以下であればよく、例えば1.6〜2.1nmであってもよい。
脱水素触媒におけるPtの担持量は、脱水素触媒の全質量基準で、0.1〜1質量%であってよい。脱水素触媒におけるPtの担持量が上記の下限値以上である場合、脱水素活性がより向上する傾向がある。また、脱水素触媒におけるPtの担持量が上記の上限値を超える場合、Ptの担持量の増加に伴う触媒活性の向上の程度が緩やかになる。Ptの価格は非常に高いため、脱水素触媒の実用化のためにはPtの担持量が限られる。
担体には、Ptのみが担持されていてよい。担体には、Pt以外の他の金属成分が担持されていてもよい。Ptは金属単体として担体に担持されていてよく、他の金属成分との合金として、担体に担持されていてもよい。
脱水素触媒の形状は、上述した担体の形状と同一であってよい。脱水素触媒の長径は、上述した担体の長径と同程度であってよい。
(脱水素触媒の製造方法)
本実施形態に係る脱水素触媒の製造方法は、例えば、複数の担体を準備する第1工程と、複数の担体にPtを担持する第2工程と、を備える。
[第1工程]
担体は、公知の方法により作製することができる。担体の形成方法は、例えば、混練法、ゾルゲル法、又は共沈法であってよい。例えば、担体が第3族金属を含有する場合、安定な多孔質構造を有する前の無機酸化物(例えばAl)又はその前駆体と、第3族金属化合物と、を混合してよい。得られた混合物から、多孔質構造を有する担体を作製してよい。
第3族金属化合物は、例えば、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩、塩化物、アルコキシド、アセチルアセトナート等であってよい。
多孔性無機酸化物と、第3族金属の酸化物と、を物理的に混合して、担体を作製してもよい。多孔性無機酸化物の原料粉末と、第3族金属化合物と、を混合して成型してもよい。得られた成型体を焼成することにより、担体を得てもよい。多孔性無機酸化物の原料粉末は、例えば、γ−アルミナの原料であるベーマイト(Boehmite)であってよい。この場合の焼成温度は、第3族金属化合物の熱分解が進行し、且つベーマイトの焼結によりγ−アルミナが生成する温度であればよい。このような焼成温度は、例えば300〜600℃程度である。
Al及び第3属金属を含む担体は、以下の方法で作製してもよい。まず、擬ベーマイト状態のアルミニウムの水酸化物、第3族金属の硝酸塩の水溶液、及び稀硝酸を混練して混練物を調製する。次いで、混練物の押出し成形によってペレットを作製する。得られたペレットを焼成することにより、担体を作製する。このような方法によって担体を作製することにより、担体において第3族金属が分散し易い。このような担体を用いて作製された脱水素触媒では、Pt表面積が大きくなり易く、高い脱水素活性が得られ易い。擬ベーマイト状態のアルミニウムの水酸化物は、例えば、AlOOH又はAl・HOという組成式で表される。混練物は、ドウ(dough)とも呼ばれる。混練物のpHは、3〜7に調整すればよい。pHの調整により、混練物が適度な粘度を有し、混練物を成形し易くなる。混練物のpHは、硝酸の添加量によって変動する。混練物にアンモニア水を添加することにより、混練物のpHを調整してもよい。
第3族金属を含む溶液(例えば水溶液)を多孔性無機酸化物に担持する方法により、担体を作製してもよい。第3族金属を含む溶液は、例えば、第3族金属化合物を溶媒に溶解させることにより調製することができる。第3族金属を含む溶液を多孔性無機酸化物に担持する方法は、例えば、含浸法(incipient wetness法、又はpore filling法)、吸着法、浸漬法(化学吸着法)、蒸発乾固法、噴霧法、イオン交換法、液相還元法等であってよい。これらの方法により、多孔性無機酸化物の表面に第3族金属の塩を付着させる。第3族金属の担持量は、第3族金属を含む溶液における第3族金属化合物の濃度又は第3族金属を含む溶液の使用量によって調整すればよい。
第3族金属の塩が付着した多孔性無機酸化物を焼成して塩を分解することにより、第3族金属が多孔性無機酸化物に担持される。焼成温度は、塩の熱分解が進行する温度であればよく、例えば300〜600℃程度であればよい。
焼成前又は焼成後の担体を、所定の形状に成形又は成型してよい。担体として、市販の多孔性無機酸化物を用いてよい。
[第2工程]
第2工程では、浸漬法(化学吸着法)により、複数の担体にPtを担持する。浸漬法は、含浸法とは異なる。含浸法では、Ptを含む溶液(Pt溶液)を担体に滴下することにより、Ptを含む溶液を担体に染み込ませる。含浸法では、脱水素触媒におけるPtの担持量がばらつき易い。一方、浸漬法では、複数の担体の全部をPt溶液中に浸漬することにより、Pt溶液を担体に染み込ませる。浸漬法によれば、Ptが複数の担体へ均一に担持し易い。したがって、浸漬法によれば、脱水素触媒の赤色濃度xの標準偏差σを0.030以下に制御し易い。
Pt溶液は、例えば、Ptの化合物を溶媒に溶解させることにより調製される。Ptの化合物は、特に限定されないが、液体の溶媒に可溶であることが求められる。Ptの化合物は、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩、塩化物、アルコキシド、アセチルアセトナート等であってよい。
Ptの化合物は、テトラクロロ白金酸、テトラクロロ白金酸カリウム、テトラクロロ白金酸アンモニウム、テトラクロロ白金酸ナトリウム、ビス(アセチルアセトナート)白金、ジアンミンジクロロ白金、ジニトロジアンミン白金、テトラアンミン白金ジクロライド、テトラアンミン白金水酸塩、テトラアンミン白金硝酸塩、テトラアンミン白金酢酸塩、テトラアンミン白金炭酸塩、テトラアンミン白金リン酸塩、ヘキサアンミン白金テトラクロライド、ヘキサアンミン白金水酸塩、ヘキサアンミン白金水酸塩、ビス(エタノールアンモニウム)ヘキサヒドロキソ白金(IV)、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸ナトリウム、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸カリウム、硝酸白金及び硫酸白金からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。
Ptの担持量は、Pt溶液の濃度、使用量によって調整することができる。なお、Pt溶液の濃度とは、Pt溶液中のPt化合物の含有率と言い換えてよい。
Pt溶液を撹拌しながら、担体をPt溶液に浸漬してよい。Pt溶液を撹拌することにより、溶液中のPtイオンと複数の担体とが斑なく接触する。その結果、Ptが複数の担体へ均一に担持し易く、赤色濃度xの標準偏差σを0.030以下に制御し易い。
浸漬法では、Ptの担持速度Vの調整により、脱水素触媒の赤色濃度xの標準偏差σを制御する。Ptの担持速度V(単位:質量%/min)は、下記式(4)で定義される。
V=[Pt]/T (4)
式(4)中、Tとは、担体をPt溶液中に浸漬させる時間(単位:分)である。[Pt]とは、時間Tの間に担体に担持されるPtの量であり、完成後の脱水素触媒におけるPtの担持量を100質量%としたときの相対量(単位:質量%)である。
例えば、Ptの担持量が所望の担持量(担持量の目標値)の80%に達した後、Ptの担持速度Vを変化させてよい。Ptの担持速度Vを変化させることにより、Ptが複数の担体へ均一に担持され易くなる。例えば、Ptの担持量が所望の担持量の80%に達するまで、Ptの担持速度Vを5〜6質量%/minに維持してよい。そして、Ptの担持量が所望の担持量の80%に達した後、Ptの担持速度Vを0.5〜1.5質量%/minに調整しながら、Ptの担持を完了してよい。Ptの担持速度Vを上記範囲に調整することにより、脱水素触媒におけるPtの担持量のばらつきが低減され易く、標準偏差σも低減し易い。Ptの担持速度Vが小さ過ぎる場合、脱水素触媒の生産効率が低下し易い。Ptの担持速度Vが大き過ぎる場合、脱水素触媒におけるPtの担持量のばらつきが大きくなり易く、標準偏差σも大きくなり易い。
Pt溶液の温度が高いほど、Pt溶液中のPt化合物が担体へ吸着し易く、Ptの担持速度Vが大きい傾向がある。換言すれば、Pt溶液の温度が低いほど、Ptの担持速度Vが小さい傾向がある。また、Pt溶液の濃度が高いほど、Ptの担持速度Vが大きい傾向がある。一方、Pt溶液の濃度が低いほど、Ptの担持速度Vが小さい傾向がある。Pt溶液の温度又は濃度の調整により、Ptの担持速度Vを自在に制御することができる。浸漬法におけるPtの担持速度Vの調整によってはじめて、脱水素触媒の赤色濃度xの標準偏差σを0.030以下に制御することが可能となる。従来の一般的な浸漬法によって標準偏差σを0.030以下に制御することは困難である。
担体をPt溶液へ浸漬する前に、水を担体に吸収させてもよい。事前に水を担体に吸収させることにより、Ptの担体への急激な吸着が抑制される。その結果、Ptの担持速度の制御が容易になる。
第2工程では、Pt溶液へ浸漬した後の担体を焼成してもよい。焼成により、担体に付着したPtの化合物が分解し、Ptが担体へ強固に担持される。
Pt化合物が担持された担体の焼成に用いる炉は、例えば、固定型の炉であってよい。つまり、所定量の担体を焼成用容器に投入し、容器内の担体を撹拌することなく、炉内の温度を所定の温度まで昇温して、容器内の担体を焼成してよい。焼成に用いる炉は、ベルトコンベアー式の炉であってもよい。焼成に用いる炉は、ロータリーキルン等の回転式の炉であってもよい。ただし、固定型の炉又はベルトコンベアー式の炉は、回転式の炉に比べて、本実施形態に係る脱水素触媒の製造に適している。回転式の炉は、担体を焼成する工程において一般的に用いられる。回転式の炉では、炉の回転により炉内の担体を撹拌しながら、担体を焼成する。炉の回転によって、担体の表面と炉の内壁との間で摩擦が生じる。その結果、当該担体の表面が削られてしまう。これにより、担持したPt又はPt化合物が担体の表面から脱離する。一方、固定型の炉又はベルトコンベアー式の炉を用いた場合、Ptが担体から脱離しにくく、標準偏差σを所望の範囲に調整することが容易となる。
焼成温度は、Ptの化合物の分解が進行する温度であればよく、例えば200〜500℃程度であってよい。
Ptが担持された担体を、所定の形状に成形又は成型してよい。
(水素の製造システム、及び水素の製造法)
本実施形態では、図1に示す水素の製造システム100を用いて、水素を製造する。なお、水素の製造システム100とは、例えば燃料電池車に燃料として水素ガスを供給するための水素ステーションである。
本実施形態に係る水素の製造システム100は、少なくとも脱水素反応器2、気液分離器4、水素精製装置6、及びタンク16を備える。製造システム100は、更に高圧コンプレッサー14を備えてもよい。脱水素反応器2は、上記本実施形態に係る脱水素触媒を有し、当該脱水素触媒を用いた炭化水素の脱水素により、水素及び有機化合物(不飽和炭化水素等)を生成させる。つまり、本実施形態に係る水素の製造方法は、上記本実施形態に係る脱水素触媒を用いた炭化水素の脱水素により、水素及び有機化合物を生成させる工程(脱水素工程)を備える。
炭化水素は、例えば、ナフテン系炭化水素(環状炭化水素)であってよい。ナフテン系炭化水素(環状炭化水素)は、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、デカリン、1−メチルデカリン、2−メチルデカリン及び2−エチルデカリンからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。これらの化合物は、有機ハイドライドと呼ばれる。
脱水素工程では、炭化水素を脱水素反応器2内へ供給する。脱水素反応器2内には、上記本実施形態に係る脱水素触媒が設置されている。脱水素反応器2内は還元雰囲気である。脱水素反応器2内において、炭化水素が脱水素触媒に接触すると、脱水素反応が起こり、少なくとも一対の水素原子が炭化水素から引き抜かれる。例えば、炭化水素としてナフテン系炭化水素を用いる場合、水素分子と、芳香族炭化水素等の有機化合物(不飽和炭化水素)と、が生成する。このように、脱水素反応は気相反応である。脱水素工程では、炭化水素と共に水素を脱水素反応器2内へ供給してもよい。これにより、脱水素活性がより長期間維持される傾向がある。
脱水素反応の条件は、特に限定されない。反応温度は、250〜420℃であってよい。反応温度を上記範囲に調整するためには、脱水素反応器2内の触媒層の中央部の温度を上記範囲に調整すればよい。液空間速度(LHSV)は、0.2〜4.0h−1であってよい。炭化水素と共に水素を脱水素反応器2内へ供給する場合、水素分圧は、0.1〜1.0MPaであってよい。また、脱水素反応器2内へ供給する水素のモル数nと、脱水素反応器2内へ供給する炭化水素のモル数nとの比n/nは0.05〜1.0であってよい。
脱水素反応の生成物(水素分子及び有機化合物)は、脱水素反応器2から気液分離器4内へ供給される。気液分離器4内の温度は、有機化合物の融点以上有機化合物の沸点未満である。したがって、気液分離器4内の水素分子は気体であり、気液分離器4内の有機化合物は液体である。つまり、気液分離器4内において、脱水素反応の生成物は、水素ガス(気相、気層)と、有機化合物の液体(液相、液層)と、に分離する。気液分離器4内の気相(水素含有ガス)は、は水素精製装置6へ供給される。気液分離器4内の液相(有機化合物の液体)は、タンク16へ供給される。なお、気相には、有機化合物の蒸気が混入している場合がある。気相における有機化合物の分圧は最大で有機化合物の飽和蒸気圧程度である。一方、液相には、脱水素されなかった有機ハイドライドが残存する場合がある。
気液分離器4から水素精製装置6へ供給された水素含有ガスは、水素精製装置6において精製される。水素精製装置6は、例えば、水素ガス及び有機化合物のうち水素ガスのみが選択的に透過する分離膜を備えてよい。分離膜は、例えば、金属膜(PbAg系膜、PdCu系膜、若しくはNb系膜など)、無機膜(シリカ膜、ゼオライト膜、若しくは炭素膜など)、又は高分子膜(フッ素樹脂膜、若しくはポリイミド膜など)であってよい。水素ガスが分離膜を透過することにより、水素ガスの純度が高まる。一方、水素含有ガス中の有機化合物(未反応の有機ハイドライド等)は、分離膜を透過することができない。したがって、有機化合物が水素含有ガスから分離され、高純度の水素ガスが精製される。精製された高純度の水素ガスは、高圧コンプレッサー14を経ることなく、燃料電池の燃料として用いられてもよく、高圧コンプレッサー14において圧縮された後、燃料電池の燃料として用いられてもよい。なお、有機化合物のみならず、微量の水素ガスも炭素膜を透過しない場合がある。炭素膜を透過しなかった水素ガスを、有機ハイドライドと共に回収して、オフガスとして、脱水素反応器2内へ供給してもよい。または、炭素膜を透過しなかった有機化合物を、タンク16内へ回収してもよい。水素精製装置6は、分離膜を備える装置に限定されない。水素精製装置6は、例えば、圧力スイング吸着(PSA)法、熱スイング吸着(TSA)法(温度スイング吸着法)、温度圧力スイング吸着(TPSA)法、及び深冷分離法からなる群より選ばれる少なくとも一種の方法を実施する装置であってもよい。これらの装置を用いて、水素含有ガスを精製し、精製に伴って生じたオフガスを脱水素反応器2内へ供給し、水素含有ガスから分離された有機化合物をタンク16へ供給してよい。精製された水素ガスの一部を、有機ハイドライドと共に脱水素反応器2へ供給してよい。これにより、脱水素反応器2内の脱水素触媒の脱水素活性が維持され易くなる。
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[第1工程]
擬ベーマイト状態のアルミニウムの水酸化物の粉末に、所定量の水、硝酸セリウムの水溶液及び稀硝酸を添加して、これらを混練した。さらに、稀硝酸を添加することにより、混練物のpHを3〜7程度に調整した。混練物の押し出し成形により、複数の柱状の成形体を作製した。成形体の断面は、四葉状であった。成形体の直径は1/22inchであった。これらの成形体を100〜150℃で2時間乾燥した。乾燥後の成形体を550℃で2時間焼成することにより、複数の担体を得た。各担体は、γアルミナ及びCe(酸化セリウム)を含む。各担体におけるCeの含有量は、Ceの酸化物(Ce)換算で、Ceを含む担体全体の質量に対して、2質量%であった。
[第2工程]
第1工程で得られた複数の担体に所定量の水を吸収させた。次に、ビス(エタノールアンモニウム)ヘキサヒドロキソ白金(IV)の水溶液を用意した。このPt溶液を容器内で激しく撹拌しながら、複数の担体をPt溶液に浸漬した。つまり、浸漬法(化学吸着法)により、Pt溶液を複数の担体に染み込ませた。浸漬法では、脱水素触媒におけるPtの担持量が、脱水素触媒の全質量を基準として、0.55質量%となるように、ビス(エタノールアンモニウム)ヘキサヒドロキソ白金酸水溶液の濃度を調整した。浸漬法では、脱水素触媒におけるPtの担持量が所望の担持量の80%になるまで、Ptの担持速度を5〜6質量%/minに調整した。また、脱水素触媒におけるPtの担持量が所望の担持量の80%となった時点で、Ptの担持速度を0.5〜1.5質量%/minに調整した。
次いで、複数の担体を100℃で一晩乾燥した。乾燥した複数の担体を、空気中において330℃で2時間焼成して、ビス(エタノールアンモニウム)ヘキサヒドロキソ白金を分解した。焼成には、固定床式の炉を用いた。
以上の工程により、実施例1の脱水素触媒を作製した。実施例1の脱水素触媒は、γ−アルミナ及びCeを含む複数の担体と、担体に担持されたPtとを備える。実施例1のPtの担持量は、脱水素触媒の全質量を基準として、0.55質量%であった。
[赤色濃度の評価]
以下の手順で、実施例1の脱水素触媒の赤色濃度xの標準偏差σを算出した。
まず、脱水素触媒を水平面上に配置した。つまり、Ptが担持された複数の担体を水平面上に配置した。個々の担体を互いに接触しないように配置した。脱水素触媒の赤色濃度xの標準偏差σを算出するための基準として、ブラックの色見本及びホワイトの色見本を脱水素触媒に並置した。脱水素触媒を各色見本と共にデジタルカメラで撮影して、脱水素触媒の画像を取得した。解析ソフトウェアを用いて、得られた画像を解析した。画像解析により、脱水素触媒の赤色濃度xの標準偏差σを算出した。解析ソフトウェアには、(株)日本ローパー製のImage−Pro Plus Version 7.0.1.658を用いた。解析に用いた画像を図2に示す。図2中の1は、実施例1の脱水素触媒、つまりPtが担持された複数の担体の集合である。解析ソフトウェアにより認識された実施例1の担体の個数Nは339であった。図2中のBは、ブラックの色見本である。図2中のWは、ホワイトの色見本である。
図2中の領域Iに配置された担体は、Ptが担持されていない担体であり、実施例1の脱水素触媒ではない。図2中の領域Iに配置した担体の赤色濃度xは、実施例1の脱水素触媒の赤色濃度xよりも大きいことが確認された。領域Iに配置された担体の個数は、上記実施例1のサンプル数(339個)には含まれない。
図2中の領域IIに配置された脱水素触媒は、実施例1の脱水素触媒よりもPtの担持量が多い脱水素触媒であり、実施例1の脱水素触媒ではない。図2中の領域IIに配置した脱水素触媒は、比較例1の脱水素触媒の一部である。図2中の比較例1の脱水素触媒の赤色濃度xは、実施例1の脱水素触媒の赤色濃度xよりも小さいことが確認された。領域IIに配置された脱水素触媒の個数は、上記実施例1のサンプル数(339個)には含まれない。
画像解析により算出した実施例1の脱水素触媒の赤色濃度xの標準偏差σは、0.020であった。
(実施例2)
実施例1と異なるPtの担持速度(吸着速度)で浸漬法(化学吸着法)を実施したこと以外は実施例1と同様の方法により、実施例2の脱水素触媒を作製した。担体の個数Nが異なること以外は実施例1と同様の方法により、実施例2の標準偏差σを算出した。解析ソフトウェアにより認識された実施例2の担体の個数Nは430であった。実施例2の標準偏差σは0.015であった。
(実施例3)
実施例1及び2と異なるPtの担持速度(吸着速度)で浸漬法(化学吸着法)を実施したこと以外は実施例1と同様の方法により、実施例3の脱水素触媒を作製した。担体の個数Nが異なること以外は実施例1と同様の方法により、実施例3の標準偏差σを算出した。解析ソフトウェアにより認識された実施例3の担体の個数Nは873であった。実施例3の標準偏差σは0.007であった。
(比較例1)
[第1工程]
比較例1では、実施例1と同じ担体を用いた。ただし、比較例1で用いた担体の個数Nは、実施例1とは異なる。
[第2工程]
ビス(エタノールアンモニウム)ヘキサヒドロキソ白金酸の水溶液を調製した。このPt溶液を、複数の担体へ滴下した。つまり、含浸法により、Pt溶液を複数の担体に染み込ませた。続いて、これらの担体を100℃で一晩乾燥した。乾燥した担体を、空気中において330℃で2時間焼成して、ビス(エタノールアンモニウム)ヘキサヒドロキソ白金を分解した。焼成には、ベルトコンベアー式の炉を用いた。第2工程では、脱水素触媒におけるPtの担持量が、脱水素触媒の全質量を基準として、0.55質量%となるように、ビス(エタノールアンモニウム)ヘキサヒドロキソ白金酸水溶液の濃度を調整した。
以上の工程により、比較例1の脱水素触媒を作製した。比較例1の脱水素触媒は、γ−アルミナ及びCeを含む担体と、担体に担持されたPtとを備える。比較例1の脱水素触媒におけるPtの担持量は、実施例1と同様であった。
担体の個数Nが異なること以外は実施例1と同様の方法により、比較例1の標準偏差σを算出した。解析ソフトウェアにより認識された比較例1の担体の個数Nは835であった。比較例1の標準偏差σは0.035であった。
比較例1の脱水素触媒の一部の画像を、図3に示す。図3に示すように、比較例1の脱水素触媒の色むらがあることが確認された。つまり、比較例1の脱水素触媒の赤色濃度xのばらつきがあった。図3中、脱水素触媒S1におけるPtの担持量を測定した。脱水素触媒S1のPtの担持量は、脱水素触媒の全質量を基準として、1.7質量%であった。図3中の脱水素触媒S2におけるPtの担持量を測定した。脱水素触媒S2におけるPtの担持量は、脱水素触媒の全質量を基準として、0.18質量%であった。
[実施例と比較例との対比]
浸漬法によりPtを担持した実施例1〜3の脱水素触媒の標準偏差σはいずれも0.030以下であった。一方、含浸法によりPtを担持した比較例1の脱水素触媒の標準偏差σは0.035であった。一般的に、サンプル数Nの増加に伴い、標準偏差σは小さくなる傾向がある。しかし、比較例1のサンプル数Nは、実施例1及び2のサンプル数Nよりも多いにも関わらず、比較例1の標準偏差σは実施例1及び2の標準偏差σよりも大きかった。このことから、仮に比較例1のサンプル数Nが実施例1又は実施例2のサンプル数Nと同程度であった場合、比較例1の標準偏差σは0.035よりも大きくなることが推測される。
図4に、実施例3及び比較例1其々の脱水素触媒における赤色濃度xのヒストグラムを示す。ヒストグラムの横軸は、Ptが担持された担体の赤色濃度xである。ヒストグラムの縦軸は、赤色濃度がxである担体の個数nである。図5は、実施例3及び比較例1其々の赤色濃度xの確率密度関数f(x)である。グラフの横軸は、赤色濃度xと赤色濃度xの平均値μとの差(x−μ)である。横軸の原点(0)は、赤色濃度xの平均値μに相当する。グラフの縦軸は、確率密度関数f(x)である。確率密度関数f(x)は、赤色濃度xのばらつきが正規分布に従うとの仮定に基づくものであり、下記式(5)で表される。
式(5)中、xは脱水素触媒の赤色濃度である。μは脱水素触媒の赤色濃度xの平均値である。σは脱水素触媒の赤色濃度の標準偏差である。eはネイピア数である。πは円周率である。
[脱水素活性の評価]
実施例1〜3及び比較例1の脱水素触媒其々の脱水素活性を、以下の方法により評価した。
まず、脱水素触媒0.5mLを固定床流通式の反応器内に充填した。次に、メチルシクロヘキサン(MCH)及び水素の混合ガスを反応器内へ供給しながら、触媒層の中央部の温度を310℃に維持した。これにより、反応器内でMCHの脱水素反応を継続させた。混合ガスにおける、水素のモル数nと、MCHのモル数nとの比n/nは0.7とした。反応圧力は0.19MPaGであった。反応器内へ供給するMCHの液空間速度(LHSV)を80h−1に維持した。反応開始から所定の時間が経過した時点で反応器から排出されたガスを回収して冷却し、生成油を得た。
生成油をガスクロマトグラフ−水素炎イオン化検出器(GC−FID)で分析した。生成油に含まれるMCHのGC面積(ピーク面積)と、液体に含まれるトルエンのGC面積との比率から、310℃でのMCHの転化率rcを算出した。rcは、下記式(6)で定義される。
rc(単位:%)=(m/m)×100={m/(m+m)}×100 (6)
式(6)中、mとは、脱水素触媒が配置された反応容器へ供給されるメチルシクロヘキサンのモル数である。mとは、脱水素反応の生成物中に含まれるトルエンのモル数である。換言すると、mとは、メチルシクロヘキサンの脱水素により生成したトルエンのモル数である。mとは、脱水素反応後に残存するメチルシクロヘキサン(脱水素されなかったメチルシクロヘキサン)のモル数である。
実施例及び比較例其々の転化率rcを下記表1に示す。
本発明に係る脱水素触媒を用いた炭化水素の脱水素によって生成する水素ガスは、例えば、燃料電池車の燃料として利用される。
1…脱水素触媒、2…脱水素反応器、4…気液分離器、6…水素精製装置、14…高圧コンプレッサー、16…タンク、100…水素の製造システム。

Claims (7)

  1. 複数の担体と、前記担体に担持されたPtと、を備え、赤色濃度の標準偏差が、0.030以下である、ナフテン系炭化水素用の脱水素触媒の製造方法であって、
    前記Ptを含む溶液に前記担体を浸漬する方法により、以下の条件(i)で、前記Ptを前記担体に担持させる、
    ナフテン系炭化水素用の脱水素触媒の製造方法
    (i)Ptの担持量が所望の担持量の80%に達するまで、Ptの担持速度Vを5〜6質量%/minに維持し、Ptの担持量が所望の担持量の80%に達した後、Ptの担持速度Vを0.5〜1.5質量%/minに調整してPtの担持を完了させる。
  2. 前記担体がAlを含む、
    請求項1に記載の脱水素触媒の製造方法
  3. 前記担体が第3族金属を含む、
    請求項1又は2に記載の脱水素触媒の製造方法
  4. 前記担体が、多孔性無機酸化物の成型物である、
    請求項1〜のいずれか一項に記載の脱水素触媒の製造方法
  5. 前記複数の担体のうち、少なくとも2つの担体が同一の組成を有する、
    請求項1〜のいずれか一項に記載の脱水素触媒の製造方法
  6. 水素触媒を有し、前記脱水素触媒を用いたナフテン系炭化水素の脱水素により、水素を生成させる脱水素反応器を備える、水素の製造システムの製造方法であって、
    前記脱水素触媒として、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法により製造される脱水素触媒を用いる、
    水素の製造システムの製造方法
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載の方法により製造される脱水素触媒を用いたナフテン系炭化水素の脱水素により、水素を生成させる工程を備える、
    水素の製造方法。
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