1.車載発電システムの全体構成
図1は、本発明の車載発電システムの一実施形態を示す概略構成図である。
図1において、自動車10は、車載発電システム1を備えている。
車載発電システム1は、内燃機関2と、内燃機関2から排出され、温度が経時的に上下する排気ガスが供給されることにより電気分極する第1デバイス3と、第1デバイス3から電力を取り出すための第2デバイス4と、第1デバイス3の温度を検知するための温度センサ5と、第1デバイス3に電圧を印加するための電圧印加手段としての電圧印加装置6と、第1デバイスの近傍における火炎の有無を検知する火炎検知手段としての検知ユニット7と、検知ユニット7の検知に基づいて電圧印加装置を作動および停止させるための制御手段としての制御ユニット8とを備えている。
内燃機関2は、エンジン11、エンジン11に空気を供給するための吸気管16、エンジン11から排気ガスを排出させるための排気管17、および、エンジン11に燃料を供給するための燃料供給手段としての燃料供給装置20を備えている。
エンジン11は、車両などの動力を出力する装置であって、例えば、単気筒型または多気筒型(例えば、2気筒型、4気筒型、6気筒型)が採用されるとともに、その各気筒において、多サイクル方式(例えば、2サイクル方式、4サイクル方式、6サイクル方式など)が採用される。
以下において、4気筒型が採用されるとともに、その各気筒で4サイクル方式が採用されるエンジン11について、説明する。
このエンジン11は、並列配置される複数(4つ)の気筒12を備えている。なお、図1においては、1つの気筒12を取り出して示し、その他の気筒12については省略している。
各気筒12は、ピストン13、燃焼室14および点火プラグ(図示せず)などを備えており、上流側が吸気管16に接続されるとともに、下流側が排気管17に接続されている。
また、各気筒12は、吸気管16と接続される接続部分において、吸気バルブ18を備えるとともに、排気管17と接続される接続部分において、排気バルブ19を備えている。
吸気バルブ18は、気筒12と吸気管16との接続部分において、気筒12を開閉可能に設けられている。
排気バルブ19は、気筒12と排気管17との接続部分において、気筒12を開閉可能に設けられている。
これら吸気バルブ18および排気バルブ19は、図示しないが、スプリングなどの弾性力によって閉方向に付勢されている。これら吸気バルブ18および排気バルブ19は、例えば、カムシャフトの回転などによって、気筒12を開閉可能としている。
吸気管16は、エンジン11に空気を供給するために設けられ、その下流側端部がエンジン11の気筒12に接続されるとともに、上流側端部が外気に開放されている。
吸気管16は、スロットルバルブ15を備えており、このスロットルバルブ15の開閉により、エンジン11に空気を取り込み可能としている。
排気管17は、エンジン11から排気ガスを排出させるために設けられ、その上流側端部がエンジン11の気筒12に接続されている。
また、図示しないが、複数(4つ)の気筒12に接続される複数(4つ)の排気管17は、それぞれ、エンジン11および第1デバイス3(後述)よりも下流側において1つに集合されており、その集合された排気管17の下流側端部は、外気に開放されている。これにより、エンジン11から排出される排気ガスを集合させ、外気に放出可能としている。
燃料供給装置20は、吸気管16に設けられ、燃料タンク21および燃料供給管22を備えている。
燃料タンク21は、エンジンに供給される燃料(例えば、ガソリンなど)が貯留されるタンクであって、耐熱耐圧容器などから形成されている。
燃料供給管22は、燃料タンク21からエンジン11に燃料を供給するために設けられており、その上流側端部が燃料タンク21に接続されるとともに、下流側端部が、燃料噴射弁23に接続されている。
燃料噴射弁23は、エンジン11に対する燃料タンク21からの燃料の供給量を調節するとともに、その燃料をエンジン11に対して噴射するための弁であって、燃料供給管22の下流側端部に設けられ、吸気管16の吸気バルブ18よりも上流側に接続されている。
燃料噴射弁23としては、特に制限されず、公知の噴射弁を用いることができる。
このような燃料噴射弁23は、エンジン11のエンジン制御ユニット(図示せず)に電気的に接続されており、エンジン制御ユニット(図示せず)によって、その開閉が制御されている。これにより、エンジン11の運転状態に応じて、燃料噴射弁23の開閉および開度、すなわち、燃料噴射弁23による燃料の噴射量(エンジン11に対する燃料の供給量)が制御可能とされている。
第1デバイス3は、内燃機関2(エンジン11)から排出され、温度が経時的に上下する排気ガスが供給されることにより、温度が経時的に上下され、電気分極するデバイスである。
ここでいう電気分極とは、結晶の歪みにともなう正負イオンの変位により誘電分極し電位差が生じる現象、例えばピエゾ効果、および/または、温度変化により誘電率が変化し電位差が生じる現象、例えば焦電効果などのように、材料に起電力が発生する現象と定義する。
このような第1デバイス3として、より具体的には、例えば、ピエゾ効果により電気分極するデバイス、焦電効果により電気分極するデバイスなどが挙げられる。
ピエゾ効果は、応力または歪みが加えられたときに、その応力または歪みの大きさに応じて電気分極する効果(現象)である。
このようなピエゾ効果により電気分極する第1デバイス3としては、特に制限されず、公知のピエゾ素子(圧電素子)を用いることができる。
第1デバイス3としてピエゾ素子が用いられる場合には、ピエゾ素子は、例えば、その周囲が固定部材により固定され、体積膨張が抑制された状態において、排気ガスに接触(曝露)されるように、排気管17内に配置される。
固定部材としては、特に制限されず、例えば、後述する第2デバイス4(例えば、電極など)を用いることもできる。
そして、このような場合には、ピエゾ素子は、排気ガスの経時的な温度変化により、加熱または冷却され、これにより、膨張または収縮する。
このとき、ピエゾ素子は、固定部材により体積膨張が抑制されているため、ピエゾ素子は、固定部材に押圧され、ピエゾ効果(圧電効果)、または、キュリー点付近での相変態により、電気分極する。これにより、詳しくは後述するが、第2デバイス4を介して、ピエゾ素子から電力が取り出される。
また、このようなピエゾ素子は、通常、加熱状態または冷却状態が維持され、その温度が一定(すなわち、体積一定)になると、電気分極が中和され、その後、冷却または加熱されることにより、再度、電気分極する。
そのため、上記したように排気ガスが周期的に温度変化し、高温状態と低温状態とが周期的に繰り返される場合などには、ピエゾ素子が周期的に繰り返し加熱および冷却されるため、ピエゾ素子の電気分極およびその中和が、周期的に繰り返される。
その結果、後述する第2デバイス4により、電力が、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として取り出される。
焦電効果は、例えば、絶縁体(誘電体)などを加熱および冷却する時に、その温度変化に応じて絶縁体が電気分極する効果(現象)であって、第1効果および第2効果を含んでいる。
第1効果は、絶縁体の加熱時および冷却時において、その温度変化により自発分極し、絶縁体の表面に、電荷を生じる効果とされている。
また、第2効果は、絶縁体の加熱時および冷却時において、その温度変化により結晶構造に圧力変形が生じ、結晶構造に加えられる応力または歪みにより、圧電分極を生じる効果(ピエゾ効果、圧電効果)とされている。
このような焦電効果により電気分極するデバイスとしては、特に制限されず、公知の焦電素子を用いることができる。
第1デバイス3として焦電素子が用いられる場合には、焦電素子は、排気ガスに接触(曝露)されるように、排気管17内に配置される。
このような場合において、焦電素子は、排気ガスの経時的な温度変化により、加熱または冷却され、その焦電効果(第1効果および第2効果を含む)により、電気分極する。これにより、詳しくは後述するが、第2デバイス4を介して、焦電素子から電力が取り出される。
また、このような焦電素子は、通常、加熱状態または冷却状態が維持され、その温度が一定になると、電気分極が中和され、その後、冷却または加熱されることにより、再度、電気分極する。
そのため、上記したように排気ガスが周期的に温度変化し、高温状態と低温状態とが周期的に繰り返される場合などには、焦電素子が周期的に繰り返し加熱および冷却されるため、焦電素子の電気分極およびその中和が、周期的に繰り返される。
その結果、後述する第2デバイス4により、電力が、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として取り出される。
このような第1デバイス3として、具体的には、上記したように、公知の焦電素子(例えば、BaTiO3、CaTiO3、(CaBi)TiO3、BaNd2Ti5O14、BaSm2Ti4O12、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)など)、公知のピエゾ素子(例えば、水晶(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、ロッシェル塩(酒石酸カリウム−ナトリウム)(KNaC4H4O6)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、リチウムテトラボレート(Li2B4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、窒化アルミニウム(AlN)、電気石(トルマリン)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)などを用いることができる。
これら第1デバイス3は、単独使用または2種類以上併用することができる。
第1デバイス3のキュリー点は、例えば、−77℃以上、好ましくは、−10℃以上であり、例えば、1300℃以下、好ましくは、900℃以下である。
また、第1デバイス3(絶縁体(誘電体))の比誘電率は、例えば、1以上、好ましくは、100以上、より好ましくは、2000以上である。
このような車載発電システム1では、第1デバイス3(絶縁体(誘電体))の比誘電率が高いほど、エネルギー変換効率が高く、高電圧で電力を取り出すことができるが、第1デバイス3の比誘電率が上記下限未満であれば、エネルギー変換効率が低く、得られる電力の電圧が低くなる場合がある。
なお、第1デバイス3(絶縁体(誘電体))は、排気ガスの温度変化によって電気分極するが、その電気分極は、電子分極、イオン分極および配向分極のいずれでもよい。
例えば、配向分極によって分極が発現する材料(例えば、液晶材料など)では、その分子構造を変化させることにより、発電効率の向上を図ることができるものと期待されている。
このような第1デバイス3は、詳しくは図示しないが、排気管17内において、例えば、互いに間隔を隔てて複数整列配置され、第2デバイス4(および必要により設けられる固定部材(図示せず))により、固定されている。なお、図1においては、1つの第1デバイス3を取り出して示し、その他の第1デバイス3については省略している。
これにより、第1デバイス3は、排気管17内において、第2デバイス4を介して、排気ガスに接触(曝露)可能とされている。
第2デバイス4は、第1デバイス3から電力を取り出すために設けられる。
このような第2デバイス4は、より具体的には、特に制限されないが、例えば、上記の第1デバイス3を挟んで対向配置される2つの電極(例えば、銅電極、銀電極など)、例えば、それら電極に接続される導線などを備えており、第1デバイス3に電気的に接続されている。
また、第2デバイス4は、必要により、昇圧器(図示せず)、交流/直流変換器(AC−DCコンバーター)(図示せず)などを介して、バッテリー9に、電気的に接続されている。
温度センサ5は、第1デバイス3の温度を検知するため、第1デバイス3に近接または接触して設けられる。温度センサ5は、第1デバイス3の温度として、第1デバイス3の表面温度を直接検知するか、または、第1デバイス3の周囲の雰囲気温度を検知し、例えば、赤外放射温度計や、熱電対温度計などの公知の温度センサが用いられる。
電圧印加装置6は、第1デバイス3に電圧を印加するため、第1デバイス3に直接設けられている。具体的には、電圧印加装置6は、例えば、上記の第1デバイス3を挟んで対向配置される2つの電極(例えば、銅電極、銀電極など)30、電圧印加電源29、およびそれらに接続される導線などを備えており、第1デバイス3と接触し、それら電極30間に第1デバイス3を介在させるように、配置されている。
なお、電圧印加装置6において、電極30は、第2デバイス4の電極と共通であってもよく、第2デバイス4の電極とは別途設けられていてもよい。
また、電圧印加装置6において、第1デバイス3に電圧を印加するために設けられる2つの電極30は、後述する検知電極対25として兼用することもできる。
検知ユニット7は、第1デバイス3の近傍における火炎の有無を検知する装置であって、例えば、イオン電流検知手段としてのイオン電流検知装置24から構成されている。
イオン電流検知装置24は、イオン電流を検知することにより火炎の有無を検知するための装置であって、複数の検知電極対25、イオン電流検知電源26およびチェック回路27を備えている。
検知電極対25は、互いに間隔を隔てて対向配置される一対(2つ)の電極として形成されている。各電極の形状は特に制限されず、例えば、板状、棒状などが挙げられる。
このような検知電極対25は、第1デバイス3の近傍において、排気管17内に(または、排気管17の内外を貫通するように)複数設けられている。
より具体的には、検知電極対25は、排気ガスの流れ方向において、各第1デバイス3の上流側および下流側のそれぞれに(すなわち、1つの第1デバイス3に対して少なくとも2つ)備えられている。
検知電極対25を、排気ガスの流れ方向における第1デバイス3の上流側および下流側のそれぞれに備えていれば、より正確に火炎の位置などを検知できるため、より確実に、車載発電システム1の発電性能が低下することや、発電不能となることを抑制することができる。
また、検知電極対25を設ける位置としては、第1デバイス3の近傍に限定されず、その他、第1デバイス3から離隔する任意の箇所に設けることもできる。
さらに、電圧印加装置6において、第1デバイス3に電圧を印加するために設けられる2つの電極30を、検知電極対25として兼用することができる。
これにより、第1デバイス3の近傍における火炎をより確実に検知することができるため、より確実に、車載発電システムの発電性能が低下することや、発電不能となることを抑制することができる。
イオン電流検知電源26は、検知電極対25に電圧を印加するための電源であって、図示しない導線などを介して、検知電極対25に直接接続されている(破線参照)。
チェック回路27は、イオン電流検知電源26によって検知電極対25の電極間に電圧を印加したときに、検知電極対25の電極間における導通の有無を確認(検知)するための回路であって、イオン電流検知電源26に電気的に接続されるとともに、制御ユニット8に電気的に接続されている(破線参照)。これにより、詳しくは後述するが、第1デバイス3の近傍に火炎が生じたときに、その火炎を検知可能としている。
なお、イオン電流検知装置24において、イオン電流検知電源26およびチェック回路27は、ケース28などに収容されている。
このように、検知ユニット7がイオン電流検知装置24から構成されていれば、詳しくは後述するが、イオン電流を検知することにより、簡易かつ確実に火炎を検知することができ、より確実に、車載発電システム1の発電性能が低下することや、発電不能となることを抑制することができる。
制御ユニット8は、車載発電システム1における電気的な制御を実行するユニット(例えば、ECU:Electronic Control Unit)であり、CPU、ROMおよびRAMなどを備えるマイクロコンピュータから構成されている。
この制御ユニット8は、図1において破線で示すように、温度センサ5および電圧印加装置6に電気的に接続されており、詳しくは後述するが、上記した温度センサ5によって第1デバイス3の昇温または降温が検知されたときに、電圧印加装置6を作動または停止させる。
また、この制御ユニット8は、さらに、図1において破線で示すように、検知ユニット7に電気的に接続されており、検知ユニット7の検知に基づいて、電圧印加装置6を作動および停止可能としている。
2.発電方法
以下において、上記した車載発電システム1を用いた発電方法について、詳述する。
この車載発電システム1では、エンジン11の駆動により、気筒12においてピストンの昇降運動が繰り返されており、これにより、例えば、4サイクル方式では、吸気工程、圧縮工程、爆発工程、排気工程などが順次実施される。
より具体的には、このエンジン11では、まず、スロットルバルブ15が開かれ、吸気管16から空気が供給されるとともに、燃料供給管22から所定量の燃料が燃料噴射弁23によって供給(噴射)され、それらが混合される。そして、空気と燃料との混合気が、吸気バルブ18が開かれることにより、気筒12の燃焼室14に供給される(吸気工程)。
次いで、吸気バルブ18が閉じられ、ピストン13が上昇することにより、燃焼室14の混合気が圧縮され、高温化される(圧縮工程)。
次いで、図示しない点火プラグにより混合気が点火され、爆発的に燃焼されるとともに、ピストン13が爆発により押し下げられる(爆発工程)。
その後、排気バルブ19が開かれ、燃焼により生じたガス(排気ガス)が、気筒12から排出される(排気工程)。
このように、エンジン11では、燃料が燃焼され、動力が出力されるとともに、高温の排気ガスが、排気管17の内部を排気工程において通過する。
このとき、エンジン11の熱が、排気ガスを介して伝達され、排気ガスの温度(排気管17の内部温度)は、排気工程において上昇する。一方、その他の工程(吸気工程、圧縮工程、爆発工程)では、排気管17内の排気ガス量が低減されるので、排気ガスの温度(排気管17の内部温度)は下降する。
このように、排気ガスの温度は、排気工程において上昇し、吸気工程、圧縮工程および爆発工程において下降し、つまり、経時的に上下する。
とりわけ、上記の各工程は、ピストンサイクルに応じて、周期的に順次繰り返されるため、排気ガスは、上記の各工程の繰り返しの周期に伴って、周期的に温度変化、より具体的には、高温状態と低温状態とが、周期的に繰り返される。
このような車載発電システム1において、内燃機関2および排気ガスの温度は、高温状態における温度が、例えば、200〜1200℃、好ましくは、700〜900℃であり、低温状態における温度が、上記の高温状態における温度未満、より具体的には、例えば、100〜800℃、好ましくは、200〜500℃であり、高温状態と低温状態との温度差が、例えば、10〜600℃、好ましくは、20〜500℃である。
また、それら高温状態と低温状態との繰り返し周期は、例えば、10〜400サイクル/秒、好ましくは、30〜100サイクル/秒である。
そして、この車載発電システム1では、上記したように、排気管17の内部に、第1デバイス3が配置されている。
そのため、エンジン11(内燃機関2)から排出される排気ガスが、排気管17内に導入されると、その排気管17内において、第1デバイス3に排気ガスが供給され、第1デバイス3が、第2デバイス4を介して排気ガスに接触(曝露)され、加熱および/または冷却される。
すなわち、第1デバイス3が、エンジン11(内燃機関2)、および、そのエンジン11の熱を伝達する排気ガスの経時的な温度変化により、加熱および/または冷却される。
そして、これにより、第1デバイス3を、周期的に高温状態または低温状態にすることができ、第1デバイス3を、その素子(例えば、ピエゾ素子、焦電素子など)に応じた効果(例えば、ピエゾ効果、焦電効果など)により、電気分極させることができる。
そのため、この車載発電システム1では、第2デバイス4を介して、各第1デバイス3から電力を周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として、取り出すことができる。
また、このような車載発電システム1では、より効率的に発電するため、第1デバイス3の温度状態に応じて、第1デバイス3に電圧を印加する。
より具体的には、この車載発電システム1では、上記したエンジン11(内燃機関2)による加熱および/または冷却とともに、温度センサ5によって、第1デバイス3の温度を連続的に測定し、第1デバイス3が昇温状態であるか、降温状態であるかを検知する。
例えば、温度センサ5によって検知される第1デバイス3の温度が、予め設定された所定の値(例えば、0.2℃/sなど)以上上昇したときに、昇温状態であると検知され、また、第1デバイス3の温度が、予め設定された所定の値(例えば、0.2℃/sなど)以上下降したときに、降温状態であると検知される。
そして、この車載発電システム1では、第1デバイス3が昇温状態であると検知されたときには、制御ユニット8によって電圧印加装置6を作動させ、第1デバイス3に所定の電圧を印加する。
電圧を印加する時間は、第1デバイス3が降温状態に至るまでであり、具体的には、昇温状態中である。
そして、第1デバイス3が降温状態であると検知されたときには、制御ユニット8によって電圧印加装置6を停止させ、第1デバイス3に対する電圧の印加を停止する。
電圧の印加を停止する時間は、第1デバイス3が昇温状態に至るまでであり、具体的には、降温状態中である。
また、電圧印加装置6を作動させてから上記電圧が印加される(すなわち、電場の強さが上記の所定値に達する)までの所要時間、および、電圧印加装置6を停止させてから、電場の強さが0kV/mmに達するまでの所要時間は、実質的に0秒とみなすことができる。
すなわち、この車載発電システム1では、上記所定値に満たない電圧が印加されている時間は、実質的に0秒であって、上記所定値の電圧が印加されている状態(ON)と、電圧が印加されていない状態(OFF)とが、制御ユニット8によって切り替えられている。
このように、上記の車載発電システム1では、第1デバイス3の昇温が検知されたときには、電圧印加装置6が作動され、第1デバイス3に電圧が印加される。一方、第1デバイス3の降温が検知されたときには、電圧印加装置6が停止され、電圧の印加が停止される。
このような車載発電システム1によれば、電圧印加装置6を作動または停止させる、つまり、ON/OFF操作するという比較的簡易な方法によって、電圧を印加しない場合に比べ、第1デバイス3から効率的にエネルギーを取り出すことができ、発電効率の向上を図ることができる。
また、このような車載発電システム1において、第1デバイス3は、その加熱および/または冷却の方法によっては、昇温および降温されることなく、定温状態(温度変化量が所定値(例えば、0.2℃/s)未満)で一時的に維持される場合がある。そのような場合、電圧は、第1デバイス3の昇温中およびその昇温後の定温状態中に印加され、降温中およびその降温後の定温状態中に、電圧の印加が停止される。
なお、通常は、内燃機関2により温度が上下される場合、第1デバイス3は、実質的に定温状態になることなく、昇温状態および降温状態が繰り返される。
また、発電効率の向上を図る方法としては、上記したように電圧印加装置6を単に作動および停止させるだけでなく、例えば、その印加電圧の大きさを第1デバイス3の温度状態に応じて変化させることも検討される。しかし、このような方法では、印加電圧を徐々に増減させるという煩雑な操作を必要とするため、手間がかかるという不具合がある。
一方、上記の車載発電システム1では、電圧印加装置6を作動または停止させるという比較的簡易な方法によって、発電効率の向上を図ることができる。
さらに、上記の第1デバイス3は、そのキュリー点を超える環境下に曝されると損傷を生じ、発電性能が低下する場合や、発電不能となる場合がある。
しかし、上記の車載発電システム1では、第1デバイス3が昇温されるときに電圧が印加されるので、第1デバイス3が、そのキュリー点を超える環境下に曝される場合にも、第1デバイス3が損傷することを抑制することができ、車載発電システム1の発電性能が低下することや、発電不能となることを抑制することができる。その結果、高温環境下においても、優れた効率で発電することができる。
そして、この方法では、例えば、図1において点線で示すように、上記により得られた電力を、必要により第2デバイス4に接続される昇圧器(図示せず)で昇圧し、交流/直流変換器(図示せず)において直流電圧に変換した後、バッテリー9に蓄電する。バッテリー9に蓄電された電力は、自動車10や、自動車10に搭載される各種電気部品の動力などとして、適宜、用いることができる。
一方、発電に用いられた排気ガスは、第1デバイス3を通過した後、公知の触媒などによって浄化され、外気に排出される。
3.アフターファイア
このような車載発電システム1が搭載される自動車10では、その走行条件によって、アフターファイア(アフターバーン)が生じる場合がある。
具体的には、アフターファイアは、燃焼室14内において燃焼しなかった燃料(未燃焼燃料)や、燃焼が不十分であった燃料(不完全燃焼燃料)が、気筒12から排気管17に排出されたときに、排気管17内において燃焼(爆発)し、火炎を生じる現象であり、種々の要因によって惹起される。
例えば、自動車10の運転中、アクセルペダルの踏み込みによりスロットルバルブ15の開度を大とし、空気の供給量を増加させるとともに、燃料噴射弁23による燃料の供給量を増加させる場合などには、燃料の増加量に対して空気の増加量が不十分となる場合があり、気筒12内において、燃料が過剰となる場合がある。
そして、気筒12内に燃料が過剰に供給されると、燃料を十分に燃焼させることができず、未燃焼燃料や不完全燃焼燃料が、排気管17に排出される場合がある。
また、例えば、アクセルペダルを戻し、スロットルバルブ15を閉とする場合には、空気の供給が停止されるので、吸気バルブ18の近傍に付着している燃料などが負圧によって気筒12に供給され、気筒12内における燃料量が過剰となる場合がある。そして、上記と同様、燃料が過剰に供給されると、気筒12内において十分に燃焼させることができず、未燃焼燃料や不完全燃焼燃料が排気管17に排出される場合がある。
このように、スロットルバルブ15の開閉およびその開度によって、過剰の燃料が気筒12内に供給されると、未燃焼燃料や不完全燃焼燃料が排気管17に排出される場合があり、これにより排気管17内においてアフターファイアが発生する場合がある。
なお、アフターファイアの発生は、上記に限定されず、その他の種々の要因により予測される。具体的には、例えば、気筒12に備えられる点火プラグ(図示せず)が摩耗すると、燃料の燃焼時において点火不良が生じ、十分に燃料を燃焼させることができない場合がある。このような場合にも、未燃焼燃料や不完全燃焼燃料が排気管17に排出され、アフターファイアが発生する場合がある。
また、例えば、図示しないが、自動車10では、点火プラグ(図示せず)による点火を停止させ、または、点火を遅延させることにより、スピードリミッターなどのリミッター(図示せず)の作動させる場合がある。このような場合にも、未燃焼燃料や不完全燃焼燃料が排気管17に排出され、アフターファイアが発生する場合がある。
そして、このようにして未燃焼燃料や不完全燃焼燃料が排気管17に排出され、排気管17内でアフターファイアが発生して、第1デバイス3の近傍において火炎が生じると、その急激な温度上昇によって、第1デバイスに損傷を生じ、発電効率の低下を惹起する場合や、発電不能となる場合がある。
そのため、この車載発電システム1では、以下に示す処理により、検知ユニット7(イオン電流検知装置24)によって火炎を検知し、その検知に基づいて、電圧印加装置6を作動させることにより、第1デバイス3の破損を抑制する。
図2は、図1の制御ユニット8において実行される制御処理を示すフロー図である。図2に示す制御処理(プログラム)は、例えば、制御ユニット8のROMに記憶されており、その制御処理がCPUにより実行される。
この制御処理は、上記したエンジン11の駆動をトリガーとしてスタートされる。
この処理が実行されると、すなわち、エンジン11が駆動されると、エンジン11から排出される排気ガスによって第1デバイス3の温度が経時的に変化する。このとき、上記したように、第1デバイス3の温度条件(昇温状態/降温状態)に応じて、電圧印加装置6が作動および停止される(ステップS1)。
なお、以下において、第1デバイス3の温度条件(昇温状態/降温状態)に応じて電圧印加装置6を作動および停止する制御を、通常電圧制御と称する場合がある。
次いで、この処理では、検知ユニット7により、第1デバイス3の近傍における火炎が検知される(ステップS2)。
より具体的には、例えば、検知ユニット7としてイオン電流検知装置24が用いられる場合、まず、イオン電流検知装置24の検知電極対25の電極間に電圧が印加される。印加電圧の大きさは、特に制限されず、適宜設定される。そして、検知電極対25の電極間の導通が、チェック回路27によって検知される。
すなわち、この排気管17内において燃料が燃焼し、火炎(アフターファイア)が生じる場合には、その燃焼により排気管17内の種々の分子がイオン化する。そして、これにより生じたイオンが検知電極対25の電極間に存在する場合には、イオン電流による導通が、検知電極対25の電極間に生じる。
そのため、検知電極対25の電極間が導通すれば、検知電極対25の電極間にイオンが存在するものと判断され、これにより、火炎が検知される。一方、検知電極対25の電極間が導通していなければ、検知電極対25の電極間にイオンが存在しないものと判断され、火炎が存在しないと判断される。
また、同様にして、第1デバイス3の近傍の他、第1デバイス3から離隔された箇所に設けられた複数の検知電極対25に電圧を印加し、その導通を検知すれば、導通された検知電極対25の位置などに基づいて、排気管17内における火炎の発生箇所や挙動など推察することができる。
さらに、上記の通常電圧制御において、電圧印加装置6の電極30間に電圧が印加されていないとき(すなわち、第1デバイス3が降温状態であるとき)に、電圧印加装置6の2つの電極30を、検知電極対25として兼用することができる。
具体的には、電圧印加装置6の各電極30と第1デバイス3との間をわずかに離隔し、第1デバイス3が降温状態であるときに、その電極30間に微小な電圧(例えば、通常電圧制御において印加される電圧の10%以下で導通すればよい。)を印加し、その電極30間の導通を検知する。これにより、電圧印加装置6の2つの電極30を検知電極対25として兼用し、火炎を検知することができる。
そして、この処理では、検知ユニット7において火炎が検知された場合(ステップS2のYES)には、制御ユニット8により電圧印加装置6が作動され、火炎の近傍の第1デバイス3に、電圧が印加される(ステップS3)。
例えば、複数が整列配置される第1デバイス3のうち、特定の第1デバイス3の近傍において火炎が検知された場合には、その第1デバイス3に、電圧が印加される。
また、好ましくは、電圧が印加される第1デバイス3の周囲、すなわち、車両上下方向、前後方向および左右方向などに隣接配置される第1デバイス3にも、電圧が印加される。
なお、上記のように火炎を検知する間にも、電圧印加装置6は通常電圧制御されており、電圧印加装置6は、第1デバイス3の温度条件(昇温状態/降温状態)に応じて作動または停止されている。
そのため、火炎が検知されたときに、第1デバイス3が昇温状態である場合には、通常電圧制御として、第1デバイス3に電圧が印加されている場合がある。そのような場合には、引き続き、第1デバイス3に対して電圧が印加される。
一方、火炎が検知されたときに、第1デバイス3が降温状態であり、電圧印加装置6が停止されている場合には、通常電圧制御とは独立して、電圧印加装置6が作動され、第1デバイス3に電圧が印加される。
このように電圧印加装置6を作動させることにより、第1デバイス3の近傍に火炎が生じて、第1デバイス3の温度が上昇する場合にも、第1デバイス3の分子配向の乱れを抑制し、第1デバイス3が損傷することを抑制できる。
次いで、この処理では、第1デバイス3の温度が温度センサ5により検知され、第1デバイス3の温度が所定温度(例えば、第1デバイス3のキュリー点)以下であるかが判断される(ステップS4)。
そして、第1デバイス3の温度が所定温度(例えば、第1デバイス3のキュリー点)を超える場合(ステップS4のNO)には、やはり、第1デバイスの分子配向が乱れるなどして、第1デバイス3に損傷を生じる場合がある。
そのため、第1デバイス3の温度が所定温度以下となるまで、上記の電圧を引き続き印加する(ステップS3)。
一方、第1デバイス3の温度が所定温度以下である場合(ステップS4のYES)には、続いて、エンジン11が停止されているか、駆動されているかが判断される(ステップS5)。
そして、エンジン11が駆動されている場合(ステップS5のNO)には、引き続き、電圧印加装置6が通常電圧制御され、第1デバイス3の温度条件(昇温状態/降温状態)に応じて、電圧印加装置6が作動および停止される(ステップS1)。すなわち、火炎の検知に基づいて作動された電圧印加装置6は、第1デバイス3が降温状態となったときに、停止される。
一方、エンジン11が停止されている場合(ステップS5のYES)には、電圧印加装置6が停止され、電圧の印加が停止される(ステップS6)。
なお、第1デバイス3の近傍において火炎が生じていないと判断される場合(ステップS2のNO)には、上記と同様、エンジン11が停止されているか、駆動されているかが判断される(ステップS5)。
そして、エンジン11が駆動している間(ステップS5のNO)は、引き続き、通常電圧制御され、第1デバイス3の温度条件に応じて、電圧印加装置6が作動および停止される(ステップS1)。
一方、火炎が検知されずに、エンジン11が停止された場合(ステップS5のYES)には、電圧印加装置6が停止され、電圧の印加が停止される(ステップS6)。
これにより、エンジン11および電圧印加装置6が停止され、制御処理(プログラム)が終了される。
4.作用・効果
このような車載発電システム1では、検知ユニット7による火炎の検知に基づいて、第1デバイス3の近傍に火炎が検知されるときに制御ユニット8が電圧印加装置6を作動させる。
そのため、このような車載発電システム1では、第1デバイス3の近傍に火炎が生じて、第1デバイス3の温度が上昇する場合にも、電圧印加装置6を作動させることにより、第1デバイス3の分子配向の乱れを抑制し、第1デバイス3が損傷することを抑制できる。そのため、車載発電システム1の発電性能が低下することや、発電不能となることを抑制することができる。
また、検知ユニット7がイオン電流検知装置24であれば、イオン電流を検知することにより、簡易かつ確実に火炎を検知することができ、より確実に、車載発電システム1の発電性能が低下することや、発電不能となることを抑制することができる。
さらに、イオン電流検知装置24が、イオン電流を検知するための検知電極対25を、排気ガスの流れ方向における第1デバイス3の上流側および下流側のそれぞれに備えていれば、より正確に火炎の位置などを検知できるため、より確実に、車載発電システム1の発電性能が低下することや、発電不能となることを抑制することができる。
なお、上記した説明では、検知ユニット7と制御ユニット8とは、それぞれ別体として設けられているが、例えば、検知ユニット7と制御ユニット8とは、一体的に設けられていてもよい。
また、上記した説明では、第1デバイス3を電圧印加装置6の電極間に挟み込み、電圧を印加したが、電圧を印加する方法としては、これに限定されず、例えば、第1デバイス3に端子などを直接挿入し、電圧を印加することもできる。