1.自動車の構成
図1は、本発明の発電システムの一実施形態の概略構成図である。
図1において、自動車8は、動力システム2と、エネルギー回収システム29とを備えている。
動力システム2は、温度が経時的に上下する熱源としてのエンジン11、エンジン11に空気を供給するための吸気管16、エンジン11により加熱される熱媒体としての排気ガスが通過する流路としての排気管17、および、エンジン11に燃料を供給するための燃料供給装置20を備えている。
エンジン11は、動力を発生する装置であって、例えば、単気筒型または多気筒型(例えば、2気筒型、4気筒型、6気筒型)が採用されるとともに、その各気筒において、多サイクル方式(例えば、2サイクル方式、4サイクル方式、6サイクル方式など)が採用される。
以下において、4気筒型が採用されるとともに、その各気筒で4サイクル方式が採用されるエンジン11について、説明する。
このエンジン11は、並列配置される複数(4つ)の気筒12を備えている。なお、図1においては、1つの気筒12を取り出して示し、その他の気筒12については省略している。
各気筒12は、ピストン13、燃焼室14および点火プラグ(図示せず)などを備えており、上流側が吸気管16に接続されるとともに、下流側が排気管17に接続されている。
また、各気筒12は、吸気管16と接続される接続部分において、吸気バルブ18を備えるとともに、排気管17と接続される接続部分において、排気バルブ19を備えている。
吸気バルブ18は、気筒12と吸気管16との接続部分において、気筒12を開閉可能に設けられている。
排気バルブ19は、気筒12と排気管17との接続部分において、気筒12を開閉可能に設けられている。
これら吸気バルブ18および排気バルブ19は、図示しないが、スプリングなどの弾性力によって閉方向に付勢されている。これら吸気バルブ18および排気バルブ19は、例えば、カムシャフトの回転などによって、気筒12を開閉可能としている。
吸気管16は、エンジン11に空気を供給するために設けられ、その下流側端部がエンジン11の気筒12に接続されるとともに、上流側端部が外気に開放されている。
また、吸気管16は、スロットルバルブ27を備えている。スロットルバルブ27は、例えば、アクセルペダルの踏み込みなどの運転操作に伴い、その開閉および開度が調節可能とされており、その開閉によって、エンジン11に空気を取り込み可能としている。
排気管17は、エンジン11から排気ガスを排出させるために設けられ、その上流側端部がエンジン11の気筒12に接続されている。
また、図示しないが、複数(4つ)の気筒12に接続される複数(4つ)の排気管17は、所定の箇所で1つに集合され、その集合された排気管17の下流側には、触媒搭載部24および箱型収容ケース5が介在されている。
触媒搭載部24は、例えば、触媒担体およびその担体上にコーティングされる触媒を備えており、エンジン11から排出される排気ガスに含まれる炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)などの有害成分を浄化するために、排気管17における排気ガスの流れ方向途中部分に接続されている。
箱型収容ケース5は、排気管17の触媒搭載部24よりも下流側の流れ方向途中において、排気管17に連通するように介装される略直方体状の収容ケースであって、その内部空間において排気ガスが通過する。
そして、箱型収容ケース5の下流側において、排気管17の下流側端部は、外気に開放されている。これにより、エンジン11から排出される排気ガスを、外気に放出可能としている。
燃料供給装置20は、燃料タンク21および燃料供給管22を備えている。
燃料タンク21は、エンジン11に供給される燃料(例えば、ガソリンなど)が貯留されるタンクであって、耐熱耐圧容器などから形成されている。
燃料供給管22は、燃料タンク21からエンジン11に燃料を供給するために設けられており、その上流側端部が燃料タンク21に接続されるとともに、下流側端部が、燃料噴射弁23に接続されている。
燃料噴射弁23は、エンジン11に対する燃料タンク21からの燃料の供給量を調節するとともに、その燃料をエンジン11に対して噴射するための弁であって、燃料供給管22の下流側端部に設けられ、吸気管16の吸気バルブ18よりも上流側に接続されている。
燃料噴射弁23としては、特に制限されず、公知の噴射弁を用いることができる。
このような燃料噴射弁23は、エンジン11のエンジン制御ユニット28に電気的に接続されており、エンジン制御ユニット28によって、その開閉が制御されている。
エンジン制御ユニット28は、エンジン11の運転状態(例えば、図示しない回転計により検知されるエンジン11の回転数、例えば、図示しない圧力センサにより検知されるスロットルバルブ27の下流側の吸気管16内の圧力など)に基づいて燃料供給量を制御するユニットであって、CPU、ROMおよびRAMなどを備えるマイクロコンピュータから構成されている。
そして、このエンジン制御ユニット28に燃料噴射弁23が電気的に接続されることにより、エンジン制御ユニット28からの制御信号が、燃料噴射弁23に入力可能とされている。これにより、エンジン制御ユニット28が、エンジン11の運転状態に応じて、燃料噴射弁23の開閉および開度、すなわち、燃料噴射弁23による燃料の噴射量(エンジン11に対する燃料の供給量)を制御可能としている。
エネルギー回収システム29は、排気ガスの温度変化により温度が経時的に上下される発電素子3、および、発電素子3から電力を取り出すための第1電極4を備える発電デバイス6と、排気管17内を通過する排気ガスの温度を検知する温度検知手段としての温度検知デバイス7と、発電デバイス6および温度検知デバイス7に電気的に接続される電圧印加手段としての電圧印加装置9と、電圧印加装置9を作動または停止させるための制御手段としての制御装置10とを備えている。
発電デバイス6は、箱型収容ケース5内に配置されている。
発電素子3は、エンジン11から排出され、温度が経時的に上下する排気ガスが供給されることにより、温度が経時的に上下され、電気分極する素子である。
ここでいう電気分極とは、結晶の歪みにともなう正負イオンの変位により誘電分極し電位差が生じる現象、例えばピエゾ効果、および/または、温度変化により誘電率が変化し電位差が生じる現象、例えば焦電効果などのように、材料に起電力が発生する現象と定義する。
このような発電素子3として、具体的には、例えば、ピエゾ効果により電気分極する素子、焦電効果により電気分極する素子などが挙げられる。
ピエゾ効果は、応力または歪みが加えられたときに、その応力または歪みの大きさに応じて電気分極する効果(現象)である。
このようなピエゾ効果により電気分極する発電素子3としては、特に制限されず、公知のピエゾ素子(圧電素子)を用いることができる。
発電素子3としてピエゾ素子が用いられる場合には、ピエゾ素子は、例えば、その周囲が固定部材により固定され、排気ガスに接触(曝露)されるように、箱型収容ケース5内に配置される。
固定部材としては、特に制限されず、例えば、後述する第1電極4を用いることができる。
そして、このような場合には、ピエゾ素子は、排気ガスの経時的な温度変化により、加熱または冷却され、これにより、膨張または収縮する。
このとき、ピエゾ効果(圧電効果)、または、キュリー点付近での相変態により、電気分極する。これにより、詳しくは後述するが、第1電極4を介して、ピエゾ素子から電力が取り出される。
また、このようなピエゾ素子は、通常、加熱状態または冷却状態が維持され、その温度が一定(すなわち、体積一定)になると、電気分極が中和され、その後、冷却または加熱されることにより、再度、電気分極する。
そのため、後述するように排気ガスが経時的に温度変化し、高温状態と低温状態とが経時的に繰り返される場合などには、ピエゾ素子が経時的に繰り返し加熱および冷却されるため、ピエゾ素子の電気分極およびその中和が、経時的に繰り返される。
その結果、後述する第1電極4により、電力が、経時的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として取り出される。
焦電効果は、例えば、誘電体(絶縁体)などを加熱および冷却する時に、その温度変化に応じて誘電体が電気分極する効果(現象)であって、第1効果および第2効果を含んでいる。
第1効果は、誘電体の加熱時および冷却時において、その温度変化により自発分極し、誘電体の表面に、電荷を生じる効果とされている。
また、第2効果は、誘電体の加熱時および冷却時において、その温度変化により結晶構造に圧力変形が生じ、結晶構造に加えられる応力または歪みにより、圧電分極を生じる効果(ピエゾ効果、圧電効果)とされている。
このような焦電効果により電気分極する素子としては、特に制限されず、公知の焦電素子を用いることができる。
発電素子3として焦電素子が用いられる場合には、焦電素子は、排気ガスに接触(曝露)されるように、箱型収容ケース5内に配置される。
このような場合において、焦電素子は、排気ガスの経時的な温度変化により、加熱または冷却され、その焦電効果(第1効果および第2効果を含む)により、電気分極する。これにより、詳しくは後述するが、第1電極4を介して、焦電素子から電力が取り出される。
また、このような焦電素子は、通常、加熱状態または冷却状態が維持され、その温度が一定になると、電気分極が中和され、その後、冷却または加熱されることにより、再度、電気分極する。
そのため、後述するように排気ガスが経時的に温度変化し、高温状態と低温状態とが経時的に繰り返される場合などには、焦電素子が経時的に繰り返し加熱および冷却されるため、焦電素子の電気分極およびその中和が、経時的に繰り返される。
その結果、後述する第1電極4により、電力が、経時的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として取り出される。
このような発電素子3は、キュリー点を有する誘電体であって、具体的には、上記したように、公知の素子(例えば、公知の焦電素子(例えば、BaTiO3、CaTiO3、(CaBi)TiO3、BaNd2Ti5O14、BaSm2Ti4O12、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)など)、公知のピエゾ素子(例えば、水晶(SiO2)など)、酸化亜鉛(ZnO)、ロッシェル塩(酒石酸カリウム−ナトリウム)(KNaC4H4O6)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、リチウムテトラボレート(Li2B4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、窒化アルミニウム(AlN)、電気石(トルマリン)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)、K0.5Na0.5NbO3(KNN)などを用いることができる。
また、発電素子3としては、さらに、LaNbO3、LiNbO3、KNbO3、MgNbO3、CaNbO3、(K1/2Na1/2)NbO3、(K1/2Na1/2)NbO3/Ni、(Bi1/2K1/4Na1/4)NbO3、(Sr1/100(K1/2Na1/2)99/100)NbO3、(Ba1/100(K1/2Na1/2)99/100)NbO3、(Li1/10(K1/2Na1/2)9/10)NbO3、Sr2NaNb5O15、Sr19/10Ca1/10NaNb5O15、Sr19/10Ca1/10NaNb5O15/Ni、Ba2NaNbO15、Ba2Nb2O6、Ba2NaNbO15/Ni、Ba2Nb2O6/Niなどの誘電体を用いることもできる。
これら発電素子3は、単独使用または2種類以上併用することができる。
発電素子3のキュリー点は、例えば、−77℃以上、好ましくは、−10℃以上であり、例えば、1300℃以下、好ましくは、900℃以下である。
また、発電素子3(誘電体(絶縁体))の比誘電率は、例えば、1以上、好ましくは、100以上、より好ましくは、2000以上である。
このようなエネルギー回収システム29では、発電素子3(誘電体(絶縁体))の比誘電率が高いほど、エネルギー変換効率が高く、高電圧で電力を取り出すことができるが、発電素子3の比誘電率が上記下限未満であれば、エネルギー変換効率が低く、得られる電力の電圧が低くなる場合がある。
なお、発電素子3(誘電体(絶縁体))は、排気ガスの温度変化によって電気分極するが、その電気分極は、電子分極、イオン分極および配向分極のいずれでもよい。
例えば、配向分極によって分極が発現する材料(例えば、液晶材料など)では、その分子構造を変化させることにより、発電効率の向上を図ることができるものと期待されている。
このような発電素子3は、箱型収容ケース5内において、例えば、図2に示すように、互いに間隔を隔てて複数整列配置され、後述する第1電極4(および必要により設けられる固定部材)(図示せず)により、固定されている。
また、複数の発電素子3は、それぞれ、箱型収容ケース5内において、長手方向が排気ガスの流れ方向に沿うように配置されており、各発電素子3は、直接または第1電極4(後述)を介して、排気ガスに接触(曝露)可能とされている。
なお、図1においては、1つの発電素子3(発電デバイス6)を取り出して示し、その他の発電素子3(発電デバイス6)については省略している。
第1電極4は、発電素子3から電力を取り出すために設けられる。
このような第1電極4は、具体的には、特に制限されないが、例えば、上記の発電素子3を挟んで対向配置される2つの電極(例えば、銅電極、銀電極など)、例えば、それら電極に接続される導線などを備えており、発電素子3に電気的に接続されている。
温度検知デバイス7は、排気管17内において、発電デバイス6の設置される箱型収容ケース5の上流側に配置され、図示しないフレームを介して排気管17内の中央付近において支持されている。
具体的には、温度検知デバイス7は、発電素子3(発電デバイス6)との距離は特に制限されないが、例えば、エンジン11からの排気ガスが50Hzの周期で温度変化するものであって、その流速が10m/sである場合には、排気管17内において、箱型収容ケース5内の発電素子3(発電デバイス6)の上流側に、発電素子3の上流側端部に対して、20cm以内の間隔を隔てて配置することが好適である。
温度検知デバイス7は、温度検知素子35と第2電極36とを備えている。
温度検知素子35は、エンジン11から排出され、温度が経時的に上下する排気ガスが供給されることにより、温度が経時的に上下され、それによって電気分極する素子である。つまり、温度検知素子35は、上記した素子(例えば、ピエゾ素子、焦電素子など)であり、具体的には、キュリー点を有する誘電体である。
温度検知素子35としてピエゾ素子が用いられる場合には、ピエゾ素子は、例えば、その周囲が固定部材により固定され、排気ガスに接触(曝露)されるように、排気管17内に配置される。
固定部材としては、特に制限されず、例えば、後述する第2電極36を用いることができる。
そして、このような場合には、ピエゾ素子は、排気ガスの経時的な温度変化により、加熱または冷却され、これにより、膨張または収縮する。
このとき、ピエゾ効果(圧電効果)、または、キュリー点付近での相変態により、電気分極する。これにより、詳しくは後述するが、第2電極36を介して、ピエゾ素子から起電力が検出される。
また、温度検知素子35として焦電素子が用いられる場合には、焦電素子は、排気ガスに接触(曝露)されるように、排気管17内に配置される。
このような場合において、焦電素子は、排気ガスの経時的な温度変化により、加熱または冷却され、その焦電効果(第1効果および第2効果を含む)により、電気分極する。これにより、詳しくは後述するが、第2電極36を介して、焦電素子から起電力が検出される。
温度検知素子35から、第2電極36により検出される起電力は、上記発電素子3から第1電極4により取り出される電力と同様に、経時的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として検出される。
これら温度検知素子35は、単独使用または2種類以上併用することができる。
温度検知素子35を構成する誘電体としては、発電素子3を構成する誘電体として例示されたものが挙げられ、温度検知素子35を構成する誘電体と、発電素子3を構成する誘電体とは同一種類である。また、温度検知素子35のキュリー点は、例えば、−77℃以上、好ましくは、−10℃以上であり、また、例えば、1300℃以下、好ましくは、900℃以下である。
具体的には、発電素子3を構成する誘電体と同一種類の温度検知素子35を構成する誘電体のキュリー点は、発電素子3を構成する誘電体のキュリー点より、50℃低い温度以上、好ましくは、10℃低い温度以上であることが好適である。以後、このような誘電体を、発電素子を構成する誘電体と同一仕様の誘電体であると定義する。
また、発電効率の観点から、好ましくは、温度検知素子35のキュリー点と、発電素子3のキュリー点とが同一であり、より好ましくは、温度検知素子35と発電素子3とが同一の素子である。
また、発電素子3(誘電体(絶縁体))の比誘電率は、例えば、1以上、好ましくは、100以上、より好ましくは、2000以上である。
第2電極36は、温度検知素子35から起電力を検出し、温度検知素子35の電気分極を検知するために設けられる。
このような第2電極36は、具体的には、温度検知素子35から起電力を検出し、温度検知素子35の電気分極を検知できれば、特に制限されないが、例えば、上記の温度検知素子35を挟んで対向配置される2つの電極(例えば、銅電極、銀電極など)、例えば、それら電極に接続される導線などを備えており、温度検知素子35に電気的に接続されている。
電圧印加装置9は、発電素子3(発電デバイス6)および温度検知素子35(温度検知デバイス7)に電圧を印加するために、発電素子3(発電デバイス6)および温度検知素子35(温度検知デバイス7)に直接または近接して設けられる。具体的には、電圧印加装置9は、例えば、上記した第1電極4とは別途、上記の発電素子3および第1電極4を挟んで対向配置される2つの電圧印加電極37(例えば、銅電極、銀電極など)、上記の温度検知素子35および第2電極36を挟んで対向配置される2つの温度検知用電圧印加電極38(例えば、銅電極、銀電極など)、電圧印加電源V、およびそれらに接続される導線などを備えている。
そして、電圧印加装置9は、電圧印加電極37間に発電素子3および第1電極4を介在させ、また、温度検知用電圧印加電極38間に温度検知素子35および第2電極36を介在させるように、配置されている。
制御装置10は、エネルギー回収システム29における電気的な制御を実行するユニット(例えば、ECU:Electronic Control Unit)であり、CPU、ROMおよびRAMなどを備えるマイクロコンピュータで構成されている。
この制御装置10は、温度検知デバイス7および電圧印加装置9に電気的に接続されており、詳しくは後述するが、上記した温度検知デバイス7によって検知される排ガスの温度変化や、温度検知デバイス7における温度検知素子35の起電力などに応じて、電圧印加装置9を作動または停止させる。
より具体的には、制御装置10には、温度検知素子35に供給される排気ガスの温度と、温度検知素子35の温度と、温度検知素子35において生じる起電力との関係を示すマッピングデータが、格納されている。
すなわち、上記した温度検知素子35は、温度が経時的に上下する排気ガスが供給されることにより、温度が経時的に上下され、それによって電気分極し、起電力を生じさせる。このとき、排気ガスの温度と、温度検知素子35の温度との間には、相関がある。また、温度検知素子35の温度と、温度検知素子35において生じる起電力との間にも、相関がある。このような相関関係に基づいて、温度検知素子35に供給される排気ガスの温度と、温度検知素子35の温度と、温度検知素子35において生じる起電力との関係が、予めマッピングされ、そのマッピングデータが、制御装置10に格納される。
そして、制御装置10は、上記のマッピングデータに基づいて、温度検知素子35において生じる起電力から、温度検知素子35の温度、および、温度検知素子35に供給される排気ガスの温度を、予測(算出)可能としている。
また、制御装置10は、電圧印加装置9に電気的に接続されており、予測(算出)される排気ガスの温度に基づいて、電圧印加装置9の作動および停止を、制御可能としている。
また、エネルギー回収システム29は、さらに、昇圧器30、交流/直流変換器31(AC−DCコンバーター)およびバッテリー32を備えている。
昇圧器30、交流/直流変換器31およびバッテリー32は、第1電極4に電気的に接続されている。
そして、動力システム2およびエネルギー回収システム29のうち、エンジン11と、排気管17と、発電素子3および第1電極4を備える発電デバイス6と、温度検知素子35および第2電極36を備える温度検知デバイス7と、電圧印加装置9と、制御装置10とから、発電システム1が構成されている。
2.発電方法
以下において、上記した発電システム1を用いた発電方法について、詳述する。
この発電システム1では、エンジン11の駆動により、気筒12においてピストンの昇降運動が繰り返されており、これにより、例えば、4サイクル方式では、吸気工程、圧縮工程、爆発工程、排気工程などが順次実施される。
より具体的には、このエンジン11では、まず、スロットルバルブ27が開かれ、吸気管16から空気が供給されるとともに、燃料供給管22から所定量の燃料が燃料噴射弁23によって供給(噴射)され、それらが混合される。そして、空気と燃料との混合気が、吸気バルブ18が開かれることにより、気筒12の燃焼室14に供給される(吸気工程)。
次いで、吸気バルブ18が閉じられ、ピストン13が上昇することにより、燃焼室14の混合気が圧縮され、高温化される(圧縮工程)。
次いで、図示しない点火プラグにより混合気が点火され、爆発的に燃焼されるとともに、ピストン13が爆発により押し下げられる(爆発工程)。
その後、排気バルブ19が開かれ、燃焼により生じたガス(排気ガス)が、気筒12から排出される(排気工程)。
このように、エンジン11では、燃料が燃焼され、動力が出力されるとともに、高温の排気ガスが、排気管17に排気される。
そして、各気筒12において生じた排気ガスは、各気筒12に接続される排気管17内を通過しながら、所定の箇所で1つに集合された後、触媒搭載部24を通過するとともに触媒により浄化され、温度検知デバイス7に接触した後、箱型収容ケース5を介して外気に開放される。
そして、このようなエンジン11、および、そのエンジン11から排出される排気ガスの温度は、例えば、自動車8の運転状態(エンジン11の駆動状態)などに応じて、経時的に上下する。
具体的には、自動車8では、エンジン11の駆動および停止が経時的に繰り返され、これにより、自動車8の走行および停止が制御される。
このような場合、エンジン11の駆動時には、エンジン11の温度は高温状態とされ、また、エンジン11の停止時には、エンジン11の温度は低温状態とされる。
また、エンジン11の温度は、例えば、自動車8の走行時における負荷(車両重量、路面の傾斜度合など)や、車速、アクセル開度、エンジン11の回転数、吸気系における吸気圧および吸入空気量、燃料流量、さらには、空燃比(吸入空気量/燃料流量)などによっても変化し、経時的に上下する。
このとき、エンジン11の熱が排気ガスを介して伝達されるため、排気ガスの温度(排気管17および箱型収容ケース5の内部温度)は、エンジン11の状態に応じて、経時的に上下する。
このような発電システム1において、エンジン11および排気ガスの温度は、高温状態における温度が、例えば、200〜1200℃、好ましくは、700〜900℃であり、低温状態における温度が、上記の高温状態における温度未満、より具体的には、例えば、100〜800℃、好ましくは、200〜500℃であり、高温状態と低温状態との温度差が、例えば、10〜600℃、好ましくは、20〜500℃である。
そして、この発電システム1では、上記したように、排気管17内において、箱型収容ケース5と、箱型収容ケース5の上流側に、温度検知素子35および第2電極36を備える温度検知デバイス7とが配置され、第2電極36が、制御装置10と電気的に接続されている。
箱型収容ケース5には、発電素子3および第1電極4を備える発電デバイス6と電圧印加電極37とが複数整列配置され、電圧印加電極37(電圧印加装置9)が、制御装置10と電気的に接続されている。
そのため、エンジン11から排出される排気ガスが、まず、温度検知素子35に接触する。
これにより、まず、エンジン11の熱エネルギーが、排気ガスを介して、温度検知素子35に伝達され、温度検知素子35が加熱および/または冷却される。すなわち、温度検知素子35が、エンジン11、および、そのエンジン11の熱を伝達する排気ガスの経時的な温度変化により、加熱および/または冷却される。
そのため、温度検知素子35を、経時的に高温状態または低温状態にすることができ、温度検知素子35を、その素子(例えば、ピエゾ素子、焦電素子など)に応じた効果(例えば、ピエゾ効果、焦電効果など)により、電気分極させることができ、第2電極36を介して、温度検知素子35から起電力を経時的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として、検出することができる。
その後、温度検知素子35から検出された起電力は、電気信号として、制御装置10に伝達され、温度検知素子35が昇温状態であるか、降温状態であるかが検知される。すなわち、温度検知素子35の状態を検知することにより、排気ガスおよび発電素子3が昇温状態であるか、降温状態であるか判断される。より具体的には、例えば、温度検知素子35から検出された起電力が、予め設定された所定の値(例えば、+1mV/s)以上の変動があった場合に、温度検知素子35は昇温状態であると検知され、排気ガスおよび発電素子3も昇温状態であると判断される。また、温度検知素子35から検出された起電力が、予め設定された所定の値(例えば、−1mV/s)以上の変動があった場合に、温度検知素子35は降温状態であると検知され、排気ガスおよび発電素子3も降温状態であると判断される。
そして、この発電システム1では、温度検知素子35が昇温状態であると検知されたときには、排ガスおよび発電素子3が昇温状態であると検知される。このとき、制御装置10によって電圧印加装置9を作動させ、発電素子3(発電デバイス6)に所定の電圧(例えば、50〜1000V)を印加する。
電圧を印加する時間は、温度検知素子35が降温状態に至るまでであり、具体的には、昇温状態中である。
そして、温度検知素子35が降温状態であると検知されたときには、排ガスおよび発電素子3が降温状態であると検知される。このとき、制御装置10によって電圧印加装置9を停止させ、発電素子3(発電デバイス6)に対する電圧の印加を停止させる。
電圧の印加を停止する時間は、温度検知素子35が昇温状態に至るまでであり、具体的には、降温状態中である。
また、電圧印加装置9を作動させてから上記電圧が印加される(すなわち、電場の強さが上記の所定値に達する)までの所要時間、および、電圧印加装置9を停止させてから、電場の強さが0kV/mmに達するまでの所要時間は、実質的に0秒とみなすことができる。
すなわち、この発電システム1では、上記所定値に満たない電圧が印加されている時間は、実質的に0秒であって、上記所定値の電圧が印加されている状態(ON)と、電圧が印加されていない状態(OFF)とが、制御装置10によって切り替えられている。
このように、上記の発電システム1では、温度検知素子35の昇温が検知されたときには、電圧印加装置9が作動され、発電素子3(発電デバイス6)に電圧が印加される。一方、温度検知素子35の降温が検知されたときには、電圧印加装置9が停止され、電圧の印加が停止される。
次いで、温度検知素子35に接触した排気ガスは、発電素子3と接触する。
これにより、エンジン11の熱エネルギーが、排気ガスを介して、発電素子3に伝達され、発電素子3が加熱および/または冷却される。すなわち、発電素子3が、エンジン11、および、そのエンジン11の熱を伝達する排気ガスの経時的な温度変化により、加熱および/または冷却される。
そして、これにより、発電素子3を、経時的に高温状態または低温状態にすることができ、発電素子3を、その素子(例えば、ピエゾ素子、焦電素子など)に応じた効果(例えば、ピエゾ効果、焦電効果など)により、電気分極させることができる。
そのため、この発電システム1では、第1電極4を介して、各発電素子3から電力を経時的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として、取り出すことができる。
そして、このような発電システム1では、上記したように、電圧印加装置9から電圧が印加されるため、発電素子3の発電量が増加し、より効率的に発電することができる。
その後、この方法では、例えば、図1において点線で示すように、上記により得られた電力を、必要により第1電極4に接続される昇圧器30で昇圧し、交流/直流変換器31において直流電圧に変換した後、バッテリー32に蓄電する。バッテリー32に蓄電された電力は、自動車8や、自動車8に搭載される各種電気部品の動力などとして、適宜、用いることができる。
このような発電システム1によれば、発電素子3を構成する誘電体と同一仕様の誘電体から構成される温度検知素子35を用いているため、発電素子3と温度検知素子35との温度変化に対する応答性を同一または近づけることができる。
具体的には、熱電対を用いた温度センサにより発電素子3の温度を検知する場合や、エンジン11などの駆動状況などから発電素子3の温度を予測する温度予測システムの技術を用いる場合よりも、この発電システム1を用いれば、温度検知素子35に、発電素子3と同一種類の素子(キュリー点を有する誘電体)を用いているため、より一層温度変化に対する応答性が向上し、発電素子3の温度変化に対する応答性と同一または近づけることができる。
そのため、発電素子3の温度変化に対して、応答性よく発電素子3に電圧を印加することができる。
したがって、発電素子3から効率的にエネルギーを取り出すことができ、発電効率の向上を図ることができる。
一方、発電素子3および温度検知素子35は、排ガス(熱媒体)の温度変化により、発電素子3および温度検知素子35が温度変化し、起電力を生じるが、発電素子3および温度検知素子35における温度変化から、起電力の発生までには、わずかに時間を要する(例えば、0.01〜1秒)。すなわち、温度変化と、起電力の発生との間には、タイムラグがある。
そのため、通常、温度検知素子35において起電力が検知されると、上記のタイムラグ(例えば、0.01〜1秒)を遡上(すなわち、逆算)して、温度変化の開始点が検知される。
しかしながら、発電素子3に電圧が印加される場合には、上記のタイムラグの長さは、発電素子3に印加される電圧の大きさや、電圧の印加履歴などによって変化する。
そのため、例えば、発電素子3に対して電圧が印加され、一方、温度検知素子35に対して電圧が印加されない場合には、温度検知素子35におけるタイムラグと、発電素子3におけるタイムラグとに差が生じる。その結果、発電素子3と温度検知素子35との温度変化に対する応答性が異なり、排ガスの温度変化に対して、応答性よく発電素子に電圧を印加できない場合がある。
そこで、この発電システム1では、温度検知素子35にも電圧を印加する。
より具体的には、上記の発電システム1では、少なくとも温度検知素子35から起電力が発生するときに、電圧印加装置9を作動させ、温度検知素子35に電圧を印加する。
温度検知素子35に起電力が発生するタイミングは、例えば、温度検知素子35が昇温(または降温)するタイミングであって、公知の方法によって、予測することができる。
具体的には、例えば、自動車8の走行条件などによって、排ガスの温度変化(昇温および降温)を予測することができ、その排ガスの温度変化に基いて、温度検知素子35温度変化(昇温および降温)を予測することができ、その結果、温度検知素子35に起電力が発生するタイミングを予測することができる。
そして、その予測に基いて、すなわち、温度検知素子35に起電力が発生するタイミングで、温度検知素子35に電圧を印加することができる。
印加される電圧は、通常、発電素子3に印加される電圧の大きさと同じである。
また、電圧を印加する時間は、温度検知素子35が昇温中と予測される間である。なお、温度検知素子35が降温中と予測されるときには、温度検知素子35に対する電圧の印加が停止される。
このような発電システム1では、少なくとも温度検知素子35から起電力が発生するときに、温度検知素子35に電圧が印加される。そのため、温度検知素子35における温度変化から起電力発生までのタイムラグと、発電素子3における温度変化から起電力発生までのタイムラグとを、同一または近づけることができる。
そのため、このような発電システム1によれば、とりわけ良好に、発電素子3と温度検知素子35との温度変化に対する応答性を同一または近づけることができ、とりわけ応答性よく発電素子に電圧を印加することができる。
その結果、このような発電システム1によれば、発電素子から、とりわけ効率的にエネルギーを取り出すことができる。
なお、上記した説明では、温度検知素子35から起電力が発生するタイミングを予測し、その予測に基いて、温度検知素子35に電圧を印加している。しかし、発電システム1においては、少なくとも、温度検知素子35に起電力が発生しているときに、温度検知素子35に対して電圧が印加されていればよい。そのため、例えば、発電システム1の作動中、すなわち、エンジン11の駆動中において、温度検知素子35に電圧を印加し続けることもできる。
より具体的には、この方法では、エンジン11の駆動に伴って、電圧印加装置9が作動され、温度検知素子35に電圧が印加される。そして、エンジン11が停止すると、温度検知素子35に対する電圧の印加が停止される。すなわち、エンジン11の駆動開始から停止までの間、継続的に、温度検知素子35に電圧が印加される。
このような発電システム1でも、少なくとも温度検知素子35から起電力が発生するときに、温度検知素子35に電圧が印加される。そのため、温度検知素子35における温度変化から起電力発生までのタイムラグと、発電素子3における温度変化から起電力発生までのタイムラグとを、同一または近づけることができる。
そのため、このような発電システム1によれば、とりわけ良好に、発電素子3と温度検知素子35との温度変化に対する応答性を同一または近づけることができ、とりわけ応答性よく発電素子に電圧を印加することができる。
その結果、このような発電システム1によれば、発電素子から、とりわけ効率的にエネルギーを取り出すことができる。
なお、このような発電システム1において、発電素子3および温度検知素子35は、その加熱および/または冷却の方法によっては、昇温および降温されることなく、定温状態(温度変化が実質的になく、温度検知素子35から検出された起電力が所定値(例えば、1mV/s)未満)で一時的に維持される場合がある。そのような場合、電圧は、温度検知素子35の昇温中およびその昇温後の定温状態中に印加され、降温中およびその降温後の定温状態中に、電圧の印加が停止される。なお、熱源として自動車8の動力システム2が採用される場合などには、発電素子3および温度検知素子35は、実質的に定温状態になることなく、昇温状態および降温状態が繰り返される。
また、上記の説明では、温度検知デバイス7は、箱型収容ケース5内の発電デバイス6の上流側端部に対して、例えば、20cm以内の間隔を隔てて配置しているが、温度検知素子35を昇温状態にした排気ガスが発電素子3を通過するタイミングに合わせるために、制御装置10により、電圧印加装置9が電圧を印加するタイミングを早めたり、遅らせたりすることもできる。
また、上記した説明では、制御装置10およびエンジン制御ユニット28を、それぞれ別々の装置として説明したが、それらを1つの制御部(ECUなど)として形成することもできる。
また、上記した説明では、第1電極4および電圧印加電極37を、それぞれ別々の電極として説明したが、それらを1つの電極として形成することもできる。
また、上記した説明では、第2電極36および温度検知用電圧印加電極38をそれぞれ別々の電極として説明したが、それらを1つの電極として形成することもできる。
また、上記した説明では、電圧印加電源Vと電圧印加電極37とを電気的に接続する導線、電圧印加電源Vと温度検知用電圧印加電極38とを電気的に接続する導線、および、制御装置10と第2電極36とを電気的に接続する導線を、それぞれ別々の導線として説明したが、それぞれの導線について、それらの一部を共通化させ、1つの導線として形成することもできる。
また、上記した説明では、1つの電圧印加電源Vにより、発電素子3と温度検知素子35とに電圧を印加したが、例えば、発電素子3に電圧を印加するための電圧印加電源と、温度検知素子35に電圧を印加するための電圧印加電源とを、それぞれ設けることもできる。
また、上記した説明では、熱源として動力システム2を用いて説明したが、熱源は上記に限定されず、例えば、内燃機関、発光装置などの各種エネルギー利用装置を用いることができる。なお、このような場合、熱媒体は、例えば、光、空気など、種々選択される。
好ましくは、熱源が内燃機関、動力システム2であり、熱媒体が排気ガスである。より好ましくは、熱源が動力システム2である。