以下、実施形態の処理システムを、図面を参照して説明する。
(1)処理システム:第一実施形態
図1は、第一実施形態における処理システムを示す模式図である。処理システム100は、被処理液槽101と、処理槽102と、処理液槽103と、洗浄排水槽104と、コンプレッサ(加圧手段)105と、ポンプ106,107と、これら各部を接続する配管108と、圧力計(検出手段)109とを備えている。また、これら各部を制御する制御部115が設けられている。
制御部115は、例えばコンピュータおよび各部を制御するためのドライバやインターフェース、および電気配線などから構成される。こうした制御部115において、処理方法に沿って処理システム100を駆動させるための制御プログラムが実行される。なお、制御プログラムの実行による処理方法は、後ほど詳述する。
被処理液槽101は、処理システム100の外部から流入する被処理液を貯留する。被処理液としては、例えば、SS粒子を含む水などが挙げられる。被処理液槽101には、流入する被処理液のSS粒子を均等に分散させるため、被処理液槽101内を攪拌する撹拌機111が設置されていることが好ましい。被処理液槽101の形状、容量、材質等は、処理システム100の用途などに応じて適宜決定することができ、特に制限されるものではない。
処理槽(濾過フィルターユニット)102は、被処理液槽101から被処理液が供給される供給部112と、被処理液中の固形分を濾過するフィルター11と、フィルター11を通過した処理液を排出する第一排出部113と、供給部112に供給された被処理液の一部を排出する第二排出部114とを有する。
処理槽102では、フィルター11で被処理液を濾過することにより、被処理液中からSS粒子などの濾過対象物(固形分)を除去し、固形分が除去された処理液を生成する。処理槽102の外形形状は、フィルター11を収容可能であれば特に限定されるものではなく、本実施形態では円筒形に形成されている。
処理槽102は、フィルター11によって、被処理液が流入する一次面側10aに広がる第一空間E1と、フィルター11を透過した処理液が流出する二次面側10bに広がる第二空間E2に区画されている。処理槽102の第一空間E1は、配管108、ポンプ106、およびバルブV1を介して被処理液槽101と接続される。ポンプ106は、被処理液槽101内に収容された被処理液を処理槽102の供給部112に向けて圧送する。
処理槽102に設置されているフィルター11は、例えば中空円筒形を成し、その中心軸が鉛直方向に沿うように設置されている。本実施形態においては、円筒形のフィルター11の内周面で囲まれた空間が被処理液が流入する第一空間E1とされる。また、円筒形のフィルター11の外周面側に広がる空間が、処理液が流出する第二空間E2とされる。即ち、本実施形態の中空円筒形のフィルター11は、その内周面を被処理液が流入する一次面側10aとし、外周面を処理液が流出する二次面側10bとした内圧型フィルターとしている。
なお、このフィルター11の構成は後ほど詳述する。
処理槽102の第一空間E1側には、圧力計(検出手段)109が形成されている。こうした圧力計109は、第一空間E1内の圧力を測定する。フィルター11へのSSの堆積量が増大するとフィルター11を透過する処理液の流量が低下し、第一空間E1内の圧力が高まる。よって、第一空間E1内の圧力変化を検出することで、フィルター11へのSSの堆積状態を知ることができる。
なお、検出手段は、フィルター11の透過性能の評価指標を検出して検出信号を出力するものであればどのようなものでもよく、本実施形態の圧力計109以外にも、例えば、流量計を用いることができる。検出手段として流量計を用いる場合、例えば、被処理液槽101と処理槽102の第一空間E1とを接続する配管の途上に設置したり、あるいは処理槽102の第二空間E2と処理液槽103とを接続する配管の途上に設置することができる。これによって、被処理液の供給量の変化や処理液の流出量の変化を検出し、フィルター11へのSSの堆積状態を知ることができる。
処理液槽103は、配管108やバルブV2を介して処理槽102の第二空間E2と接続され、処理槽102から流出した濾過後の処理液を貯留する。処理液は、被処理液が処理槽102内のフィルター11を、一次面10a側から二次面10b側に通過することにより生成したものである。処理液槽103の形状、容量、材質等は、処理システム100の用途などに応じて適宜決定することができ、特に制限されない。
また、処理液槽103は、配管108、ポンプ107を介して処理槽102の第一空間E1に接続される。ポンプ107は、処理液槽103内に収容された処理液の一部を処理槽102の供給部112に向けて圧送する。
洗浄排水槽104は、配管108やバルブV5を介して処理槽102の第一空間E1と接続され、被処理液中から除去された洗浄排水を貯留する。洗浄排水は、後述する処理方法の実行時に生じるSS粒子を多く含む濃縮液なとからなる。洗浄排水槽104の形状、容量、材質等は、処理システム100の用途などに応じて適宜決定することができ、特に制限されない。
コンプレッサ(加圧手段)105は、加圧空気を処理槽102に向けて供給する。こうしたコンプレッサ105は、配管108やバルブV6,V4を介して処理槽102の第二空間E2と接続される。また、コンプレッサ105は、配管108やバルブV6,V3を介して処理槽102の第一空間E1と接続される。
バルブV1〜V6は開閉弁であり、配管108を流れる被処理液、処理液、およびコンプレッサからの加圧空気を制御部115からの制御信号に応じて通過させたり遮断させたりする。
(1−1)フィルターの形成例1
図2は、実施形態の処理システムを構成する処理槽に適用可能なフィルターの一例を示す断面図である。
フィルター11は、線材21を面状に配列させた濾過体12と、この濾過体12を支持する支持部材13と、を備えている。実施形態のフィルター11では、濾過体12は、長尺の線材21をコイル状に巻回させ、中空の筒状体に成形させたものからなる。このように成形した線材21によって、円筒面をもつ濾過体12が形成される。本実施形態の線材21は、延伸方向に対して直角な断面形状が三角形を成している。
線材21は、互いに隣接する線材どうしの間、即ち、実施形態では隣接する周回線材21どうしの間を所定幅の隙間を保つように支持部材13に支持されている。これにより、円筒形の濾過体12は、その内周面12aと外周面12bとの間を貫通するスリット状の隙間26が形成される。
本実施形態では、フィルター11は、濾過体12の内周面12aが被処理液が流入する一次面とされ、外周面12bが、濾過体12によって濾過された処理液が流出する二次面とされる。例えば、フィルター11は、略円筒形の内周面12a側が被処理液の圧送によって大気圧よりも加圧され、外周面12b側が大気圧となる内圧型のフィルターを構成している。
本実施形態の支持部材13は、濾過体12の外周面12b側で線材21に接合されている。支持部材13は、例えば線材21の周回方向に沿って等間隔に3か所形成され、濾過体12の中心軸に対して平行に延び、巻回された線材21を外周面12b側から支持している。こうした支持部材13と線材21とは、例えば、焼結によって接合されている。
図3は、フィルターの内周面側を示す要部拡大断面図である。
濾過体12のうち、被処理液が流入する内周面(一次面)12aは平坦面である。即ち、線材21のうち、内周面(一次面)12a側は、平坦面21fとなっている。例えば、本実施形態のように、断面形状が三角形の線材21の場合、この三角形の1辺が内周面(一次面)12aに沿うように、線材21が支持部材13に支持され、三角形の頂点で線材21が支持部材13に接合される。
また、周回違いで隣接する線材21,21どうしの隙間26は、断面形状が三角形の線材21を用いることによって、一次面12a側から、被処理液が流出する二次面12b側に向けて幅が広がるように形成される。
フィルター11を構成する濾過体12のうち、少なくとも被処理液が流入する内周面(一次面)12a側、即ち、内周面(一次面)12a側に臨む線材21の平坦面21fには、複数(多数)の微細構造物5が形成されている。
微細構造物5は、例えば、円錐台形、楕円錐形、多角錐形、円錐台形、楕円錐台形、多角錐台形のうち、少なくともいずれか1つの形状である。実施形態の微細構造物5は、基端から先端に向けて先細りの針状構造物である。
図4は、微細構造物が形成された線材を示す要部拡大模式図である。
微細構造物5は、線材21に例えば電気めっきによって形成しためっき層3から構成される。また、微細構造物5を構成するめっき層3と線材21との間には、めっき層3と線材21との密着性を高める下地層4が更に形成されていることが好ましい。
微細構造物5を形成する線材21としては、フィルター11を用いて濾過される被処理液中で使用できるものが用いられる。線材21の材料は、めっき処理を用いて、めっき層3、またはめっき層3および下地層4を容易に形成できるように、金属であることが好ましい。線材21に用いる金属としては、例えば、鉄、ニッケル、銅、および、これらの合金などを用いることが好ましい。その中でも特に、線材21として、耐蝕性に優れ、低コストで、加工しやすい材料であるステンレス鋼線を用いることが好ましい。
下地層4は、めっき層3の線材21への接着性を高めるために、必要に応じて設けられるものである。下地層4に用いられる材料としては、例えば、線材21の表面にニッケル合金からなるめっき層3を形成する場合、ニッケルまたはニッケル合金を用いることが好ましい。ニッケル合金としては、ホウ素、リン、亜鉛から選ばれる一種以上の元素を含有するものが挙げられる。
下地層4の厚みは、めっき層3の線材21への接着性を向上させることができる厚み以上とされている。また、下地層4の厚みは、隙間26の幅が、フィルター11にSS粒子を含む被処理液を通過させる際に適した大きさとなる範囲の厚みとされている。
実施形態におけるめっき層3は、複数の微細構造物(本実施形態においては針状構造物)5が下地層4の表面に集合してなる複合体である。それぞれの微細構造物5では、微細構造物5の基端53aよりも線材21側の領域である基部5aが、隣接する他の微細構造物5の基部5aと一体化されている。このことにより、微細構造物5の基部5aは、下地層4の表面に連続して形成されている。
本実施形態における微細構造物5は、例えば、円錐台形、楕円錐形、多角錐形、円錐台形、楕円錐台形、多角錐台形の形状を有する。このような錐形や錐台形の形状を有する各微細構造物5は、基端53aから先端52に向けて先細りの形状を有している。
図5に、こうした微細構造物5を針状構造物とした場合のSEM写真(二次電子像(SEI)、15.0kV、20000倍)を示す。
針状構造物とされた微細構造物5どうしの間には、断面視で基端53aに近づくにつれて幅が狭くなる谷53が形成されている。谷53は、平面視で各微細構造物5を取り囲むように形成されている。各微細構造物5を取り囲む谷53は、隣接する別の微細構造物5を取り囲む谷53と平面視で繋がって形成されている。
図4に示すフィルター11では、複数の微細構造物5の一部に、被処理液中から捕捉したSS粒子が付着している。
線材21の単位面積(1μm2)当たりの微細構造物5の数は、1.2〜10.0個/μm2である。単位面積(1μm2)当たりの微細構造物5の数が上記範囲未満であると、フィルター11とSS粒子を含む被処理液との接触面積が不足して、深層濾過の機構の効果が不十分となるために、被処理液中のSS粒子が捕捉されにくくなる。
また、単位面積(1μm2)当たりの微細構造物5の数が上記範囲未満であると、微細構造物5にSS粒子が捕捉されにくくなるため、ケーク7が形成されにくくなる。しかし、単位面積(1μm2)当たりの微細構造物5の数が上記範囲を超えると、洗浄を行っても微細構造物5からSS粒子が除去されにくくなり、洗浄性が不十分となる。
単位面積当たりの微細構造物5の数が1.2個/μm2以上であると、フィルター11の表面積が十分に広くなり、隣接する微細構造物5間にSS粒子が引っかかりやすくなる。このため、深層濾過の機構によってSS粒子が捕捉されやすく、捕捉されたSS粒子によってケーク7が形成されやすいフィルター11とすることができる。
よって、フィルター11は、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を用いてSS粒子を捕捉できる優れた除去機能を有するものとなる。単位面積当たりの微細構造物5の数は、よりSS粒子の除去機能の高いフィルター11とするために、3.0個/μm2以上であることが好ましい。
単位面積当たりの微細構造物5の数が10.0個/μm2以下であると、隣接する微細構造物5間の隙間が狭くなりすぎることが防止される。このため、図4に示すように、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されているケーク7とに囲まれた十分な広さの空間Efが形成される。空間Efは、ケーク7が形成された時に、ケーク濾過された処理液が流れる流路として機能する。
このため、微細構造物5を有さないフィルターと比較すると、ケーク7を通過した処理液の得られる面積が大きくなるため、濾過流量を大きくすることができる。したがって、フィルター11は、SS粒子が除去されやすく、濾過流量の大きいものとなる。単位面積当たりの微細構造物5の数は、より濾過流量の大きい優れたフィルター11とするために、7.0個/μm2以下であることが好ましい。
線材21の単位面積(1μm2)当たりの微細構造物5の数は、以下に示す方法により測定したものである。
フィルターを電子顕微鏡で観察し、縦2μm横2μm面積4μm2の正方形内に存在する針状構造物の頂点の数を、4箇所測定する。そして、4箇所で測定した針状構造物の頂点の数を平均し、単位面積(1μm2)当たりの針状構造物の数を算出する。
線材21の断面における単位長さ(1μm)当たりの微細構造物5の数は1.0〜4.0個/μmである。上記の単位長さ(1μm)当たりの微細構造物5の数が上記範囲未満であると、フィルター11とSS粒子を含む被処理液との接触面積が不足して、深層濾過の機構の効果が不十分となるので、被処理液中のSS粒子が捕捉されにくくなる。
一方、上述した単位長さ(1μm)当たりの微細構造物5の数が上記範囲を超えると、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されたケーク7とに囲まれた空間Efが狭くなるため、濾過流量が少なくなる場合がある。
上記の単位長さ当たりの微細構造物5の数が1.0個/μm以上であると、単位面積当たりの微細構造物5の数が1.2個/μm2以上である場合と同様に、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を用いてSS粒子を捕捉できる優れた除去機能を有するものとなる。上記の単位長さ当たりの微細構造物5の数は、よりSS粒子の除去機能の高いフィルター11とするために、1.5個/μm以上であることが好ましい。
上記の単位長さ当たりの微細構造物5の数が4.0個/μm以下であると、単位面積当たりの微細構造物5の数が10.0個/μm2以下である場合と同様に、隣接する微細構造物5間の隙間が狭くなりすぎることが防止される。このため、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されているケーク7とに囲まれた十分な広さの空間Efが形成されるものとなり、濾過流量の大きなフィルター11にすることができる。上記の単位長さ当たりの微細構造物5の数は、より一層濾過流量の大きいフィルター11とするために、3.0個/μm以下であることが好ましい。
線材21の断面における単位長さ(1μm)当たりの微細構造物5の数は、以下に示す方法により測定したものである。
フィルター11を埋め込み樹脂で固定して切断し、その切断面をイオンミリングで平滑化して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影する。その後、撮影したフィルター基材の断面の拡大写真におけるフィルター基材の表面の略延在方向に沿って、10μm当たりの針状の微細構造物の数を測定する。そして、測定した微細構造物の数から単位長さ(1μm)当たりの微細構造物の数を算出する。
本実施形態において、線材21の断面における針状の微細構造物5の平均高さHおよび基端部の平均幅Dは、以下に示す部分の寸法を、以下に示す測定方法により測定したものである。図4に示すように、線材21の断面において隣接する微細構造物5間には、谷53が形成されている。線材21の断面において、微細構造物5を挟んで対向する谷底である基端53a、53a間を、直線51でつなぎ、その長さを微細構造物5の基端部の幅D1、D2とする。また、微細構造物5の先端52と上記の直線51との最短距離を、微細構造物5の高さH1、H2とする。
線材21の断面において、2つの微細構造物57、58が一体化されている場合(図4における符号59で示す微細構造物)には、以下に示す部分の寸法を、微細構造物57、58の高さH3、H4および微細構造物57、58の基端部の幅D3、D4とした。
まず、針状の微細構造物57、58が一体化された微細構造物59を挟んで対向する谷底である基端53a、53a間を、直線54でつなぐ。次いで、2つの微細構造物57、58間の谷55の谷底から直線54に向かって垂線56を引く。垂線56と直線54との交点から各基端53a、53aまでのそれぞれの距離を、微細構造物57、58の基端部の幅D3、D4とする。
また、各微細構造物57、58の先端52a、52bと上記の直線54との最短距離を、各微細構造物57、58の高さH3、H4とする。なお、垂線56の長さが、微細構造物57、58の高さH3、H4の両方の高さの3/4未満である場合には、独立した2つの微細構造物とみなす。また、2つの微細構造物57、58が一体化されているとする基準は、前記独立した2つの微細構造物とみなされる場合以外とする。
針状の微細構造物5の高さおよび微細構造物5の基端部の幅を測定するには、フィルター11を埋め込み樹脂で固定して切断し、その切断面をイオンミリングで研磨して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影する。その後、撮影した線材21の断面の拡大写真における線材の表面の略延在方向に沿う長さ10μmの範囲を1つの測定領域とし、4箇所の測定領域に存在する全ての上記の微細構造物5の高さおよび基端部の幅を測定する。そして、測定した4箇所の微細構造物5の高さの平均値を、微細構造物5の平均高さHとする。また、測定した4箇所の微細構造物5の基端部の幅の平均値を、微細構造物5の基端部の平均幅Dとする。
線材21の断面における針状の微細構造物5の高さの変動係数は0.15〜0.50であることが好ましい。変動係数とは、上述した線材21の断面における微細構造物5の高さの分布の標準偏差を、前記微細構造物5の高さの算術平均値で除したものである。
上記の変動係数が0.15〜0.50の範囲であると、より一層SS粒子の除去機能および洗浄性の優れたフィルター11となる。上記の変動係数が0.15未満であると、フィルター11にSS粒子を含む被処理液を通過させる際に、フィルター11の表面でのSS粒子を含む被処理液の流れが単調になり、微細構造物5にSS粒子が捕捉されにくくなる。また、上記の変動係数が0.50を超えると、高さの低い微細構造物5によってめっき層3の表面に形成されたケーク7を支える機能が得られにくくなる。
上記の変動係数が0.15以上であると、微細構造物5の高さのばらつきが十分に大きいものとなる。このため、フィルター11にSS粒子を含む被処理液を通過させる際に、フィルター11の表面でのSS粒子を含む被処理液の流れが複雑になるとともに、高さの高い微細構造物5にSS粒子が引っかかりやすくなる。その結果、深層濾過の機構によってSS粒子が捕捉されやすくなるとともに、高さの高い微細構造物5に引っかかったSS粒子を起点として、めっき層3の表面にケーク7が形成されやすくなる。上記の変動係数は、よりSS粒子が捕捉されやすいフィルター11とするために、0.18以上であることが好ましい。
上記の変動係数が0.50以下であると、めっき層3の表面に形成されたケーク7を、高さの低い微細構造物5が支えることによって、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53とケーク7とに囲まれた空間Efの広さが確保されやすくなる。このため、濾過によってケーク7が形成された後、ケーク濾過された処理液が空間Ef内を流れやすくなり、濾過流量が増大する。したがって、フィルター11は、針状構造物のないフィルターと比較して濾過流量に優れたものとなる。上記の変動係数は、より一層、濾過流量の多いフィルター11とするために、0.36以下であることが好ましい。
線材21の断面における針状の微細構造物5の基端部の平均幅Dと平均高さHとのアスペクト比H/Dは0.5〜4.0であることが好ましい。アスペクト比H/Dが0.5以上であると、隣接する針状の微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されたケーク7とに囲まれた十分な高さの空間Efが形成される。
このため、濾過によってケーク7が形成された後に、ケーク濾過された処理液が空間Ef内を流れやすくなり、濾過流量に優れたものとなる。アスペクト比H/Dは、より一層濾過流量の大きなフィルター11とするために、1.0以上であることが好ましい。アスペクト比H/Dが4.0以下であると、強度に優れた微細構造物5となるため、耐久性に優れたフィルター11となる。アスペクト比H/Dは、より一層耐久性の優れたフィルター11とするために、3.0以下であることが好ましい。
線材21の断面における針状の微細構造物5の平均高さHは、0.2〜2.5μmであることが好ましい。上記の微細構造物5の平均高さHが0.2μm以上であると、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されるケーク7とに囲まれた十分な高さの空間Efが形成される。このため、濾過の際にケークが形成された後に、ケーク濾過された処理液が空間Ef内を流れやすくなり、濾過流量に優れたものとなる。
上記の微細構造物5の平均高さHは、より一層濾過流量の優れたフィルター11とするために、0.4μm以上であることが好ましい。上記の針状の微細構造物5の平均高さHが2.5μm以下であると、隣接する微細構造物5間の隙間が狭くなりすぎることが防止される。このため、10.0個/μm2以下である場合と同様に、空間Efが十分に確保された濾過流量に優れたフィルター11となる。上記の微細構造物5の平均高さHは、より一層濾過流量の優れたフィルター11とするために、1.8μm以下であることが好ましい。
線材21の断面における針状の微細構造物5の基端部の平均幅Dと、除去対象物質の平均粒子径(D50)φ(SS粒子の平均粒子径)との関係は、φ/D≧0.33を満足することが好ましい。上記φ/Dが0.33以上であると、SS粒子が隣接する微細構造物5間に形成されている谷53の谷底の近傍に入り込みにくいものとなる。したがって、谷53と、めっき層3上に形成されたケーク7とに囲まれた広い空間Efが形成されやすくなる。よって、フィルター11は、ケーク濾過された処理液が空間Ef内を流れやすく、濾過流量に優れたものとなる。
上記φ/Dは、より一層濾過流量の多いフィルター11とするために、0.50以上であることが好ましい。また、上記φ/Dは3.00以下であることが好ましい。上記φ/Dが3.00以下であると、SS粒子が隣接する微細構造物5間に、より一層引っかかりやすいものとなる。
このため、より一層、深層濾過の機構によってSS粒子が捕捉されやすく、捕捉されたSS粒子によってケーク7が形成されやすいフィルター11となる。上記φ/Dは、よりSS粒子が捕捉されやすいフィルター1とするために、2.00以下であることがより好ましい。
ここで、平均粒子径φは、レーザー回折法により測定されたものである。具体的には、株式会社島津製作所製のSALD−DS21型測定装置(商品名)などにより測定することができる。
複数の微細構造物5で形成されためっき層3に用いられる金属としては、電気めっき等の処理によって、線材21や下地層4の表面に複数の微細構造物5を析出できるものを用いる。このような金属としては、鉄、ニッケル、銅、および、これらの合金などが挙げられる。めっき層3に用いられる金属としては、上記の金属の中でも特に、微細構造物5の形状の制御がしやすく耐食性に優れた金属であるため、ニッケルまたはニッケル合金を用いることが好ましい。ニッケル合金としては、ホウ素、リン、亜鉛から選ばれる一種以上の元素を含有するものが挙げられる。
図6は、線材を示す模式図である。
微細構造物5の形状を、円錐台形、楕円錐形、多角錐形、円錐台形、楕円錐台形、多角錐台形などの錐形や錐台形にした場合、濾過体12の内周面(一次面)12aの面積に対する隙間26の面積(内周面を平面視した時の隙間の平面積)の割合を示す開口率Gは、0.2%以上、20%以下にすることが好ましい。
ここで、開口率Gは、互いに隣接する線材21間の隙間26の幅をs、線材21の配列方向に沿った線材21の幅をwと規定した時に、以下の式1で表される。
G=[s/(s+w)]×100・・・(1)
なお、sで示される線材21の隙間26の幅sは、10μm以上、5mm以下にすることが好ましい。
微細構造物5を錐形や錐台形、例えば針状構造物にした場合に、開口率Gが0.2%未満であると、濾過された処理液の通水量が少なくなり過ぎて、効率的に被処理液の濾過を行うことが難しくなる。開口率Gを0.2%以上に保つことによって、処理液の通水量を適切に保つことができ、効率的に被処理液の濾過を行うことができる。一方、開口率Gが20%を超えると、捕捉したSSによるブリッジが形成されにくくなり、ケーク濾過による濾過性能が低下する懸念がある。開口率Gを20%以下に保つことによって、ケーク濾過による濾過性能を高めることができる。
上述した実施形態では、微細構造物5を錐形や錐台形、例えば針状構造物にした例を説明したが、微細構造物5を多面体形状に形成することも好ましい。
図7、図8は、こうした微細構造物5を多面体構造物とした場合のSEM写真(二次電子像(SEI)、15.0kV、2000倍(図7)、5000倍(図8))を示す。
微細構造物5を多面体構造物とした場合、複数の多面体が相互に結合して体積の一部を共有している。多面体形状の微細構造物5は、それぞれ、3つ以上の平面が交わる頂点を複数有している。各微細構造物5は、図7および図8に示すように、それぞれ異なる形状および異なる大きさを有しており、線材21の平坦面11f、またはこの平坦面11fに形成された下地層4(図4参照)の表面に密集して形成されている。その結果、多面体形状の辺に相当する部分は、不規則な方向を向いている。
多面体形状の微細構造物5の最大外形寸法の平均値は0.5〜10μmが好ましい。析出物の平均最大外形寸法が上記範囲内であると、被処理液中のSS粒子が引っかかりやすいものとなる。
特に、被処理液中のSS粒子の平均粒子径が0.1〜10μmである場合、めっき層3にSS粒子が引っかかりやすいものとなる。したがって、被処理液中のSS粒子の平均粒子径が上記範囲である場合に、深層濾過の機構によって効率よくSS粒子を捕捉できる。
また、析出物の平均最大外形寸法が上記範囲内であると、めっき層3にSS粒子が引っかかりやすいため、フィルター11に捕捉されたSS粒子によってケークが形成されやすくなる。その結果、ケーク濾過の機構を用いてSS粒子を捕捉しやすいものとなり、SS粒子を除去する機能の高いフィルター11となる。
多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法が0.5μm未満であると、めっき層3の表面の凹凸が減少するとともに、多面体形状の析出物の間の空隙を通る被処理液量が低下して、めっき層3へのSS粒子の付着が起こりにくくなる。多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法は、2μm以上であることがさらに好ましい。また、多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法が10μmを超えると、めっき層3とSS粒子を含む被処理液との接触面積が減少して、めっき層3へのSS粒子の付着が起こりにくくなる。多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法は、8μm以下であることがさらに好ましい。
多面体形状の微細構造物5における平均最大外形寸法の変動係数は0.15〜0.50であることが好ましい。変動係数が0.15〜0.50の範囲であると、より一層SS粒子の除去機能および洗浄性の優れたフィルター11となる。上記の変動係数が0.15未満であると、フィルター11にSS粒子を含む被処理液を通過させる際に、フィルター11の表面でのSS粒子を含む被処理液の流れが単調になり、微細構造物5にSS粒子が捕捉されにくくなる。また、上記の変動係数が0.50を超えると、高さの低い微細構造物5によってめっき層3の表面に形成されたケーク7を支える機能が得られにくくなる。
上記の変動係数が0.15以上であると、微細構造物5の高さのばらつきが十分に大きいものとなる。このため、フィルター11にSS粒子を含む被処理液を通過させる際に、フィルター11の表面でのSS粒子を含む被処理液の流れが複雑になるとともに、高さの高い微細構造物5にSS粒子が引っかかりやすくなる。その結果、深層濾過の機構によってSS粒子が捕捉されやすくなるとともに、高さの高い微細構造物5に引っかかったSS粒子を起点として、めっき層3の表面にケーク7が形成されやすくなる。上記の変動係数は、よりSS粒子が捕捉されやすいフィルター11とするために、0.18以上であることが好ましい。
上記の変動係数が0.50以下であると、めっき層3の表面に形成されたケーク7を、高さの低い微細構造物5が支えることによって、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53とケーク7とに囲まれた空間Efの広さが確保されやすくなる。このため、濾過によってケーク7が形成された後、ケーク濾過された処理液が空間Ef内を流れやすくなり、濾過流量が増大する。したがって、フィルター11は、多面体構造物のないフィルターと比較して濾過流量に優れたものとなる。上記の変動係数は、より一層、濾過流量の多いフィルター11とするために、0.36以下であることが好ましい。
多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法は、以下に示す測定方法により測定する。
即ち、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて拡大したフィルター11の写真を撮影し、画像処理を行う。具体的には、多面体形状の微細構造物5の最も大きさの大きい部分の外形寸法を、一つの写真に対して代表的な10か所を選択して測定し、その平均値を平均最大外形寸法と定義する。
めっき層3に用いられる金属としては、めっき処理によって、フィルター基材の表面に多面体形状の複数の微細構造物5が得られるものを用いる。このような金属としては、鉄、ニッケル、銅、および、これらの合金などが挙げられる。めっき層3に用いられる金属としては、上記の金属の中でも特に、形状が制御しやすく耐食性に優れた金属であるため、ニッケルまたはニッケル合金を用いることが好ましい。ニッケル合金としては、ホウ素、リン、亜鉛から選ばれる一種以上の元素を含有するものが挙げられる。
微細構造物5の形状を多面体形状にした場合、濾過体12の内周面(一次面)12aの面積に対する隙間26の面積(内周面を平面視した時の隙間の平面積)の割合を示す開口率Gは、0.02%以上、20%以下にすることが好ましい。
ここで、開口率Gは、互いに隣接する線材21間の隙間26の幅をs、線材21の配列方向に沿った線材21の幅をwと規定した時に、以下の式1で表される。
G=[s/(s+w)]×100・・・(1)
なお、sで示される線材21の隙間26の幅sは、1μm以上、5mm以下にすることが好ましい。
微細構造物5を多面体構造物にした場合に、開口率Gが0.02%未満であると、濾過された処理液の通水量が少なくなり過ぎて、効率的に被処理液の濾過を行うことが難しくなる。開口率Gを0.02%以上に保つことによって、処理液の通水量を適切に保つことができ、効率的に被処理液の濾過を行うことができる。一方、開口率Gが20%を超えると、捕捉したSSによるブリッジが形成されにくくなり、ケーク濾過による濾過性能が低下する懸念がある。開口率Gを20%以下に保つことによって、ケーク濾過による濾過性能を高めることができる。
このような構成のフィルター10の内周面(一次面)12a側に、例えばSS粒子を含む被処理液を接触させると、この内周面(一次面)12a、即ち線材21の平坦面11aに形成された多数の微細構造物5からなるめっき層3によって、SS粒子が捕捉される。フィルター11は、複数の微細構造物5を所定の密度で有するものであるため、フィルター11とSS粒子を含む被処理液との接触面積が多い。このため、表面濾過および深層濾過の機構によって微細構造物5の表面に付着したSS粒子を起点として、めっき層3の表面の複数の箇所で速やかにSS粒子の凝集物が形成される。
形成された凝集物は、フィルター11へのSS粒子を含む被処理液の通過を継続させることにより、成長して剥離し、SS粒子を含む被処理液とともに隙間26に向かって移動する。隙間26に移動した1つまたは複数の凝集物は、隙間26を塞ぐブリッジ状のケーク7となる。このように、本実施形態では、表面濾過の機構だけでなく、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構も利用して、被処理液中の小さなSS粒子を除去できる。よって、優れた濾過性能が得られる。
フィルター11は、図4に示すように、隣接する微細構造物5間に谷53を有している。谷53は、断面視で谷底である基端53aに近づくにつれて幅が狭くなっている。このため、フィルター11に捕捉されたSS粒子は、谷53の基端53a近傍には入り込みにくい。
したがって、めっき層3の表面にケーク7が形成されているフィルター11では、図4に示すように、谷53とケーク7とに囲まれた十分な広さの空間Efが形成される。空間Efが形成された後、さらにフィルター11へのSS粒子を含む被処理液の通過を継続させても、空間Efの上部はケーク7で形成された蓋が被せられた状態となっているため、SS粒子は空間Ef内に入り込みにくい。したがって、フィルター11へのSS粒子を含む被処理液の通過を継続させると、ケーク7上にさらにSS粒子が堆積される。
こうした多数の微細構造物5からなるめっき層3によって、SS粒子を含む被処理液からSS粒子を効率的に、かつ確実に捕捉して除去することができる。そして、SS粒子が除去された処理液は、線材21どうしの隙間26を通り、フィルター11の外周面(二次面)12bから流出する。
このように、線材21をコイル状に巻回させた濾過体12を備えたフィルター11は、被処理液が流入する内周面(一次面)12a側に、例えば針状や多面体の微細構造物5を多数形成することによって、SS粒子を含む被処理液からSS粒子を効率的に、かつ確実に捕捉して除去することが可能になる。
また、実施形態のように、多数の微細構造物5を、被処理液が流入する内周面(一次面)12aを構成する線材21の平坦面21fに形成することによって、被処理液の流入時の内圧が局部的に集中することなく均一に印加される。これによって、内圧に対する濾過体12の耐久性が高められる。また、内圧が局部的に集中することがないので、微細構造物5の損傷や隔離を防止し、効果的にブリッジ状のケーク7を形成できる。
なお、本実施形態のフィルター11は、後述する逆洗工程において、断面が三角形の線材21の三角形の頂点側から処理液を流入させるため、圧損を少なくして効率よく堆積したケークを取り除くことができる。即ち、断面が三角形の線材21によって、隙間26は、外周面(二次面)12b側から内周面(一次面)12a側に向けて幅が狭められるので、処理液が隙間26に向かって流れやすく、かつ、内周面(一次面)12a側の隙間26の狭められた部分に存在するケークを早い流速で効率的に除去できる。
本実施形態において、フィルター11の洗浄や逆洗浄を行うと、空間Efには、各微細構造物5を取り囲むように形成された谷53を介して、多方向から洗浄液が流入する。このことにより、谷53の上部の少なくとも一部を覆うように形成されていたケーク7が、洗浄液に押し上げられて、ケーク7の剥離が促進される。また、フィルター11の微細構造物5は、基端53aから先端52に向けて先細りの形状を有している。
このため、洗浄液に押し上げられたケーク7は、フィルター11から容易に剥離される。また、微細構造物5が先細りの形状を有しているので、微細構造物5に付着しているSS粒子が逆洗時に谷53に挟まりにくく、微細構造物5から容易に剥離される。したがって、濾過体12に堆積したSS粒子が速やかに除去され、濾過体12が再生される。
(1−2)フィルターの形成例2
図9は、処理システムを構成するフィルターの別な実施形態を示す平面図である。
この実施形態のフィルター210は、全体が略円筒形を成し、例えば、この円筒の中心軸が鉛直方向に沿うように配置される。フィルター210は、線材211を面状に配列させた濾過体212と、この濾過体212を支持する支持部材213と、を備えている。この実施形態のフィルター210では、濾過体212は、長尺の線材211をコイル状に巻回させ、中空の筒状体に成形させたものからなる。このように成形した線材211によって、円筒面をもつ濾過体212が形成される。実施形態の線材211は、延伸方向に対して直角な断面形状が矩形を成している。
線材211は、互いに隣接する線材どうしの間、即ち、実施形態では隣接する周回線材211どうしの間を所定幅の隙間を保って離間させる離間部215が形成されている。離間部215は、例えば、線材211の周回方向に沿って、例えば、120°の角度で1周回ごとに3か所形成されている。
このような線材211に形成した離間部215によって、円筒形の濾過体212は、その内周面212aと外周面212bとの間を貫通するスリット状の隙間216が形成される。
実施形態では、濾過体212は、内周面212aが被処理液が流入する一次面とされ、外周面212bが、濾過体12によって濾過された処理液が流出する二次面とされる。
支持部材213は、例えば、断面が矩形や三角形の線材からなり、濾過体212の外周面212b側で線材211に接合されている。支持部材13は、例えば線材211の周回方向に沿って等間隔に3か所形成され、濾過体212の中心軸に対して平行に延び、巻回された線材211を外周面212b側から支持している。こうした支持部材213と線材211とは、例えば、焼結によって接合されている。
このような構成のフィルター210は、略円筒形の濾過体212の内部に被処理液を流入させ、隙間216を通過させて被処理液の濾過を行い、濾過体212の外周面212bから濾過後の処理液を流出させる。
図10は、図9に示す濾過体の内周面側を示す要部拡大断面図である。
フィルター210を構成する濾過体212のうち、被処理液が流入する内周面(一次面)212a側、および隙間216の内表面には、複数(多数)の微細構造物5が形成されている。こうした微細構造物5は、図5に示す錐台形、楕円錐形、多角錐形、円錐台形、楕円錐台形、多角錐台形などの錐形や錐台形の形状や、図7,8に示す多面体形状をもつ構造物から構成される。
図11は、離間部を形成した線材を示す模式図である。
微細構造物5の形状を、円錐台形、楕円錐形、多角錐形、円錐台形、楕円錐台形、多角錐台形などの錐形や錐台形にした場合、濾過体212の内周面(一次面)212aの面積に対する隙間16の面積(内周面を平面視した時の隙間の平面積)の割合を示す空隙率Gは、0.5%以上、50%以下にすることが好ましい。
ここで、空隙率Gは、互いに隣接する離間部215どうしの間隔をa、線材211の延伸方向に沿った離間部215の幅をb、互いに隣接する線材211間の隙間216の幅をc、線材211の配列方向に沿った線材211の厚みをdと規定した時に、以下の式2で表される。
G=[(a×c)/{(a+b)×(c+d)}]×100・・・(2)
なお、cで示される線材211の隙間216の幅は、即ち、線材211の配列方向に沿った離間部215の突出幅と同義である。こうした隙間216の幅は、5μm以上、1mm以下にすることが好ましい。
微細構造物5を錐形や錐台形、例えば針状構造物にした場合に、空隙率Gが0.5%未満であると、濾過された処理液の通水量が少なくなり過ぎて、効率的に被処理液の濾過を行うことが難しくなる。空隙率Gを0.5%以上に保つことによって、処理液の通水量を適切に保つことができ、効率的に被処理液の濾過を行うことができる。一方、空隙率Gが50%を超えると、捕捉したSSによるブリッジが形成されにくくなり、ケーク濾過による濾過性能が低下する懸念がある。空隙率Gを50%以下に保つことによって、ケーク濾過による濾過性能を高めることができる。
微細構造物5の形状を多面体形状にした場合、濾過体212の内周面(一次面)212aの面積に対する隙間216の面積(内周面を平面視した時の隙間の平面積)の割合を示す空隙率Gは、0.1%以上、50%以下にすることが好ましい。
ここで、空隙率Gは、互いに隣接する離間部215どうしの間隔をa、線材211の延伸方向に沿った離間部215の幅をb、互いに隣接する線材211間の隙間216の幅をc、線材211の配列方向に沿った線材211の厚みをdと規定した時に、以下の式2で表される。
G=[(a×c)/{(a+b)×(c+d)}]×100・・・(2)
なお、cで示される隙間211の隙間216の幅は、即ち、線材211の配列方向に沿った離間部215の突出幅と同義である。こうした隙間216の幅は、1μm以上、1mm以下にすることが好ましい。
微細構造物5を多面体構造物にした場合に、空隙率Gが0.1%未満であると、濾過された処理液の通水量が少なくなり過ぎて、効率的に被処理液の濾過を行うことが難しくなる。空隙率Gを0.1%以上に保つことによって、処理液の通水量を適切に保つことができ、効率的に被処理液の濾過を行うことができる。一方、空隙率Gが50%を超えると、捕捉したSSによるブリッジが形成されにくくなり、ケーク濾過による濾過性能が低下する懸念がある。空隙率Gを50%以下に保つことによって、ケーク濾過による濾過性能を高めることができる。
(1−3)フィルターの形成例3
図12は、処理システムを構成するフィルターの別な実施形態を示す断面図である。また、図13は、図12に示す濾過体の厚み方向に沿った断面を示す断面図である。
フィルター310は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔313,313…を形成してなる円筒形の基材311、およびこの基材311のうち少なくとも被処理液が流入する一次面(流入面)311a側に形成された複数の微細構造物5と備えた濾過体312と、この濾過体312の外周面311bに接合され、濾過体312を支持する支持部材318から構成されている。本実施形態では、微細構造物5は、被処理液が流入する内周面(一次面)311a、被処理液が流出する外周面(二次面)311b、および貫通孔313の内壁面を覆うように形成されている。
基材311は、例えば、金属板を円筒形に丸めたものから構成され、具体的には、SUS板、アルミニウム板やアルミニウム合金板、銅板や銅合金板、亜鉛板などを用いることができる。
貫通孔313,313…は、基材311の内周面(一次面)311aと外周面(二次面)311bとを結ぶ円筒形の孔である。個々の貫通孔313は、その直径が内周面311a側から外周面311b側まで均一であっても、内周面311a側と外周面311b側とで直径が異なるような形状の孔であってもよい。
本実施形態では、貫通孔313は、内周面311aに沿った平面形状が円形を成している。そして、こうした貫通孔313,313…は、内周面311aに沿って等間隔に配列されている。なお、貫通孔313,313…を千鳥配列となるように形成してもよい。
このような構成の濾過フィルター310は、内周面311a側から被処理液を流入させ、貫通孔313を通過させて被処理液の濾過を行い、外周面311b側から濾過後の処理液を流出させる。
濾過体312に形成される微細構造物5は、図5に示す錐台形、楕円錐形、多角錐形、円錐台形、楕円錐台形、多角錐台形などの錐形や錐台形の形状や、図7,8に示す多面体形状をもつ構造物から構成される。
フィルター310を構成する濾過体312における内周面311a側を平面視した場合に、内周面311a全体の平面積に対する貫通孔313の開口面の面積の合計の割合である開口率は0.05%以上、30%以下にすることが好ましい。また、個々の貫通孔313の直径(貫通孔の断面形状が円形の場合)、あるいは内接円の直径(貫通孔の断面形状が多角形の場合)は、1μm以上、5mm以下にすることが好ましい。
微細構造物5を錐形や錐台形、例えば針状構造物にした場合に、開口率Gが0.05%未満であると、濾過された処理液の通水量が少なくなり過ぎて、効率的に被処理液の濾過を行うことが難しくなる。開口率Gを0.05%以上に保つことによって、処理液の通水量を適切に保つことができ、効率的に被処理液の濾過を行うことができる。一方、開口率Gが30%を超えると、捕捉したSSによるブリッジが形成されにくくなり、ケーク濾過による濾過性能が低下する懸念がある。開口率Gを30%以下に保つことによって、ケーク濾過による濾過性能を高めることができる。
なお、本実施形態では、例えば、基材311を構成する金属板として被処理液の液圧に耐えうる十分な厚みのものを用いれば、支持部材31を特に設けなくてもよい。
(1−4)フィルターの形成例4
図14は、フィルターの別な実施形態を示す断面図である。また、図15は、図14に示す濾過体の要部拡大平面図である。
フィルター410は、円筒形を成す基材416、およびこの基材416の表面に形成した微細構造物5からなる濾過体413と、この濾過体413の外周面413bに接合され、濾過体413を支持する支持部材417から構成されている。
基材416は、例えば、金属からなる線材412が綾織された金網で構成されている。
基材416は、線材412が綾織されて網目状となっており、線材412同士が交差する部分に線材412が重なり合うことで隙間が形成され、この隙間が複数の貫通孔418となる。貫通孔418の長径は、0.5μm〜20μmの範囲が好ましく、1μm〜10μmの範囲がより好ましい。貫通孔418の長径が0.5μm以上であると、適切な濾過流量が確保されやすくなる。貫通孔418の長径が20μm以下であれば、不純物、例えば金属化合物を容易に捕捉できる。
(1−5)フィルターの形成例5
上述したフィルターの形成例1〜4では、線材をコイル状に巻回させた円筒形のフィルターを例示したが、複数本の線材を一面上に配列させ、平板状の濾過用フィルターにすることもできる。
図16は、別な実施形態のフィルターを示す外観斜視図である。また、図17は、別な実施形態のフィルターを示す平面図である。
この実施形態のフィルター70は、複数の線材71を面状に配列させた濾過体72と、この濾過体72を支持する支持部材73と、を備えている。本実施形態のフィルター70では、濾過体72は、延伸方向に直角な断面形状が三角形である複数本の線材71を平面上に配列し、平板状に成形させたものからなる。
線材71は、互いに隣接する線材71,71どうしの間を所定幅のスリット状の隙間76を保つように支持部材73に固着されている。本実施形態では、濾過体72は、一面72aが被処理液が流入する一次面側とされ、他面72bが、濾過体72によって濾過された処理液が流出する二次面側とされる。
支持部材73は、例えば、断面が矩形や三角形の線材からなり、濾過体72の他面72b側で線材71に接合されている。支持部材73は、例えば線材71の配列方向に沿って延びるように形成され、複数の線材71を接合している。こうした支持部材73と線材71とは、例えば、焼結によって接合されている。
このような構成のフィルター70は、図16における上側となる一面(一次面)72a側に臨む線材71は平坦面71fを成している。即ち、本実施形態のように、断面形状が三角形の線材71の場合、この三角形の1辺が一面(一次面)72aに沿うように、線材71が支持部材73に支持され、三角形の頂点で線材71が支持部材73に接合される。
フィルター70は、図16における上側となる一面(一次面)72a側から被処理液を流入させ、隙間76を通過させて被処理液の濾過を行い、他面(二次面)72bから濾過後の処理液を流出させる。フィルター70の周囲には、このフィルター90を通過させる被処理液の流路となる枠体(外装体)79が形成されていればよい。
フィルター70を構成する濾過体72のうち、少なくとも被処理液が流入する平坦な一面(一次面)72a側には、複数(多数)の微細構造物5が形成されている。微細構造物5は、例えば、図5に示す針状構造物や、図7、図8に示す多面体構造物等であればよい。
(1−6)フィルターの形成例6
図18は、別な実施形態のフィルターを示す外観斜視図である。また、図19は、別な実施形態のフィルターを示す平面図である。
この実施形態の濾過用フィルター80は、複数の線材81を面状に配列させた濾過体82と、この濾過体82を支持する支持部材83と、を備えている。本実施形態のフィルター80では、濾過体82は、複数本の線材81を平面上に配列し、平板状に成形させたものからなる。
線材81は、互いに隣接する線材81どうしの間を所定幅の隙間を保って離間させる離間部85が形成されている。離間部85は、例えば、線材81の配列方向に沿って千鳥配列になるように、隣接する線材81どうしで位置をずらして形成している。
このような線材81に形成した離間部85によって、平板状の濾過体82は、その一面82aと他面82bとの間を貫通するスリット状の隙間86が形成される。
本実施形態では、濾過体82は、一面82aが被処理液が流入する一次面側とされ、他面82bが、濾過体82によって濾過された処理液が流出する二次面側とされる。
支持部材83は、例えば、断面が矩形や三角形の線材からなり、濾過体82の他面82b側で線材81に接合されている。支持部材83は、例えば線材81の配列方向に沿って延びるように形成され、複数の線材81どうしを接合している。こうした支持部材83と線材81とは、例えば、焼結によって接合されている。
このような構成のフィルター80は、図18における上側となる一面82aから被処理液を流入させ、隙間86を通過させて被処理液の濾過を行い、他面82bから濾過後の処理液を流出させる。フィルター80の周囲には、このフィルター80を通過させる被処理液の流路を構成する枠体(外装体)89が形成されていればよい。
フィルター80を構成する濾過体82のうち、被処理液が流入する一面(一次面)82a側、および隙間86の内表面には、複数(多数)の微細構造物5が形成されている。微細構造物5は、例えば、図5に示す針状構造物や、図7、図8に示す多面体構造物等であればよい。
(1−7)フィルターの製造方法
次に、フィルターの製造方法の一例について説明する。
線材に針状の微細構造物を備えた、図2に示す濾過用フィルターを製造するには、まず、線材11を用意する。線材11は、めっき処理を用いて、めっき層3、またはめっき層3および下地層4を容易に形成できるように、金属であることが好ましい(図4参照)。線材11に用いる金属としては、例えば、鉄、ニッケル、銅、および、これらの合金などを用いることが好ましい。その中でも特に、線材11として、耐蝕性に優れ、低コストで、加工しやすい材料であるステンレス鋼線を用いることが好ましい。
次いで、長尺の線材11を巻回させ、周回間で所定幅の隙間16を保ちつつ、円筒形の濾過体12を形成する。線材11を円筒形に巻回させる際には、例えば、円柱状の型を用いて周面に線材11を巻き付けた後に型を取り除く方法が挙げられる。
次いで、線材11を円筒形に巻回させた濾過体12の外周面12bに支持部材13を仮止めし、焼結によって線材11と支持部材13とを結合させる。線材11と支持部材13とを焼結させる際には、例えば、非酸化雰囲気下で電気炉によって加熱を行う方法が挙げられる。
次いで、円筒状に形成した線材11の表面、例えば内周面11a側に、めっき処理を用いて、下地層4を形成する。下地層4を形成するためのめっき処理としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ニッケルまたはニッケル合金からなるめっき層3を形成する前に、ステンレスからなる線材11の表面に下地層4を形成する場合には、電解ニッケルめっき処理または無電解ニッケルめっき処理を用いて、ニッケルまたはニッケル合金からなる下地層4を形成することが好ましい。
次に、下地層4の設けられた線材11の内周面11a側に、電気めっき処理によって、複数の微細構造物5を析出させて、線材11をめっき層3で被覆する。めっき層3を形成するための電気めっき処理としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、下地層4およびめっき層3がニッケルまたはニッケル合金からなるものである場合、下地層4の形成後、めっき浴に添加剤を添加して、連続して電解ニッケルめっき処理または無電解ニッケルめっき処理を用いて、めっき層3を形成することが好ましい。
複数の微細構造物5を析出させる電気めっき処理では、めっき浴に添加する添加剤の種類、濃度、めっき時間を変化させることにより、微細構造物5の形状および大きさを変化させることができる。添加剤としては、エチレンジアミン二塩酸塩(ethylenediamine dihydrochloride)、エチレンジアミン(EDA)などが挙げられる。
めっき層3を形成するためのめっき処理を行った後、必要に応じて熱処理を行って、めっき層3の結晶化を促進してもよい。
また、めっき層3を形成するためのめっき処理を行った後、必要に応じて、濾過用フィルターの耐久性を向上させるために、めっき層3の表面に、他の金属や有機物などを用いて別の被覆層を形成してもよい。
また、めっき層3の表面に、被処理液との親和性が互いに異なる複数種類の改質領域を形成することもできる。めっき層3の改質処理としては、具体的には、親水化処理と疎水化処理とが挙げられる。こうした改質処理を行うことで、めっき層3の表面における被濾過液の流れが、より複雑になり、SS粒子がめっき層3の表面で凝集しやすいものとすることができる。
(2)処理方法:第一実施形態
以下、図1に示した処理システムを用いた処理方法を、図面を参照して説明する。
図20は、第一実施形態の処理方法を段階的に示したフローチャートである。
図1に示す処理システム100を用いて被処理液の処理を行う際には、全てのバルブV1〜V6が閉じられた状態から、バルブV1、V2を開放させる(S11)。また予め被処理液槽101に、例えばSS粒子を含む被処理液を導入させておく。
次に、ポンプ106を起動させる(S12)。これにより、被処理液槽101の被処理液を処理槽102の供給部112に向けて圧送される。そして、第一空間E1からフィルター11の一次面側10aに流入し、フィルター11を透過する際にSS粒子などの固形分がフィルター11に形成された微細構造物5によって捕捉される。そして、SS粒子などの固形分が除去された処理液がバルブV2を経て処理液槽103に貯められる。なお、処理液槽103に貯められた処理液は、適宜、処理システム100の外部に放流される。
フィルター11によって被処理液を濾過し続けると、フィルター11の一次面側10aに徐々にSS粒子によるケーク7(図4参照)が形成され、堆積し始める。ケーク7の堆積量が増大するとフィルター11を透過して二次面側10bから流出する処理液の流量が減少する。すると、フィルター11の一次面側10aに臨む第一空間E1の圧力が上昇し始める。こうした第一空間E1の圧力上昇とケーク7の堆積量との間には相関関係があるため、予めケーク7を除去する目安となる圧力の規定値を定めておく。
圧力計(検出手段)109は、常に第一空間E1の圧力を検出し続け、その検出信号を制御部115に送る。制御部115は、制御プログラムに基づいて、第一空間E1の圧力が規定値に達したかを監視し続ける(S13)。
圧力計109によって検出された第一空間E1の圧力が規定値を超えた場合、逆洗工程(洗浄動作)を開始する(S14)。逆洗工程が開始されると、まず、ポンプ106を停止させる(S15)。これにより、被処理液の濾過が停止する。次に、バルブV1,V2を閉じる(S16)。そして、バルブV6,V5を開く(S17)。また、コンプレッサ(加圧手段)105を起動させる(S18)。これにより、閉じられているバルブV4の位置まで加圧空気によって加圧される。
そして、バルブV4を開放する(S19)。これによって、加圧空気が一気にフィルター11の第二空間E2内の圧力を上昇させる。そして、第二空間E2内に残留していた処理液はフィルター11の二次面側10bから一次面側10aに急激に逆流し、この過程でフィルター11の隙間26に詰まっていたケーク7などのSS粒子を押し出して除去する(逆洗工程)。そして、除去されたケーク7などのSS粒子は、逆洗した処理液や第一空間E1に残留していた被処理液とともに、バルブV5を経て洗浄排水槽104に流れ込み貯留される。
なお、バルブV5を開放するタイミングは、例えば、バルブV6とバルブV4を接続する配管108の途上に圧力計(図示略)を設置するなどして、この圧力計によって検出された圧力値が所定のレベルまで達した段階とすることが好ましい。バルブV5を開放する圧力値が高いほど逆洗によるケーク7の除去力は高まると考えられるが、フィルター11の耐圧強度も勘案してバルブV5を開放する圧力値を設定すればよい。
そして、逆洗工程が終了したと判断されると(S20)、バルブV4を閉じる(S21)。また、バルブV5を閉じる(S22)。次に、ポンプ107を起動させる(S23)。これにより、処理液槽103に貯留されている処理液の一部を、フィルター11の第二空間E2内に還流させる。そして、予め、フィルター11の第一空間E1や第二空間E2が処理液で満たされるために必要な時間を計測しておいて、この計測値に基づいて制御プログラムを設定した上で、タイマー制御によってポンプ107を停止させる。(S25)。
そして、バルブV3を開放する(S26)。これにより、コンプレッサ105による加圧空気がバルブV6,V3を経てフィルター11の第一空間E1に流れ込み、第一空間E1を満たす処理液に気泡を発生させる(気泡洗浄工程)。こうしたバブリングによって、フィルター11の一次面側10aの表面に付着していたケーク7などのSS粒子を除去する。即ち、前述した逆洗工程では、主にフィルター11の隙間26に詰まっていたケーク7を押し出して除去し、気泡洗浄工程では、主にフィルター11の一次面側10aの表面に付着しているケーク7を除去する。
そして、気泡洗浄工程が終了したと判断されると(S27)、バルブV6を閉じる(S28)。また、バルブV3を閉じる(S29)。そして、バルブV5を開いて(S30)、気泡洗浄工程によって除去されたケーク7などのSS粒子を含む洗浄液を洗浄排水槽104に流す。
この後、バルブV1、V2を開放させ(S11)、再び被処理液の濾過が行われる。
以上のように、本実施形態によれば、フィルター11の流量が低減したと判断されたら、加圧による逆洗工程や、バブリングによる気泡洗浄工程によって、フィルター11の固形物を確実に除去して、常に高い濾過性能を保ちつつ被処理液の濾過を行うことが可能になる。
なお、本実施形態では、逆洗工程の後に気泡洗浄工程を実施した例を示しているが、これに限定されるものでは無く、例えば、気泡洗浄工程を実施した後に逆洗工程を行ってもよく、また、逆洗工程の実施前および実施後の両方で気泡洗浄工程を実施することもできる。
(3)処理方法:第二実施形態
以下、図1に示した処理システムを用いた別な処理方法を、図面を参照して説明する。
図21は、第二実施形態の処理方法を段階的に示したフローチャートである。
図1に示す処理システム100を用いて被処理液の処理を行う際には、全てのバルブV1〜V6が閉じられた状態から、バルブV1、V2を開放させる(S31)。また予め被処理液槽101に、例えばSS粒子を含む被処理液を導入させておく。
次に、ポンプ106を起動させる(S32)。これにより、被処理液槽101の被処理液を処理槽102の供給部112に向けて圧送される。そして、第一空間E1からフィルター11の一次面側10aに流入し、フィルター11を透過する際にSS粒子などの固形分がフィルター11に形成された微細構造物5によって捕捉される。そして、SS粒子などの固形分が除去された処理液がバルブV2を経て処理液槽103に貯められる。なお、処理液槽103に貯められた処理液は、適宜、処理システム100の外部に放流される。
フィルター11によって被処理液を濾過し続けると、フィルター11の一次面側10aに徐々にSS粒子によるケーク7(図4参照)が形成され、堆積し始める。ケーク7の堆積量が増大するとフィルター11を透過して二次面側10bから流出する処理液の流量が減少する。すると、フィルター11の一次面側10aに臨む第一空間E1の圧力が上昇し始める。こうした第一空間E1の圧力上昇とケーク7の堆積量との間には相関関係があるため、予めケーク7を除去する目安となる圧力の規定値を定めておく。
圧力計(検出手段)109は、常に第一空間E1の圧力を検出し続け、その検出信号を制御部115に送る。制御部115は、制御プログラムに基づいて、第一空間E1の圧力が規定値に達したかを監視し続ける(S33)。
圧力計109によって検出された第一空間E1の圧力が規定値を超えた場合、逆洗工程(洗浄動作)を開始する(S34)。逆洗工程が開始されると、まず、ポンプ106を停止させる(S35)。これにより、被処理液の濾過が停止する。次に、バルブV1,V2を閉じる(S36)。そして、バルブV6,V4を開く(S37)。また、コンプレッサ(加圧手段)105を起動させる(S38)。これにより、フィルター11から閉じられているバルブV5の位置まで加圧空気によって加圧される。
そして、バルブV5を開放する(S39)。これによって、加圧空気で加圧されていたフィルター11の第二空間E2内の処理液は、フィルター11の二次面側10bから一次面側10aに急激に逆流し、この過程でフィルター11の隙間26に詰まっていたケーク7などのSS粒子を押し出して除去する(逆洗工程)。そして、除去されたケーク7などのSS粒子は、逆洗した処理液や第一空間E1に残留していた被処理液とともに、バルブV5を経て洗浄排水槽104に流れ込み貯留される。なお、バルブV5を開放するタイミングは、例えば、圧力計109によって検出された圧力値が所定のレベルまで達した段階とすることが好ましい。バルブV5を開放する圧力値が高いほど逆洗によるケーク7の除去力は高まると考えられるが、フィルター11の耐圧強度も勘案してバルブV5を開放する圧力値を設定すればよい。
そして、逆洗工程が終了したと判断されると(S40)、バルブV4を閉じる(S41)。また、バルブV5を閉じる(S42)。次に、ポンプ107を起動させる(S43)。これにより、処理液槽103に貯留されている処理液の一部を、フィルター11の第二空間E2内に還流させる。そして、予め、フィルター11の第一空間E1や第二空間E2が処理液で満たされるために必要な時間を計測しておいて、この計測値に基づいて制御プログラムを設定した上で、タイマー制御によってポンプ107を停止させる。(S45)。
そして、バルブV3を開放する(S46)。これにより、コンプレッサ105による加圧空気がバルブV6,V3を経てフィルター11の第一空間E1に流れ込み、第一空間E1を満たす処理液に気泡を発生させる(気泡洗浄工程)。こうしたバブリングによって、フィルター11の一次面側10aの表面に付着していたケーク7などのSS粒子を除去する。即ち、前述した逆洗工程では、主にフィルター11の隙間26に詰まっていたケーク7を押し出して除去し、気泡洗浄工程では、主にフィルター11の一次面側10aの表面に付着しているケーク7を除去する。
そして、気泡洗浄工程が終了したと判断されると(S47)、バルブV6を閉じる(S48)。また、バルブV3を閉じる(S49)。そして、バルブV5を開いて(S50)、気泡洗浄工程によって除去されたケーク7などのSS粒子を含む洗浄液を洗浄排水槽104に流す。
この後、バルブV1、V2を開放させ(S31)、再び被処理液の濾過が行われる。
(4)処理システム:第二実施形態
図1に示す実施形態では、内圧型のフィルター(図2参照)を用いた処理システムを例示したが、フィルターを外圧型にした処理システムとすることもできる。
図22は、フィルターを外圧型にした処理システムの一例を示す模式図であり、図23は、外圧型のフィルターの要部拡大断面図である。
なお、以下の説明において、第一実施形態の処理システムと同一の構成に関しては同一の符号を付与し、その詳細な説明は略す。
この処理システム40の処理槽(濾過フィルターユニット)122に設置されているフィルター41は、例えば中空円筒形を成し、その中心軸が鉛直方向に沿うように設置されている。本実施形態においては、円筒形のフィルター41の外周面側に広がる空間が被処理液が流入する第一空間E1とされる。また、円筒形のフィルター41の内周面で囲まれた空間が、処理液が流出する第二空間E2とされる。即ち、本実施形態の中空円筒形のフィルター41は、その外周面を被処理液が流入する一次面側41aとし、内周面を処理液が流出する二次面側41bとした外圧型フィルターとしている。
この処理システム40においては、図1に示す実施形態の処理システムにおけるバルブV6とバルブV4との間から分岐してバルブV3を介してフィルターの一次面側に臨む第一空間に繋がる配管が省略されている。
また、検出手段として流量計129を用い、この流量計129を外圧型のフィルター41の第二空間E2から処理液が流出する配管108の途上に設置している。フィルター41へのSSの堆積量が増大するとフィルター41を透過して二次面側41bから流出する処理液の流量が減少する。よって、二次面側41bから流出する処理液の流量変化を検出することで、フィルター41へのSSの堆積状態を知ることができる。
こうした外圧型のフィルター41としては、例えば図2に示す形態のフィルターを外圧型にしたものとして、図23に示すように、濾過体42のうち、被処理液が流入する外周面(一次面)42b側、および隙間46の内表面に、複数(多数)の微細構造物5を形成している。こうした微細構造物5は、例えば、図5に示す針状構造物や、図7、図8に示す多面体構造物等であればよい。
(5)処理方法:第三実施形態
以下、図22に示した処理システムを用いた処理方法を、図面を参照して説明する。
図24は、第三実施形態の処理方法を段階的に示したフローチャートである。
図22に示す処理システム40を用いて被処理液の処理を行う際には、全てのバルブV1〜V6が閉じられた状態から、バルブV1、V2を開放させる(S51)。また予め被処理液槽101に、例えばSS粒子を含む被処理液を導入させておく。
次に、ポンプ106を起動させる(S52)。これにより、被処理液槽101の被処理液を処理槽102の供給部112に向けて圧送される。そして、第一空間E1からフィルター41の一次面側41aに流入し、フィルター41を透過する際にSS粒子などの固形分がフィルター41に形成された微細構造物5によって捕捉される。そして、SS粒子などの固形分が除去された処理液がバルブV2を経て処理液槽103に貯められる。なお、処理液槽103に貯められた処理液は、適宜、処理システム40の外部に放流される。
フィルター41によって被処理液を濾過し続けると、フィルター41の一次面側41aに徐々にSS粒子によるケーク7(図4参照)が形成され、堆積し始める。ケーク7の堆積量が増大するとフィルター41を透過して二次面側41bから流出する処理液の流量が減少する。
外圧型のフィルター41の第二空間E2から処理液が流出する配管108の途上に設置された流量計129は、常に濾過後の処理液の流量を検出し続け、その検出信号を制御部115に送る。制御部115は、制御プログラムに基づいて、処理液の流量が規定値を下回ったかを監視し続ける(S53)。
流量計129によって検出された処理液の流量が規定値を下回った場合、逆洗工程を開始する(S54)。逆洗工程が開始されると、まず、ポンプ106を停止させる(S55)。これにより、被処理液の濾過が停止する。次に、バルブV1,V2を閉じる(S56)。そして、バルブV6,V5を開く(S57)。また、コンプレッサ(加圧手段)105を起動させる(S58)。これにより、閉じられているバルブV4の位置まで加圧空気によって加圧される。
そして、バルブV4を開放する(S59)。これによって、加圧空気が一気にフィルター41の第二空間E2内の圧力を上昇させる。そして、第二空間E2内に残留していた処理液はフィルター41の二次面側41bから一次面側41aに急激に逆流し、この過程でフィルター41の隙間に詰まっていたケーク7などのSS粒子を押し出して除去する(逆洗工程)。そして、除去されたケーク7などのSS粒子は、逆洗した処理液や第一空間E1に残留していた被処理液とともに、バルブV5を経て洗浄排水槽104に流れ込み貯留される。
そして、逆洗工程が終了したと判断されると(S60)、バルブV6を閉じる(S61)。また、バルブV4(S62)を閉じる。その後、バルブV1、V2を開放させ(S51)、再び被処理液の濾過が行われる。
(6)処理方法:第四実施形態
以下、図22に示した処理システムを用いた別な処理方法を、図面を参照して説明する。図25は、第四実施形態の処理方法を段階的に示したフローチャートである。
図22に示す処理システム40を用いて被処理液の処理を行う際には、全てのバルブV1〜V6が閉じられた状態から、バルブV1、V2を開放させる(S71)。また予め被処理液槽101に、例えばSS粒子を含む被処理液を導入させておく。
次に、ポンプ106を起動させる(S72)。これにより、被処理液槽101の被処理液を処理槽102の供給部112に向けて圧送される。そして、第一空間E1からフィルター41の一次面側41aに流入し、フィルター41を透過する際にSS粒子などの固形分がフィルター41に形成された微細構造物5によって捕捉される。そして、SS粒子などの固形分が除去された処理液がバルブV2を経て処理液槽103に貯められる。なお、処理液槽103に貯められた処理液は、適宜、処理システム40の外部に放流される。
フィルター41によって被処理液を濾過し続けると、フィルター41の一次面側41aに徐々にSS粒子によるケーク7(図4参照)が形成され、堆積し始める。ケーク7の堆積量が増大するとフィルター41を透過して二次面側41bから流出する処理液の流量が減少する。
外圧型のフィルター41の第二空間E2から処理液が流出する配管108の途上に設置された流量計129は、常に濾過後の処理液の流量を検出し続け、その検出信号を制御部115に送る。制御部115は、制御プログラムに基づいて、処理液の流量が規定値を下回ったかを監視し続ける(S73)。
流量計129によって検出された処理液の流量が規定値を下回った場合、逆洗工程を開始する(S74)。逆洗工程が開始されると、まず、ポンプ106を停止させる(S75)。これにより、被処理液の濾過が停止する。次に、バルブV1,V2を閉じる(S76)。そして、バルブV6,V4を開く(S77)。また、コンプレッサ(加圧手段)105を起動させる(S78)。これにより、フィルター41から閉じられているバルブV5の位置まで加圧空気によって加圧される。
そして、バルブV4を開放する(S79)。これによって、加圧空気が一気にフィルター41の第二空間E2内の圧力を上昇させる。そして、第二空間E2内に残留していた処理液はフィルター41の二次面側41bから一次面側41aに急激に逆流し、この過程でフィルター41の隙間に詰まっていたケーク7などのSS粒子を押し出して除去する(逆洗工程)。そして、除去されたケーク7などのSS粒子は、逆洗した処理液や第一空間E1に残留していた被処理液とともに、バルブV5を経て洗浄排水槽104に流れ込み貯留される。
そして、逆洗工程が終了したと判断されると(S80)、バルブV6を閉じる(S81)。また、バルブV4を閉じる(S82)。その後、バルブV1、V2を開放させ(S61)、再び被処理液の濾過が行われる。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、フィルターから流出する処理液のの流量が低減したと判断されたら、処理液の一部などを用いて加圧して逆洗を行うことによって、少ない洗浄液の液量で、フィルターに堆積したSS粒子などの堆積物を効果的に除去することが可能な処理システム、処理方法を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
(実施例1)
「フィルター」
幅900μmのステンレス製の断面視正方形の線材を支持部材に巻きつけて、焼結によって接合し、線材間の幅が30μmであり、中心軸と略平行に支持部材が延在する円筒状の基材を製作した。これをリンと亜鉛とニッケルとを含むめっき浴中に浸漬し、ニッケルめっき処理を行った。このことにより、ステンレス製の線材で形成された基材をニッケル亜鉛合金からなる下地層で被覆した。
その後、下地層を形成しためっき浴中に、ホウ酸と添加剤としてのエチレンジアミン(EDA)とを添加して、ニッケルめっき処理を行った。このことにより、下地層で被覆された線材の全面を被覆するめっき層を形成し、実施例1のフィルターを得た。この実施例1のフィルターの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、表面に微細構造物が形成されているか否かを観察した。その結果、表面に複数の針状構造物が形成されていた。
次に、実施例1のフィルターについて、貫通孔の平均孔径を調べた。また、実施例1のフィルターについて、単位面積(1μm2)当たりの針状構造物の数、断面における単位長さ(1μm)当たりの針状構造物の数、針状構造物の平均高さ、針状構造物の高さの変動係数、断面における針状構造物の基端部の平均幅Dと平均高さHとのアスペクト比H(μm)/D(μm)を、それぞれ上述した方法により調べた。また、単位面積(1μm2)当たりの針状構造物の数を算出するために4μm2当たりの針状構造物の数、断面における単位長さ(1μm)当たりの針状構造物の数を算出するために10μm当たりの針状構造物の数も調べた。
その結果、貫通孔の平均孔径は10μmであった。また、4μm2当たりの針状構造物の数は15個であり、単位面積(1μm2)当たりの針状構造物の数は3.75個であった。また、10μm当たりの針状構造物の数は20個であり、断面における単位長さ(1μm)当たりの針状構造物の数は2個であった。また、針状構造物の平均高さHは750nm、針状構造物の高さの変動係数は0.28であった。また、断面における針状構造物の基端部の平均幅Dは550nmであり、アスペクト比は1.36であった。
また、線材間の幅は10μmであり、線材幅は920μmであった。
「処理システム」
実施例1のフィルターを、図1に示す処理システムを模擬した処理槽に設置した。但し、フィルターは外圧式とし、処理槽に供給された被処理液をフィルターで全量濾過する外圧型デッドエンド方式とした。
コンプレッサ(加圧手段)としては、従来公知のものを用いることができ、0.1〜10MPaの加圧空気を一度に処理槽の容量以上の体積を供給しうるものが好ましい。ここでの体積とは、標準状態での空気の体積のことをいう。
「濾過試験」
以下に示す条件で濾過試験を行った。
純水中に、SS粒子として平均粒子15μmの珪藻土粒子を3000mg/Lの濃度で分散させて被処理液とし、配管を介して処理槽に圧送した。そして、ポンプの出力を調整することにより、濾過圧力を0.36MPaで一定とする濾過試験を行い、濾過を開始してから30秒後の処理液濁度とフィルター表面のSS負荷が2000mg/m2の時の濾過流束を測定した。
その結果、濁度は1.17NTUであり、濾過流束は10.2m/hであった。また、濾過試験を行うことにより得られた処理液は透明であった。
「逆洗試験」
処理槽への被処理液の供給を開始してから10分間、上述した濾過試験と同様にして処理工程を行った後、バルブV6を開き、コンプレッサによって供給された0.4MPaに加圧された加圧空気を処理槽の第1排出部近傍まで供給した後、バルブV5を開けた後にバルブV4を開けることで、処理槽の二次側に加圧空気を供給すると同時に処理槽の一次側が大気解放され、処理槽の二次側に保持されていた処理液が高圧で逆洗方向に瞬時的に押し出される逆洗試験を行った。ここでの加圧空気の圧力は濾過圧力よりも高圧であることが望ましい。
その結果、逆洗に要した時間は5秒であった。
「洗浄試験」
逆洗試験を行った後、バルブV4を閉めて加圧空気の供給を停止し、処理槽の内部圧力が大気圧となった後、貯留していた処理液を処理槽の一次側に供給し充填し、バルブV3を開いてコンプレッサによって供給された0.4MPaに加圧された加圧空気を処理槽の一次側に供給する洗浄試験を25秒間行った。ここでの加圧空気の圧力は濾過圧力よりも高圧であることが望ましい。
また、洗浄試験を行った後のフィルターの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、フィルターの表面のケークはきれいに剥離していた。
「洗浄後の濾過試験」
洗浄試験を停止(加圧空気の供給を停止)した後、前記と同様に濾過試験を行った。そして、濾過を開始してから30秒後の濾過流束を測定したところ、10.2m/hであった。洗浄性能を「洗浄前の濾過試験でのろ過流束」に対する「洗浄後の濾過試験での濾過流束」の割合である回復率{=(洗浄後の濾過流束/洗浄前の濾過流束)×100(%)}で表すと、100%であった。
(実施例2)
「フィルター」実施例1と同様のものを使用。
「処理システム」図22に示した処理システムを使用、但し検出手段は圧力計とした。
「濾過試験」実施例1と同様に実施。
その結果、処理液濁度は1.17NTUであり、濾過流束は10.2m/hであった。また、濾過試験を行うことにより得られた処理液は透明であった。
「逆洗試験」
処理槽への被処理液の供給を開始してから10分間、上述した濾過試験と同様にして処理工程を行った後、バルブV6とバルブV4を開き、コンプレッサによって供給された0.4MPaに加圧された加圧空気にて処理槽内の圧力を0.4MPaとした後、バルブV5を開けることで、処理槽の一次側が大気解放され、処理槽の二次側に保持されていた処理液が高圧で逆洗方向に瞬時的に押し出される逆洗試験を行った。ここでの加圧空気の圧力は濾過圧力よりも高圧であることが望ましい。
その結果、逆洗に要した時間は5秒であった。
「洗浄後の濾過試験」
洗浄試験を停止(加圧空気の供給を停止)した後、前記と同様に濾過試験を行った。そして、濾過を開始してから30秒後の濾過流束を測定したところ、9.9m/hであり、回復率は97%であった。
(実施例3)
「フィルター」
ステンレス製の綾畳織の金網(目開き34μm、線径30μm)を用意した。これにニッケルめっきを行って、ニッケルからなる下地層で被覆した。
その後、下地層を形成しためっき浴中に、添加剤として2−ブチン−1,4−ジオールを添加して、ニッケルめっき処理を行った。このことにより、下地層で被覆された線材の全面を被覆するめっき層を形成し、実施例3のフィルターを得た。
実施例3のフィルターの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、表面に微細構造物が形成されているか否かを確認した。その結果、表面に複数の多面体構造物が形成されていた。
次に、実施例3のフィルターについて、貫通孔の平均孔径、平均最大外形寸法を、それぞれ上述した方法により調べた。
その結果、貫通孔の平均孔径は10μmであり、平均最大外形寸法は4μmであった。
「処理システム」
実施例3のフィルターを、図1に示す処理システムを模擬した処理槽に設置した。処理システムは内圧型デッドエンド方式のものである。
「濾過試験」実施例1と同様に実施。
その結果、処理液濁度は0.83NTUであり、濾過流束は30m/hであった。また、濾過試験を行うことにより得られた処理液は透明であった。
「逆洗試験」実施例1と同様に実施。
その結果、逆洗に要した時間は5秒であった。
「洗浄試験」実施例1と同様に実施。
その結果、洗浄試験を行った後のフィルターの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、フィルターの表面のケークはきれいに剥離していた。
「洗浄後の濾過試験」
洗浄試験を停止(加圧空気の供給を停止)した後、前記と同様に濾過試験を行った。そして、濾過を開始してから30秒後の濾過流束を測定したところ、30m/hであり、回復率は100%であった。
(実施例4)
「フィルター」実施例3と同様のものを使用。
「処理システム」図22に示した処理システムを使用、但し、但し検出手段は圧力計とした。
「濾過試験」実施例3と同様に実施。
その結果、処理液濁度は0.83NTUであり、濾過流束は30m/hであった。また、濾過試験を行うことにより得られた処理液は透明であった。
「洗浄後の濾過試験」
洗浄試験を停止(加圧空気の供給を停止)した後、前記と同様に濾過試験を行った。そして、濾過を開始してから30秒後の濾過流束を測定したところ、28.8m/hであり、回復率は96%であった。
(実施例5)
「フィルター」実施例1と同様のものを使用。
「処理システム」図1に示した処理システムを使用。但し、フィルターは外圧式とし、処理槽に供給された被処理液をフィルターで全量濾過する外圧型デッドエンド方式とした。
「濾過試験」実施例1と同様に実施。
その結果、処理液濁度は1.17NTUであり、濾過流束は10.2m/hであった。また、濾過試験を行うことにより得られた処理液は透明であった。
「逆洗試験」コンプレッサによって供給される加圧空気の圧力が0.2MPaであること以外は、実施例1と同様に実施。
その結果、逆洗に要した時間は5秒であった。
「洗浄後の濾過試験」
洗浄試験を停止(加圧空気の供給を停止)した後、前記と同様に濾過試験を行った。そして、濾過を開始してから30秒後の濾過流束を測定したところ、9.3m/hであり、回復率は91%であった。
(比較例1)
「フィルター」実施例1と同様のものを使用。
「処理システム」図22と同様の処理システムを使用。ただし、コンプレッサ109に代わりポンプを配置し、このポンプは処理液槽103に接続されているものとする。
「濾過試験」実施例1と同様に実施。
その結果、処理液濁度は1.17NTUであり、濾過流束は10.2m/hであった。また、濾過試験を行うことにより得られた処理液は透明であった。
「逆洗試験」
処理槽への被処理液の供給を開始してから10分間、上述した濾過試験と同様にして処理工程を行った後、バルブV6とバルブV4およびバルブV5を開き、コンプレッサ109の代わりに配置したポンプを起動して、処理液を処理槽の二次側に圧送する水逆洗を30秒間行った。そのときの洗浄圧力は0.4MPaであった。
「洗浄後の濾過試験」
洗浄試験を停止(ポンプを停止)した後、前記と同様に濾過試験を行った。そして、濾過を開始してから30秒後の濾過流束を測定したところ、8.6m/hであり、回復率は84%であった。
以上説明した各実施例、比較例の実験結果をまとめて表1に示す。