JP2018085633A - 増幅器 - Google Patents

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Abstract

【課題】磁気抵抗効果素子を利用した増幅器を提供する。【解決手段】増幅器101は、磁気抵抗効果素子1aと、第1のポート9aと、第2のポート9bと、信号線路7と、インダクタ10と、直流電流入力端子11とを有し、第1のポート9a、磁気抵抗効果素子1aおよび第2のポート9bが信号線路7を介してこの順に直列接続され、インダクタ10は、磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7に接続され、さらにグラウンド8に接続可能であり、直流電流入力端子11は、磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7に接続され、磁気抵抗効果素子1a、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路を形成可能であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、磁気抵抗効果素子を利用した増幅器に関するものである。
近年、携帯電話等の移動通信端末の高機能化に伴い、無線通信の高速化が進められている。通信速度は使用する周波数の帯域幅に比例するため、通信に必要な周波数バンドは増加し、それに伴って、移動通信端末に必要な高周波デバイスの搭載数も増加している。また、近年新しい高周波用部品に応用できる可能性のある分野として研究されているのがスピントロニクスであり、その中で注目されている現象の一つが、磁気抵抗効果素子によるスピントルク共鳴現象である(非特許文献1参照)。磁気抵抗効果素子に交流電流を流すことで、磁気抵抗効果素子にスピントルク共鳴を起こすことが出来、スピントルク共鳴周波数に対応した周波数で周期的に磁気抵抗効果素子の抵抗値が振動する。磁気抵抗効果素子に印加される磁場の強さによって、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数は変化し、一般的にその共鳴周波数は数〜数十GHzの高周波帯域である。
Nature、Vol.438、No.7066、pp.339−342、17 November 2005
スピントルク共鳴現象を利用して磁気抵抗効果素子を増幅器に応用するための具体的な構成は従来示されていない。本発明は、磁気抵抗効果素子を利用した増幅器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明に係る増幅器は、磁化固定層、磁化自由層およびこれらの間に配置されたスペーサ層を有する磁気抵抗効果素子と、高周波信号が入力される第1のポートと、高周波信号が出力される第2のポートと、信号線路と、インダクタまたは抵抗素子と、直流電流入力端子とを有し、前記第1のポート、前記磁気抵抗効果素子および前記第2のポートが前記信号線路を介してこの順に直列接続され、前記インダクタまたは前記抵抗素子は、前記磁気抵抗効果素子と前記第1のポートとの間の前記信号線路または前記磁気抵抗効果素子と前記第2のポートとの間の前記信号線路の一方に接続され、さらにグラウンドに接続可能であり、前記直流電流入力端子は、前記磁気抵抗効果素子と前記第1のポートとの間の前記信号線路または前記磁気抵抗効果素子と前記第2のポートとの間の前記信号線路の他方に接続され、前記磁気抵抗効果素子、前記信号線路、前記インダクタ、前記グラウンドおよび前記直流電流入力端子を含む閉回路、または、前記磁気抵抗効果素子、前記信号線路、前記抵抗素子、前記グラウンドおよび前記直流電流入力端子を含む閉回路を形成可能であることを第1の特徴とする。
上記特徴の増幅器によれば、磁気抵抗効果素子に第1のポートから信号線路を介して高周波信号が入力されることにより、磁気抵抗効果素子にスピントルク共鳴を誘起させることが出来る。これにより、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数で磁化自由層の磁化が大きく振動し、磁気抵抗効果素子は、スピントルク共鳴周波数の近傍の周波数で周期的に抵抗値が大きく振動する素子として扱うことが出来る。また、スピントルク共鳴現象によって、スピントルク共鳴周波数の近傍の周波数に対する磁気抵抗効果素子の素子インピーダンスが減少する。また、直流電流入力端子から入力された直流電流は、磁気抵抗効果素子、信号線路、インダクタ、グラウンドおよび直流電流入力端子を含んで形成される閉回路、または、磁気抵抗効果素子、信号線路、抵抗素子、グラウンドおよび直流電流入力端子を含んで形成される閉回路を流れる。この閉回路により、磁気抵抗効果素子に直流電流を印加することが出来る。スピントルク共鳴周波数の近傍の周波数で周期的に抵抗値が振動する磁気抵抗効果素子に、直流電流入力端子より直流電流を印加することで、スピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の電力が出力信号として磁気抵抗効果素子から出力される。この出力信号は、第1のポートから入力されたスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の信号が、インピーダンスが減少した磁気抵抗効果素子を通過して出力される信号に加算される。したがって、直流電流入力端子より磁気抵抗効果素子に印加された直流電流によって生み出された電力が十分大きい場合、スピントルク共鳴周波数の近傍の周波数において、第1のポートから入力された信号の電力よりも大きな電力の信号が第2のポートから出力される。以上のように、上記特徴の増幅器は、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の信号を増幅する増幅器として機能することができる。また、直流電流入力端子より印加される直流電流の大きさによって、磁気抵抗効果素子の素子インピーダンスを調整できるため、上記特徴の増幅器は、増幅率が調整可能な増幅器として機能することができる。
さらに、本発明に係る増幅器は、前記磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を設定可能な周波数設定機構を有することを特徴とする請求項1に記載の増幅器。
上記特徴の増幅器は、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を任意の周波数にすることができるため、上記特徴の増幅器は、任意の周波数帯域に対応した増幅器として機能することが可能となる。
さらに、本発明に係る増幅器は、前記周波数設定機構は、前記磁化自由層における有効磁場を設定可能な有効磁場設定機構であり、前記有効磁場を変化させて前記磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を変化可能であることを第3の特徴とする。
上記特徴の増幅器によれば、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を可変制御することができるため、上記特徴の増幅器は、増幅可能な周波数帯域を変化可能な増幅器として機能することが可能となる。
さらに、本発明に係る増幅器は、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じ複数の前記磁気抵抗効果素子同士が直列接続または並列接続されている磁気抵抗効果素子群を有することを第4の特徴とする。
上記特徴の増幅器によれば、スピントルク共鳴周波数が実質的に同じ複数の磁気抵抗効果素子同士が直列接続または並列接続されているので、大きい増幅率が得られる。ここで、「スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じ」とは、2つの磁気抵抗効果素子で考えた時に、各々の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、2つの磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の平均値から、その平均値の±1%の範囲内にあることをいう。
さらに、本発明に係る増幅器は、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる複数の前記磁気抵抗効果素子群同士が直列接続されていることを第5の特徴とする。
上記特徴の増幅器によれば、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる複数の磁気抵抗効果素子群同士が直列接続されているので、増幅器として機能する周波数帯域を広くすることができる。ここで、磁気抵抗効果素子群のスピントルク共鳴周波数とは、磁気抵抗効果素子群に含まれる複数の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の平均値のことをいう。また、「スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる」とは、2つの磁気抵抗効果素子(または2つの磁気抵抗効果素子群)で考えた時に、各々の磁気抵抗効果素子(または各々の磁気抵抗効果素子群)のスピントルク共鳴周波数が、2つの磁気抵抗効果素子(または2つの磁気抵抗効果素子群)のスピントルク共鳴周波数の平均値から、その平均値の±1%の範囲の外にあることをいう。
さらに、本発明に係る増幅器は、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる複数の前記磁気抵抗効果素子群同士が並列接続されていることを第6の特徴とする。
上記特徴の増幅器によれば、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる複数の磁気抵抗効果素子群同士が並列接続されているので、増幅器として機能する周波数帯域を広くすることができる。
さらに、本発明に係る増幅器は、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる複数の前記磁気抵抗効果素子同士が直列接続されていることを第7の特徴とする。
上記特徴の増幅器によれば、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる複数の磁気抵抗効果素子同士が直列接続されているので、増幅器として機能する周波数帯域を広くすることができる。
さらに、本発明に係る増幅器は、複数の前記磁気抵抗効果素子同士が直列接続され、前記複数の磁気抵抗効果素子の各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に前記周波数設定機構を複数有することを第8の特徴とする。
上記特徴の増幅器によれば、複数の磁気抵抗効果素子の各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に周波数設定機構を複数有しているため、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を個別に設定することが可能となる。さらに、複数の磁気抵抗効果素子同士が直列接続されているので、増幅器として機能する周波数帯域を任意に決めることができる。
さらに、本発明に係る増幅器は、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる複数の前記磁気抵抗効果素子同士が並列接続されていることを第9の特徴とする。
上記特徴の増幅器によれば、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる複数の磁気抵抗効果素子同士が並列接続されているので、増幅器として機能する周波数帯域を広くすることができる。
さらに、本発明に係る増幅器は、複数の前記磁気抵抗効果素子同士が並列接続され、前記複数の磁気抵抗効果素子の各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に前記周波数設定機構を複数有することを第10の特徴とする。
上記特徴の増幅器によれば、複数の磁気抵抗効果素子の各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に周波数設定機構を複数有しているため、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を個別に設定することが可能となる。さらに、複数の磁気抵抗効果素子同士が並列接続されているので、増幅器として機能する周波数帯域を任意に決めることができる。
さらに、本発明に係る増幅器は、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる前記複数の磁気抵抗効果素子は、平面視形状のアスペクト比が互いに異なることを第11の特徴とする。ここで、「平面視形状」とは、磁気抵抗効果素子を構成する各層の積層方向に垂直な平面で見た形状のことである。また、「平面視形状のアスペクト比」とは、磁気抵抗効果素子の平面視形状に最小の面積で外接する長方形の、短辺の長さに対する長辺の長さの比率のことである。
上記特徴の増幅器によれば、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる複数の磁気抵抗効果素子は、平面視形状のアスペクト比が互いに異なるため、同一プロセスでスピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる複数の磁気抵抗効果素子を作製することが可能となる。即ち、複数の磁気抵抗効果素子の膜構成を同じにすることができるため、複数の磁気抵抗効果素子を構成する層を一括で成膜形成することができる。
さらに、本発明に係る増幅器は、前記第2のポートに対して並列に前記信号線路および前記グラウンドに接続された磁気抵抗効果素子が存在しないことを第12の特徴とする。
上記特徴の増幅器によれば、第2のポートに対して並列に信号線路およびグラウンドに接続された磁気抵抗効果素子が存在しないため、第2のポートに対して並列に信号線路およびグラウンドに接続された磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数に対するインピーダンス減少による、入力された高周波信号のグラウンドへの流入を防ぐことが出来、高周波信号の損失増加を防ぐことが可能となる。このことにより、上記特徴の増幅器は、増幅率の大きい増幅器として機能することが可能となる。
本発明によれば、磁気抵抗効果素子を利用した増幅器を提供することが出来る。
第1の実施形態に係る増幅器の構成を示した断面模式図である。 第1の実施形態に係る増幅器の直流電流に対する周波数と増幅率との関係を示したグラフである。 第1の実施形態に係る増幅器の磁場強度に対する周波数と増幅率との関係を示したグラフである。 第2の実施形態に係る増幅器の構成を示した断面模式図である。 第2の実施形態に係る増幅器の周波数と増幅率との関係を示したグラフである。 第3の実施形態に係る増幅器の構成を示した断面模式図である。 第3の実施形態に係る増幅器の上面図である。 第3の実施形態に係る増幅器の周波数と増幅率との関係を示したグラフである。 第4の実施形態に係る増幅器の構成を示した断面模式図である。 第4の実施形態に係る増幅器の周波数と増幅率との関係を示したグラフである。 第2の実施形態の変形例の増幅器の構成を示した断面模式図である。 第3の実施形態の変形例の増幅器の構成を示した断面模式図である。 第4の実施形態の変形例の増幅器の構成を示した断面模式図である。 第5の実施形態に係る増幅器の構成を示した断面模式図である。 第5の実施形態に係る増幅器の上面図である。 第5の実施形態に係る増幅器の周波数と増幅率との関係を示したグラフである。 第6の実施形態に係る増幅器の構成を示した断面模式図である。 第6の実施形態に係る増幅器の周波数と増幅率との関係を示したグラフである。
本発明を実施するための好適な形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことが出来る。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る増幅器100の断面模式図である。増幅器100は、磁化固定層2、磁化自由層4およびこれらの間に配置されたスペーサ層3を有する磁気抵抗効果素子1a、上部電極5、下部電極6、第1のポート9a、第2のポート9b、信号線路7、インダクタ10、直流電流入力端子11および周波数設定機構としての磁場印加機構12を有している。第1のポート9a、磁気抵抗効果素子1aおよび第2のポート9bが信号線路7を介してこの順に直列接続されている。インダクタ10は、磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7(磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7または磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7の一方)に接続され、さらに基準電位端子20を介してグラウンド8に接続可能になっている。直流電流入力端子11は、磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7(磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7または磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7の他方)に接続されている。増幅器100は、グラウンド8に接続された時に、磁気抵抗効果素子1a、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路を形成可能になっている。より具体的には、増幅器100は、インダクタ10が基準電位端子20を介してグラウンド8に接続され、直流電流入力端子11にグラウンド8に接続された直流電流源13が接続されることにより、磁気抵抗効果素子1a、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路を形成可能になっている。また、増幅器100には、第2のポート9bに対して並列に信号線路7およびグラウンド8に接続された磁気抵抗効果素子が存在しない。
第1のポート9aは交流信号である高周波信号が入力される入力ポートであり、第2のポート9bは高周波信号が出力される出力ポートである。第1のポート9aに入力される高周波信号及び第2のポート9bから出力される高周波信号は、例えば、100MHz以上の周波数を有する信号である。信号線路7は、磁気抵抗効果素子1aを挟むように、上部電極5および下部電極6を介して磁気抵抗効果素子1aに電気的に接続され、第1のポート9aから入力された高周波信号は磁気抵抗効果素子1aに流され、第2のポート9bに出力される。また、高周波信号が第1のポート9aから第2のポート9bに通過する際の電力比(出力電力/入力電力)のdB値である増幅率は、ネットワークアナライザなどの高周波測定器により測定することが出来る。
上部電極5および下部電極6は、一対の電極としての役目を有し、磁気抵抗効果素子1aを構成する各層の積層方向に磁気抵抗効果素子1aを介して配設されている。つまり、上部電極5および下部電極6は、信号(電流)を磁気抵抗効果素子1aに対して、磁気抵抗効果素子1aを構成する各層の面と交差する方向、例えば、磁気抵抗効果素子1aを構成する各層の面に対して垂直な方向(積層方向)に流すための一対の電極としての機能を有している。上部電極5および下部電極6は、Ta、Cu、Au、AuCu、Ruまたはこれらの材料のいずれか2つ以上の膜で構成されることが好ましい。磁気抵抗効果素子1aは、一端(磁化自由層4側)が上部電極5を介して信号線路7に電気的に接続され、他端(磁化固定層2側)が下部電極6を介して信号線路7に電気的に接続されている。
グラウンド8は、基準電位として機能する。信号線路7とグラウンド8との形状は、マイクロストリップライン(MSL)型やコプレーナウェーブガイド(CPW)型に規定することが好ましい。マイクロストリップライン形状やコプレーナウェーブガイド形状を設計する際、信号線路7の特性インピーダンスと回路系のインピーダンスが等しくなるように信号線路7の信号線幅やグラウンド間距離を設計することにより、信号線路7を伝送損失の少ない伝送線路とすることが可能となる。
インダクタ10は、信号線路7とグラウンド8との間に接続され、インダクタ成分により電流の高周波成分をカットすると同時に電流の直流成分を通す機能を有する。インダクタ10は、チップインダクタまたはパターン線路によるインダクタのどちらでもよい。また、インダクタ成分を有する抵抗素子でもよい。インダクタ10のインダクタンス値は10nH以上であることが好ましい。このインダクタ10により、磁気抵抗効果素子1aを通過する高周波信号の特性を劣化させることなく、磁気抵抗効果素子1a、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路に、直流電流入力端子11から印加された直流電流を流すことができる。
直流電流入力端子11は、磁気抵抗効果素子1aに対してインダクタ10の信号線路7への接続箇所とは反対側の箇所の信号線路7に接続されている。より具体的には、直流電流入力端子11は、磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7に接続されている。直流電流入力端子11に直流電流源13が接続されることで、磁気抵抗効果素子1aに直流電流を印加することが可能になる。図1に示す増幅器100では、磁気抵抗効果素子1aに、磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れる直流電流が印加される。また、直流電流入力端子11と直流電流源13との間に、高周波信号をカットするための、インダクタまたは抵抗素子が直列に接続されてもよい。
直流電流源13は、グラウンド8及び直流電流入力端子11に接続され、直流電流入力端子11から、磁気抵抗効果素子1a、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路に、直流電流を印加する。直流電流源13は、例えば、可変抵抗と直流電圧源との組み合わせの回路により構成され、直流電流の電流値を変化可能に構成されている。直流電流源13は、一定の直流電流を発生可能な、固定抵抗と直流電圧源との組み合わせの回路により構成されてもよい。
磁場印加機構12は、磁気抵抗効果素子1aの近傍に配設され、磁気抵抗効果素子1aに磁場を印加して、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数を設定可能となっている。例えば、磁場印加機構12は、電圧もしくは電流のいずれかにより、印加磁場強度を可変制御できる電磁石型またはストリップライン型で構成される。また、磁場印加機構12は、電磁石型またはストリップライン型と一定の磁場のみを供給する永久磁石との組み合わせにより構成されていてもよい。また、磁場印加機構12は、磁気抵抗効果素子1aに印加する磁場を変化させることで、磁化自由層4における有効磁場を変化させて磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数を変化可能となっている。
磁化固定層2は、強磁性体材料で構成されており、その磁化方向が実質的に一方向に固定されている。磁化固定層2は、Fe、Co、Ni、NiとFeの合金、FeとCoの合金、またはFeとCoとBの合金などの高スピン分極率材料から構成されることが好ましい。これにより、高い磁気抵抗変化率を得ることができる。また、磁化固定層2は、ホイスラー合金で構成されても良い。また、磁化固定層2の膜厚は、1〜10nmとすることが好ましい。また、磁化固定層2の磁化を固定するために磁化固定層2に接するように反強磁性層を付加してもよい。或いは、結晶構造、形状などに起因する磁気異方性を利用して磁化固定層2の磁化を固定してもよい。反強磁性層には、FeO、CoO、NiO、CuFeS2、IrMn、FeMn、PtMn、CrまたはMnなどを用いることが出来る。
スペーサ層3は、磁化固定層2と磁化自由層4の間に配置され、磁化固定層2の磁化と磁化自由層4の磁化が相互作用して磁気抵抗効果が得られる。スペーサ層3としては、導電体、絶縁体、半導体によって構成される層、もしくは、絶縁体中に導体によって構成される通電点を含む層で構成される。
スペーサ層3として非磁性導電材料を適用する場合、材料としてはCu、Ag、AuまたはRuなどが挙げられ、磁気抵抗効果素子1aには巨大磁気抵抗(GMR)効果が発現する。GMR効果を利用する場合、スペーサ層3の膜厚は、0.5〜3.0nm程度とすることが好ましい。
スペーサ層3として非磁性絶縁材料を適用する場合、材料としてはAlまたはMgOなどが挙げられ、磁気抵抗効果素子1aにはトンネル磁気抵抗(TMR)効果が発現する。磁化固定層2と磁化自由層4との間にコヒーレントトンネル効果が発現するように、スペーサ層3の膜厚を調整することで高い磁気抵抗変化率が得られる。TMR効果を利用する場合、スペーサ層3の膜厚は、0.5〜3.0nm程度とすることが好ましい。
スペーサ層3として非磁性半導体材料を適用する場合、材料としてはZnO、In、SnO、ITO、GaOまたはGaなどが挙げられ、スペーサ層3の膜厚は1.0〜4.0nm程度とすることが好ましい。
スペーサ層3として非磁性絶縁体中の導体によって構成される通電点を含む層を適用する場合、AlまたはMgOによって構成される非磁性絶縁体中に、CoFe、CoFeB、CoFeSi、CoMnGe、CoMnSi、CoMnAl、Fe、Co、Au、Cu、AlまたはMgなどの導体によって構成される通電点を含む構造とすることが好ましい。この場合、スペーサ層3の膜厚は、0.5〜2.0nm程度とすることが好ましい。
磁化自由層4は、その磁化の方向が変化可能であり、強磁性材料で構成されている。磁化自由層4の磁化の方向は、例えば、外部印加磁場またはスピン偏極電子によって変化可能である。磁化自由層4は、膜面内方向に磁化容易軸を有する材料の場合、材料としてはCoFe、CoFeB、CoFeSi、CoMnGe、CoMnSiまたはCoMnAlなどが挙げられ、厚さは1〜30nm程度とすることが好ましい。磁化自由層4は、膜面法線方向に磁化容易軸を有する材料の場合、材料としてはCo、CoCr系合金、Co多層膜、CoCrPt系合金、FePt系合金、希土類を含むSmCo系合金またはTbFeCo合金などが挙げられる。また、磁化自由層4は、ホイスラー合金で構成されても良い。また、磁化自由層4とスペーサ層3との間に、高スピン分極率材料を挿入しても良い。これによって、高い磁気抵抗変化率を得ることが可能となる。高スピン分極率材料としては、CoFe合金またはCoFeB合金などが挙げられる。CoFe合金またはCoFeB合金いずれの膜厚も0.2〜1.0nm程度とすることが好ましい。
また、上部電極5と磁気抵抗効果素子1aとの間、および下部電極6と磁気抵抗効果素子1aとの間にキャップ層、シード層またはバッファー層を配設しても良い。キャップ層、シード層またはバッファー層としては、Ru、Ta、Cu、Crまたはこれらの積層膜などが挙げられ、これらの層の膜厚は2〜10nm程度とすることが好ましい。
尚、磁気抵抗効果素子1aの大きさは、磁気抵抗効果素子1aの平面視形状が長方形(正方形を含む)の場合、長辺を100nm程度、或いは100nm以下にすることが望ましい。また、磁気抵抗効果素子1aの平面視形状が長方形ではない場合は、磁気抵抗効果素子1aの平面視形状に最小の面積で外接する長方形の長辺を、磁気抵抗効果素子1aの長辺と定義する。長辺が100nm程度と小さい場合、磁化自由層4の磁区の単磁区化が可能となり、高効率なスピントルク共鳴現象の実現が可能となる。ここで、「平面視形状」とは、磁気抵抗効果素子を構成する各層の積層方向に垂直な平面で見た形状のことである。
ここで、スピントルク共鳴現象について説明する。
磁気抵抗効果素子に、磁気抵抗効果素子の固有のスピントルク共鳴周波数と同じ周波数の高周波信号を入力すると、磁化自由層の磁化がスピントルク共鳴周波数で振動する。この現象をスピントルク共鳴現象と呼ぶ。磁気抵抗効果素子の素子抵抗値は、磁化固定層と磁化自由層との磁化の相対角で決まる。そのため、スピントルク共鳴時の磁気抵抗効果素子の抵抗値は、磁化自由層の磁化の振動に伴い、周期的に変化する。つまり、磁気抵抗効果素子は、スピントルク共鳴周波数で抵抗値が周期的に変化する抵抗振動素子として取り扱うことが出来る。さらに、抵抗振動素子にスピントルク共鳴周波数と同じ周波数の高周波信号を入力すると、それぞれの位相が同期し、この高周波信号に対するインピーダンスは減少する。つまり、磁気抵抗効果素子は、スピントルク共鳴現象により、スピントルク共鳴周波数で高周波信号のインピーダンスが低減する抵抗素子として取り扱うことが出来る。
スピントルク共鳴周波数は、磁化自由層4における有効磁場によって変化する。磁化自由層4における有効磁場Heffは、磁化自由層に印加される外部磁場H、磁化自由層4における異方性磁場H、磁化自由層4における反磁場H、磁化自由層4における交換結合磁場HEXを用いて、
eff=H+H+H+HEX
で表される。磁場印加機構12は、磁気抵抗効果素子1aに磁場を印加して磁化自由層4に外部磁場Hを印加することにより、磁化自由層4における有効磁場Heffを設定可能な有効磁場設定機構である。有効磁場設定機構である磁場印加機構12は、磁気抵抗効果素子1aに印加する磁場を変化させることで、磁化自由層4における有効磁場を変化させて磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数を変化させることができる。このように、磁気抵抗効果素子1aに印加される磁場を変化させると、スピントルク共鳴周波数は変化する。
また、スピントルク共鳴時に磁気抵抗効果素子1aに直流電流が印加されることにより、スピントルクが増加して、振動する抵抗値の振幅が増加する。振動する抵抗値の振幅が増加することにより、磁気抵抗効果素子1aの素子インピーダンスの変化量が増加する。また、印加される直流電流の電流密度を変化させると、スピントルク共鳴周波数は変化する。したがって、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数は、磁場印加機構12からの磁場を変化させるか、直流電流入力端子11からの印加直流電流を変化させることにより変化させることができる。磁気抵抗効果素子1aに印加される直流電流の電流密度は、磁気抵抗効果素子1aの発振閾値電流密度よりも小さいことが好ましい。磁気抵抗効果素子の発振閾値電流密度とは、この値以上の電流密度の直流電流の印加により、磁気抵抗効果素子の磁化自由層の磁化が一定周波数及び一定の振幅で歳差運動を開始し、磁気抵抗効果素子が発振する(磁気抵抗効果素子の出力(抵抗値)が一定周波数及び一定の振幅で変動する)閾値の電流密度のことである。
スピントルク共鳴周波数の近傍の周波数で周期的に抵抗値が振動する磁気抵抗効果素子1aに、直流電流入力端子11より直流電流を印加することで、スピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の電力が出力信号として磁気抵抗効果素子1aから出力される。この出力信号は、第1のポート9aから入力され、インピーダンスが減少した磁気抵抗効果素子1aを通過して出力される、スピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の信号に加算される。したがって、直流電流入力端子11より磁気抵抗効果素子1aに印加された直流電流によって生み出された電力が十分大きい場合、スピントルク共鳴周波数の近傍の周波数において、第1のポート9aから入力された信号の電力よりも大きな電力の信号が第2のポート9bから出力される。この現象を磁気抵抗効果素子1aのインピーダンスで考えると、スピントルク共鳴現象によって減少した、スピントルク共鳴周波数の近傍の周波数に対する磁気抵抗効果素子1aのインピーダンスが、磁気抵抗効果素子1aへの直流電流の印加によりさらに減少し、マイナスの値を持つと考えることができる。以上のように、増幅器100は、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の信号を増幅する増幅器として機能することができる。また、直流電流入力端子11より印加される直流電流の大きさによって、磁気抵抗効果素子1aの素子インピーダンスを調整できるため、増幅器100は、増幅率が調整可能な増幅器として機能することができる。
図2および図3に、増幅器100に入力される高周波信号の周波数と増幅率との関係を示したグラフを示す。図2および図3の縦軸は増幅率、横軸は周波数を表している。図2は、磁気抵抗効果素子1aに印加された磁場が一定の時のグラフである。図2のプロット線100a1は、直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子1aに印加される直流電流値がIa1の時のものであり、プロット線100a2は直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子1aに印加される直流電流値がIa2の時のものである。この時の印直流電流値の関係は、Ia1<Ia2である。また、図3は、磁気抵抗効果素子1aに印加された直流電流が一定の時のグラフである。図3のプロット線100b1は、磁場印加機構12から磁気抵抗効果素子1aに印加される磁場強度がHb1の時のものであり、プロット線100b2は磁場印加機構12から磁気抵抗効果素子1aに印加される磁場強度がHb2の時のものである。この時の磁場強度の関係は、Hb1<Hb2である。
例えば、図2に示されるように、直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子1aに印加される直流電流値をIa1からIa2に大きくした場合、電流値の変化に伴い磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数での素子インピーダンスの低下量が増加することで、第2のポート9bから出力される高周波信号がさらに大きくなり、増幅率が大きくなる。このように、増幅器100は、直流電流入力端子11より印加される直流電流の大きさによって、磁気抵抗効果素子1aの素子インピーダンスを調整できるため、増幅器100は、増幅率が調整可能な増幅器として機能することができる。また、直流電流値をIa1からIa2に大きくすると磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数はfa1からfa2にシフトする。つまり、増幅器100は、対応する周波数帯域を変化可能な増幅器として機能することも出来る。
さらに、例えば、図3に示されるように、磁場印加機構12から印加される磁場強度をHb1からHb2に強くした場合、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数はfb1からfb2にシフトする。すなわち、増幅可能な周波数帯域は高周波数側へシフトする。また、磁場強度(磁化自由層4における有効磁場Heff)を変化させる方が、直流電流値を変化させるよりも大きく増幅可能な周波数帯域をシフトさせることができる。つまり、増幅器100は、増幅可能な周波数帯域を変化可能な増幅器として機能することが出来る。
なお、磁気抵抗効果素子1aに印加される外部磁場H(磁化自由層4における有効磁場Heff)が大きくなるに従って、磁気抵抗効果素子1aの振動する抵抗値の振幅が小さくなるので、磁気抵抗効果素子1aに印加される外部磁場H(磁化自由層4における有効磁場Heff)を大きくするのに伴い、磁気抵抗効果素子1aに印加される直流電流の電流密度を大きくすることが好ましい。
このように、増幅器100は、磁化固定層2、磁化自由層4およびこれらの間に配置されたスペーサ層3を有する磁気抵抗効果素子1aと、第1のポート9aと、第2のポート9bと、信号線路7と、インダクタ10と、直流電流入力端子11とを有し、第1のポート9a、磁気抵抗効果素子1aおよび第2のポート9bが信号線路7を介してこの順に直列接続され、インダクタ10は、磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7(磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7または磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7の一方)に接続され、さらにグラウンド8に接続可能であり、直流電流入力端子11は、磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7(磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7または磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7の他方)に接続され、磁気抵抗効果素子1a、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路を形成可能である。
したがって、磁気抵抗効果素子1aに第1のポート9aから信号線路7を介して高周波信号が入力されることにより、磁気抵抗効果素子1aにスピントルク共鳴を誘起させることが出来る。これにより、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数で磁化自由層4の磁化が大きく振動し、磁気抵抗効果素子1aは、スピントルク共鳴周波数の近傍の周波数で周期的に抵抗値が大きく振動する素子として扱うことが出来る。また、スピントルク共鳴現象によって、スピントルク共鳴周波数の近傍の周波数に対する磁気抵抗効果素子1aの素子インピーダンスが減少する。また、直流電流入力端子11から入力された直流電流は、磁気抵抗効果素子1a、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含んで形成される閉回路を流れる。この閉回路により、磁気抵抗効果素子1aに直流電流を印加することが出来る。スピントルク共鳴周波数の近傍の周波数で周期的に抵抗値が振動する磁気抵抗効果素子1aに、直流電流入力端子11より直流電流を印加することで、スピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の電力が出力信号として磁気抵抗効果素子1aから出力される。この出力信号は、第1のポート9aから入力されたスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の信号が、インピーダンスが減少した磁気抵抗効果素子1aを通過して出力される信号に加算される。したがって、直流電流入力端子11より磁気抵抗効果素子1aに印加された直流電流によって生み出された電力が十分大きい場合、スピントルク共鳴周波数の近傍の周波数において、第1のポート9aから入力された信号の電力よりも大きな電力の信号が第2のポート9bから出力される。以上のように、増幅器100は、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の信号を増幅する増幅器として機能することができる。また、直流電流入力端子11より印加される直流電流の大きさによって、磁気抵抗効果素子1aの素子インピーダンスを調整できるため、増幅器100は、増幅率を調整可能な増幅器として機能することができる。
増幅率を大きくするためには、磁化自由層4が膜面法線方向に磁化容易軸を有し、磁化固定層2が膜面方向に磁化容易軸を有する構成とすることが好ましい。
また、直流電流入力端子11から印加される直流電流を変化させることにより、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数を可変制御することができるため、増幅器100は、増幅可能な周波数帯域を変化可能な増幅器として機能することも可能となる。
さらに、増幅器100は、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数を設定可能な周波数設定機構としての磁場印加機構12を有するので、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数を任意の周波数にすることができる。したがって、増幅器100は、任意の周波数帯域に対応した増幅器として機能することが可能となる。
さらに、増幅器100は、磁場印加機構12が、磁化自由層4における有効磁場を設定可能な有効磁場設定機構であり、磁化自由層4における有効磁場を変化させて磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数を変化可能であるので、増幅可能な周波数帯域を変化可能な増幅器として機能することが可能となる。
さらに、増幅器100は、第2のポート9bに対して並列に信号線路7およびグラウンド8に接続された磁気抵抗効果素子が存在しないため、第2のポート9bに対して並列に信号線路7およびグラウンド8に接続された磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数に対するインピーダンス減少による、入力された高周波信号のグラウンド8への流入を防ぐことが出来、高周波信号の損失増加を防ぐことが可能となる。このことにより、増幅器100は、増幅率が大きな増幅器として機能することが可能となる。
以上説明した第1の実施形態の増幅器100に対しては、様々な構成要素を追加することができる。例えば、第1のポート9aに接続された高周波回路に直流信号が流れるのを防ぐために、直流電流入力端子11の信号線路7への接続部と第1のポート9aとの間の信号線路7に、直流信号をカットするためのコンデンサを直列に接続してもよい。また、第2のポート9bに接続された高周波回路に直流信号が流れるのを防ぐために、インダクタ10の信号線路7への接続部と第2のポート9bとの間の信号線路7に、直流信号をカットするためのコンデンサを直列に接続してもよい。
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る増幅器101の断面模式図である。増幅器101において、第1の実施形態の増幅器100と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。第1の実施形態の増幅器100と共通している要素は同じ符号を用いており、共通している要素の説明は省略する。増幅器101は、第1の実施形態の増幅器100の磁気抵抗効果素子1aにかえて、磁気抵抗効果素子群14aを有している。磁気抵抗効果素子群14aは磁気抵抗効果素子1aおよび磁気抵抗効果素子1bを有している。磁気抵抗効果素子1aおよび磁気抵抗効果素子1b同士は直列接続されており、第1のポート9a、磁気抵抗効果素子1a、磁気抵抗効果素子1b、および第2のポート9bが信号線路7を介してこの順に直列接続されている。磁気抵抗効果素子1aおよび磁気抵抗効果素子1bはそれぞれ、磁化固定層2、磁化自由層4およびこれらの間に配置されたスペーサ層3を有している。また、磁気抵抗効果素子1aおよび磁気抵抗効果素子1bのそれぞれを挟むように上部電極5および下部電極6が配置されている。磁気抵抗効果素子1a、1bは、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じである。ここで、「スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じ」とは、2つの磁気抵抗効果素子で考えた時に、各々の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、2つの磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の平均値から、その平均値の±1%の範囲内にあることをいう。より具体的には、磁気抵抗効果素子1a、1bは、膜構成および平面視形状が互いに同じであり、同一の磁場および同一の電流密度の直流電流が印加された状態でのスピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じである。ここで「膜構成が同じ」とは、磁気抵抗効果素子を構成する各層の材料および膜厚が同じであり、さらに各層の積層順が同じであることを意味する。また、「平面視形状」とは、磁気抵抗効果素子を構成する各層の積層方向に垂直な平面で見た形状のことである。
インダクタ10は、直列接続された磁気抵抗効果素子1a、1bと第2のポート9bとの間の信号線路7(磁気抵抗効果素子1a、1bと第1のポート9aとの間の信号線路7または磁気抵抗効果素子1a、1bと第2のポート9bとの間の信号線路7の一方)に接続され、さらに基準電位端子20を介してグラウンド8に接続可能になっている。直流電流入力端子11は、直列接続された磁気抵抗効果素子1a、1bと第1のポート9aとの間の信号線路7(磁気抵抗効果素子1a、1bと第1のポート9aとの間の信号線路7または磁気抵抗効果素子1a、1bと第2のポート9bとの間の信号線路7の他方)に接続されており、直流電流入力端子11に、グラウンド8に接続された直流電流源13が接続されることにより、磁気抵抗効果素子1a、磁気抵抗効果素子1b、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路が形成され、直流電流入力端子11から入力された直流電流はこの閉回路を流れ、磁気抵抗効果素子1aおよび磁気抵抗効果素子1bに直流電流が印加される。
磁気抵抗効果素子1aの磁化固定層2が接続されている下部電極6と、磁気抵抗効果素子1bの磁化自由層4が接続されている上部電極5とが電気的に接続されており、磁気抵抗効果素子1a、1b同士は直列接続されている。
磁場印加機構12は、磁気抵抗効果素子1a、1bの近傍に配設され、磁気抵抗効果素子1a、1bに同時に同一の磁場を印加する。また、磁場印加機構12は、磁気抵抗効果素子1a、1bに印加する磁場を変化させることで、磁気抵抗効果素子1a、1bの磁化自由層4における有効磁場を変化させて磁気抵抗効果素子1a、1bのスピントルク共鳴周波数を変化可能となっている。
増幅器101のその他の構成は第1の実施形態の増幅器100と同じである。
各々のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数で周期的に抵抗値が振動する磁気抵抗効果素子1a、1bに、直流電流入力端子11より直流電流を印加することで、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の電力が出力信号として磁気抵抗効果素子1a、1bから出力される。この出力信号は、第1のポート9aから入力され、インピーダンスが減少した磁気抵抗効果素子1a、1bを通過して出力される、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の信号に加算され、第1の実施形態の増幅器100の場合と同様にして、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数において、第1のポート9aから入力された信号の電力よりもさらに大きな電力の信号が第2のポート9bから出力される。ここで、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数とが実質的に同じであるので、第1の実施形態の増幅器100の場合よりも、信号が加算される効果が大きくなる。従って、増幅器101によれば、大きい増幅率が得られる。また、直流電流入力端子11より印加される直流電流の大きさによって、各磁気抵抗効果素子の素子インピーダンスを調整できるため、増幅器101は、増幅率が調整可能な増幅器として機能することができる。
図5に、増幅器101に入力される高周波信号の周波数と増幅率との関係を示したグラフを示す。図5の縦軸は増幅率、横軸は周波数を表している。図5のプロット線200a1は、増幅器101に磁気抵抗効果素子1bおよび磁気抵抗効果素子1bのいずれか一方がない場合を想定した時のものであり、直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子1aおよび磁気抵抗効果素子1bのいずれか一方に電流値I1の直流電流が印加された時のものである。また、図5のプロット線200a3は、直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子群14aに電流値I1の直流電流が印加された時のものである。図5に示されるように、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数faと、磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数fbが実質的に同じであるため、増幅器101は、図5に示されるように、第1の実施形態の増幅器100よりも大きい増幅率が得られる。
さらに、磁気抵抗効果素子1a、1bに印加される直流電流、または磁場印加機構12から磁気抵抗効果素子1a、1bに印加される磁場強度を変化させることで、磁気抵抗効果素子1a、1bのスピントルク共鳴周波数を任意に変更することが可能となる。このことにより、増幅器101は、増幅可能な周波数帯域を変化可能な増幅器として機能することが可能となる。
このように、増幅器101は、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じ複数の磁気抵抗効果素子1a、1b同士が直列接続されている磁気抵抗効果素子群14aを有するので、大きい増幅率が得られる。
さらに、磁気抵抗効果素子1a、1bに印加される直流電流、または磁場強度を変化させることで、磁気抵抗効果素子1a、1bのスピントルク共鳴周波数を可変制御することができるため、増幅器101は、増幅可能な周波数帯域を変化可能な増幅器として機能することが可能となる。
さらに、増幅器101は、複数の磁気抵抗効果素子1aおよび1bの膜構成、平面視形状ともに、互いに同じであるため、同一プロセスでスピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じである複数の磁気抵抗効果素子1a、1bを作製することが可能となる。つまり、増幅器101は、複数の磁気抵抗効果素子1a、1bの膜構成を同じにすることができるため、複数の磁気抵抗効果素子1a、1bを構成する層を一括で成膜形成することができ、製造コストを抑えることが可能となる。
また、第2の実施形態の増幅器101では、磁気抵抗効果素子群14aにおいて、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じである2つの磁気抵抗効果素子1a、1bが直列に接続されているが、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じである3つ以上の磁気抵抗効果素子が直列に接続されていてもよい。この場合、さらに大きい増幅率が得られる。
また、第2の実施形態の増幅器101では、磁場印加機構12が磁気抵抗効果素子1a、1bに同時に同一の磁場を印加しているが、各磁気抵抗効果素子に個別に磁場を印加するための磁場印加機構が設けられていても良い。
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係る増幅器102の断面模式図である。増幅器102において、第2の実施形態の増幅器101と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。第2の実施形態の増幅器101と共通している要素は同じ符号を用いており、共通している要素の説明は省略する。増幅器102は、第2の実施形態の増幅器101に対し、さらに磁気抵抗効果素子群14bを有している。磁気抵抗効果素子群14bは磁気抵抗効果素子1cおよび磁気抵抗効果素子1dを有している。磁気抵抗効果素子1cおよび磁気抵抗効果素子1d同士は直列接続されている。磁気抵抗効果素子1cおよび磁気抵抗効果素子1dはそれぞれ、磁化固定層2、磁化自由層4およびこれらの間に配置されたスペーサ層3を有している。また、磁気抵抗効果素子1cおよび磁気抵抗効果素子1dのそれぞれを挟むように上部電極5および下部電極6 が配置されている。磁気抵抗効果素子1c、1dはスピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じである。より具体的には、磁気抵抗効果素子1c、1dは、膜構成および平面視形状が互いに同じであり、同一の磁場および同一の電流密度の直流電流が印加された状態でのスピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じである。磁気抵抗効果素子群14aと磁気抵抗効果素子群14bは信号線路7を介して直列接続されており、第1のポート9a、磁気抵抗効果素子群14a、磁気抵抗効果素子群14b、および第2のポート9bが信号線路7を介してこの順に直列接続されている。
インダクタ10は、直列接続された磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dと第2のポート9bとの間の信号線路7(磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dと第1のポート9aとの間の信号線路7または磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dと第2のポート9bとの間の信号線路7の一方)に接続され、さらに基準電位端子20を介してグラウンド8に接続可能になっている。直流電流入力端子11は、直列接続された磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dと第1のポート9aとの間の信号線路7(磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dと第1のポート9aとの間の信号線路7または磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dと第2のポート9bとの間の信号線路7の他方)に接続されており、直流電流入力端子11に、グラウンド8に接続された直流電流源13が接続されることにより、磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1d、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路が形成され、直流電流入力端子11から入力された直流電流はこの閉回路を流れ、磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dに直流電流が印加される。
磁場印加機構12は、磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dの近傍に配設され、磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dに同時に同一の磁場を印加する。また、磁場印加機構12は、磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dに印加する磁場を変化させることで、磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dの磁化自由層4における有効磁場を変化させて磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dのスピントルク共鳴周波数を変化可能となっている。
磁気抵抗効果素子群14aのスピントルク共鳴周波数(磁気抵抗効果素子1a、1bのスピントルク共鳴周波数)と磁気抵抗効果素子群14b(磁気抵抗効果素子1a、1bのスピントルク共鳴周波数)のスピントルク共鳴周波数は、互いに実質的に異なる。より具体的には、磁気抵抗効果素子群14aの構成要素である磁気抵抗効果素子1a、1bと、磁気抵抗効果素子群14bの構成要素である磁気抵抗効果素子1c、1dとは、膜構成が互いに同じで、平面視形状はともに長方形であるが、平面視形状のアスペクト比が互いに異なっている。ここで、磁気抵抗効果素子群のスピントルク共鳴周波数とは、磁気抵抗効果素子群に含まれる複数の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の平均値のことをいう。 また、「スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる」とは、2つの磁気抵抗効果素子群で考えた時に、各々の磁気抵抗効果素子群のスピントルク共鳴周波数が、2つの磁気抵抗効果素子群のスピントルク共鳴周波数の平均値から、その平均値の±1%の範囲の外にあることをいう。また、「平面視形状のアスペクト比」とは、磁気抵抗効果素子の平面視形状に最小の面積で外接する長方形の、短辺の長さに対する長辺の長さの比率のことである。
図7は、増幅器102の上面図である。図7に示すように、磁気抵抗効果素子群14aの構成要素である磁気抵抗効果素子1a、1bと、磁気抵抗効果素子群14bの構成要素である1c、1dの平面視形状の短辺方向であるY方向の寸法Yは同じであるが、磁気抵抗効果素子1a、1bの平面視形状の長辺方向であるX方向の寸法Xaと磁気抵抗効果素子1c、1dの平面視形状の長辺方向であるX方向の寸法Xbは異なっており、Xa<Xbであることから、磁気抵抗効果素子1a、1bの平面視形状のアスペクト比(Xa/Y)より、磁気抵抗効果素子1c、1dの平面視形状のアスペクト比(Xb/Y)は大きい。同一の磁場および同一の電流密度の直流電流が磁気抵抗効果素子に印加された状態で考えると、磁気抵抗効果素子の平面視形状のアスペクト比が大きくなるに従って磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数は高くなるため、磁気抵抗効果素子1c、1dのスピントルク共鳴周波数は磁気抵抗効果素子1a、1bのスピントルク共鳴周波数よりも高くなる。このように、複数の磁気抵抗効果素子の平面視形状のアスペクト比を互いに異ならせることで、膜構成が互いに同じであってもスピントルク共鳴周波数を互いに異ならせることができるため、同一の成膜プロセスでスピントルク共鳴周波数が互いに異なる複数の磁気抵抗効果素子を作製することが可能となる。即ち、複数の磁気抵抗効果素子の膜構成を同じにすることができるため、複数の磁気抵抗効果素子を構成する層を一括で成膜形成することができる。さらに、増幅器101では、磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1d同士は直列接続されており、直流電流の流れる方向に垂直な断面の面積は、磁気抵抗効果素子1a、1bの方が磁気抵抗効果素子1c、1dよりも小さいので、印加される直流電流の電流密度は、磁気抵抗効果素子1a、1bの方が磁気抵抗効果素子1c、1dよりも大きくなる。したがって、印加される直流電流の電流密度が大きくなるに従って、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が低くなる場合、または、印加される直流電流の電流密度の違いが磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数に与える影響よりも、磁気抵抗効果素子の平面視形状のアスペクト比の違いが磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数に与える影響の方が大きい場合には、磁気抵抗効果素子1c、1dのスピントルク共鳴周波数fb(すなわち磁気抵抗効果素子群14bのスピントルク共鳴周波数fb)は、磁気抵抗効果素子1a、1bのスピントルク共鳴周波数fa(すなわち磁気抵抗効果素子群14aのスピントルク共鳴周波数fa)よりも高くなる。
増幅器102のその他の構成は第2の実施形態の増幅器101と同じである。
各々のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数で周期的に抵抗値が振動する磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dに、直流電流入力端子11より直流電流を印加することで、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の電力が出力信号として磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dから出力される。この出力信号は、第1のポート9aから入力され、インピーダンスが減少した磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dを通過して出力される、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の信号に加算され、第1の実施形態の増幅器100の場合と同様にして、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数において、第1のポート9aから入力された信号の電力よりも大きな電力の信号が第2のポート9bから出力される。以上のように、増幅器102は、磁気抵抗効果素子1a、1bのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数および磁気抵抗効果素子1c、1dのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の信号を増幅する増幅器として機能することができる。また、直流電流入力端子11より印加される直流電流の大きさによって、各磁気抵抗効果素子の素子インピーダンスを調整できるため、増幅器102は、増幅率が調整可能な増幅器として機能することができる。
図8に、増幅器102に入力される高周波信号の周波数と増幅率との関係を示したグラフを示す。図8の縦軸は増幅率、横軸は周波数を表している。図8のプロット線300a1は、増幅器102に磁気抵抗効果素子群14bがない場合を想定した時のものであり、直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子群14aのみに電流値I3の直流電流が印加された時のものである。プロット線300b1は、増幅器102に磁気抵抗効果素子群14aがない場合を想定した時のものであり、直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子群14bのみに電流値I3の直流電流が印加された時のものである。また、図8のプロット線300abは、直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子群14a、14bのそれぞれに電流値I3の直流電流が印加された時のものである。図8に示されるように、磁気抵抗効果素子1a、1bのスピントルク共鳴周波数fa(すなわち磁気抵抗効果素子群14aのスピントルク共鳴周波数fa)の近傍の周波数(図8に示す周波数帯域300a)の一部と、磁気抵抗効果素子1c、1dのスピントルク共鳴周波数fb(すなわち磁気抵抗効果素子群14bのスピントルク共鳴周波数fb)の近傍の周波数(図8に示す周波数帯域300b)の一部が重なるように磁気抵抗効果素子1a、1bと、磁気抵抗効果素子1c、1dの平面視形状のアスペクト比を異ならせると、増幅器102は、図8に示す周波数帯域300のように、第2の実施形態の増幅器101よりも増幅器として機能する周波数帯域を広くすることができる。
さらに、磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dに印加される直流電流、または磁場印加機構12から磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dに印加される磁場強度を変化させることで磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dのスピントルク共鳴周波数を任意に変更することが可能となる。このことにより、増幅器102は、増幅可能な周波数帯域を変化可能な増幅器として機能することが可能となる。
このように、増幅器102は、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる複数の磁気抵抗効果素子群14a、14b同士が直列接続されているので、増幅器として機能する周波数帯域を広くすることができる。さらに、増幅器102は、磁気抵抗効果素子に印加される直流電流、または磁場を変化させることで、増幅可能な周波数帯域を変化可能な増幅器として機能することが可能となる。
さらに、増幅器102は、磁気抵抗効果素子1a、1bと磁気抵抗効果素子1c、1dとで平面視形状のアスペクト比が互いに異なるため、同一プロセスでスピントルク共鳴周波数が互いに異なる複数の磁気抵抗効果素子を作製することが可能となる。つまり、増幅器102は、複数の磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dの膜構成を同じにすることができるため、複数の磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dを構成する層を一括で成膜形成することができ、製造コストを抑えることが可能となる。
また、第3の実施形態の増幅器102では、磁気抵抗効果素子群14aにおいて、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じである2つの磁気抵抗効果素子1a、1bが直列に接続されているが、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じである3つ以上の磁気抵抗効果素子が直列に接続されていてもよい。同様に、第3の実施形態の増幅器102では、磁気抵抗効果素子群14bにおいて、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じである2つの磁気抵抗効果素子1c、1dが直列に接続されているが、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じである3つ以上の磁気抵抗効果素子が直列に接続されていてもよい。これらの場合、さらに大きい増幅率が得られる。
また、第3の実施形態の増幅器102では、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる2つの磁気抵抗効果素子群14a、14b同士が直列に接続されているが、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる3つ以上の磁気抵抗効果素子群同士が直列に接続されていてもよい。この場合、増幅器として機能する周波数帯域をさらに広くすることができる。
また、第3の実施形態の増幅器102では、磁場印加機構12が磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dに同時に同一の磁場を印加しているが、各磁気抵抗効果素子または各磁気抵抗効果素子群に個別に磁場を印加するための磁場印加機構が設けられていても良い。
(第4の実施形態)
図9は、本発明の第4の実施形態に係る増幅器103の断面模式図である。増幅器103において、第2の実施形態の増幅器101と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。第2の実施形態の増幅器101と共通している要素は同じ符号を用いており、共通している要素の説明は省略する。増幅器103は、第2の実施形態の増幅器101に対し、さらに磁気抵抗効果素子群14cを有している。磁気抵抗効果素子群14cは磁気抵抗効果素子1eおよび磁気抵抗効果素子1fを有している。磁気抵抗効果素子1eおよび磁気抵抗効果素子1f同士は直列接続されている。磁気抵抗効果素子1eおよび磁気抵抗効果素子1fはそれぞれ、磁化固定層2、磁化自由層4およびこれらの間に配置されたスペーサ層3を有している。また、磁気抵抗効果素子1eおよび磁気抵抗効果素子1fのそれぞれを挟むように上部電極5および下部電極6 が配置されている。磁気抵抗効果素子1e、1fはスピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じである。より具体的には、磁気抵抗効果素子1e、1fは、膜構成および平面視形状が互いに同じであり、同一の磁場および同一の電流密度の直流電流が印加された状態でのスピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じである。磁気抵抗効果素子群14aと磁気抵抗効果素子群14cは信号線路7を介して並列接続されており、第1のポート9a、磁気抵抗効果素子群14aおよび第2のポート9bが信号線路7を介してこの順に直列接続され、第1のポート9a、磁気抵抗効果素子群14cおよび第2のポート9bが信号線路7を介してこの順に直列接続されている。また、増幅器103は、第2の実施形態の増幅器101の磁場印加機構12にかえて、磁場印加機構12aと磁場印加機構12bを有している。磁場印加機構12aと磁場印加機構12bのそれぞれは、第1の実施形態で説明した磁場印加機構12と同様のものを用いることができる。
インダクタ10は、互いに並列に接続された磁気抵抗効果素子群14a、14cと、第2のポート9bとの間の信号線路7(磁気抵抗効果素子群14a、14cと第1のポート9aとの間の信号線路7または磁気抵抗効果素子群14a、14cと第2のポート9bとの間の信号線路7の一方)に接続され、さらに基準電位端子20を介してグラウンド8に接続可能になっている。直流電流入力端子11は、互いに並列に接続された磁気抵抗効果素子群14a、14cと、第1のポート9aとの間の信号線路7(磁気抵抗効果素子群14a、14cと第1のポート9aとの間の信号線路7または磁気抵抗効果素子群14a、14cと第2のポート9bとの間の信号線路7の他方)に接続されており、直流電流入力端子11に、グラウンド8に接続された直流電流源13が接続されることにより、磁気抵抗効果素子1a、1b、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路と、磁気抵抗効果素子1e、1f、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路が形成される。直流電流入力端子11から入力された直流電流はこれらの閉回路を流れ、磁気抵抗効果素子1a、1b、1e、1fに直流電流が印加される。
磁気抵抗効果素子群14aのスピントルク共鳴周波数と磁気抵抗効果素子群14cのスピントルク共鳴周波数は、互いに実質的に異なる。より具体的には、磁気抵抗効果素子1a、1b、1e、1fは、膜構成および平面視形状が互いに同じであり、磁場印加機構12aは磁気抵抗効果素子群14a(磁気抵抗効果素子1a、1b)に、磁場印加機構12bは磁気抵抗効果素子群14c(磁気抵抗効果素子1e、1f)に、個別の磁場を印加するが、磁場印加機構12aが磁気抵抗効果素子群14aに印加する磁場の強度と、磁場印加機構12bが磁気抵抗効果素子群14bに印加する磁場の強度を異ならせることによって、磁気抵抗効果素子群14aのスピントルク共鳴周波数と磁気抵抗効果素子群14cのスピントルク共鳴周波数とが互いに実質的に異なるようにしている。このように、増幅器103は、磁気抵抗効果素子群14a、14cの各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に磁場印加機構12a、12bを有している。
磁場印加機構12aは、磁気抵抗効果素子群14aの構成要素である磁気抵抗効果素子1a、1bの近傍に配設され、磁気抵抗効果素子群14aの構成要素である磁気抵抗効果素子1a、1bに同時に同一の磁場を印加する。また、磁場印加機構12aは、磁気抵抗効果素子群14aの構成要素である磁気抵抗効果素子1a、1bに印加する磁場を変化させることで、磁気抵抗効果素子1a、1bの磁化自由層4における有効磁場を変化させて磁気抵抗効果素子1a、1bのスピントルク共鳴周波数を変化可能となっている。同様に、磁場印加機構12bは、磁気抵抗効果素子群14cの構成要素である磁気抵抗効果素子1e、1fの近傍に配設され、磁気抵抗効果素子群14bの構成要素である磁気抵抗効果素子1e、1fに同時に同一の磁場を印加する。また、磁場印加機構12bは、磁気抵抗効果素子群14cの構成要素である磁気抵抗効果素子1e、1fに印加する磁場を変化させることで、磁気抵抗効果素子1e、1fの磁化自由層4における有効磁場を変化させて磁気抵抗効果素子1e、1fのスピントルク共鳴周波数を変化可能となっている。
増幅器103のその他の構成は第2の実施形態の増幅器101と同じである。
各々のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数で周期的に抵抗値が振動する磁気抵抗効果素子1a、1b、1e、1fに、直流電流入力端子11より直流電流を印加することで、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の電力が出力信号として磁気抵抗効果素子1a、1b、1e、1fから出力される。この出力信号は、第1のポート9aから入力され、インピーダンスが減少した磁気抵抗効果素子1a、1b、1e、1fを通過して出力される、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の信号に加算され、第1の実施形態の増幅器100の場合と同様にして、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数において、第1のポート9aから入力された信号の電力よりも大きな電力の信号が第2のポート9bから出力される。以上のように、増幅器103は、磁気抵抗効果素子1a、1bのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数および磁気抵抗効果素子1e、1fのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の信号を増幅する増幅器として機能することができる。また、直流電流入力端子11より印加される直流電流の大きさによって、各磁気抵抗効果素子の素子インピーダンスを調整できるため、増幅器103は、増幅率が調整可能な増幅器として機能することができる。
増幅器103では、磁場印加機構12a、12bから磁気抵抗効果素子群14a、14cに個別に磁場が印加された状態で、磁気抵抗効果素子群14a、14cに信号線路7を介して高周波信号が入力される。例えば、磁気抵抗効果素子群14aに印加する磁場印加機構12aの磁場強度を、磁気抵抗効果素子群14cに印加する磁場印加機構12bの磁場強度よりも小さくする。この場合、磁気抵抗効果素子群14a、14cのスピントルク共鳴周波数は互いに実質的に異なる状態になる。
図10に、増幅器103に入力される高周波信号の周波数と増幅率との関係を示したグラフを示す。図10の縦軸は増幅率、横軸は周波数を表している。図10のプロット線400a1は、増幅器103に磁気抵抗効果素子群14cがない場合を想定した時のものであり、直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子群14aのみに電流値I4の直流電流が印加された時のものである。プロット線400c1は、増幅器103に磁気抵抗効果素子群14aがない場合を想定した時のものであり、直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子群14cのみに電流値I4の直流電流が印加された時のものである。また、図10のプロット線400acは、直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子群14a、14cのそれぞれに電流値I4の直流電流が印加された時のものである。図10に示されるように、磁気抵抗効果素子1a、1bのスピントルク共鳴周波数fa(すなわち磁気抵抗効果素子群14aのスピントルク共鳴周波数fa)の近傍の周波数(図10に示す周波数帯域400a)の一部と、磁気抵抗効果素子1e、1fのスピントルク共鳴周波数fc(すなわち磁気抵抗効果素子群14cのスピントルク共鳴周波数fc)の近傍の周波数(図10に示す周波数帯域400c)の一部が重なるように、磁場印加機構12a、12bのそれぞれが磁気抵抗効果素子群14a、14cに印加する磁場強度を調整することによって、増幅器103は、図10に示す周波数帯域400のように、第2の実施形態の増幅器101よりも増幅器として機能する周波数帯域を広くすることができる。
さらに、磁気抵抗効果素子1a、1b、1e、1fに印加される直流電流または、磁場印加機構12aから磁気抵抗効果素子1a、1bに印加される磁場強度および磁場印加機構12bから磁気抵抗効果素子1e、1fに印加される磁場強度を変化させることで、磁気抵抗効果素子1a、1b、1e、1fの各々のスピントルク共鳴周波数を任意に変更することが可能となる。このことにより、増幅器103は、増幅可能な周波数帯域を変化可能な増幅器として機能することが可能となる。
このように、増幅器103は、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる複数の磁気抵抗効果素子群14a、14c同士が並列接続されているので、増幅器として機能する周波数帯域を広くすることができる。さらに、増幅器103は、磁気抵抗効果素子に印加される直流電流、または磁場を変化させることで、増幅可能な周波数帯域を変化可能な増幅器として機能することが可能となる。
さらに、増幅器103は、複数の磁気抵抗効果素子群14a、14cの各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に周波数設定機構を複数(磁場印加機構12a、12b)有しているため、各磁気抵抗効果素子群14a、14cのスピントルク共鳴周波数を個別に設定することが可能となる。
また、第4の実施形態の増幅器103では、磁気抵抗効果素子群14aにおいて、スピントルク共鳴周波数が互いに同じである2つの磁気抵抗効果素子1a、1bが直列に接続されているが、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じである3つ以上の磁気抵抗効果素子が直列に接続されていてもよい。同様に、第4の実施形態の増幅器103では、磁気抵抗効果素子群14cにおいて、スピントルク共鳴周波数が互いに同じである2つの磁気抵抗効果素子1e、1fが直列に接続されているが、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じである3つ以上の磁気抵抗効果素子が直列に接続されていてもよい。これらの場合、さらに大きい増幅率が得られる。
また、第4の実施形態の増幅器103では、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる2つの磁気抵抗効果素子群14a、14c同士が並列に接続されているが、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる3つ以上の磁気抵抗効果素子群同士が並列に接続されていてもよい。この場合、増幅器として機能する周波数帯域をさらに広くすることができる。
また、第4の実施形態の増幅器103では、磁場印加機構12aが磁気抵抗効果素子1a、1bに同時に同一の磁場を印加し、磁場印加機構12bが磁気抵抗効果素子1e、1fに同時に同一の磁場を印加しているが、各磁気抵抗効果素子に個別に磁場を印加するための磁場印加機構が設けられていても良い。
また、第4の実施形態の増幅器103において、第3の実施形態の増幅器102と同様に、磁気抵抗効果素子群14aの構成要素である磁気抵抗効果素子1a、1bと、磁気抵抗効果素子群14cの構成要素である磁気抵抗効果素子1e、1fとで、膜構成が互いに同じで、平面視形状のアスペクト比が互いに異なるようにして、磁気抵抗効果素子群14aのスピントルク共鳴周波数と磁気抵抗効果素子群14cのスピントルク共鳴周波数を異ならせてもよい。この場合には、1つの磁場印加機構が磁気抵抗効果素子1a、1b、1e、1fに同時に同一の磁場を印加するようにすることができる。
また、第3の実施形態の増幅器102が、第4の実施形態の増幅器103と同様に、磁気抵抗効果素子群14a、14bの各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に磁場印加機構12a、12bを有するようにして、磁気抵抗効果素子群14aのスピントルク共鳴周波数と磁気抵抗効果素子群14bのスピントルク共鳴周波数とを異ならせてもよい。この場合には、磁気抵抗効果素子1a、1b、1c、1dは、膜構成および平面視形状が互いに同じものとすることができる。
第2〜第4の実施形態では、磁気抵抗効果素子群として、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じ複数の磁気抵抗効果素子同士が直列接続されている例で説明したが、第2〜第4の実施形態の磁気抵抗効果素子群にかえて、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じ複数の磁気抵抗効果素子同士が並列接続されている磁気抵抗効果素子群を用いてもよい。
例えば第2の実施形態の増幅器101の磁気抵抗効果素子群14aにかえて、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じ複数の磁気抵抗効果素子1a、1b同士が並列接続されている磁気抵抗効果素子群14dを用いた図11に示すような増幅器104としてもよい。この場合でも、第1のポート9aから入力され、インピーダンスが減少した磁気抵抗効果素子1a、1bを通過して出力される各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の信号に、直流電流の印加により磁気抵抗効果素子1a、1bから出力される各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の電力が加算されるため、第2の実施形態の増幅器101の場合と同様にして、増幅器104は、大きい増幅率が得られる。
また、例えば第3の実施形態の増幅器102の磁気抵抗効果素子群14aおよび磁気抵抗効果素子群14bの少なくとも一方にかえて、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じ複数の磁気抵抗効果素子同士が並列接続されている磁気抵抗効果素子群を用いた図12に示すような増幅器105としてもよい。図12に示す増幅器105では、増幅器102の磁気抵抗効果素子群14aにかえて磁気抵抗効果素子群14dを用い、増幅器102の磁気抵抗効果素子群14bにかえて磁気抵抗効果素子群14eを用いている。この場合でも、第3の実施形態の増幅器102の場合と同様に、 増幅器105によれば、増幅器として機能する周波数帯域を広くすることができる。
また、例えば第4の実施形態の増幅器103の磁気抵抗効果素子群14aおよび磁気抵抗効果素子群14cの少なくとも一方にかえて、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じ複数の磁気抵抗効果素子同士が並列接続されている磁気抵抗効果素子群を用いた図13に示すような増幅器106としてもよい。図13に示す増幅器106では、増幅器103の磁気抵抗効果素子群14aにかえて磁気抵抗効果素子群14dを用い、増幅器103の磁気抵抗効果素子群14cにかえて磁気抵抗効果素子群14fを用いている。この場合でも、第4の実施形態の増幅器103の場合と同様に、増幅器106によれば、増幅器として機能する周波数帯域を広くすることができる。
(第5の実施形態)
図14は、本発明の第5の実施形態に係る増幅器107の断面模式図である。増幅器107において、第1の実施形態の増幅器100と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。第1の実施形態の増幅器100と共通している要素は同じ符号を用いており、共通している要素の説明は省略する。増幅器107は、第1の実施形態の増幅器100に対し、さらに磁気抵抗効果素子1gを有している。磁気抵抗効果素子1gは、磁化固定層2、磁化自由層4およびこれらの間に配置されたスペーサ層3を有している。また、磁気抵抗効果素子1gを挟むように上部電極5および下部電極6が配置されている。磁気抵抗効果素子1aの磁化固定層2が接続されている下部電極6と、磁気抵抗効果素子1gの磁化自由層4が接続されている上部電極5とが電気的に接続されており、磁気抵抗効果素子1a、1g同士は直列接続されている。このように、磁気抵抗効果素子1aおよび磁気抵抗効果素子1g同士は直列接続されており、第1のポート9a、磁気抵抗効果素子1a、磁気抵抗効果素子1g、および第2のポート9bが信号線路7を介してこの順に直列接続されている。
インダクタ10は、直列接続された磁気抵抗効果素子1a、1gと第2のポート9bとの間の信号線路7(磁気抵抗効果素子1a、1gと第1のポート9aとの間の信号線路7または磁気抵抗効果素子1a、1gと第2のポート9bとの間の信号線路7の一方)に接続され、さらに基準電位端子20を介してグラウンド8に接続可能になっている。直流電流入力端子11は、直列接続された磁気抵抗効果素子1a、1gと第1のポート9aとの間の信号線路7(磁気抵抗効果素子1a、1gと第1のポート9aとの間の信号線路7または磁気抵抗効果素子1a、1gと第2のポート9bとの間の信号線路7の他方)に接続されており、直流電流入力端子11に、グラウンド8に接続された直流電流源13が接続されることにより、磁気抵抗効果素子1a、磁気抵抗効果素子1g、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路が形成され、直流電流入力端子11から入力された直流電流はこの閉回路を流れ、磁気抵抗効果素子1aおよび磁気抵抗効果素子1gに直流電流が印加される。
磁場印加機構12は、磁気抵抗効果素子1a、1gの近傍に配設され、磁気抵抗効果素子1a、1gに同時に同一の磁場を印加する。また、磁場印加機構12は、磁気抵抗効果素子1a、1gに印加する磁場を変化させることで、磁気抵抗効果素子1a、1gの磁化自由層4における有効磁場を変化させて磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および磁気抵抗効果素子1gのスピントルク共鳴周波数を変化可能となっている。
磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と磁気抵抗効果素子1gのスピントルク共鳴周波数は、互いに実質的に異なる。より具体的には、磁気抵抗効果素子1aと、磁気抵抗効果素子1gとは、膜構成が互いに同じで、平面視形状はともに長方形であるが、平面視形状のアスペクト比が互いに異なっている。ここで、「スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる」とは、2つの磁気抵抗効果素子で考えた時に、各々の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、2つの磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の平均値から、その平均値の±1%の範囲の外にあることをいう。
図15は、増幅器107の上面図である。図15に示すように、磁気抵抗効果素子1aと磁気抵抗効果素子1gの平面視形状の短辺方向であるY方向の寸法Yは同じであるが、磁気抵抗効果素子1aの平面視形状の長辺方向であるX方向の寸法Xaと磁気抵抗効果素子1gの平面視形状の長辺方向であるX方向の寸法Xbは異なっており、Xa<Xbであることから、磁気抵抗効果素子1aの平面視形状のアスペクト比(Xa/Y)より、磁気抵抗効果素子1gの平面視形状のアスペクト比(Xb/Y)は大きい。同一の磁場および同一の電流密度の直流電流が磁気抵抗効果素子に印加された状態で考えると、磁気抵抗効果素子の平面視形状のアスペクト比が大きくなるに従って磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数は高くなるため、磁気抵抗効果素子1gのスピントルク共鳴周波数は磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数よりも高くなる。このように、複数の磁気抵抗効果素子の平面視形状のアスペクト比を互いに異ならせることで、膜構成が互いに同じであってもスピントルク共鳴周波数を互いに異ならせることができるため、同一の成膜プロセスでスピントルク共鳴周波数が互いに異なる複数の磁気抵抗効果素子を作製することが可能となる。即ち、複数の磁気抵抗効果素子の膜構成を同じにすることができるため、複数の磁気抵抗効果素子を構成する層を一括で成膜形成することができる。さらに、増幅器107では、磁気抵抗効果素子1a、1g同士は直列接続されており、直流電流の流れる方向に垂直な断面の面積は、磁気抵抗効果素子1aの方が磁気抵抗効果素子1gよりも小さいので、印加される直流電流の電流密度は、磁気抵抗効果素子1aの方が磁気抵抗効果素子1gよりも大きくなる。したがって、印加される直流電流の電流密度が大きくなるに従って、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が低くなる場合、または、印加される直流電流の電流密度の違いが磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数に与える影響よりも、磁気抵抗効果素子の平面視形状のアスペクト比の違いが磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数に与える影響の方が大きい場合には、磁気抵抗効果素子1gのスピントルク共鳴周波数fgは、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数faよりも高くなる。
増幅器107のその他の構成は第1の実施形態の増幅器100と同じである。
各々のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数で周期的に抵抗値が振動する磁気抵抗効果素子1a、1gに、直流電流入力端子11より直流電流を印加することで、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の電力が出力信号として磁気抵抗効果素子1a、1gから出力される。この出力信号は、第1のポート9aから入力され、インピーダンスが減少した磁気抵抗効果素子1a、1gを通過して出力される、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の信号に加算され、第1の実施形態の増幅器100の場合と同様にして、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数において、第1のポート9aから入力された信号の電力よりも大きな電力の信号が第2のポート9bから出力される。以上のように、増幅器107は、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数および磁気抵抗効果素子1gのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の信号を増幅する増幅器として機能することができる。また、直流電流入力端子11より印加される直流電流の大きさによって、各磁気抵抗効果素子の素子インピーダンスを調整できるため、増幅器107は、増幅率が調整可能な増幅器として機能することができる。
図16に、増幅器107に入力される高周波信号の周波数と増幅率との関係を示したグラフを示す。図16の縦軸は増幅率、横軸は周波数を表している。図16のプロット線500a1は、増幅器107に磁気抵抗効果素子1gがない場合を想定した時のものであり、直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子1aのみに電流値I5の直流電流が印加された時のものである。プロット線500g1は、増幅器107に磁気抵抗効果素子1aがない場合を想定した時のものであり、直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子1gのみに電流値I5の直流電流が印加された時のものである。また、図16のプロット線500agは、直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子1a、1gのそれぞれに電流値I5の直流電流が印加された時のものである。図16に示されるように、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数faの近傍の周波数(図16に示す周波数帯域500a)の一部と、磁気抵抗効果素子1gのスピントルク共鳴周波数fgの近傍の周波数(図16に示す周波数帯域500g)の一部が重なるように磁気抵抗効果素子1aと、磁気抵抗効果素子1gの平面視形状のアスペクト比を異ならせると、増幅器107は、図16に示す周波数帯域500のように、第1の実施形態の増幅器100よりも増幅器として機能する周波数帯域を広くすることができる。
さらに、磁気抵抗効果素子1a、1gに印加される直流電流、または磁場印加機構12から磁気抵抗効果素子1a、1gに印加される磁場強度を変化させることで磁気抵抗効果素子1a、1gのスピントルク共鳴周波数を任意に変更することが可能となる。このことにより、増幅器107は、増幅可能な周波数帯域を変化可能な増幅器として機能することが可能となる。
このように、増幅器107は、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる複数の磁気抵抗効果素子1a、1g同士が直列接続されているので、増幅器として機能する周波数帯域を広くすることができる。さらに、増幅器107は、磁気抵抗効果素子に印加される直流電流、または磁場を変化させることで、増幅可能な周波数帯域を変化可能な増幅器として機能することが可能となる。
さらに、増幅器107は、磁気抵抗効果素子1aと磁気抵抗効果素子1gとで平面視形状のアスペクト比が互いに異なるため、同一プロセスでスピントルク共鳴周波数が互いに異なる複数の磁気抵抗効果素子を作製することが可能となる。つまり、増幅器107は、複数の磁気抵抗効果素子1a、1gの膜構成を同じにすることができるため、複数の磁気抵抗効果素子1a、1gを構成する層を一括で成膜形成することができ、製造コストを抑えることが可能となる。
また、第5の実施形態の増幅器107では、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる2つの磁気抵抗効果素子1a、1g同士が直列に接続されているが、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる3つ以上の磁気抵抗効果素子同士が直列に接続されていてもよい。この場合、増幅器として機能する周波数帯域をさらに広くすることができる。
また、第5の実施形態の増幅器107では、磁場印加機構12が磁気抵抗効果素子1a、1gに同時に同一の磁場を印加しているが、各磁気抵抗効果素子に個別に磁場を印加するための磁場印加機構が設けられていても良い。
(第6の実施形態)
図17は、本発明の第6の実施形態に係る増幅器108の断面模式図である。増幅器108において、第1の実施形態の増幅器100と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。第1の実施形態の増幅器100と共通している要素は同じ符号を用いており、共通している要素の説明は省略する。増幅器105は、第1の実施形態の増幅器100に対し、さらに磁気抵抗効果素子1hを有している。磁気抵抗効果素子1hは、磁化固定層2、磁化自由層4およびこれらの間に配置されたスペーサ層3を有している。また、磁気抵抗効果素子1hを挟むように上部電極5および下部電極6 が配置されている。磁気抵抗効果素子1aと磁気抵抗効果素子1hは信号線路7を介して並列接続されており、第1のポート9a、磁気抵抗効果素子1aおよび第2のポート9bが信号線路7を介してこの順に直列接続され、第1のポート9a、磁気抵抗効果素子1hおよび第2のポート9bが信号線路7を介してこの順に直列接続されている。また、増幅器108は、第1の実施形態の増幅器100の磁場印加機構12にかえて、磁場印加機構12cと磁場印加機構12dを有している。磁場印加機構12cと磁場印加機構12dのそれぞれは、第1の実施形態で説明した磁場印加機構12と同様のものを用いることができる。
インダクタ10は、互いに並列に接続された磁気抵抗効果素子1a、1hと、第2のポート9bとの間の信号線路7(磁気抵抗効果素子1a、1hと第1のポート9aとの間の信号線路7または磁気抵抗効果素子1a、1hと第2のポート9bとの間の信号線路7の一方)に接続され、さらに基準電位端子20を介してグラウンド8に接続可能になっている。直流電流入力端子11は、互いに並列に接続された磁気抵抗効果素子1a、1hと、第1のポート9aとの間の信号線路7(磁気抵抗効果素子1a、1hと第1のポート9aとの間の信号線路7または磁気抵抗効果素子1a、1hと第2のポート9bとの間の信号線路7の他方)に接続されており、直流電流入力端子11に、グラウンド8に接続された直流電流源13が接続されることにより、磁気抵抗効果素子1a、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路と、磁気抵抗効果素子1h、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路が形成される。直流電流入力端子11から入力された直流電流はこれらの閉回路を流れ、磁気抵抗効果素子1a、1hに直流電流が印加される。
磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と磁気抵抗効果素子1hのスピントルク共鳴周波数は、互いに実質的に異なる。より具体的には、磁気抵抗効果素子1a、1hは、膜構成および平面視形状が互いに同じであり、磁場印加機構12cは磁気抵抗効果素子群1aに、磁場印加機構12dは磁気抵抗効果素子1hに、個別の磁場を印加するが、磁場印加機構12cが磁気抵抗効果素子1aに印加する磁場の強度と、磁場印加機構12dが磁気抵抗効果素子1hに印加する磁場の強度を異ならせることによって、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と磁気抵抗効果素子1hのスピントルク共鳴周波数とが互いに実質的に異なるようにしている。このように、増幅器108は、磁気抵抗効果素子1a、1hの各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に磁場印加機構12c、12dを有している。
磁場印加機構12cは、磁気抵抗効果素子1aの近傍に配設され、磁気抵抗効果素子1aに磁場を印加する。また、磁場印加機構12cは、磁気抵抗効果素子1aに印加する磁場を変化させることで、磁気抵抗効果素子1aの磁化自由層4における有効磁場を変化させて磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数を変化可能となっている。同様に、磁場印加機構12dは、磁気抵抗効果素子1hの近傍に配設され、磁気抵抗効果素子1hに磁場を印加する。また、磁場印加機構12dは、磁気抵抗効果素子1hに印加する磁場を変化させることで、磁気抵抗効果素子1hの磁化自由層4における有効磁場を変化させて磁気抵抗効果素子1hのスピントルク共鳴周波数を変化可能となっている。
増幅器108のその他の構成は第1の実施形態の増幅器100と同じである。
各々のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数で周期的に抵抗値が振動する磁気抵抗効果素子1a、1hに、直流電流入力端子11より直流電流を印加することで、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の電力が出力信号として磁気抵抗効果素子1a、1hから出力される。この出力信号は、第1のポート9aから入力され、インピーダンスが減少した磁気抵抗効果素子1a、1hを通過して出力される、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の信号に加算され、第1の実施形態の増幅器100の場合と同様にして、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数において、第1のポート9aから入力された信号の電力よりも大きな電力の信号が第2のポート9bから出力される。以上のように、増幅器105は、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数および磁気抵抗効果素子1hのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数の信号を増幅する増幅器として機能することができる。また、直流電流入力端子11より印加される直流電流の大きさによって、各磁気抵抗効果素子の素子インピーダンスを調整できるため、増幅器108は、増幅率が調整可能な増幅器として機能することができる。
増幅器108では、磁場印加機構12c、12dから磁気抵抗効果素子1a、1hに個別に磁場が印加された状態で、磁気抵抗効果素子1a、1hに信号線路7を介して高周波信号が入力される。例えば、磁気抵抗効果素子1aに印加する磁場印加機構12cの磁場強度を、磁気抵抗効果素子1hに印加する磁場印加機構12dの磁場強度よりも小さくする。この場合、磁気抵抗効果素子1a、1hのスピントルク共鳴周波数は互いに実質的に異なる状態になる。
図18に、増幅器108に入力される高周波信号の周波数と増幅率との関係を示したグラフを示す。図18の縦軸は増幅率、横軸は周波数を表している。図18のプロット線600a1は、増幅器108に磁気抵抗効果素子1hがない場合を想定した時のものであり、直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子1aのみに電流値I6の直流電流が印加された時のものである。プロット線600h1は、増幅器108に磁気抵抗効果素子1aがない場合を想定した時のものであり、直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子1hのみに電流値I6の直流電流が印加された時のものである。また、図18のプロット線600ahは、直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子1a、1hのそれぞれに電流値I6の直流電流が印加された時のものである。図18に示されるように、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数faの近傍の周波数(図18に示す周波数帯域600a)の一部と、磁気抵抗効果素子1hのスピントルク共鳴周波数fhの近傍の周波数(図18に示す周波数帯域600h)の一部が重なるように、磁場印加機構12c、12dのそれぞれが磁気抵抗効果素子1a、1hに印加する磁場強度を調整することによって、増幅器108は、図18に示す周波数帯域600のように、第1の実施形態の増幅器100よりも増幅器として機能する周波数帯域を広くすることができる。
さらに、磁気抵抗効果素子1a、1hに印加される直流電流または、磁場印加機構12cから磁気抵抗効果素子1aに印加される磁場強度および磁場印加機構12dから磁気抵抗効果素子1hに印加される磁場強度を変化させることで、磁気抵抗効果素子1a、1hの各々のスピントルク共鳴周波数を任意に変更することが可能となる。このことにより、増幅器108は、増幅可能な周波数帯域を変化可能な増幅器として機能することが可能となる。
このように、増幅器108は、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる複数の磁気抵抗効果素子1a、1h同士が並列接続されているので、増幅器として機能する周波数帯域を広くすることができる。さらに、増幅器108は、磁気抵抗効果素子に印加される直流電流、または磁場を変化させることで、増幅可能な周波数帯域を変化可能な増幅器として機能することが可能となる。
さらに、増幅器108は、複数の磁気抵抗効果素子1a、1hの各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に周波数設定機構を複数(磁場印加機構12c、12d)有しているため、各磁気抵抗効果素子1a、1hのスピントルク共鳴周波数を個別に設定することが可能となる。
また、第6の実施形態の増幅器108では、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる2つの磁気抵抗効果素子1a、1h同士が並列に接続されているが、スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる3つ以上の磁気抵抗効果素子同士が並列に接続されていてもよい。この場合、増幅器として機能する周波数帯域をさらに広くすることができる。
また、第6の実施形態の増幅器108において、第5の実施形態の増幅器17と同様に、磁気抵抗効果素子1aと、磁気抵抗効果素子1hとで、膜構成が互いに同じで、平面視形状のアスペクト比が互いに異なるようにして、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と磁気抵抗効果素子1hのスピントルク共鳴周波数を異ならせてもよい。この場合には、1つの磁場印加機構が磁気抵抗効果素子1a、1hに同時に同一の磁場を印加するようにすることができる。
また、第5の実施形態の増幅器107が、第6の実施形態の増幅器108と同様に、磁気抵抗効果素子1a、1gの各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に磁場印加機構12c、12dを有するようにして、磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と磁気抵抗効果素子1gのスピントルク共鳴周波数とを異ならせてもよい。この場合には、磁気抵抗効果素子1a、1gは、膜構成および平面視形状が互いに同じものとすることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上記で説明した実施形態以外にも変更することが可能である。例えば、第1〜第6の実施形態では、インダクタ10が、磁気抵抗効果素子1a(1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h)と第2のポート9bとの間の信号線路7に接続され、直流電流入力端子11が磁気抵抗効果素子1a(1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h)と第1のポート9aとの間の信号線路7に接続されている例で説明したが、インダクタ10が、磁気抵抗効果素子1a(1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h)と第1のポート9aとの間の信号線路7に接続され、直流電流入力端子11が磁気抵抗効果素子1a(1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h)と第2のポート9bとの間の信号線路7に接続されるようにしてもよい。
また、第1〜第6の実施形態では、インダクタ10を用いた例で説明したが、インダクタ10にかえて、抵抗素子を用いても良い。この場合、抵抗素子は、信号線路7とグラウンド8との間に接続され、抵抗成分により電流の高周波成分をカットする機能を有する。この抵抗素子は、チップ抵抗またはパターン線路による抵抗のどちらでもよい。この抵抗素子の抵抗値は、信号線路7の特性インピーダンス以上であることが好ましい。例えば、信号線路7の特性インピーダンスが50Ωの場合、抵抗素子の抵抗値が50Ωの時は45%の高周波電力を抵抗素子によりカットし、抵抗素子の抵抗値が500Ωの時は90%の高周波電力を抵抗素子によりカットすることが可能となる。この抵抗素子により、磁気抵抗効果素子1a(1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h)を通過する高周波信号の特性を劣化させることなく、磁気抵抗効果素子1a(1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h)、信号線路7、抵抗素子、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路に、直流電流入力端子11から印加された直流電流を流すことができる。
インダクタ10にかえて抵抗素子を用いる場合は、直流電流入力端子11(または抵抗素子)の信号線路7への接続部と第1のポート9aとの間の信号線路7に、直流信号をカットするためのコンデンサを直列に接続すること、および、抵抗素子(または直流電流入力端子11)の信号線路7への接続部と第2のポート9bとの間の信号線路7に、直流信号をカットするためのコンデンサを直列に接続することが、磁気抵抗効果素子1a(1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h)、信号線路7、抵抗素子、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路に、直流電流入力端子11から印加された直流電流を効率的に流すことができる点で好ましい。
また、第1〜第6の実施形態では、増幅器100(101、102、103、104、105、106、107、108)が周波数設定機構(有効磁場設定機構)として磁場印加機構12(12a、12b、12c、12d)を有する例で説明しているが、周波数設定機構(有効磁場設定機構)は、以下に示すような他の例でも良い。例えば、磁気抵抗効果素子に電場を印加し、その電場を変化させることにより、磁化自由層における異方性磁場Hを変化させて磁化自由層における有効磁場を変化させ、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を変化させることができる。この場合、磁気抵抗効果素子に電場を印加する機構が、周波数設定機構(有効磁場設定機構)となる。また、磁化自由層の近傍に圧電体を設け、その圧電体に電場を印加して圧電体を変形させ、磁化自由層を歪ませることにより、磁化自由層における異方性磁場Hを変化させて磁化自由層における有効磁場を変化させ、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を変化させることができる。この場合、圧電体に電場を印加する機構および圧電体が、周波数設定機構(有効磁場設定機構)となる。また、電気磁気効果を有する反強磁性体またはフェリ磁性体である制御膜を磁化自由層に磁気的に結合するように設け、制御膜に磁場および電場を印加し、制御膜に印加する磁場および電場の少なくとも一方を変化させることにより、磁化自由層における交換結合磁場HEXを変化させて磁化自由層における有効磁場を変化させ、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を変化させることができる。この場合、制御膜に磁場を印加する機構、制御膜に電場を印加する機構および制御膜が、周波数設定機構(有効磁場設定機構)となる。
また、周波数設定機構が無くても(磁場印加機構12(12a、12b、12c、12d)からの磁場が印加されなくても)、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が所望の周波数である場合には、周波数設定機構(磁場印加機構12(12a、12b、12c、12d))は無くてもよい。
1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h 磁気抵抗効果素子
2 磁化固定層
3 スペーサ層
4 磁化自由層
5 上部電極
6 下部電極
7 信号線路
8 グラウンド
9a 第1のポート
9b 第2のポート
10 インダクタ
11 直流電流入力端子
12、12a、12b、12c、12d 磁場印加機構
13 直流電流源
14a、14b、14c、14d、14e、14f 磁気抵抗効果素子群
20 基準電位端子
100、101、102、103、104、105、106、107、108 増幅器
100a1、100a2、100b1、100b2、200a1、200a3、300a1、300b1、300ab、400a1、400c1、400ac、500a1、500g1、500ag、600a1、600h1、600ah プロット線
300、300a、300b、400、400a、400c、500、500a、500g、600、600a、600h 周波数帯域
fa、fb、fc、fa1、fa2、fb1、fb2、fg、fh、 スピントルク共鳴周波数

Claims (12)

  1. 磁化固定層、磁化自由層およびこれらの間に配置されたスペーサ層を有する磁気抵抗効果素子と、
    高周波信号が入力される第1のポートと、
    高周波信号が出力される第2のポートと、
    信号線路と、
    インダクタまたは抵抗素子と、
    直流電流入力端子とを有し、
    前記第1のポート、前記磁気抵抗効果素子および前記第2のポートが前記信号線路を介してこの順に直列接続され、
    前記インダクタまたは前記抵抗素子は、前記磁気抵抗効果素子と前記第1のポートとの間の前記信号線路または前記磁気抵抗効果素子と前記第2のポートとの間の前記信号線路の一方に接続され、さらにグラウンドに接続可能であり、
    前記直流電流入力端子は、前記磁気抵抗効果素子と前記第1のポートとの間の前記信号線路または前記磁気抵抗効果素子と前記第2のポートとの間の前記信号線路の他方に接続され、
    前記磁気抵抗効果素子、前記信号線路、前記インダクタ、前記グラウンドおよび前記直流電流入力端子を含む閉回路、または、前記磁気抵抗効果素子、前記信号線路、前記抵抗素子、前記グラウンドおよび前記直流電流入力端子を含む閉回路を形成可能であることを特徴とする増幅器。
  2. 前記磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を設定可能な周波数設定機構を有することを特徴とする請求項1に記載の増幅器。
  3. 前記周波数設定機構は、前記磁化自由層における有効磁場を設定可能な有効磁場設定機構であり、前記有効磁場を変化させて前記磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を変化可能であることを特徴とする請求項2に記載の増幅器。
  4. スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に同じ複数の前記磁気抵抗効果素子同士が直列接続または並列接続されている磁気抵抗効果素子群を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の増幅器。
  5. スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる複数の前記磁気抵抗効果素子群同士が直列接続されていることを特徴とする請求項4に記載の増幅器。
  6. スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる複数の前記磁気抵抗効果素子群同士が並列接続されていることを特徴とする請求項4に記載の増幅器。
  7. スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる複数の前記磁気抵抗効果素子同士が直列接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の増幅器。
  8. 複数の前記磁気抵抗効果素子同士が直列接続され、前記複数の磁気抵抗効果素子の各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に前記周波数設定機構を複数有することを特徴とする請求項2または3に記載の増幅器。
  9. スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる複数の前記磁気抵抗効果素子同士が並列接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の増幅器。
  10. 複数の前記磁気抵抗効果素子同士が並列接続され、前記複数の磁気抵抗効果素子の各々のスピントルク共鳴周波数を個別に設定可能な様に前記周波数設定機構を複数有することを特徴とする請求項2または3に記載の増幅器。
  11. スピントルク共鳴周波数が互いに実質的に異なる前記複数の磁気抵抗効果素子は、平面視形状のアスペクト比が互いに異なることを特徴とする請求項7または9に記載の増幅器。
  12. 前記第2のポートに対して並列に前記信号線路および前記グラウンドに接続された磁気抵抗効果素子が存在しないことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の増幅器。
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