JP2018122303A - 処理システム、処理方法およびフィルター - Google Patents

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Abstract

【課題】深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を利用して被処理液中のSS粒子を捕捉でき、さらに洗浄によりSS粒子が除去されやすいフィルターを用いた処理システムおよび処理方法を提供することである。
【解決手段】処理システムは、被処理液槽と、処理槽と、被処理液供給配管と、洗浄用処理液供給機構とを持つ。処理槽は、フィルターによって被処理液領域と処理液領域とに区画されたものである。前記フィルターが、表面に近接配置された高さ0.2〜2.5μmの複数の針状構造物と、平均孔径0.5〜10.0μmの貫通孔とを有する第1フィルターまたは、表面に近接配置された最大外形寸法の平均値が0.5〜10μmである複数の多面体構造物と、内接円の直径の平均値が1.0〜20μmである貫通孔とを有する第2フィルターである。
【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、処理システム、処理方法およびフィルターに関する。
近時、工業の発達や人口の増加により、水資源の有効利用が求められるようになってきている。水資源の有効利用を図るためには、工業排水や生活排水などの各種の排水を浄化して、再利用することが重要である。排水を浄化するためには、水中に含まれる水不溶物や不純物を分離除去する必要がある。
水中に含まれる水不溶物や不純物の粒子を分離除去する方法として、例えば、膜分離法、遠心分離法、活性炭吸着法、オゾン処理法、凝集剤添加による浮遊物質の沈殿除去法が挙げられる。
膜分離法に代表される濾過法では、さまざまな形態の膜や濾過材を用いたフィルターに、除去対象物質である懸濁物質(以下、SS粒子と表記する場合がある。)を含む水を通過させて、水中からSS粒子を分離している。代表的な濾過機構としては、表面濾過、深層濾過(デプス濾過)、ケーク濾過と呼ばれる機構がある。
表面濾過は、フィルターの表面でフィルターを通過する水中に含まれるSS粒子を受け止める機構である。表面濾過では、主にフィルターの孔よりも大きいSS粒子が捕捉される。例えば、膜を用いる濾過では、主に表面濾過の機構が用いられている。
深層濾過は、フィルターの表面だけでなく孔の内面など、SS粒子を含む水と接するフィルター表面全面へのSS粒子の付着を利用する機構である。深層濾過では、主にフィルターの孔よりも小さい粒子が捕捉される。例えば、砂などの濾過材が充填された塔を用いる濾過においては、深層濾過の機構が用いられている。
ケーク濾過は、フィルターに捕捉されたSS粒子自身がケークを形成し、フィルターとして機能する機構である。ケーク濾過では、深層濾過よりもさらに小さいSS粒子が捕捉される。
一般に、フィルターにSS粒子を含む水を通過させて、水中からSS粒子を除去する場合、SS粒子によるケークが形成されてケーク濾過へ移行する。この時の濾過性能は、形成されたケークに依存し(言い換えればSS粒子に依存し)、ケークの厚みが増すと共に濾過流量の低下が観察される。
特開2008−180206号公報
Tao Hang,Ming Li,Qin Fei and Dali Mao,Characterization of nickel nanocones routed by electrodeposition without any template,Nanotechnology,19(2008)035201(5pp) S.Chakraborty,Role of organic additives in nickel plating,Transactions of the Metal Finishers’Association of india,Vol.12,No.3−4(2003)
本発明が解決しようとする課題は、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を利用して被処理液中のSS粒子を捕捉でき、さらに洗浄によりSS粒子が除去されやすいフィルターを用いた処理システムおよび処理方法を提供することである。
実施形態の処理システムは、被処理液槽と、処理槽と、被処理液供給配管と、洗浄用処理液供給機構とを持つ。
被処理液槽は、被処理液を貯留する。処理槽は、フィルターによって被処理液領域と処理液領域とに区画されたものである。被処理液供給配管は、前記被処理液槽と前記被処理液領域とを連結させるものである。洗浄用処理液供給機構は、前記処理槽に接続されたものである。
前記フィルターが、表面に近接配置された高さ0.2〜2.5μmの複数の針状構造物と、平均孔径0.5〜10.0μmの貫通孔とを有する第1フィルターまたは、表面に近接配置された最大外形寸法の平均値が0.5〜10μmである複数の多面体構造物と、内接円の直径の平均値が1.0〜20μmである貫通孔とを有する第2フィルターである。
第1の実施形態の処理システムを示す模式図である。 第1フィルターの一例を示した平面模式図である。 図2に示すフィルターの一部を拡大して示した断面模式図である。 第1の実施形態の処理システムを用いた処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。 第2の実施形態の処理システムを示す模式図である。 第3の実施形態の処理システムを示す模式図である。 第2フィルターの一例を示した斜視模式図である。 洗浄工程後に実施例1のフィルターの表面を撮影した顕微鏡写真である。 図8に示す顕微鏡写真の一部を拡大した写真である。 実施例8のフィルターを撮影した顕微鏡写真である。 洗浄工程後に比較例1のフィルターの表面を撮影した顕微鏡写真である。 図11に示す顕微鏡写真の一部を拡大した写真である。
以下、実施形態の処理システム、処理方法およびフィルターを、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の処理システムを示す模式図である。図1に示す処理システム100は、被処理液槽101と、処理槽102と、処理液槽103と、被処理液供給配管104と、洗浄用処理液供給配管105(洗浄用処理液供給機構)と、濃縮汚泥槽106と、洗浄液排出配管107と、処理液排出配管108と、初期通過液排出配管109と、排出配管115と、制御装置120とを有している。
被処理液槽101は、被処理液を貯留する。被処理液としては、SS粒子を含む水などが挙げられる。被処理液槽101には、被処理液槽101内を攪拌する撹拌機が設置されている。被処理液槽101の形状、容量、材質等は、処理システム100の用途などに応じて適宜決定することができ、特に制限されない。
処理槽102は、被処理液中からSS粒子を除去して処理液を生成する。処理槽102の外形形状は、特に限定されるものではなく、例えば、平面視での面積が広く、側面視での面積が小さい扁平形状を有するものなどが用いられる。処理槽102は、後述するフィルター1によって、被処理液領域102aと処理液領域102bとに区画されている。処理槽102に設置されているフィルター1は、処理槽102の上下方向略中央部に略水平に設置されている。したがって、処理槽102内は、フィルター1によって上下に分割されている。そして、処理槽102内において、フィルター1より上側が被処理液領域102aとされ、フィルター1より下側が処理液領域102bとされている。
本実施形態では、処理槽102の被処理液領域102a内に、被処理液領域102a内の被処理液の圧力を測定する圧力計121が設置されている。圧力計121としては、被処理液の圧力を連続して測定するものを用いてもよいし、所定の時間毎に測定するものを用いてもよい。圧力計121によって測定した被処理液の圧力の測定結果は、制御装置120に送られる。
被処理液供給配管104は、被処理液槽101と処理槽102の被処理液領域102aとに連結されている。被処理液供給配管104と被処理液槽101とは、被処理液槽101の下部で接続されている。また、被処理液供給配管104と処理槽102とは、平面視で処理槽102の上面略中央部で接続されている。
被処理液供給配管104には、第1ポンプ104aと第1弁111とが設置されている。第1ポンプ104aは、被処理液槽101から被処理液領域102aに被処理液を圧送する。第1弁111は、開閉弁である。被処理液供給配管104では、第1弁111を開とすることにより、被処理液槽101から処理槽102の被処理液領域102aに被処理液が供給される。また、第1弁111を閉とすることにより、被処理液槽101から処理槽102の被処理液領域102aへの被処理液の供給が遮断される。本実施形態では、第1弁111の開閉は、制御装置120によって制御される。
処理液槽103は、処理液を貯留する。処理液は、処理槽102内のフィルター1を被処理液が通過することにより生成したものである。処理液槽103の形状、容量、材質等は、処理システム100の用途などに応じて適宜決定することができ、特に制限されない。
処理液排出配管108は、処理槽102の処理液領域102bと処理液槽103とに連結されている。処理液排出配管108と処理槽102とは、平面視で処理槽102の下面略中央部で接続されている。処理液排出配管108と処理液槽103とは、処理液槽103の上面で接続されている。
処理液排出配管108には、被処理液槽101に連通された初期通過液排出配管109が連結されている。また、処理液排出配管108には、開閉弁308と第4弁114とが設置されている。第4弁114は、三方弁である。処理液排出配管108では、第4弁114を切り替えることにより、処理液排出配管108と初期通過液排出配管109とが連通される、または処理液排出配管108によって、処理槽102の処理液領域102bと処理液槽103とが連通される。開閉弁308を開閉することで、処理液領域102b内の圧力を調整できる。
洗浄用処理液供給配管105は、処理槽102と処理液槽103とに接続されたものである。洗浄用処理液供給配管105は、処理液槽103に連結された主管105cと、主管105cから分岐された第1分岐管105aおよび第2分岐管105bとを有している。第1分岐管105aは、処理槽102の被処理液領域102aに連結されている。第1分岐管105aと被処理液領域102aとは、処理槽102の壁面(側面)上部で接続されている。第2分岐管105bは、処理槽102の処理液領域102bに連結されている。第2分岐管105bと処理液領域102bとは、第1分岐管105aと処理槽102との接続部と平面視で略重なる位置の処理槽102の壁面下部で接続されている。主管105cと処理液槽103とは、処理液槽103の壁面下部で接続されている。
洗浄用処理液供給配管105には、第9弁301と、第10弁302と、第11弁303と、第2ポンプ105dとが設置されている(本実施形態における「第9弁301」「第10弁302」「第11弁303」は特許請求の範囲における第2弁に相当する)。第2ポンプ105dは、処理液槽103から被処理液領域102aまたは処理液領域102bに処理液を圧送する。洗浄用処理液供給配管105では、第11弁303が開かれ、第3弁113よりも処理液槽103側の洗浄用処理液供給配管105と処理液槽103とが連通されている場合に、第9弁301または第10弁302を開くことにより、以下のいずれかの状態となる。すなわち、処理液槽103から被処理液領域102aに処理液が供給される、処理液槽103から処理液領域102bに処理液が供給される、処理液槽103から被処理液領域102aまたは処理液領域102bへの処理液の供給が遮断される、から選ばれるいずれかの状態となる。本実施形態では、第9弁301、第10弁302、第11弁303の開閉は、制御装置120によって制御される。
また、洗浄用処理液供給配管105には、処理システム100の外部に連通された排出配管115が連結されている。また、洗浄用処理液供給配管105には、第3弁113が設置されている。第3弁113は、三方弁である。洗浄用処理液供給配管105では、第3弁113を切り替えることにより、第3弁113よりも処理液槽103側の洗浄用処理液供給配管105と排出配管115とが連通される、または洗浄用処理液供給配管105と排出配管115との接続が遮断されるとともに、第3弁113よりも処理液槽103側の洗浄用処理液供給配管105と第3弁113よりも処理槽102側の洗浄用処理液供給配管105とが連通される。洗浄用処理液供給配管105と排出配管115とが連通されることにより、洗浄用処理液供給配管105における主管105cの一部が、排出配管115として機能する。
濃縮汚泥槽106は、被処理液中から除去されたSS粒子を多く含む濃縮液を貯留する。濃縮液は、フィルター1の洗浄に使用した後の処理液である。濃縮汚泥槽106の形状、容量、材質等は、処理システム100の用途などに応じて適宜決定することができ、特に制限されない。
洗浄液排出配管107は、処理槽102の被処理液領域102aと濃縮汚泥槽106とに連結されている。洗浄液排出配管107と処理槽102とは、処理槽102の壁面上部で接続されている。洗浄液排出配管107と処理槽102との接続位置は、処理槽102の平面視中心部を介して、第1分岐管105aと処理槽102との接続位置と略対向する位置となっている。洗浄液排出配管107と濃縮汚泥槽106とは、濃縮汚泥槽106の上面で接続されている。
洗浄液排出配管107には、第5弁122が設置されている。第5弁122は、開閉弁である。洗浄液排出配管107では、第5弁122を切り替えることにより、洗浄液排出配管107と濃縮汚泥槽106とが連通される、または洗浄液排出配管107と濃縮汚泥槽106とが遮断される。
図1に示す処理システム100には、処理システム100内を移動する被処理液または処理液の流量を測定する流量計(不図示)が複数箇所に配置されていることが好ましい。流量計によって測定した流量の測定結果は、制御装置120に送られることが好ましい。
制御装置120は、圧力計121の測定した被処理液領域102a内の被処理液の圧力が、予め決定されたしきい値以下であるか否かを判断する。さらに、制御装置120は、上記の圧力がしきい値以下であるか否かの判断結果に基づいて、被処理液供給配管104に設置された第1弁111と、洗浄用処理液供給配管105に設置された第9弁301、第10弁302、第11弁303を制御する。
具体的には、制御装置120は、上記の圧力がしきい値以下である場合、第1弁111を制御して被処理液領域102aに被処理液を供給し、第9弁301および第10弁302を制御して被処理液領域102aまたは処理液領域102bへの処理液の供給を遮断する。
また、制御装置120は、上記の圧力がしきい値超である場合、第1弁111を制御して被処理液領域102aへの被処理液の供給を遮断し、第9弁301と第10弁302と第11弁303とを制御して被処理液領域102aまたは処理液領域102bに処理液を供給する。
被処理液領域102a内の被処理液の圧力のしきい値は、予め決定された規定値であり、特に限定されないが、例えば0.2MPaとしてもよい。
本実施形態における制御装置120は、洗浄工程が終了したか否かを判断するものであることが好ましい。さらに、制御装置120は、洗浄工程が終了したか否かの判断結果に基づいて、被処理液供給配管104に設置された第1弁111と、洗浄用処理液供給配管105に設置された第9弁301と第10弁302と第11弁303とを制御するものであることが好ましい。
具体的には、制御装置120は、洗浄工程が終了していないと判断した場合、第9弁301と第10弁302と第11弁303とを制御して、被処理液領域102aまたは処理液領域102bへ処理液を供給し、第1弁111を制御して被処理液領域102aへの被処理液を遮断する。
また、制御装置120は、洗浄工程が終了したと判断した場合、第9弁301と第10弁302と第11弁303とを制御して、被処理液領域102aまたは処理液領域102bへの処理液の供給を遮断し、第1弁111を制御して被処理液領域102aに被処理液を供給する。
洗浄工程が終了したか否かは、例えば、第9弁301と第10弁302と第11弁303とを切り替えて、被処理液領域102aまたは処理液領域102bへの処理液の供給を開始してから(洗浄工程を開始してから)、予め決定された所定の時間が経過したことにより判断することが好ましい。洗浄工程を行う時間は、特に限定されないが、例えば、3分間としてもよい。
また、洗浄工程が終了したか否かは、洗浄工程が後述する処理液領域102bに処理液を供給する工程である場合、予め決定された所定の時間が経過したこと、および/または、被処理液領域102a内の被処理液の圧力が、予め決定されたしきい値以上であることにより判断してもよい。
制御装置120における、上記の圧力がしきい値以下であるか否かの判断機能と、その判断結果に基づいて第1弁111、第9弁301、第10弁302、第11弁303を制御する機能と、洗浄工程が終了したか否かの判断機能と、その判断結果に基づいて第1弁111、第9弁301、第10弁302、第11弁303を制御する機能とは、例えば、コンピュータの中央演算装置に備えられた機能によって実現される。
次に、処理槽102に設置されたフィルター1について説明する。フィルター1としては、表面に近接配置された高さ0.2〜2.5μmの複数の針状構造物と、平均孔径0.5〜10.0μmの貫通孔とを有する第1フィルターまたは、表面に近接配置された最大外形寸法の平均値が0.5〜10μmである複数の多面体構造物と、内接円の直径の平均値が1.0〜20μmである貫通孔とを有する第2フィルターを用いる。
本実施形態においては、フィルター1として、第1フィルターである図2に示すフィルターを用いる。図2は、フィルターの一例を示した平面模式図である。図3は、図2に示すフィルターの一部を拡大して示した断面模式図である。図2および図3に示すフィルター1は、SS粒子を含む被処理液を通過させて一定量のSS粒子を捕捉した後のものである。
図2に示すフィルター1は、図3に示すように、フィルター基材6と、フィルター基材6の表面に、電気めっき処理等によって形成されためっき層3とを有する。フィルター基材6は、線材2で形成された金網と、線材2の表面に形成された下地層4とで形成されている。めっき層3は、近接配置された複数の針状構造物5で形成されている。
フィルター1では、図2に示すように、線材2が綾織されて網目状となっている。このことにより、フィルター1には、複数の貫通孔8が規則的に形成されている。図2および図3に示すフィルター1の貫通孔8の近傍には、貫通孔8をふさぐように、図3に示すケーク7が形成されている。ケーク7は、フィルター1に捕捉されたSS粒子によって形成されたものである。ケーク7は、被処理液中のSS粒子を捕捉し、被処理液中からSS粒子を分離するフィルターとして機能する。
貫通孔8の平均孔径は、0.5μm〜10.0μmの範囲である。貫通孔8の孔径が0.5μm以上であると、フィルター1の濾過流量が確保されやすくなるとともに、優れた洗浄性が得られる。貫通孔8の平均孔径は、1.0μm以上であることが、より好ましい。貫通孔8の孔径が10.0μm以下であると、貫通孔8の近傍に、貫通孔8をふさぐようにケーク7が形成されやすくなる。貫通孔8の平均孔径は、7.0μm以下であることが、より好ましい。
フィルター1の貫通孔8の平均孔径は、以下に示す方法により測定したものである。まず、フィルター1の貫通孔8を真上から走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影する。この時、貫通孔8は、縦方向に略平行に延在していて表面にめっき層3が形成されている2本のフィルター基材6と、縦方向と略直交する横方向に略平行に延在していて表面にめっき層3が形成されている2本のフィルター基材6とに囲まれた、略矩形の内面形状となっている。この略矩形の貫通孔8の内面における縦方向の最短距離と横方向の最短距離とを測定し、距離の短い方の寸法を貫通孔8の孔径とした。この距離は、針状構造物5の先端の間とした。なお、縦方向の最短距離と横方向の最短距離とが同じである場合には、どちらか一方の寸法を貫通孔8の孔径とした。このようにして貫通孔8の孔径を4箇所以上測定し、その平均値をフィルター1の貫通孔8の孔径と定義した。
フィルター1の開孔率は0.01〜5%の範囲であることが好ましい。開孔率が0.01%以上であると、フィルター1の濾過流量を確保しやすくなるとともに、より優れた洗浄性が得られる。開孔率が5%以下であると、SS粒子を捕捉しやすくなる。開孔率は0.1%以上であることがより好ましく、4%以下であることがより好ましい。
フィルター1の開孔率は、以下に示す方法により算出したものである。図2に示すフィルター1においては、隣接する貫通孔8間の最短距離の平均値は、めっき層3によって被覆された線材2の平均線径である。このため、隣接する貫通孔8間の最短距離の平均値として、めっき層3によって被覆された線材2の平均線径を用いて、開孔率を算出する。
まず、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて拡大したフィルター1の写真を撮影し、画像処理を行う。具体的には、めっき層3によって被覆された線材2の線径を、一つの写真に対して代表的な10か所を選択して測定し、その平均値をめっき層3に被覆された線材2の平均線径と定義する。
次いで、めっき層3に被覆された線材2の平均線径をA、貫通孔8の孔径の平均値をBとして、B/(A+B)(%)で算出される値を開孔率と定義する。
線材2の材料としては、フィルター1を用いて濾過される被処理液中で使用できるものが用いられる。線材2の材料は、めっき処理を用いて、めっき層3、またはめっき層3および下地層4を容易に形成できるように、金属であることが好ましい。線材2に用いる金属としては、例えば、鉄、ニッケル、銅、および、これらの合金などを用いることが好ましい。その中でも特に、線材2として、耐蝕性に優れ、低コストで、加工しやすい材料であるステンレス鋼線を用いることが好ましい。
下地層4は、めっき層3の線材2への接着性を高めるために、必要に応じて設けられるものである。下地層4に用いられる材料としては、例えば、線材2の表面にニッケル合金からなるめっき層3を形成する場合、ニッケルまたはニッケル合金を用いることが好ましい。ニッケル合金としては、ホウ素、リン、亜鉛から選ばれる一種以上の元素を含有するものが挙げられる。
下地層4の厚みは、めっき層3の線材2への接着性を向上させることができる厚み以上とされている。また、下地層4の厚みは、貫通孔8の平均孔径が、フィルター1にSS粒子を含む被処理液を通過させる際に適している0.5μm〜10.0μmとなる範囲の厚みとされている。
本実施形態におけるめっき層3は、図3に示すように、近接配置された複数の針状構造物5が下地層4の表面に集合してなる複合体である。各針状構造物5では、各針状構造物5の基端53aよりも線材2側の領域である基部5aが、隣接する他の針状構造物5の基部5aと一体化されている。このことにより、針状構造物5の基部5aは、下地層4の表面に連続して形成されている。各針状構造物5は、例えば、多角錐状または円錐状の形状を有する。このような錐状の形状を有する各針状構造物5は、図3に示すように、基端53aから先端52に向けて先細りの形状を有している。このため、隣接する針状構造物5間には、断面視で基端53aに近づくにつれて幅が狭くなる谷53が形成されている。谷53は、平面視で各針状構造物5を取り囲むように形成されている。各針状構造物5を取り囲む谷53は、隣接する別の針状構造物5を取り囲む谷53と平面視で繋がって形成されている。
図2および図3に示すフィルター1では、複数の針状構造物5の一部に、被処理液中から捕捉したSS粒子が付着している。
フィルター基材6の単位面積(1μm)当たりの針状構造物5の数は、1.2〜10.0個/μmであることが好ましい。単位面積当たりの針状構造物5の数が1.2個/μm以上であると、フィルター1の表面積が十分に広くなり、隣接する針状構造物5間にSS粒子が引っかかりやすくなる。このため、深層濾過の機構によってSS粒子が捕捉されやすく、捕捉されたSS粒子によってケーク7が形成されやすいフィルター1となる。単位面積当たりの針状構造物5の数は、よりSS粒子の除去機能の高いフィルター1とするために、3.0個/μm以上であることが好ましい。
単位面積当たりの針状構造物5の数が10.0個/μm以下であると、隣接する針状構造物5間の隙間が狭くなりすぎることが防止される。このため、図3に示すように、隣接する針状構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されているケーク7とに囲まれた十分な広さの空間31が形成される。
空間31は、ケーク7が形成された時に、ケーク濾過された処理液が流れる流路として機能する。このため、針状構造物5を有さないフィルターと比較すると、ケーク7を通過した処理液の得られる面積が大きくなるため、濾過流量を大きくすることができる。したがって、単位面積当たりの針状構造物5の数が10.0個/μm以下であるフィルター1は、SS粒子が除去されやすく、濾過流量の大きいものとなる。
また、空間31は、フィルター1の洗浄時に、洗浄液が流れる流路としても機能する。したがって、単位面積当たりの針状構造物5の数が10.0個/μm以下であるフィルター1は、より優れた洗浄性を有する。
単位面積当たりの針状構造物5の数は、より濾過流量が大きく洗浄性に優れたフィルター1とするために、7.0個/μm以下であることが好ましい。
フィルター基材6の単位面積(1μm)当たりの針状構造物5の数は、以下に示す方法により測定したものである。
フィルターを電子顕微鏡で観察し、縦2μm横2μm面積4μmの正方形内に存在する針状構造物の頂点の数を、4箇所測定する。そして、4箇所で測定した針状構造物の頂点の数を平均し、単位面積(1μm)当たりの針状構造物の数を算出する。
フィルター基材6の断面における単位長さ(1μm)当たりの針状構造物5の数は1.0〜4.0個/μmであることが好ましい。上記の単位長さ当たりの針状構造物5の数が1.0個/μm以上であると、単位面積当たりの針状構造物5の数が1.2個/μm以上である場合と同様に、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を用いてSS粒子を捕捉できる優れた除去機能を有するものとなる。上記の単位長さ当たりの針状構造物5の数は、よりSS粒子の除去機能の高いフィルター1とするために、1.5個/μm以上であることが好ましい。
上記の単位長さ当たりの針状構造物5の数が4.0個/μm以下であると、単位面積当たりの針状構造物5の数が10.0個/μm以下である場合と同様に、隣接する針状構造物5間の隙間が狭くなりすぎることが防止される。このため、隣接する針状構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されているケーク7とに囲まれた十分な広さの空間31が形成されるものとなり、濾過流量が大きく洗浄性に優れたフィルター1となる。上記の単位長さ当たりの針状構造物5の数は、より一層濾過流量が大きく洗浄性に優れたフィルター1とするために、3.0個/μm以下であることが好ましい。
フィルター基材6の断面における単位長さ(1μm)当たりの針状構造物5の数は、以下に示す方法により測定したものである。
フィルター1を埋め込み樹脂で固定して切断し、その切断面をイオンミリングで平滑化して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影する。その後、撮影したフィルター基材の断面の拡大写真におけるフィルター基材の表面の略延在方向に沿って、10μm当たりの針状構造物の数を測定する。そして、測定した針状構造物の数から単位長さ(1μm)当たりの針状構造物の数を算出する。
本実施形態において、フィルター基材6の断面における針状構造物5の平均高さHおよび基端部の平均幅Dは、以下に示す部分の寸法を、以下に示す測定方法により測定したものである。
図3に示すように、フィルター基材6の断面において隣接する針状構造物5間には、谷53が形成されている。フィルター基材6の断面において、針状構造物5を挟んで対向する谷底である基端53a、53a間を、直線51でつなぎ、その長さを針状構造物5の基端部の幅D1、D2とする。また、針状構造物5の先端52と上記の直線51との最短距離を、針状構造物5の高さH1、H2とする。
フィルター基材6の断面において、2つの針状構造物57、58が一体化されている場合(図3における符号59で示す針状構造物)には、以下に示す部分の寸法を、針状構造物57、58の高さH3、H4および針状構造物57、58の基端部の幅D3、D4とした。
まず、針状構造物57、58が一体化された針状構造物59を挟んで対向する谷底である基端53a、53a間を、直線54でつなぐ。次いで、2つの針状構造物57、58間の谷55の谷底から直線54に向かって垂線56を引く。垂線56と直線54との交点から各基端53a、53aまでのそれぞれの距離を、針状構造物57、58の基端部の幅D3、D4とする。また、各針状構造物57、58の先端52a、52bと上記の直線54との最短距離を、各針状構造物57、58の高さH3、H4とする。なお、垂線56の長さが、針状構造物57、58の高さH3、H4の両方の高さの3/4未満である場合には、独立した2つの針状構造物とみなす。また、2つの針状構造物57、58が一体化されているとする基準は、前記独立した2つの針状構造物とみなされる場合以外とする。
針状構造物5の高さおよび針状構造物5の基端部の幅を測定するには、フィルター1を埋め込み樹脂で固定して切断し、その切断面をイオンミリングで研磨して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影する。その後、撮影したフィルター基材6の断面の拡大写真におけるフィルター基材の表面の略延在方向に沿う長さ10μmの範囲を1つの測定領域とし、4箇所の測定領域に存在する全ての上記の針状構造物5の高さおよび基端部の幅を測定する。そして、測定した4箇所の針状構造物5の高さの平均値を、針状構造物5の平均高さHとする。また、測定した4箇所の針状構造物5の基端部の幅の平均値を、針状構造物5の基端部の平均幅Dとする。
フィルター基材6の断面における針状構造物5の高さの変動係数は0.15〜0.50であることが好ましい。変動係数とは、上述したフィルター基材6の断面における針状構造物5の高さの分布の標準偏差を、前記針状構造物5の高さの算術平均値で除したものである。
上記の変動係数が0.15〜0.50の範囲であると、より一層SS粒子の除去機能および洗浄性の優れたフィルター1となる。上記の変動係数が0.15以上であると、針状構造物5の高さのばらつきが十分に大きいものとなる。このため、フィルター1にSS粒子を含む被処理液を通過させる際に、フィルター1の表面でのSS粒子を含む被処理液の流れが複雑になるとともに、高さの高い針状構造物5にSS粒子が引っかかりやすくなる。その結果、深層濾過の機構によってSS粒子が捕捉されやすくなるとともに、高さの高い針状構造物5に引っかかったSS粒子を起点として、めっき層3の表面にケーク7が形成されやすくなる。上記の変動係数は、よりSS粒子が捕捉されやすいフィルター1とするために、0.18以上であることが好ましい。
上記の変動係数が0.50以下であると、めっき層3の表面に形成されたケーク7を、高さの低い針状構造物5が支えることによって、隣接する針状構造物5間に形成されている谷53とケーク7とに囲まれた空間31の広さが確保されやすくなる。このため、濾過によってケーク7が形成された後、ケーク濾過された処理液が空間31内を流れやすくなり、濾過流量が増大するとともに、優れた洗浄性が得られる。したがって、フィルター1は、針状構造物のないフィルターと比較して濾過流量が多く洗浄性に優れたものとなる。上記の変動係数は、より一層、濾過流量が多く洗浄性に優れたフィルター1とするために、0.36以下であることが好ましい。
フィルター基材6の断面における針状構造物5の基端部の平均幅Dと平均高さHとのアスペクト比H/Dは0.5〜4.0であることが好ましい。アスペクト比H/Dが0.5以上であると、隣接する針状構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されたケーク7とに囲まれた十分な高さの空間31が形成される。このため、濾過によってケーク7が形成された後に、ケーク濾過された処理液が空間31内を流れやすくなり、濾過流量が多く洗浄性に優れたものとなる。アスペクト比H/Dは、より一層濾過流量が多く洗浄性の優れたフィルター1とするために、1.0以上であることが好ましい。アスペクト比H/Dが4.0以下であると、強度に優れた針状構造物5となるため、耐久性に優れたフィルター1となる。アスペクト比H/Dは、より一層耐久性の優れたフィルター1とするために、3.0以下であることが好ましい。
フィルター基材6の断面における針状構造物5の平均高さHは、0.2〜2.5μmである。上記の針状構造物5の平均高さHが0.2μm以上であると、隣接する針状構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されるケーク7とに囲まれた十分な高さの空間31が形成される。このため、濾過の際にケークが形成された後に、ケーク濾過された処理液が空間31内を流れやすくなり、濾過流量が確保されやすく、かつ優れた洗浄性が得られるものとなる。上記の針状構造物5の平均高さHは、より一層濾過流量および洗浄性の優れたフィルター1とするために、0.4μm以上であることが好ましい。上記の針状構造物5の平均高さHが2.5μm以下であると、隣接する針状構造物5間の隙間が狭くなりすぎることが防止される。このため、空間31が十分に確保され、濾過流量および洗浄性の優れたフィルター1となる。上記の針状構造物5の平均高さHは、より一層濾過流量および洗浄性の優れたフィルター1とするために、1.9μm以下であることが好ましい。
フィルター基材6の断面における針状構造物5の基端部の平均幅Dと、除去対象物質の平均粒子径(D50)b(SS粒子の平均粒子径)との関係は、b/D≧0.33を満足することが好ましい。上記b/Dが0.33以上であると、SS粒子が隣接する針状構造物5間に形成されている谷53の谷底の近傍に入り込みにくいものとなる。したがって、谷53と、めっき層3上に形成されたケーク7とに囲まれた広い空間31が形成されやすくなる。よって、フィルター1は、ケーク濾過された処理液が空間31内を流れやすく、濾過流量および洗浄性に優れたものとなる。上記b/Dは、より一層濾過流量が多く洗浄性の優れたフィルター1とするために、0.50以上であることが好ましい。また、上記b/Dは3.00以下であることが好ましい。上記b/Dが3.00以下であると、SS粒子が隣接する針状構造物5間に、より一層引っかかりやすいものとなる。このため、より一層、深層濾過の機構によってSS粒子が捕捉されやすく、捕捉されたSS粒子によってケーク7が形成されやすいフィルター1となる。上記b/Dは、よりSS粒子が捕捉されやすいフィルター1とするために、2.00以下であることがより好ましい。
ここで、平均粒子径bは、レーザー回折法により測定されたものである。具体的には、株式会社島津製作所製のSALD−DS21型測定装置(商品名)などにより測定することができる。
複数の針状構造物5で形成されためっき層3に用いられる金属としては、電気めっき等の処理によって、フィルター基材6の表面に複数の針状構造物5を析出できるものを用いる。このような金属としては、鉄、ニッケル、銅、および、これらの合金などが挙げられる。めっき層3に用いられる金属としては、上記の金属の中でも特に、針状構造物5の形状の制御がしやすく耐食性に優れた金属であるため、ニッケルまたはニッケル合金を用いることが好ましい。ニッケル合金としては、ホウ素、リン、亜鉛から選ばれる一種以上の元素を含有するものが挙げられる。
次に、図2および図3に示すフィルター1の製造方法について説明する。
フィルター1を製造するには、まず、綾織されて網目状とされた線材2を用意する。
次いで、線材2の表面全面に、めっき処理を用いて、下地層4を形成する。下地層4を形成するためのめっき処理としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ニッケルまたはニッケル合金からなるめっき層3を形成する前に、ステンレスからなる線材2の表面に下地層4を形成する場合には、電解ニッケルめっき処理または無電解ニッケルめっき処理を用いて、ニッケルまたはニッケル合金からなる下地層4を形成することが好ましい。
次に、下地層4の設けられた線材2の表面全面に、電気めっき処理によって、複数の針状構造物5を析出させて、線材2をめっき層3で被覆する。めっき層3を形成するための電気めっき処理としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、下地層4およびめっき層3がニッケルまたはニッケル合金からなるものである場合、下地層4の形成後、めっき浴に添加剤を添加して、連続して電解ニッケルめっき処理または無電解ニッケルめっき処理を用いて、めっき層3を形成することが好ましい。
複数の針状構造物5を析出させる電気めっき処理では、めっき浴に添加する添加剤の種類、濃度、めっき時間を変化させることにより、針状構造物5の形状および大きさを変化させることができる(例えば、非特許文献1参照)。添加剤としては、エチレンジアミン二塩酸塩(ethylenediamine dihydrochloride)、エチレンジアミン(EDA)などが挙げられる。
めっき層3を形成するためのめっき処理を行った後、必要に応じて熱処理を行って、めっき層3の結晶化を促進してもよい。
また、めっき層3を形成するためのめっき処理を行った後、必要に応じて、フィルターの耐久性を向上させるために、めっき層3の表面に、他の金属や有機物などを用いて別の被覆層を形成してもよい。
次に、図2および図3に示すフィルター1の濾過性能について説明する。
フィルター1にSS粒子を含む被処理液を通過させると、まず、表面濾過および深層濾過の機構によって、SS粒子が捕捉される。フィルター1は、表面に近接配置された所定の高さを有する複数の針状構造物5を有するものであるため、フィルター1とSS粒子を含む被処理液との接触面積が多い。このため、本実施形態では、表面濾過および深層濾過の機構によって針状構造物5の表面に付着したSS粒子を起点として、めっき層3の表面の複数の箇所で速やかにSS粒子の凝集物が形成される。
形成された凝集物は、フィルター1へのSS粒子を含む被処理液の通過を継続させることにより、成長して剥離し、SS粒子を含む被処理液とともに貫通孔8に向かって移動する。本実施形態では、貫通孔8が平均孔径0.5〜10.0μmのものである。このため、貫通孔8に移動した1つまたは複数の凝集物は、容易に貫通孔8をふさぐケーク7となる。このように、本実施形態のフィルター1では、表面濾過の機構だけでなく、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構も利用して、被処理液中の小さなSS粒子を除去できる。よって、優れた濾過性能が得られる。
また、フィルター1は、図3に示すように、隣接する針状構造物5間に谷53を有している。谷53は、断面視で谷底である基端53aに近づくにつれて幅が狭くなっている。このため、フィルター1に捕捉されたSS粒子は、谷53の基端53a近傍には入り込みにくい。したがって、めっき層3の表面にケーク7が形成されているフィルター1では、図3に示すように、谷53とケーク7とに囲まれた十分な広さの空間31が形成される。空間31が形成された後、さらにフィルター1へのSS粒子を含む被処理液の通過を継続させても、空間31の上部はケーク7で形成された蓋が被せられた状態となっているため、SS粒子は空間31内に入り込みにくい。したがって、フィルター1へのSS粒子を含む被処理液の通過を継続させて、ケーク7上にさらにSS粒子が堆積されても、濾過流量が確保される。
次に、図2および図3に示すフィルター1の洗浄性について説明する。
一定量のSS粒子を捕捉した本実施形態のフィルター1を洗浄する方法としては、例えば、フィルター1のSS粒子を含む被処理液を通過させた側に、洗浄液を供給する方法(以下「第1方法」という場合がある。)と、フィルター1のSS粒子を含む被処理液を通過させたのと反対向きに、洗浄液を供給(逆洗)する方法(以下「第2方法」という場合がある。)が挙げられる。
フィルター1を、第1方法を用いて洗浄すると、各針状構造物5を取り囲むように形成された谷53を介して、空間31に多方向から洗浄液が流入する。このことにより、フィルター1上に付着していたSS粒子またはSS粒子の凝集物が洗浄液に押し上げられ、SS粒子またはSS粒子の凝集物の剥離が促進される。また、フィルター1の針状構造物5は、基端53aから先端52に向けて先細りの形状を有している。このため、洗浄液に押し上げられたSS粒子またはSS粒子の凝集物は、フィルター1から容易に剥離される。また、針状構造物5が先細りの形状を有しているので、洗浄時に針状構造物5に付着しているSS粒子が谷53に挟まりにくく、針状構造物5から容易に剥離される。したがって、フィルター1を、第1方法を用いて洗浄することにより、フィルター1上に付着していたSS粒子またはSS粒子の凝集物は、速やかに除去される。
フィルター1を、第1方法を用いて洗浄した場合、貫通孔8に形成されているケーク7は除去されにくい。したがって、第1方法を用いて洗浄したフィルター1では、これに再度、SS粒子を含む被処理液を通過させた場合、被処理液の通過を開始してからすぐに所定の濾過性能が得られる。よって、被処理液の通過を開始してから、フィルター1にケーク7が形成されて所定の濾過性能が得られるようになるまで(初期リーク)の間が短時間であり、好ましい。
また、フィルター1を、第2方法を用いて洗浄すると、貫通孔8に形成されているケーク7が洗浄液に押し流されて除去される。このとき、貫通孔8内およびフィルター1のSS粒子を含む被処理液を通過させた側に存在する空間31には、各針状構造物5を取り囲むように形成された谷53を介して、多方向から洗浄液が流入する。このことにより、谷53の上部の少なくとも一部を覆うように形成されていたケーク7が、洗浄液に押し上げられて、ケーク7の剥離が促進される。また、フィルター1の針状構造物5は、基端53aから先端52に向けて先細りの形状を有している。このため、洗浄液に押し上げられたケーク7は、貫通孔8内を通過しようとする洗浄液の流れによってフィルター1から容易に剥離される。また、針状構造物5が先細りの形状を有しているので、針状構造物5に付着しているSS粒子が逆洗時に谷53に挟まりにくく、針状構造物5から容易に剥離される。したがって、フィルター1を、第2方法を用いて洗浄することにより、フィルター1に形成されていた形成されていたケーク7およびフィルター1上に付着していたSS粒子が速やかに除去される。
フィルター1を、第2方法を用いて洗浄した場合、フィルター1上に付着していたSS粒子またはSS粒子の凝集物だけでなく、貫通孔8に形成されていたケーク7も効果的に除去できる。したがって、洗浄後のフィルター1は、未使用のフィルターに近い状態に再生される。
実施形態のフィルター1は、表面に近接配置された高さ0.2〜2.5μmの複数の針状構造物と、平均孔径0.5〜10.0μmの貫通孔とを有する。このため、実施形態のフィルター1は、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を用いてSS粒子を捕捉でき、優れた除去機能を有する。しかも、実施形態のフィルター1では、SS粒子を含む被処理液を通過させることによってケーク7が形成され、その後に、針状構造物5間に形成されている谷53とケーク7とに囲まれた十分な大きさの空間31が形成されるため、濾過流量および洗浄性に優れる。
実施形態のフィルター1は、フィルター基材6の表面に形成された複数の針状構造物5を有するものであるので、フィルター基材6と針状構造物5との間には空間が存在しない。このため、例えば、フィルター基材6と針状構造物5との間に空間が存在している場合と比較して、針状構造物5が脱落しにくく、耐久性に優れたフィルター1となる。また、フィルター基材6と針状構造物5との間に空間が存在しないので、フィルター基材6と針状構造物5との間の空間に被処理液中のSS粒子が詰まることがない。したがって、フィルター1は、洗浄が容易である。
実施形態のフィルター1において、フィルター基材6として線材2で形成された金網を有するものを用いた場合、例えば、フィルター基材が、不織布である場合と比較して、洗浄によりSS粒子が除去されやすく、洗浄を短時間で行うことができる。
次に、処理方法の一例として、図1に示す処理システム100を用いて、被処理液を処理する処理方法について説明する。
図4は、第1の実施形態の処理システムを用いた処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
本実施形態では、フィルター1として、未使用のフィルターまたは洗浄によりケークの除去されたフィルターを用いる。
本実施形態では、処理工程を開始する前に、開閉弁308および第4弁114を切り替えて、処理液排出配管108と初期通過液排出配管109とを連通させる。また、第5弁122を切り替えて、洗浄液排出配管107と濃縮汚泥槽106とを遮断させる。また、第11弁303を閉じて、洗浄用処理液供給配管105と排出配管115との接続を遮断させる。さらに、第9弁301、第10弁302を閉じて、処理液槽103から被処理液領域102aまたは処理液領域102bへの処理液の供給を遮断させる。
次に、第1弁111を開とし、第1ポンプ104aを駆動することにより、被処理液供給配管104を介して、被処理液槽101から処理槽102の被処理液領域102aに被処理液を供給し、処理工程を開始する(図4におけるS1)。処理工程では、フィルター1の被処理液領域102a側から処理液領域102b側に、被処理液を通過させて処理液を生成する。処理工程は、圧力計121によって被処理液領域102a内の被処理液の圧力を測定しながら行い、制御装置120によって圧力計121の測定した被処理液の圧力がしきい値以下であるか否かを判断する(図4におけるS2)。
圧力計121による被処理液領域102a内の被処理液の圧力を測定は、処理工程を行っている間中、連続して行ってもよいし、所定の時間毎に行ってもよい。圧力計121によって測定した被処理液の圧力の測定結果は、制御装置120に送られる。
また、制御装置120による被処理液の圧力がしきい値以下であるか否かの判断は、処理工程を行っている間中、連続して行ってもよいし、所定の時間毎に行ってもよい。
処理工程においては、平面視で処理槽102の上面略中央部から処理槽102の被処理液領域102aに、第1ポンプ104aにより圧送された処理液が供給される。被処理液領域102aに供給された処理液は、処理槽102内に略水平に設置されているフィルター1上に広がって、フィルター1内を略垂直に通過する。
フィルター1を通過した処理液は、処理工程を開始してから、フィルター1にケークが形成されて所定の濾過性能が得られるようになるまで(初期リーク)の間、処理液領域102bに接続された処理液排出配管108を介して、処理液領域102bから排出され、初期通過液排出配管109を介して被処理液槽101に戻される。
そして、初期リークが終了した段階で、第4弁114を切り替えて、処理液排出配管108によって、処理槽102の処理液領域102bと処理液槽103とを連通する。すなわち、本実施形態の処理方法では、初期リークの間のみ、処理液排出配管108と初期通過液排出配管109とを連通させる。
フィルター1にケークが形成されたか否か(初期リークの期間が終了したか否か)は、例えば、処理槽102の処理液領域102bから排出される処理液の濁度が所定の値以下であるか否かによって判断される。
処理液排出配管108によって、処理槽102の処理液領域102bと処理液槽103とが連通された状態で、フィルター1を通過した処理液は、処理液領域102bに接続された処理液排出配管108を介して処理液槽103に貯留される。
その後、さらに処理工程を継続すると、フィルター1に形成されているケーク上にさらにSS粒子が堆積し、徐々に被処理液領域102a内の被処理液の圧力が上昇する。
本実施形態においては、制御装置120により、圧力計121の測定した被処理液領域102a内の被処理液の圧力がしきい値以下であるか否かを判断する。その結果、被処理液の圧力がしきい値以下である場合には、処理工程を継続する。
一方、制御装置120により判断した結果、上記の圧力がしきい値超である場合、制御装置120によって、ポンプ104aを停止するとともに第1弁111を切り替えて、被処理液槽101から被処理液領域102aへの被処理液の供給を遮断し、処理工程を停止(処理停止工程)する(図4におけるS3)。
次に、本実施形態では、第5弁122を切り替えて、洗浄液排出配管107と濃縮汚泥槽106とを連通させる。
次に、制御装置120によって、第9弁301、第10弁302、第11弁303、第3弁113を切り替えて、被処理液領域102aまたは処理液領域102bに処理液を供給し、フィルター1を洗浄する洗浄工程を開始する(図4におけるS4)。洗浄工程では、被処理液領域102aに処理液を供給する工程と、処理液領域102bに処理液を供給する工程のうち、いずれか一方のみを行ってもよいし、両方を行ってもよい。
本実施形態においては、フィルター1の洗浄に用いる洗浄液として、フィルター1を通過した処理液を用いる。
洗浄工程において、第9弁301を開いて、第1分岐管105aを介して被処理液領域102aに処理液を供給する場合、供給された処理液は、被処理液領域102a側のフィルター1上を、被処理液領域102aと洗浄液排出配管107との接続位置に向かって移動する。第1分岐管105aと処理槽102との接続位置と、処理槽102と洗浄液排出配管107との接続位置とは、処理槽102の平面視中心部に対して略対向する位置に配置されている。したがって、被処理液領域102aに供給された処理液が、被処理液領域102a内を流れる距離を十分に確保することができ、処理液と被処理液領域102a側のフィルター1とが十分に接触する。被処理液領域102aを通過した処理液は、SS粒子を多く含む濃縮液として、被処理液領域102aから洗浄液排出配管107を介して排出され、濃縮汚泥槽106に貯留される。被処理液領域102aに処理液を供給する場合、主に、フィルター1の被処理液領域102a側の面上に堆積したSS粒子が除去される。
また、洗浄工程において、第10弁302を開いて、第2分岐管105bを介して処理液領域102bに処理液を供給する場合、供給された処理液は、洗浄液排出配管107と被処理液領域102aとの接続位置に向かって移動しつつ、フィルター1内を処理液領域102b側から被処理液領域102a側に通過する。第2分岐管105bと処理槽102との接続位置と、処理槽102と洗浄液排出配管107との接続位置とは、処理槽102の平面視中心部に対して略対向する位置に配置されている。したがって、第2分岐管105bに供給された処理液が、処理液領域102b内および被処理液領域102a内を流れる距離を十分に確保することができ、処理液とフィルター1とが十分に接触する。処理液領域102b内および被処理液領域102a内を移動しつつフィルター1内を通過した処理液は、SS粒子を多く含む濃縮液として、被処理液領域102aから洗浄液排出配管107を介して排出され、濃縮汚泥槽106に貯留される。処理液領域102bに処理液を供給する場合、フィルター1の被処理液領域102a側の面上に堆積したSS粒子だけでなく、フィルター1の貫通孔をふさぐケークも効果的に除去される。なお、処理液領域102bに処理液を供給する場合、処理液領域102b内の圧力を維持するために、処理液排出配管108に設けられた開閉弁308を閉じることが好ましい。
次に、本実施形態では、制御装置120によって洗浄工程が終了したか否かを判断することが好ましい(図4におけるS5)。洗浄工程が終了したか否かは、例えば、洗浄工程を開始してから、予め決定された所定の時間が経過したことにより判断することが好ましい。また、洗浄工程が終了したか否かは、予め決定された所定の時間が経過したこと、および/または、被処理液領域102a内の被処理液の圧力が、予め決定されたしきい値以上であることにより判断してもよい。
そして、制御装置120によって洗浄工程が終了していないと判断された場合には、洗浄工程を継続する。
一方、制御装置120により洗浄工程が終了したと判断された場合には、制御装置120によって、第9弁301と第10弁302と第11弁303とを制御して、被処理液領域102aまたは処理液領域102bへの処理液の供給を遮断する。
次に、第5弁122を切り替えることにより、洗浄液排出配管107と濃縮汚泥槽106とを遮断させる。そして、制御装置120によって第1弁111を制御して、被処理液領域102aに被処理液を供給し、処理工程を再開する。
その後、図4に示す本実施形態の処理方法では、処理工程の開始(図4におけるS1)から洗浄工程の終了(図4におけるS5)までの工程を複数回連続して繰り返し行うことが好ましい。
本実施形態において、処理工程の開始から洗浄工程の終了までの工程を複数回繰り返し行う場合、洗浄工程は一回目から最後まで、全て被処理液領域102aに処理液を供給する工程であってもよいし、処理液領域102bに処理液を供給する工程であってもよいし、一回目から最後までの間の一部の洗浄工程が異なっていてもよい。
一回目から最後までの間の一部が異なる洗浄工程である場合、例えば、被処理液領域102aに処理液を供給する工程を1〜5回行う毎に、処理液領域102bに処理液を供給する工程を1回行うことが好ましい。この場合、充分に洗浄効果が得られるとともに、初期リークの期間が短期間となり、非処理液の処理効率の高い処理方法となる。
また、1回の洗浄工程において、被処理液領域102aに処理液を供給する工程と、処理液領域102bに処理液を供給する工程の両方を行ってもよい。
なお、図4に示す本実施形態の処理方法では、処理液槽103内の処理液量に応じて、適宜第3弁113を切り替えることにより、洗浄用処理液供給配管105と排出配管115とが連通される。このことにより、処理液槽103内の処理液が、処理システム100の外部に排出される。
本実施形態の処理システム100は、フィルター1として、表面に近接配置された高さ0.2〜2.5μmの複数の針状構造物5と、平均孔径0.5〜10.0μmの貫通孔8とを有する第1フィルターを用いている。このため、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を利用して被処理液中のSS粒子を捕捉できる。しかも、洗浄によりフィルター1からSS粒子が除去されやすく、好ましい。
本実施形態の処理システム100は、被処理液領域102a内の被処理液の圧力を測定する圧力計121と、被処理液供給配管104に設置された第1弁111と、洗浄用処理液供給配管105に設置された第9弁301および第10弁302と、圧力計121の測定した被処理液の圧力がしきい値以下であるか否かを判断し、圧力がしきい値超である場合、第1弁111を制御して被処理液領域への被処理液の供給を遮断し、第9弁301および第10弁302を制御して被処理液領域102aまたは処理液領域102bに処理液を供給する制御装置120とを有する。したがって、処理システム100を用いて被処理液を処理する場合、被処理液領域102a内の被処理液の圧力を測定しながら処理工程を行い、被処理液の圧力がしきい値超であることに基づいて処理工程を終了して洗浄工程を開始することができる。よって、処理システム100の濾過性能の低下に応じた適切なタイミングで、フィルター1を洗浄でき、効率よく被処理液を処理できる。
図1に示す処理システム100では、処理液排出配管108に第4弁114を介して初期通過液排出配管109が連結されている場合を例に挙げて説明したが、初期通過液排出配管109は、処理液排出配管108とは別個に処理槽102に接続されていてもよい。
また、図1に示す処理システム100では、洗浄用処理液供給配管105に第3弁113を介して排出配管115が連結されている場合を例に挙げて説明したが、排出配管115は、洗浄用処理液供給配管105とは別個に処理液槽103に接続されていてもよい。
また、洗浄用処理液供給配管105が、処理液槽103に連結された主管105cと、主管105cから分岐され、被処理液領域102aに連結された第1分岐管105aと、処理液領域102bに連結された第2分岐管105bと有する場合を例に挙げて説明したが、この例に限定されるものではない。例えば、洗浄用処理液供給配管105は、主管105cを設けずに、被処理液領域102aと処理液槽103とに連結された第1分岐管105aと、処理液領域102bと処理液槽103とに連結された第2分岐管105bとを有するものであってもよい。
本実施形態では、線材2とめっき層3との間に、下地層4が設けられているフィルターを例に挙げて説明したが、下地層は設けられていなくてもよい。
本実施形態では、線材2が綾織されて網目状となっている場合を例に挙げて説明したが、線材2の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、平織、畳織であってもよい。
(第2の実施形態)
次に、処理システムの他の例について説明する。
図5は、第2の実施形態の処理システム130を示す模式図である。第2の実施形態の処理システム130が、図1に示す第1の実施形態の処理システム100と異なるところは、被処理液供給配管104と、洗浄用処理液供給配管105と、洗浄液排出配管107と、処理液排出配管108とが、処理槽102に接続されている位置、及び洗浄液排出配管107から三方弁304を介して被処理液槽101へ戻る被処理水循環配管305が設置されているのみである。したがって、共通する部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
被処理液供給配管104と処理槽102の被処理液領域102aとは、処理槽102の壁面(側面)上部で接続されている。処理液排出配管108と処理槽102の処理液領域102bとは、処理槽102の壁面下部で接続されている。処理液排出配管108と処理槽102との接続位置は、被処理液供給配管104と処理槽102との接続位置と、処理槽102の平面視中心部を介して略対向する位置となっている。
洗浄用処理液供給配管105の第1分岐管105aと処理槽102の被処理液領域102aとは、処理槽102の壁面上部で接続されている。第1分岐管105aと処理槽102との接続部は、被処理液供給配管104と処理槽102との接続部の近傍に配置されている。また、第2分岐管105bと処理槽102の処理液領域102bとは、第1分岐管105aと処理槽102との接続部と、平面視で略重なる位置の処理槽102の壁面下部で接続されている。
洗浄液排出配管107と処理槽102の被処理液領域102aとは、処理槽102の壁面上部で接続されている。洗浄液排出配管107と処理槽102との接続位置は、第1分岐管105aと処理槽102との接続位置と、処理槽102の平面視中心部を介して略対向する位置となっている。また、洗浄液排出配管107の途中には、被処理液循環配管305に接続された三方弁304が設置されている。被処理液循環配管305は、背圧弁306を介して被処理液槽101と連通されている。
次に、第2の実施形態の処理システム130を用いて、被処理液を処理する処理方法について説明する。
第2の実施形態の処理システム130を用いて、被処理液を処理する場合、図1に示す第1の実施形態の処理システム100を用いた場合と、処理工程において被処理液領域102aに供給された処理液の流れ方が異なる。その他については、図1に示す第1の実施形態の処理システム100と同じであるので、説明を省略する。
第2の実施形態の処理システム130を用いて被処理液を処理する場合、処理工程において、第1ポンプ104aにより圧送された被処理液が、処理槽102の壁面上部から被処理液領域102a内に略水平に供給される。被処理液領域102aに供給された被処理液は、処理槽102内に略水平に設置されているフィルター1上を処理液排出配管108と処理槽102との接続位置に向かって移動しつつ、フィルター1内を被処理液領域102a側から処理液領域102b側に通過する。被処理液供給配管104と処理槽102との接続位置と、処理液排出配管108と処理槽102との接続位置とは、処理槽102の平面視中心部を介して略対向する位置となっている。したがって、被処理液領域102aに供給された被処理液が、被処理液領域102a内を流れる距離を十分に確保することができ、被処理液とフィルター1とが十分に接触する。この時、被処理液領域102aは、三方弁304及び被処理液循環配管305を介して被処理液槽101と接続する。処理槽102内は、背圧弁306によって内圧が維持される。そして、処理槽102で濾過しきれなかった被処理液は、被処理液循環配管305を介して被処理液槽101へ返送される。また、第2の実施形態では、洗浄工程において、被処理液領域102aが三方弁304及び洗浄液排出配管107を介して濃縮汚泥槽106と接続される。
本実施形態の処理システム130においても、フィルター1として、表面に近接配置された高さ0.2〜2.5μmの複数の針状構造物5と、平均孔径0.5〜10.0μmの貫通孔8とを有する第1フィルターを用いている。このため、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を利用して被処理液中のSS粒子を捕捉できる。しかも、洗浄によりフィルター1からSS粒子が除去されやすく、好ましい。
また、本実施形態の処理システム130を用いて被処理液を処理する場合においても、処理システム130の濾過性能の低下に応じた適切なタイミングで、フィルター1を洗浄でき、効率よく被処理液を処理できる。
(第3の実施形態)
次に、処理システムの他の例について説明する。
図6は、第3の実施形態の処理システム150を示す模式図である。第3の実施形態の処理システム150と、図1に示す第1の実施形態の処理システム100とでは、処理槽160の形状が異なっている。また、第3の実施形態の処理システム150と、図1に示す第1の実施形態の処理システム100とでは、被処理液供給配管104、洗浄用処理液供給配管105、洗浄液排出配管107、処理液排出配管108、初期通過液排出配管109の各配管と、処理槽160との配置が異なっている。第3の実施形態の処理システム150において、図1に示す第1の実施形態の処理システム100と共通する部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
処理システム150における処理槽160は、被処理液中からSS粒子を除去して処理液を生成する。処理槽160は、本体162と、円筒状の2つのフィルター161a、161bとを有する。フィルター161a、161bは、図2および図3に示すフィルター1を円筒状の形状にしたものである。
処理槽160では、円筒状のフィルター161a、161bによって、本体162内のフィルター161a、161bの外側が被処理液領域、フィルター161a、161bの内側が処理液領域に区画されている。
処理槽160内におけるフィルター161a、161bの形状および配置は、特に限定されるものではないが、例えば、上下方向に延在する円筒状のものであることが好ましい。このようなフィルター161a、161bでは、外側から内側に向かって流入する被処理液の方向が、略水平方向となりやすい。このため、フィルター161a、161bの外面全体から被処理液が均一に流入しやすく、好ましい。
処理槽160内におけるフィルター161a、161bの設置位置は、特に限定されるものではないが、フィルター161a、161bの外側全面が被処理液と十分に接触するように設置されることが好ましい。
処理槽160の本体162は、側面視略台形状であり、上面から下面に向かって徐々に断面形状が小さくなる形状を有している。このため、本体162内に収容された被処理液中で沈降したSS粒子の濃縮が促進される。
被処理液供給配管104と処理槽160とは、処理槽160の側面で接続されている。
洗浄液排出配管107と処理槽160とは、処理槽160の下面で接続されている。本実施形態では、洗浄液排出配管107にポンプ107aが設置されている。ポンプ107aは、処理槽160からSS粒子を多く含む濃縮液を取り出して、濃縮汚泥槽106に圧送する。
処理システム150には、配管153が設けられている。配管153には、流路151a、151b、洗浄用ノズル152、初期通過液排出配管109、洗浄用処理液供給配管105、処理液排出配管108が接続され、第6弁156、第7弁155、第8弁154が設置されている(本実施形態における「第6弁156」「第7弁155」「第8弁154」は特許請求の範囲における第2弁に相当する)。第6弁156、第7弁155、第8弁154は、三方弁である。
配管153は、第6弁156と第8弁154とをつなぐものである。配管153は、被処理液がフィルター161a、161bを外側から内側に向かって通過して生成した処理液の移動と、フィルター161a、161bを内側から外側に向かって通過させる処理液の移動とに用いられる。
第6弁156を切り替えることにより、流路151a、151bと配管153とが連通される、または洗浄用ノズル152と配管153とが連通される。
第7弁155を切り替えることにより、初期通過液排出配管109と第7弁155よりも流路151a、151b側の配管153とが連通される、または初期通過液排出配管109と配管153とが遮断される。
第8弁154を切り替えることにより、処理液排出配管108と配管153とが連通される、または洗浄用処理液供給配管105と配管153とが連通される。
第6弁156、第7弁155、第8弁154の切り替えは、制御装置120によって制御される。
本実施形態では、第8弁154を切り替えることにより、洗浄用処理液供給配管105と配管153とが連通され、第6弁156を切り替えることにより、流路151a、151bまたは洗浄用ノズル152と配管153とが連通されることで、配管153と流路151a、151bと洗浄用ノズル152とが、洗浄用処理液供給配管105の一部として機能する。
流路151a、151bは、フィルター161a、161bの内側の空間の開口部と、配管153とに接続された配管である。流路151a、151bは、被処理液がフィルター161a、161bを外側から内側に向かって通過して生成した処理液を取り出すものである。また、流路151a、151bは、フィルター161a、161bを内側から外側に向かって通過させる処理液を供給するものである。
洗浄用ノズル152は、フィルター161a、161bに向かって処理液を噴射するものである。洗浄用ノズル152は、円筒状であり、長さ方向に沿って並べられた複数の噴出口を有している。洗浄用ノズル152は、フィルター161a、161bに隣接して、フィルター161a、161bと略平行に配置されている。
処理システム150では、制御装置120は、圧力計121の測定した被処理液領域内(本体162内のフィルター161a、161bの外側の領域)の被処理液の圧力が、予め決定されたしきい値以下であるか否かを判断する。その判断結果に基づいて、制御装置120は、被処理液供給配管104に設置された第1弁111と、洗浄用処理液供給配管105(洗浄用処理液供給配管105、配管153、流路151a、151b、洗浄用ノズル152)に設置された第2弁(第6弁156、第7弁155、第8弁154)とを制御する。
具体的には、制御装置120は、上記の圧力がしきい値以下である場合、第1弁111を制御して被処理液領域に被処理液を供給し、第6弁156、第7弁155、第8弁154を制御して被処理液領域または処理液領域(フィルター161a、161bの内側)への処理液の供給を遮断する。
また、制御装置120は、上記の圧力がしきい値超である場合、第1弁111を制御して被処理液領域への被処理液の供給を遮断し、第6弁156、第7弁155、第8弁154を制御して被処理液領域または処理液領域に処理液を供給する。
次に、第3の実施形態の処理システム150を用いて、被処理液を処理する処理方法について説明する。
本実施形態では、フィルター161a、161bとして、未使用のフィルターまたは洗浄によりケークの除去されたフィルターを用いる。
本実施形態では、処理工程を開始する前に、第7弁155を切り替えて、初期通過液排出配管109と、第7弁155よりも流路151a、151b側の配管153とを連通させる。このことにより、第7弁155よりも流路151a、151b側の配管153と、第7弁155よりも第8弁154側の配管153との接続が、遮断される。
また、第5弁122を切り替えて、洗浄液排出配管107と濃縮汚泥槽106とを遮断する。また、第3弁113を切り替えて、洗浄用処理液供給配管105と排出配管115との接続を遮断する。
次に、第1弁111を開とし、第1ポンプ104aを駆動することにより、被処理液供給配管104を介して、被処理液槽101から処理槽160の被処理液領域に被処理液を供給し、処理工程を開始する。処理工程では、フィルター161a、161bの被処理液領域側(外側)から処理液領域側(内側)に、被処理液を通過させて処理液を生成する。処理工程は、圧力計121によって被処理液領域内の被処理液の圧力を測定しながら行い、制御装置120によって圧力計121の測定した被処理液の圧力がしきい値以下であるか否かを判断する。
処理工程においては、第1ポンプ104aにより圧送された処理液が処理槽160の被処理液領域に供給される。処理槽160に供給された処理液は、フィルター161a、161bの外側から内側に向かって略水平に通過する。
フィルター161a、161bを通過した処理液は、処理工程を開始してから、フィルター161a、161bにケークが形成されて所定の濾過性能が得られるようになるまで(初期リーク)の間、処理液領域に接続された流路151a、151bを介して処理槽160から排出され、配管153、初期通過液排出配管109を介して被処理液槽101に戻される。
そして、初期リークが終了した段階で、第7弁155を切り替えて、初期通過液排出配管109と配管153とを遮断する。このことにより、第7弁155よりも流路151a、151b側の配管153と、第7弁155よりも第8弁154側の配管153とが、接続される。さらに、第8弁154を切り替えて、処理液排出配管108と配管153とを連通させ、処理槽160の処理液領域と処理液槽103とを連通させる。すなわち、本実施形態の処理方法では、初期リークの間のみ、配管153と初期通過液排出配管109とが連通される。
処理槽160の処理液領域と処理液槽103とが連通された状態で、フィルター161a、161bを通過した処理液は、フィルター161a、161bの内側の空間に接続された流路151a、151b、配管153、処理液排出配管108を介して処理液槽103に貯留される。
その後、さらに処理工程を継続すると、フィルター161a、161bに形成されているケーク上にさらにSS粒子が堆積し、徐々に被処理液領域内の被処理液の圧力が上昇する。
本実施形態においては、制御装置120により、圧力計121の測定した被処理液領域内の被処理液の圧力がしきい値以下であるか否かを判断する。その結果、被処理液の圧力がしきい値以下である場合には、処理工程を継続する。
一方、制御装置120により判断した結果、上記の圧力がしきい値超である場合、制御装置120によって第1弁111を切り替え、及びポンプ104aを停止して、被処理液槽101から被処理液領域への被処理液の供給を遮断し、処理工程を停止(処理停止工程)する。
次に、本実施形態では、第5弁122を切り替えて、洗浄液排出配管107と濃縮汚泥槽106とを連通させる。
次に、制御装置120によって第6弁156、第8弁154を切り替えて、被処理液領域または処理液領域に処理液を供給し、フィルター161a、161bを洗浄する洗浄工程を開始する。本実施形態の洗浄工程では、以下に示す被処理液領域に処理液を供給する工程と、処理液領域に処理液を供給する工程のうち、いずれか一方のみを行ってもよいし、両方を行ってもよい。
まず、被処理液領域に処理液を供給する工程について説明する。この工程では、第6弁156、第8弁154を切り替えて、配管153と洗浄用処理液供給配管105を介して洗浄用ノズル152から、フィルター161a、161bの外側に向かって処理液を噴射する。噴射された処理液は、フィルター161a、161bの外側に付着していたSS粒子またはSS粒子の凝集物とともに、SS粒子を多く含む濃縮液となって処理槽160内に流れ落ちる。そして、処理槽160の下面に接続された洗浄液排出配管107を介して処理槽160から排出され、濃縮汚泥槽106に貯留される。洗浄用ノズル152からフィルター161a、161bの外側に向かって処理液を噴射する場合、主に、フィルター161a、161bの外側上に堆積したSS粒子が除去される。
次に、処理液領域に処理液を供給する工程について説明する。この工程では、第6弁156、第8弁154を切り替えて、配管153と洗浄用処理液供給配管105を介して流路151a、151bからフィルター161a、161bの内側の空間に処理液を供給する。供給された処理液は、フィルター161a、161b内を内側から外側に通過する。そして、SS粒子を多く含む濃縮液として、フィルター161a、161bから処理槽160内に流れ落ちる。そして、処理槽160の下面に接続された洗浄液排出配管107を介して処理槽160から排出され、濃縮汚泥槽106に貯留される。流路151a、151bからフィルター161a、161bの内側の空間に処理液を供給する場合、フィルター161a、161bの外面上に堆積したSS粒子だけでなく、フィルター161a、161bの貫通孔をふさぐケークも効果的に除去される。
次に、本実施形態では、制御装置120によって洗浄工程が終了したか否かを判断することが好ましい。そして、制御装置120によって洗浄工程が終了していないと判断された場合には、洗浄工程を継続する。
一方、制御装置120により洗浄工程が終了したと判断された場合には、制御装置120によって第6弁156、第8弁154を制御して、被処理液領域または処理液領域への処理液の供給を遮断する。
次に、第5弁122を切り替えることにより、洗浄液排出配管107と濃縮汚泥槽106とを遮断させる。そして、制御装置120によって第1弁111を制御して、被処理液領域に被処理液を供給し、処理工程を再開する。
その後、本実施形態の処理方法では、処理工程の開始から洗浄工程の終了までの工程を複数回連続して繰り返し行うことが好ましい。
本実施形態の処理システム150は、フィルター161a、161bとして、表面に近接配置された高さ0.2〜2.5μmの複数の針状構造物5と、平均孔径0.5〜10.0μmの貫通孔8とを有する第1フィルターを用いている。このため、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を利用して被処理液中のSS粒子を捕捉できる。しかも、洗浄によりフィルター161a、161bからSS粒子が除去されやすく、好ましい。
本実施形態の処理システム150は、被処理液領域内の被処理液の圧力を測定する圧力計121と、被処理液供給配管104に設置された第1弁111と、洗浄用処理液供給配管105(洗浄用処理液供給配管105、配管153、流路151a、151b、洗浄用ノズル152)に設置された第2弁(第6弁156、第7弁155、第8弁154)と、圧力計121の測定した被処理液の圧力がしきい値以下であるか否かを判断し、圧力がしきい値超である場合、第1弁111を制御して被処理液領域への被処理液の供給を遮断し、第6弁156、第7弁155、第8弁154を制御して被処理液領域または処理液領域に処理液を供給する制御装置120とを有する。したがって、処理システム150を用いて被処理液を処理する場合、被処理液領域内の被処理液の圧力を測定しながら処理工程を行い、被処理液の圧力がしきい値超であることに基づいて処理工程を終了して洗浄工程を開始することができる。よって、処理システム150の濾過性能の低下に応じた適切なタイミングで、フィルター161a、161bを洗浄でき、効率よく被処理液を処理できる。
図6に示す処理システム150の処理槽160では、2つのフィルター161a、161bが設置されている場合を例に挙げて説明したが、フィルターの数は1つでもよいし、3つ以上でもよく、特に限定されない。
また、フィルター161a、161bの形状は、円筒状に限定されるものではなく、中空のものであって内部から外部に、および外部から内部に処理液を通過させることができるものであれば、如何なる形状であってもよい。具体的には、例えば、球状、多角柱状、プリーツ状などの外形を有するものが挙げられる。
上述した実施形態では、フィルターとして、第1フィルターを用いた場合を例に挙げて説明したが、フィルターとして、表面に近接配置された最大外形寸法の平均値が0.5〜10μmである複数の多面体構造物と、内接円の直径の平均値が1.0〜20μmである貫通孔とを有する第2フィルターを用いてもよい。
次に、第2フィルターの一例について、図面を用いて説明する。図7は、第2フィルターの一例を示した斜視模式図である。図7に示すフィルター201は、複数の貫通孔205を有する網目状のフィルター基材と、フィルター基材の表面を被覆するめっき層203とを持つ。図7に示すフィルター201では、フィルター基材が、線材202と、線材202の表面に形成された下地層204と、線材202間に形成された貫通孔205とで形成されている。
図7に示すフィルター201では、平織された線材202が網目状に配置されている。したがって、複数の貫通孔205は、略等間隔でマトリクス状に配置されている。
線材202の材料としては、図2および図3に示すフィルター1の線材2と同様のものを用いることができる。
下地層204は、めっき層203の線材202への接着性を高めるために、必要に応じて設けられるものである。図2および図3に示すフィルター1の下地層4と同様のものを用いることができる。
下地層204の厚みは、めっき層203の線材202への接着性を向上させることができる厚みであればよい。図7に示すフィルター1においては、下地層4の厚みを制御することによって、貫通孔205の大きさを調整してもよい。この場合、下地層204の厚みは、必要とする貫通孔205の大きさに応じて適宜決定される。
図7に示すめっき層203は、近接配置された多面体形状の複数の析出物(多面体構造物)が下地層204の表面に集合してなる集合体で形成されている。図7に示す集合体は、複数の多面体が相互に結合して体積の一部を共有している。多面体形状の複数の析出物は、それぞれ、3つ以上の平面が交わる頂点を複数有している。各析出物は、それぞれ異なる形状および異なる大きさを有しており、下地層204の表面に密集して形成されている。その結果、多面体形状の辺に相当する部分は、不規則な方向を向いている。
多面体形状の析出物(多面体構造物)の最大外形寸法の平均値は0.5〜10μmである。析出物の平均最大外形寸法が上記範囲内であると、被処理液中のSS粒子が引っかかりやすいものとなる。特に、被処理液中のSS粒子の平均粒子径が0.1〜10μmである場合、めっき層203にSS粒子が引っかかりやすいものとなる。したがって、被処理液中のSS粒子の平均粒子径が上記範囲である場合に、深層濾過の機構によって効率よくSS粒子を捕捉できる。また、析出物の平均最大外形寸法が上記範囲内であると、めっき層203にSS粒子が引っかかりやすいため、フィルター201に捕捉されたSS粒子によってケークが形成されやすくなる。その結果、ケーク濾過の機構を用いてSS粒子を捕捉しやすいものとなり、SS粒子を除去する機能の高いフィルター201となる。
析出物の平均最大外形寸法が0.5μm未満であると、めっき層203の表面の凹凸が減少するとともに、多面体形状の析出物の間の空隙を通る被処理液量が低下して、めっき層203へのSS粒子の付着が起こりにくくなる。析出物の平均最大外形寸法は、2μm以上であることがさらに好ましい。また、析出物の平均最大外形寸法が10μmを超えると、めっき層203とSS粒子を含む被処理液との接触面積が減少して、めっき層203へのSS粒子の付着が起こりにくくなる。析出物の平均最大外形寸法は、8μm以下であることがさらに好ましい。
多面体形状の析出物の平均最大外形寸法は、以下に示す測定方法により測定する。
すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて拡大したフィルター201の写真を撮影し、画像処理を行う。具体的には、多面体形状の析出物の最も大きさの大きい部分の外形寸法を、一つの写真に対して代表的な10か所を選択して測定し、その平均値を平均最大外形寸法と定義する。
めっき層203に用いられる金属としては、図2および図3に示すフィルター1のめっき層3と同様のものを用いることができる。
平面視で、めっき層203の被覆された貫通孔205の内壁に接する内接円51の直径の平均値は1.0〜20μmである。内接円251の直径の平均値は、貫通孔205の大きさおよびフィルター201の開孔率を決定するものである。図7に示すフィルター201では、内接円251の直径の平均値は、下地層204およびめっき層203を形成する前の線材202間の間隔と、下地層204の厚みと、めっき層203の厚みのうち、いずれか一つ以上を変化させることによって、調整できる。
平面視で、めっき層203の被覆された貫通孔205の内壁に接する内接円251の直径の平均値が、1.0〜20μmであると、特に、被処理液中のSS粒子の平均粒子径が0.1〜10μmである場合に、貫通孔205の大きさが適切なものとなる。したがって、フィルター201に捕捉されたSS粒子によって、貫通孔205をふさぐケークが容易に形成され、ケーク濾過の機構を用いてSS粒子を捕捉しやすいものとなる。
平面視で、めっき層203の被覆された貫通孔205の内壁に接する内接円251の直径の平均値が1.0μmに満たないと、フィルター201を通過できる被処理液量が不十分となる。このため、内接円251の直径の平均値は、2.0μm以上であることがさらに好ましい。また、内接円251の直径の平均値が20μmを超えると、表面濾過の機構によって主に捕捉される大きいSS粒子の大きさが大きいものとなる。このため、SS粒子の平均粒子径が例えば1.0〜10μmである場合、比較的大きいSS粒子が捕捉されにくくなる。また、内接円251の直径の平均値が20μmを超えると、貫通孔205が大きくなるため、貫通孔205をふさぐケークが形成されにくくなる。したがって、内接円251の直径の平均値は12μm以下であることが好ましく、7.0μm以下であることがさらに好ましい。内接円251の直径の平均値が12μm以下であると、表面濾過の機構を利用して、SS粒子の平均粒子径が例えば1〜10μmである場合にSS粒子を効率よく捕捉できる。
本実施形態のフィルター201では、濾過するSS粒子を含む被処理液中に、内接円251の直径の平均値よりも大きい粒径のSS粒子が含まれていなくても、貫通孔205をふさぐケークが容易に形成される。これは、めっき層203の表面に捕捉された小さい粒径のSS粒子が、めっき層203の表面で凝集して凝集体を形成し、これが貫通孔205へ移動してケークを形成するためと推定される。
めっき層203の表面でのSS粒子の凝集体は、SS粒子の平均粒子径が例えば1.0μmである場合と比較して、平均粒子径が0.1μmである場合の方が容易に形成される。これは、SS粒子の粒径が小さい程、被処理液に対する抵抗が小さいためと推定される。被処理液に対する抵抗が小さいSS粒子は、めっき層203の表面にとどまる時間が長くなるため、凝集体として成長しやすいものと推定される。
平面視で、めっき層203の被覆された貫通孔205の内壁に接する内接円251の直径の平均値は、以下に示す測定方法により測定する。
すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて拡大したフィルター201の写真を撮影し、画像処理を行う。具体的には、平面視で、めっき層203の被覆された貫通孔205の内壁に接する内接円251の直径を、一つの写真に対して代表的な10か所を選択して測定し、その平均値を内接円251の直径の平均値と定義する。
フィルター1においては、めっき層203の析出物の平均最大外形寸法と、平面視で、めっき層203の被覆された貫通孔205の内壁に接する内接円251の直径の平均値とが、下記の関係を満たすものであることが好ましい。すなわち、析出物の平均最大外形寸法をAとし、上記の内接円251の直径の平均値をBとしたときに、A≦3Bを満たすものであることが好ましい。
上記のA≦3Bを満たす場合、目詰まりが生じにくく、深層濾過および表面濾過の機構を利用して効率よくSS粒子を捕捉できるフィルター201となる。内接円251の直径の平均値が、析出物の平均最大外形寸法に対して極端に小さいと、深層濾過の機構によってめっき層203の表面に捕捉されるSS粒子の粒径と、表面濾過の機構によって貫通孔205に捕捉されるSS粒子の大きさとが逆転し、目詰まりが起こりやすくなる場合がある。
フィルター201のめっき層203の表面には、被処理液との親和性が異なる領域が形成されていることが好ましい。具体的には、めっき層203の表面に、島状の複数の第1領域206と、被処理液との親和性が第1領域206とは異なる第2領域207とが形成されていることが好ましい。第1領域206は、第2領域207中に略均一に分布していることが好ましい。各第1領域206の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、平面視で、円形、楕円形、多角形など如何なる形状であってもよい。また、複数の第1領域206の形状および面積は、それぞれ異なっていてもよいし、一部または全部が同じであってもよい。
フィルター201において、平面視で、フィルター基材の面積(フィルター1の面積)に対するめっき層203の被覆された貫通孔205の面積である開孔率は、0.04〜5%であることが好ましい。フィルター201の開孔率が0.04〜5%であると、めっき層203を形成している多面体形状の析出物の間の空隙を通過して貫通孔205に向かう被処理液の量が十分に多くなり、めっき層203の表面にSS粒子が付着しやすくなる。このため、深層濾過の機構によってSS粒子を捕捉しやすいものとなる。また、開孔率が0.04〜5%であると、めっき層203に捕捉されたSS粒子が凝集して、フィルター201の貫通孔205をふさぐケークが形成されやすいものとなる。貫通孔205にケークが形成されると、ケーク濾過の機構を用いて、貫通孔205よりも大きさの小さいSS粒子を効率よく捕捉できるフィルター201となる。
フィルター201の開孔率が0.04%未満であると、フィルター201の通液量が不足して、実用性に劣るものとなる。フィルター201の開孔率は、0.15%以上であることが好ましい。
また、フィルター201の開孔率が5%を超えると、めっき層203を形成している多面体形状の析出物の間の空隙を通過して貫通孔5に向かう被処理液の量が不足するため、めっき層203の表面へのSS粒子の付着が抑制される。また、フィルター201の開孔率が5%を超えると、めっき層203の表面において、めっき層203の表面に付着したSS粒子の凝集を十分に促進できなくなる。このため、貫通孔205をふさぐケークが形成されにくくなる。フィルター201の開孔率は2.5%以下が好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましい。
フィルター201の開孔率は、隣接する貫通孔205間の最短距離の平均値と、上述した方法を用いて測定した内接円251の直径の平均値とを用いて、以下に示す方法により算出する。隣接する貫通孔205間の最短距離の平均値としては、図2および図3に示すフィルター1の隣接する貫通孔8間の最短距離の平均値と同様に、めっき層203に被覆された線材202の平均線径を用い、図2および図3に示すフィルター1と同様にして定義する。
そして、めっき層203に被覆された線材202の平均線径をA、内接円の直径の平均値をBとして、B/(A+B)(%)で算出される値を開孔率と定義する。
次に、図7に示すフィルター201の製造方法について説明する。
フィルター201を製造するには、まず、平織の網目状に配置された線材202を用意する。
次いで、線材202の表面全面に、めっき処理を用いて、下地層204を形成する。下地層204を形成するためのめっき処理としては、図2および図3に示すフィルター1の下地層4と同様の方法を用いることができる。
次に、下地層204の設けられた線材202の表面全面に、めっき処理によって、複数の多面体形状を有する析出物を析出させて、線材202をめっき層203で被覆する。めっき層203を形成するためのめっき処理としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、下地層204およびめっき層203がニッケルまたはニッケル合金からなるものである場合、下地層204の形成後、めっき浴に添加剤を添加して、連続して電解ニッケルめっき処理または無電解ニッケルめっき処理を用いて、めっき層203を形成することが好ましい。
複数の多面体形状を有する析出物で形成されているめっき層203を形成するためのめっき処理では、めっき浴に添加する添加剤の種類および濃度を変化させることにより、多面体形状の析出物の形状および大きさを変化させることができる(例えば、非特許文献2参照)。添加剤としては、2−ブチン−1,4−ジオールなどが挙げられる。
めっき層203を形成するためのめっき処理を行った後、必要に応じて熱処理を行って、めっき層203の結晶化(多面体化)を促進してもよい。
また、めっき層203を形成するためのめっき処理を行った後、必要に応じて、フィルターの耐久性を向上させるために、めっき層203の表面に金などで形成されている別のめっき層を形成してもよい。
次に、本実施形態においては、めっき層203の表面に、島状の複数の第1領域206と、第1領域206と被処理液との親和性が異なる第2領域207とを形成する。
第1領域206は、めっき層203の表面の一部を改質処理することによって形成できる。改質処理とは、めっき層203の表面の物性を変化させて、被処理液との物理的相互作用を変える処理である。したがって、めっき層203の表面のうち、改質処理された領域は、第1領域206となり、改質処理されなかった領域は、第1領域206と被処理液との親和性が異なる第2領域207となる。
改質処理は、フィルター201の表面を形成しているめっき層203の一部にのみ行う。めっき層203の表面の一部に改質処理を行うことにより、例えば、改質処理された被処理液の流れやすい(または流れにくい)第1領域206と、改質処理されなかった被処理液の流れにくい(または流れやすい)第2領域207とが形成される。その結果、めっき層203の表面における被処理液の流れが複雑になり、被処理液に含まれるSS粒子とめっき層203の表面との接触する確率が増加する。したがって、SS粒子を除去する機能の高いフィルター201となる。
これに対し、例えば、フィルター201の表面を形成しているめっき層203の全体に改質処理を行った場合、めっき層203の表面全体が均一な状態を有していることに変わりはない。すなわち、改質処理後のめっき層203の表面における被処理液との物理的相互作用の変化は、めっき層203の表面全体で均一となる。したがって、改質処理を行っても、被処理液の流れやすい領域と、被処理液の流れにくい領域は形成されない。
めっき層203の改質処理としては、具体的には、親水化処理と疎水化処理とが挙げられる。
親水化処理としては、例えば、めっき層203にプラズマなどを放射することによってめっき層203の表面に水酸基を付与する処理、めっき層203の表面に親水性素材(二酸化チタンなど)を塗布する処理、めっき層203の表面と親水性の官能基を有するシランカップリング剤とを反応させる処理などが挙げられる。
疎水化処理としては、例えば、めっき層203の表面に疎水性素材を塗布する処理、めっき層203の表面と疎水性の官能基を有するシランカップリング剤とを反応させる処理などが挙げられる。
次に、図7に示すフィルター201の濾過性能について説明する。
フィルター201にSS粒子を含む被処理液を通過させると、まず、表面濾過および深層濾過の機構によって、SS粒子が捕捉される。フィルター201は、表面に近接配置された所定の最大外形寸法を有する複数の多面体構造物を有するものであるため、表面にSS粒子がひっかかりやすいものであるとともに、フィルター201とSS粒子を含む被処理液との接触面積が多い。このため、実施形態のフィルター201は、めっき層203の表面に付着するSS粒子が多く、表面濾過および深層濾過の機構によって、効率よくSS粒子を捕捉できる。
また、フィルター201は、内接円の直径の平均値が1.0〜20μmである貫通孔を有する。したがって、表面濾過および深層濾過の機構によって捕捉されたSS粒子によって、貫通孔205をふさぐように速やかにケークが形成される。このように、フィルター201は、表面濾過の機構と深層濾過の機構に加えて、ケーク濾過の機構も利用できるものである。よって、実施形態のフィルター201は、優れた濾過性能が得られる。
次に、図7に示すフィルター201の洗浄性について説明する。図7に示すフィルター201を洗浄する方法としては、図2および図3に示すフィルター1を洗浄する場合と同様に、上述した第1方法と第2方法とが挙げられる。
フィルター201を、第1方法を用いて洗浄すると、多面体構造物間の空隙に多方向から洗浄液が流入する。このことにより、フィルター201上に付着していたSS粒子またはSS粒子の凝集物が洗浄液に押し流され、SS粒子またはSS粒子の凝集物の剥離が促進される。したがって、フィルター201を、第1方法を用いて洗浄することにより、フィルター201上に付着していたSS粒子またはSS粒子の凝集物は、速やかに除去される。
また、フィルター201を、第2方法を用いて洗浄すると、貫通孔をふさいでいたケークが洗浄液に押し上げられて剥離される。さらに、多面体構造物間の空隙に多方向から洗浄液が流入するため、SS粒子またはSS粒子の凝集物の剥離が促進される。したがって、フィルター201を、第2方法を用いて洗浄することにより、フィルター201に形成されていた形成されていたケークおよびフィルター201上に付着していたSS粒子が速やかに除去される。
実施形態のフィルター201は、表面に近接配置された最大外形寸法の平均値が0.5〜10μmである複数の多面体構造物と、内接円の直径の平均値が1.0〜20μmである貫通孔とを有する。このため、実施形態のフィルター201は、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を用いてSS粒子を捕捉できる優れた除去機能を有する。
また、実施形態のフィルター201では、洗浄時に、多面体構造物間の空隙に多方向から洗浄液が流入するため、優れた洗浄性が得られる。
上記の実施形態では、線材202とめっき層203との間に、下地層204が設けられている濾過用のフィルターを例に挙げて説明したが、下地層は設けられていなくてもよい。
上記の実施形態では、網目状に配置された線材202の形状が平織である場合を例に挙げて説明したが、網目状に配置された線材202の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、綾織、畳織であってもよい。フィルター基材が織物である場合、線材202同士が交差して重なることによって、フィルター201の表面に凹凸が形成される。このため、フィルター201の表面にSS粒子がひっかかりやすいものとなり、より一層濾過性能の高いものとなる。
上記の実施形態では、フィルター基材が、線材202と、線材202の表面に形成された下地層204と、線材202間に形成された貫通孔5とで形成されている場合を例に挙げて説明したが、フィルター基材は、例えば、金属などで形成された板材に、貫通孔として所定の間隔で複数の開孔が設けられたもの(パンチングメッシュ)であってもよいし、その表面に下地層が形成されたものであってもよい。また、ノッチフィルターやウエッジフィルターなどの線材が平行に保持されたものを用いても良い。この場合の貫通孔の幅は線材間の距離である。
上記の実施形態では、めっき層203の表面に、島状の複数の第1領域206と、被処理液との親和性が第1領域206とは異なる第2領域207とを有する場合を例に挙げて説明したが、第1領域206および第2領域207は形成されていなくてもよい。
上述した実施形態では、圧力測定装置および制御装置を有する処理システムを例に挙げて説明したが、圧力測定装置および制御装置はなくてもよい。
上述した実施形態では、処理工程において圧力測定装置の測定した被処理液の圧力がしきい値以下であるか否かを判断し、被処理液の圧力がしきい値超である場合、処理工程を停止して洗浄工程を行う場合を例に挙げて説明したが、処理工程を開始してからの時間、処理工程において処理した被処理液の液量などに基づいて処理工程を終了し、洗浄工程を開始してもよい。
上述した実施形態では、洗浄用処理液供給配管として、処理槽と処理液槽とに連結されたものを用い、フィルターの洗浄に用いる洗浄液として、フィルターを通過した処理液を用いる場合を例に挙げて説明したが、この例に限定されるものではない。例えば、処理システムに、処理液槽とは別個に、水などの洗浄液が収容された洗浄液槽を設け、洗浄用処理液供給配管として、処理槽と洗浄液槽とに連結されたものを設けてもよい。この場合、フィルターの洗浄に用いる洗浄液として、洗浄液槽内に収容された洗浄液を用いる。
本実施形態の処理方法では、処理工程の開始から洗浄工程の再開までの工程を複数回連続して繰り返し行う場合を例に挙げて説明したが、1回のみであってもよい。
また、洗浄工程が終了したか否かは、洗浄工程を開始してから、予め決定された所定の時間が経過したことにより判断してもよいが、例えば、フィルターの洗浄に使用した後の処理液中の濁度など他の項目を用いて判断してもよい。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、被処理液を貯留する被処理液槽と、フィルターによって被処理液領域と処理液領域とに区画された処理槽と、前記被処理液槽と前記被処理液領域とを連結させる被処理液供給配管と、前記処理槽に接続された洗浄用処理液供給機構とを持ち、前記フィルターが、表面に近接配置された高さ0.2〜2.5μmの複数の針状構造物と、平均孔径0.5〜10.0μmの貫通孔とを有する第1フィルターまたは、表面に近接配置された最大外形寸法の平均値が0.5〜10μmである複数の多面体構造物と、内接円の直径の平均値が1.0〜20μmである貫通孔とを有する第2フィルターであることにより、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を利用して被処理液中のSS粒子を捕捉でき、さらに洗浄によりフィルターからSS粒子が除去されやすいものとなる。
以下、実施例を用いて詳細に説明する。
(実施例1)
以下の方法によりフィルターを作製した。まず、ステンレス製の平織りの金網(目開き45μm,線径32μm)を用意した。これを、リンと亜鉛とニッケルとを含むめっき浴中に浸漬し、ニッケルめっき処理を行った。このことにより、ステンレス鋼線で形成された金網を、ニッケル亜鉛合金からなる下地層で被覆した。
その後、下地層を形成しためっき浴中に、ホウ酸と添加剤としてのエチレンジアミン(EDA)とを添加して、ニッケルめっき処理を行った。このことにより、下地層で被覆された線材を被覆するめっき層を形成し、実施例1のフィルターを得た。
実施例1のフィルターの表面を電子顕微鏡で観察し、表面に針状構造物が形成されているか否かを確認した。その結果、表面に近接配置された複数の針状構造物が形成されていた。また、実施例1のフィルターについて、針状構造物の平均高さ、貫通孔の平均孔径、開孔率を、それぞれ上述した方法により調べた。
次に、実施例1のフィルターを用いて、図1に示す処理システムの処理槽を模擬した濾過装置を作成し、以下に示す処理工程と洗浄工程とを10回繰り返し行って、以下に示す項目について評価した。
(処理工程)
フィルターに、圧力0.1MPaで被処理液を10分間通過させた。被処理液には、平均粒子径0.1μmのアルミナ粒子(バイカロックスCR0.1)をSS粒子として100mg/L含む水で形成されているスラリー(濁度266NTU)を用いた。
(洗浄工程)
処理工程後のフィルターを取り出し、被処理液を通過させたのと反対側から、イオン交換水を水圧0.1MPaで3分間通水する(逆洗)ことにより洗浄した。
「濁度」
1回目の処理工程によって生成した処理水の濁度と、10回目の処理工程によって生成した処理水の濁度を測定した。
濁度が5FTU未満である場合を○、5FTU以上10FTU未満である場合を△、10FTU以上である場合を×と評価した。
「洗浄性」
10回目の洗浄工程後のフィルターの表面を電子顕微鏡で観察した。
電子顕微鏡の観察結果より、貫通孔のSS粒子が剥離しているものを○とし、貫通孔にSS粒子が残留しているがフィルター表面のSS粒子が剥離している場合を△とし、貫通孔およびフィルター表面にSS粒子が残留しているものを×と評価した。
図8は、10回目の洗浄工程後に実施例1のフィルターの表面を撮影した顕微鏡写真である。図9は、図8に示す顕微鏡写真の一部を拡大した写真である。
「濾過流量」
1回目の濾過流量と10回目の濾過流量とを求め、その低下率を算出した。
濾過流量の低下率が20.0%未満であったものを◎、20.0%以上30.0%未満であったものを○、30.0%以上であったものを×と評価した。
(実施例2)
針状構造物の平均高さが0.3μm、貫通孔の径が3.5μm、開孔率が0.31%のフィルターを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価した。
(実施例3)
針状構造物の平均高さが1.9μm、貫通孔の径が4.1μm、開孔率が0.44%のフィルターを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価した。
(実施例4)
貫通孔の孔径が0.5μm、開孔率が0.13%のフィルターを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価した。
(実施例5)
貫通孔の孔径が10.0μm、開孔率が3.92%のフィルターを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価した。
(実施例6)
洗浄工程として、フィルターの被処理液を通過させた側の表面に、イオン交換水を水圧0.1MPaで3分間かけ流すことにより洗浄したこと以外は、実施例1と同様にして評価した。
(実施例7)
10回の洗浄工程のうち、1〜4回目と6〜9回目の洗浄工程を実施例6と同様にして行い、5回目と10回目の洗浄工程を実施例1と同様にして行ったこと以外は、実施例1と同様にして評価した。
(実施例8)
実施例1と同様のステンレス製の平織りの金網を用意し、実施例1と同様の方法で下地層を被覆した。
その後、下地層を形成しためっき浴中に、添加剤として2−ブチン−1,4−ジオールを添加して、無電解ニッケルめっき処理を行った。このことにより、下地層で被覆された線材を被覆するめっき層を形成し、実施例8のフィルターを得た。
図10は、実施例8のフィルターの顕微鏡写真である。
図10に示すように、実施例8のフィルターには、表面に近接配置された複数の多面体構造物が形成されていた。また、実施例8のフィルターの多面体構造物の平均最大外形寸法、貫通孔の孔径(貫通孔の内接円の直径の平均値)、開孔率を、それぞれ上述した方法により調べた。
実施例8のフィルターを用いて、実施例1と同様にして評価した。
(比較例1)
ステンレス製の平織りの金網(目開き45μm、線径32μm)上にニッケルめっき処理を施したフィルターを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価した。
図11は、10回目の洗浄工程後に比較例1のフィルターの表面を撮影した顕微鏡写真である。図12は、図11に示す顕微鏡写真の一部を拡大した写真である。
実施例1〜7、比較例1の断面における針状構造物の平均高さ、貫通孔の平均孔径、開孔率と、実施例8の多面体構造物の平均最大外形寸法、貫通孔の孔径、開孔率と、実施例1〜8、比較例の評価結果とを表1に示す。
表1、図8、図9、図11、図12に示すように、実施例1〜8では、比較例1と比較して、洗浄性が優れていることが明らかとなった。また、実施例1〜8では、濾過流量の著しい低下も見られなかった。さらに、実施例1〜8は、濾過性能に優れており、洗浄工程を行うことにより濾過性能を維持できることが分かった。
また、表1に示すように、針状構造物の平均高さおよび貫通孔の平均孔径が好ましい範囲である実施例1および実施例3では、濾過流量の評価が◎であった。
また、実施例1と実施例6の結果から、洗浄工程として逆洗を行う場合、洗浄工程としてフィルターの被処理液を通過させた側の表面にイオン交換水をかけ流す場合と比較して、より一層洗浄効果が優れることが分かった。さらに、実施例1、実施例6、実施例7の結果から、洗浄工程としてフィルターの被処理液を通過させた側の表面にイオン交換水をかけ流す場合と、洗浄工程として逆洗を行う場合とを組み合わせることにより、フィルターの被処理液を通過させた側の表面にイオン交換水をかけ流す場合よりも洗浄効果が高まることが分かった。
また、実施例1〜8の結果から、針状構造物を有するフィルターは、多面体構造物を有するフィルターよりも、優れた洗浄性が得られることが分かった。
また、実施例1のフィルターと比較例1のフィルターとをそれぞれ用い、直径100mmの円形のフィルターに、上記の処理工程と同じ被処理液を圧力0.1MPaで通過させて、1時間あたりの処理液量を調べた。その結果を表2に示す。
表2より、表面に近接配置された複数の針状構造物が形成されている実施例1のフィルターを用いることで、針状構造物の形成されていない比較例1と比較して、処理液量が大幅に増加することが明らかとなった。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1、201…フィルター、2、202…線材、3、203…めっき層、4、204…下地層、5、57、58、59…針状構造物、5a…基部、6…フィルター基材、7…ケーク、8、205…貫通孔、31…空間、51、54…直線、52…先端、53、55…谷、53a…基端、56…垂線、100、130、150…処理システム、101…被処理液槽、102…処理槽、102a…被処理液領域、102b…処理液領域、103…処理液槽、104…被処理液供給配管、104a…第1ポンプ、105…洗浄用処理液供給配管、105a…第1分岐管、105b…第2分岐管、105c…主管、105d…第2ポンプ、106…濃縮汚泥槽、107…洗浄液排出配管、107a…ポンプ、108…処理液排出配管、109…初期通過液排出配管、111…第1弁、113…第3弁、114…第4弁、115…排出配管、120…制御装置、121…圧力測定装置、122…第5弁、151a、151b…流路、152…洗浄用ノズル、153…配管、154…第8弁、155…第7弁、156…第6弁、160…処理槽、161a、161b…フィルター、162…本体、206…第1領域、207…第2領域

Claims (10)

  1. 被処理液を貯留する被処理液槽と、
    フィルターによって被処理液領域と処理液領域とに区画された処理槽と、
    前記被処理液槽と前記被処理液領域とを連結させる被処理液供給配管と、
    前記処理槽に接続された洗浄用処理液供給機構とを有し、
    前記フィルターが、線材で形成された金網と、該線材の表面に形成された下地層とで形成されたフィルター基材と、前記下地層の表面に近接配置された高さ0.2〜2.5μmの複数の針状構造物と、前記線材が網目状となることにより形成された平均孔径0.5〜10.0μmの貫通孔とを有する処理システム。
  2. 前記フィルターの前記針状構造物の数が、単位面積当たり1.2〜10.0個/μmである請求項1に記載の処理システム。
  3. 前記フィルターの開孔率が0.01〜5%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の処理システム。
  4. 前記針状構造物が、ニッケルまたはニッケル合金で形成されたものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の処理システム。
  5. 前記被処理液領域内の前記被処理液の圧力を測定する圧力測定装置と、
    前記被処理液供給配管に設置された第1弁と、
    前記洗浄用処理液供給機構に設置された第2弁と、
    前記圧力測定装置の測定した前記被処理液の圧力がしきい値超である場合、前記第1弁を制御して前記被処理液領域への前記被処理液の供給を遮断し、前記第2弁を制御して前記処理槽に洗浄液を供給する制御装置とを有する請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の処理システム。
  6. 前記洗浄用処理液供給機構が、前記処理槽と処理液を貯留する処理液槽とに接続されている請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の処理システム。
  7. 前記洗浄用処理液供給機構が、前記処理槽の前記処理液領域に接続されている請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の処理システム。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の処理システムを用いて被処理液を処理する処理方法であって、
    前記被処理液領域に前記被処理液を供給し、前記フィルターの前記被処理液領域側から前記処理液領域に前記被処理液を通過させて処理液を生成する処理工程と、
    前記処理槽に洗浄液を供給し、前記フィルターを洗浄する洗浄工程とを有する処理方法。
  9. 請求項5に記載の処理システムを用いて被処理液を処理する処理方法であって、
    前記被処理液領域に前記被処理液を供給し、前記被処理液領域内の前記被処理液の圧力を測定しながら、前記フィルターの前記被処理液領域側から前記処理液領域に前記被処理液を通過させて処理液を生成し、前記圧力測定装置の測定した前記被処理液の圧力がしきい値以下であるか否かを判断する処理工程と、
    前記圧力測定装置の測定した前記被処理液の圧力がしきい値超である場合、前記第1弁を切り替えて前記被処理液領域への前記被処理液の供給を遮断する処理停止工程と、
    前記第2弁を切り替えて前記処理槽に洗浄液を供給し、前記フィルターを洗浄する洗浄工程とを行う処理方法。
  10. 線材で形成された金網と、該線材の表面に形成された下地層とで形成されたフィルター基材と、前記下地層の表面に近接配置された高さ0.2〜2.5μmの複数の針状構造物と、前記線材が網目状となることにより形成された平均孔径0.5〜10.0μmの貫通孔とを有するフィルター。
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