以下、実施形態の濾過用フィルターユニットを、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態の濾過用フィルターユニットの長手方向に沿った断面図である。また、図2は、濾過用フィルターユニットを一方の端面側から見た時の断面図である。
濾過用フィルターユニット10は、例えば、下水などの被濾過液を濾過して浄水を得るための濾過処理装置を構成する。濾過用フィルターユニット10は、筒状に形成された濾過体12、および濾過体12の周面に接して濾過体12を支持する支持部材13からなる濾過用フィルター11と、内部に濾過体12を収容する筒状の外装体20とを備えている。
外装体20は、一端および他端が開放面を成す中空円筒形の外筒21と、この外筒21の一方の開放面および他方の開放面をそれぞれ覆う蓋体22,23とから構成されている。外筒21は、濾過体12の外径よりも充分に大きく形成され、外筒21の内周面21aと濾過体12の外周面12bとの間には、例えば、処理水を流入させる所定の空間E1が保たれる。
外装体20を構成する蓋体22,23には、外筒21の端部を挿入可能な係止溝24,25と、濾過体12の端部を挿入可能な係止溝26,27とが、それぞれ形成されている。また、これら係止溝24,25,26,27には、それぞれ水密用のパッキン(Oリング)29が配されている。また、蓋体22,23には、支持部材13の一端及び他端が挿入される係止溝31,32がそれぞれ形成されている。
蓋体22には、被濾過液を空間E2に導入する流入口33が形成されている。また、蓋体22には、濾過体12を逆洗洗浄する際に洗浄液を流入させる流入口34が形成されている。さらに本実施形態では、濾過体12の内周面12aで囲まれた空間E2内に、洗浄液を噴射させるための洗浄ノズル35が配置される。洗浄ノズル35は蓋体22に固定されるとともに一端側が封じられ、多数の貫通孔(噴射口)が形成されたパイプからなる。蓋体22には、この洗浄ノズル35に洗浄液を導入する洗浄液流入口36が形成されている。
蓋体23には、濾過体12によって濾過された処理水を排出する流出口37が形成されている。こうした流出口37と、蓋体22に形成された流入口34とは、外筒21の中心軸に対して互いに対角上に形成されている。
支持部材13は、例えば、断面が三角形を成す棒状の部材であり、濾過体12の外周面12bに接するとともに、一端側および他端側が蓋体22,23の係止溝31,32にそれぞれ挿入される。本実施形態では、濾過体12の外周面12bを取り巻くように3本の支持部材13が等間隔に配される。
蓋体22と蓋体23との間には、締結部材39が形成されている。締結部材39は、一端側および他端側にそれぞれネジ溝が形成された棒状の部材と、このネジ溝に係合するナットとから構成される。本実施形態では、外筒21の外側を取り巻くように6本の締結部材39が等間隔に配される。こうした締結部材39によって、蓋体22と蓋体23とは、互いに接近する方向に締め付けられ、外筒21の端部や濾過体12の端部がパッキン(Oリング)29に密着する。
こうした構成の本実施形態の濾過用フィルターユニット10は、内圧型のフィルターユニットとされる。即ち、被濾過液が流入口33から濾過体12の内側となる空間E2に導入される。そして被濾過液が濾過体12の一次面を成す内周面12aから、二次面を成す外周面12bに向けて通過する際に濾過が行われる。濾過によって得られた処理水は、濾過体12の外周面12bと外筒21の内周面21aとの間の空間E1から流出口37を経て濾過用フィルターユニット10の外部に流出される。
本実施形態では、濾過用フィルターユニット10は、蓋体22が鉛直方向の下側に、また蓋体23が鉛直方向の上側になるように、円筒形の濾過体12が直立するように設置される。
図3は、本実施形態の濾過用フィルターを示す断面図である。濾過用フィルター11は、線材111を面状に配列させた濾過体12と、この濾過体12を支持する支持部材13と、を備えている。実施形態の濾過用フィルター11では、濾過体12は、長尺の線材111をコイル状に巻回させ、中空の筒状体に成形させたものからなる。このように成形した線材111によって、円筒面をもつ濾過体12が形成される。本実施形態の線材111は、延伸方向に対して直角な断面形状が三角形を成している。
線材111は、互いに隣接する線材どうしの間、即ち、実施形態では隣接する周回線材111どうしの間を所定幅の隙間を保つように支持部材13に支持されている。これにより、円筒形の濾過体12は、その内周面12aと外周面12bとの間を貫通するスリット状の隙間116が形成される。
本実施形態では、濾過体12は、内周面12aが被濾過液が流入する一次面とされ、外周面12bが、濾過体12によって濾過された処理水が流出する二次面とされる。例えば、濾過用フィルター11は、略円筒形の内周面12a側が被濾過液の圧送によって大気圧よりも加圧され、外周面12b側が大気圧となる内圧型のフィルターを構成している。
本実施形態の支持部材13は、濾過体12の外周面12b側で線材11に接合されている。支持部材13は、例えば線材11の周回方向に沿って等間隔に3か所形成され(図2参照)、濾過体12の中心軸に対して平行に延び、巻回された線材11を外周面12b側から支持している。こうした支持部材13と線材11とは、例えば、焼結によって接合されている。
図4は、濾過用フィルターの内周面側を示す要部拡大断面図である。
濾過体12のうち、被濾過液が流入する内周面(一次面)12aは平坦面である。即ち、線材111のうち、内周面(一次面)12a側は、平坦面111fとなっている。例えば、本実施形態のように、断面形状が三角形の線材111の場合、この三角形の1辺が内周面(一次面)12aに沿うように、線材111が支持部材13に支持され、三角形の頂点で線材111が支持部材13に接合される。
また、周回違いで隣接する線材111,111どうしの隙間116は、断面形状が三角形の線材111を用いることによって、一次面12a側から、被濾過液が流出する二次面12b側に向けて幅が広がるように形成される。
濾過用フィルター11を構成する濾過体12のうち、少なくとも被濾過液が流入する内周面(一次面)12a側、即ち、内周面(一次面)12a側に臨む線材111の平坦面111fには、複数(多数)の微細構造物5が形成されている。
微細構造物5は、例えば、円錐台形、楕円錐形、多角錐形、円錐台形、楕円錐台形、多角錐台形のうち、少なくともいずれか1つの形状である。実施形態の微細構造物5は、基端から先端に向けて先細りの針状構造物である。
図5は、微細構造物が形成された線材を示す要部拡大模式図である。
微細構造物5は、線材111に例えば電気めっきによって形成しためっき層3から構成される。また、微細構造物5を構成するめっき層3と線材111との間には、めっき層3と線材111との密着性を高める下地層4が更に形成されていることが好ましい。
微細構造物5を形成する線材111としては、濾過用フィルター11を用いて濾過される被濾過液中で使用できるものが用いられる。線材111の材料は、めっき処理を用いて、めっき層3、またはめっき層3および下地層4を容易に形成できるように、金属であることが好ましい。線材111に用いる金属としては、例えば、鉄、ニッケル、銅、および、これらの合金などを用いることが好ましい。その中でも特に、線材111として、耐蝕性に優れ、低コストで、加工しやすい材料であるステンレス鋼線を用いることが好ましい。
下地層4は、めっき層3の線材111への接着性を高めるために、必要に応じて設けられるものである。下地層4に用いられる材料としては、例えば、線材111の表面にニッケル合金からなるめっき層3を形成する場合、ニッケルまたはニッケル合金を用いることが好ましい。ニッケル合金としては、ホウ素、リン、亜鉛から選ばれる一種以上の元素を含有するものが挙げられる。
下地層4の厚みは、めっき層3の線材111への接着性を向上させることができる厚み以上とされている。また、下地層4の厚みは、隙間116の幅が、濾過用フィルター11にSS粒子を含む被濾過液を通過させる際に適した大きさとなる範囲の厚みとされている。
実施形態におけるめっき層3は、複数の微細構造物(本実施形態においては針状構造物)5が下地層4の表面に集合してなる複合体である。それぞれの微細構造物5では、微細構造物5の基端53aよりも線材111側の領域である基部5aが、隣接する他の微細構造物5の基部5aと一体化されている。このことにより、微細構造物5の基部5aは、下地層4の表面に連続して形成されている。
本実施形態における微細構造物5は、例えば、円錐台形、楕円錐形、多角錐形、円錐台形、楕円錐台形、多角錐台形の形状を有する。このような錐形や錐台形の形状を有する各微細構造物5は、基端53aから先端52に向けて先細りの形状を有している。
図6に、こうした微細構造物5を針状構造物とした場合のSEM写真(二次電子像(SEI)、15.0kV、20000倍)を示す。
針状構造物とされた微細構造物5どうしの間には、断面視で基端53aに近づくにつれて幅が狭くなる谷53が形成されている。谷53は、平面視で各微細構造物5を取り囲むように形成されている。各微細構造物5を取り囲む谷53は、隣接する別の微細構造物5を取り囲む谷53と平面視で繋がって形成されている。
図5に示す濾過用フィルター11では、複数の微細構造物5の一部に、被濾過液中から捕捉したSS粒子が付着している。
線材111の単位面積(1μm2)当たりの微細構造物5の数は、1.2〜10.0個/μm2である。単位面積(1μm2)当たりの微細構造物5の数が上記範囲未満であると、濾過用フィルター1とSS粒子を含む被濾過液との接触面積が不足して、深層濾過の機構の効果が不十分となるために、被濾過液中のSS粒子が捕捉されにくくなる。
また、単位面積(1μm2)当たりの微細構造物5の数が上記範囲未満であると、微細構造物5にSS粒子が捕捉されにくくなるため、ケーク7が形成されにくくなる。しかし、単位面積(1μm2)当たりの微細構造物5の数が上記範囲を超えると、洗浄を行っても微細構造物5からSS粒子が除去されにくくなり、洗浄性が不十分となる。
単位面積当たりの微細構造物5の数が1.2個/μm2以上であると、濾過用フィルター1の表面積が十分に広くなり、隣接する微細構造物5間にSS粒子が引っかかりやすくなる。このため、深層濾過の機構によってSS粒子が捕捉されやすく、捕捉されたSS粒子によってケーク7が形成されやすい濾過用フィルター11とすることができる。
よって、濾過用フィルター11は、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を用いてSS粒子を捕捉できる優れた除去機能を有するものとなる。単位面積当たりの微細構造物5の数は、よりSS粒子の除去機能の高い濾過用フィルター11とするために、3.0個/μm2以上であることが好ましい。
単位面積当たりの微細構造物5の数が10.0個/μm2以下であると、隣接する微細構造物5間の隙間が狭くなりすぎることが防止される。このため、図5に示すように、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されているケーク7とに囲まれた十分な広さの空間Efが形成される。空間Efは、ケーク7が形成された時に、ケーク濾過された処理水が流れる流路として機能する。
このため、微細構造物5を有さないフィルターと比較すると、ケーク7を通過した処理液の得られる面積が大きくなるため、濾過流量を大きくすることができる。したがって、濾過用フィルター11は、SS粒子が除去されやすく、濾過流量の大きいものとなる。単位面積当たりの微細構造物5の数は、より濾過流量の大きい優れた濾過用フィルター11とするために、7.0個/μm2以下であることが好ましい。
線材111の単位面積(1μm2)当たりの微細構造物5の数は、以下に示す方法により測定したものである。
濾過用フィルターを電子顕微鏡で観察し、縦2μm横2μm面積4μm2の正方形内に存在する針状構造物の頂点の数を、4箇所測定する。そして、4箇所で測定した針状構造物の頂点の数を平均し、単位面積(1μm2)当たりの針状構造物の数を算出する。
線材111の断面における単位長さ(1μm)当たりの微細構造物5の数は1.0〜4.0個/μmである。上記の単位長さ(1μm)当たりの微細構造物5の数が上記範囲未満であると、濾過用フィルター11とSS粒子を含む被濾過液との接触面積が不足して、深層濾過の機構の効果が不十分となるので、被濾過液中のSS粒子が捕捉されにくくなる。
一方、上述した単位長さ(1μm)当たりの微細構造物5の数が上記範囲を超えると、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されたケーク7とに囲まれた空間Efが狭くなるため、濾過流量が少なくなる場合がある。
上記の単位長さ当たりの微細構造物5の数が1.0個/μm以上であると、単位面積当たりの微細構造物5の数が1.2個/μm2以上である場合と同様に、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を用いてSS粒子を捕捉できる優れた除去機能を有するものとなる。上記の単位長さ当たりの微細構造物5の数は、よりSS粒子の除去機能の高い濾過用フィルター11とするために、1.5個/μm以上であることが好ましい。
上記の単位長さ当たりの微細構造物5の数が4.0個/μm以下であると、単位面積当たりの微細構造物5の数が10.0個/μm2以下である場合と同様に、隣接する微細構造物5間の隙間が狭くなりすぎることが防止される。このため、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されているケーク7とに囲まれた十分な広さの空間Efが形成されるものとなり、濾過流量の大きな濾過用フィルター11にすることができる。上記の単位長さ当たりの微細構造物5の数は、より一層濾過流量の大きい濾過用フィルター11とするために、3.0個/μm以下であることが好ましい。
線材111の断面における単位長さ(1μm)当たりの微細構造物5の数は、以下に示す方法により測定したものである。
濾過用フィルター11を埋め込み樹脂で固定して切断し、その切断面をイオンミリングで平滑化して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影する。その後、撮影したフィルター基材の断面の拡大写真におけるフィルター基材の表面の略延在方向に沿って、10μm当たりの針状の微細構造物の数を測定する。そして、測定した微細構造物の数から単位長さ(1μm)当たりの微細構造物の数を算出する。
本実施形態において、線材111の断面における針状の微細構造物5の平均高さHおよび基端部の平均幅Dは、以下に示す部分の寸法を、以下に示す測定方法により測定したものである。図5に示すように、線材111の断面において隣接する微細構造物5間には、谷53が形成されている。線材111の断面において、微細構造物5を挟んで対向する谷底である基端53a、53a間を、直線51でつなぎ、その長さを微細構造物5の基端部の幅D1、D2とする。また、微細構造物5の先端52と上記の直線51との最短距離を、微細構造物5の高さH1、H2とする。
線材111の断面において、2つの微細構造物57、58が一体化されている場合(図5における符号59で示す微細構造物)には、以下に示す部分の寸法を、微細構造物57、58の高さH3、H4および微細構造物57、58の基端部の幅D3、D4とした。
まず、針状の微細構造物57、58が一体化された微細構造物59を挟んで対向する谷底である基端53a、53a間を、直線54でつなぐ。次いで、2つの微細構造物57、58間の谷55の谷底から直線54に向かって垂線56を引く。垂線56と直線54との交点から各基端53a、53aまでのそれぞれの距離を、微細構造物57、58の基端部の幅D3、D4とする。
また、各微細構造物57、58の先端52a、52bと上記の直線54との最短距離を、各微細構造物57、58の高さH3、H4とする。なお、垂線56の長さが、微細構造物57、58の高さH3、H4の両方の高さの3/4未満である場合には、独立した2つの微細構造物とみなす。また、2つの微細構造物57、58が一体化されているとする基準は、前記独立した2つの微細構造物とみなされる場合以外とする。
針状の微細構造物5の高さおよび微細構造物5の基端部の幅を測定するには、濾過用フィルター11を埋め込み樹脂で固定して切断し、その切断面をイオンミリングで研磨して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影する。その後、撮影した線材111の断面の拡大写真における線材の表面の略延在方向に沿う長さ10μmの範囲を1つの測定領域とし、4箇所の測定領域に存在する全ての上記の微細構造物5の高さおよび基端部の幅を測定する。そして、測定した4箇所の微細構造物5の高さの平均値を、微細構造物5の平均高さHとする。また、測定した4箇所の微細構造物5の基端部の幅の平均値を、微細構造物5の基端部の平均幅Dとする。
線材111の断面における針状の微細構造物5の高さの変動係数は0.15〜0.50であることが好ましい。変動係数とは、上述した線材111の断面における微細構造物5の高さの分布の標準偏差を、前記微細構造物5の高さの算術平均値で除したものである。
上記の変動係数が0.15〜0.50の範囲であると、より一層SS粒子の除去機能および洗浄性の優れた濾過用フィルター11となる。上記の変動係数が0.15未満であると、濾過用フィルター11にSS粒子を含む被濾過液を通過させる際に、濾過用フィルター11の表面でのSS粒子を含む被濾過液の流れが単調になり、微細構造物5にSS粒子が捕捉されにくくなる。また、上記の変動係数が0.50を超えると、高さの低い微細構造物5によってめっき層3の表面に形成されたケーク7を支える機能が得られにくくなる。
上記の変動係数が0.15以上であると、微細構造物5の高さのばらつきが十分に大きいものとなる。このため、濾過用フィルター11にSS粒子を含む被濾過液を通過させる際に、濾過用フィルター11の表面でのSS粒子を含む被濾過液の流れが複雑になるとともに、高さの高い微細構造物5にSS粒子が引っかかりやすくなる。その結果、深層濾過の機構によってSS粒子が捕捉されやすくなるとともに、高さの高い微細構造物5に引っかかったSS粒子を起点として、めっき層3の表面にケーク7が形成されやすくなる。上記の変動係数は、よりSS粒子が捕捉されやすい濾過用フィルター11とするために、0.18以上であることが好ましい。
上記の変動係数が0.50以下であると、めっき層3の表面に形成されたケーク7を、高さの低い微細構造物5が支えることによって、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53とケーク7とに囲まれた空間Efの広さが確保されやすくなる。このため、濾過によってケーク7が形成された後、ケーク濾過された処理液が空間Ef内を流れやすくなり、濾過流量が増大する。したがって、濾過用フィルター11は、針状構造物のないフィルターと比較して濾過流量に優れたものとなる。上記の変動係数は、より一層、濾過流量の多い濾過用フィルター11とするために、0.36以下であることが好ましい。
線材111の断面における針状の微細構造物5の基端部の平均幅Dと平均高さHとのアスペクト比H/Dは0.5〜4.0であることが好ましい。アスペクト比H/Dが0.5以上であると、隣接する針状の微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されたケーク7とに囲まれた十分な高さの空間Efが形成される。
このため、濾過によってケーク7が形成された後に、ケーク濾過された処理水が空間Ef内を流れやすくなり、濾過流量に優れたものとなる。アスペクト比H/Dは、より一層濾過流量の大きな濾過用フィルター11とするために、1.0以上であることが好ましい。アスペクト比H/Dが4.0以下であると、強度に優れた微細構造物5となるため、耐久性に優れた濾過用フィルター11となる。アスペクト比H/Dは、より一層耐久性の優れた濾過用フィルター11とするために、3.0以下であることが好ましい。
線材111の断面における針状の微細構造物5の平均高さHは、0.2〜2.5μmであることが好ましい。上記の微細構造物5の平均高さHが0.2μm以上であると、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されるケーク7とに囲まれた十分な高さの空間Efが形成される。このため、濾過の際にケークが形成された後に、ケーク濾過された処理液が空間Ef内を流れやすくなり、濾過流量に優れたものとなる。
上記の微細構造物5の平均高さHは、より一層濾過流量の優れた濾過用フィルター11とするために、0.4μm以上であることが好ましい。上記の針状の微細構造物5の平均高さHが2.5μm以下であると、隣接する微細構造物5間の隙間が狭くなりすぎることが防止される。このため、10.0個/μm2以下である場合と同様に、空間Efが十分に確保された濾過流量に優れた濾過用フィルター11となる。上記の微細構造物5の平均高さHは、より一層濾過流量の優れた濾過用フィルター11とするために、1.8μm以下であることが好ましい。
線材111の断面における針状の微細構造物5の基端部の平均幅Dと、除去対象物質の平均粒子径(D50)φ(SS粒子の平均粒子径)との関係は、φ/D≧0.33を満足することが好ましい。上記φ/Dが0.33以上であると、SS粒子が隣接する微細構造物5間に形成されている谷53の谷底の近傍に入り込みにくいものとなる。したがって、谷53と、めっき層3上に形成されたケーク7とに囲まれた広い空間Efが形成されやすくなる。よって、濾過用フィルター11は、ケーク濾過された処理液が空間Ef内を流れやすく、濾過流量に優れたものとなる。
上記φ/Dは、より一層濾過流量の多い濾過用フィルター11とするために、0.50以上であることが好ましい。また、上記φ/Dは3.00以下であることが好ましい。上記φ/Dが3.00以下であると、SS粒子が隣接する微細構造物5間に、より一層引っかかりやすいものとなる。
このため、より一層、深層濾過の機構によってSS粒子が捕捉されやすく、捕捉されたSS粒子によってケーク7が形成されやすい濾過用フィルター11となる。上記φ/Dは、よりSS粒子が捕捉されやすい濾過用フィルター1とするために、2.00以下であることがより好ましい。
ここで、平均粒子径φは、レーザー回折法により測定されたものである。具体的には、株式会社島津製作所製のSALD−DS21型測定装置(商品名)などにより測定することができる。
複数の微細構造物5で形成されためっき層3に用いられる金属としては、電気めっき等の処理によって、線材111や下地層4の表面に複数の微細構造物5を析出できるものを用いる。このような金属としては、鉄、ニッケル、銅、および、これらの合金などが挙げられる。めっき層3に用いられる金属としては、上記の金属の中でも特に、微細構造物5の形状の制御がしやすく耐食性に優れた金属であるため、ニッケルまたはニッケル合金を用いることが好ましい。ニッケル合金としては、ホウ素、リン、亜鉛から選ばれる一種以上の元素を含有するものが挙げられる。
図7は、線材を示す模式図である。
微細構造物5の形状を、円錐台形、楕円錐形、多角錐形、円錐台形、楕円錐台形、多角錐台形などの錐形や錐台形にした場合、濾過体12の内周面(一次面)12aの面積に対する隙間116の面積(内周面を平面視した時の隙間の平面積)の割合を示す開口率Gは、0.2%以上、20%以下にすることが好ましい。
ここで、開口率Gは、互いに隣接する線材111間の隙間116の幅をs、線材111の配列方向に沿った線材111の幅をwと規定した時に、以下の式1で表される。
G=[s/(s+w)]×100・・・(1)
なお、sで示される線材111の隙間116の幅sは、10μm以上、5mm以下にすることが好ましい。
微細構造物5を錐形や錐台形、例えば針状構造物にした場合に、開口率Gが0.2%未満であると、濾過された処理水の通水量が少なくなり過ぎて、効率的に被濾過液の濾過を行うことが難しくなる。開口率Gを0.2%以上に保つことによって、処理水の通水量を適切に保つことができ、効率的に被濾過液の濾過を行うことができる。一方、開口率Gが20%を超えると、捕捉したSSによるブリッジが形成されにくくなり、ケーク濾過による濾過性能が低下する懸念がある。開口率Gを20%以下に保つことによって、ケーク濾過による濾過性能を高めることができる。
上述した実施形態では、微細構造物5を錐形や錐台形、例えば針状構造物にした例を説明したが、微細構造物5を多面体形状に形成することも好ましい。
図8、図9は、こうした微細構造物5を多面体構造物とした場合のSEM写真(二次電子像(SEI)、15.0kV、2000倍(図8)、5000倍(図9))を示す。
微細構造物5を多面体構造物とした場合、複数の多面体が相互に結合して体積の一部を共有している。多面体形状の微細構造物5は、それぞれ、3つ以上の平面が交わる頂点を複数有している。各微細構造物5は、図8および図9に示すように、それぞれ異なる形状および異なる大きさを有しており、線材111の平坦面11f、またはこの平坦面11fに形成された下地層4(図5参照)の表面に密集して形成されている。その結果、多面体形状の辺に相当する部分は、不規則な方向を向いている。
多面体形状の微細構造物5の最大外形寸法の平均値は0.5〜10μmが好ましい。析出物の平均最大外形寸法が上記範囲内であると、被濾過液中のSS粒子が引っかかりやすいものとなる。
特に、被濾過液中のSS粒子の平均粒子径が0.1〜10μmである場合、めっき層3にSS粒子が引っかかりやすいものとなる。したがって、被濾過液中のSS粒子の平均粒子径が上記範囲である場合に、深層濾過の機構によって効率よくSS粒子を捕捉できる。
また、析出物の平均最大外形寸法が上記範囲内であると、めっき層3にSS粒子が引っかかりやすいため、濾過用フィルター11に捕捉されたSS粒子によってケークが形成されやすくなる。その結果、ケーク濾過の機構を用いてSS粒子を捕捉しやすいものとなり、SS粒子を除去する機能の高い濾過用フィルター11となる。
多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法が0.5μm未満であると、めっき層3の表面の凹凸が減少するとともに、多面体形状の析出物の間の空隙を通る被濾過液量が低下して、めっき層3へのSS粒子の付着が起こりにくくなる。多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法は、2μm以上であることがさらに好ましい。また、多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法が10μmを超えると、めっき層3とSS粒子を含む被濾過液との接触面積が減少して、めっき層3へのSS粒子の付着が起こりにくくなる。多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法は、8μm以下であることがさらに好ましい。
多面体形状の微細構造物5における平均最大外形寸法の変動係数は0.15〜0.50であることが好ましい。変動係数が0.15〜0.50の範囲であると、より一層SS粒子の除去機能および洗浄性の優れた濾過用フィルター11となる。上記の変動係数が0.15未満であると、濾過用フィルター11にSS粒子を含む被濾過液を通過させる際に、濾過用フィルター11の表面でのSS粒子を含む被濾過液の流れが単調になり、微細構造物5にSS粒子が捕捉されにくくなる。また、上記の変動係数が0.50を超えると、高さの低い微細構造物5によってめっき層3の表面に形成されたケーク7を支える機能が得られにくくなる。
上記の変動係数が0.15以上であると、微細構造物5の高さのばらつきが十分に大きいものとなる。このため、濾過用フィルター11にSS粒子を含む被濾過液を通過させる際に、濾過用フィルター11の表面でのSS粒子を含む被濾過液の流れが複雑になるとともに、高さの高い微細構造物5にSS粒子が引っかかりやすくなる。その結果、深層濾過の機構によってSS粒子が捕捉されやすくなるとともに、高さの高い微細構造物5に引っかかったSS粒子を起点として、めっき層3の表面にケーク7が形成されやすくなる。上記の変動係数は、よりSS粒子が捕捉されやすい濾過用フィルター11とするために、0.18以上であることが好ましい。
上記の変動係数が0.50以下であると、めっき層3の表面に形成されたケーク7を、高さの低い微細構造物5が支えることによって、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53とケーク7とに囲まれた空間Efの広さが確保されやすくなる。このため、濾過によってケーク7が形成された後、ケーク濾過された処理液が空間Ef内を流れやすくなり、濾過流量が増大する。したがって、濾過用フィルター11は、多面体構造物のないフィルターと比較して濾過流量に優れたものとなる。上記の変動係数は、より一層、濾過流量の多い濾過用フィルター11とするために、0.36以下であることが好ましい。
多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法は、以下に示す測定方法により測定する。
即ち、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて拡大した濾過用フィルター11の写真を撮影し、画像処理を行う。具体的には、多面体形状の微細構造物5の最も大きさの大きい部分の外形寸法を、一つの写真に対して代表的な10か所を選択して測定し、その平均値を平均最大外形寸法と定義する。
めっき層3に用いられる金属としては、めっき処理によって、フィルター基材の表面に多面体形状の複数の微細構造物5が得られるものを用いる。このような金属としては、鉄、ニッケル、銅、および、これらの合金などが挙げられる。めっき層3に用いられる金属としては、上記の金属の中でも特に、形状が制御しやすく耐食性に優れた金属であるため、ニッケルまたはニッケル合金を用いることが好ましい。ニッケル合金としては、ホウ素、リン、亜鉛から選ばれる一種以上の元素を含有するものが挙げられる。
微細構造物5の形状を多面体形状にした場合、濾過体12の内周面(一次面)12aの面積に対する隙間116の面積(内周面を平面視した時の隙間の平面積)の割合を示す開口率Gは、0.02%以上、20%以下にすることが好ましい。
ここで、開口率Gは、互いに隣接する線材111間の隙間116の幅をs、線材111の配列方向に沿った線材111の幅をwと規定した時に、以下の式1で表される。
G=[s/(s+w)]×100・・・(1)
なお、sで示される線材111の隙間116の幅sは、1μm以上、5mm以下にすることが好ましい。
微細構造物5を多面体構造物にした場合に、開口率Gが0.02%未満であると、濾過された処理水の通水量が少なくなり過ぎて、効率的に被濾過液の濾過を行うことが難しくなる。開口率Gを0.02%以上に保つことによって、処理水の通水量を適切に保つことができ、効率的に被濾過液の濾過を行うことができる。一方、開口率Gが20%を超えると、捕捉したSSによるブリッジが形成されにくくなり、ケーク濾過による濾過性能が低下する懸念がある。開口率Gを20%以下に保つことによって、ケーク濾過による濾過性能を高めることができる。
以上、詳細に説明した実施形態の濾過用フィルターユニットの作用を説明する。濾過用フィルターユニット10を用いて、例えばSS粒子を含む被濾過液を濾過して処理水を得る際には、例えば、圧送ポンプを用いて、被濾過液を濾過用フィルターユニット10の流入口33から濾過体12の内側となる空間E2に被濾過液を供給する。
被濾過液は、円筒形の濾過用フィルター11の内部に入ると、濾過用フィルター11の内周面(一次面)12a、即ち線材111の平坦面11aに形成された多数の微細構造物5からなるめっき層3によって、SS粒子が捕捉される。濾過用フィルター11は、複数の微細構造物5を所定の密度で有するものであるため、濾過用フィルター11とSS粒子を含む被濾過液との接触面積が多い。このため、表面濾過および深層濾過の機構によって微細構造物5の表面に付着したSS粒子を起点として、めっき層3の表面の複数の箇所で速やかにSS粒子の凝集物が形成される。
形成された凝集物は、濾過用フィルター11へのSS粒子を含む被濾過液の通過を継続させることにより、成長して剥離し、SS粒子を含む被濾過液とともに隙間116に向かって移動する。隙間116に移動した1つまたは複数の凝集物は、隙間116を塞ぐブリッジ状のケーク7となる。このように、本実施形態では、表面濾過の機構だけでなく、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構も利用して、被濾過液中の小さなSS粒子を除去できる。よって、優れた濾過性能が得られる。
濾過用フィルター11は、図5に示すように、隣接する微細構造物5間に谷53を有している。谷53は、断面視で谷底である基端53aに近づくにつれて幅が狭くなっている。このため、濾過用フィルター11に捕捉されたSS粒子は、谷53の基端53a近傍には入り込みにくい。
したがって、めっき層3の表面にケーク7が形成されている濾過用フィルター11では、図5に示すように、谷53とケーク7とに囲まれた十分な広さの空間Efが形成される。空間Efが形成された後、さらに濾過用フィルター11へのSS粒子を含む被濾過液の通過を継続させても、空間Efの上部はケーク7で形成された蓋が被せられた状態となっているため、SS粒子は空間Ef内に入り込みにくい。したがって、濾過用フィルター11へのSS粒子を含む被濾過液の通過を継続させると、ケーク7上にさらにSS粒子が堆積される。
こうした多数の微細構造物5からなるめっき層3によって、SS粒子を含む被濾過液からSS粒子を効率的に、かつ確実に捕捉して除去することができる。そして、SS粒子が除去された処理水は、線材111どうしの隙間116を通り、濾過用フィルター11の外周面(二次面)12bから流出する。そして、濾過体12の外周面12bと外筒21の内周面21aとの間の空間E1から流出口37を経て濾過用フィルターユニット10の外部に排出される。
このように、実施形態の濾過用フィルターユニット10によれば、線材111をコイル状に巻回させてなる濾過体12は、被濾過液が流入する内周面(一次面)12a側に、例えば針状や多面体の微細構造物5を多数形成することによって、SS粒子を含む被濾過液からSS粒子を効率的に、かつ確実に捕捉して除去することが可能になる。
また、実施形態のように、多数の微細構造物5を、被濾過液が流入する内周面(一次面)12aを構成する線材111の平坦面11fに形成することによって、被濾過液の流入時の内圧が局部的に集中することなく均一に印加される。これによって、内圧に対する濾過体12の耐久性が高められる。また、内圧が局部的に集中することがないので、微細構造物5の損傷や隔離を防止し、効果的にブリッジ状のケーク7を形成できる。
なお、濾過用フィルター11の内部にケークが堆積して通水量が低下した際には、洗浄ノズル35を用いて濾過体12の内周面12aを洗浄することが好ましい。洗浄ノズル35を用いる際には、洗浄液流入口36から洗浄水、例えば処理水の一部を流入させ、洗浄ノズル35の多数の貫通孔(噴射口)から濾過体12の内周面12aに向けて洗浄水を噴射させる。これにより、濾過体12の内周面12aに堆積したケークが剥落し、通水量が回復される。
また、濾過用フィルター11の内部にケークが多量に堆積するなどした場合には、濾過体12の外周面(二次面)12b側から内周面(一次面)12aに向けて通水する逆洗浄を行うことが好ましい。逆洗浄を行う際には、例えば、流入口33から洗浄水、例えば処理水の一部を空間E2に流入させ、濾過体12の外周面12b側から内周面12aに向けて洗浄水を通過させる。これにより、濾過体12の内周面12aに堆積したケークが剥落し、通水量が回復される。逆洗浄に用いた洗浄後の洗浄水は、例えば、流入口33から逆に排出させればよい。
濾過用フィルター11の洗浄や逆洗浄は、濾過用フィルター11が一定量のSS粒子を捕捉した段階で行うことが好ましい。洗浄を行うタイミングは、特に限定されるものではなく、濾過用フィルター11に通過させる被濾過液に含まれるSS粒子の量などに応じて適宜決定できる。
本実施形態では、濾過用フィルター11の逆洗浄を行う際に、断面が三角形の線材111の三角形の頂点側から処理水を流入させるため、圧損を少なくして効率よく堆積したケークを取り除くことができる。即ち、断面が三角形の線材111によって、隙間116は、外周面(二次面)12b側から内周面(一次面)12a側に向けて幅が狭められるので、処理水が隙間116に向かって流れやすく、かつ、内周面(一次面)12a側の隙間116の狭められた部分に存在するケークを早い流速で効率的に除去できる。
本実施形態において、濾過用フィルター11の洗浄や逆洗浄を行うと、空間Efには、各微細構造物5を取り囲むように形成された谷53を介して、多方向から洗浄液が流入する。このことにより、谷53の上部の少なくとも一部を覆うように形成されていたケーク7が、洗浄液に押し上げられて、ケーク7の剥離が促進される。また、濾過用フィルター11の微細構造物5は、基端53aから先端52に向けて先細りの形状を有している。
このため、洗浄液に押し上げられたケーク7は、濾過用フィルター11から容易に剥離される。また、微細構造物5が先細りの形状を有しているので、微細構造物5に付着しているSS粒子が逆洗時に谷53に挟まりにくく、微細構造物5から容易に剥離される。したがって、濾過体12に堆積したSS粒子が速やかに除去され、濾過体12が再生される。
図10は、濾過用フィルターの別な実施形態を示す平面図である。
この実施形態の濾過用フィルター210は、全体が略円筒形を成し、例えば、この円筒の中心軸が鉛直方向に沿うように配置される。濾過用フィルター210は、線材211を面状に配列させた濾過体212と、この濾過体212を支持する支持部材213と、を備えている。この実施形態の濾過用フィルター210では、濾過体212は、長尺の線材211をコイル状に巻回させ、中空の筒状体に成形させたものからなる。このように成形した線材211によって、円筒面をもつ濾過体212が形成される。実施形態の線材211は、延伸方向に対して直角な断面形状が矩形を成している。
線材211は、互いに隣接する線材どうしの間、即ち、実施形態では隣接する周回線材211どうしの間を所定幅の隙間を保って離間させる離間部215が形成されている。離間部215は、例えば、線材211の周回方向に沿って、例えば、120°の角度で1周回ごとに3か所形成されている。
このような線材211に形成した離間部215によって、円筒形の濾過体212は、その内周面212aと外周面212bとの間を貫通するスリット状の隙間216が形成される。
実施形態では、濾過体212は、内周面212aが被濾過液が流入する一次面とされ、外周面212bが、濾過体12によって濾過された処理水が流出する二次面とされる。
支持部材213は、例えば、断面が矩形や三角形の線材からなり、濾過体212の外周面212b側で線材211に接合されている。支持部材13は、例えば線材211の周回方向に沿って等間隔に3か所形成され、濾過体212の中心軸に対して平行に延び、巻回された線材211を外周面212b側から支持している。こうした支持部材213と線材211とは、例えば、焼結によって接合されている。
このような構成の濾過用フィルター210は、略円筒形の濾過体212の内部に被濾過液を流入させ、隙間216を通過させて被濾過液の濾過を行い、濾過体212の外周面212bから濾過後の処理水を流出させる。
図11は、図10に示す濾過体の内周面側を示す要部拡大断面図である。
濾過用フィルター210を構成する濾過体212のうち、被濾過液が流入する内周面(一次面)212a側、および隙間216の内表面には、複数(多数)の微細構造物5が形成されている。こうした微細構造物5は、図6に示す錐台形、楕円錐形、多角錐形、円錐台形、楕円錐台形、多角錐台形などの錐形や錐台形の形状や、図8,9に示す多面体形状をもつ構造物から構成される。
図12は、離間部を形成した線材を示す模式図である。
微細構造物5の形状を、円錐台形、楕円錐形、多角錐形、円錐台形、楕円錐台形、多角錐台形などの錐形や錐台形にした場合、濾過体212の内周面(一次面)212aの面積に対する隙間16の面積(内周面を平面視した時の隙間の平面積)の割合を示す空隙率Gは、0.5%以上、50%以下にすることが好ましい。
ここで、空隙率Gは、互いに隣接する離間部215どうしの間隔をa、線材211の延伸方向に沿った離間部215の幅をb、互いに隣接する線材211間の隙間216の幅をc、線材211の配列方向に沿った線材211の厚みをdと規定した時に、以下の式2で表される。
G=[(a×c)/{(a+b)×(c+d)}]×100・・・(2)
なお、cで示される線材211の隙間216の幅は、即ち、線材211の配列方向に沿った離間部215の突出幅と同義である。こうした隙間216の幅は、5μm以上、1mm以下にすることが好ましい。
微細構造物5を錐形や錐台形、例えば針状構造物にした場合に、空隙率Gが0.5%未満であると、濾過された処理水の通水量が少なくなり過ぎて、効率的に被濾過液の濾過を行うことが難しくなる。空隙率Gを0.5%以上に保つことによって、処理水の通水量を適切に保つことができ、効率的に被濾過液の濾過を行うことができる。一方、空隙率Gが50%を超えると、捕捉したSSによるブリッジが形成されにくくなり、ケーク濾過による濾過性能が低下する懸念がある。空隙率Gを50%以下に保つことによって、ケーク濾過による濾過性能を高めることができる。
微細構造物5の形状を多面体形状にした場合、濾過体212の内周面(一次面)212aの面積に対する隙間216の面積(内周面を平面視した時の隙間の平面積)の割合を示す空隙率Gは、0.1%以上、50%以下にすることが好ましい。
ここで、空隙率Gは、互いに隣接する離間部215どうしの間隔をa、線材211の延伸方向に沿った離間部215の幅をb、互いに隣接する線材211間の隙間216の幅をc、線材211の配列方向に沿った線材211の厚みをdと規定した時に、以下の式2で表される。
G=[(a×c)/{(a+b)×(c+d)}]×100・・・(2)
なお、cで示される隙間211の隙間216の幅は、即ち、線材211の配列方向に沿った離間部215の突出幅と同義である。こうした隙間216の幅は、1μm以上、1mm以下にすることが好ましい。
微細構造物5を多面体構造物にした場合に、空隙率Gが0.1%未満であると、濾過された処理水の通水量が少なくなり過ぎて、効率的に被濾過液の濾過を行うことが難しくなる。空隙率Gを0.1%以上に保つことによって、処理水の通水量を適切に保つことができ、効率的に被濾過液の濾過を行うことができる。一方、空隙率Gが50%を超えると、捕捉したSSによるブリッジが形成されにくくなり、ケーク濾過による濾過性能が低下する懸念がある。空隙率Gを50%以下に保つことによって、ケーク濾過による濾過性能を高めることができる。
図13は、濾過用フィルターの別な実施形態を示す断面図である。また、図14は、図12に示す濾過体の厚み方向に沿った断面を示す断面図である。
濾過用フィルター310は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔313,313…を形成してなる円筒形の基材311、およびこの基材311のうち少なくとも被濾過液が流入する一次面(流入面)311a側に形成された複数の微細構造物5と備えた濾過体312と、この濾過体312の外周面311bに接合され、濾過体312を支持する支持部材318から構成されている。本実施形態では、微細構造物5は、被濾過液が流入する内周面(一次面)311a、被濾過液が流出する外周面(二次面)311b、および貫通孔313の内壁面を覆うように形成されている。
基材311は、例えば、金属板を円筒形に丸めたものから構成され、具体的には、SUS板、アルミニウム板やアルミニウム合金板、銅板や銅合金板、亜鉛板などを用いることができる。
貫通孔313,313…は、基材311の内周面(一次面)311aと外周面(二次面)311bとを結ぶ円筒形の孔である。個々の貫通孔313は、その直径が内周面311a側から外周面311b側まで均一であっても、内周面311a側と外周面311b側とで直径が異なるような形状の孔であってもよい。
本実施形態では、貫通孔313は、内周面311aに沿った平面形状が円形を成している。そして、こうした貫通孔313,313…は、内周面311aに沿って等間隔に配列されている。なお、貫通孔313,313…を千鳥配列となるように形成してもよい。
このような構成の濾過フィルター310は、内周面311a側から被濾過液を流入させ、貫通孔313を通過させて被濾過液の濾過を行い、外周面311b側から濾過後の処理水を流出させる。
濾過体312に形成される微細構造物5は、図6に示す錐台形、楕円錐形、多角錐形、円錐台形、楕円錐台形、多角錐台形などの錐形や錐台形の形状や、図8,9に示す多面体形状をもつ構造物から構成される。
濾過用フィルター310を構成する濾過体312における内周面311a側を平面視した場合に、内周面311a全体の平面積に対する貫通孔313の開口面の面積の合計の割合である開口率は0.05%以上、30%以下にすることが好ましい。また、個々の貫通孔313の直径(貫通孔の断面形状が円形の場合)、あるいは内接円の直径(貫通孔の断面形状が多角形の場合)は、1μm以上、5mm以下にすることが好ましい。
微細構造物5を錐形や錐台形、例えば針状構造物にした場合に、開口率Gが0.05%未満であると、濾過された処理水の通水量が少なくなり過ぎて、効率的に被濾過液の濾過を行うことが難しくなる。開口率Gを0.05%以上に保つことによって、処理水の通水量を適切に保つことができ、効率的に被濾過液の濾過を行うことができる。一方、開口率Gが30%を超えると、捕捉したSSによるブリッジが形成されにくくなり、ケーク濾過による濾過性能が低下する懸念がある。開口率Gを30%以下に保つことによって、ケーク濾過による濾過性能を高めることができる。
なお、本実施形態では、例えば、基材311を構成する金属板として被濾過液の液圧に耐えうる十分な厚みのものを用いれば、支持部材31を特に設けなくてもよい。
図15は、濾過用フィルターの別な実施形態を示す断面図である。また、図16は、図15に示す濾過体の要部拡大平面図である。
濾過用フィルター410は、円筒形を成す基材416、およびこの基材416の表面に形成した微細構造物5からなる濾過体413と、この濾過体413の外周面413bに接合され、濾過体413を支持する支持部材417から構成されている。
基材416は、例えば、金属からなる線材412が綾織された金網で構成されている。基材416は、線材412が綾織されて網目状となっており、線材412同士が交差する部分に線材412が重なり合うことで隙間が形成され、この隙間が複数の貫通孔418となる。貫通孔418の長径は、0.5μm〜20μmの範囲が好ましく、1μm〜10μmの範囲がより好ましい。貫通孔418の長径が0.5μm以上であると、適切な濾過流量が確保されやすくなる。貫通孔418の長径が20μm以下であれば、不純物、例えば金属化合物を容易に捕捉できる。
図1、図2に示す実施形態では、内圧型の濾過用フィルターユニットを例示したが、濾過用フィルターユニットは外圧型にすることもできる。
図17は、別な実施形態の濾過用フィルターユニットの長手方向に沿った断面図である。また、図18は、この濾過用フィルターユニットを一方の端面側から見た時の断面図である。
濾過用フィルターユニット70は、筒状に形成された濾過体72、およびこの濾過体72の内周面72aに接して支持する支持部材73からなる濾過用フィルター71と、内部に濾過体72を収容する筒状の外装体80とを備えている。
外装体80は、一端および他端が開放面を成す中空円筒形の外筒81と、この外筒81の一方の開放面および他方の開放面をそれぞれ覆う蓋体82,83とから構成されている。外筒81は、濾過体82の外径よりも充分に大きく形成され、外筒81の内周面81aと濾過体72の外周面72bとの間には、例えば、被濾過液を流入させる所定の空間E3が保たれる。
外装体80を構成する蓋体82,83には、外筒81の端部を挿入可能な係止溝84,85と、濾過体72の端部を挿入可能な係止溝86,87とが、それぞれ形成されている。また、これら係止溝84,85,86,87には、それぞれ水密用のパッキン(Oリング)89が配されている。
蓋体82には、被濾過液を空間E3に導入する流入口93が形成されている。蓋体83には、濾過体72によって濾過された処理水を排出する流出口97が形成されている。また、蓋体83には、濾過体82の逆洗浄時に洗浄液を排出させる流出口98が形成されている。蓋体82に形成された流入口93と、蓋体83に形成された流出口98とは、外筒81の中心軸に対して互いに対角上に形成されている。
支持部材73は、例えば、矩形の部材の四隅に線状の部材を接合したものからなり、濾過体72の内周面72aに接合されて、内側から濾過体72を支持して、外周面72bに掛かる水圧によって濾過体72が変形することを防止する。
蓋体82と蓋体83との間には、締結部材99が形成されている。締結部材99は、一端側および他端側にそれぞれネジ溝が形成された棒状の部材と、このネジ溝に係合するナットとから構成される。本実施形態では、外筒81の外側を取り巻くように6本の締結部材99が等間隔に配される。こうした締結部材99によって、蓋体82と蓋体83とは、互いに接近する方向に締め付けられ、外筒81の端部や濾過体72の端部がパッキン(Oリング)89に密着する。
こうした構成の本実施形態の濾過用フィルターユニット70は、外圧型のフィルターユニットとされる。即ち、被濾過液が流入口93から外筒81の内周面81aと濾過体72の外周面72bとの間の空間E3に導入される。そして被濾過液が濾過体72の一次面を成す外周面72bから、二次面を成す内周面72aに向けて通過する際に濾過が行われる。濾過によって得られた処理水は、濾過体72の内部の空間E4から流出口97を経て濾過用フィルターユニット70の外部に流出される。
なお、濾過用フィルター71の内部にケークが堆積して通水量が低下した際には、濾過体72の内周面(二次面)72a側から外周面(一次面)72bに向けて洗浄水を通水する逆洗浄を行うことが好ましい。逆洗浄を行う際には、例えば、流出口97から洗浄水、例えば処理水の一部を空間E4に流入させ、濾過体72の内周面72a側から外周面72bに向けて洗浄水を通過させる。これにより、濾過体72の外周面72bに堆積したケークが剥落し、通水量が回復される。逆洗浄に用いた洗浄後の洗浄水は、例えば、流出口98から排出させればよい。
濾過用フィルターユニット70を構成する濾過体72は、例えば、図3、図10、図 13、図15にそれぞれ示す構成の濾過体を適用することができる。例えば、図3に示す濾過体を適用する場合、外圧型に対応するために、図19に示すように、濾過体72のうち、被濾過液が流入する外周面(一次面)72b側、および隙間76の内表面に、複数(多数)の微細構造物5を形成している。こうした微細構造物5は、例えば、図6に示す針状構造物や、図8、図9に示す多面体構造物等であればよい。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を利用して被濾過液中のSS粒子を捕捉でき、さらにケーク濾過へ移行しても濾過流量を保持できる濾過用フィルターユニットを提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
(実施例1)
幅5000μmの線材を支持部材の上に並行になるよう固定し、線材間の幅を20μmとなるようにして濾過用フィルターのスクリーンを作製した。このスクリーンをニッケル−リンメッキをおこない下地層を形成した後、非特許文献1に示すようにethylenediamine dihydrochloride(EDA)存在下でのメッキによって、針状の微細構造物5を表面に形成して濾過用フィルターを得た。この時の線材間の隙間の幅は10μmであり、メッキ後の線材の幅は5005μmであった。この時の開孔率は13%であった。
(非特許文献1)Tao Hang, Ming Li, Qin Fei and Dali Mao, Characterization of nickel nanocones routed by electrodeposition without any template, Nanotechnology, 19 (2008) 035201 (5pp)
得られた濾過用フィルターのメッキ層(微細構造物)の表層をSEM観察したところ、4μm2(2μm×2μm)の範囲に16個〜19個の針状構造物があった(図6参照)。
またこのメッキ層を埋め込み樹脂で固定した後、切断して断面観察を行ったところ、10μmあたりの平均針状構造物数は20個、針状構造物平均高さは750nm、変動係数は0.28であった。また針状構造物の平均幅は550nmであり、アスペクト比(高さ/幅)は1.36であった。
次に、図1に示す濾過用フィルターユニットを用意した。上述したように作製した濾過用フィルターを用いて、粒径が0.1μmのアルミナを100mg/L含有するスラリーを0.1MPaの圧力で定圧濾過したところ、透明な処理水(濾過水)が得られ、濾過を行うことができた。濾過後の濾過体を濾過ケーク(アルミナ層)ごと埋め込み樹脂で固定し断面を観察したところ、ケーク層と濾過フィルターの間に、凹凸に起因する隙間が観察された。
次にこの濾過フィルターの処理水側(二次面側)から0.1Mpaの圧力で洗浄水を送り、ケーク層の洗浄を行ったところ、隙間近傍のケークはきれいに剥離していて表面の凹凸が復元されていた。再度この濾過フィルターで濾過を行ったところ、一回目の濾過と同様の濾過性能を発揮している事が確認された。
(実施例2)
実施例1と同様に、幅5000μmの線材を支持部材の上に並行になるよう固定し、線材間の幅を20μmとなるようにして濾過用フィルターのスクリーンを作製した。このスクリーンをニッケル−リンメッキをおこない下地層を形成した後、非特許文献2に示すように添加剤として2−ブチン−1,4−ジオールを添加して、無電解ニッケルめっき処理を行い多面体状の微細構造物を表面に形成して濾過用フィルターを得た。この時のメッキ後の線材間の隙間の幅は3μmであり、メッキ後の線材の幅は5008.5μmであった。この時の開孔率は13%であった。
(非特許文献2)S.Chakraborty,Role of organic additives in nickel plating,Transactions of the Metal Finishers' Association of india,Vol.12,No.3-4(2003)
得られた濾過用フィルターのメッキ層(微細構造物)の表層をSEM観察したところ、平均最大外形寸法は4μmであった。この濾過用フィルター11を用いて図1の濾過用フィルターユニットを構成し、この濾過用フィルターユニットを用いて粒径が0.1μmのアルミナを100mg/L含有するスラリーを0.1MPaの圧力で定圧ろ過したところ、透明な処理水が得られ、濾過を行うことができた。この濾過後の濾過体を濾過ケーク(アルミナ層)ごと埋め込み樹脂で固定し断面を観察したところ、ケーク層とフィルターの間に、凹凸に起因する隙間が観察された。
次にこの濾過用フィルターの二次側から0.1MPaの圧力をかけて逆洗浄水を送り、ケーク層の逆洗浄を行ったところ、隙間の近傍のケークはきれいに剥離していて表面の凹凸が戻っていた。再度この濾過フィルターで濾過を行ったところ、一回目の濾過と同様の濾過性能を発揮している事が確認された。