図1は、本発明の車載発電システムが車載された一実施形態を示す概略構成図である。
図1において、自動車25は、車載発電システム1を備えている。
車載発電システム1は、内燃機関2と、内燃機関2から排出され、温度が経時的に上下する排気ガスが供給されることにより電気分極する第1デバイス3と、第1デバイス3から電力を取り出すための第2デバイス4と、第1デバイスに電圧を印加する電圧印加手段としての電圧印加装置9と、その電圧印加装置9を作動および停止させるための制御ユニット10とを備えている。
内燃機関2は、エンジン16、および、エキゾーストマニホールド17を備えている。
エンジン16は、自動車25の動力を出力する装置であって、例えば、単気筒型または多気筒型(例えば、2気筒型、4気筒型、6気筒型)が採用されるとともに、その各気筒において、多サイクル方式(例えば、2サイクル方式、4サイクル方式、6サイクル方式など)が採用される。
図1には、4気筒型のエンジン16を示す。また、以下において、各気筒で4サイクル方式が採用される場合について、説明する。
エキゾーストマニホールド17は、エンジン16の気筒から排出される排気ガスを収束するために設けられる排気多岐管であって、エンジン16の各気筒に接続される複数(4つ)の分岐管18(これらを区別する必要がある場合には、図1の上側から順に、分岐管18a、分岐管18b、分岐管18cおよび分岐管18dと称する。)と、それら分岐管18の下流側において、各分岐管18を1つに統合する集気管19とを備えている。
このようなエキゾーストマニホールド17では、分岐部18の上流側端部が、それぞれ、エンジン16の各気筒に接続されるとともに、分岐管18の下流側端部と集気管19の上流側端部とが接続されている。また、集気管19の下流側端部は、触媒搭載部12の上流側端部に接続されている。
また、各分岐管18は、その流れ方向途中において、箱型空間20を、それぞれ1つ備えている。箱型空間20は、エンジンルーム内において、分岐管18に連通するように介装される略直方体状の空間であって、その内側において、複数の第1デバイス3と、第2デバイス4とを備えている。
第1デバイス3は、内燃機関2(エンジン16)からの排気ガスが供給されることにより温度が経時的に上下され、電気分極するデバイスである。
ここでいう電気分極とは、結晶の歪みにともなう正負イオンの変位により誘電分極し電位差が生じる現象、例えばピエゾ効果、および/または、温度変化により誘電率が変化し電位差が生じる現象、例えば焦電効果などのように、材料に起電力が発生する現象と定義する。
このような第1デバイス3として、より具体的には、例えば、ピエゾ効果により電気分極するデバイス、焦電効果により電気分極するデバイスなどが挙げられる。
ピエゾ効果は、応力または歪みが加えられたときに、その応力または歪みの大きさに応じて電気分極する効果(現象)である。
このようなピエゾ効果により電気分極する第1デバイス3としては、特に制限されず、公知のピエゾ素子(圧電素子)を用いることができる。
第1デバイス3としてピエゾ素子が用いられる場合には、ピエゾ素子は、例えば、その周囲が固定部材により固定され、体積膨張が抑制された状態において、配置される。
固定部材としては、特に制限されず、例えば、後述する第2デバイス4(例えば、電極など)を用いることもできる。
そして、このような場合には、ピエゾ素子は、排気ガスの経時的な温度変化により、加熱または冷却され、これにより、膨張または収縮する。
このとき、ピエゾ素子は、固定部材により体積膨張が抑制されているため、ピエゾ素子は、固定部材に押圧され、ピエゾ効果(圧電効果)、または、キュリー点付近での相変態により、電気分極する。これにより、詳しくは後述するが、第2デバイス4を介して、ピエゾ素子から電力が取り出される。
また、このようなピエゾ素子は、通常、加熱状態または冷却状態が維持され、その温度が一定(すなわち、体積一定)になると、電気分極が中和され、その後、冷却または加熱されることにより、再度、電気分極する。
そのため、上記したように排気ガスが周期的に温度変化し、高温状態と低温状態とが周期的に繰り返される場合などには、ピエゾ素子が周期的に繰り返し加熱および冷却されるため、ピエゾ素子の電気分極およびその中和が、周期的に繰り返される。
その結果、後述する第2デバイス4により、電力が、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として取り出される。
焦電効果は、例えば、絶縁体(誘電体)などを加熱および冷却する時に、その温度変化に応じて絶縁体が電気分極する効果(現象)であって、第1効果および第2効果を含んでいる。
第1効果は、絶縁体の加熱時および冷却時において、その温度変化により自発分極し、絶縁体の表面に、電荷を生じる効果とされている。
また、第2効果は、絶縁体の加熱時および冷却時において、その温度変化により結晶構造に圧力変形が生じ、結晶構造に加えられる応力または歪みにより、圧電分極を生じる効果(ピエゾ効果、圧電効果)とされている。
このような焦電効果により電気分極するデバイスとしては、特に制限されず、公知の焦電素子を用いることができる。
そして、焦電素子は、排気ガスの経時的な温度変化により、加熱または冷却され、その焦電効果(第1効果および第2効果を含む)により、電気分極する。これにより、詳しくは後述するが、第2デバイス4を介して、焦電素子から電力が取り出される。
また、このような焦電素子は、通常、加熱状態または冷却状態が維持され、その温度が一定になると、電気分極が中和され、その後、冷却または加熱されることにより、再度、電気分極する。
そのため、上記したように排気ガスが周期的に温度変化し、高温状態と低温状態とが周期的に繰り返される場合などには、焦電素子が周期的に繰り返し加熱および冷却されるため、焦電素子の電気分極およびその中和が、周期的に繰り返される。
その結果、後述する第2デバイス4により、電力が、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として取り出される。
このような第1デバイス3として、具体的には、上記したように、公知の焦電素子(例えば、BaTiO3、CaTiO3、(CaBi)TiO3、BaNd2Ti5O14、BaSm2Ti4O12、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)など)、公知のピエゾ素子(例えば、水晶(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、ロッシェル塩(酒石酸カリウム−ナトリウム)(KNaC4H4O6)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、リチウムテトラボレート(Li2B4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、窒化アルミニウム(AlN)、電気石(トルマリン)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)などを用いることができる。
これら第1デバイス3は、単独使用または2種類以上併用することができる。
第1デバイス3のキュリー点は、例えば、−77℃以上、好ましくは、−10℃以上であり、例えば、1300℃以下、好ましくは、900℃以下である。
また、第1デバイス3(絶縁体(誘電体))の比誘電率は、例えば、1以上、好ましくは、100以上、より好ましくは、2000以上である。
このような車載発電システム1では、第1デバイス3(絶縁体(誘電体))の比誘電率が高いほど、エネルギー変換効率が高く、高電圧で電力を取り出すことができるが、第1デバイス3の比誘電率が上記下限未満であれば、エネルギー変換効率が低く、得られる電力の電圧が低くなる場合がある。
なお、第1デバイス3(絶縁体(誘電体))は、排気ガスの温度変化によって電気分極するが、その電気分極は、電子分極、イオン分極および配向分極のいずれでもよい。
例えば、配向分極によって分極が発現する材料(例えば、液晶材料など)では、その分子構造を変化させることにより、発電効率の向上を図ることができるものと期待されている。
このような第1デバイス3は、各分岐管18の箱型空間20内に配置されている。
具体的には、第1デバイス3は、シート状に形成されており、箱型空間20内において、互いに間隔を隔てて複数整列配置されるとともに、第2デバイス4(および必要により設けられる固定部材(図示せず))により、固定されている。なお、図1においては、複数の第1デバイス3を簡略化し、1つの箱型空間20に対して、1つの第1デバイス3を示している。
これにより、第1デバイス3の表面および裏面の両面(さらには、周側面)は、図示しない第2デバイス4を介して、箱型空間20内に露出され、排気ガスに接触(曝露)可能とされている。
第2デバイス4は、第1デバイス3から電力を取り出すために設けられる。
このような第2デバイス4は、より具体的には、特に制限されないが、例えば、上記の第1デバイス3を挟んで対向配置される2つの電極(例えば、銅電極、銀電極など)23、例えば、それら電極23に接続される導線などを備えており、第1デバイス3に電気的に接続されている。
電圧印加装置9は、第1デバイス3に電圧を印加するため、第1デバイス3に直接または近接して設けられる。
具体的には、電圧印加装置9は、例えば、上記の第1デバイス3を挟んで対向配置される1対(2つ)の電極(例えば、銅電極、銀電極など)22、電圧印加電源31、および、それらに接続される導線28などを備えており、電極22間に第1デバイス3を介在させるように、配置されている。
電圧印加装置9の電極22は、上記した第2デバイス4の電極23とは別途設けられていてもよく、また、第2デバイス4の電極23と共用されていてもよい。図1では、電圧印加装置9の電極22と、第2デバイス4の電極23とが、共用される形態を示している。
各電極22は、分岐導線などによって、並列的に接続されている。これら電極22に電圧印加電源31から電圧を印加することにより、電極22間、すなわち、第1デバイス3に電圧を印加することができる。
制御ユニット10は、車載発電システム1における電気的な制御を実行するユニット(例えば、ECU:Electronic Control Unit)であり、メモリ11と、中央処理装置(CPU)21とを備えるマイクロコンピュータで構成されている。
メモリ11は、ROMおよびRAMを備えており、ROMに各種プログラムや固定データが格納されるとともに、RAMに一時的な入力データが格納される。
そして、メモリ11のROMには、第1デバイス3の温度を予測する予測手段としての温度予測プログラムPが格納されている。
温度予測プログラムPは、内燃機関2の運転状態や、その内燃機関2から生じる排気ガスの温度および流量などから、第1デバイス3の温度を予測するプログラムであり、予め測定されたデータに基づいて作成されている。
また、メモリ11は、例えば、自動車25の車速センサや、エンジン16の出力計、さらには、吸気系および排気系における圧力センサおよび流量計など、種々の検知装置に電気的に接続されており、各種データが入力可能とされている。これにより、メモリ11のRAMには、上記した内燃機関2の運転状態や、その内燃機関2から生じる排気ガスの温度および流量などの、温度予測プログラムPを処理するための一時的な数値が入力および格納される。
中央処理装置(CPU)21は、上記の温度予測プログラムPによって温度を予測演算し、その予測温度に基づいて電圧印加装置9を作動および停止させるための制御手段であって、破線で示すように、メモリ11に電気的に接続されるとともに、電圧印加装置9に電気的に接続されている。
このような中央処理装置(CPU)21では、詳しくは後述するが、温度予測プログラムPに従い、上記した種々の検知装置により検知される情報に基づいて、エンジン16の目標出力および加減速状態、さらには、排ガスの温度および流量などを予測可能とし、その予測に基づいて、第1デバイス3の温度を予測可能としている。
また、中央処理装置(CPU)21は、温度予測プログラムPにより予測される第1デバイス3の温度状態に基づいて、電圧印加装置9を作動および停止可能としている。
また、図1において破線で示すように、第2デバイス4は、昇圧器5、交流/直流変換器6およびバッテリー7に、順次、電気的に接続されている。
また、自動車25は、上記した車載発電システム1のほか、さらに、触媒搭載部12、エキゾーストパイプ13、マフラー14および排出パイプ15を備えている。
触媒搭載部12は、例えば、触媒担体およびその担体上にコーティングされる触媒を備えており、内燃機関2から排出される排気ガスに含まれる炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)などの有害成分を浄化するために、内燃機関2(エキゾーストマニホールド17)の下流側端部に接続されている。
エキゾーストパイプ13は、触媒搭載部12において浄化された排気ガスをマフラー14に案内するために設けられており、上流側端部が触媒搭載部12に接続されるとともに、下流側端部がマフラー14に接続されている。
マフラー14は、エンジン16(とりわけ、爆発工程(後述))において生じる騒音を、静音化するために設けられており、その上流側端部がエキゾーストパイプ13の下流側端部に接続されている。また、マフラー14の下流側端部は、排出パイプ15の上流側端部に接続されている。
排出パイプ15は、エンジン16から排出され、エキゾーストマニホールド17、触媒搭載部12、エキゾーストパイプ13およびマフラー14を順次通過し、浄化および静音化された排気ガスを、外気に放出するために設けられており、その上流側端部がマフラー14の下流側端部に接続されるとともに、その下流側端部が、外気に開放されている。
そして、このような自動車25では、エンジン16の駆動により、各気筒において、ピストンの昇降運動が繰り返され、吸気工程、圧縮工程、爆発工程および排気工程が順次実施され、その温度が経時的に上下される。
より具体的には、例えば、分岐管18aに接続される気筒、および、分岐管18cに接続される気筒の2つの気筒において、ピストンが連動し、吸気工程、圧縮工程、爆発工程および排気工程が、同位相で実施される。これにより、燃料が燃焼され、動力が出力されるとともに、高温の排気ガスが、分岐管18aおよび分岐管18cの内部を排気工程において通過する。
このとき、エンジン16の熱が、排気ガスを介して伝達され、排気ガスの温度(分岐管18aおよび分岐管18cの内部温度)は、排気工程において上昇する。一方、その他の工程(吸気工程、圧縮工程、爆発工程)では、排気ガス量が低減されるので、排気ガスの温度(分岐管18aおよび分岐管18cの内部温度)は下降する。
このように、排気ガスの温度は、排気工程において上昇し、吸気工程、圧縮工程および爆発工程において下降し、つまり、経時的に上下する。
とりわけ、上記の各工程は、ピストンサイクルに応じて、周期的に順次繰り返されるため、排気ガスは、上記の各工程の繰り返しの周期に伴って、周期的に温度変化、より具体的には、高温状態と低温状態とが、周期的に繰り返される。
一方、それら2つの気筒とはタイミングを異にして、分岐管18bに接続される気筒、および、分岐管18dに接続される気筒の2つの気筒において、ピストンが連動し、吸気工程、圧縮工程、爆発工程および排気工程が、同位相で実施される。これにより、燃料が燃焼され、動力が出力されるとともに、分岐管18aおよび分岐管18cとは異なるタイミングにおいて、高温の排気ガスが、分岐管18bおよび分岐管18dの内部を排気工程において通過する。
このとき、エンジン16の熱が、排気ガスを介して伝達され、排気ガスの温度(分岐管18bおよび分岐管18dの内部温度)は、排気工程において上昇する。一方、その他の工程(吸気工程、圧縮工程、爆発工程)では、排気ガス量が低減されるので、排気ガスの温度(分岐管18bおよび分岐管18dの内部温度)は下降する。
このように、排気ガスの温度は、排気工程において上昇し、吸気工程、圧縮工程および爆発工程において下降し、つまり、経時的に上下する。
とりわけ、上記の各工程は、ピストンサイクルに応じて、周期的に順次繰り返されるため、排気ガスは、上記の各工程の繰り返しの周期に伴って、周期的に温度変化、より具体的には、高温状態と低温状態とが、周期的に繰り返される。
この周期的な温度変化は、分岐管18aおよび分岐管18cの周期的な温度変化とは、周期が同じである一方、位相が異なる。
このような車載発電システム1において、内燃機関2および排気ガスの温度は、高温状態における温度が、例えば、200〜1200℃、好ましくは、700〜900℃であり、低温状態における温度が、上記の高温状態における温度未満、より具体的には、例えば、100〜800℃、好ましくは、200〜500℃であり、高温状態と低温状態との温度差が、例えば、10〜600℃、好ましくは、20〜500℃である。
また、それら高温状態と低温状態との繰り返し周期は、例えば、10〜400サイクル/秒、好ましくは、30〜100サイクル/秒である。
そして、この車載発電システム1では、上記したように、各分岐管18の内部(箱型空間20内)に、第1デバイス3が配置されている。
そのため、エンジン16(内燃機関2)から排出される排気ガスが、分岐管18内に導入され、箱型空間20内に充填されると、その箱型空間20内において、第1デバイス3に排気ガスが供給され、第1デバイス3の表面および裏面の両面(さらには、周側面)が、第2デバイス4を介して排気ガスに接触(曝露)され、加熱および/または冷却される。
すなわち、第1デバイス3の表面および裏面の両面が、エンジン16(内燃機関2)、および、そのエンジン16の熱を伝達する排気ガスの経時的な温度変化により、加熱および/または冷却される。
そして、これにより、第1デバイス3を、周期的に高温状態または低温状態にすることができ、第1デバイス3を、その素子(例えば、ピエゾ素子、焦電素子など)に応じた効果(例えば、ピエゾ効果、焦電効果など)により、電気分極させることができる。
そのため、この車載発電システム1では、第2デバイス4を介して、各第1デバイス3から電力を周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として、取り出すことができる。
また、この車載発電システム1では、分岐管18aおよび分岐管18cの温度と、分岐管18bおよび分岐管18dの温度とが、同じ周期、かつ、異なる位相で周期的に変化するため、電力を、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として、連続的に取り出すことができる。
その後、この方法では、例えば、図1において点線で示すように、上記により得られた電力を、第2デバイス4に接続される昇圧器5において、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)の状態で昇圧し、次いで、昇圧された電力を、交流/直流変換器6において直流電圧に変換した後、バッテリー7に蓄電する。バッテリー7に蓄電された電力は、自動車25や、自動車25に搭載される各種電気部品の動力などとして、適宜、用いることができる。
そして、このような車載発電システム1によれば、温度が経時的に上下する内燃機関2を用いるため、変動する電圧(例えば、交流電圧)を取り出すことができ、その結果、一定電圧(直流電圧)として取り出し、DC−DCコンバーターで変換する場合に比べて、優れた効率で昇圧して、蓄電することができる。
なお、排気ガスは、各分岐管18を通過した後、集気管19に供給され、集気された後、触媒搭載部12に供給され、その触媒搭載部12に備えられる触媒により浄化される。その後、排気ガスは、エキゾーストパイプ13に供給され、マフラー14において静音化された後、排出パイプ15を介して、外気に排出される。
このとき、各分岐管18内を通過する排気ガスは、集気管19において集気されるので、集気管19、触媒搭載部12、エキゾーストパイプ13、マフラー14および排出パイプ15を順次通過する排気ガスは、その温度が、平滑化されている。
そのため、温度が平滑化されたこのような排気ガスを通過させる集気管19、触媒搭載部12、エキゾーストパイプ13、マフラー14および排出パイプ15の温度は、通常、経時的に上下することなく、ほぼ一定である。
そのため、集気管19、触媒搭載部12、エキゾーストパイプ13、マフラー14または排出パイプ15を内燃機関2として用い、その周囲または内部に、上記した第1デバイス3を配置する場合には、第1デバイス3から取り出される電力は、その電圧が小さく、また、一定(直流電圧)である。
そのため、このような方法では、得られる電力を、簡易な構成で効率良く昇圧することができず、蓄電効率に劣るという不具合がある。
一方、上記したように、分岐管18の内部空間に第1デバイス3を配置すれば、内燃機関2の経時的な温度変化により、第1デバイス3を、周期的に高温状態または低温状態にすることができ、第1デバイス3を、そのデバイス(例えば、ピエゾ素子、焦電素子など)に応じた効果(例えば、ピエゾ効果、焦電効果など)により、周期的に電気分極させることができる。
そのため、この車載発電システム1では、第2デバイス4を介して、各第1デバイス3から電力を周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として、取り出すことができる。
一方、このような車載発電システム1では、温度条件によっては、第1デバイス3の温度が、そのキュリー点を超過する場合がある。そして、第1デバイス3のキュリー点以上の環境下において、第1デバイス3を用いると、第1デバイス3に損傷を生じ、発電性能が低下する場合や、発電不能となる場合がある。
さらに、車載発電システム1では、より効率的に発電するために、第1デバイス3の温度条件に基づいて、第1デバイス3に電圧を印加することが要求される。
そこで、この車載発電システム1では、上記した温度予測プログラムPにより、第1デバイス3の温度を予測し、その温度予測プログラムPにより予測される第1デバイス3の温度に基づいて、中央処理装置(CPU)21の制御により、電圧印加装置9を作動および停止させる。
図2は、図1の制御ユニット10において実行される制御処理を示すフロー図である。図2に示す制御処理(温度予測プログラムP)は、メモリ11のROMに記憶されており、その制御処理が中央処理装置(CPU)21により実行される。
この制御処理は、エンジン16の駆動開始をトリガーとしてスタートされる。
処理がスタートされると、例えば、自動車25の走行時における負荷(車両重量など)や、車速、アクセル開度、エンジン16の回転数などから、エンジン16の目標出力および加減速状態が、温度予測プログラムPに従って予測される(ステップS1)。
なお、エンジン16の目標出力および加減速状態を予測する演算方法は、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。
また、これとともに、例えば、エンジン16の回転数や、吸気系における吸気圧などから、排ガスの温度が、温度予測プログラムPに従って予測される(ステップS2)。
なお、排ガスの温度を予測する演算方法は、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。
さらに、これとともに、例えば、吸気系における吸入空気量や、エンジン16における燃料流量、さらには、空燃比(吸入空気量/燃料流量)などから、排ガスの流量が、温度予測プログラムPに従って予測される(ステップS3)。
なお、排ガスの流量を予測する演算方法は、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。例えば、吸入空気量と燃料流量との合計などとして排ガスの流量は算出される。また、燃料流量は、例えば、インジェクタ噴射量(噴射時間、燃圧、吸気圧などから算出される。)、エンジン16の回転数などから算出される。
次いで、この処理では、上記により予測されたエンジン16の目標出力および加減速状態、および、排ガスの予測温度(さらには、エンジン16における燃料の供給状態など)から、排ガスの温度変化が、温度予測プログラムPに従って予測される(ステップS4)。
なお、排ガスの温度変化を予測する演算方法は、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。
次いで、この処理では、上記により予測された排ガスの温度変化、および、排ガスの流量(さらには、例えば、第1デバイス3の熱容量、予め設定される補正係数など)から、第1デバイス3の温度が、温度予測プログラムPに従って予測される(ステップS5)。
なお、第1デバイス3の温度を予測する演算方法は、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。
そして、この処理では、中央処理装置(CPU)21によって、第1デバイス3の温度(予測温度)が、そのキュリー点以上であるか否かが判断される(ステップS6)。
第1デバイス3の温度(予測温度)が、そのキュリー点以上である場合(ステップS6のYES)には、中央処理装置(CPU)21によって電圧印加装置9が作動され、第1デバイス3に所定の電圧が印加される(ステップS7)。
なお、電圧の大きさは、第1デバイス3の種類や温度条件などに応じて、適宜設定される。また、電圧を印加する時間は、第1デバイス3の予測温度が第1デバイス3のキュリー点未満となる時点までである。
そして、温度予測プログラムPに従って予測される予測温度が第1デバイス3のキュリー点未満である場合(ステップS6のNO)には、中央処理装置(CPU)21により、第1デバイス3の温度が昇温状態であるか降温状態であるかが判断される(ステップS8)。
より具体的には、例えば、温度予測プログラムPに従って予測される第1デバイス3の温度が、予め設定された所定の値(例えば、0.2℃/sなど)以上上昇したときに、昇温状態であると判断され、また、第1デバイス3の温度が、予め設定された所定の値(例えば、0.2℃/sなど)以上下降したときに、降温状態であると判断される。
そして、この車載発電システム1では、第1デバイス3が昇温状態であると判断された場合(ステップS8のYES)には、中央処理装置(CPU)21によって電圧印加装置9が作動され、第1デバイス3に所定の電圧が印加される(ステップS7)。
なお、電圧の大きさは、第1デバイス3の種類や温度条件などに応じて、適宜設定される。また、電圧を印加する時間は、第1デバイス3が降温状態に至るまでであり、具体的には、昇温状態中である。
そして、第1デバイス3が降温状態であると予測された場合(ステップS8のNO)には、中央処理装置(CPU)21によって電圧印加装置9が停止され、第1デバイス3に対する電圧の印加が停止される(ステップS9)。
なお、上記の車載発電システム1では、第1デバイス3は、内燃機関2により加熱および/または冷却されるため、実質的に定温状態になることなく、昇温状態および降温状態が繰り返される。
また、電圧印加装置9を作動させてから上記電圧が印加される(すなわち、電場の大きさが上記の所定値に達する)までの所要時間、および、電圧印加装置9を停止させてから、電場の大きさが0kV/mmに達するまでの所要時間は、実質的に0秒とみなすことができる。すなわち、このような車載発電システム1では、上記所定値に満たない電圧が印加されている時間は、実質的に0秒であって、上記所定値の電圧が印加されている状態(ON)と、電圧が印加されていない状態(OFF)とが、中央処理装置(CPU)21によって切り替えられている。
そして、このような車載発電システム1では、上記の処理を繰り返すことにより、第1デバイス3の損傷を抑制するとともに、発電効率の向上を図ることができる。
つまり、上記の車載発電システム1では、温度予測プログラムPに従って第1デバイス3の温度を予測し、その予測温度に基づいて、電圧印加装置9を作動および停止させる。
具体的には、上記の車載発電システム1では、予測温度が第1デバイス3のキュリー点以上であるときには、中央処理装置(CPU)21により電圧印加装置9が作動され、第1デバイス3に電圧が印加される。
そのため、第1デバイス3がそのキュリー点を超えたときには、温度センサなどを用いることなく、予測温度に基づいて電圧印加装置9を作動させることにより、第1デバイス3が損傷することを抑制することができ、発電システム1の発電性能が低下することや、発電不能となることを抑制することができる。その結果、高温環境下においても、優れた効率で発電することができる。
また、上記の車載発電システム1では、第1デバイス3の昇温が検知されたときには、電圧印加装置9が作動され、第1デバイス3に電圧が印加される。一方、第1デバイス3の降温が検知されたときには、電圧印加装置9が停止され、電圧の印加が停止される。
このような車載発電システム1によれば、電圧印加装置9を作動または停止させる、つまり、ON/OFF操作するという比較的簡易な方法によって、電圧を印加しない場合に比べ、第1デバイス3から効率的にエネルギーを取り出すことができ、発電効率の向上を図ることができる。
また、発電効率の向上を図る方法としては、上記したように電圧印加装置9を単に作動および停止させるだけでなく、例えば、その印加電圧の大きさを第1デバイス3の温度状態に応じて変化させることも検討される。しかし、このような方法では、印加電圧を徐々に増減させるという煩雑な操作を必要とするため、手間がかかるという不具合がある。
一方、上記の車載発電システム1では、電圧印加装置9を作動または停止させるという比較的簡易な方法によって、発電効率の向上を図ることができる。
とりわけ、上記の車載発電システム1では、第1デバイス3の温度条件に基づいて、予測温度に基づいて電圧印加装置9を作動および停止させることにより、温度センサなどを用いることなく、応答性よく第1デバイス3に電圧を印加することができ、発電効率の向上を図ることができる。
そして、このような車載発電システム1では、取り出された電力を、第2デバイス4に接続される昇圧器5において、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)の状態で昇圧する。昇圧器5としては、交流電圧を、例えば、コイル、コンデンサなどを用いた簡易な構成により、優れた効率で昇圧できる昇圧器が、用いられる。
次いで、昇圧器5において昇圧された電力を、交流/直流変換器6において直流電圧に変換した後、バッテリー7に蓄電する。
このような車載発電システム1によれば、温度が経時的に上下する熱源(内燃機関2の排気ガス)を用いるため、変動する電圧(例えば、交流電圧)を取り出すことができ、その結果、一定電圧(直流電圧)として取り出す場合に比べて、簡易な構成により、優れた効率で昇圧して、蓄電することができる。