1.第1実施形態
図1は、本発明の車載発電システムの第1実施形態を示す概略構成図である。
図1において、自動車10は、車載発電システム1を備えている。
第1実施形態において、車載発電システム1は、内燃機関2と、内燃機関2から排出され、温度が経時的に上下する排気ガスが供給されることにより電気分極する第1デバイス3と、第1デバイス3から電力を取り出すための第2デバイス4と、フィルタ5と、所定のタイミングでフィルタ5を加熱するための加熱手段としての第1電圧印加装置6と、第1電圧印加装置6を作動させるための制御手段としての制御ユニット7とを備えている。
内燃機関2は、エンジン11、エンジン11に空気を供給するための吸気管16、エンジン11から排気ガスを排出させるための排気管17、および、エンジン11に燃料を供給するための燃料供給装置20を備えている。
エンジン11は、車両などの動力を出力する装置であって、例えば、単気筒型または多気筒型(例えば、2気筒型、4気筒型、6気筒型)が採用されるとともに、その各気筒において、多サイクル方式(例えば、2サイクル方式、4サイクル方式、6サイクル方式など)が採用される。
以下において、4気筒型が採用されるとともに、その各気筒で4サイクル方式が採用されるエンジン11について、説明する。
このエンジン11は、並列配置される複数(4つ)の気筒12を備えている。なお、図1においては、1つの気筒12を取り出して示し、その他の気筒12については省略している。
各気筒12は、ピストン13、燃焼室14および点火プラグ15を備えており、上流側が吸気管16に接続されるとともに、下流側が排気管17に接続されている。
また、各気筒12は、吸気管16と接続される接続部分において、吸気バルブ18を備えるとともに、排気管17と接続される接続部分において、排気バルブ19を備えている。
吸気バルブ18は、気筒12と吸気管16との接続部分において、気筒12を開閉可能に設けられている。
排気バルブ19は、気筒12と排気管17との接続部分において、気筒12を開閉可能に設けられている。
これら吸気バルブ18および排気バルブ19は、図示しないが、スプリングなどの弾性力によって閉方向に付勢されている。これら吸気バルブ18および排気バルブ19は、例えば、カムシャフトの回転などによって、気筒12を開閉可能としている。
吸気管16は、エンジン11に空気を供給するために設けられ、その下流側端部がエンジン11の気筒12に接続されるとともに、上流側端部が外気に開放されている。
吸気管16は、スロットルバルブ25を備えており、このスロットルバルブ25の開閉により、エンジン11に空気を取り込み可能としている。
排気管17は、エンジン11から排気ガスを排出させるために設けられ、その上流側端部がエンジン11の気筒12に接続されている。
また、排気管17は、その流れ方向途中において、箱型空間23を、それぞれ1つ備えている。箱型空間23は排気管17に連通するように介装される略直方体状の空間であって、その内側において、第1デバイス3(後述)および第2デバイス4(後述)を備えている。
また、図示しないが、複数(4つ)の気筒12に接続される複数(4つ)の排気管17は、それぞれ、エンジン11および第1デバイス3(後述)よりも下流側において1つに集合されており、その集合された排気管17の下流側端部は、外気に開放されている。これにより、エンジン11から排出される排気ガスを集合させ、外気に放出可能としている。
燃料供給装置20は、吸気管16に設けられ、燃料タンク21および燃料供給管22を備えている。
燃料タンク21は、エンジンに供給される燃料(例えば、ガソリンなど)が貯留されるタンクであって、耐熱耐圧容器などから形成されている。
燃料供給管22は、燃料タンク21からエンジン11に燃料を供給するために設けられており、その上流側端部が燃料タンク21に接続されるとともに、下流側端部が、燃料噴射弁24に接続されている。
燃料噴射弁24は、エンジン11に対する燃料タンク21からの燃料の供給量を調節するとともに、その燃料をエンジン11に対して噴射するための弁であって、燃料供給管22の下流側端部に設けられ、吸気管16の吸気バルブ18よりも上流側に接続されている。
燃料噴射弁24としては、特に制限されず、公知の噴射弁を用いることができる。
このような燃料噴射弁24は、エンジン制御ユニット(図示せず)に電気的に接続されており、エンジン制御ユニット(図示せず)によって、その開閉が制御されている。
第1デバイス3は、内燃機関2(エンジン11)から排出され、温度が経時的に上下する排気ガスが供給されることにより、温度が経時的に上下され、電気分極するデバイスである。
ここでいう電気分極とは、結晶の歪みにともなう正負イオンの変位により誘電分極し電位差が生じる現象、例えばピエゾ効果、および/または、温度変化により誘電率が変化し電位差が生じる現象、例えば焦電効果などのように、材料に起電力が発生する現象と定義する。
このような第1デバイス3として、より具体的には、例えば、ピエゾ効果により電気分極するデバイス、焦電効果により電気分極するデバイスなどが挙げられる。
ピエゾ効果は、応力または歪みが加えられたときに、その応力または歪みの大きさに応じて電気分極する効果(現象)である。
このようなピエゾ効果により電気分極する第1デバイス3としては、特に制限されず、公知のピエゾ素子(圧電素子)を用いることができる。
第1デバイス3としてピエゾ素子が用いられる場合には、ピエゾ素子は、例えば、その周囲が固定部材により固定され、体積膨張が抑制された状態において、排気ガスに接触(曝露)されるように、排気管17内に配置される。
固定部材としては、特に制限されず、例えば、後述する第2デバイス4(例えば、電極など)を用いることもできる。
そして、このような場合には、ピエゾ素子は、排気ガスの経時的な温度変化により、加熱または冷却され、これにより、膨張または収縮する。
このとき、ピエゾ素子は、固定部材により体積膨張が抑制されているため、ピエゾ素子は、固定部材に押圧され、ピエゾ効果(圧電効果)、または、キュリー点付近での相変態により、電気分極する。これにより、詳しくは後述するが、第2デバイス4を介して、ピエゾ素子から電力が取り出される。
また、このようなピエゾ素子は、通常、加熱状態または冷却状態が維持され、その温度が一定(すなわち、体積一定)になると、電気分極が中和され、その後、冷却または加熱されることにより、再度、電気分極する。
そのため、上記したように排気ガスが周期的に温度変化し、高温状態と低温状態とが周期的に繰り返される場合などには、ピエゾ素子が周期的に繰り返し加熱および冷却されるため、ピエゾ素子の電気分極およびその中和が、周期的に繰り返される。
その結果、後述する第2デバイス4により、電力が、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として取り出される。
焦電効果は、例えば、絶縁体(誘電体)などを加熱および冷却する時に、その温度変化に応じて絶縁体が電気分極する効果(現象)であって、第1効果および第2効果を含んでいる。
第1効果は、絶縁体の加熱時および冷却時において、その温度変化により自発分極し、絶縁体の表面に、電荷を生じる効果とされている。
また、第2効果は、絶縁体の加熱時および冷却時において、その温度変化により結晶構造に圧力変形が生じ、結晶構造に加えられる応力または歪みにより、圧電分極を生じる効果(ピエゾ効果、圧電効果)とされている。
このような焦電効果により電気分極するデバイスとしては、特に制限されず、公知の焦電素子を用いることができる。
第1デバイス3として焦電素子が用いられる場合には、焦電素子は、排気ガスに接触(曝露)されるように、排気管17内に配置される。
このような場合において、焦電素子は、排気ガスの経時的な温度変化により、加熱または冷却され、その焦電効果(第1効果および第2効果を含む)により、電気分極する。これにより、詳しくは後述するが、第2デバイス4を介して、焦電素子から電力が取り出される。
また、このような焦電素子は、通常、加熱状態または冷却状態が維持され、その温度が一定になると、電気分極が中和され、その後、冷却または加熱されることにより、再度、電気分極する。
そのため、上記したように排気ガスが周期的に温度変化し、高温状態と低温状態とが周期的に繰り返される場合などには、焦電素子が周期的に繰り返し加熱および冷却されるため、焦電素子の電気分極およびその中和が、周期的に繰り返される。
その結果、後述する第2デバイス4により、電力が、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として取り出される。
このような第1デバイス3として、具体的には、上記したように、公知の焦電素子(例えば、BaTiO3、CaTiO3、(CaBi)TiO3、BaNd2Ti5O14、BaSm2Ti4O12、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)など)、公知のピエゾ素子(例えば、水晶(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、ロッシェル塩(酒石酸カリウム−ナトリウム)(KNaC4H4O6)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、リチウムテトラボレート(Li2B4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、窒化アルミニウム(AlN)、電気石(トルマリン)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)などを用いることができる。
これら第1デバイス3は、単独使用または2種類以上併用することができる。
第1デバイス3のキュリー点は、例えば、−77℃以上、好ましくは、−10℃以上であり、例えば、1300℃以下、好ましくは、900℃以下である。
また、第1デバイス3(絶縁体(誘電体))の比誘電率は、例えば、1以上、好ましくは、100以上、より好ましくは、2000以上である。
このような車載発電システム1では、第1デバイス3(絶縁体(誘電体))の比誘電率が高いほど、エネルギー変換効率が高く、高電圧で電力を取り出すことができるが、第1デバイス3の比誘電率が上記下限未満であれば、エネルギー変換効率が低く、得られる電力の電圧が低くなる場合がある。
なお、第1デバイス3(絶縁体(誘電体))は、排気ガスの温度変化によって電気分極するが、その電気分極は、電子分極、イオン分極および配向分極のいずれでもよい。
例えば、配向分極によって分極が発現する材料(例えば、液晶材料など)では、その分子構造を変化させることにより、発電効率の向上を図ることができるものと期待されている。
このような第1デバイス3は、排気管17内、詳しくは、箱型空間23内において、例えば、互いに間隔を隔てて複数整列配置され、第2デバイス4(および必要により設けられる固定部材(図示せず))により、固定されている。なお、図1においては、1つの第1デバイス3を取り出して示し、その他の第1デバイス3については省略している。
これにより、第1デバイス3は、排気管17内において、排気ガスに接触(曝露)可能とされている。
第2デバイス4は、第1デバイス3から電力を取り出すために設けられる。
このような第2デバイス4は、より具体的には、特に制限されないが、例えば、上記の第1デバイス3を挟んで対向配置される2つの電極(例えば、銅電極、銀電極など)、例えば、それら電極に接続される導線などを備えており、第1デバイス3に電気的に接続されている。
また、第2デバイス4は、必要により、昇圧器(図示せず)、交流/直流変換器(AC−DCコンバーター)(図示せず)などを介して、バッテリー8に、電気的に接続されている。
フィルタ5は、例えば、焼結セラミックなど、後述する第1電圧印加装置6により通電したときに発熱する発熱材料(抵抗発熱体)などからなる公知のフィルタであって、排気ガスが通過可能であり、かつ、排気ガスに含有される煤などが通過不可能な網状構造(例えば、ハニカム網状構造)を有している。
このようなフィルタ5は、排気管17内において、第1デバイス3よりも排気ガスの流れ方向上流側に配置されており、これにより、エンジン11から排気管17に排出される排気ガスが、第1デバイス3に供給される前に、排気ガスに含有される煤などを捕集可能としている。
第1電圧印加装置6は、フィルタ5に電圧を印加するため、フィルタ5に直接設けられている。具体的には、第1電圧印加装置6は、例えば、第1電圧印加電源9と、フィルタ5および第1電圧印加電源9に接続される導線(図1破線参照)などとを備えている。
制御ユニット7は、車載発電システム1における電気的な制御を実行するユニット(例えば、ECU:Electronic Control Unit)であり、CPU、ROMおよびRAMなどを備えるマイクロコンピュータから構成されている。
この制御ユニット7は、図1において破線で示すように、第1電圧印加装置6に電気的に接続されており、詳しくは後述するが、所定のタイミングで第1電圧印加装置6を作動させるように、予め設定されている。
また、この車載発電システム1は、さらに、第1デバイス3に電界を印加するための電界印加手段としての第2電圧印加装置26を備えている。
第2電圧印加装置26は、第1デバイス3に電界を印加するため、第1デバイス3に直接または近接して設けられる。
具体的には、第2電圧印加装置26は、第1デバイス3を挟んで対向配置される複数(1つの箱型空間23に対して2つ)の電極28(例えば、銅電極、銀電極など)、第2電圧印加電源29、およびそれらに接続される導線(図1破線参照)などを備えている。
各電極28は、一対が各箱型空間23に対応するようにそれぞれ設けられ、各箱型空間23の外側表面において互いに対向し、それら電極28間に第1デバイス3および第2デバイス4を介在させるように配置されている。
そして、第2電圧印加装置26では、これら電極28に第2電圧印加電源29から電圧を印加することにより、電極28間、すなわち、箱型空間23内に電界を生じさせ、第1デバイス3に電界を印加可能としている。
また、第2電圧印加装置26は、図1において破線で示すように、制御ユニット7に電気的に接続されている。そして、制御ユニット7は、詳しくは後述するが、少なくともフィルタ5が加熱されているときに第2電圧印加装置26を作動させるように、予め設定されている。
2.発電方法
以下において、上記した車載発電システム1を用いた発電方法について、詳述する。
この車載発電システム1では、エンジン11の駆動により、気筒12においてピストンの昇降運動が繰り返されており、これにより、例えば、4サイクル方式では、吸気工程、圧縮工程、爆発工程、排気工程などが順次実施される。
より具体的には、このエンジン11では、まず、スロットルバルブ25が開かれ、吸気管16から空気が供給されるとともに、燃料供給管22から所定量の燃料が燃料噴射弁24によって供給(噴射)され、それらが混合される。そして、空気と燃料との混合気が、吸気バルブ18が開かれることにより、気筒12の燃焼室14に供給される(吸気工程)。
次いで、吸気バルブ18が閉じられ、ピストン13が上昇することにより、燃焼室14の混合気が圧縮され、高温化される(圧縮工程)。
次いで、点火プラグ15により混合気が点火され、爆発的に燃焼されるとともに、ピストン13が爆発により押し下げられる(爆発工程)。
その後、排気バルブ19が開かれ、燃焼により生じたガス(排気ガス)が、気筒12から排出される(排気工程)。
このように、エンジン11では、燃料が燃焼され、動力が出力されるとともに、高温の排気ガスが、排気管17の内部を排気工程において通過する。
このとき、エンジン11の熱が、排気ガスを介して伝達され、排気ガスの温度(排気管17の内部温度)は、排気工程において上昇する。一方、その他の工程(吸気工程、圧縮工程、爆発工程)では、排気管17内の排気ガス量が低減されるので、排気ガスの温度(排気管17の内部温度)は下降する。
このように、排気ガスの温度は、排気工程において上昇し、吸気工程、圧縮工程および爆発工程において下降し、つまり、経時的に上下する。
とりわけ、上記の各工程は、ピストンサイクルに応じて、周期的に順次繰り返されるため、排気ガスは、上記の各工程の繰り返しの周期に伴って、周期的に温度変化、より具体的には、高温状態と低温状態とが、周期的に繰り返される。
このような車載発電システム1において、内燃機関2および排気ガスの温度は、高温状態における温度が、例えば、200〜1200℃、好ましくは、700〜900℃であり、低温状態における温度が、上記の高温状態における温度未満、より具体的には、例えば、100〜800℃、好ましくは、200〜500℃であり、高温状態と低温状態との温度差が、例えば、10〜600℃、好ましくは、20〜500℃である。
また、それら高温状態と低温状態との繰り返し周期は、例えば、10〜400サイクル/秒、好ましくは、30〜100サイクル/秒である。
そして、この車載発電システム1では、上記したように、排気管17の内部に、第1デバイス3が配置されている。
そのため、エンジン11(内燃機関2)から排出される排気ガスが、排気管17内に導入されると、その排気管17内において、第1デバイス3に排気ガスが供給され、第1デバイス3が、第2デバイス4を介して排気ガスに接触(曝露)され、加熱および/または冷却される。
すなわち、第1デバイス3が、エンジン11(内燃機関2)、および、そのエンジン11の熱を伝達する排気ガスの経時的な温度変化により、加熱および/または冷却される。
そして、これにより、第1デバイス3を、周期的に高温状態または低温状態にすることができ、第1デバイス3を、その素子(例えば、ピエゾ素子、焦電素子など)に応じた効果(例えば、ピエゾ効果、焦電効果など)により、電気分極させることができる。
そのため、この車載発電システム1では、第2デバイス4を介して、各第1デバイス3から電力を周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として、取り出すことができる。
その後、この方法では、例えば、図1において点線で示すように、上記により得られた電力を、必要により第2デバイス4に接続される昇圧器(図示せず)で昇圧し、交流/直流変換器(図示せず)において直流電圧に変換した後、バッテリー8に蓄電する。バッテリー8に蓄電された電力は、自動車10や、自動車10に搭載される各種電気部品の動力などとして、適宜、用いることができる。
一方、発電に用いられた排気ガスは、第1デバイス3を通過した後、公知の触媒などによって浄化され、外気に排出される。
3.汚染の抑制
<第1デバイスの汚染抑制>
上記したように、車載発電システム1が搭載される自動車10では、混合気の燃焼によって生じる排気ガスが、排気管17内を通過し、第1デバイス3に供給される。
このような排気ガスは、例えば、カーボンなどからなる煤などを含有している。そのため、排気ガスを第1デバイス3に供給すると、煤などによって第1デバイス3が目詰まりするなど、汚染される場合がある。そして、第1デバイス3が汚染されると、発電効率が低下するという不具合がある。
そこで、この車載発電システム1では、第1デバイス3が汚染されることを抑制するため、排気管17内において、第1デバイス3よりも排気ガスの流れ方向上流側にフィルタ5を設け、フィルタ5によって、煤などを捕集する。
つまり、このような車載発電システム1では、排気管17内に第1デバイス3が配置され、また、その第1デバイス3よりも排気ガスの流れ方向上流側にフィルタ5が配置されるため、排気ガスに含まれる煤などをフィルタ5により捕集することができる。
そのため、煤などが除去された排気ガスを第1デバイス3に供給することができ、第1デバイス3の汚染を抑制することができ、その結果、優れた発電効率を確保することができる。
<フィルタの洗浄>
一方、フィルタ5が煤などを捕集すると、フィルタが目詰まりなどを惹起する場合がある。
そこで、この車載発電システム1では、第1電圧印加装置6によってフィルタ5を加熱し、捕集された煤などを焼き払う。
より具体的には、例えば、制御ユニット7の制御によって、所定のタイミングで、具体的には、予め設定された所定時間毎に、第1電圧印加装置6を作動させ、フィルタ5に電圧を印加する。
なお、フィルタ5に電圧を印加する時間の長さや、その間隔は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
また、例えば、エンジン11の高負荷時にフィルタ5を上記のように洗浄すれば、排気ガスの温度が高いのでフィルタ5に印加する電圧が少なくてよく、また、ガス圧が高いので熱分解しかけた煤などをフィルタ5から離脱させることができる。
そして、このようにフィルタ5に電圧が印加されると、その抵抗などによってフィルタ5は加熱され、フィルタ5に捕集されている煤などが熱分解および除去される。
このように、上記の車載発電システム1では、第1電圧印加装置6によって所定のタイミングでフィルタ5が加熱されるので、フィルタにおいて捕集された煤などを焼き払うことができ、これにより、フィルタ5の目詰まりを抑制することができる。
そのため、この車載発電システム1によれば、継続的に優れた発電効率を確保することができる。
4.第1デバイス損傷抑制
上記のような車載発電システム1では、フィルタ5を加熱することにより、フィルタ5のみならず排気ガスが加熱される場合があり、昇温された排気ガスが第1デバイス3に供給される場合がある。
より具体的には、例えば、フィルタ5が第1電圧印加装置6により加熱されると、その加熱状態のフィルタ5によって、フィルタ5を通過する排気ガスも加熱され、昇温された排気ガスが第1デバイス3に供給される場合がある。
そして、この排気ガスによって第1デバイス3が加熱されると、第1デバイス3の温度が、高温、具体的には、そのキュリー点を超過して、第1デバイス3に損傷を生じ、発電性能が低下する場合や、発電不能となる場合がある。
そこで、この車載発電システム1では、少なくともフィルタ5が加熱されていることを制御ユニット7により検知し、フィルタ5が加熱されているときに、第2電圧印加装置26の電極28に電圧を印加し、第1デバイス3に電界を印加する。
電極28に印加する電界の強さは、例えば、0.1〜5kV/mm、好ましくは、0.3〜3.5kV/mm、より好ましくは、1〜2kV/mmである。
また、電界の印加時間は、例えば、制御ユニット7の制御によって第1電圧印加装置6が作動され、フィルタ5が加熱されている間、さらには、その余熱によりフィルタ5が加熱されている間(余熱時間)である。予熱時間は、フィルタ5の材料、容量などに基づき、予め設定することができる。
このように第1デバイス3に電界を印加することによって、第1デバイス3が加熱され、高温、具体的には、そのキュリー点以上の温度条件下に曝される場合にも、第1デバイス3が損傷することを抑制することができる。
すなわち、このような車載発電システム1では、少なくともフィルタ5が加熱されているときに第1デバイス3に電界を印加することができるので、第1デバイス3が損傷することを抑制することができ、車載発電システム1の発電性能が低下することや、発電不能となることを抑制することができる。
なお、上記した説明では、所定時間毎に第1電圧印加装置6を作動させたが、第1電圧印加装置6を作動させるタイミングは、フィルタ5の目詰まりを抑制することができれば、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定することができる。具体的には、例えば、車載発電システム1にその発電量を測定する電圧センサ(図示せず)などを設け、発電量を測定するとともに、発電量の低下が検知されたときに、フィルタ5が目詰まりしていると判断して、制御ユニット7の制御により第1電圧印加装置6を作動させることができる。
5.第2実施形態
図2は、本発明の車載発電システムの第2実施形態を示す概略構成図である。
上記した説明では、加熱手段として第1電圧印加装置6を用い、フィルタ5に電圧を印加することによりフィルタ5を加熱したが、加熱手段としてはこれに限定されず、例えば、加熱手段としてエンジン11を用いることができる。
以下において、加熱手段としてエンジン11を用いる実施形態(第2実施形態)について、図2を参照して説明する。なお、図2において、上記した各部に対応する部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第2実施形態では、加熱手段としてエンジン11が用いられており、また、制御ユニット7が、図2において破線で示すように、点火プラグ15に電気的に接続され、所定のタイミングで点火プラグ15を作動させるように、予め設定されている。
より具体的には、第2実施形態において、エンジン11では、上記したように、混合気が気筒12の燃焼室14に供給され(吸気工程)、ピストン13が上昇することにより燃焼室14において混合気が圧縮される(圧縮工程)。
次いで、制御ユニット7によって、点火プラグ15が作動され、混合気が点火されることにより、混合気が爆発的に燃焼される(爆発工程)。そして、その燃焼により生じた排気ガスが、気筒12から排気管17へ排気される(排気工程)。
そして、このような車載発電システム1では、制御ユニット7の制御によって所定のタイミングで、具体的には、予め設定された所定時間毎に、点火プラグ15による点火を遅延(遅角)させる。
すなわち、通常、排気ガスは、爆発工程において混合気が燃焼することにより生じた後、排気工程に至るまでの間に降温される。そして、その降温された排気ガスが、気筒12から排気管17に排出される。
このようなエンジン11の駆動において、上記したように点火プラグ15による点火を遅延(遅角)させると、爆発工程において、排気ガスの発生が遅延する。そのため、排気ガスが生じた後、排気されるまでの間が短くなり、排気ガスは、十分に降温されない状態で(すなわち、高温状態で)排気管17に排出される。
なお、点火プラグ15による点火を遅延(遅角)させる間隔は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
そして、このように高温の排気ガスが排気管17に排出され、フィルタ5を通過すると、フィルタ5は、排気ガスの熱が蓄熱されることによって加熱され、フィルタ5に捕集されている煤などが熱分解および除去される。
このような第2実施形態においても、第1電圧印加装置6によって所定のタイミングでフィルタ5が加熱されるので、捕集された煤などを焼き払うことができ、これにより、フィルタ5の目詰まりを抑制することができる。
そのため、この車載発電システム1によれば、フィルタ5による煤などの捕集効率の低下や、第1デバイス3に対する排気ガスの供給効率の低下などを抑制することができ、継続的に第1デバイス3の汚染を抑制することができ、優れた発電効率を確保することができる。
なお、上記した説明では、所定時間毎に、点火プラグ15による点火を遅延(遅角)させたが、点火を遅延(遅角)させるタイミングは、フィルタ5の目詰まりを抑制することができれば、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定することができる。具体的には、例えば、車載発電システム1にその発電量を測定する電圧センサ(図示せず)などを設け、発電量を測定するとともに、発電量の低下が検知されたときに、フィルタ5が目詰まりしていると判断して、制御ユニット7の制御により点火を遅延(遅角)させることができる。
また、例えば、加熱手段として、上記した第1電圧印加装置6およびエンジン11の両方を用い、それらを選択的にまたは同時に作動させ、フィルタ5を加熱することもできる。