JP6511531B2 - 磁気抵抗効果デバイス - Google Patents

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Description

本発明は、磁気抵抗効果素子を利用した磁気抵抗効果デバイスに関するものである。
近年、携帯電話等の移動通信端末の高機能化に伴い、無線通信の高速化が進められている。通信速度は使用する周波数帯に比例するため、通信に必要な周波数帯は拡大し、それに伴って、移動通信端末に必要な高周波フィルタの搭載数も増加している。また、近年新しい高周波用部品に応用できる可能性のある分野として研究されているのがスピントロニクスであり、その中で注目されている特有の現象の一つが、スペーサ層を介して磁化固定層と磁化自由層を備えた磁気抵抗効果素子によるスピントルク共鳴効果である(非特許文献1参照)。この構造の磁気抵抗効果素子に交流電流を流すことで、磁気抵抗効果素子にスピントルク共鳴を起こすことができ、スピントルク共鳴周波数に対応した周波数で周期的に磁気抵抗効果素子の抵抗値が振動する。磁気抵抗効果素子に印加される磁場の強さによって、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数は変化し、一般的にその共鳴周波数は数〜数十GHzの高周波帯域である。
Nature、Vol.438、No.7066、pp.339−342、17 November 2005
磁気抵抗効果素子は、スピントルク共鳴効果を利用して高周波デバイスに応用することが考えられるが、高周波フィルタに応用するための構成は従来示されていない。本発明は、磁気抵抗効果素子を利用した高周波フィルタを実現できる磁気抵抗効果デバイスを提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、磁化固定層、スペーサ層および磁化の方向が変化可能である磁化自由層を有する磁気抵抗効果素子と、高周波信号が入力される第1のポートと、高周波信号が出力される第2のポートと、信号線路と、直流電流入力端子と、コンデンサとを有し、前記第1のポートおよび前記第2のポートが前記信号線路を介して接続され、前記磁気抵抗効果素子は、前記第2のポートに対して並列に、前記信号線路およびグラウンドに接続され、前記直流電流入力端子は前記信号線路に接続され、前記磁気抵抗効果素子、前記信号線路、前記グラウンドおよび前記直流電流入力端子を含む閉回路が形成され、前記磁気抵抗効果素子は、前記直流電流入力端子から入力される直流電流が、前記磁気抵抗効果素子の中を前記磁化固定層から前記磁化自由層の方向に流れるように配置され、前記コンデンサは、前記閉回路と前記第1のポートとの間および前記閉回路と前記第2のポートとの間の少なくとも一方に、前記信号線路を介して前記第1のポートおよび前記第2のポートと直列に接続されることを第1の特徴とする。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスによれば、磁気抵抗効果素子に第1のポートから信号線路を介して高周波信号が入力されることにより、磁気抵抗効果素子にスピントルク共鳴を誘起させることが出来る。このスピントルク共鳴と同時に、磁気抵抗効果素子の中を磁化固定層から磁化自由層の方向に直流電流が流れることにより、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数に対する素子インピーダンスが増加する。磁気抵抗効果素子は、第2のポートに対して並列に、信号線路およびグラウンドに接続されているので、第1のポートから入力された高周波信号のうち磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の高周波信号は、磁気抵抗効果素子に流れにくくなり、第2のポートには流れやすくなる。このように、第1のポートから入力された高周波信号を、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数では、第2のポートに対して通過させることが出来る。つまり、上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、高周波フィルタとしての周波数特性をもつことが可能となる。
また、直流電流入力端子から入力された直流電流は、磁気抵抗効果素子、信号線路、グラウンドおよび直流電流入力端子を含んで形成される閉回路を流れる。この閉回路により、磁気抵抗効果素子に効率的に直流電流を印加することが出来る。磁気抵抗効果素子はこの直流電流が印加されることにより、磁気抵抗効果素子の素子インピーダンスの変化量が増加するため、上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、遮断特性と通過特性のレンジが大きな高周波フィルタとして機能することが可能となる。
また、信号線路を介して第1のポートおよび第2のポートと直列に接続されたコンデンサは、直流電流入力端子から印加された直流電流の第1のポートまたは第2のポートへの流出を阻止することができるため、第1のポートまたは第2のポートに他の電子回路が接続された場合に、他の電子回路への直流電流の混入を防ぐことが可能となる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、前記磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を設定可能な周波数設定機構を有することを第2の特徴とする。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を任意の周波数にすることができるため、上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、任意の周波数帯のフィルタとして機能することが可能となる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、前記周波数設定機構は、前記磁化自由層における有効磁場を設定可能な有効磁場設定機構であり、前記有効磁場を変化させて前記磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を変化可能であることを第3の特徴とする。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスによれば、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を可変制御することができるため、上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、周波数可変フィルタとして機能することが可能となる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、スピントルク共鳴周波数が互いに異なる複数の前記磁気抵抗効果素子同士が並列接続されていることを第4の特徴とする。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスによれば、互いにスピントルク周波数の異なる複数の磁気抵抗効果素子同士が並列接続されているので、ある幅を持った通過周波数帯域を設けることができる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、複数の前記磁気抵抗効果素子同士が並列接続され、前記複数の磁気抵抗効果素子の各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に前記周波数設定機構を複数有することを第5の特徴とする。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスによれば、複数の磁気抵抗効果素子の各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に周波数設定機構を複数有しているため、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を個別に制御することが可能となる。さらに、複数の磁気抵抗効果素子同士が並列接続されているので、ある幅を持った通過周波数帯域を設けることができる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、スピントルク共鳴周波数が互いに異なる複数の前記磁気抵抗効果素子同士が直列接続されていることを第6の特徴とする。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスによれば、スピントルク共鳴周波数が互いに異なる複数の磁気抵抗効果素子同士が直列接続されているので、ある幅を持った通過周波数帯域を設けることができる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、複数の前記磁気抵抗効果素子同士が直列接続され、前記複数の磁気抵抗効果素子の各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に前記周波数設定機構を複数有することを第7の特徴とする。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスによれば、複数の磁気抵抗効果素子の各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に周波数設定機構を複数有しているため、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を個別に制御することが可能となる。さらに、複数の磁気抵抗効果素子同士が直列接続されているので、ある幅を持った通過周波数帯域を設けることができる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、スピントルク共鳴周波数が互いに異なる前記複数の磁気抵抗効果素子は、平面視形状のアスペクト比が互いに異なることを第8の特徴とする。ここで、「平面視形状」とは、磁気抵抗効果素子を構成する各層の積層方向に垂直な平面で見た形状のことである。また、「平面視形状のアスペクト比」とは、磁気抵抗効果素子の平面視形状に最小の面積で外接する長方形の、短辺の長さに対する長辺の長さの比率のことである。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスによれば、スピントルク共鳴周波数が互いに異なる複数の磁気抵抗効果素子は、平面視形状のアスペクト比が互いに異なるため、同一プロセスでスピントルク共鳴周波数が互いに異なる複数の磁気抵抗効果素子を作製することが可能となる。即ち、複数の磁気抵抗効果素子の膜構成を同じにすることができるため、複数の磁気抵抗効果素子を構成する層を一括で成膜形成することができる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、前記信号線路を介して前記第1のポートおよび前記第2のポートと直列に接続された磁気抵抗効果素子が存在しないことを第9の特徴とする。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスによれば、信号線路を介して第1のポートおよび第2のポートと直列に接続された磁気抵抗効果素子が存在しないため、信号線路を介して第1のポートおよび第2のポートと直列に接続された磁気抵抗効果素子による損失に起因した、通過特性の悪化を防ぐことができる。このことにより、上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、通過周波数帯域での通過特性がよい高周波フィルタとして機能することが可能となる。
本発明によれば、磁気抵抗効果素子を利用した高周波フィルタを実現できる磁気抵抗効果デバイスを提供することができる。
第1の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの構成を示した断面模式図である。 第1の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの周波数と減衰量との関係を示したグラフである。 第1の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの周波数と減衰量との関係を示したグラフである。 第2の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの構成を示した断面模式図である。 第2の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの周波数と減衰量との関係を示したグラフである。 第3の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの構成を示した断面模式図である。 第3の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの上面図である。 第3の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの周波数と減衰量との関係を示したグラフである。 第4の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの構成を示した断面模式図である。 第4の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの周波数と減衰量との関係を示したグラフである。 第5の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの構成を示した断面模式図である。 第5の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの上面図である。 第5の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの周波数と減衰量との関係を示したグラフである。
本発明を実施するための好適な形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイス100の断面模式図である。磁気抵抗効果デバイス100は、磁化固定層102、スペーサ層103および磁化自由層104を有する磁気抵抗効果素子101、上部電極105、下部電極106、信号線路107、第1のポート109a、第2のポート109b、直流電流入力端子110、コンデンサ111および周波数設定機構としての磁場供給機構112を有している。第1のポート109aおよび第2のポート109bが信号線路107を介して接続され、磁気抵抗効果素子101は、第2のポート109bに対して並列に、信号線路107およびグラウンド108に接続されている。直流電流入力端子110は信号線路107に接続され、直流電流入力端子110にグラウンド108に接続された直流電流源113が接続されることにより、磁気抵抗効果素子101、信号線路107、グラウンド108および直流電流入力端子110を含む閉回路114が形成される。また、コンデンサ111は、閉回路114と第1のポート109aとの間および閉回路114と第2のポート109bとの間に、信号線路107を介して第1のポート109aおよび第2のポート109bと直列に接続されている。また、磁気抵抗効果デバイス100には、信号線路107を介して第1のポート109aおよび第2のポート109bと直列に接続された磁気抵抗効果素子が存在しない。
第1のポート109aは交流信号である高周波信号が入力される入力ポートであり、第2のポート109bは高周波信号が出力される出力ポートである。信号線路107は、上部電極105を介して磁気抵抗効果素子101に電気的に接続されており、第1のポート109aから入力された高周波信号の一部が磁気抵抗効果素子101に入力され、一部が第2のポート109bに出力される。また、高周波信号が第1のポート109aから第2のポート109bに通過する際の電力比(出力電力/入力電力)のdB値である減衰量(S21)は、ネットワークアナライザなどの高周波測定器により測定することが出来る。
上部電極105および下部電極106は、一対の電極としての役目を有し、磁気抵抗効果素子101を構成する各層の積層方向に磁気抵抗効果素子101を介して配設されている。つまり、上部電極105および下部電極106は、信号(電流)を磁気抵抗効果素子101に対して、磁気抵抗効果素子101を構成する各層の面と交差する方向、例えば、磁気抵抗効果素子101を構成する各層の面に対して垂直な方向(積層方向)に流すための一対の電極としての機能を有している。上部電極105および下部電極106は、Ta、Cu、Au、AuCu、Ru、もしくはこれらの材料のいずれか2つ以上の膜で構成されることが好ましい。磁気抵抗効果素子101は、一端(磁化固定層102側)が上部電極105を介して信号線路107に電気的に接続され、他端(磁化自由層104側)が下部電極106を介してグラウンド108に電気的に接続されている。
また、グラウンド108は基準電位として機能する。信号線路107とグラウンド108との形状は、マイクロストリップライン(MSL)型やコプレーナウェーブガイド(CPW)型に規定することが好ましい。マイクロストリップライン形状やコプレーナウェーブガイド形状を設計する際、信号線路107の特性インピーダンスと回路系のインピーダンスが等しくなるように信号線路107の信号線幅やグラウンド間距離を設計することにより、信号線路107を伝送損失の少ない伝送線路とすることが可能となる。
直流電流入力端子110は、信号線路107に接続されている。直流電流入力端子110に直流電流源113が接続されることで、磁気抵抗効果素子101に直流電流を印加することが可能になる。磁気抵抗効果素子101は、直流電流入力端子110から入力される直流電流が、磁気抵抗効果素子101の中を磁化固定層102から磁化自由層104の方向に流れるように配置されている。また、直流電流入力端子110と直流電流源113の間には、高周波信号をカットするためのチョークコイル(インダクタ)または抵抗素子が直列に接続されてもよい。
直流電流源113は、グラウンド108及び直流電流入力端子110に接続され、直流電流入力端子110から、磁気抵抗効果素子101、信号線路107、グラウンド108および直流電流入力端子110を含む閉回路114に、直流電流を印加する。直流電流源113は、例えば、可変抵抗と直流電圧源との組み合わせの回路により構成され、直流電流の電流値を変化可能に構成されている。直流電流源113は、一定の直流電流を発生可能な、固定抵抗と直流電圧源との組み合わせの回路により構成されてもよい。
コンデンサ111は、直流電流をカットすると同時に、高周波電流を通す機能を有する。コンデンサ111は、チップコンデンサまたはパターン線路によるコンデンサのどちらでもよい。コンデンサ111の容量値は1μF以上であることが好ましい。このコンデンサ111により、磁気抵抗効果デバイス100に第1のポート109aもしくは第2のポート109bを介して接続されている他の電子回路に直流電流源113からの直流電流が漏洩することを防止し、磁気抵抗効果素子101に効率的に直流電流を印加することができる。また、コンデンサ111により、他の電子回路から漏洩した不要な直流電流から磁気抵抗効果素子101を保護することもできる。
磁場供給機構112は、磁気抵抗効果素子101の近傍に配設され、磁気抵抗効果素子101に磁場を印加して、磁気抵抗効果素子101のスピントルク共鳴周波数を設定可能となっている。例えば、磁場供給機構112は、電圧もしくは電流のいずれかにより、印加磁場強度を可変制御できる電磁石型あるいはストリップライン型で構成される。また、磁場供給機構112は、電磁石型あるいはストリップライン型と一定の磁場のみを供給する永久磁石との組み合わせにより構成されていてもよい。また、磁場供給機構112は、磁気抵抗効果素子101に印加する磁場を変化させることで、磁化自由層104における有効磁場を変化させて磁気抵抗効果素子101のスピントルク共鳴周波数を変化可能となっている。
磁化固定層102は、強磁性体材料で構成されており、その磁化方向が実質的に一方向に固定されている。磁化固定層102は、Fe、Co、Ni、NiとFeの合金、FeとCoの合金、またはFeとCoとBの合金などの高スピン分極率材料から構成されることが好ましい。これにより、高い磁気抵抗変化率を得ることができる。また、磁化固定層102は、ホイスラー合金で構成されても良い。また、磁化固定層102の膜厚は、1〜10nmとすることが好ましい。また、磁化固定層102の磁化を固定するために磁化固定層102に接するように反強磁性層を付加してもよい。或いは、結晶構造、形状などに起因する磁気異方性を利用して磁化固定層102の磁化を固定してもよい。反強磁性層には、FeO、CoO、NiO、CuFeS、IrMn、FeMn、PtMn、CrまたはMnなどを用いることが出来る。
スペーサ層103は、磁化固定層102と磁化自由層104の間に配置され、磁化固定層102の磁化と磁化自由層104の磁化が相互作用して磁気抵抗効果が得られる。スペーサ層103としては、導電体、絶縁体、半導体によって構成される層、もしくは、絶縁体中に導体によって構成される通電点を含む層で構成される。
スペーサ層103として非磁性導電材料を適用する場合、材料としてはCu、Ag、AuまたはRuなどが挙げられ、磁気抵抗効果素子101には巨大磁気抵抗(GMR)効果が発現する。GMR効果を利用する場合、スペーサ層103の膜厚は、0.5〜3.0nm程度とすることが好ましい。
スペーサ層103として非磁性絶縁材料を適用する場合、材料としてはAlまたはMgOなどが挙げられ、磁気抵抗効果素子1aにはトンネル磁気抵抗(TMR)効果が発現する。磁化固定層102と磁化自由層104との間にコヒーレントトンネル効果が発現するように、スペーサ層103の膜厚を調整することで高い磁気抵抗変化率が得られる。TMR効果を利用する場合、スペーサ層103の膜厚は、0.5〜3.0nm程度とすることが好ましい。
スペーサ層103として非磁性半導体材料を適用する場合、材料としてはZnO、In、SnO、ITO、GaOまたはGaなどが挙げられ、スペーサ層103の膜厚は1.0〜4.0nm程度とすることが好ましい。
スペーサ層103として非磁性絶縁体中の導体によって構成される通電点を含む層を適用する場合、AlまたはMgOによって構成される非磁性絶縁体中に、CoFe、CoFeB、CoFeSi、CoMnGe、CoMnSi、CoMnAl、Fe、Co、Au、Cu、AlまたはMgなどの導体によって構成される通電点を含む構造とすることが好ましい。この場合、スペーサ層103の膜厚は、0.5〜2.0nm程度とすることが好ましい。
磁化自由層104は、外部印加磁場もしくはスピン偏極電子によってその磁化の方向が変化可能であり、強磁性材料で構成されている。磁化自由層104は、膜面内方向に磁化容易軸を有する材料の場合、材料としてはCoFe、CoFeB、CoFeSi、CoMnGe、CoMnSiまたはCoMnAlなどが挙げられ、厚さは1〜10nm程度とすることが好ましい。磁化自由層104は、膜面法線方向に磁化容易軸を有する材料の場合、材料としてはCo、CoCr系合金、Co多層膜、CoCrPt系合金、FePt系合金、希土類を含むSmCo系合金またはTbFeCo合金などが挙げられる。また、磁化自由層104は、ホイスラー合金で構成されても良い。また、磁化自由層104とスペーサ層103との間に、高スピン分極率材料を挿入しても良い。これによって、高い磁気抵抗変化率を得ることが可能となる。高スピン分極率材料としては、CoFe合金またはCoFeB合金などが挙げられる。CoFe合金またはCoFeB合金いずれの膜厚も0.2〜1.0nm程度とすることが好ましい。
また、上部電極105と磁気抵抗効果素子101との間、および下部電極106と磁気抵抗効果素子101との間にキャップ層、シード層またはバッファー層を配設しても良い。キャップ層、シード層またはバッファー層としては、Ru、Ta、Cu、Crまたはこれらの積層膜などが挙げられ、これらの層の膜厚は2〜10nm程度とすることが好ましい。
尚、磁気抵抗効果素子101の大きさは、磁気抵抗効果素子101の平面視形状が長方形(正方形を含む)の場合、長辺を100nm程度、或いは100nm以下にすることが望ましい。また、磁気抵抗効果素子101の平面視形状が長方形ではない場合は、磁気抵抗効果素子101の平面視形状に最小の面積で外接する長方形の長辺を、磁気抵抗効果素子101の長辺と定義する。長辺が100nm程度と小さい場合、磁化自由層104の磁区の単磁区化が可能となり、高感度のスピントルク共鳴現象の実現が可能となる。ここで、「平面視形状」とは、磁気抵抗効果素子を構成する各層の積層方向に垂直な平面で見た形状のことである。
ここで、スピントルク共鳴現象について説明する。
磁気抵抗効果素子101に、磁気抵抗効果素子101の固有のスピントルク共鳴周波数と同じ周波数の高周波信号を入力すると、磁化自由層104の磁化がスピントルク共鳴周波数で振動する。この現象をスピントルク共鳴現象と呼ぶ。磁気抵抗効果素子101の素子抵抗値は、磁化固定層102と磁化自由層104との磁化の相対角で決まる。そのため、スピントルク共鳴時の磁気抵抗効果素子101の抵抗値は、磁化自由層104の磁化の振動に伴い、周期的に変化する。つまり、磁気抵抗効果素子101は、スピントルク共鳴周波数で抵抗値が周期的に変化する抵抗振動素子として取り扱うことが出来る。さらに、磁気抵抗効果素子101の中を磁化固定層102から磁化自由層104の方向に流れる直流電流を磁気抵抗効果素子101に印加しながら、磁気抵抗効果素子101にスピントルク共鳴周波数と同じ周波数の高周波信号を入力すると、磁気抵抗効果素子101は、入力された高周波信号とは位相が180°異なる状態で、スピントルク共鳴周波数で抵抗値が周期的に変化し、この高周波信号に対するインピーダンスは増加する。つまり、磁気抵抗効果素子101は、スピントルク共鳴現象により、スピントルク共鳴周波数で高周波信号のインピーダンスが増加する抵抗素子として取り扱うことが出来る。
スピントルク共鳴周波数は、磁化自由層104における有効磁場によって変化する。磁化自由層104における有効磁場Heffは、磁化自由層104に印加される外部磁場H、磁化自由層104における異方性磁場H、磁化自由層104における反磁場H、磁化自由層104における交換結合磁場HEXを用いて、
eff=H+H+H+HEX
で表される。磁場供給機構112は、磁気抵抗効果素子101に磁場を印加して磁化自由層104に外部磁場Hを印加することにより、磁化自由層104における有効磁場Heffを設定可能な有効磁場設定機構である。有効磁場設定機構である磁場供給機構112は、磁気抵抗効果素子101に印加する磁場を変化させることで、磁化自由層104における有効磁場を変化させて磁気抵抗効果素子101のスピントルク共鳴周波数を変化させることができる。このように、磁気抵抗効果素子101に印加される磁場を変化させると、スピントルク共鳴周波数は変化する。
また、スピントルク共鳴時に磁気抵抗効果素子101に直流電流が印加されることにより、スピントルクが増加して、振動する抵抗値の振幅が増加する。振動する抵抗値の振幅が増加することにより、磁気抵抗効果素子101の素子インピーダンスの変化量が増加する。また、印加される直流電流の電流密度を変化させると、スピントルク共鳴周波数は変化する。したがって、磁気抵抗効果素子101のスピントルク共鳴周波数は、磁場供給機構112からの磁場を変化させるか、直流電流入力端子110からの印加直流電流を変化させることにより変化させることができる。磁気抵抗効果素子101に印加される直流電流の電流密度は、磁気抵抗効果素子101の発振閾値電流密度よりも小さいことが好ましい。磁気抵抗効果素子の発振閾値電流密度とは、この値以上の電流密度の直流電流の印加により、磁気抵抗効果素子の磁化自由層の磁化が一定周波数及び一定の振幅で歳差運動を開始し、磁気抵抗効果素子が発振する(磁気抵抗効果素子の出力(抵抗値)が一定周波数及び一定の振幅で変動する)閾値の電流密度のことである。
第1のポート109aから入力された高周波信号は、一部が磁気抵抗効果素子101を通過してグラウンド108に流れ、残りが第2のポート109bから出力される。この時、スピントルク共鳴現象により、第1のポート109aから入力された高周波信号の高周波成分の中で磁気抵抗効果素子101のスピントルク共鳴周波数と一致する、もしくはスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数成分は、高インピーダンス状態の磁気抵抗効果素子101に流れにくくなるため、第2のポート109bに出力されやすくなる。このように、磁気抵抗効果デバイス100は、スピントルク共鳴周波数の近傍の周波数が通過周波数帯域の高周波フィルタの機能を有することが出来る。つまり、磁気抵抗効果デバイス100は、帯域通過型のフィルタ(バンドパスフィルタ)となる。ここで、磁気抵抗効果素子101のスピントルク共鳴周波数と一致する、もしくはスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数(通過帯域の周波数)において、磁気抵抗効果素子101のインピーダンスは、第2のポート109bに接続される他の電子回路のインピーダンスより大きいことが望ましい。また、スピントルク共鳴周波数およびスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数を除く周波数(遮断帯域の周波数)において、磁気抵抗効果素子101のインピーダンスは、第2のポート109bに接続される他の電子回路のインピーダンスより小さいことが望ましい。
図2および図3に、磁気抵抗効果デバイス100に入力される高周波信号の周波数と減衰量との関係を示したグラフを示す。図2および図3の縦軸は減衰量、横軸は周波数を表している。図2は、磁気抵抗効果素子101に印加された磁場が一定の時のグラフである。図2のプロット線121は、直流電流入力端子110から磁気抵抗効果素子101に印加される直流電流値がI0の時のものであり、プロット線122は、直流電流入力端子110から磁気抵抗効果素子101に印加される直流電流値がI1(>I0)の時のものである。また、図3は、磁気抵抗効果素子101に印加された直流電流が一定の時のグラフである。図3のプロット線123は、磁場供給機構112から印加される磁場強度がH0の時のものであり、プロット線124は、磁場供給機構112から印加される磁場強度がH1(>H0)の時のものである。例えば、図2に示されるように、直流電流入力端子110から磁気抵抗効果素子101に印加される直流電流値をI0からI1に大きくした場合、電流値の変化に伴い磁気抵抗効果素子101のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数(通過帯域の周波数)での素子インピーダンスの増加量が増加することで、第2のポート109bから出力される高周波信号がさらに多くなり、通過量(通過量の絶対値)が大きくなる。したがって、磁気抵抗効果デバイス100は、遮断特性と通過特性のレンジが大きな高周波フィルタを実現することが可能となる。また、直流電流値を大きくすると磁気抵抗効果素子101のスピントルク共鳴周波数は周波数f0から周波数f1に、すなわち低周波数側へシフトし、通過周波数帯域は周波数帯域120aから周波数帯域120bへと低周波数側へシフトする。つまり、磁気抵抗効果デバイス100は、通過周波数帯域の周波数を変化可能な高周波フィルタとして機能することも出来る。
さらに、例えば、図3に示されるように、磁場供給機構112から印加される磁場強度をH0からH1に強くした場合、磁気抵抗効果素子101のスピントルク共鳴周波数は周波数f2から周波数f3に、すなわち高周波数側へシフトし、通過周波数帯域は周波数帯域120cから周波数帯域120dへと高周波数側へシフトする。また、磁場強度(磁化自由層104における有効磁場Heff)を変化させる方が、直流電流値を変化させるよりも大きく通過周波数帯域をシフトさせることができる。つまり、磁気抵抗効果デバイス100は、通過周波数帯域の周波数を変化可能な高周波フィルタとして機能することが出来る。
なお、磁気抵抗効果素子101に印加される外部磁場H(磁化自由層104における有効磁場Heff)が大きくなるに従って、磁気抵抗効果素子101の振動する抵抗値の振幅が小さくなるので、磁気抵抗効果素子101に印加される外部磁場H(磁化自由層104における有効磁場Heff)を大きくするのに伴い、磁気抵抗効果素子101に印加される直流電流の電流密度を大きくすることが好ましい。
このように、磁気抵抗効果デバイス100は、磁化固定層102、スペーサ層103および磁化の方向が変化可能である磁化自由層104を有する磁気抵抗効果素子101と、第1のポート109aと、第2のポート109bと、信号線路107と、直流電流入力端子110と、コンデンサ111とを有し、第1のポート109aおよび第2のポート109bが信号線路107を介して接続され、磁気抵抗効果素子101は、第2のポート109bに対して並列に、信号線路107およびグラウンド108に接続され、直流電流入力端子110は信号線路107に接続され、磁気抵抗効果素子101、信号線路107、グラウンド108および直流電流入力端子110を含む閉回路114が形成され、磁気抵抗効果素子101は、直流電流入力端子110から入力される直流電流が、磁気抵抗効果素子101の中を磁化固定層102から磁化自由層104の方向に流れるように配置され、コンデンサ111は、閉回路114と第1のポート109aとの間および閉回路114と第2のポート109bとの間に、信号線路107を介して第1のポート109aおよび第2のポート109bと直列に接続されている。
したがって、磁気抵抗効果素子101に第1のポート109aから信号線路107を介して高周波信号が入力されることにより、磁気抵抗効果素子101にスピントルク共鳴を誘起させることが出来る。このスピントルク共鳴と同時に、磁気抵抗効果素子101の中を磁化固定層102から磁化自由層104の方向に直流電流が流れることにより、磁気抵抗効果素子101は、第1のポート109aから入力された高周波信号とは位相が180°異なる状態で、スピントルク共鳴周波数に対応した周波数で周期的に抵抗値が振動する素子として扱うことが出来る。この効果により、磁気抵抗効果素子101のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数に対する素子インピーダンスが増加する。磁気抵抗効果素子101は、第2のポート109bに対して並列に、信号線路107およびグラウンド108に接続されているので、第1のポート109aから入力された高周波信号のうち磁気抵抗効果素子101のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の高周波信号は、磁気抵抗効果素子101に流れにくくなり、第2のポート109bには流れやすくなる。このように、第1のポート109aから入力された高周波信号を、磁気抵抗効果素子101のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数では、第2のポート109bに対して通過させることが出来る。つまり、磁気抵抗効果デバイス100は、高周波フィルタとしての周波数特性をもつことが可能となる。
また、直流電流入力端子110から入力された直流電流は、磁気抵抗効果素子101、信号線路107、グラウンド108および直流電流入力端子110を含んで形成される閉回路114を流れる。この閉回路114により、磁気抵抗効果素子101に効率的に直流電流を印加することが出来る。磁気抵抗効果素子101はこの直流電流が印加されることにより、スピントルクが増加して、振動する抵抗値の振幅が増加する。振動する抵抗値の振幅が増加することにより、磁気抵抗効果素子101の素子インピーダンスの変化量が増加するため、磁気抵抗効果デバイス100は、遮断特性と通過特性のレンジが大きな高周波フィルタとして機能することが可能となる。
遮断特性と通過特性のレンジを大きくするためには、磁化自由層104が膜面法線方向に磁化容易軸を有し、磁化固定層102が膜面方向に磁化容易軸を有する構成とすることが好ましい。
また、信号線路107を介して第1のポート109aおよび第2のポート109bと直列に接続されたコンデンサ111は、直流電流入力端子110から印加された直流電流の第1のポート109aまたは第2のポート109bへの流出を阻止することができるため、第1のポート109aまたは第2のポート109bに他の電子回路が接続された場合に、他の電子回路への直流電流の混入を防ぐことが可能となる。
さらに、直流電流入力端子110から印加される直流電流を変化させることにより、磁気抵抗効果素子101のスピントルク共鳴周波数を可変制御することができるため、磁気抵抗効果デバイス100は、周波数可変フィルタとして機能することも可能となる。
さらに、磁気抵抗効果デバイス100は、磁気抵抗効果素子101のスピントルク共鳴周波数を設定可能な周波数設定機構としての磁場供給機構112を有するので、磁気抵抗効果素子101のスピントルク共鳴周波数を任意の周波数にすることができる。したがって、磁気抵抗効果デバイス100は、任意の周波数帯のフィルタとして機能することが可能となる。
さらに、磁気抵抗効果デバイス100は、磁場供給機構112が、磁化自由層104における有効磁場を設定可能な有効磁場設定機構であり、磁化自由層104における有効磁場を変化させて磁気抵抗効果素子101のスピントルク共鳴周波数を変化可能であるので、周波数可変フィルタとして機能することが可能となる。
さらに、磁気抵抗効果デバイス100は、信号線路107を介して第1のポート109aおよび第2のポート109bと直列に接続された磁気抵抗効果素子が存在しないため、信号線路107を介して第1のポート109aおよび第2のポート109bと直列に接続された磁気抵抗効果素子による損失に起因した、通過特性の悪化を防ぐことができる。このことにより、磁気抵抗効果デバイス100は、通過周波数帯域での通過特性がよい高周波フィルタとして機能することが可能となる。
また、第1の実施形態では、コンデンサ111が閉回路114と第1のポート109aとの間および閉回路114と第2のポート109bとの間の両方に接続されている例で説明したが、どちらか一方のみにコンデンサ111が接続されている形態でもよい。この場合でも、直流電流入力端子110から印加された直流電流の、第1のポート109aまたは第2のポート109bのいずれか一方への流出を阻止することができる。また、第1の実施形態では、コンデンサ111が閉回路114と第1のポート109aとの間および閉回路114と第2のポート109bとの間に1個ずつ接続されている例で説明したが、コンデンサ111はそれぞれの箇所において、複数個接続されていても良い。
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイス200の断面模式図である。磁気抵抗効果デバイス200において、第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス100と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス100と共通している要素は同じ符号を用いており、共通している要素の説明は省略する。磁気抵抗効果デバイス200は、磁化固定層102、スペーサ層103および磁化自由層104を有する2つの磁気抵抗効果素子101a、101b、上部電極105、下部電極106、信号線路107、第1のポート109a、第2のポート109b、直流電流入力端子110、コンデンサ111および2つの周波数設定機構としての磁場供給機構112a、112bを有している。2つの磁気抵抗効果素子101a、101bはその構成が互いに同じであり、2つの磁気抵抗効果素子101a、101b同士は上部電極105と下部電極106との間に並列接続されている。磁場供給機構112a、112bは、それぞれ、第1の実施形態の磁場供給機構112と同じ構成であり、磁場供給機構112aは磁気抵抗効果素子101aに磁場を印加し、磁場供給機構112bは磁気抵抗効果素子101bに磁場を印加する。このように、磁気抵抗効果デバイス200は、磁気抵抗効果素子101a、101bの各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に周波数設定機構としての磁場供給機構112a、112bを有している。第1のポート109aおよび第2のポート109bが信号線路107を介して接続され、2つの磁気抵抗効果素子101aおよび磁気抵抗効果素子101bは、第2のポート109bに対して並列に、信号線路107およびグラウンド108に接続されている。直流電流端子110は信号線路107に接続され、直流電流入力端子110にグラウンド108に接続された直流電流源113が接続されることにより、磁気抵抗効果素子101a、磁気抵抗効果素子101b、信号線路107、グラウンド108および直流電流入力端子110を含む閉回路214が形成される。直流電流入力端子110から入力された直流電流は閉回路214を流れ、磁気抵抗効果素子101aおよび磁気抵抗効果素子101bに直流電流が印加される。磁気抵抗効果素子101aおよび磁気抵抗効果素子101bは、直流電流入力端子110から入力される直流電流が、磁気抵抗効果素子101aおよび磁気抵抗効果素子101bの中を磁化固定層102から磁化自由層104の方向に流れるように配置されている。また、コンデンサ111は、閉回路214と第1のポート109aとの間および閉回路214と第2のポート109bとの間に、信号線路107を介して第1のポート109aおよび第2のポート109bと直列に接続されている。
第1のポート109aから入力された高周波信号は、一部が並列接続された磁気抵抗効果素子101aと磁気抵抗効果素子101bを通過してグラウンド108に流れ、残りが第2のポート109bから出力される。この時、スピントルク共鳴現象により、第1のポート109aから入力された高周波信号の高周波成分の中で磁気抵抗効果素子101aまたは磁気抵抗効果素子101bのスピントルク共鳴周波数と一致する、もしくは、磁気抵抗効果素子101aまたは磁気抵抗効果素子101bのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数成分は、合成インピーダンスが高インピーダンス状態の、並列接続された磁気抵抗効果素子101aと磁気抵抗効果素子101bに流れにくくなるため、第2のポート109bに出力されやすくなる。つまり、磁気抵抗効果デバイス200は、磁気抵抗効果素子101aまたは磁気抵抗効果素子101bのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数が通過周波数帯域の高周波フィルタの機能を有することが出来る。
図5に、磁気抵抗効果デバイス200に入力される高周波信号の周波数と減衰量との関係を示したグラフを示す。図5の縦軸は減衰量、横軸は周波数を表している。例えば、図5に示すように、磁気抵抗効果素子101aのスピントルク共鳴周波数をfa,磁気抵抗効果素子101bのスピントルク共鳴周波数をfbとすると、磁気抵抗効果素子101aに印加されている磁場強度より磁気抵抗効果素子101bに印加されている磁場強度が大きい場合、fa<fbとなる。ここで、2つの磁気抵抗効果素子101a、101b同士が並列接続されているので、磁気抵抗効果素子101aおよび磁気抵抗効果素子101bのうち、少なくとも1つがスピントルク共鳴現象により高インピーダンス状態になると、磁気抵抗効果素子101a、101bの両方がスピントルク共鳴を起こさない場合に比べて、並列接続された磁気抵抗効果素子101aと磁気抵抗効果素子101bの合成インピーダンスは高くなるため、第1のポート109aから入力された高周波信号は第2のポート109bに出力されやすくなる。したがって、図5に示されるように、磁気抵抗効果素子101aのスピントルク共鳴周波数faの近傍の周波数(図5に示す通過周波数帯域220a)の一部と、磁気抵抗効果素子101bのスピントルク共鳴周波数fbの近傍の周波数(図5に示す通過周波数帯域220b)の一部が重なるように磁場供給機構112a、112bが磁気抵抗効果素子101a、101bに印加する磁場強度を調整することによって、磁気抵抗効果デバイス200は、図5に示されるように、第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス100よりも広帯域の通過周波数帯域(図5に示す通過周波数帯域220)を持つことができる。さらに、磁気抵抗効果素子101a、101bに印加される直流電流、あるいは磁場供給機構112a,112bが磁気抵抗効果素子101a、101bに印加する磁場を変化させることで、その帯域を任意に変更することが可能となる。このことにより、磁気抵抗効果デバイス200は、通過周波数の帯域を任意に変更することが出来る周波数可変フィルタとして機能することが可能となる。
このように、磁気抵抗効果デバイス200は、磁気抵抗効果素子101a、101bの各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に周波数設定機構としての磁場供給機構112a、112bを有しているため、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を個別に制御することができる。さらに磁気抵抗効果素子101a、101b同士が並列接続されているので、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数と同じ複数の周波数の近傍における、並列接続された複数の磁気抵抗効果素子101a、101bの合成インピーダンスを増加させることが出来るため、ある幅を持った通過周波数帯域220を設けることができる。さらに、磁気抵抗効果素子101a、101bに印加される直流電流、あるいは磁場供給機構112a、112bが磁気抵抗効果素子101a、101bに印加する磁場を変化させることで、その帯域を任意に変更することが可能となる。このことにより、磁気抵抗効果デバイス200は、ある幅を持った通過周波数帯域を備え、通過周波数の帯域を任意に変更することが出来る周波数可変フィルタとして機能することが可能となる。
また、第2の実施形態の磁気抵抗効果デバイス200では、2つの磁気抵抗効果素子101a、101b同士が並列に接続されており、各磁気抵抗素子のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に2つの周波数設定機構(磁場供給機構112a、112b)が備えられているが、3つ以上の磁気抵抗効果素子同士が並列に接続されており、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に3つ以上の周波数設定機構(磁場供給機構)が備えられていてもよい。この場合、通過周波数帯域の幅をさらに広げることが可能となる。
また、第2の実施形態の磁気抵抗効果デバイス200では、2つの磁気抵抗効果素子101a、101bの構成が互いに同じであるが、複数の磁気抵抗効果素子は、構成が互いに異なっていてもよい。
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイス300の概略断面図である。磁気抵抗効果デバイス300において、第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス100と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス100と共通している要素は同じ符号を用いており、共通している要素の説明は省略する。磁気抵抗効果デバイス300は、磁化固定層102、スペーサ層103および磁化自由層104を有する2つの磁気抵抗効果素子301a、301b、上部電極105、下部電極106、信号線路107、第1のポート109a、第2のポート109b、直流電流入力端子110、コンデンサ111および周波数設定機構としての磁場供給機構112を有している。磁気抵抗効果素子301a、301b同士は上部電極105と下部電極106との間に並列接続されている。磁気抵抗効果素子301a、301bは、同一の磁場および同一の電流密度の直流電流が印加された状態でのスピントルク共鳴周波数が互いに異なる。より具体的には、磁気抵抗効果素子301a、301bは、膜構成が互いに同じで、平面視形状はともに長方形であるが、平面視形状のアスペクト比が互いに異なっている。ここで「膜構成が同じ」とは、磁気抵抗効果素子を構成する各層の材料および膜厚が同じであり、さらに各層の積層順が同じであることを意味する。また、「平面視形状」とは、磁気抵抗効果素子を構成する各層の積層方向に垂直な平面で見た形状のことである。また、「平面視形状のアスペクト比」とは、磁気抵抗効果素子の平面視形状に最小の面積で外接する長方形の、短辺の長さに対する長辺の長さの比率のことである。
第1のポート109aおよび第2のポート109bが信号線路107を介して接続され、磁気抵抗効果素子301aおよび磁気抵抗効果素子301bは、第2のポート109bに対して並列に、信号線路107およびグラウンド108に接続されている。直流電流入力端子110は信号線路107に接続され、直流電流入力端子110にグラウンド108に接続された直流電流源113が接続されることにより、磁気抵抗効果素子301a、磁気抵抗効果素子301b、信号線路107、グラウンド108および直流電流入力端子110を含む閉回路314が形成される。直流電流入力端子110から入力された直流電流は閉回路314を流れ、磁気抵抗効果素子301aおよび磁気抵抗効果素子301bに直流電流が印加される。磁気抵抗効果素子301aおよび磁気抵抗効果素子301bは、直流電流入力端子110から入力される直流電流が、磁気抵抗効果素子301aおよび磁気抵抗効果素子301bの中を磁化固定層102から磁化自由層104の方向に流れるように配置されている。また、コンデンサ111は、閉回路314と第1のポート109aとの間および閉回路314と第2のポート109bとの間に、信号線路107を介して第1のポート109aおよび第2のポート109bと直列に接続されている。
磁場供給機構112は、磁気抵抗効果素子301a、301bの近傍に配設され、磁気抵抗効果素子301a、301bに同時に同一の磁場を印加する。また、磁場供給機構112は、磁気抵抗効果素子301a、301bに印加する磁場を変化させることで、磁気抵抗効果素子301a、301bの磁化自由層104における有効磁場を変化させて磁気抵抗効果素子301a、301bのスピントルク共鳴周波数を変化可能となっている。
磁気抵抗効果素子301a、301bの膜構成は第1の実施形態の磁気抵抗効果素子101と同じである。図7は、磁気抵抗効果デバイス300の上面図である。図7に示すように、磁気抵抗効果素子301a、301bの平面視形状の短辺方向であるY方向の寸法Yは同じであるが、磁気抵抗効果素子301aの平面視形状の長辺方向であるX方向の寸法Xaと磁気抵抗効果素子301bの平面視形状の長辺方向であるX方向の寸法Xbは異なっており、Xa<Xbであることから、磁気抵抗効果素子301aの平面視形状のアスペクト比(Xa/Y)より、磁気抵抗効果素子301bの平面視形状のアスペクト比(Xb/Y)は大きい。同一の磁場および同一の電流密度の直流電流が磁気抵抗効果素子に印加された状態で考えると、磁気抵抗効果素子の平面視形状のアスペクト比が大きくなるに従って磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数は高くなるため、磁気抵抗効果素子301bのスピントルク共鳴周波数fbは磁気抵抗効果素子301aのスピントルク共鳴周波数faよりも高くなる。このように、複数の磁気抵抗効果素子の平面視形状のアスペクト比を互いに異ならせることで、膜構成が互いに同じであってもスピントルク共鳴周波数を互いに異ならせることができるため、同一の成膜プロセスでスピントルク共鳴周波数が互いに異なる複数の磁気抵抗効果素子を作製することが可能となる。即ち、複数の磁気抵抗効果素子の膜構成を同じにすることができるため、複数の磁気抵抗効果素子を構成する層を一括で成膜形成することができる。
第1のポート109aから入力された高周波信号は、一部が並列接続された磁気抵抗効果素子301aと磁気抵抗効果素子301bを通過してグラウンド108に流れ、残りが第2のポート109bから出力される。この時、スピントルク共鳴現象により、第1のポート109aから入力された高周波信号の高周波成分の中で磁気抵抗効果素子301aまたは磁気抵抗効果素子301bのスピントルク共鳴周波数と一致する、もしくは、磁気抵抗効果素子301aまたは磁気抵抗効果素子301bのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数成分は、合成インピーダンスが高インピーダンス状態の、並列接続された磁気抵抗効果素子301aまたは磁気抵抗効果素子301bに流れにくくなるため、第2のポート109bに出力されやすくなる。つまり、磁気抵抗効果デバイス300は、磁気抵抗効果素子301aまたは磁気抵抗効果素子301bのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数が通過周波数帯域の高周波フィルタの機能を有することが出来る。
図8に、磁気抵抗効果デバイス300に入力される高周波信号の周波数と減衰量との関係を示したグラフを示す。図8の縦軸は減衰量、横軸は周波数を表している。2つの磁気抵抗効果素子301a、301b同士が並列接続されているので、磁気抵抗効果素子301aおよび磁気抵抗効果素子301bのうち、少なくとも1つがスピントルク共鳴現象により高インピーダンス状態になると、磁気抵抗効果素子301a、301bの両方がスピントルク共鳴を起こさない場合に比べて、並列接続された磁気抵抗効果素子301aと磁気抵抗効果素子301bの合成インピーダンスは高くなるため、第1のポート109aから入力された高周波信号は第2のポート109bに出力されやすくなる。したがって、図8に示されるように、磁気抵抗効果素子301aのスピントルク共鳴周波数faの近傍の周波数(図8に示す通過周波数帯域320a)の一部と、磁気抵抗効果素子301bのスピントルク共鳴周波数fbの近傍の周波数(図8に示す通過周波数帯域320b)の一部が重なるように磁気抵抗効果素子301a、301bの平面視形状のアスペクト比を異ならせると、磁気抵抗効果デバイス300は、図8に示されるように、第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス100よりも広帯域の通過周波数帯域(図8に示す通過周波数帯域320)を持つことができる。
さらに、磁気抵抗効果素子301a、301bに印加される直流電流、あるいは磁場供給機構112が磁気抵抗効果素子301a、301bに印加する磁場を変化させることで、その帯域を任意に変更することが可能となる。このことにより、磁気抵抗効果デバイス300は、通過周波数の帯域を任意に変更することが出来る周波数可変フィルタとして機能することが可能となる。
このように、磁気抵抗効果デバイス300は、互いにスピントルク周波数の異なる磁気抵抗効果素子301a、301b同士が並列接続されているので、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数と同じ複数の周波数の近傍における、並列接続された複数の磁気抵抗効果素子301a、301bの合成インピーダンスを増加させることが出来るため、ある幅を持った通過周波数帯域320を設けることができる。さらに、磁気抵抗効果素子301a、301bに印加される直流電流、あるいは磁場供給機構112が磁気抵抗効果素子301a、301bに印加する磁場を変化させることで、その通過周波数帯域の位置を変更することが可能となる。このことにより、磁気抵抗効果デバイス300は、ある幅を持った通過周波数帯域を備え、通過周波数帯域の位置を変更することが出来る周波数可変フィルタとして機能することが可能となる。
さらに、磁気抵抗効果デバイス300は、磁気抵抗効果素子301a、301bの平面視形状のアスペクト比が互いに異なるため、同一プロセスでスピントルク共鳴周波数が互いに異なる複数の磁気抵抗効果素子301a、301bを作製することが可能となる。即ち、複数の磁気抵抗効果素子の膜構成を同じにすることができるため、複数の磁気抵抗効果素子301a、301bを構成する層を一括で成膜形成することができる。
また、第3の実施形態の磁気抵抗効果デバイス300では、スピントルク共鳴周波数が互いに異なる2つの磁気抵抗効果素子301a、301b同士が並列に接続されているが、スピントルク共鳴周波数が互いに異なる3つ以上の磁気抵抗効果素子同士が並列に接続されていてもよい。この場合、通過周波数帯域の幅をさらに広げることが可能となる。
また、第3の実施形態の磁気抵抗効果デバイス300では、2つの磁気抵抗効果素子301a、301bの膜構成は互いに同じであるが、複数の磁気抵抗効果素子は、膜構成が互いに異なっていてもよい。この場合、複数の磁気抵抗効果素子の平面視形状のアスペクト比を互いに同じにしつつ膜構成を互いに異ならせて、複数の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を互いに異ならせるようにしても良い。
また、第3の実施形態の磁気抵抗効果デバイス300では、磁場供給機構112が磁気抵抗効果素子301a、301bに同時に同一の磁場を印加しているが、第2の実施形態と同様に、各磁気抵抗効果素子に個別に磁場を印加するための磁場供給機構が備えられていても良い。
(第4の実施形態)
図9は、本発明の第4の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイス400の断面模式図である。磁気抵抗効果デバイス400において、第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス100と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス100と共通している要素は同じ符号を用いており、共通している要素の説明は省略する。磁気抵抗効果デバイス400は、磁化固定層102、スペーサ層103および磁化自由層104を有する2つの磁気抵抗効果素子101a、101b、上部電極105a、105b、下部電極106a、106b、信号線路107、第1のポート109a、第2のポート109b、直流電流入力端子110、コンデンサ111および2つの周波数設定機構としての磁場供給機構112a、112bを有している。上部電極105aおよび下部電極106aは磁気抵抗効果素子101aを挟むように配置され、上部電極105bおよび下部電極106bは磁気抵抗効果素子101bを挟むように配置されている。2つの磁気抵抗効果素子101a、101bはその構成が互いに同じであり、2つの磁気抵抗効果素子101a、101b同士は直列接続されている。磁場供給機構112a、112bは、それぞれ、第1の実施形態の磁場供給機構112と同じ構成であり、磁場供給機構112aは磁気抵抗効果素子101aに磁場を印加し、磁場供給機構112bは磁気抵抗効果素子101bに磁場を印加する。このように、磁気抵抗効果デバイス400は、磁気抵抗効果素子101a、101bの各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に周波数設定機構としての磁場供給機構112a、112bを有している。第1のポート109aおよび第2のポート109bが信号線路107を介して接続され、直列接続された2つの磁気抵抗効果素子101aおよび磁気抵抗効果素子101bは、第2のポート109bに対して並列に、信号線路107およびグラウンド108に接続されている。直流電流端子110は信号線路107に接続され、直流電流入力端子110にグラウンド108に接続された直流電流源113が接続されることにより、磁気抵抗効果素子101a、101b、信号線路107、グラウンド108および直流電流入力端子110を含む閉回路414が形成される。直流電流入力端子110から入力された直流電流は閉回路414を流れ、磁気抵抗効果素子101aおよび磁気抵抗効果素子101bに直流電流が印加される。磁気抵抗効果素子101aおよび磁気抵抗効果素子101bは、直流電流入力端子110から入力される直流電流が、磁気抵抗効果素子101aおよび磁気抵抗効果素子101bの中を磁化固定層102から磁化自由層104の方向に流れるように配置されている。また、コンデンサ111は、閉回路414と第1のポート109aとの間および閉回路414と第2のポート109bとの間に、信号線路107を介して第1のポート109aおよび第2のポート109bと直列に接続されている。
第1のポート109aから入力された高周波信号は、一部が直列接続された磁気抵抗効果素子101aおよび磁気抵抗効果素子101bを通過してグラウンド108に流れ、残りが第2のポート109bから出力される。この時、スピントルク共鳴現象により、第1のポート109aから入力された高周波信号の高周波成分の中で磁気抵抗効果素子101aまたは磁気抵抗効果素子101bのスピントルク共鳴周波数と一致する、もしくは、磁気抵抗効果素子101aまたは磁気抵抗効果素子101bのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数成分は、合成インピーダンスが高インピーダンス状態の、直列接続された磁気抵抗効果素子101a、101bに流れにくくなるため、第2のポート109bに出力されやすくなる。つまり、磁気抵抗効果デバイス400は、磁気抵抗効果素子101aまたは磁気抵抗効果素子101bのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数が通過周波数帯域の高周波フィルタの機能を有することが出来る。
図10に、磁気抵抗効果デバイス400に入力される高周波信号の周波数と減衰量との関係を示したグラフを示す。図10の縦軸は減衰量、横軸は周波数を表している。例えば、図10に示すように、磁気抵抗効果素子101aのスピントルク共鳴周波数をfa、磁気抵抗効果素子101bのスピントルク共鳴周波数をfbとすると、磁気抵抗効果素子101aに印加されている磁場強度より磁気抵抗効果素子101bに印加されている磁場強度が大きい場合、fa<fbとなる。ここで、2つの磁気抵抗効果素子101a、101b同士が直列接続されているので、磁気抵抗効果素子101aおよび磁気抵抗効果素子101bのうち、少なくとも1つがスピントルク共鳴現象により高インピーダンス状態になると、磁気抵抗効果素子101a、101bの両方がスピントルク共鳴を起こさない場合に比べて、直列接続された磁気抵抗効果素子101aと磁気抵抗効果素子101bの合成インピーダンスは高くなるため、第1のポート109aから入力された高周波信号は第2のポート109bに出力されやすくなる。したがって、図10に示されるように、磁気抵抗効果素子101aのスピントルク共鳴周波数faの近傍の周波数(図10に示す通過周波数帯域420a)の一部と、磁気抵抗効果素子101bのスピントルク共鳴周波数fbの近傍の周波数(図5に示す通過周波数帯域420b)の一部が重なるように磁場供給機構112a、112bが磁気抵抗効果素子101a、101bに印加する磁場強度を調整することによって、磁気抵抗効果デバイス400は、図10に示されるように、第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス100よりも広帯域の通過周波数帯域(図10に示す通過周波数帯域420)を持つことができる。さらに、磁場供給機構112a,112bが磁気抵抗効果素子101a、101bに印加する磁場を変化させることで、その帯域を任意に変更することが可能となる。このことにより、磁気抵抗効果デバイス400は、通過周波数の帯域を任意に変更することが出来る周波数可変フィルタとして機能することが可能となる。
このように、磁気抵抗効果デバイス400は、磁気抵抗効果素子101a、101bの各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に周波数設定機構としての磁場供給機構112a、112bを有しているため、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を個別に制御することができる。さらに磁気抵抗効果素子101a、101b同士が直列接続されているので、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数と同じ複数の周波数の近傍における、直列接続された複数の磁気抵抗効果素子101a、101bの合成インピーダンスを増加させることが出来るため、ある幅を持った通過周波数帯域420を設けることができる。さらに、磁気抵抗効果素子101a、101bに印加される直流電流、あるいは磁場供給機構112a、112bが磁気抵抗効果素子101a、101bに印加する磁場を変化させることで、その帯域を任意に変更することが可能となる。このことにより、磁気抵抗効果デバイス400は、ある幅を持った通過周波数帯域を備え、通過周波数の帯域を任意に変更することが出来る周波数可変フィルタとして機能することが可能となる。
また、第4の実施形態の磁気抵抗効果デバイス400では、2つの磁気抵抗効果素子101a、101b同士が直列に接続されており、各磁気抵抗素子のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に2つの周波数設定機構(磁場供給機構112a、112b)が備えられているが、3つ以上の磁気抵抗効果素子同士が直列に接続されており、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に3つ以上の周波数設定機構(磁場供給機構)が備えられていてもよい。この場合、通過周波数帯域の幅をさらに広げることが可能となる。
また、第4の実施形態の磁気抵抗効果デバイス400では、2つの磁気抵抗効果素子101a、101bの構成が互いに同じであるが、複数の磁気抵抗効果素子は、構成が互いに異なっていてもよい。
(第5の実施形態)
図11は、本発明の第5の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイス500の概略断面図である。磁気抵抗効果デバイス500において、第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス100と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス100と共通している要素は同じ符号を用いており、共通している要素の説明は省略する。磁気抵抗効果デバイス500は、磁化固定層102、スペーサ層103および磁化自由層104を有する2つの磁気抵抗効果素子501a、501b、上部電極105a、105b、下部電極106a、106b、信号線路107、第1のポート109a、第2のポート109b、直流電流入力端子110、コンデンサ111および周波数設定機構としての磁場供給機構112を有している。上部電極105aおよび下部電極106aは磁気抵抗効果素子501aを挟むように配置され、上部電極105bおよび下部電極106bは磁気抵抗効果素子501bを挟むように配置されている。磁気抵抗効果素子501a、501b同士は直列接続されている。磁気抵抗効果素子501a、501bは、同一の磁場および同一の電流密度の直流電流が印加された状態でのスピントルク共鳴周波数が互いに異なる。より具体的には、磁気抵抗効果素子501a、501bは、膜構成が互いに同じで、平面視形状はともに長方形であるが、平面視形状のアスペクト比が互いに異なっている。ここで「膜構成が同じ」とは、磁気抵抗効果素子を構成する各層の材料および膜厚が同じであり、さらに各層の積層順が同じであることを意味する。また、「平面視形状」とは、磁気抵抗効果素子を構成する各層の積層方向に垂直な平面で見た形状のことである。また、「平面視形状のアスペクト比」とは、磁気抵抗効果素子の平面視形状に最小の面積で外接する長方形の、短辺の長さに対する長辺の長さの比率のことである。
第1のポート109aおよび第2のポート109bが信号線路107を介して接続され、磁気抵抗効果素子501aおよび磁気抵抗効果素子501bは、第2のポート109bに対して並列に、信号線路107およびグラウンド108に接続されている。直流電流入力端子110は信号線路107に接続され、直流電流入力端子110にグラウンド108に接続された直流電流源113が接続されることにより、磁気抵抗効果素子501a、磁気抵抗効果素子501b、信号線路107、グラウンド108および直流電流入力端子110を含む閉回路514が形成される。直流電流入力端子110から入力された直流電流は閉回路514を流れ、磁気抵抗効果素子501aおよび磁気抵抗効果素子501bに直流電流が印加される。磁気抵抗効果素子501aおよび磁気抵抗効果素子501bは、直流電流入力端子110から入力される直流電流が、磁気抵抗効果素子501aおよび磁気抵抗効果素子501bの中を磁化固定層102から磁化自由層104の方向に流れるように配置されている。また、コンデンサ111は、閉回路514と第1のポート109aとの間および閉回路514と第2のポート109bとの間に直列に、信号線路107を介して第1のポート109aおよび第2のポート109bと接続されている。
磁場供給機構112は、磁気抵抗効果素子501a、501bの近傍に配設され、磁気抵抗効果素子501a、501bに同時に同じ強度の磁場を印加する。また、磁場供給機構112は、磁気抵抗効果素子501a、501bに印加する磁場を変化させることで、磁気抵抗効果素子501a、501bの磁化自由層104における有効磁場を変化させて磁気抵抗効果素子501a、501bのスピントルク共鳴周波数を変化可能となっている。
磁気抵抗効果素子501a、501bの膜構成は第1の実施形態の磁気抵抗効果素子101と同じである。図12は、磁気抵抗効果デバイス500の上面図である。図12に示すように、磁気抵抗効果素子501a、501bの平面視形状の短辺方向であるY方向の寸法Yは同じであるが、磁気抵抗効果素子501aの平面視形状の長辺方向であるX方向の寸法Xaと磁気抵抗効果素子501bの平面視形状の長辺方向であるX方向の寸法Xbは異なっており、Xa<Xbであることから、磁気抵抗効果素子501aの平面視形状のアスペクト比(Xa/Y)より、磁気抵抗効果素子501bの平面視形状のアスペクト比(Xb/Y)は大きい。同一の磁場および同一の電流密度の直流電流が磁気抵抗効果素子に印加された状態で考えると、磁気抵抗効果素子の平面視形状のアスペクト比が大きくなるに従って磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数は高くなるため、磁気抵抗効果素子501bのスピントルク共鳴周波数fbは磁気抵抗効果素子501aのスピントルク共鳴周波数faよりも高くなる。このように、複数の磁気抵抗効果素子の平面視形状のアスペクト比を互いに異ならせることで、膜構成が互いに同じであってもスピントルク共鳴周波数を互いに異ならせることができるため、同一の成膜プロセスでスピントルク共鳴周波数が互いに異なる複数の磁気抵抗効果素子を作製することが可能となる。即ち、複数の磁気抵抗効果素子の膜構成を同じにすることができるため、複数の磁気抵抗効果素子を構成する層を一括で成膜形成することができる。さらに、磁気抵抗効果デバイス500では、磁気抵抗効果素子501a、501b同士は直列接続されており、直流電流の流れる方向に垂直な断面の面積は、磁気抵抗効果素子501aの方が磁気抵抗効果素子501bよりも小さいので、印加される直流電流の電流密度は、磁気抵抗効果素子501aの方が磁気抵抗効果素子501bよりも大きくなる。したがって、印加される直流電流の電流密度が大きくなるに従って、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が低くなる場合、または、印加される直流電流の電流密度の違いが磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数に与える影響よりも、磁気抵抗効果素子の平面視形状のアスペクト比の違いが磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数に与える影響の方が大きい場合には、平面視形状のアスペクト比が、磁気抵抗効果素子501aと磁気抵抗効果素子501bとで異なることにより、fa<fbとなる。
第1のポート109aから入力された高周波信号は、一部が直列接続された磁気抵抗効果素子501aおよび磁気抵抗効果素子501bを通過してグラウンド108に流れ、残りが第2のポート109bから出力される。この時、スピントルク共鳴現象により、第1のポート109aから入力された高周波信号の高周波成分の中で磁気抵抗効果素子501aまたは磁気抵抗効果素子501bのスピントルク共鳴周波数と一致する、もしくは、磁気抵抗効果素子501aまたは磁気抵抗効果素子501bのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数成分は、合成インピーダンスが高インピーダンス状態の、直列接続された磁気抵抗効果素子501a、501bに流れにくくなるため、第2のポート109bに出力されやすくなる。つまり、磁気抵抗効果デバイス500は、磁気抵抗効果素子501aまたは磁気抵抗効果素子501bのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数が通過周波数帯域の高周波フィルタの機能を有することが出来る。
図13に、磁気抵抗効果デバイス500に入力される高周波信号の周波数と減衰量との関係を示したグラフを示す。図13の縦軸は減衰量、横軸は周波数を表している。2つの磁気抵抗効果素子501a、501b同士が直列接続されているので、磁気抵抗効果素子501aおよび磁気抵抗効果素子501bのうち、少なくとも1つがスピントルク共鳴現象により高インピーダンス状態になると、磁気抵抗効果素子501a、501bの両方がスピントルク共鳴を起こさない場合に比べて、直列接続された磁気抵抗効果素子501aと磁気抵抗効果素子501bの合成インピーダンスは高くなるため、第1のポート109aから入力された高周波信号は第2のポート109bに出力されやすくなる。したがって、図13に示されるように、磁気抵抗効果素子501aのスピントルク共鳴周波数faの近傍の周波数(図13に示す通過周波数帯域520a)の一部と、磁気抵抗効果素子501bのスピントルク共鳴周波数fbの近傍の周波数(図13に示す通過周波数帯域520b)の一部が重なるように磁気抵抗効果素子501a、501bの平面視形状のアスペクト比を異ならせると、磁気抵抗効果デバイス500は、図13に示されるように、第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス100よりも広帯域の通過周波数帯域(図13に示す通過周波数帯域520)を持つことができる。
さらに、磁気抵抗効果素子501a、501bに印加される直流電流、あるいは磁場供給機構112が磁気抵抗効果素子501a、501bに印加する磁場を変化させることで、その帯域を任意に変更することが可能となる。このことにより、磁気抵抗効果デバイス500は、通過周波数の帯域を任意に変更することが出来る周波数可変フィルタとして機能することが可能となる。
このように、磁気抵抗効果デバイス500は、互いにスピントルク周波数の異なる磁気抵抗効果素子501a、501b同士が直列接続されているので、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数と同じ複数の周波数の近傍における、直列接続された複数の磁気抵抗効果素子501a、501bの合成インピーダンスを増加させることが出来るため、ある幅を持った通過周波数帯域520を設けることができる。さらに、磁気抵抗効果素子501a、501bに印加される直流電流、あるいは磁場供給機構112が磁気抵抗効果素子501a、501bに印加する磁場を変化させることで、その通過周波数帯域の位置を変更することが可能となる。このことにより、磁気抵抗効果デバイス500は、ある幅を持った通過周波数帯域を備え、通過周波数帯域の位置を変更することが出来る周波数可変フィルタとして機能することが可能となる。
さらに、磁気抵抗効果デバイス500は、磁気抵抗効果素子501a、501bの平面視形状のアスペクト比が互いに異なるため、同一プロセスでスピントルク共鳴周波数が互いに異なる複数の磁気抵抗効果素子501a、501bを作製することが可能となる。即ち、複数の磁気抵抗効果素子の膜構成を同じにすることができるため、複数の磁気抵抗効果素子501a、501bを構成する層を一括で成膜形成することができる。
また、第5の実施形態の磁気抵抗効果デバイス500では、スピントルク共鳴周波数が互いに異なる2つの磁気抵抗効果素子501a、501b同士が直列に接続されているが、スピントルク共鳴周波数が互いに異なる3つ以上の磁気抵抗効果素子同士が直列に接続されていてもよい。この場合、通過周波数帯域の幅をさらに広げることが可能となる。
また、第5の実施形態の磁気抵抗効果デバイス500では、2つの磁気抵抗効果素子501a、501bの膜構成は互いに同じであるが、複数の磁気抵抗効果素子は、膜構成が互いに異なっていてもよい。この場合、複数の磁気抵抗効果素子の平面視形状のアスペクト比を互いに同じにしつつ膜構成を互いに異ならせて、複数の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を互いに異ならせるようにしても良い。
また、第5の実施形態の磁気抵抗効果デバイス500では、磁場供給機構112が磁気抵抗効果素子501a、501bに同時に同一の磁場を印加しているが、第2の実施形態と同様に、各磁気抵抗効果素子に個別に磁場を印加するための磁場供給機構が備えられていても良い。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上記で説明した実施形態以外にも変更することが可能である。例えば、第1、第3および第5の実施形態では、磁気抵抗効果デバイス100(300、500)が周波数設定機構(有効磁場設定機構)として磁場供給機構112を有する例で説明しているが、周波数設定機構(有効磁場設定機構)は、以下に示すような他の例でも良い。例えば、磁気抵抗効果素子に電場を印加し、その電場を変化させることにより、磁化自由層における異方性磁場Hを変化させて磁化自由層における有効磁場を変化させ、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を変化させることができる。この場合、磁気抵抗効果素子に電場を印加する機構が、周波数設定機構(有効磁場設定機構)となる。また、磁化自由層の近傍に圧電体を設け、その圧電体に電場を印加して圧電体を変形させ、磁化自由層を歪ませることにより、磁化自由層における異方性磁場Hを変化させて磁化自由層における有効磁場を変化させ、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を変化させることができる。この場合、圧電体に電場を印加する機構および圧電体が、周波数設定機構(有効磁場設定機構)となる。また、電気磁気効果を有する反強磁性体またはフェリ磁性体である制御膜を磁化自由層に磁気的に結合するように設け、制御膜に磁場および電場を印加し、制御膜に印加する磁場および電場の少なくとも一方を変化させることにより、磁化自由層における交換結合磁場HEXを変化させて磁化自由層における有効磁場を変化させ、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を変化させることができる。この場合、制御膜に磁場を印加する機構、制御膜に電場を印加する機構および制御膜が、周波数設定機構(有効磁場設定機構)となる。
また、周波数設定機構が無くても(磁場供給機構112からの磁場が印加されなくても)、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が所望の周波数である場合には、周波数設定機構(磁場供給機構112)は無くてもよい。
100,200、300、400、500 磁気抵抗効果デバイス
101,101a、101b、301a、301b、501a、501b 磁気抵抗効果素子
102 磁化固定層
103 スペーサ層
104 磁化自由層
105、105a、105b 上部電極
106、106a、106b 下部電極
107 信号線路
108 グラウンド
109a 第1のポート
109b 第2のポート
110 直流電流入力端子
111 コンデンサ
112、112a、112b 磁場供給機構
113 直流電流源
114、214、314、414、514 閉回路

Claims (10)

  1. 磁化固定層、スペーサ層および磁化の方向が変化可能である磁化自由層を有する磁気抵抗効果素子と、高周波信号が入力される第1のポートと、高周波信号が出力される第2のポートと、信号線路と、直流電流入力端子とを有し、
    前記第1のポートおよび前記第2のポートが前記信号線路を介して接続され、
    前記磁気抵抗効果素子は、前記第2のポートに対して並列に、前記信号線路およびグラウンドに接続され、
    前記直流電流入力端子は前記信号線路に接続され、
    前記磁気抵抗効果素子、前記信号線路、前記グラウンドおよび前記直流電流入力端子を含む閉回路が形成され、
    前記磁気抵抗効果素子は、前記直流電流入力端子から入力される直流電流が、前記磁気抵抗効果素子の中を前記磁化固定層から前記磁化自由層の方向に流れるように配置されることを特徴とする磁気抵抗効果デバイス。
  2. 前記磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を設定可能な周波数設定機構を有することを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  3. 前記周波数設定機構は、前記磁化自由層における有効磁場を設定可能な有効磁場設定機構であり、前記有効磁場を変化させて前記磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を変化可能であることを特徴とする請求項2に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  4. スピントルク共鳴周波数が互いに異なる複数の前記磁気抵抗効果素子同士が並列接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  5. 複数の前記磁気抵抗効果素子同士が並列接続され、前記複数の磁気抵抗効果素子の各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に前記周波数設定機構を複数有することを特徴とする請求項2または3に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  6. スピントルク共鳴周波数が互いに異なる複数の前記磁気抵抗効果素子同士が直列接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  7. 複数の前記磁気抵抗効果素子同士が直列接続され、前記複数の磁気抵抗効果素子の各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に前記周波数設定機構を複数有することを特徴とする請求項2または3に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  8. スピントルク共鳴周波数が互いに異なる前記複数の磁気抵抗効果素子は、平面視形状のアスペクト比が互いに異なることを特徴とする請求項4または6に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  9. 前記信号線路を介して前記第1のポートおよび前記第2のポートと直列に接続された磁気抵抗効果素子が存在しないことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  10. コンデンサをさらに有し、
    前記コンデンサは、前記閉回路と前記第1のポートとの間および前記閉回路と前記第2のポートとの間の少なくとも一方に、前記信号線路を介して前記第1のポートおよび前記第2のポートと直列に接続されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果デバイス。
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