JP2018026788A - 磁気抵抗効果デバイス - Google Patents

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柴田 哲也
Tetsuya Shibata
哲也 柴田
鈴木 健司
Kenji Suzuki
健司 鈴木
順一郎 占部
Junichiro Urabe
順一郎 占部
健量 山根
Takekazu Yamane
健量 山根
淳 志村
Atsushi Shimura
淳 志村
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Abstract

【課題】磁気抵抗効果素子を利用した高周波フィルタ等の高周波デバイスを実現できる磁気抵抗効果デバイスを提供する。【解決手段】磁気抵抗効果デバイス101は、高周波信号が入力される第1のポート9aと、第1及び第2の磁気抵抗効果素子1a、1bと、高周波信号が出力される第2のポート9bが信号線路7を介してこの順に直列接続され、直流電流入力端子11とを有する。第2の磁気抵抗効果素子1bは、第2のポート9bに対して並列に信号線路7に接続される。第1及び第2の磁気抵抗効果素子1a、1bは、直流電流入力端子11から入力され、第1及び第2の磁気抵抗効果素子のそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの磁化固定層2、スペーサ層3及び磁化自由層4の配置順との関係が、第1の磁気抵抗効果素子と第2の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成されている。【選択図】図1

Description

本発明は、磁気抵抗効果素子を利用した磁気抵抗効果デバイスに関するものである。
近年、携帯電話等の移動通信端末の高機能化に伴い、無線通信の高速化が進められている。通信速度は使用する周波数の帯域幅に比例するため、通信に必要な周波数バンドは増加し、それに伴って、移動通信端末に必要な高周波フィルタの搭載数も増加している。また、近年新しい高周波用部品に応用できる可能性のある分野として研究されているのがスピントロニクスであり、その中で注目されている現象の一つが、磁気抵抗効果素子によるスピントルク共鳴現象である(非特許文献1参照)。磁気抵抗効果素子に交流電流を流すことで、磁気抵抗効果素子にスピントルク共鳴を起こすことが出来、スピントルク共鳴周波数に対応した周波数で周期的に磁気抵抗効果素子の抵抗値が振動する。磁気抵抗効果素子に印加される磁場の強さによって、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数は変化し、一般的にその共鳴周波数は数〜数十GHzの高周波帯域である。
Nature、Vol.438、No.7066、pp.339−342、17 November 2005
磁気抵抗効果素子は、スピントルク共鳴現象を利用して高周波デバイスに応用することが考えられるが、高周波フィルタ等の高周波デバイスに応用するための具体的な構成は従来示されていない。本発明は、磁気抵抗効果素子を利用した高周波フィルタ等の高周波デバイスを実現できる磁気抵抗効果デバイスを提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、第1の磁気抵抗効果素子と、第2の磁気抵抗効果素子と、高周波信号が入力される第1のポートと、高周波信号が出力される第2のポートと、信号線路と、直流電流入力端子とを有し、前記第1のポート、前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第2のポートが前記信号線路を介してこの順に直列接続され、前記第2の磁気抵抗効果素子は、前記第2のポートに対して並列に前記信号線路に接続され、前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第2の磁気抵抗効果素子は、それぞれ磁化固定層、磁化自由層およびこれらの間に配置されたスペーサ層を有し、前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第2の磁気抵抗効果素子は、前記直流電流入力端子から入力され前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第2の磁気抵抗効果素子のそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの前記磁化固定層、前記スペーサ層および前記磁化自由層の配置順との関係が、前記第1の磁気抵抗効果素子と前記第2の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成されていることを第1の特徴とする。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスによれば、直流電流入力端子から入力される直流電流が、第1の磁気抵抗効果素子の中を磁化自由層から磁化固定層の方向に流れ、第2の磁気抵抗効果素子の中を磁化固定層から磁化自由層の方向に流れる場合、第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数に対して、高周波信号を非共鳴周波数では第2のポートに対し遮断し、共鳴周波数では第2のポート側に通過させることが出来る。また、上記特徴の磁気抵抗効果デバイスによれば、直流電流入力端子から入力される直流電流が、第1の磁気抵抗効果素子の中を磁化固定層から磁化自由層の方向に流れ、第2の磁気抵抗効果素子の中を磁化自由層から磁化固定層の方向に流れる場合、第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数に対して、高周波信号を非共鳴周波数では第2のポート側に通過させ、共鳴周波数では第2のポートに対し遮断することが出来る。従って、上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、高周波フィルタとしての周波数特性をもつことが可能となる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数と前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数とが一致していることを第2の特徴として有していてもよい。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、直流電流入力端子から入力される直流電流が、第1の磁気抵抗効果素子の中を磁化自由層から磁化固定層の方向に流れ、第2の磁気抵抗効果素子の中を磁化固定層から磁化自由層の方向に流れる場合、第1の磁気抵抗効果素子および第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数と同じ周波数に対する、第1の磁気抵抗効果素子と第2の磁気抵抗効果素子の合成インピーダンスが小さくなるため、上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、通過特性がよく、通過特性と遮断特性のレンジが大きな高周波フィルタとして機能することが可能となる。また、上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、直流電流入力端子から入力される直流電流が、第1の磁気抵抗効果素子の中を磁化固定層から磁化自由層の方向に流れ、第2の磁気抵抗効果素子の中を磁化自由層から磁化固定層の方向に流れる場合、第1の磁気抵抗効果素子および第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数と同じ周波数に対する、第1の磁気抵抗効果素子と第2の磁気抵抗効果素子の合成インピーダンスが大きくなるため、上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、遮断特性がよく、通過特性と遮断特性のレンジが大きな高周波フィルタとして機能することが可能となる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数と前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数とが互いに異なることを第3の特徴として有していてもよい。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数とが互いに異なり、高周波信号を第2のポート側に通過させる、または高周波信号を第2のポートに対し遮断するスピントルク共鳴周波数近傍の周波数が広帯域にわたるため、上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、通過帯域または遮断帯域が広いフィルタとして機能することが可能となる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、第3の磁気抵抗効果素子をさらに有し、前記第1のポート、前記第3の磁気抵抗効果素子および前記第2のポートが前記信号線路を介してこの順に直列接続され、前記第1の磁気抵抗効果素子、前記第2の磁気抵抗効果素子および前記第3の磁気抵抗効果素子は、それぞれ磁化固定層、磁化自由層およびこれらの間に配置されたスペーサ層を有し、前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第3の磁気抵抗効果素子は、前記直流電流入力端子から入力され前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第3の磁気抵抗効果素子のそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの前記磁化固定層、前記スペーサ層および前記磁化自由層の配置順との関係が、前記第1の磁気抵抗効果素子と前記第3の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成され、前記第3の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも高いまたは低いことを第4の特徴として有していてもよい。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスによれば、直流電流入力端子から入力される直流電流が、第3の磁気抵抗効果素子の中を磁化固定層から磁化自由層の方向に流れる場合、高周波信号が第2のポートに対し遮断される第3の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍においては、高周波信号の減衰量の周波数に対する変化が急峻であるため、第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍および第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍で形成される通過帯域の高周波数側または低周波数側の肩特性を急峻にすることが可能となる。また、上記特徴の磁気抵抗効果デバイスによれば、直流電流入力端子から入力される直流電流が、第3の磁気抵抗効果素子の中を磁化自由層から磁化固定層の方向に流れる場合、高周波信号が第2のポート側に通過する第3の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍においては、高周波信号の減衰量の周波数に対する変化が急峻であるため、第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍および第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍で形成される遮断帯域の高周波数側または低周波数側の肩特性を急峻にすることが可能となる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、第4の磁気抵抗効果素子をさらに有し、前記第4の磁気抵抗効果素子は、前記第2のポートに対して並列に前記信号線路に接続され、前記第1の磁気抵抗効果素子、前記第2の磁気抵抗効果素子および前記第4の磁気抵抗効果素子は、それぞれ磁化固定層、磁化自由層およびこれらの間に配置されたスペーサ層を有し、前記第2の磁気抵抗効果素子および前記第4の磁気抵抗効果素子は、前記直流電流入力端子から入力され前記第2の磁気抵抗効果素子および前記第4の磁気抵抗効果素子のそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの前記磁化固定層、前記スペーサ層および前記磁化自由層の配置順との関係が、前記第2の磁気抵抗効果素子と前記第4の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成され、前記第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも高いまたは低いことを第5の特徴として有していてもよい。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスによれば、直流電流入力端子から入力される直流電流が、第4の磁気抵抗効果素子の中を磁化自由層から磁化固定層の方向に流れる場合、高周波信号が第2のポートに対し遮断される第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍においては、高周波信号の減衰量の周波数に対する変化が急峻であるため、第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍および第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍で形成される通過帯域の高周波数側または低周波数側の肩特性を急峻にすることが可能となる。また、上記特徴の磁気抵抗効果デバイスによれば、直流電流入力端子から入力される直流電流が、第4の磁気抵抗効果素子の中を磁化固定層から磁化自由層の方向に流れる場合、高周波信号が第2のポート側に通過する第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍においては、高周波信号の減衰量の周波数に対する変化が急峻であるため、第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍および第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍で形成される遮断帯域の高周波数側または低周波数側の肩特性を急峻にすることが可能となる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、第3の磁気抵抗効果素子と、第4の磁気抵抗効果素子とをさらに有し、前記第1のポート、前記第3の磁気抵抗効果素子および前記第2のポートが前記信号線路を介してこの順に直列接続され、前記第4の磁気抵抗効果素子は、前記第2のポートに対して並列に前記信号線路に接続され、前記第1の磁気抵抗効果素子、前記第2の磁気抵抗効果素子、前記第3の磁気抵抗効果素子および前記第4の磁気抵抗効果素子は、それぞれ磁化固定層、磁化自由層およびこれらの間に配置されたスペーサ層を有し、前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第3の磁気抵抗効果素子は、前記直流電流入力端子から入力され前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第3の磁気抵抗効果素子のそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの前記磁化固定層、前記スペーサ層および前記磁化自由層の配置順との関係が、前記第1の磁気抵抗効果素子と前記第3の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成され、前記第2の磁気抵抗効果素子および前記第4の磁気抵抗効果素子は、前記直流電流入力端子から入力され前記第2の磁気抵抗効果素子および前記第4の磁気抵抗効果素子のそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの前記磁化固定層、前記スペーサ層および前記磁化自由層の配置順との関係が、前記第2の磁気抵抗効果素子と前記第4の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成され、前記第3の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも高く、かつ、前記第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも低い、または、前記第3の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも低く、かつ、前記第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも高いことを第6の特徴として有していてもよい。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスによれば、直流電流入力端子から入力される直流電流が、第3の磁気抵抗効果素子の中を磁化固定層から磁化自由層の方向に流れ、第4の磁気抵抗効果素子の中を磁化自由層から磁化固定層の方向に流れる場合、高周波信号が第2のポートに対し遮断される第3の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍または第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍においては、高周波信号の減衰量の周波数に対する変化が急峻であるため、第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍および第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍で形成される通過帯域の高周波数側および低周波数側の肩特性を急峻にすることが可能となる。また、上記特徴の磁気抵抗効果デバイスによれば、直流電流入力端子から入力される直流電流が、第3の磁気抵抗効果素子の中を磁化自由層から磁化固定層の方向に流れ、第4の磁気抵抗効果素子の中を磁化固定層から磁化自由層の方向に流れる場合、高周波信号が第2のポート側に通過する第3の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍または第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍においては、高周波信号の減衰量の周波数に対する変化が急峻であるため、第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍および第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍で形成される遮断帯域の高周波数側および低周波数側の肩特性を急峻にすることが可能となる。
本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、第1の磁気抵抗効果素子と、第2の磁気抵抗効果素子と、高周波信号が入力される第1のポートと、高周波信号が出力される第2のポートと、信号線路と、直流電流入力端子と、基準電位端子とを有し、前記第1のポート、前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第2のポートが前記信号線路を介してこの順に直列接続され、前記第2の磁気抵抗効果素子は、前記第2のポートに対して並列に前記信号線路に接続され、前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第2の磁気抵抗効果素子は、それぞれ磁化固定層、磁化自由層およびこれらの間に配置されたスペーサ層を有し、前記第1の磁気抵抗効果素子及び前記第2の磁気抵抗効果素子は、それぞれの一端側が前記直流電流入力端子側になり、それぞれの他端側が前記基準電位端子側になるように、前記直流電流入力端子および前記基準電位端子に接続され、前記第1の磁気抵抗効果素子及び前記第2の磁気抵抗効果素子は、それぞれの前記一端側から前記他端側への向きと、それぞれの前記磁化自由層から前記磁化固定層への向きとの関係が、前記第1の磁気抵抗効果素子と前記第2の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成されていることを第7の特徴とする。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、上述した第1の特徴を有する磁気抵抗効果デバイスと同様に、高周波フィルタとしての周波数特性をもつことが可能となる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数と前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数とが一致していることを第8の特徴として有していてもよい。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、上述した第2の特徴を有する磁気抵抗効果デバイスと同様に、通過特性または遮断特性がよく、通過特性と遮断特性のレンジが大きな高周波フィルタとして機能することが可能となる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数と前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数とが互いに異なることを第9の特徴として有していてもよい。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、上述した第3の特徴を有する磁気抵抗効果デバイスと同様に、通過帯域または遮断帯域が広いフィルタとして機能することが可能となる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、第3の磁気抵抗効果素子をさらに有し、前記第1のポート、前記第3の磁気抵抗効果素子および前記第2のポートが前記信号線路を介してこの順に直列接続され、前記第1の磁気抵抗効果素子、前記第2の磁気抵抗効果素子および前記第3の磁気抵抗効果素子は、それぞれ磁化固定層、磁化自由層およびこれらの間に配置されたスペーサ層を有し、前記第3の磁気抵抗効果素子は、その一端側が前記直流電流入力端子側になり、その他端側が前記基準電位端子側になるように、前記直流電流入力端子および前記基準電位端子に接続され、前記第1の磁気抵抗効果素子及び前記第3の磁気抵抗効果素子は、それぞれの前記一端側から前記他端側への向きと、それぞれの前記磁化自由層から前記磁化固定層への向きとの関係が、前記第1の磁気抵抗効果素子と前記第3の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成され、前記第3の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも高いまたは低いことを第10の特徴として有していてもよい。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、上述した第4の特徴を有する磁気抵抗効果デバイスと同様に、第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍および第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍で形成される通過帯域または遮断帯域の、高周波数側または低周波数側の肩特性を急峻にすることが可能となる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、第4の磁気抵抗効果素子をさらに有し、前記第4の磁気抵抗効果素子は、前記第2のポートに対して並列に前記信号線路に接続され、前記第1の磁気抵抗効果素子、前記第2の磁気抵抗効果素子および前記第4の磁気抵抗効果素子は、それぞれ磁化固定層、磁化自由層およびこれらの間に配置されたスペーサ層を有し、前記第4の磁気抵抗効果素子は、その一端側が前記直流電流入力端子側になり、その他端側が前記基準電位端子側になるように、前記直流電流入力端子および前記基準電位端子に接続され、前記第2の磁気抵抗効果素子及び前記第4の磁気抵抗効果素子は、それぞれの前記一端側から前記他端側への向きと、それぞれの前記磁化自由層から前記磁化固定層への向きとの関係が、前記第2の磁気抵抗効果素子と前記第4の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成され、前記第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも高いまたは低いことを第11の特徴として有していてもよい。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、上述した第5の特徴を有する磁気抵抗効果デバイスと同様に、第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍および第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍で形成される通過帯域または遮断帯域の、高周波数側または低周波数側の肩特性を急峻にすることが可能となる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果デバイスは、第3の磁気抵抗効果素子と、第4の磁気抵抗効果素子とをさらに有し、前記第1のポート、前記第3の磁気抵抗効果素子および前記第2のポートが前記信号線路を介してこの順に直列接続され、前記第4の磁気抵抗効果素子は、前記第2のポートに対して並列に前記信号線路に接続され、前記第1の磁気抵抗効果素子、前記第2の磁気抵抗効果素子、前記第3の磁気抵抗効果素子および前記第4の磁気抵抗効果素子は、それぞれ磁化固定層、磁化自由層およびこれらの間に配置されたスペーサ層を有し、前記第3の磁気抵抗効果素子及び前記第4の磁気抵抗効果素子は、それぞれの一端側が前記直流電流入力端子側になり、それぞれの他端側が前記基準電位端子側になるように、前記直流電流入力端子および前記基準電位端子に接続され、前記第1の磁気抵抗効果素子及び前記第3の磁気抵抗効果素子は、それぞれの前記一端側から前記他端側への向きと、それぞれの前記磁化自由層から前記磁化固定層への向きとの関係が、前記第1の磁気抵抗効果素子と前記第3の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成され、前記第2の磁気抵抗効果素子及び前記第4の磁気抵抗効果素子は、それぞれの前記一端側から前記他端側への向きと、それぞれの前記磁化自由層から前記磁化固定層への向きとの関係が、前記第2の磁気抵抗効果素子と前記第4の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成され、前記第3の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも高く、かつ、前記第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも低い、または、前記第3の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも低く、かつ、前記第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも高いことを第12の特徴として有していてもよい。
上記特徴の磁気抵抗効果デバイスは、上述した第6の特徴を有する磁気抵抗効果デバイスと同様に、第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍および第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数の近傍で形成される通過帯域または遮断帯域の、高周波数側および低周波数側の肩特性を急峻にすることが可能となる。
本発明によれば、磁気抵抗効果素子を利用した高周波フィルタ等の高周波デバイスを実現できる磁気抵抗効果デバイスを提供することが出来る。
第1の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの構成を示した断面模式図である。 第1の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの周波数と減衰量との関係を示したグラフである。 第1の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの直流電流に対する周波数と減衰量との関係を示したグラフである。 第1の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの磁場強度に対する周波数と減衰量との関係を示したグラフである。 第2の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの構成を示した断面模式図である。 第3の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの構成を示した断面模式図である。 第3の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの磁気抵抗効果素子の合成インピーダンスと周波数との関係を示したグラフである。 第3の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスに対する周波数と減衰量との関係を示したグラフである。 第4の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの構成を示した断面模式図である。 第5の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの構成を示した断面模式図である。 第5の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの周波数と減衰量との関係を示したグラフである。 第5の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの直流電流に対する周波数と減衰量との関係を示したグラフである。 第5の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの磁場強度に対する周波数と減衰量との関係を示したグラフである。 第6の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの構成を示した断面模式図である。 第7の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの構成を示した断面模式図である。 第7の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの磁気抵抗効果素子の合成インピーダンスと周波数との関係を示したグラフである。 第7の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスに対する周波数と減衰量との関係を示したグラフである。 第8の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの構成を示した断面模式図である。
本発明を実施するための好適な形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことが出来る。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイス101の断面模式図である。磁気抵抗効果デバイス101は、磁化固定層2(第1の磁化固定層)、磁化自由層4(第1の磁化自由層)およびこれらの間に配置されたスペーサ層3(第1のスペーサ層)を有する第1の磁気抵抗効果素子1aと、磁化固定層2(第2の磁化固定層)、磁化自由層4(第2の磁化自由層)およびこれらの間に配置されたスペーサ層3(第2のスペーサ層)を有する第2の磁気抵抗効果素子1bと、高周波信号が入力される第1のポート9aと、高周波信号が出力される第2のポート9bと、信号線路7と、直流電流入力端子11とを有している。第1のポート9a、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2のポート9bが信号線路7を介してこの順に直列接続されている。第2の磁気抵抗効果素子1bは、第2のポート9bに対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポートと9bの間の信号線路7(第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7または第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7の一方)に接続されている。より具体的には、磁気抵抗効果デバイス101は基準電位端子20を有しており、第2の磁気抵抗効果素子1bの一端(磁化固定層2側)が第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7に接続され、第2の磁気抵抗効果素子1bの他端(磁化自由層4側)が基準電位端子20を介してグラウンド8に接続可能になっている。直流電流入力端子11は、第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7(第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7または第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7の他方)に接続されている。
第1の磁気抵抗効果素子1aは、一端側(この例では磁化自由層4側)が直流電流入力端子11側になり、他端側(この例では磁化固定層2側)が基準電位端子20側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子20に接続されている。第2の磁気抵抗効果素子1bは、その一端側(この例では磁化固定層2側)が直流電流入力端子11側になり、その他端側(この例では磁化自由層4側)が基準電位端子20側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子20に接続されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス101では、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第2の磁気抵抗効果素子1bは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bとで逆になるように形成(配置)されている。この例では、第1の磁気抵抗効果素子1aでは、その一端側から他端側への向きと、その磁化自由層4から磁化固定層2への向きとが、同じ向きの関係になっており、第2の磁気抵抗効果素子1bでは、その一端側から他端側への向きと、その磁化自由層4から磁化固定層2への向きとが、逆向きの関係になっている。
第1の磁気抵抗効果素子1aは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第1の磁気抵抗効果素子1aの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れるように形成(配置)されている。第2の磁気抵抗効果素子1bは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第2の磁気抵抗効果素子1bの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れるように形成(配置)されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス101では、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第2の磁気抵抗効果素子1bのそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの磁化固定層2、スペーサ層3および磁化自由層4の配置順との関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bとで逆になっている。さらに、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数とは一致している。
第1のポート9aは交流信号である高周波信号が入力される入力ポートであり、第2のポート9bは高周波信号が出力される出力ポートである。第1のポート9aに入力される高周波信号及び第2のポート9bから出力される高周波信号は、例えば、100MHz以上の周波数を有する信号である。第1の磁気抵抗効果素子1aは、上部電極5および下部電極6を介して信号線路7と電気的に接続され、第2の磁気抵抗効果素子1bは、下部電極6を介して信号線路7と電気的に接続され、上部電極5および基準電位端子20を介してグラウンド8に電気的に接続されている。第1のポート9aから入力される高周波信号は、第1の磁気抵抗効果素子1aを通過した後、その一部の高周波信号は第2の磁気抵抗効果素子1bに流され、残りの高周波信号は第2のポート9bに出力される。また、高周波信号が第1のポート9aから第2のポート9bに通過する際の電力比(出力電力/入力電力)のdB値である減衰量(S21)は、ネットワークアナライザなどの高周波測定器により測定することが出来る。
上部電極5および下部電極6は、一対の電極としての役目を有し、各磁気抵抗効果素子を構成する各層の積層方向に各磁気抵抗効果素子を介して配設されている。つまり、上部電極5および下部電極6は、信号(電流)を各磁気抵抗効果素子に対して、各磁気抵抗効果素子を構成する各層の面と交差する方向、例えば、各磁気抵抗効果素子を構成する各層の面に対して垂直な方向(積層方向)に流すための一対の電極としての機能を有している。上部電極5および下部電極6は、Ta、Cu、Au、AuCu、Ru、またはこれらの材料のいずれか2つ以上の膜で構成されることが好ましい。第1の磁気抵抗効果素子1aは、一端(磁化自由層4側)が上部電極5を介して信号線路7に電気的に接続され、他端(磁化固定層2側)が下部電極6を介して信号線路7に電気的に接続されている。また、第2の磁気抵抗効果素子1bは、一端(磁化固定層2側)が下部電極6を介して信号線路7に電気的に接続され、他端(磁化自由層4側)が上部電極5および基準電位端子20を介してグラウンド8に電気的に接続されている。
グラウンド8は、基準電位として機能する。信号線路7とグラウンド8との形状は、マイクロストリップライン(MSL)型やコプレーナウェーブガイド(CPW)型に規定することが好ましい。マイクロストリップライン形状やコプレーナウェーブガイド形状を設計する際、信号線路7の特性インピーダンスと回路系のインピーダンスが等しくなるように信号線路7の信号線幅やグラウンド間距離を設計することにより、信号線路7を伝送損失の少ない伝送線路とすることが可能となる。
直流電流入力端子11は、第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7(第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7または第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7の他方)に接続されている。つまり、直流電流入力端子11は、第1の磁気抵抗効果素子1aに対して第2の磁気抵抗効果素子1bの信号線路7への接続箇所とは反対側の箇所の信号線路7に接続されている。直流電流入力端子11に直流電流源13が接続されることで、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに直流電流を印加することが可能になる。また、直流電流入力端子11と直流電流源13との間に、高周波信号をカットするための、インダクタまたは抵抗素子が直列に接続されてもよい。
直流電流源13は、グラウンド8及び直流電流入力端子11に接続され、磁気抵抗効果デバイス101は、グラウンド8に接続された時に、第1の磁気抵抗効果素子1a、信号線路7、第2の磁気抵抗効果素子1b、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路が形成可能になっている。直流電流源13は、直流電流入力端子11から、上記の閉回路に、直流電流を印加する。直流電流源13は、例えば、可変抵抗と直流電圧源との組み合わせの回路により構成され、直流電流の電流値を変化可能に構成されている。直流電流源13は、一定の直流電流を発生可能な、固定抵抗と直流電圧源との組み合わせの回路により構成されてもよい。
磁場印加機構12は、磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bの近傍に配設され、磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに磁場を印加して、磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数を設定可能となっている。例えば、磁場印加機構12は、電圧または電流のいずれかにより、印加磁場強度を可変制御できる電磁石型あるいはストリップライン型で構成される。また、磁場印加機構12は、電磁石型あるいはストリップライン型と一定の磁場のみを供給する永久磁石との組み合わせにより構成されていてもよい。また、磁場印加機構12は、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bとに、それぞれ個別に配置され、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bとのスピントルク共鳴周波数を、それぞれ独立に設定可能な構造でもよい。磁場印加機構12は、磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加する磁場を変化させることで、各磁化自由層4における有効磁場を変化させて磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数を変化可能となっている。
磁化固定層2は、強磁性体材料で構成されており、その磁化方向が実質的に一方向に固定されている。磁化固定層2は、Fe、Co、Ni、NiとFeの合金、FeとCoの合金、またはFeとCoとBの合金などの高スピン分極率材料から構成されることが好ましい。これにより、高い磁気抵抗変化率を得ることが出来る。また、磁化固定層2は、ホイスラー合金で構成されても良い。また、磁化固定層2の膜厚は、1〜10nmとすることが好ましい。また、磁化固定層2の磁化を固定するために磁化固定層2に接するように反強磁性層を付加してもよい。または、結晶構造、形状などに起因する磁気異方性を利用して磁化固定層2の磁化を固定してもよい。反強磁性層には、FeO、CoO、NiO、CuFeS、IrMn、FeMn、PtMn、CrまたはMnなどを用いることが出来る。
スペーサ層3は、磁化固定層2と磁化自由層4の間に配置され、磁化固定層2の磁化と磁化自由層4の磁化が相互作用して磁気抵抗効果が得られる。スペーサ層3としては、導電体、絶縁体、半導体によって構成される層、または、絶縁体中に導体によって構成される通電点を含む層で構成される。
スペーサ層3として非磁性導電材料を適用する場合、材料としてはCu、Ag、AuまたはRuなどが挙げられ、磁気抵抗効果素子には巨大磁気抵抗(GMR)効果が発現する。GMR効果を利用する場合、スペーサ層3の膜厚は、0.5〜3.0nm程度とすることが好ましい。
スペーサ層3として非磁性絶縁材料を適用する場合、材料としてはAlまたはMgOなどが挙げられ、磁気抵抗効果素子にはトンネル磁気抵抗(TMR)効果が発現する。磁化固定層2と磁化自由層4との間にコヒーレントトンネル効果が発現するように、スペーサ層3の膜厚を調整することで高い磁気抵抗変化率が得られる。TMR効果を利用する場合、スペーサ層3の膜厚は、0.5〜3.0nm程度とすることが好ましい。
スペーサ層3として非磁性半導体材料を適用する場合、材料としてはZnO、In、SnO、ITO、GaOまたはGaなどが挙げられ、スペーサ層3の膜厚は1.0〜4.0nm程度とすることが好ましい。
スペーサ層3として非磁性絶縁体中の導体によって構成される通電点を含む層を適用する場合、AlまたはMgOによって構成される非磁性絶縁体中に、CoFe、CoFeB、CoFeSi、CoMnGe、CoMnSi、CoMnAl、Fe、Co、Au、Cu、AlまたはMgなどの導体によって構成される通電点を含む構造とすることが好ましい。この場合、スペーサ層3の膜厚は、0.5〜2.0nm程度とすることが好ましい。
磁化自由層4は、その磁化の方向が変化可能であり、強磁性材料で構成されている。磁化自由層4の磁化の方向は、例えば、外部印加磁場またはスピン偏極電子によって変化可能である。磁化自由層4は、膜面内方向に磁化容易軸を有する材料の場合、材料としてはCoFe、CoFeB、CoFeSi、CoMnGe、CoMnSiまたはCoMnAlなどが挙げられ、厚さは1〜30nm程度とすることが好ましい。磁化自由層4は、膜面法線方向に磁化容易軸を有する材料の場合、材料としてはCo、CoCr系合金、Co多層膜、CoCrPt系合金、FePt系合金、希土類を含むSmCo系合金またはTbFeCo合金などが挙げられる。また、磁化自由層4は、ホイスラー合金で構成されても良い。また、磁化自由層4とスペーサ層3との間に、高スピン分極率材料を挿入しても良い。これによって、高い磁気抵抗変化率を得ることが可能となる。高スピン分極率材料としては、CoFe合金またはCoFeB合金などが挙げられる。CoFe合金またはCoFeB合金いずれの膜厚も0.2〜1.0nm程度とすることが好ましい。
また、上部電極5と各磁気抵抗効果素子との間、および下部電極6と各磁気抵抗効果素子との間にキャップ層、シード層またはバッファー層を配設しても良い。キャップ層、シード層またはバッファー層としては、Ru、Ta、Cu、Crまたはこれらの積層膜などが挙げられ、これらの層の膜厚は2〜10nm程度とすることが好ましい。
尚、各磁気抵抗効果素子の大きさは、平面視形状が長方形(正方形を含む)の場合、その長辺を100nm程度、または100nm以下にすることが望ましい。また、平面視形状が長方形ではない場合は、平面視形状に最小の面積で外接する長方形の長辺を、各磁気抵抗効果素子の長辺と定義する。長辺が100nm程度と小さい場合、磁化自由層4の磁区の単磁区化が可能となり、高効率なスピントルク共鳴現象の実現が可能となる。ここで、「平面視形状」とは、各磁気抵抗効果素子を構成する各層の積層方向に垂直な平面で見た形状のことである。
ここで、スピントルク共鳴現象について説明する。
磁気抵抗効果素子に、磁気抵抗効果素子の固有のスピントルク共鳴周波数と同じ周波数の高周波信号を入力すると、磁化自由層の磁化がスピントルク共鳴周波数で振動する。この現象をスピントルク共鳴現象と呼ぶ。磁気抵抗効果素子の素子抵抗値は、磁化固定層の磁化と磁化自由層の磁化との相対角で決まる。そのため、スピントルク共鳴時の磁気抵抗効果素子の抵抗値は、磁化自由層の磁化の振動に伴い、周期的に変化する。つまり、磁気抵抗効果素子は、スピントルク共鳴周波数で抵抗値が周期的に変化する抵抗振動素子として取り扱うことが出来る。
各磁気抵抗効果素子の中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れる直流電流を各磁気抵抗効果素子に印加しながら、各磁気抵抗効果素子にスピントルク共鳴周波数と同じ周波数の高周波信号を入力すると、各磁気抵抗効果素子は、入力された高周波信号と同位相の状態で、スピントルク共鳴周波数で抵抗値が周期的に変化し、この高周波信号に対するインピーダンスは減少する。つまり、磁気抵抗効果デバイス101において、第1の磁気抵抗効果素子1aは、スピントルク共鳴現象により、スピントルク共鳴周波数で高周波信号のインピーダンスが減少する抵抗素子として取り扱うことが出来る。
また、各磁気抵抗効果素子の中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れる直流電流を各磁気抵抗効果素子に印加しながら、各磁気抵抗効果素子にスピントルク共鳴周波数と同じ周波数の高周波信号を入力すると、各磁気抵抗効果素子は、入力された高周波信号とは位相が180°異なる状態で、スピントルク共鳴周波数で抵抗値が周期的に変化し、この高周波信号に対するインピーダンスは増加する。つまり、磁気抵抗効果デバイス101において、第2の磁気抵抗効果素子1bは、スピントルク共鳴現象により、スピントルク共鳴周波数で高周波信号のインピーダンスが増加する抵抗素子として取り扱うことが出来る。
スピントルク共鳴周波数は、磁化自由層4における有効磁場によって変化する。磁化自由層4における有効磁場Heffは、磁化自由層4に印加される外部磁場H、磁化自由層4における異方性磁場H、磁化自由層4における反磁場H、磁化自由層4における交換結合磁場HEXを用いて、
eff=H+H+H+HEX
で表される。磁場印加機構12は、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに磁場を印加し、各磁化自由層4に外部磁場Hを印加することにより、各磁化自由層4における有効磁場Heffを設定可能な有効磁場設定機構である。有効磁場設定機構である磁場印加機構12は、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加する磁場を変化させることで、各磁化自由層4における有効磁場を変化させて第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数を変化させることが出来る。このように、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加される磁場を変化させると、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのそれぞれのスピントルク共鳴周波数は変化する。
また、スピントルク共鳴時に第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに直流電流が印加されることにより、スピントルクが増加して、振動する抵抗値の振幅が増加する。振動する抵抗値の振幅が増加することにより、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのそれぞれの素子インピーダンスの変化量が増加する。また、印加される直流電流の電流密度を変化させると、スピントルク共鳴周波数は変化する。したがって、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのそれぞれのスピントルク共鳴周波数は、磁場印加機構12からの磁場を変化させるか、直流電流入力端子11からの印加直流電流を変化させることにより変化させることが出来る。第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのそれぞれに印加される直流電流の電流密度は、それぞれの発振閾値電流密度よりも小さいことが好ましい。磁気抵抗効果素子の発振閾値電流密度とは、この値以上の電流密度の直流電流の印加により、磁気抵抗効果素子の磁化自由層の磁化が一定周波数及び一定の振幅で歳差運動を開始し、磁気抵抗効果素子が発振する(磁気抵抗効果素子の出力(抵抗値)が一定周波数及び一定の振幅で変動する)閾値の電流密度のことである。
また、同一の磁場および同一の電流密度の直流電流が磁気抵抗効果素子に印加された状態で考えると、磁気抵抗効果素子の平面視形状のアスペクト比が大きくなるに従って磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数は高くなる。ここで「平面視形状のアスペクト比」とは、磁気抵抗効果素子の平面視形状に最小の面積で外接する長方形の、短辺の長さに対する長辺の長さの比率のことである。
スピントルク共鳴現象により、第1のポート9aから入力された高周波信号の高周波成分の中で第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と一致する、またはスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数成分は、低インピーダンス状態の第1の磁気抵抗効果素子1aを通過し、第2のポート9bに出力されやすくなる。一方、高周波信号の高周波成分の中で第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍でない周波数成分は、高インピーダンス状態の第1の磁気抵抗効果素子1aにより、第2のポート9bに出力されにくくなる。
さらに、スピントルク共鳴現象により、第1の磁気抵抗効果素子1aを通過した高周波信号の高周波成分の中で第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数と一致する、またはスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数成分は、第2のポート9bに並列に接続された、高インピーダンス状態の第2の磁気抵抗効果素子1bによりグラウンド8から遮断され、第2のポート9bに出力されやすくなる。一方、高周波信号の高周波成分の中で第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍でない周波数成分は、低インピーダンス状態の第2の磁気抵抗効果素子1aを通過してグラウンド8に流れ、第2のポート9bに出力されにくくなる。
このように、磁気抵抗効果デバイス101では、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍でない高周波信号の周波数成分は、第2のポート9bに対し2重に遮断され、磁気抵抗効果デバイス101は、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数が通過帯域の高周波フィルタの機能を有することが出来る。つまり、磁気抵抗効果デバイス101は、遮断特性の良い帯域通過型のフィルタ(バンドパスフィルタ)となる。
磁気抵抗効果デバイス101では、第1の磁気抵抗効果素子1aの非共鳴周波数の高周波信号に対するインピーダンス(すなわち、第1の磁気抵抗効果素子1aの抵抗値)は高いことが好ましく、第2の磁気抵抗効果素子1bの非共鳴周波数の高周波信号に対するインピーダンス(すなわち、第2の磁気抵抗効果素子1bの抵抗値)は低いことが好ましい。すなわち、第1の磁気抵抗効果素子1aの非共鳴周波数の高周波信号に対するインピーダンス(第1の磁気抵抗効果素子1aの抵抗値)は、第2の磁気抵抗効果素子1bの非共鳴周波数の高周波信号に対するインピーダンス(第2の磁気抵抗効果素子1bの抵抗値)よりも高いことが好ましい。例えば、第1の磁気抵抗効果素子1aの高周波信号の経路に垂直な断面による断面積を、第2の磁気抵抗効果素子1bの高周波信号の経路に垂直な断面による断面積よりも小さくすることで、このようなインピーダンス(または抵抗値)の関係を実現することができる。この場合、第1の磁気抵抗効果素子1aに印加される直流電流の電流密度は、第2の磁気抵抗効果素子1bに印加される直流電流の電流密度よりも大きくなるが、例えば、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bについて、これらに同一の磁場を印加し、膜構成を互いに同じにして、平面視形状をともに長方形として、それぞれの平面視形状のアスペクト比を調整することにより、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数を一致させることができる。ここで「膜構成が同じ」とは、磁気抵抗効果素子を構成する各層の材料および膜厚が同じであり、さらに各層の積層順が同じであることを意味する。
また、磁気抵抗効果デバイス101は、直流電流入力端子11から入力される直流電流が一定以上の大きさの場合、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数において、第1のポート9aから入力される高周波信号の入力電力よりも、第2のポート9bから出力される出力電力を大きく(減衰量を0dB以上)することが出来る。つまり、磁気抵抗効果デバイス101は、増幅器(アンプ)として機能することも可能となる。
また、磁気抵抗効果デバイス101では、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数は一致している。この場合、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数と同じ周波数に対する、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bの合成インピーダンスが小さくなるため、磁気抵抗効果デバイス101は、通過特性がよく、通過特性と遮断特性のレンジが大きな高周波フィルタとして機能することが可能となる。
図2に、磁気抵抗効果デバイス101に入力される高周波信号の周波数と減衰量との関係を示したグラフを示す。図2の縦軸は減衰量、横軸は周波数を表している。図2は、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加された磁場が一定で、且つ、印加された直流電流が一定の時のグラフである。図2のプロット線100o1は、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数が一致している時のものであり、プロット線100o2は、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数とが互いに異なる時のものである。
例えば、図2に示されるように、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数とが一致している場合、これらのスピントルク共鳴周波数が互いに異なる時と比べて、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数と同じ周波数に対する、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bの合成インピーダンスが小さくなるため、スピントルク共鳴周波数と同じ周波数の高周波信号に対する磁気抵抗効果デバイス101の通過特性が向上する(減衰量の絶対値が減少する)。
図3および図4に、磁気抵抗効果デバイス101に入力される高周波信号の周波数と減衰量との関係を示したグラフを示す。図3および図4の縦軸は減衰量、横軸は周波数を表している。図3は、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加された磁場が一定の時のグラフである。図3のプロット線100a1は、直流電流入力端子11から第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加される直流電流値がIa1の時のものであり、プロット線100a2は直流電流入力端子11から第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加される直流電流値がIa2の時のものである。この時の直流電流値の関係は、Ia1<Ia2である。また、図4は、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加された直流電流が一定の時のグラフである。図4のプロット線100b1は、磁場印加機構12から第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加される磁場強度がHb1の時のものであり、プロット線100b2は磁場印加機構12から第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加される磁場強度がHb2の時のものである。この時の磁場強度の関係は、Hb1<Hb2である。
例えば、図3に示されるように、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数とが一致しているときに、直流電流入力端子11から第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加される直流電流値をIa1からIa2に大きくした場合、電流値の変化に伴い第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数(通過帯域の周波数)での、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのそれぞれの素子インピーダンスの変化量が増加することで、第2のポート9bから出力される高周波信号がさらに大きくなり、通過損失が小さくなる。したがって、磁気抵抗効果デバイス101は、遮断特性と通過特性のレンジが大きな高周波フィルタを実現することが可能となる。また、直流電流値をIa1からIa2に大きくすると第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数はfa1からfa2にシフトする。すなわち通過周波数帯域は低周波数側へシフトする。つまり、磁気抵抗効果デバイス101は、通過周波数帯域の周波数を変化可能な高周波フィルタとして機能することも出来る。
さらに、例えば、図4に示されるように、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数とが一致しているときに、磁場印加機構12から印加される磁場強度をHb1からHb2に強くした場合、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数はfb1からfb2にシフトする。すなわち、通過周波数帯域は高周波数側へシフトする。また、磁場強度(磁化自由層4における有効磁場Heff)を変化させる方が、直流電流値を変化させるよりも大きく通過周波数帯域をシフトさせることができる。つまり、磁気抵抗効果デバイス101は、通過周波数帯域の周波数を変化可能な高周波フィルタとして機能することが出来る。
なお、各磁気抵抗効果素子に印加される外部磁場H(磁化自由層4における有効磁場Heff)が大きくなるに従って、各磁気抵抗効果素子の振動する抵抗値の振幅が小さくなるので、各磁気抵抗効果素子に印加される外部磁場H(磁化自由層4における有効磁場Heff)を大きくするのに伴い、各磁気抵抗効果素子に印加される直流電流の電流密度を大きくすることが好ましい。
このように、磁気抵抗効果デバイス101は、第1の磁気抵抗効果素子1aと、第2の磁気抵抗効果素子1bと、高周波信号が入力される第1のポート9aと、高周波信号が出力される第2のポート9bと、信号線路7と、直流電流入力端子11とを有し、第1のポート9a、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2のポート9bが信号線路7を介してこの順に直列接続され、第2の磁気抵抗効果素子1bは、第2のポート9bに対して並列に信号線路7に接続され、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bは、それぞれ磁化固定層2、磁化自由層4およびこれらの間に配置されたスペーサ層3を有し、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第2の磁気抵抗効果素子1bは、それぞれの一端側が直流電流入力端子11側になり、それぞれの他端側が基準電位端子20側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子20に接続され、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第2の磁気抵抗効果素子1bは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bとで逆になるように形成されている。また、第1の磁気抵抗効果素子1aは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第1の磁気抵抗効果素子1aの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れるように形成され、第2の磁気抵抗効果素子1bは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第2の磁気抵抗効果素子1bの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れるように形成されている。
したがって、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに第1のポート9aから信号線路7を介して高周波信号が入力されることにより、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bにスピントルク共鳴を誘起させることが出来る。このスピントルク共鳴と同時に、第1の磁気抵抗効果素子1aの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に直流電流が流れることにより、第1の磁気抵抗効果素子1aは、第1のポートから入力された高周波信号と同位相の状態で、スピントルク共鳴周波数に対応した周波数で周期的に抵抗値が振動する素子として扱うことが出来る。この効果により、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と同じ周波数に対する第1の磁気抵抗効果素子1aの素子インピーダンスが減少する。また、第2の磁気抵抗効果素子1bの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に直流電流が流れることにより、第2の磁気抵抗効果素子1bは、第1のポートから入力された高周波信号とは位相が180°異なる状態で、スピントルク共鳴周波数に対応した周波数で周期的に抵抗値が振動する素子として扱うことが出来る。この効果により、第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数と同じ周波数に対する第2の磁気抵抗効果素子1bの素子インピーダンスが増加する。第1のポート9a、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2のポート9bがこの順に直列接続されることにより、高周波信号を、第1の磁気抵抗効果素子1aが高インピーダンス状態である非共鳴周波数では第2のポート9bに対し遮断し、第1の磁気抵抗効果素子1aが低インピーダンス状態である共鳴周波数では第2のポート9b側に通過させることが出来る。さらに、第2の磁気抵抗効果素子1bが、第2のポート9bに対して並列に信号線路7に接続されることにより、高周波信号を、第2の磁気抵抗効果素子1bが低インピーダンス状態である非共鳴周波数では第2のポート9bに対し遮断し、第2の磁気抵抗効果素子1bが高インピーダンス状態である共鳴周波数では第2のポート9b側に通過させることが出来る。つまり、磁気抵抗効果デバイス101は、高周波フィルタとしての周波数特性をもつことが可能となる。
さらに、磁気抵抗効果デバイス101は、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数とが一致しているため、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数と同じ周波数に対する、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子2bの合成インピーダンスが小さくなるため、磁気抵抗効果デバイス101は、通過特性がよく、通過特性と遮断特性のレンジが大きな高周波フィルタとして機能することが可能となる。
さらに、遮断特性と通過特性のレンジを大きくするためには、磁化自由層4が膜面法線方向に磁化容易軸を有し、磁化固定層2が膜面方向に磁化容易軸を有する構成とすることが好ましい。
また、直流電流入力端子11から印加される直流電流を変化させることにより、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数を可変制御することができるため、磁気抵抗効果デバイス101は、周波数可変フィルタとして機能することも可能となる。
さらに、磁気抵抗効果デバイス101は、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数を設定可能な周波数設定機構としての磁場印加機構12を有するので、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数を任意の周波数にすることができる。したがって、磁気抵抗効果デバイス101は、任意の周波数帯のフィルタとして機能することが可能となる。
さらに、磁気抵抗効果デバイス101は、磁場印加機構12が、磁化自由層4における有効磁場を設定可能な有効磁場設定機構であり、磁化自由層4における有効磁場を変化させて第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数を変化可能であるので、周波数可変フィルタとして機能することが可能となる。
以上の説明では、第2の磁気抵抗効果素子1bが、第2のポート9bに対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7に接続され、直流電流入力端子11が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7に接続されている例で説明したが、第2の磁気抵抗効果素子1bが、第2のポート9bに対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7に接続され、直流電流入力端子11が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7に接続されるようにしてもよい。より具体的には、第2の磁気抵抗効果素子1bの一端が第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポートと9aとの間の信号線路7に接続され、第2の磁気抵抗効果素子1bの他端が基準電位端子20を介してグラウンド8に接続可能となるようにしてもよい。
また、以上の説明では、磁気抵抗効果デバイス101の第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数とが一致している例で説明したが、磁気抵抗効果デバイス101の第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数とが互いに異なるようにしてもよい。上述したように、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数は、「各磁気抵抗効果素子に印加される磁場」、「各磁気抵抗効果素子に印加される直流電流の電流密度」および「各磁気抵抗効果素子の平面視形状のアスペクト比」のうちの少なくとも1つを調整することにより調整可能である。
第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数とが互いに異なる場合、例えば、図2のプロット線100o2に示されるように、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数近傍の周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数近傍の周波数が広帯域にわたるため、高周波信号を第2のポート側に通過させる通過帯域が広帯域になる。つまり、この場合の磁気抵抗効果デバイス101は、通過帯域が広い高周波フィルタとして機能することが可能となる。
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイス102の断面模式図である。磁気抵抗効果デバイス102において、第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス101と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス101と共通している要素は同じ符号を用いており、共通している要素の説明は省略する。磁気抵抗効果デバイス102は、第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス101に対し、さらにインダクタ10と基準電位端子21を有している。インダクタ10は、第2のポートに対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7(第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7または第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7の一方)に接続されている。第2の磁気抵抗効果素子1bは、第2のポート9bに対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7(第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7または第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7の他方)に接続されている。つまり、第2の磁気抵抗効果素子1bは、第1の磁気抵抗効果素子1aに対してインダクタ10の信号線路7への接続箇所とは反対側の箇所の信号線路7に接続されている。直流電流入力端子11は、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7(第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7または第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7の他方)に接続されている。つまり、直流電流入力端子11は、第1の磁気抵抗効果素子1aに対してインダクタ10の信号線路7への接続箇所とは反対側の箇所の信号線路7に接続されている。より具体的には、インダクタ10は、第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7に接続され、さらに基準電位端子21を介してグラウンド8に接続可能になっており、第2の磁気抵抗効果素子1bの一端(磁化固定層2側)が第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7に接続され、第2の磁気抵抗効果素子1bの他端(磁化自由層4側)が基準電位端子20を介してグラウンド8に接続可能になっており、直流電流入力端子11が第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7に接続されている。第1の磁気抵抗効果素子1aは磁化固定層2側が第1のポート側になるように信号線路7に接続されて、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第1の磁気抵抗効果素子1aの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れるように形成(配置)されている。磁気抵抗効果デバイス102のその他の構成は、第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス101と同じである。
第1の磁気抵抗効果素子1aは、一端側(この例では磁化自由層4側)が直流電流入力端子11側になり、他端側(この例では磁化固定層2側)が基準電位端子21側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子21に接続されている。第2の磁気抵抗効果素子1bは、その一端側(この例では磁化固定層2側)が直流電流入力端子11側になり、その他端側(この例では磁化自由層4側)が基準電位端子20側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子20に接続されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス101と同様に、磁気抵抗効果デバイス102では、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第2の磁気抵抗効果素子1bは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bとで逆になるように形成(配置)されている。
第1の磁気抵抗効果素子1aは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第1の磁気抵抗効果素子1aの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れるように形成(配置)されている。第2の磁気抵抗効果素子1bは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第2の磁気抵抗効果素子1bの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れるように形成(配置)されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス101と同様に、磁気抵抗効果デバイス102では、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第2の磁気抵抗効果素子1bのそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの磁化固定層2、スペーサ層3および磁化自由層4の配置順との関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bとで逆になっている。
直流電流源13は、グラウンド8及び直流電流入力端子11に接続され、磁気抵抗効果デバイス102は、グラウンド8に接続された時に、第1の磁気抵抗効果素子1a、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路が形成可能になっている。また、磁気抵抗効果デバイス102は、グラウンド8に接続された時に、第2の磁気抵抗効果素子1b、信号線路7、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路が形成可能になっている。
インダクタ10は、信号線路7とグラウンド8との間に接続され、インダクタ成分により電流の高周波成分をカットすると同時に電流の直流成分を通す機能を有する。インダクタ10は、チップインダクタまたはパターン線路によるインダクタのどちらでもよい。また、インダクタ成分を有する抵抗素子でもよい。インダクタ10のインダクタンス値は10nH以上であることが好ましい。このインダクタ10により、第1の磁気抵抗効果素子1aを通過する高周波信号の特性を劣化させることなく、第1の磁気抵抗効果素子1a、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路に、直流電流入力端子11から印加された直流電流を流すことができる。
磁気抵抗効果デバイス102は、第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス101と同様の、高周波フィルタとしての周波数特性をもつことができる。
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイス103の断面模式図である。磁気抵抗効果デバイス103において、第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス101と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス101と共通している要素は同じ符号を用いており、共通している要素の説明は省略する。磁気抵抗効果デバイス103は、第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス101に対し、さらに第3の磁気抵抗効果素子1cと第4の磁気抵抗効果素子1dを有している。第3の磁気抵抗効果素子1cは、磁化固定層2(第3の磁化固定層)、磁化自由層4(第3の磁化自由層)およびこれらの間に配置されたスペーサ層3(第3のスペーサ層)を有している。第4の磁気抵抗効果素子1dは、磁化固定層2(第4の磁化固定層)、磁化自由層4(第4の磁化自由層)およびこれらの間に配置されたスペーサ層3(第4のスペーサ層)を有している。
第1のポート9a、第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第2のポート9bが信号線路7を介してこの順に直列接続されている。第4の磁気抵抗効果素子1dは、第2のポート9bに対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子と第2のポート9bとの間の信号線路7(第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7または第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7の一方)に接続されている。図6に示す磁気抵抗効果デバイス103では、第1の磁気抵抗効果素子1aと第3の磁気抵抗効果素子1cとが直列接続され、第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dとが直列接続されている。より具体的には、第3の磁気抵抗効果素子1cの一端(磁化固定層2側)が第1の磁気抵抗効果素子1aの磁化固定層2側に接続され、第3の磁気抵抗効果素子1cの他端(磁化自由層4側)が第2のポート2b側に接続されている。第4の磁気抵抗効果素子1dの一端(磁化自由層4側)は第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7(第2の磁気抵抗効果素子1bの磁化自由層4側)に接続され、第4の磁気抵抗効果素子1dの他端(磁化固定層2側)は基準電位端子20を介してグラウンド8に接続可能になっている。磁気抵抗効果デバイス103は、グラウンド8に接続された時に、第1の磁気抵抗効果素子1a、第3の磁気抵抗効果素子1c、信号線路7、第2の磁気抵抗効果素子1b、第4の磁気抵抗効果素子1d、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路が形成可能になっている。
第3の磁気抵抗効果素子1cは、一端側(この例では磁化固定層2側)が直流電流入力端子11側になり、他端側(この例では磁化自由層4側)が基準電位端子20側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子20に接続されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス103では、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第3の磁気抵抗効果素子1cは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、前記第1の磁気抵抗効果素子と前記第3の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成(配置)されている。この例では、第1の磁気抵抗効果素子1aでは、その一端側から他端側への向きと、その磁化自由層4から磁化固定層2への向きとが、同じ向きの関係になっており、第3の磁気抵抗効果素子1cでは、その一端側から他端側への向きと、その磁化自由層4から磁化固定層2への向きとが、逆向きの関係になっている。
第4の磁気抵抗効果素子1dは、その一端側(この例では磁化自由層4側)が直流電流入力端子11側になり、その他端側(この例では磁化固定層2側)が基準電位端子20側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子20に接続されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス103では、第2の磁気抵抗効果素子1b及び第4の磁気抵抗効果素子1dは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dとで逆になるように形成(配置)されている。この例では、第2の磁気抵抗効果素子1bでは、その一端側から他端側への向きと、その磁化自由層4から磁化固定層2への向きとが、逆向きの関係になっており、第4の磁気抵抗効果素子1cでは、その一端側から他端側への向きと、その磁化自由層4から磁化固定層2への向きとが、同じ向きの関係になっている。
第3の磁気抵抗効果素子1cは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第3の磁気抵抗効果素子1cの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れるように形成(配置)されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス103では、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cは、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cのそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの磁化固定層2、スペーサ層3および磁化自由層4の配置順との関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第3の磁気抵抗効果素子1cとで逆になっている。第4の磁気抵抗効果素子1dは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第4の磁気抵抗効果素子1dの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れるように形成(配置)されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス103では、第2の磁気抵抗効果素子1bおよび第4の磁気抵抗効果素子1dは、第2の磁気抵抗効果素子1bおよび第4の磁気抵抗効果素子1dのそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの磁化固定層2、スペーサ層3および磁化自由層4の配置順との関係が、第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dとで逆になっている。
さらに、第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数は、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも高くなっており、第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数は、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも低くなっている。
磁場印加機構12は、第1の磁気抵抗効果素子1a、第2の磁気抵抗効果素子1b、第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第4の磁気抵抗効果素子1dの近傍に配設され、第1の磁気抵抗効果素子1a、第2の磁気抵抗効果素子1b、第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第4の磁気抵抗効果素子1dに磁場を印加して、第1の磁気抵抗効果素子1a、第2の磁気抵抗効果素子1b、第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数を設定可能となっている。磁場印加機構12は、第1の磁気抵抗効果素子1a、第2の磁気抵抗効果素子1b、第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第4の磁気抵抗効果素子1dの各磁化自由層4における有効磁場Heffを設定可能な有効磁場設定機構である。磁気抵抗効果デバイス103のその他の構成は、第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス101と同じである。
第3の磁気抵抗効果素子1cは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第3の磁気抵抗効果素子1cの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れるように形成(配置)されているので、第2の磁気抵抗効果素子1bと同様に、スピントルク共鳴現象により、スピントルク共鳴周波数で高周波信号のインピーダンスが増加する抵抗素子として取り扱うことが出来る。
また、第4の磁気抵抗効果素子1dは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第4の磁気抵抗効果素子1dの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れるように形成(配置)されているので、第1の磁気抵抗効果素子1aと同様に、スピントルク共鳴現象により、スピントルク共鳴周波数で高周波信号のインピーダンスが減少する抵抗素子として取り扱うことが出来る。
スピントルク共鳴現象により、第1のポート9aから入力された高周波信号の高周波成分の中で第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数と一致する、またはスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数成分は、高インピーダンス状態の第3の磁気抵抗効果素子1cに遮断され、第2のポート9bに出力されにくくなる。
さらに、スピントルク共鳴現象により、第1のポート9aから入力された高周波信号の高周波成分の中で第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数と一致する、またはスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数成分は、第2のポート9bに並列に接続された、低インピーダンス状態の第4の磁気抵抗効果素子1dによりグラウンド8に流れやすくなり、第2のポート9bに出力されにくくなる。
図7に、磁気抵抗効果デバイス103に入力される高周波信号の周波数と磁気抵抗効果デバイス103の磁気抵抗効果素子の合成インピーダンスとの関係を示したグラフを示す。図7の縦軸はインピーダンス、横軸は周波数を表している。図7のプロット線100d1は、第2のポート9bに並列に接続された第2の磁気抵抗効果素子1bおよび第4の磁気抵抗効果素子1dの合成インピーダンス特性であり、低周波側(fd1の近傍)は主に第4の磁気抵抗効果素子1d、高周波側(fd2の近傍)は主に第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴時のインピーダンス特性が示されている。また、プロット線100d2は、第1のポート9aおよび第2のポート9bに直列に接続された第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cの合成インピーダンス特性であり、低周波側(fd2の近傍)は主に第1の磁気抵抗効果素子1a、高周波側(fd3の近傍)は主に第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴時のインピーダンス特性が示されている。fd1は第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数であり、fd3は第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数であり、fd2は第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数である。図7では、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数とが一致している例を示している。
図8に、磁気抵抗効果デバイス103に入力される高周波信号の周波数と減衰量との関係を示したグラフを示す。図8の縦軸は減衰量、横軸は周波数を表している。
図8に示されるように、磁気抵抗効果デバイス103では、第1実施形態の磁気抵抗効果デバイス101と同様に、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数で、第2のポート9bから出力される高周波信号が大きくなり、通過損失が小さくなる。したがって、磁気抵抗効果デバイス103は、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数を通過帯域とする帯域通過型のフィルタとして機能する。磁気抵抗効果デバイス103は、第3の磁気抵抗効果素子1cと第4の磁気抵抗効果素子1dにより、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の高周波側および低周波側(上記の通過帯域の高周波側および低周波側)において、高周波信号を第2のポート9bに対し遮断することが出来る。第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数の近傍または第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数1dの近傍においては、図7に示すように、第3の磁気抵抗効果素子1cまたは第4の磁気抵抗効果素子1dのインピーダンスの、高周波信号の周波数に対する変化が急峻であり、高周波信号の減衰量の周波数に対する変化が急峻である。このため、上記の通過帯域の肩特性が急峻になる。特に、第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数(fd3)を、使用する通過帯域の上限周波数に一致させ、第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数(fd1)を、使用する通過帯域の下限周波数に一致させることが好ましい。
このように、磁気抵抗効果デバイス103は、磁化固定層2、磁化自由層4およびこれらの間に配置されたスペーサ層3を有する第3の磁気抵抗効果素子1cを磁気抵抗効果デバイス101に対してさらに有し、第1のポート9a、第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第2のポート9bが信号線路を介してこの順に直列接続され、第3の磁気抵抗効果素子1cは、その一端側が直流電流入力端子11側になり、その他端側が基準電位端子20側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子20に接続され、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第3の磁気抵抗効果素子1cは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第3の磁気抵抗効果素子1bとで逆になるように形成され、第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数が、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも高くなっている。また、第3の磁気抵抗効果素子1cは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第3の磁気抵抗効果素子1cの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れるように形成されている。また、磁気抵抗効果デバイス103は、磁化固定層2、磁化自由層4およびこれらの間に配置されたスペーサ層3を有する第4の磁気抵抗効果素子1dを磁気抵抗効果デバイス101に対してさらに有し、第4の磁気抵抗効果素子1dは、第2のポート9bに対して並列に信号線路7に接続され、第4の磁気抵抗効果素子1dは、その一端側が直流電流入力端子11側になり、その他端側が基準電位端子20側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子20に接続され、第2の磁気抵抗効果素子1b及び第4の磁気抵抗効果素子1dは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dとで逆になるように形成され、第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数が、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも低くなっている。また、第4の磁気抵抗効果素子1dは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第4の磁気抵抗効果素子1dの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れるように形成されている。
第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第4の磁気抵抗効果素子1dに第1のポート9aから信号線路7を介して高周波信号が入力されることにより、第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第4の磁気抵抗効果素子1dにスピントルク共鳴を誘起させることが出来る。このスピントルク共鳴と同時に、第3の磁気抵抗効果素子1cの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に直流電流が流れることにより、第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数と同じ、またはその近傍の周波数に対する第3の磁気抵抗効果素子1cの素子インピーダンスが増加する。また、スピントルク共鳴と同時に、第4の磁気抵抗効果素子1dの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に直流電流が流れることにより、第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数と同じ、またはその近傍の周波数に対する第4の磁気抵抗効果素子1dの素子インピーダンスが減少する。
第3の磁気抵抗効果素子1cは、第1のポート9b、第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第2のポート9bがこの順に直列接続されることにより、高周波信号を、第3の磁気抵抗効果素子1cが低インピーダンス状態である非共鳴周波数では第2のポート側に通過させ、第3の磁気抵抗効果素子1cが高インピーダンス状態である共鳴周波数では第2のポートに対し遮断することが出来る。
第4の磁気抵抗効果素子1dは、第2のポート9bに対して並列に信号線路7に接続されることにより、高周波信号を、第4の磁気抵抗効果素子1dが高インピーダンス状態である非共鳴周波数では第2のポート9b側に通過させ、第4の磁気抵抗効果素子1dが低インピーダンス状態である共鳴周波数では第2のポート9bに対し遮断することが出来る。
また、第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数が、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも高いことにより、高周波信号が第2のポート9b側に通過する第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の高周波数側において、高周波信号を第2のポート9bに対し遮断することが出来る。高周波信号が遮断される第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数の近傍においては、高周波信号の減衰量の周波数に対する変化が急峻であるため、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍で形成される通過帯域の高周波数側の肩特性が急峻になる。また、第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数が、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも低いことにより、高周波信号が第2のポート9b側に通過する第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の低周波数側において、高周波信号を第2のポート9bに対し遮断することが出来る。高周波信号が遮断される第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数1dの近傍においては、高周波信号の減衰量の周波数に対する変化が急峻であるため、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍で形成される通過帯域の低周波数側の肩特性が急峻になる。つまり、磁気抵抗効果デバイス103は、通過帯域の肩特性が急峻なフィルタとして機能することが可能となる。
以上の説明では、第2の磁気抵抗効果素子1bおよび第4の磁気抵抗効果素子1dが、第2のポート9bに対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7に接続されている例で説明したが、第2の磁気抵抗効果素子1bおよび第4の磁気抵抗効果素子1dの一方が、第2のポート9bに対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7に接続されるようにしてもよい。また、第2の磁気抵抗効果素子1bおよび第4の磁気抵抗効果素子1dの両方が、第2のポート9bに対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7に接続され、直流電流入力端子11が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7に接続されるようにしてもよい。
また、第3の実施形態では、第1実施形態の磁気デバイス101に対して、第3の磁気抵抗効果素子1cと第4の磁気抵抗効果素子1dが追加された例で説明したが、これと同様にして、第2実施形態の磁気デバイス102に対して、第3の磁気抵抗効果素子1cと第4の磁気抵抗効果素子1dが追加された形態でも良い。
(第4の実施形態)
図9は、本発明の第4の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイス104の断面模式図である。磁気抵抗効果デバイス104において、第3の実施形態の磁気抵抗効果デバイス103と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。第3の実施形態の磁気抵抗効果デバイス103と共通している要素は同じ符号を用いており、共通している要素の説明は省略する。磁気抵抗効果デバイス104は、第3の実施形態の磁気抵抗効果デバイス103に対し、さらにインダクタ10と基準電位端子21を有している。インダクタ10は、第2のポートに対して並列に、第3の磁気抵抗効果素子1cと第2のポート9bとの間の信号線路7(第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cと第1のポート9aとの間の信号線路7または第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cと第2のポート9bとの間の信号線路7の一方)に接続されている。第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dは、第2のポート9b(第1のポート9a)に対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7(第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cと第1のポート9aとの間の信号線路7または第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cと第2のポート9bとの間の信号線路7の他方)に接続されている。つまり、第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dは、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cに対してインダクタ10の信号線路7への接続箇所とは反対側の箇所の信号線路7に接続されている。直流電流入力端子11は、第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7(第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cと第1のポート9aとの間の信号線路7または第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cと第2のポート9bとの間の信号線路7の他方)に接続されている。つまり、直流電流入力端子11は、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cに対してインダクタの信号線路7への接続箇所とは反対側の箇所の信号線路7に接続されている。より具体的には、インダクタ10は、第3の磁気抵抗効果素子1cと第2のポート9bとの間の信号線路7に接続され、さらに基準電位端子21を介してグラウンド8に接続可能になっており、第2の磁気抵抗効果素子1bの一端(磁化固定層2側)が第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7に接続されている。磁気抵抗効果デバイス104のその他の構成は、第3の実施形態の磁気抵抗効果デバイス103と同じである。
第1の磁気抵抗効果素子1aは、一端側(この例では磁化自由層4側)が直流電流入力端子11側になり、他端側(この例では磁化固定層2側)が基準電位端子21側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子21に接続されている。第2の磁気抵抗効果素子1bは、その一端側(この例では磁化固定層2側)が直流電流入力端子11側になり、その他端側(この例では磁化自由層4側)が基準電位端子20側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子20に接続されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス103と同様に、磁気抵抗効果デバイス104では、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第2の磁気抵抗効果素子1bは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bとで逆になるように形成(配置)されている。第3の磁気抵抗効果素子1cは、一端側(この例では磁化固定層2側)が直流電流入力端子11側になり、他端側(この例では磁化自由層4側)が基準電位端子21側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子21に接続されている。第4の磁気抵抗効果素子1bは、その一端側(この例では磁化自由層4側)が直流電流入力端子11側になり、その他端側(この例では磁化固定層2側)が基準電位端子20側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子20に接続されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス103と同様に、磁気抵抗効果デバイス104では、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第3の磁気抵抗効果素子1cは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第3の磁気抵抗効果素子1cとで逆になるように形成(配置)されており、第2の磁気抵抗効果素子1b及び第4の磁気抵抗効果素子1dは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dとで逆になるように形成(配置)されている。
第1の磁気抵抗効果素子1aは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第1の磁気抵抗効果素子1aの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れるように形成(配置)されている。第2の磁気抵抗効果素子1bは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第2の磁気抵抗効果素子1bの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れるように形成(配置)されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス103と同様に、磁気抵抗効果デバイス104では、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第2の磁気抵抗効果素子1bのそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの磁化固定層2、スペーサ層3および磁化自由層4の配置順との関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bとで逆になっている。第3の磁気抵抗効果素子1cは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第3の磁気抵抗効果素子1cの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れるように形成(配置)されている。第4の磁気抵抗効果素子1dは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第4の磁気抵抗効果素子1dの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れるように形成(配置)されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス103と同様に、磁気抵抗効果デバイス104では、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第3の磁気抵抗効果素子1cのそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの磁化固定層2、スペーサ層3および磁化自由層4の配置順との関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第3の磁気抵抗効果素子1cとで逆になっており、第2の磁気抵抗効果素子1b及び第4の磁気抵抗効果素子1dのそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの磁化固定層2、スペーサ層3および磁化自由層4の配置順との関係が、第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dとで逆になっている。
直流電流源13は、グラウンド8及び直流電流入力端子11に接続され、磁気抵抗効果デバイス104は、グラウンド8に接続された時に、第1の磁気抵抗効果素子1a、第3の磁気抵抗効果素子1c、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路が形成可能になっている。また、磁気抵抗効果デバイス104は、グラウンド8に接続された時に、第2の磁気抵抗効果素子1b、第4の磁気抵抗効果素子1d、信号線路7、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路が形成可能になっている。
インダクタ10は、第2実施形態で説明したように、信号線路7とグラウンド8との間に接続され、インダクタ成分により電流の高周波成分をカットすると同時に電流の直流成分を通す機能を有する。このインダクタ10により、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cを通過する高周波信号の特性を劣化させることなく、第1の磁気抵抗効果素子1a、第3の磁気抵抗効果素子1c、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路に、直流電流入力端子11から印加された直流電流を流すことができる。
磁気抵抗効果デバイス104は、第3の実施形態の磁気抵抗効果デバイス103と同様の、高周波フィルタとしての周波数特性をもつことができる。
第3の実施形態および第4の実施形態では、第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数が、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも高く、第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数が、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも低い例で説明したが、第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数が、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも低く、第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数が、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも高くてもよい。この場合には、高周波信号が遮断される第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数の近傍においては、高周波信号の減衰量の周波数に対する変化が急峻であるため、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍で形成される通過帯域の低周波数側の肩特性が急峻になり、高周波信号が遮断される第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数1dの近傍においては、高周波信号の減衰量の周波数に対する変化が急峻であるため、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍で形成される通過帯域の高周波数側の肩特性が急峻になる。この場合、第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数(fd3)を、使用する通過帯域の下限周波数に一致させ、第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数(fd1)を、使用する通過帯域の上限周波数に一致させることが好ましい。
また、第3の実施形態および第4の実施形態では、第1の磁気抵抗効果素子1aと第3の磁気抵抗効果素子1cとが直列接続されている例で説明したが、第1の磁気抵抗効果素子1aと第3の磁気抵抗効果素子1cとが互いに並列接続されていても良い。この場合の磁気抵抗効果デバイスであっても、第1のポート9b、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2のポート9bがこの順に直列接続され、第1のポート9b、第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第2のポート9bがこの順に直列接続されることにより、第3の実施形態の磁気抵抗効果デバイス103と同様の、高周波フィルタとしての周波数特性をもつことができる。
同様に、第3の実施形態および第4の実施形態では、第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dとが直列接続されている例で説明したが、第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dとが互いに並列接続されていても良い。この場合の磁気抵抗効果デバイスであっても、第2の磁気抵抗効果素子1bが、第2のポート9bに対して並列に信号線路7に接続され、第4の磁気抵抗効果素子1dが、第2のポート9bに対して並列に信号線路7に接続されることにより、第3の実施形態の磁気抵抗効果デバイス103と同様の、高周波フィルタとしての周波数特性をもつことができる。
(第5の実施形態)
図10は、本発明の第5の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイス105の断面模式図である。磁気抵抗効果デバイス105において、第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス101と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス101と共通している要素は同じ符号を用いており、共通している要素の説明は省略する。磁気抵抗効果デバイス105は、第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス101に対し、第1の磁気抵抗効果素子1aの中を流れる直流電流の向きおよび第2の磁気抵抗効果素子1bの中を流れる直流電流の向きが異なる。磁気抵抗効果デバイス105では、第1の磁気抵抗効果素子1aは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第1の磁気抵抗効果素子1aの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れるように形成(配置)されており、第2の磁気抵抗効果素子1bは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第2の磁気抵抗効果素子1bの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れるように形成(配置)されている。磁気抵抗効果デバイス105のその他の構成は、第1の実施形態の磁気抵抗効果デバイス101と同じである。
第1の磁気抵抗効果素子1aの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れる直流電流を第1の磁気抵抗効果素子1aに印加しながら、第1の磁気抵抗効果素子1aにスピントルク共鳴周波数と同じ周波数の高周波信号を入力すると、第1の磁気抵抗効果素子1aは、入力された高周波信号と位相が180°異なる状態で、スピントルク共鳴周波数で抵抗値が周期的に変化し、この高周波信号に対するインピーダンスは増加する。つまり、磁気抵抗効果デバイス105において、第1の磁気抵抗効果素子1aは、スピントルク共鳴現象により、スピントルク共鳴周波数で高周波信号のインピーダンスが増加する抵抗素子として取り扱うことが出来る。
また、第2の磁気抵抗効果素子1bの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れる直流電流を第2の磁気抵抗効果素子1bに印加しながら、第2の磁気抵抗効果素子1bにスピントルク共鳴周波数と同じ周波数の高周波信号を入力すると、第2の磁気抵抗効果素子1bは、入力された高周波信号と同位相の状態で、スピントルク共鳴周波数で抵抗値が周期的に変化し、この高周波信号に対するインピーダンスは減少する。つまり、磁気抵抗効果デバイス105において、第2の磁気抵抗効果素子1bは、スピントルク共鳴現象により、スピントルク共鳴周波数で高周波信号のインピーダンスが減少する抵抗素子として取り扱うことが出来る。
スピントルク共鳴現象により、第1のポート9aから入力された高周波信号の高周波成分の中で第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と一致する、またはスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数成分は、高インピーダンス状態の第1の磁気抵抗効果素子1aにより、第2のポート9bに出力されにくくなる。一方、高周波信号の高周波成分の中で第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍でない周波数成分は、低インピーダンス状態の第1の磁気抵抗効果素子1aを通過し、第2のポート9bに出力されやすくなる。
さらに、スピントルク共鳴現象により、第1の磁気抵抗効果素子1aを通過した高周波信号の高周波成分の中で第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数と一致する、またはスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数成分は、第2のポート9bに並列に接続された、低インピーダンス状態の第2の磁気抵抗効果素子1bを通過してグラウンド8に流れ、第2のポート9bに出力されにくくなる。一方、高周波信号の高周波成分の中で第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍でない周波数成分は、第2のポート9bに並列に接続された、高インピーダンス状態の第2の磁気抵抗効果素子1bによりグラウンド8から遮断され、第2のポート9bに出力されやすくなる。
このように、磁気抵抗効果デバイス105は、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数が遮断帯域の高周波フィルタの機能を有することが出来る。つまり、磁気抵抗効果デバイス105は、帯域遮断型のフィルタ(バンドエリミネーションフィルタ)となる。
磁気抵抗効果デバイス105では、第1の磁気抵抗効果素子1aの非共鳴周波数の高周波信号に対するインピーダンス(すなわち、第1の磁気抵抗効果素子1aの抵抗値)は低いことが好ましく、第2の磁気抵抗効果素子1bの非共鳴周波数の高周波信号に対するインピーダンス(すなわち、第2の磁気抵抗効果素子1bの抵抗値)は高いことが好ましい。すなわち、第1の磁気抵抗効果素子1aの非共鳴周波数の高周波信号に対するインピーダンス(第1の磁気抵抗効果素子1aの抵抗値)は、第2の磁気抵抗効果素子1bの非共鳴周波数の高周波信号に対するインピーダンス(第2の磁気抵抗効果素子1bの抵抗値)よりも低いことが好ましい。例えば、第1の磁気抵抗効果素子1aの高周波信号の経路に垂直な断面による断面積を、第2の磁気抵抗効果素子1bの高周波信号の経路に垂直な断面による断面積よりも大きくすることで、このようなインピーダンス(または抵抗値)の関係を実現することができる。
また、磁気抵抗効果デバイス105では、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数とは一致している。この場合、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数と同じ周波数に対する、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bの合成インピーダンスが大きくなる(第1のポート9aから入力される高周波信号を、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数で2重に遮断できる)ため、磁気抵抗効果デバイス105は、遮断特性がよく、通過特性と遮断特性のレンジが大きな高周波フィルタとして機能することが可能となる。
図11に、磁気抵抗効果デバイス105に入力される高周波信号の周波数と減衰量との関係を示したグラフを示す。図11の縦軸は減衰量、横軸は周波数を表している。図11は、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加された磁場が一定で、且つ、印加された直流電流が一定の時のグラフである。図11のプロット線100e1は、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数とが一致している時のものであり、プロット線100e2は、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数とが互いに異なる時のものである。
例えば、図11に示されるように、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数とが一致している場合、これらのスピントルク共鳴周波数が互いに異なる時と比べて、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数と同じ周波数に対する、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bの合成インピーダンスが大きくなるため、スピントルク共鳴周波数と同じ周波数の高周波信号に対する磁気抵抗効果デバイス105の遮断特性が向上する(減衰量の絶対値が増加する)。
図12および図13に、磁気抵抗効果デバイス105に入力される高周波信号の周波数と減衰量との関係を示したグラフを示す。図12および図13の縦軸は減衰量、横軸は周波数を表している。図12は、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加された磁場が一定の時のグラフである。図12のプロット線100g1は、直流電流入力端子11から第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加される直流電流値がIg1の時のものであり、プロット線100g2は直流電流入力端子11から第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加される直流電流値がIg2の時のものである。この時の直流電流値の関係は、Ig1<Ig2である。また、図13は、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加された直流電流が一定の時のグラフである。図13のプロット線100h1は、磁場印加機構12から第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加される磁場強度がHh1の時のものであり、プロット線100h2は磁場印加機構12から第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加される磁場強度がHh2の時のものである。この時の磁場強度の関係は、Hh1<Hh2である。
例えば、図12に示されるように、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数が一致しているときに、直流電流入力端子11から第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに印加される直流電流値をIg1からIg2に大きくした場合、電流値の変化に伴い第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数(遮断帯域の周波数)での、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのそれぞれの素子インピーダンスの変化量が増加することで、第2のポート9bから出力される高周波信号がさらに小さくなり、通過損失が大きくなる。したがって、磁気抵抗効果デバイス105は、遮断特性と通過特性のレンジが大きな高周波フィルタを実現することが可能となる。また、直流電流値をIg1からIg2に大きくすると第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数はfg1からfg2にシフトする。すなわち遮断周波数帯域は低周波数側へシフトする。つまり、磁気抵抗効果デバイス105は、遮断周波数帯域の周波数を変化可能な高周波フィルタとして機能することも出来る。
さらに、例えば、図13に示されるように、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数が一致しているときに、磁場印加機構12から印加される磁場強度をHh1からHh2に強くした場合、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数はfh1からfh2にシフトする。すなわち、遮断周波数帯域は高周波数側へシフトする。また、磁場強度(磁化自由層4における有効磁場Heff)を変化させる方が、直流電流値を変化させるよりも大きく遮断周波数帯域をシフトさせることができる。つまり、磁気抵抗効果デバイス105は、遮断周波数帯域の周波数を変化可能な高周波フィルタとして機能することが出来る。
このように、磁気抵抗効果デバイス105は、第1の磁気抵抗効果素子1aと、第2の磁気抵抗効果素子1bと、高周波信号が入力される第1のポート9aと、高周波信号が出力される第2のポート9bと、信号線路7と、直流電流入力端子11とを有し、第1のポート9a、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2のポート9bが信号線路7を介してこの順に直列接続され、第2の磁気抵抗効果素子1bは、第2のポート9bに対して並列に信号線路7に接続され、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bは、それぞれ磁化固定層2、磁化自由層4およびこれらの間に配置されたスペーサ層3を有し、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第2の磁気抵抗効果素子1bは、それぞれの一端側が直流電流入力端子11側になり、それぞれの他端側が基準電位端子20側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子20に接続され、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第2の磁気抵抗効果素子1bは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bとで逆になるように形成されている。また、第1の磁気抵抗効果素子1aは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第1の磁気抵抗効果素子1aの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れるように形成され、第2の磁気抵抗効果素子1bは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第2の磁気抵抗効果素子1bの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れるように形成されている。
したがって、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bに第1のポート9aから信号線路7を介して高周波信号が入力されることにより、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bにスピントルク共鳴を誘起させることが出来る。このスピントルク共鳴と同時に、第1の磁気抵抗効果素子1aの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に直流電流が流れることにより、第1の磁気抵抗効果素子1aは、第1のポートから入力された高周波信号とは位相が180°異なる状態で、スピントルク共鳴周波数に対応した周波数で周期的に抵抗値が振動する素子として扱うことが出来る。この効果により、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と同じ周波数に対する第1の磁気抵抗効果素子1aの素子インピーダンスが増加する。また、第2の磁気抵抗効果素子1bの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に直流電流が流れることにより、第2の磁気抵抗効果素子1bは、第1のポートから入力された高周波信号と同位相の状態で、スピントルク共鳴周波数に対応した周波数で周期的に抵抗値が振動する素子として扱うことが出来る。この効果により、第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数と同じ周波数に対する第2の磁気抵抗効果素子1bの素子インピーダンスが減少する。第1のポート9a、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2のポート9bがこの順に直列接続されることにより、高周波信号を、第1の磁気抵抗効果素子1aが低インピーダンス状態である非共鳴周波数では第2のポート9b側に通過させ、第1の磁気抵抗効果素子1aが高インピーダンス状態である共鳴周波数では第2のポート9bに対し遮断することが出来る。さらに、第2の磁気抵抗効果素子1bが、第2のポート9bに対して並列に信号線路7に接続されることにより、高周波信号を、第2の磁気抵抗効果素子1bが高インピーダンス状態である非共鳴周波数では第2のポート9b側に通過させ、第2の磁気抵抗効果素子1bが低インピーダンス状態である共鳴周波数では第2のポート9bに対し遮断することが出来る。つまり、磁気抵抗効果デバイス105は、高周波フィルタとしての周波数特性をもつことが可能となる。
さらに、磁気抵抗効果デバイス105は、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bとのスピントルク共鳴周波数とが一致しているため、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数と同じ周波数に対する、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子2bの合成インピーダンスが大きくなるため、磁気抵抗効果デバイス105は、遮断特性がよく、通過特性と遮断特性のレンジが大きな高周波フィルタとして機能することが可能となる。
また、第1実施形態の磁気抵抗効果デバイス101の場合と同様にして、磁気抵抗効果デバイス105においても、第2の磁気抵抗効果素子1bが、第2のポート9bに対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7に接続され、直流電流入力端子11が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7に接続されるようにしてもよい。
また、以上の説明では、磁気抵抗効果デバイス105の第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数とが一致している例で説明したが、第1実施形態で説明した場合と同様にして、磁気抵抗効果デバイス105の第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数とが互いに異なるようにしてもよい。
第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数が互いに異なる場合、例えば、図11のプロット線100e2に示されるように、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数近傍の周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数近傍の周波数が広帯域にわたるため、高周波信号を第2のポートに対し遮断する遮断帯域が広帯域になる。つまり、この場合の磁気抵抗効果デバイス105は、遮断帯域が広い高周波フィルタとして機能することが可能となる。
(第6の実施形態)
図14は、本発明の第6の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイス106の断面模式図である。磁気抵抗効果デバイス106において、第5の実施形態の磁気抵抗効果デバイス105と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。第5の実施形態の磁気抵抗効果デバイス105と共通している要素は同じ符号を用いており、共通している要素の説明は省略する。磁気抵抗効果デバイス106は、第5の実施形態の磁気抵抗効果デバイス105に対し、さらにインダクタ10と基準電位端子21を有している。インダクタ10は、第2のポートに対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7(第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7または第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7の一方)に接続されている。第2の磁気抵抗効果素子1bは、第2のポート9bに対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7(第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7または第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7の他方)に接続されている。つまり、第2の磁気抵抗効果素子1bは、第1の磁気抵抗効果素子1aに対してインダクタ10の信号線路7への接続箇所とは反対側の箇所の信号線路7に接続されている。直流電流入力端子11は、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7(第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7または第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7の他方)に接続されている。つまり、直流電流入力端子11は、第1の磁気抵抗効果素子1aに対してインダクタ10の信号線路7への接続箇所とは反対側の箇所の信号線路7に接続されている。より具体的には、インダクタ10は、第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7に接続され、さらに基準電位端子21を介してグラウンド8に接続可能になっており、第2の磁気抵抗効果素子1bの一端(磁化固定層2側)が第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7に接続され、第2の磁気抵抗効果素子1bの他端(磁化自由層4側)が基準電位端子20を介してグラウンド8に接続可能になっており、直流電流入力端子11が第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7に接続されている。第1の磁気抵抗効果素子1aは磁化固定層2側が第1のポート側になるように信号線路7に接続されて、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第1の磁気抵抗効果素子1aの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れるように形成(配置)されている。磁気抵抗効果デバイス106のその他の構成は、第5の実施形態の磁気抵抗効果デバイス105と同じである。
第1の磁気抵抗効果素子1aは、一端側(この例では磁化自由層4側)が直流電流入力端子11側になり、他端側(この例では磁化固定層2側)が基準電位端子21側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子21に接続されている。第2の磁気抵抗効果素子1bは、その一端側(この例では磁化固定層2側)が直流電流入力端子11側になり、その他端側(この例では磁化自由層4側)が基準電位端子20側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子20に接続されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス105と同様に、磁気抵抗効果デバイス106では、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第2の磁気抵抗効果素子1bは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bとで逆になるように形成(配置)されている。
第1の磁気抵抗効果素子1aは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第1の磁気抵抗効果素子1aの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れるように形成(配置)されている。第2の磁気抵抗効果素子1bは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第2の磁気抵抗効果素子1bの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れるように形成(配置)されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス105と同様に、磁気抵抗効果デバイス106では、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第2の磁気抵抗効果素子101cのそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの磁化固定層2、スペーサ層3および磁化自由層4の配置順との関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bとで逆になっている。
直流電流源13は、グラウンド8及び直流電流入力端子11に接続され、磁気抵抗効果デバイス106は、グラウンド8に接続された時に、第1の磁気抵抗効果素子1a、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路が形成可能になっている。また、磁気抵抗効果デバイス106は、グラウンド8に接続された時に、第2の磁気抵抗効果素子1b、信号線路7、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路が形成可能になっている。
インダクタ10は、信号線路7とグラウンド8との間に接続され、インダクタ成分により電流の高周波成分をカットすると同時に電流の直流成分を通す機能を有する。インダクタ10は、チップインダクタまたはパターン線路によるインダクタのどちらでもよい。また、インダクタ成分を有する抵抗素子でもよい。インダクタ10のインダクタンス値は10nH以上であることが好ましい。このインダクタ10により、第1の磁気抵抗効果素子1aを通過する高周波信号の特性を劣化させることなく、第1の磁気抵抗効果素子1a、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路に、直流電流入力端子11から印加された直流電流を流すことができる。
磁気抵抗効果デバイス106は、第5の実施形態の磁気抵抗効果デバイス105と同様の、高周波フィルタとしての周波数特性をもつことができる。
(第7の実施形態)
図15は、本発明の第7の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイス107の断面模式図である。磁気抵抗効果デバイス107において、第5の実施形態の磁気抵抗効果デバイス105と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。第5の実施形態の磁気抵抗効果デバイス105と共通している要素は同じ符号を用いており、共通している要素の説明は省略する。磁気抵抗効果デバイス107は、第5の実施形態の磁気抵抗効果デバイス105に対し、さらに第3の磁気抵抗効果素子1cと第4の磁気抵抗効果素子1dを有している。第3の磁気抵抗効果素子1cは、磁化固定層2(第3の磁化固定層)、磁化自由層4(第3の磁化自由層)およびこれらの間に配置されたスペーサ層3(第3のスペーサ層)を有している。第4の磁気抵抗効果素子1dは、磁化固定層2(第4の磁化固定層)、磁化自由層4(第4の磁化自由層)およびこれらの間に配置されたスペーサ層3(第4のスペーサ層)を有している。
第1のポート9a、第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第2のポート9bが信号線路7を介してこの順に直列接続されている。第4の磁気抵抗効果素子1dは、第2のポート9bに対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子と第2のポート9bとの間の信号線路7(第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7または第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7の一方)に接続されている。図15に示す磁気抵抗効果デバイス107では、第1の磁気抵抗効果素子1aと第3の磁気抵抗効果素子1cとが直列接続され、第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dとが直列接続されている。より具体的には、第3の磁気抵抗効果素子1cの一端(磁化固定層2側)が第1の磁気抵抗効果素子1aの磁化固定層2側に接続され、第3の磁気抵抗効果素子1cの他端(磁化自由層4側)が第2のポート2b側に接続されている。第4の磁気抵抗効果素子1dの一端(磁化自由層4側)は第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7(第2の磁気抵抗効果素子1bの磁化自由層4側)に接続され、第4の磁気抵抗効果素子1dの他端(磁化固定層2側)は基準電位端子20を介してグラウンド8に接続可能になっている。磁気抵抗効果デバイス107は、グラウンド8に接続された時に、第1の磁気抵抗効果素子1a、第3の磁気抵抗効果素子1c、信号線路7、第2の磁気抵抗効果素子1b、第4の磁気抵抗効果素子1d、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路が形成可能になっている。
第3の磁気抵抗効果素子1cは、一端側(この例では磁化固定層2側)が直流電流入力端子11側になり、他端側(この例では磁化自由層4側)が基準電位端子20側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子20に接続されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス107では、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第3の磁気抵抗効果素子1cは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、前記第1の磁気抵抗効果素子と前記第3の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成(配置)されている。この例では、第1の磁気抵抗効果素子1aでは、その一端側から他端側への向きと、その磁化自由層4から磁化固定層2への向きとが、同じ向きの関係になっており、第3の磁気抵抗効果素子1cでは、その一端側から他端側への向きと、その磁化自由層4から磁化固定層2への向きとが、逆向きの関係になっている。
第4の磁気抵抗効果素子1dは、その一端側(この例では磁化自由層4側)が直流電流入力端子11側になり、その他端側(この例では磁化固定層2側)が基準電位端子20側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子20に接続されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス107では、第2の磁気抵抗効果素子1b及び第4の磁気抵抗効果素子1dは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dとで逆になるように形成(配置)されている。この例では、第2の磁気抵抗効果素子1bでは、その一端側から他端側への向きと、その磁化自由層4から磁化固定層2への向きとが、逆向きの関係になっており、第4の磁気抵抗効果素子1cでは、その一端側から他端側への向きと、その磁化自由層4から磁化固定層2への向きとが、同じ向きの関係になっている。
第3の磁気抵抗効果素子1cは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第3の磁気抵抗効果素子1cの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れるように形成(配置)されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス107では、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cは、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cのそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの磁化固定層2、スペーサ層3および磁化自由層4の配置順との関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第3の磁気抵抗効果素子1cとで逆になっている。第4の磁気抵抗効果素子1dは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第4の磁気抵抗効果素子1dの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れるように形成(配置)されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス107では、第2の磁気抵抗効果素子1bおよび第4の磁気抵抗効果素子1dは、第2の磁気抵抗効果素子1bおよび第4の磁気抵抗効果素子1dのそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの磁化固定層2、スペーサ層3および磁化自由層4の配置順との関係が、第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dとで逆になっている。
さらに、第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数は、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも高くなっており、第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数は、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも低くなっている。
磁場印加機構12は、第1の磁気抵抗効果素子1a、第2の磁気抵抗効果素子1b、第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第4の磁気抵抗効果素子1dの近傍に配設され、第1の磁気抵抗効果素子1a、第2の磁気抵抗効果素子1b、第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第4の磁気抵抗効果素子1dに磁場を印加して、第1の磁気抵抗効果素子1a、第2の磁気抵抗効果素子1b、第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数を設定可能となっている。磁場印加機構12は、第1の磁気抵抗効果素子1a、第2の磁気抵抗効果素子1b、第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第4の磁気抵抗効果素子1dの各磁化自由層4における有効磁場Heffを設定可能な有効磁場設定機構である。磁気抵抗効果デバイス107のその他の構成は、第5の実施形態の磁気抵抗効果デバイス105と同じである。
第3の磁気抵抗効果素子1cは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第3の磁気抵抗効果素子1cの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れるように形成(配置)されているので、第2の磁気抵抗効果素子1bと同様に、スピントルク共鳴現象により、スピントルク共鳴周波数で高周波信号のインピーダンスが減少する抵抗素子として取り扱うことが出来る。
また、第4の磁気抵抗効果素子1dは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第4の磁気抵抗効果素子1dの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れるように形成(配置)されているので、第1の磁気抵抗効果素子1aと同様に、スピントルク共鳴現象により、スピントルク共鳴周波数で高周波信号のインピーダンスが増加する抵抗素子として取り扱うことが出来る。
スピントルク共鳴現象により、第1のポート9aから入力された高周波信号の高周波成分の中で第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数と一致する、またはスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数成分は、低インピーダンス状態の第3の磁気抵抗効果素子1cを通過し、第2のポート9bに出力されやすくなる。
さらに、スピントルク共鳴現象により、第1のポート9aから入力された高周波信号の高周波成分の中で第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数と一致する、またはスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数成分は、第2のポート9bに並列に接続された、高インピーダンス状態の第4の磁気抵抗効果素子1dによりグラウンド8から遮断され、第2のポート9bに出力されやすくなる。
図16に、磁気抵抗効果デバイス107に入力される高周波信号の周波数と磁気抵抗効果デバイス107の磁気抵抗効果素子の合成インピーダンスとの関係を示したグラフを示す。図16の縦軸はインピーダンス、横軸は周波数を表している。図16のプロット線100i1は、第2のポート9bに並列に接続された第2の磁気抵抗効果素子1bおよび第4の磁気抵抗効果素子1dの合成インピーダンス特性であり、低周波側(fi1の近傍)は主に第4の磁気抵抗効果素子1d、高周波側(fi2の近傍)は主に第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴時のインピーダンス特性が示されている。また、プロット線100i2は、第1のポート9aおよび第2のポート9bに直列に接続された第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cの合成インピーダンス特性であり、低周波側(fi2の近傍)は主に第1の磁気抵抗効果素子1a、高周波側(fi3の近傍)は主に第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴時のインピーダンス特性が示されている。fi1は第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数であり、fi3は第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数であり、fi2は第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数である。図16では、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数と第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数とが一致している例を示している。
図17に、磁気抵抗効果デバイス107に入力される高周波信号の周波数と減衰量との関係を示したグラフを示す。図17の縦軸は減衰量、横軸は周波数を表している。
図17に示されるように、磁気抵抗効果デバイス107では、第5実施形態の磁気抵抗効果デバイス105と同様に、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数で、第2のポート9bから出力される高周波信号が小さくなり、通過損失が大きくなる。したがって、磁気抵抗効果デバイス107は、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数を遮断帯域とする帯域遮断型のフィルタとして機能する。磁気抵抗効果デバイス107は、第3の磁気抵抗効果素子1cと第4の磁気抵抗効果素子1dにより、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の高周波側および低周波側(上記の遮断帯域の高周波側および低周波側)において、高周波信号を第2のポート9bに対し通過させることが出来る。第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数の近傍または第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数の近傍においては、図16に示すように、第3の磁気抵抗効果素子1cまたは第4の磁気抵抗効果素子1dのインピーダンスの、高周波信号の周波数に対する変化が急峻であり、高周波信号の減衰量の周波数に対する変化が急峻である。このため、上記の遮断帯域の肩特性が急峻になる。特に、第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数(fi3)を、使用する遮断帯域の上限周波数に一致させ、第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数(fi1)を、使用する遮断帯域の下限周波数に一致させることが好ましい。
このように、磁気抵抗効果デバイス107は、磁化固定層2、磁化自由層4およびこれらの間に配置されたスペーサ層3を有する第3の磁気抵抗効果素子1cを磁気抵抗効果デバイス105に対してさらに有し、第1のポート9a、第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第2のポート9bが信号線路を介してこの順に直列接続され、第3の磁気抵抗効果素子1cは、その一端側が直流電流入力端子11側になり、その他端側が基準電位端子20側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子20に接続され、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第3の磁気抵抗効果素子1cは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第3の磁気抵抗効果素子1bとで逆になるように形成され、第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数が、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも高くなっている。また、第3の磁気抵抗効果素子1cは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第3の磁気抵抗効果素子1cの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れるように形成されている。また、磁気抵抗効果デバイス107は、磁化固定層2、磁化自由層4およびこれらの間に配置されたスペーサ層3を有する第4の磁気抵抗効果素子1dを磁気抵抗効果デバイス105に対してさらに有し、第4の磁気抵抗効果素子1dは、第2のポート9bに対して並列に信号線路7に接続され、第4の磁気抵抗効果素子1dは、その一端側が直流電流入力端子11側になり、その他端側が基準電位端子20側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子20に接続され、第2の磁気抵抗効果素子1b及び第4の磁気抵抗効果素子1dは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dとで逆になるように形成され、第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数が、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも低くなっている。また、第4の磁気抵抗効果素子1dは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第4の磁気抵抗効果素子1dの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れるように形成されている。
第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第4の磁気抵抗効果素子1dに第1のポート9aから信号線路7を介して高周波信号が入力されることにより、第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第4の磁気抵抗効果素子1dにスピントルク共鳴を誘起させることが出来る。このスピントルク共鳴と同時に、第3の磁気抵抗効果素子1cの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に直流電流が流れることにより、第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数と同じ、またはその近傍の周波数に対する第3の磁気抵抗効果素子1cの素子インピーダンスが減少する。また、スピントルク共鳴と同時に、第4の磁気抵抗効果素子1dの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に直流電流が流れることにより、第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数と同じ、またはその近傍の周波数に対する第4の磁気抵抗効果素子1dの素子インピーダンスが増加する。
第3の磁気抵抗効果素子1cは、第1のポート9b、第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第2のポート9bがこの順に直列接続されることにより、高周波信号を、第3の磁気抵抗効果素子1cが高インピーダンス状態である非共鳴周波数では第2のポートに対し遮断し、第3の磁気抵抗効果素子1cが低インピーダンス状態である共鳴周波数では第2のポート側に通過させることが出来る。
第4の磁気抵抗効果素子1dは、第2のポート9bに対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7に接続されることにより、高周波信号を、第4の磁気抵抗効果素子1dが低インピーダンス状態である非共鳴周波数では第2のポート9bに対し遮断し、第4の磁気抵抗効果素子1dが高インピーダンス状態である共鳴周波数では第2のポート9b側に通過させることが出来る。
また、第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数が、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも高いことにより、高周波信号が第2のポート9bに対し遮断される第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の高周波数側において、高周波信号を第2のポート9b側に通過させることが出来る。高周波信号を通過させる第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数の近傍においては、高周波信号の減衰量の周波数に対する変化が急峻であるため、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍で形成される遮断帯域の高周波数側の肩特性が急峻になる。また、第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数が、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも低いことにより、高周波信号が第2のポート9bに対し遮断される第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の低周波数側において、高周波信号を第2のポート9b側に通過させることが出来る。高周波信号を通過させる第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数の近傍においては、高周波信号の減衰量の周波数に対する変化が急峻であるため、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍で形成される遮断帯域の低周波数側の肩特性が急峻になる。つまり、磁気抵抗効果デバイス107は、遮断帯域の肩特性が急峻なフィルタとして機能することが可能となる。
以上の説明では、第2の磁気抵抗効果素子1bおよび第4の磁気抵抗効果素子1dが、第2のポート9bに対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7に接続されている例で説明したが、第2の磁気抵抗効果素子1bおよび第4の磁気抵抗効果素子1dの一方が、第2のポート9bに対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7に接続されるようにしてもよい。また、第2の磁気抵抗効果素子1bおよび第4の磁気抵抗効果素子1dの両方が、第2のポート9bに対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7に接続され、直流電流入力端子11が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7に接続されるようにしてもよい。
また、第7の実施形態では、第5実施形態の磁気デバイス105に対して、第3の磁気抵抗効果素子1cと第4の磁気抵抗効果素子1dが追加された例で説明したが、これと同様にして、第6実施形態の磁気デバイス106に対して、第3の磁気抵抗効果素子1cと第4の磁気抵抗効果素子1dが追加された形態でも良い。
(第8の実施形態)
図18は、本発明の第8の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイス108の断面模式図である。磁気抵抗効果デバイス108において、第7の実施形態の磁気抵抗効果デバイス107と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。第7の実施形態の磁気抵抗効果デバイス107と共通している要素は同じ符号を用いており、共通している要素の説明は省略する。磁気抵抗効果デバイス108は、第7の実施形態の磁気抵抗効果デバイス107に対し、さらにインダクタ10と基準電位端子21を有している。インダクタ10は、第2のポートに対して並列に、第3の磁気抵抗効果素子1cと第2のポート9bとの間の信号線路7(第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cと第1のポート9aとの間の信号線路7または第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cと第2のポート9bとの間の信号線路7の一方)に接続されている。第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dは、第2のポート9b(第1のポート9a)に対して並列に、第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7(第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cと第1のポート9aとの間の信号線路7または第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cと第2のポート9bとの間の信号線路7の他方)に接続されている。つまり、第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dは、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cに対してインダクタ10の信号線路7への接続箇所とは反対側の箇所の信号線路7に接続されている。直流電流入力端子11は、第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7(第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cと第1のポート9aとの間の信号線路7または第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cと第2のポート9bとの間の信号線路7の他方)に接続されている。つまり、直流電流入力端子11は、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cに対してインダクタの信号線路7への接続箇所とは反対側の箇所の信号線路7に接続されている。より具体的には、インダクタ10は、第3の磁気抵抗効果素子1cと第2のポート9bとの間の信号線路7に接続され、さらに基準電位端子21を介してグラウンド8に接続可能になっており、第2の磁気抵抗効果素子1bの一端(磁化固定層2側)が第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7に接続されている。磁気抵抗効果デバイス108のその他の構成は、第7の実施形態の磁気抵抗効果デバイス107と同じである。
第1の磁気抵抗効果素子1aは、一端側(この例では磁化自由層4側)が直流電流入力端子11側になり、他端側(この例では磁化固定層2側)が基準電位端子21側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子21に接続されている。第2の磁気抵抗効果素子1bは、その一端側(この例では磁化固定層2側)が直流電流入力端子11側になり、その他端側(この例では磁化自由層4側)が基準電位端子20側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子20に接続されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス107と同様に、磁気抵抗効果デバイス108では、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第2の磁気抵抗効果素子1bは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bとで逆になるように形成(配置)されている。第3の磁気抵抗効果素子1cは、一端側(この例では磁化固定層2側)が直流電流入力端子11側になり、他端側(この例では磁化自由層2側)が基準電位端子21側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子21に接続されている。第4の磁気抵抗効果素子1bは、その一端側(この例では磁化自由層4側)が直流電流入力端子11側になり、その他端側(この例では磁化固定層2側)が基準電位端子20側になるように、直流電流入力端子11および基準電位端子20に接続されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス107と同様に、磁気抵抗効果デバイス108では、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第3の磁気抵抗効果素子1cは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第3の磁気抵抗効果素子1cとで逆になるように形成(配置)されており、第2の磁気抵抗効果素子1b及び第4の磁気抵抗効果素子1dは、それぞれの一端側から他端側への向きと、それぞれの磁化自由層4から磁化固定層2への向きとの関係が、第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dとで逆になるように形成(配置)されている。
第1の磁気抵抗効果素子1aは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第1の磁気抵抗効果素子1aの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れるように形成(配置)されている。第2の磁気抵抗効果素子1bは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第2の磁気抵抗効果素子1bの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れるように形成(配置)されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス107と同様に、磁気抵抗効果デバイス108では、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第2の磁気抵抗効果素子1bのそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの磁化固定層2、スペーサ層3および磁化自由層4の配置順との関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2の磁気抵抗効果素子1bとで逆になっている。第3の磁気抵抗効果素子1cは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第3の磁気抵抗効果素子1cの中を磁化自由層4から磁化固定層2の方向に流れるように形成(配置)されている。第4の磁気抵抗効果素子1dは、直流電流入力端子11から入力される直流電流が、第4の磁気抵抗効果素子1dの中を磁化固定層2から磁化自由層4の方向に流れるように形成(配置)されている。つまり、磁気抵抗効果デバイス107と同様に、磁気抵抗効果デバイス108では、第1の磁気抵抗効果素子1a及び第3の磁気抵抗効果素子1cのそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの磁化固定層2、スペーサ層3および磁化自由層4の配置順との関係が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第3の磁気抵抗効果素子1cとで逆になっており、第2の磁気抵抗効果素子1b及び第4の磁気抵抗効果素子1dのそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの磁化固定層2、スペーサ層3および磁化自由層4の配置順との関係が、第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dとで逆になっている。
直流電流源13は、グラウンド8及び直流電流入力端子11に接続され、磁気抵抗効果デバイス108は、グラウンド8に接続された時に、第1の磁気抵抗効果素子1a、第3の磁気抵抗効果素子1c、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路が形成可能になっている。また、磁気抵抗効果デバイス108は、グラウンド8に接続された時に、第2の磁気抵抗効果素子1b、第4の磁気抵抗効果素子1d、信号線路7、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路が形成可能になっている。
インダクタ10は、第6実施形態で説明したように、信号線路7とグラウンド8との間に接続され、インダクタ成分により電流の高周波成分をカットすると同時に電流の直流成分を通す機能を有する。このインダクタ10により、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第3の磁気抵抗効果素子1cを通過する高周波信号の特性を劣化させることなく、第1の磁気抵抗効果素子1a、第3の磁気抵抗効果素子1c、信号線路7、インダクタ10、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路に、直流電流入力端子11から印加された直流電流を流すことができる。
磁気抵抗効果デバイス108は、第7の実施形態の磁気抵抗効果デバイス107と同様の、高周波フィルタとしての周波数特性をもつことができる。
第7の実施形態および第8の実施形態では、第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数が、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも高く、第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数が、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも低い例で説明したが、第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数が、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも低く、第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数が、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数よりも高くてもよい。この場合には、高周波信号を通過させる第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数の近傍においては、高周波信号の減衰量の周波数に対する変化が急峻であるため、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍で形成される遮断帯域の低周波数側の肩特性が急峻になり、高周波信号を通過させる第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数1dの近傍においては、高周波信号の減衰量の周波数に対する変化が急峻であるため、第1の磁気抵抗効果素子1aのスピントルク共鳴周波数の近傍および第2の磁気抵抗効果素子1bのスピントルク共鳴周波数の近傍で形成される遮断帯域の高周波数側の肩特性が急峻になる。この場合、第3の磁気抵抗効果素子1cのスピントルク共鳴周波数(fi3)を、使用する通過帯域の下限周波数に一致させ、第4の磁気抵抗効果素子1dのスピントルク共鳴周波数(fi1)を、使用する通過帯域の上限周波数に一致させることが好ましい。
また、第7の実施形態および第8の実施形態では、第1の磁気抵抗効果素子1aと第3の磁気抵抗効果素子1cとが直列接続されている例で説明したが、第1の磁気抵抗効果素子1aと第3の磁気抵抗効果素子1cとが互いに並列接続されていても良い。この場合の磁気抵抗効果デバイスであっても、第1のポート9b、第1の磁気抵抗効果素子1aおよび第2のポート9bがこの順に直列接続され、第1のポート9b、第3の磁気抵抗効果素子1cおよび第2のポート9bがこの順に直列接続されることにより、第7の実施形態の磁気抵抗効果デバイス107と同様の、高周波フィルタとしての周波数特性をもつことができる。
同様に、第7の実施形態および第8の実施形態では、第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dとが直列接続されている例で説明したが、第2の磁気抵抗効果素子1bと第4の磁気抵抗効果素子1dとが互いに並列接続されていても良い。この場合の磁気抵抗効果デバイスであっても、第2の磁気抵抗効果素子1bが、第2のポート9bに対して並列に信号線路7に接続され、第4の磁気抵抗効果素子1dが、第2のポート9bに対して並列に信号線路7に接続されることにより、第7の実施形態の磁気抵抗効果デバイス107と同様の、高周波フィルタとしての周波数特性をもつことができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上記で説明した実施形態以外にも変更や構成要素の追加を行うことが可能である。例えば、第1のポート9aに接続された高周波回路に直流信号が流れるのを防ぐために、第1、第3、第4、第5、第7および第8の実施形態における直流電流入力端子11と信号線路7との接続部と第1のポート9aとの間の信号線路7に、直流信号をカットするためのコンデンサを直列に接続してもよい。同様に、第2および第6の実施形態におけるインダクタ10と信号線路7との接続部と第1のポート9aとの間の信号線路7に、直流信号をカットするためのコンデンサを直列に接続してもよい。また、第2のポート9bに接続された高周波回路に直流信号が流れるのを防ぐために、第1、第3、第5および第7の実施形態における第2の磁気抵抗効果素子1bと信号線路7との接続部と第2のポート9bとの間の信号線路7に、直流信号をカットするためのコンデンサを直列に接続してもよい。同様に、第2および第6の実施形態における直流電流入力端子11と信号線路7との接続部と第2のポート9bとの間の信号線路7に、直流信号をカットするためのコンデンサを直列に接続してもよい。同様に、第4および第8の実施形態におけるインダクタ10と信号線路7との接続部と第2のポート9bとの間の信号線路7に、直流信号をカットするためのコンデンサを直列に接続してもよい。
また、第2および第6の実施形態では、インダクタ10が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7に接続され、第2の磁気抵抗効果素子1bの一端が第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポートと9bの間の信号線路7に接続され、直流入力端子11が第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポートと9bの間の信号線路7に接続されている例で説明したが、インダクタ10が、第1の磁気抵抗効果素子1aと第2のポート9bとの間の信号線路7に接続され、第2の磁気抵抗効果素子1bの一端が第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aとの間の信号線路7に接続され、直流入力端子11が第1の磁気抵抗効果素子1aと第1のポート9aの間の信号線路7に接続されるようにしてもよい。
また、第2、第4、第6および第8の実施形態では、インダクタ10を用いた例で説明したが、インダクタ10にかえて、抵抗素子を用いても良い。この場合、抵抗素子は、信号線路7とグラウンド8との間に接続され、抵抗成分により電流の高周波成分をカットする機能を有する。この抵抗素子は、チップ抵抗またはパターン線路による抵抗のどちらでもよい。この抵抗素子の抵抗値は、信号線路7の特性インピーダンス以上であることが好ましい。例えば、信号線路7の特性インピーダンスが50Ωの場合、抵抗素子の抵抗値が50Ωの時は45%の高周波電力を抵抗素子によりカットし、抵抗素子の抵抗値が500Ωの時は90%の高周波電力を抵抗素子によりカットすることが可能となる。この抵抗素子により、第1の磁気抵抗効果素子1aを通過する高周波信号の特性を劣化させることなく、第1の磁気抵抗効果素子1a、(第3の磁気抵抗効果素子1c、)信号線路7、抵抗素子、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路に、直流電流入力端子11から印加された直流電流を流すことができる。
インダクタ10にかえて抵抗素子を用いる場合は、抵抗素子(または直流電流入力端子11)の信号線路7への接続部と第1のポート9aとの間の信号線路7に、直流信号をカットするためのコンデンサを直列に接続すること、および、直流電流入力端子11(または抵抗素子)の信号線路7への接続部と第2のポート9bとの間の信号線路7に、直流信号をカットするためのコンデンサを直列に接続することが、第1の磁気抵抗効果素子1a、(第3の磁気抵抗効果素子1c、)信号線路7、抵抗素子、グラウンド8および直流電流入力端子11を含む閉回路に、直流電流入力端子11から印加された直流電流を効率的に流すことができる点で好ましい。
また、第1〜第8の実施形態において、各磁気抵抗効果素子の中を流れる高周波信号の各磁気抵抗効果素子に対する向きが、第1〜第8の実施形態の説明の中で図示されている向きとは反対になるように各磁気抵抗効果素子が形成(配置)されていても良い。例えば、第1および第5の実施形態では、第1の磁気抵抗効果素子1aは磁化自由層4側が第1のポート9a側に接続され、第2の磁気抵抗効果素子1bは磁化固定層2側が第1のポート9a側に接続されているが、第1の磁気抵抗効果素子1aは磁化固定層2側が第1のポート9a側に接続され、第2の磁気抵抗効果素子1bは磁化自由層4側が第1のポート9a側に接続されるようにしてもよい。また、第3、第4、第7および第8の実施形態では、第1の磁気抵抗効果素子1aは磁化自由層4側が第1のポート9a側に接続され、第2の磁気抵抗効果素子1bは磁化固定層2側が第1のポート9a側に接続され、第3の磁気抵抗効果素子1cは磁化固定層2側が第1のポート9a側に接続され、第4の磁気抵抗効果素子1dは磁化自由層4側が第1のポート9a側に接続されているが、第1の磁気抵抗効果素子1aは磁化固定層2側が第1のポート9a側に接続され、第2の磁気抵抗効果素子1bは磁化自由層4側が第1のポート9a側に接続され、第3の磁気抵抗効果素子1cは磁化自由層4側が第1のポート9a側に接続され、第4の磁気抵抗効果素子1dは磁化固定層2側が第1のポート9a側に接続されるようにしてもよい。これらの場合は、直流電流源13から直流電流入力端子11に入力される直流電流の向きを、各実施形態の説明の中で図示されている向きとは反対になるようにすればよい。
また、第1〜第8の実施形態では、磁気抵抗効果デバイス101(102、103、104、105、106、107、108)が周波数設定機構(有効磁場設定機構)として磁場印加機構12を有する例で説明しているが、周波数設定機構(有効磁場設定機構)は、以下に示すような他の例でも良い。例えば、磁気抵抗効果素子に電場を印加し、その電場を変化させることにより、磁化自由層における異方性磁場Hを変化させて磁化自由層における有効磁場を変化させ、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を変化させることができる。この場合、磁気抵抗効果素子に電場を印加する機構が、周波数設定機構(有効磁場設定機構)となる。また、磁化自由層の近傍に圧電体を設け、その圧電体に電場を印加して圧電体を変形させ、磁化自由層を歪ませることにより、磁化自由層における異方性磁場Hを変化させて磁化自由層における有効磁場を変化させ、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を変化させることができる。この場合、圧電体に電場を印加する機構および圧電体が、周波数設定機構(有効磁場設定機構)となる。また、電気磁気効果を有する反強磁性体またはフェリ磁性体である制御膜を磁化自由層に磁気的に結合するように設け、制御膜に磁場および電場を印加し、制御膜に印加する磁場および電場の少なくとも一方を変化させることにより、磁化自由層における交換結合磁場HEXを変化させて磁化自由層における有効磁場を変化させ、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数を変化させることができる。この場合、制御膜に磁場を印加する機構、制御膜に電場を印加する機構および制御膜が、周波数設定機構(有効磁場設定機構)となる。
また、周波数設定機構が無くても(磁場印加機構12からの磁場が印加されなくても)、各磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が所望の周波数である場合には、周波数設定機構(磁場印加機構12)は無くてもよい。
1a、1b、1c、1d 磁気抵抗効果素子
2 磁化固定層
3 スペーサ層
4 磁化自由層
5 上部電極
6 下部電極
7 信号線路
8 グラウンド
9a 第1のポート
9b 第2のポート
10 インダクタ
11 直流電流入力端子
12 磁場印加機構
13 直流電流源
20、21 基準電位端子
101、102、103、104、105、106、107、108 磁気抵抗効果デバイス

Claims (12)

  1. 第1の磁気抵抗効果素子と、第2の磁気抵抗効果素子と、高周波信号が入力される第1のポートと、高周波信号が出力される第2のポートと、信号線路と、直流電流入力端子とを有し、
    前記第1のポート、前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第2のポートが前記信号線路を介してこの順に直列接続され、
    前記第2の磁気抵抗効果素子は、前記第2のポートに対して並列に前記信号線路に接続され、
    前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第2の磁気抵抗効果素子は、それぞれ磁化固定層、磁化自由層およびこれらの間に配置されたスペーサ層を有し、
    前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第2の磁気抵抗効果素子は、前記直流電流入力端子から入力され前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第2の磁気抵抗効果素子のそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの前記磁化固定層、前記スペーサ層および前記磁化自由層の配置順との関係が、前記第1の磁気抵抗効果素子と前記第2の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成されていることを特徴とする磁気抵抗効果デバイス。
  2. 前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数と前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数とが一致していることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  3. 前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数と前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数とが互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  4. 第3の磁気抵抗効果素子をさらに有し、
    前記第1のポート、前記第3の磁気抵抗効果素子および前記第2のポートが前記信号線路を介してこの順に直列接続され、
    前記第1の磁気抵抗効果素子、前記第2の磁気抵抗効果素子および前記第3の磁気抵抗効果素子は、それぞれ磁化固定層、磁化自由層およびこれらの間に配置されたスペーサ層を有し、
    前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第3の磁気抵抗効果素子は、前記直流電流入力端子から入力され前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第3の磁気抵抗効果素子のそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの前記磁化固定層、前記スペーサ層および前記磁化自由層の配置順との関係が、前記第1の磁気抵抗効果素子と前記第3の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成され、
    前記第3の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも高いまたは低いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  5. 第4の磁気抵抗効果素子をさらに有し、
    前記第4の磁気抵抗効果素子は、前記第2のポートに対して並列に前記信号線路に接続され、
    前記第1の磁気抵抗効果素子、前記第2の磁気抵抗効果素子および前記第4の磁気抵抗効果素子は、それぞれ磁化固定層、磁化自由層およびこれらの間に配置されたスペーサ層を有し、
    前記第2の磁気抵抗効果素子および前記第4の磁気抵抗効果素子は、前記直流電流入力端子から入力され前記第2の磁気抵抗効果素子および前記第4の磁気抵抗効果素子のそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの前記磁化固定層、前記スペーサ層および前記磁化自由層の配置順との関係が、前記第2の磁気抵抗効果素子と前記第4の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成され、
    前記第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも高いまたは低いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  6. 第3の磁気抵抗効果素子と、第4の磁気抵抗効果素子とをさらに有し、
    前記第1のポート、前記第3の磁気抵抗効果素子および前記第2のポートが前記信号線路を介してこの順に直列接続され、
    前記第4の磁気抵抗効果素子は、前記第2のポートに対して並列に前記信号線路に接続され、
    前記第1の磁気抵抗効果素子、前記第2の磁気抵抗効果素子、前記第3の磁気抵抗効果素子および前記第4の磁気抵抗効果素子は、それぞれ磁化固定層、磁化自由層およびこれらの間に配置されたスペーサ層を有し、
    前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第3の磁気抵抗効果素子は、前記直流電流入力端子から入力され前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第3の磁気抵抗効果素子のそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの前記磁化固定層、前記スペーサ層および前記磁化自由層の配置順との関係が、前記第1の磁気抵抗効果素子と前記第3の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成され、
    前記第2の磁気抵抗効果素子および前記第4の磁気抵抗効果素子は、前記直流電流入力端子から入力され前記第2の磁気抵抗効果素子および前記第4の磁気抵抗効果素子のそれぞれの中を流れる直流電流の向きと、それぞれの前記磁化固定層、前記スペーサ層および前記磁化自由層の配置順との関係が、前記第2の磁気抵抗効果素子と前記第4の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成され、
    前記第3の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも高く、かつ、前記第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも低い、または、
    前記第3の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも低く、かつ、前記第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも高いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  7. 第1の磁気抵抗効果素子と、第2の磁気抵抗効果素子と、高周波信号が入力される第1のポートと、高周波信号が出力される第2のポートと、信号線路と、直流電流入力端子と、基準電位端子とを有し、
    前記第1のポート、前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第2のポートが前記信号線路を介してこの順に直列接続され、
    前記第2の磁気抵抗効果素子は、前記第2のポートに対して並列に前記信号線路に接続され、
    前記第1の磁気抵抗効果素子および前記第2の磁気抵抗効果素子は、それぞれ磁化固定層、磁化自由層およびこれらの間に配置されたスペーサ層を有し、
    前記第1の磁気抵抗効果素子及び前記第2の磁気抵抗効果素子は、それぞれの一端側が前記直流電流入力端子側になり、それぞれの他端側が前記基準電位端子側になるように、前記直流電流入力端子および前記基準電位端子に接続され、
    前記第1の磁気抵抗効果素子及び前記第2の磁気抵抗効果素子は、それぞれの前記一端側から前記他端側への向きと、それぞれの前記磁化自由層から前記磁化固定層への向きとの関係が、前記第1の磁気抵抗効果素子と前記第2の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成されていることを特徴とする磁気抵抗効果デバイス。
  8. 前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数と前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数とが一致していることを特徴とする請求項7に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  9. 前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数と前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数とが互いに異なることを特徴とする請求項7に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  10. 第3の磁気抵抗効果素子をさらに有し、
    前記第1のポート、前記第3の磁気抵抗効果素子および前記第2のポートが前記信号線路を介してこの順に直列接続され、
    前記第1の磁気抵抗効果素子、前記第2の磁気抵抗効果素子および前記第3の磁気抵抗効果素子は、それぞれ磁化固定層、磁化自由層およびこれらの間に配置されたスペーサ層を有し、
    前記第3の磁気抵抗効果素子は、その一端側が前記直流電流入力端子側になり、その他端側が前記基準電位端子側になるように、前記直流電流入力端子および前記基準電位端子に接続され、
    前記第1の磁気抵抗効果素子及び前記第3の磁気抵抗効果素子は、それぞれの前記一端側から前記他端側への向きと、それぞれの前記磁化自由層から前記磁化固定層への向きとの関係が、前記第1の磁気抵抗効果素子と前記第3の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成され、
    前記第3の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも高いまたは低いことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  11. 第4の磁気抵抗効果素子をさらに有し、
    前記第4の磁気抵抗効果素子は、前記第2のポートに対して並列に前記信号線路に接続され、
    前記第1の磁気抵抗効果素子、前記第2の磁気抵抗効果素子および前記第4の磁気抵抗効果素子は、それぞれ磁化固定層、磁化自由層およびこれらの間に配置されたスペーサ層を有し、
    前記第4の磁気抵抗効果素子は、その一端側が前記直流電流入力端子側になり、その他端側が前記基準電位端子側になるように、前記直流電流入力端子および前記基準電位端子に接続され、
    前記第2の磁気抵抗効果素子及び前記第4の磁気抵抗効果素子は、それぞれの前記一端側から前記他端側への向きと、それぞれの前記磁化自由層から前記磁化固定層への向きとの関係が、前記第2の磁気抵抗効果素子と前記第4の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成され、
    前記第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも高いまたは低いことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  12. 第3の磁気抵抗効果素子と、第4の磁気抵抗効果素子とをさらに有し、
    前記第1のポート、前記第3の磁気抵抗効果素子および前記第2のポートが前記信号線路を介してこの順に直列接続され、
    前記第4の磁気抵抗効果素子は、前記第2のポートに対して並列に前記信号線路に接続され、
    前記第1の磁気抵抗効果素子、前記第2の磁気抵抗効果素子、前記第3の磁気抵抗効果素子および前記第4の磁気抵抗効果素子は、それぞれ磁化固定層、磁化自由層およびこれらの間に配置されたスペーサ層を有し、
    前記第3の磁気抵抗効果素子及び前記第4の磁気抵抗効果素子は、それぞれの一端側が前記直流電流入力端子側になり、それぞれの他端側が前記基準電位端子側になるように、前記直流電流入力端子および前記基準電位端子に接続され、
    前記第1の磁気抵抗効果素子及び前記第3の磁気抵抗効果素子は、それぞれの前記一端側から前記他端側への向きと、それぞれの前記磁化自由層から前記磁化固定層への向きとの関係が、前記第1の磁気抵抗効果素子と前記第3の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成され、
    前記第2の磁気抵抗効果素子及び前記第4の磁気抵抗効果素子は、それぞれの前記一端側から前記他端側への向きと、それぞれの前記磁化自由層から前記磁化固定層への向きとの関係が、前記第2の磁気抵抗効果素子と前記第4の磁気抵抗効果素子とで逆になるように形成され、
    前記第3の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも高く、かつ、前記第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも低い、または、
    前記第3の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも低く、かつ、前記第4の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数が、前記第1の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数および前記第2の磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数よりも高いことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果デバイス。
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