JP6510944B2 - エンジン制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、停車している鞍乗り型車両の発進制御処理を行うエンジン制御装置に関する。
自動二輪車等の鞍乗り型車両の内燃機関用の電子制御装置、例えば、エンジン制御装置は、鞍乗り型車両の運転者によるアクセル操作量によって加速又は減速が指示される。かかる電子制御装置は、内燃機関の吸入空気量等の所定制御量を、アクセル操作量に応じた目標量に収束させるように、内燃機関の吸入空気通路に設けた流量制御弁を操作するフィードバック制御を行う。
また、近年、電子制御装置を利用して発進制御処理を行う鞍乗り型車両が市場において提案されてきている。かかる電子制御装置は、運転者が発進制御許可スイッチをオンすると共にクラッチを握った状態でアクセル開度を全開に維持することにより、発進制御処理の実施を許可し、エンジン回転数が所定回転数を維持するようにスロットル弁の開度を制御する。そして、電子制御装置は、運転者がクラッチをリリースした際に徐々に加速させる発進制御処理を実施する。このような発進制御処理を実施することにより、クラッチのリリース時の不要な発進トルクを抑制して、円滑な発進を実現することができる。
特許文献1は、発進制御処理を行う電子制御装置の一例を開示している。特許文献1は、エンジンの点火時期を制御する電子制御装置に関し、車両のスタート走行状態を検知すると共に、自動二輪車のハンドルのスロットルグリップ近傍に設置されたスタートスイッチが操作された際に、エンジンの点火時期を遅らせることにより、タイヤのグリップ性を向上させて円滑な発進を実現する構成を提案している。
特開2001−323864号公報
しかしながら、本発明者の検討によれば、発進制御処理の実施中においてはアクセル全開を維持した状態であるため、発進制御処理の実施中に発進制御処理がキャンセルされた場合、発進制御処理におけるスロットル弁の開度から運転者のアクセル操作量によって指示されるスロットル弁の開度に切り替わることにより、特に発進制御処理のキャンセル直後に運転者の意図しないアクセル開度となり、車両が過度な加速に転じることが考えられる。このため、アクセル開度を全開に維持することなく発進制御処理を実施する機構の採用が望ましい。
また、本発明者の検討によれば、オートクルーズ制御を行う鞍乗り型車両には、オートクルーズ制御をキャンセルするオーバークローズ機構が設けられている。かかるオーバークローズ機構では、オートクルーズ制御をキャンセルする操作として、アクセルグリップを通常の全閉位置よりも更に閉じる方向に手動で動かす操作を検出する。
本発明は、以上の検討を経てなされたものであり、オーバークローズ機構を利用して発進制御処理を行うことにより、発進制御処理の実施中に発進制御処理がキャンセルされた場合に、鞍乗り型車両が減速する実開度にフィードバック制御して、鞍乗り型車両が過度な加速に転じないようにすることができるエンジン制御装置を提供することを目的とする。
以上の目的を達成するべく、本発明は、第1の局面において、アクセル開度に基づいて目標開度を算出し、スロットル弁の実開度が前記目標開度に一致するように前記実開度をフィードバック制御する電子制御スロットル制御部と、クラッチが非接続状態及び変速機がインギヤ状態において、前記アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向にアクセルグリップが操作されると共に、前記クラッチが接続状態になった場合に、前記アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向にアクセルグリップが操作されている間に前記実開度を徐々に開く発進制御処理を実施する発進制御部と、を有するエンジン制御装置である。
また、本発明は、かかる第1の局面に加えて、前記発進制御部は、前記アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向に前記アクセルグリップが操作された状態が終了した際に前記発進制御処理をキャンセルすることを第2の局面とする。
本発明の第1の局面におけるエンジン制御装置においては、アクセル開度に基づいて目標開度を算出し、スロットル弁の実開度が前記目標開度に一致するように前記実開度をフィードバック制御する電子制御スロットル制御部と、クラッチが非接続状態及び変速機がインギヤ状態において、前記アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向にアクセルグリップが操作されると共に、前記クラッチが接続状態になった場合に、前記アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向にアクセルグリップが操作されている間に前記実開度を徐々に開く発進制御処理を実施する発進制御部と、を有するエンジン制御装置であるため、オーバークローズ機構を利用して発進制御処理を行うことにより、発進制御処理の実施中に発進制御処理がキャンセルされた場合に、鞍乗り型車両が減速する実開度にフィードバック制御して、鞍乗り型車両が過度な加速に転じないようにすることができる。
本発明の第2の局面におけるエンジン制御装置においては、前記発進制御部は、前記アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向に前記アクセルグリップが操作された状態が終了した際に前記発進制御処理をキャンセルするものであるため、アクセルグリップの簡易な操作で、簡単に発進制御処理をキャンセルすることができる。
図1は、本発明の実施形態におけるエンジン制御装置の構成を示すブロック図である。 図2は、本発明の実施形態における通常の発進制御処理の流れを説明するためのタイミングチャートである。 図3は、本発明の実施形態におけるアクセル開度とアクセル開度センサの出力値APSとの関係を示す図である。 図4は、本発明の実施形態における発進制御処理中に発進制御処理がキャンセルされた際の発進制御処理の流れを説明するためのタイミングチャートである。
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態におけるエンジン制御装置につき、詳細に説明する。
<エンジン制御装置の構成>
まず、図1を参照して、本実施形態におけるエンジン制御装置の構成につき、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態におけるエンジン制御装置1の構成を示すブロック図である。
本実施形態におけるエンジン制御装置1は、図示しない鞍乗り型車両に搭載される。エンジン制御装置1が搭載される鞍乗り型車両のアクセルグリップ(例えば右手側のグリップ)には、オーバークローズ機構が設けられている。かかるオーバークローズ機構では、オートクルーズ制御をキャンセルする操作として、スロットルを通常の全閉位置よりも更に閉じる方向に手動で動かす操作を検出する。ここで、オートクルーズ制御とは、定速走行又は追従走行等を行う際における車速の自動制御である。
エンジン制御装置1は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有するマイクロコンピュータ等の演算処理装置であり、典型的にはECU(Electronic Control Unit)である。エンジン制御装置1は、メモリから必要な制御プログラム及び制御データを読み出して、スロットル開度制御処理用等の制御プログラムを実行する。
具体的には、エンジン制御装置1は、アクセル開度算出部11、ギヤポジション検出部12、発進制御スイッチ読込部13、クラッチ状態検出部14、エンジン回転数算出部15、スロットル開度算出部16、燃料点火制御部17、発進制御部18、目標スロットル開度算出部19、偏差算出部20、スロットル開度フィードバック(F/B)制御部21、及びモータ駆動出力部22を備えている。これらは、エンジン制御装置1内において、CPUの機能ブロックとして実現されてもよいし、電気回路として実現されてもよい。また、目標スロットル開度算出部19、偏差算出部20及びスロットル開度フィードバック(F/B)制御部21は、電子制御スロットル制御部Cを構成している。
アクセル開度算出部11は、アクセル開度センサ6からの出力信号に基づいて、アクセル開度及びその変化量を算出する。アクセル開度算出部11は、通常のアクセル開度の算出に加えて、全閉より更に閉じた開度であるオーバー全閉開度を算出する。アクセル開度算出部11は、算出したアクセル開度又はオーバー全閉開度、及びその変化量を示す電気信号を燃料点火制御部17、発進制御部18及び目標スロットル開度算出部19に出力する。ここで、アクセル開度センサ6からの出力信号は、鞍乗り型車両の運転者による加速又は減速の指示に応じた出力値APSを含んでいる。
ギヤポジション検出部12は、ギヤポジションセンサ7が出力する変速段(ギヤポジション)に応じた信号に基づいて、選択されている変速段を検出すると共に、変速の完了を検出する。ギヤポジション検出部12は、検出した変速段を示す電気信号や変速の完了を示す電気信号を燃料点火制御部17、発進制御部18及び目標スロットル開度算出部19に出力する。なお、ギヤポジション検出部12における変速段を検出する機能及び変速の完了を検出する機能は、別々の機能ブロックで実現されてもよい。
発進制御スイッチ読込部13は、発進制御スイッチ8からの出力信号に基づいて、発進制御スイッチ8のON又はOFFの状態を検出し、検出した発進制御スイッチ8の状態に応じた電気信号を発進制御部18に出力する。
クラッチ状態検出部14は、運転者がクラッチを接続又は遮断する際のその操作に関する情報を坦持するクラッチスイッチ9からの出力信号に基づいて、クラッチの接続又は非接続の状態を検出する。クラッチ状態検出部14は、検出したクラッチの状態に応じた電気信号を発進制御部18及び目標スロットル開度算出部19に出力する。
エンジン回転数算出部15は、クランクセンサ5からの出力信号に基づいて、エンジン4の回転数を算出し、算出したエンジン4の回転数を示す電気信号を燃料点火制御部17及び目標スロットル開度算出部19に出力する。
スロットル開度算出部16は、スロットル開度センサ3からの電気信号に基づいて、エンジン4の吸気系に設けられたスロットル弁2の実開度を算出し、算出した実開度を示す電気信号を燃料点火制御部17、目標スロットル開度算出部19及び偏差算出部20に出力する。
燃料点火制御部17は、アクセル開度算出部11、ギヤポジション検出部12、エンジン回転数算出部15、及びスロットル開度算出部16からの電気信号に基づいて、燃料噴射システムFI及び点火システムIGを制御することによりエンジン4への燃料供給動作及びエンジン4の点火動作を制御する。
発進制御部18は、アクセル開度算出部11、ギヤポジション検出部12、発進制御スイッチ読込部13及びクラッチ状態検出部14からの電気信号に基づいて、発進制御処理を行い、発進制御処理における目標スロットル開度(以下、「発進制御用目標TH開度」と記載する)を示す電気信号を目標スロットル開度算出部19に出力する。
目標スロットル開度算出部19は、アクセル開度算出部11、ギヤポジション検出部12、クラッチ状態検出部14、エンジン回転数算出部15、スロットル開度算出部16及び発進制御部18からの電気信号に適宜基づいて、スロットル弁2の目標開度を算出する。目標スロットル開度算出部19は、算出した目標開度を示す電気信号を偏差算出部20に出力する。
偏差算出部20は、スロットル開度算出部16から入力された電気信号が示す実開度と、目標スロットル開度算出部19から入力された電気信号が示す目標開度と、の偏差を算出し、算出した偏差を示す電気信号をスロットル開度F/B制御部21に出力する。
スロットル開度F/B制御部21は、偏差算出部20から入力された電気信号が示す偏差に基づいて、実開度が目標開度に一致するようにモータ駆動出力部22に制御信号を出力する。
モータ駆動出力部22は、スロットル開度F/B制御部21から入力された制御信号に従って、スロットル弁2を駆動するための駆動信号をモータMに出力する。
電子制御スロットル制御部Cは、電子制御スロットル制御(DBW)を実行する。具体的には、電子制御スロットル制御部Cは、通常の電子制御スロットル制御、発進制御待機段階の電子制御スロットル制御、又は発進制御の電子スロットル制御を実行する。
ここで、通常の電子制御スロットル制御は、アクセル開度算出部11で算出したアクセル開度に基づいて、目標スロットル開度算出部19で目標開度を算出し、スロットル弁2の実開度が目標開度に一致するように実開度のフィードバック制御を行うものである。また、発進制御待機段階の電子制御スロットル制御は、発進制御の許可をトリガとして、発進制御部18で算出した発進制御用目標TH開度に基づいて、目標スロットル開度算出部19で目標開度を算出し、スロットル弁2の実開度が目標開度に一致するように実開度のフィードバック制御を行うものである。また、発進制御の電子制御スロットル制御は、クラッチが接続状態になったことをトリガとして、発進制御部18で算出した発進制御用目標TH開度に基づいて、目標スロットル開度算出部19で目標開度を算出し、スロットル弁2の実開度が目標開度に一致するように実開度のフィードバック制御を行うものである。
このような構成を有するエンジン制御装置1は、発進制御部18及び電子制御スロットル制御部C等により発進制御処理を行う。以下、図2及び図3を参照して、発進制御処理の流れについて説明する。
<通常の発進制御処理>
図2は、本発明の実施形態における通常の発進制御処理の流れを説明するためのタイミングチャートであり、図2(a)は、発進制御スイッチ8の状態の経時変化、図2(b)は、クラッチの状態の経時変化、図2(c)は、ギヤポジションの経時変化、図2(d)は、スロットル開度センサ3の出力値TPS及びアクセル開度センサ6の出力値APSの経時変化、図2(e)は、エンジン回転数NEの経時変化、及び図2(f)は、電子制御スロットル制御状態の経時変化を各々示している。なお、図2(d)において、実線はスロットル開度センサ3の出力値TPSを示し、破線はアクセル開度センサ6の出力値APSを示している。
図3は、本発明の実施形態におけるアクセル開度とアクセル開度センサ6の出力値APSとの関係を示す図である。なお、図3において、横軸のアクセル開度は矢印方向(右方向)にいくほど大きくなり、縦軸のアクセル開度センサ6の出力値APSは矢印方向(上方向)にいくほど大きくなる。
本実施形態におけるエンジン制御装置1が搭載される鞍乗り型車両は、発進前において、図2に示すように、運転者がクラッチレバーを握った状態(クラッチ非接続状態)で、時刻t=t1において運転者の操作によりギヤ(変速機)がニュートラルNから1速(1st)に切り替わる(インギヤ状態になる)。このとき、電子制御スロットル制御部Cは、通常の電子制御スロットル制御を行う。
次に、時刻t=t2において、発進制御スイッチ8の状態は、運転者の操作によりOFFからONになる。発進制御スイッチ読込部13は、発進制御スイッチ8がOFFからONになったことを検出し、発進制御スイッチ8がON状態であることを示す電気信号を発進制御部18に出力する。なお、電子制御スロットル制御部Cは、通常の電子制御スロットル制御を引き続き行う。
次に、時刻t=t3において、アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向に運転者によりアクセルグリップが操作され、この操作をオーバークローズ機構により検出し、アクセル開度センサ6の出力値APSがオーバークローズ閾値TH以下になる(図3参照)。アクセル開度算出部11は、アクセル開度センサ6から入力したオーバークローズ閾値TH以下の出力値APSに基づいて、アクセル開度として全閉より更に閉じたオーバー全閉開度を算出し、算出したオーバー全閉開度を示す電気信号を発進制御部18に出力する。これにより、発進制御部18は、発進制御を許可することにより、クラッチが接続状態になるまで待機する発進制御待機段階に移行し、発進制御用目標TH開度の算出を開始する。
時刻t=t3から時刻t=t4までの間において、発進制御部18は、所定の変化量で徐々に開く発進制御用目標TH開度を算出する。また、目標スロットル開度算出部19は、発進制御部18から入力する発進制御用目標TH開度を示す電気信号に基づいて、所定開度まで開く目標開度を算出する。これにより、スロットル弁2の実開度は所定開度まで開き、やがて所定開度で停止し、スロットル開度センサ3の出力値TPSは所定値まで大きくなり、やがて所定値で一定となり、一方でエンジン回転数は、所定値まで大きくなり、やがて所定値で安定する。
このとき、アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向にアクセルグリップを操作した状態を運転者が維持することにより、アクセル開度センサ6の出力値APSは、オーバークローズ閾値TH以下を維持する。
次に、時刻t=t4において、クラッチ状態検出部14は、クラッチスイッチ9から入力した出力信号より、運転者がクラッチレバーを握った状態からクラッチレバーを開放することによりクラッチが接続状態になったことを検出する。また、クラッチが接続状態であることを示す電気信号がクラッチ状態検出部14から目標スロットル開度算出部19に入力されることにより、電子制御スロットル制御部Cは、発進制御待機段階の電子制御スロットル制御から発進制御の電子制御スロットル制御に移行する。これにより、発進制御処理が開始される。
なお、アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向に運転者によりアクセルグリップが操作され、アクセル開度センサ6の出力値APSがオーバークローズ閾値TH以下になった後において、スロットル弁2の実開度が発進制御待機段階における所定開度まで開いている途中であっても、クラッチが接続状態であることを示す電気信号がクラッチ状態検出部14から目標スロットル開度算出部19に入力された際に、電子制御スロットル制御部Cは、発進制御待機段階の電子制御スロットル制御から発進制御の電子制御スロットル制御に移行するようにしてもよい。
時刻t=t4から時刻t=t5までの間において、発進制御部18は、所定の変化量で徐々に開く発進制御用目標TH開度を算出する。また、目標スロットル開度算出部19は、発進制御部18から入力する発進制御用目標TH開度を示す電気信号に基づいて、所定の変化量で徐々に開く目標開度を算出する。これにより、スロットル弁2の実開度が徐々に開いていき、スロットル開度センサ3の出力値TPSは徐々に大きくなる。更に、エンジン回転数は、徐々に大きくなる。
このとき、アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向にアクセルグリップを操作した状態を運転者が維持することにより、アクセル開度センサ6の出力値APSは、オーバークローズ閾値TH以下を維持する。なお、電子制御スロットル制御部Cは、発進制御の電子制御スロットル制御を行う。
次に、時刻t=t5において、運転者がシフトアップすることにより、ギヤポジションは1速から2速になる。
時刻t=t5から時刻t=t8までの間において、発進制御部18は、所定の変化量で徐々に開く発進制御用目標TH開度を算出する。また、目標スロットル開度算出部19は、発進制御部18から入力する発進制御用目標TH開度を示す電気信号に基づいて、所定の変化量で徐々に開く目標開度を算出する。これにより、スロットル弁2の実開度が徐々に開いていき、スロットル開度センサ3の出力値TPSは徐々に大きくなり、一方でエンジン回転数は、徐々に大きくなる。
このとき、アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向にアクセルグリップを操作した状態を運転者が維持することにより、アクセル開度センサ6の出力値APSは、オーバークローズ閾値TH以下を維持する。なお、電子制御スロットル制御部Cは、発進制御の電子制御スロットル制御を行う。
次に、時刻t=t8において、運転者がシフトアップすることにより、ギヤポジションは2速から3速になる。
時刻t=t8から時刻t=t9までの間において、発進制御部18は、所定の変化量で徐々に開く発進制御用目標TH開度を算出する。また、目標スロットル開度算出部19は、発進制御部18から入力する発進制御用目標TH開度を示す電気信号に基づいて、所定の変化量で徐々に開く目標開度を算出する。これにより、スロットル弁2の実開度が徐々に開いていき、スロットル開度センサ3の出力値TPSは徐々に大きくなり、一方でエンジン回転数は、安定した状態になる。
このとき、アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向にアクセルグリップを操作した状態を運転者が維持することにより、アクセル開度センサ6の出力値APSは、オーバークローズ閾値TH以下を維持する。なお、電子制御スロットル制御部Cは、発進制御の電子制御スロットル制御を行う。
次に、時刻t=t9において、発進制御スイッチ8の状態は、運転者の操作によりONからOFFになる。発進制御スイッチ読込部13は、発進制御スイッチ8がONからOFFになったことを検出し、発進制御スイッチ8がOFF状態であることを示す電気信号を発進制御部18に出力する。これにより、発進制御部18は、発進制御用目標TH開度の算出を停止する。また、発進制御用目標TH開度を示す電気信号が発進制御部18から目標スロットル開度算出部19に入力しなくなるため、電子制御スロットル制御部Cは、発進制御の電子制御スロットル制御から通常の電子制御スロットル制御に移行する。
また、時刻t=t9以降において、目標スロットル開度算出部19は、発進制御部18で算出する発進制御用目標TH開度に応じて目標開度を算出する処理から、アクセル開度算出部11で算出するアクセル開度に応じて目標開度を算出する処理に切り替える。これにより、電子制御スロットル制御部Cは、スロットル弁2の実開度と、運転者のアクセル操作量に応じて目標スロットル開度算出部19で算出された目標開度と、が一致するようにフィードバック制御を行う。
このように、エンジン制御装置1で発進制御処理を行うことにより、クラッチの接続時の不要な発進トルクを抑制して、円滑な発進を実現することができる。
<発進制御処理中に発進制御処理がキャンセルされた際の発進制御処理>
図4は、本発明の実施形態における発進制御処理中に発進制御処理がキャンセルされた際の発進制御処理の流れを説明するためのタイミングチャートであり、図4(a)は、発進制御スイッチ8の状態の経時変化、図4(b)は、クラッチの状態の経時変化、図4(c)は、ギヤポジションの経時変化、図4(d)は、スロットル開度センサ3の出力値TPS及びアクセル開度センサ6の出力値APSの経時変化、図4(e)は、エンジン回転数NEの経時変化、及び図4(f)は、電子制御スロットル制御状態の経時変化を各々示している。なお、図4(d)において、実線はスロットル開度センサ3の出力値TPSを示し、破線はアクセル開度センサ6の出力値APSを示している。
なお、図4において、時刻t=t0から時刻t=t5までの発進制御処理は図2の時刻t=t0から時刻t=t5までの発進制御処理と同一であるので、その説明を省略する。
時刻t=t6において、アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向へのアクセルグリップの運転者による操作が終了したことを、アクセルグリップに設けられたオーバークローズ機構により検出し、アクセル開度センサ6の出力値APSがオーバークローズ閾値THより大きくなる。アクセル開度算出部11は、アクセル開度センサ6から入力したオーバークローズ閾値THより大きい出力値APSに基づいて、アクセル開度としてオーバー全閉開度より開いた開度を算出し、算出したオーバー全閉開度より開いた開度を示す電気信号を発進制御部18に出力する。これにより、発進制御部18は、発進制御処理をキャンセルすると共に、発進制御用目標TH開度の算出を停止する。また、発進制御用目標TH開度を示す電気信号が発進制御部18から目標スロットル開度算出部19に入力されなくなるため、目標スロットル開度算出部19は、発進制御部18で算出する発進制御用目標TH開度に応じて目標開度を算出する処理から、アクセル開度算出部11で算出するアクセル開度に応じて目標開度を算出する処理に切り替える。
このとき、目標スロットル開度算出部19で算出する目標開度は、時刻t=t6の直前に目標スロットル開度算出部19で算出した目標開度に比べて小さくなる。また、スロットル弁2の実開度は時刻t=t6の直前のスロットル弁2の実開度に比べて閉じた状態になり、スロットル開度センサ3の出力値TPSも時刻t=t6の直前のスロットル開度センサ3の出力値TPSに比べて小さくなる。更に、電子制御スロットル制御部Cは、発進制御の電子制御スロットル制御から通常の電子制御スロットル制御に移行する。
時刻t=t6から時刻t=t7までの間において、アクセル開度センサ6の出力値APSは、オーバークローズ閾値THを超えて徐々に大きくなる。従って、アクセル開度算出部11においてアクセル開度センサ6の出力値APSに基づいて算出するアクセル開度は、オーバー全閉開度から徐々に開いていく。
このとき、目標スロットル開度算出部19で算出する目標開度は、アクセル開度算出部11で算出するアクセル開度よりも開き過ぎているため、閉方向に設定される。これより、スロットル弁2の実開度は徐々に閉じていき、スロットル開度センサ3の出力値TPSも徐々に小さくなる。更に、エンジン回転数は、徐々に小さくなる。このように、発進制御処理がキャンセルされた場合に、スロットル弁2は閉じ方向に駆動するようにフィードバック制御されるため、車両が過度な加速に転じないようにすることができる。
次に、時刻t=t7において、目標スロットル開度算出部19で算出する目標開度は、アクセル開度算出部11で算出するアクセル開度に対応した開度になるため、閉方向から開方向に転じる。
時刻t=t7から時刻t=t8までの間において、アクセル開度が徐々に開いていくことにより、アクセル開度センサ6の出力値APSは、徐々に大きくなる。このとき、アクセル開度センサ6の出力値APSは、オーバークローズ閾値TH以上である。また、目標スロットル開度算出部19で算出する目標スロットル開度は、アクセル開度算出部11で算出するアクセル開度に応じて徐々に開いていく。従って、スロットル開度センサ3の出力値TPSは、徐々に大きくなる。更に、エンジン回転数は、徐々に大きくなる。
なお、図4において、時刻t=t8以降の処理は図2の時刻t=t8以降の処理と同一であるので、その説明を省略する。
以上の本発明の実施形態におけるエンジン制御装置では、アクセル開度に基づいて目標開度を算出し、スロットル弁の実開度が目標開度に一致するように実開度をフィードバック制御し、クラッチが非接続状態及び変速機がインギヤ状態において、アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向にアクセルグリップが操作されると共に、クラッチが接続状態になった場合に、アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向にアクセルグリップが操作されている間に実開度を徐々に開く発進制御処理を実施するため、オーバークローズ機構を利用して発進制御処理を行うことにより、発進制御処理の実施中に発進制御処理がキャンセルされた場合に、鞍乗り型車両が減速する実開度にフィードバック制御して、鞍乗り型車両が過度な加速に転じないようにすることができる。
また、本発明の実施形態におけるエンジン制御装置では、前記アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向にアクセルグリップが操作された状態が終了した際に発進制御処理をキャンセルするものであるため、グリップの簡易な操作で、簡単に発進制御処理をキャンセルすることができる。
また、本発明の実施形態におけるエンジン制御装置では、アクセル開度センサ6の出力値APSがオーバークローズ閾値THより大きい場合、発進制御処理を開始しないことにより、運転者の意図しない車両の飛び出しを確実に防ぐことができる。
なお、本発明は、部材の種類、形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
以上のように、本発明においては、オーバークローズ機構を利用することにより、発進制御処理の実施中に発進制御処理がキャンセルされた場合であっても、運転者の意図しないアクセル開度にならないようにして、車両が過度な加速に転じないようにすることができるエンジン制御装置を提供することができ、その汎用普遍的な性格から自動二輪車等のエンジン制御装置に広範に適用され得るものと期待される。
1…エンジン制御装置
2…スロットル弁
3…スロットル開度センサ
4…エンジン
5…クランクセンサ
6…アクセル開度センサ
7…ギヤポジションセンサ
8…発進制御スイッチ
9…クラッチスイッチ
11…アクセル開度算出部
12…ギヤポジション検出部
13…発進制御スイッチ読込部
14…クラッチ状態検出部
15…エンジン回転数算出部
16…スロットル開度算出部
17…燃料点火制御部
18…発進制御部
19…目標スロットル開度算出部
20…偏差算出部
21…スロットル開度フィードバック制御部
22…モータ駆動出力部
C…電子制御スロットル制御部
M…モータ

Claims (2)

  1. アクセル開度に基づいて目標開度を算出し、スロットル弁の実開度が前記目標開度に一致するように前記実開度をフィードバック制御する電子制御スロットル制御部と、
    クラッチが非接続状態及び変速機がインギヤ状態において、前記アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向にアクセルグリップが操作されると共に、前記クラッチが接続状態になった場合に、前記アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向にアクセルグリップが操作されている間に前記実開度を徐々に開く発進制御処理を実施する発進制御部と、
    を有することを特徴とするエンジン制御装置。
  2. 前記発進制御部は、
    前記アクセル開度が全閉となる位置から更に閉じる方向に前記アクセルグリップが操作された状態が終了した際に前記発進制御処理をキャンセルする、
    ことを特徴とする請求項1記載のエンジン制御装置。
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