JP6508472B2 - アクリル酸系重合体溶液の製造方法 - Google Patents

アクリル酸系重合体溶液の製造方法 Download PDF

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本発明は、アクリル酸系重合体溶液の製造方法に関する。詳細には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池の電極用バインダーとして使用可能なアクリル酸系重合体の有機溶剤溶液の製造方法に関する。
非水電解質二次電池としては、例えばリチウムイオン二次電池がよく知られている。リチウムイオン二次電池は、鉛蓄電池等の他の二次電池と比較して、エネルギー密度、出力密度、及び充放電サイクル特性等に優れることから、スマートフォン、タブレット型端末及びノート型パソコン等のモバイル端末に採用され、端末の小型軽量化及び高性能化に貢献している。一方、電気自動車やハイブリッド自動車用の二次電池(車載用二次電池)としては、入出力特性、充電所要時間等の面でまだ十分な性能には達していない。このため、非水電解質二次電池の高出力化、充電時間の短縮化を目指し、高い電流密度における充放電特性(ハイレート特性)を改善するための検討が行われている。また、同じく車載用途では高い耐久性が必要とされるため、サイクル特性との両立が求められている。
リチウムイオン二次電池は、セパレータを介して配される一対の電極、並びに非水電解質溶液から構成される。電極は、集電体及びその表面に形成された合剤層とからなり、該合剤層は、集電体上に活物質及びバインダー等を含む電極合剤層用組成物(スラリー)をコーティングし、乾燥等することにより形成される。
リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、通常、コバルト酸リチウム等のリチウム含有金属酸化物が用いられている。また、負極活物質としては、黒鉛等の炭素系材料を用いるのが一般的である。しかし、近年では、エネルギー密度向上を目的として、単位重量当たりに多量のリチウムを挿入することが可能であり、高容量とすることができる新たな活物質材料の検討が活発に行われている。中でも、負極活物質として炭素系材料よりも高容量となり得るケイ素またはケイ素酸化物等のケイ素系活物質が注目を集めている。
しかしながら、ケイ素やケイ素酸化物を負極活物質として用いた場合、充放電の際にリチウムの吸蔵・放出に伴い大きな体積変化を生じることが知られている。この体積変化により、充放電を繰り返した場合に集電体から活物質が脱落または剥離することから、サイクル特性の点で課題を有するものであった。
このような状況の下、ケイ素系活物質を用いた場合のサイクル特性の向上を目的として、種々のバインダーが提案されている。
特許文献1では、ポリアクリル酸等の側鎖にカルボキシル基をもつポリマーと、銅、ニッケル及びコバルトから選ばれる少なくとも一種の金属元素の化合物と、の反応物からなることを特徴とする二次電池負極用バインダーが開示されている。また、特許文献2には、カルボキシル基を有する酸モノマーの重合体からなる主鎖を有し、一部の側鎖ではカルボニル基にアルキル基が結合していることを特徴とする電極用ポリマー組成物が記載されている。
特許文献1及び特許文献2は、いずれもポリアクリル酸等のカルボキシル基含有重合体をN−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」ともいう)等の有機溶剤に溶解させ、変性するものである。ここで、ポリアクリル酸等のアクリル酸系重合体は、水、又は水及びアルコール等の水系溶剤中でアクリル酸等の単量体を重合することにより製造するのが一般的である。このため、ポリアクリル酸のNMP溶液を製造する場合には、水系溶剤中でポリアクリル酸を重合した後、水等の溶媒を留去し、必要に応じて乾燥粉砕処理を行った後にNMPに溶解する必要がある。水の留去・乾燥には多大なエネルギーを要するうえ、工程が多く操作も煩雑となるため、水系溶剤中で重合を行った場合には、生産性の点で問題があった。
さらに、リチウムイオン二次電池の電解液は、通常、炭酸エチレンや炭酸エチルメチルの混合物にヘキサフルオロ酸リチウムを溶解したものが用いられる。ヘキサフルオロ酸リチウムは、水と容易に反応してフッ化水素を生じるため、使用時には水分を十分に排除することが必要である。このため、バインダーからの水分持ち込みも極力低減することが要求されている。
これに対し、非水系溶剤中でポリアクリル酸等のアクリル酸系重合体を製造し、該アクリル酸系重合体が溶解した有機溶剤溶液を得る方法についてはあまり知られていない。このような例としては、特許文献3に、イソプロピルアルコールを重合溶剤として用いてポリアクリル酸を重合する方法が開示されている(参考例5)。
特開2014−211977号公報 特開2014−220082号公報 特開平2−34694号公報
しかし、特許文献3に記載の方法では、得られるポリアクリル酸の分子量を制御する目的で多量の連鎖移動剤が使用されている。このため、これに由来する不純物が最終製品であるアクリル酸系重合体溶液中にも混入することとなり、例えばリチウムイオン二次電池等に用いた場合には、電池性能への悪影響も懸念されるものであった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、リチウムイオン二次電池のバインダー等としても有用なアクリル酸系重合体の非水系溶剤溶液を効率よく製造するとともに、メルカプト化合物等の不純物及び水分の混入を抑制することが可能なアクリル酸系重合体溶液の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、非水系溶剤中でのアクリル酸系重合体の製造方法について検討を行った。その結果、アルコール系溶剤以外の有機溶剤を含む非水系溶剤中で溶液重合することによりアクリル酸系重合体溶液を効率よく製造し得る知見を得た。さらには、非水系溶剤がNMPを含む場合には、連鎖移動剤としてのメルカプト化合物等の不純物の混入回避に一層効果的であるとの知見を得た。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
本発明は以下の通りである。
〔1〕アルコール系溶剤以外の有機溶剤を含有する非水系溶剤中、アクリル酸を含む単量体の溶液重合を行う重合工程を備えることを特徴とするアクリル酸系重合体溶液の製造方法。
〔2〕上記非水系溶剤が、N−メチル−2−ピロリドンを1〜100質量%含有する上記〔1〕に記載のアクリル酸系重合体溶液の製造方法。
〔3〕上記非水系溶剤が、N−メチル−2−ピロリドン及び沸点200℃以下の有機溶剤との混合溶剤である上記〔1〕に記載のアクリル酸系重合体溶液の製造方法。
〔4〕上記沸点200℃以下の有機溶剤が、炭素数1〜3のアルコールである上記〔3〕に記載のアクリル酸系重合体溶液の製造方法。
〔5〕重合時の単量体濃度が25質量%以上である上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のアクリル酸系重合体溶液の製造方法。
〔6〕上記重合工程の後、さらに脱溶剤工程を備える上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のアクリル酸系重合体溶液の製造方法。
〔7〕上記アクリル酸系重合体の重量平均分子量が10000〜500000である上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のアクリル酸系重合体溶液の製造方法。
本発明のアクリル酸系重合体の製造方法によれば、アクリル酸系重合体の非水系溶剤溶液を効率よく製造することができる。また、重合溶剤として水系溶剤を用いないため、水分の混入を抑制することができる。さらには、メルカプト化合物等の不純物の混入も抑制することが可能となる。
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
本発明のアクリル酸系重合体溶液の製造方法では、アルコール系溶剤以外の有機溶剤を含有する非水系溶剤中でアクリル酸を含む単量体の溶液重合を行う重合工程を備える。重合工程に供する単量体はアクリル酸を含むものであればよいが、前述したリチウムイオン二次電池用バインダーとして好適なアクリル酸系重合体を得る観点から、アクリル酸の使用量は全単量体の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。アクリル酸の使用量の上限は100質量%である。
単量体としては、アクリル酸以外にもアクリル酸と共重合可能な単量体を用いてもよい。具体的には、アクリル酸を除く不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、ヒドロキシル基含有ビニル化合物、アミノ基含有ビニル化合物、アミド基含有ビニル化合物、スルホン酸基含有ビニル化合物、ポリオキシアルキレン基含有ビニル化合物、アルコキシル基含有ビニル化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アクリル酸を除く不飽和カルボン酸としては、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル等の直鎖状又は分岐状アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物が挙げられる。
ヒドロキシル基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルや、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、m−イソプロペニルフェノール、o−イソプロペニルフェノール等が挙げられる。
アミノ基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジ−n−プロピルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸3−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3−ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル等が挙げられる。
アミド基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
スルホン酸基含有ビニル化合物としては、メタリルスルホン酸、アクリルアミド−2−メチル−2−プロパンスルホン酸等が挙げられる。
ポリオキシアルキレン基含有ビニル化合物としては、ポリオキシエチレン基、及び/又は、ポリオキシプロピレン基を有するアルコールの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
アルコキシ基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシプロピル等が挙げられる。
単量体成分としては、上記以外に架橋性単量体を使用してもよい。架橋性単量体としては、2個以上の重合性不飽和基を有する多官能重合性単量体、及び加水分解性シリル基等の自己架橋可能な架橋性官能基を有する単量体等が挙げられる。架橋性単量体の使用量が多すぎると得られるアクリル酸系重合体が重合溶剤に溶解できなくなるため、その使用量は、架橋性単量体以外の単量体(非架橋性単量体)の総量に対して1モル%以下であることが好ましい。
上記多官能重合性単量体は、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基等の重合性官能基を分子内に2つ以上有する化合物であり、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アルケニル化合物、(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの内でも、均一な架橋構造を得やすい点で多官能アルケニル化合物、並びに、(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物等の分子内にアルケニル基を1つ以上有する化合物が好ましい。また、反応性が良好であり、未反応物が残り難いことから、(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物がより好ましい。
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性体のトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのトリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート;メチレンビスアクリルアミド、ヒドロキシエチレンビスアクリルアミド等のビスアミド類等を挙げることができる。
多官能アルケニル化合物としては、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、ポリアリルサッカロース等の多官能アリルエーテル化合物;ジアリルフタレート等の多官能アリル化合物;ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物等を挙げることができる。
(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸イソプロペニル、(メタ)アクリル酸ブテニル、(メタ)アクリル酸ペンテニル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル等を挙げることができる。
上記自己架橋可能な架橋性官能基を有する単量体の具体的な例としては、加水分解性シリル基含有ビニル単量体、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
加水分解性シリル基含有ビニル単量体としては、加水分解性シリル基を少なくとも1個有するビニル単量体であれば、特に限定されない。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランン等のビニルシラン類;アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル等のシリル基含有アクリル酸エステル類;メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル、メタクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジメチルメトキシシリルプロピル等のシリル基含有メタクリル酸エステル類;トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル等のシリル基含有ビニルエーテル類;トリメトキシシリルウンデカン酸ビニル等のシリル基含有ビニルエステル類等を挙げることができる。
上述したアルコール系溶剤以外の有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル化合物、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物;酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系化合物;アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン系化合物;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン等のラクタム系化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの内でも連鎖移動効果に優れ、他の連鎖移動剤の使用量を低減することが可能であることからN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が好ましい。NMPを用いた場合には、これが連鎖移動剤としても効果的に作用するため、非水系溶剤としてNMPを含む混合溶剤を使用し、該混合溶剤中のNMPの使用割合を調整することにより、得られるアクリル酸系重合体の分子量を調整することができる。上記の効果を考慮すると、NMPの好ましい使用量は、好ましくは使用する非水系溶剤全体の1〜100質量%であり、より好ましくは10〜100質量%であり、さらに好ましくは20〜100質量%である。
重合工程において使用する非水系溶剤としては、上記に挙げた有機溶剤以外に、本発明の効果を阻害しない範囲内において、アルコール系溶剤を使用することができる。アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール等の脂肪族アルコール;シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の脂環式アルコール;ベンジルアルコール等の芳香族アルコール等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの内でも、後述するように、上記アルコール系溶剤以外の有機溶剤からの分離が容易であることから、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1〜3のアルコールが好ましい。
重合工程では、溶液重合法によりアクリル酸系重合体が得られる。本発明では、アルコール系溶剤以外の有機溶剤を含有する非水系溶剤及び単量体原料を反応器に仕込み、有機過酸化物、アゾ系化合物等の熱重合開始剤を添加して、40〜300℃に加熱して重合することにより目的とするアクリル酸系重合体を得ることができる。好ましい重合温度は50〜200℃であり、より好ましい重合温度は50〜150℃である。重合温度は一定であってもよいし、重合反応の期間において変化するものであってもよい。また、重合時間は1分間〜10時間が好ましく、10分間〜5時間がより好ましく、30分間〜2時間がさらに好ましい。
単量体を含む各原料の仕込み方法は、すべての原料を一括して仕込むバッチ式の初期一括仕込みでもよく、少なくとも一つの原料を連続的に反応器中に供給するセミバッチ式の態様でもよく、全原料を連続供給し、同時に反応器から連続的に生成樹脂を抜き出す連続重合方式でもよい。
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物、無機過酸化物等を用いることができるが、特に限定されるものではない。公知の酸化剤及び還元剤からなるレドックス型重合開始剤を用いても良い。また、同じく公知の連鎖移動剤を併用することもできる。
上記アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2−(tert−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
上記有機過酸化物としては、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(日油社製、商品名「パーテトラA」)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(同「パーヘキサHC」)、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(同「パーヘキサC」)、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート(同「パーヘキサV」)、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン(同「パーヘキサ22」)、t−ブチルハイドロパーオキサイド(同「パーブチルH」)、クメンハイドロパーオキサイド(日油社製、商品名「パークミルH」)、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド(同「パーオクタH」)、t−ブチルクミルパーオキサイド(同「パーブチルC」)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(同「パーブチルD」)、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド(同「パーヘキシルD」)、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(同「パーロイル355」)、ジラウロイルパーオキサイド(同「パーロイルL」)、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(同「パーロイルTCP」)、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(同「パーロイルOPP」)、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート(同「パーロイルSBP」)、クミルパーオキシネオデカノエート(同「パークミルND」)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(同「パーオクタND」)、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート(同「パーヘキシルND」)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(同「パーブチルND」)、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート(同「パーブチルNHP」)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(同「パーヘキシルPV」)、t−ブチルパーオキシピバレート(同「パーブチルPV」)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイル)ヘキサン(同「パーヘキサ250」)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(同「パーオクタO」)、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(同「パーヘキシルO」)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(同「パーブチルO」)、t−ブチルパーオキシラウレート(同「パーブチルL」)、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(同「パーブチル355」)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(同「パーヘキシルI」)、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(同「パーブチルI」)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(同「パーブチルE」)、t−ブチルパーオキシアセテート(同「パーブチルA」)、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート(同「パーヘキシルZ」)及びt−ブチルパーオキシベンゾエート(同「パーブチルZ」)等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
上記無機過酸化物としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
また、レドックス開始の場合、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、亜硫酸ガス(SO2)、硫酸第一鉄等を還元剤として用いることができる。
重合開始剤の使用量は、各種重合条件及び目的とする用途等によって適宜調整されるが、重合工程に使用する単量体の総量に対して好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.2〜5質量%である。
連鎖移動剤としては公知のものを使用することができ、具体的には、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、1−ヘキサンチオール、2−ヘキサンチオール、2−メチルヘプタン−2−チオール、2−ブチルブタン−1−チオール、1,1−ジメチル−1−ペンタンチオール、1−オクタンチオール、2−オクタンチオール、1−デカンチオール、3−デカンチオール、1−ウンデカンチオール、1−ドデカンチオール、2−ドデカンチオール、1−トリデカンチオール、1−テトラデカンチオール、3−メチル−3−ウンデカンチオール、5−エチル−5−デカンチオール、tert−テトラデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール、1−ヘプタデカンチオール及び1−オクタデカンチオール等の炭素数2〜20のアルキル基を有するアルキルチオール化合物の他、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトエタノール等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
連鎖移動剤を用いる場合、その好ましい使用量は、重合工程に使用する単量体の総量に対して好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%である。
本発明の製造方法では、重合溶剤として用いるNMPの使用量及び連鎖移動剤の使用量等により得られるアクリル酸系重合体の分子量を調整することができる。アクリル酸系重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは3000〜1000000の範囲であり、より好ましくは10000〜500000の範囲であり、さらに好ましくは20000〜300000の範囲である。重量平均分子量が3000以上であればアクリル酸系重合体の強度等の機械的物性を確保することが容易となる。また、重量平均分子量が1000000以下であれば、製造上又は使用時において取扱可能な粘度に調整することが容易となる。
また、重量平均分子量分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値として得られる分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは10.0以下であり、より好ましくは6.0以下であり、さらに好ましくは4.0以下である。Mw/Mnの下限値は1.0であるが、一般的に得られる重合体では、Mw/Mnの下限値は通常1.5である。
本発明の製造方法では、重合工程を経て得られた重合体溶液を、常圧又は減圧下、必要に応じて加熱することにより、重合溶剤の一部又は全部を除去する脱溶剤工程を備えていてもよい。本発明の製造方法では、重合溶剤として非水系溶媒を使用するため、従来の水系溶剤中で重合を行った場合に比較して、容易に溶剤を除去することができる。
減圧する場合の圧力条件は用いた溶剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、通常は絶対圧として0.1〜100kPaであり、1〜80kPaが好ましく、1〜60kPaがより好ましい。
加熱する場合の温度も用いた溶剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、通常は40〜200℃であり、50〜160℃が好ましく、60〜120℃がより好ましい。
脱溶剤工程では、重合工程を経て得られた重合体溶液から溶剤を除去するとともに、これとは別の溶剤を適宜加えることにより溶剤置換を行ってもよい。上記別の溶剤は、重合体溶液に連続的に加えてもよいし、間欠的に加えてもよい。また、上記別の溶剤は、脱溶剤開始前から脱溶剤終了後までの任意の時期に加えることができる。
一般に、アクリル酸系重合体をリチウムイオン二次電池用バインダーの用途に用いる場合、NMP溶液として調製することを要求される場合が多い。このため、重合溶剤としてNMPを含む混合溶剤を用いた場合には、得られた重合体溶液からNMP以外の溶剤を除去する必要がある。本発明の製造方法では、上記脱溶剤工程において、上記NMP以外の溶剤を除去することができる。
この場合、NMPと併用する溶剤は、混合溶剤からの除去が容易であることから、NMPよりも低沸点の有機溶剤を用いることが好ましい。NMPと併用する有機溶剤の具体的な沸点としては、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましく、120℃以下であることが一層好ましい。
沸点が120℃以下である具体的な有機溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、等が挙げられ、これらの内でも、アクリル酸系重合体の溶解性に優れる点で、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1〜3のアルコールが好ましい。
尚、リチウムイオン二次電池用バインダーの用途では、重合工程においてNMP100質量%からなる重合溶剤を用いた場合は、溶剤を置換する手間を簡略化することができる点からも好ましい。
重合時の単量体成分の濃度については、生産効率が高く、未反応単量体の残存量低減に有利なことから高い方が好ましい。このため、重合時の単量体濃度は15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることが一層好ましい。本発明の製造方法では、重合時の単量体濃度とは、重合工程において使用する全単量体の添加を終えた時点での、反応液の総量に占める添加した単量体総量の割合を意味する。
一方、単量体成分の濃度が高すぎる場合、反応液の粘度が増大して重合熱の制御が困難となり重合反応が暴走する虞がある。このため、重合時の単量体濃度の上限は、通常80質量%以下であり、好ましくは60質量%以下である。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り質量部及び質量%を意味する。
各実施例における分子量、残存モノマー量及び固形分の具体的な測定方法について以下に記載する。
<分子量の測定>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で重合体の平均分子量を求めた。GPC装置としては、東ソー社製「HLC−8220GPC」を使用し、カラムには東ソー社製「TSK−GEL MULTIPORE HXL−M」(4本)を使用した。後述する方法で調製した重合体試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解して濃度0.2質量%の溶液を調製した後、当該溶液100μLを、カラムに注入し、溶離液にはTHF、カラム温度40℃、溶離液(THF)の流速1.0mL/分の条件にて測定を行った。測定結果を、標準ポリスチレンにて作成した検量線を用いて解析し、ポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めた。
ここで、上記重合体試料の調製は、以下の手順により行った。まず、重合工程を経て得られたアクリル酸系重合体溶液から減圧条件下にて揮発分を除去した後、メタノール/ベンゼン(=65/35,w/w)に溶解させた(濃度3mg/ml)。次いで、トリメチルシリルジアゾメタン10%ヘキサン溶液を黄色が呈するまでゆっくり滴下し、アクリル酸系重合体のメチルエステル化反応を行った。黄色を呈した重合体溶液を15分間穏やかに撹拌した後、減圧条件下にて揮発分を除去した。得られたメチルエステル化重合体をTHFに溶解させ、濃度5mg/mlの溶液を調整し、上記GPC測定に供した。
<残存モノマーの測定>
ガスクロマトグラフィー(GC)により、未反応モノマーの残存量を測定した。具体的には、GC装置として島津製作所社製「GC−2014」を使用し、FID検出器、及びカラムとしてVarian社製CP−Wax 52CB(60m)を使用して、反応液を蒸留水にて希釈し、内部標準物質としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加したものをサンプルとして、キャリアーガスとしてヘリウムを用い、カラム温度を50℃から250℃まで10℃/分で昇温させて測定を行った。内部標準物質(プロピレングリコールモノメチルエーテル)とアクリル酸のピーク面積より、未反応のまま残存しているモノマー量を定量した。
<固形分の測定>
サンプル1gをアルミカップに秤量し、減圧条件下、165℃で1時間乾燥させた後の重量を測定することにより固形分を算出した。
実施例1
(重合工程)
攪拌翼、温度計、還流冷却器、窒素導入管及び原料供給配管連結部を備えたフラスコ内に、メタノール171g及びN−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」ともいう)9gを仕込んだ。反応器内を十分に窒素置換した後、攪拌下、窒素ガスの吹込みを行いながら、加温して内温を55℃まで昇温した。また、別途、送液配管を備えたガラス製原料容器にアクリル酸(以下、「AA」ともいう)100gを仕込んだ。
フラスコの内温が55℃で安定したことを確認した後、フラスコに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、商品名「V−65」)を1g添加した。5分経過後、定量ポンプを使用して、上記原料容器に仕込んだAAを一定速度で240分間かけてフラスコへ供給した。AAを供給している間、内温は55℃を維持した。AAの供給完了後120分経過した時点から、30分間かけてフラスコの内温を62℃にまで昇温し、そのまま2時間30分間維持することにより重合工程を完了し、アクリル酸系重合体(A−1)のメタノール/NMP溶液を得た。なお、重合時の単量体濃度は36%であった。ガスクロマトグラフィー測定の結果、未反応単量体(AA)の残存量は、重合体溶液の総量に対して1.16%であった。
(脱溶剤工程)
上記の重合工程を経て得られたアクリル酸系重合体(A−1)のメタノール/NMP溶液にNMP291gを加えた後、フラスコを95℃の湯浴に浸漬し、10kPa(絶対圧)の減圧条件下にて脱溶剤を行い、メタノールを留去した。ガスクロマトグラフィー測定によりメタノールが溶液全量に対して0.2%以下になった時点を終点とした。メタノールの留出開始から留出完了までに要した時間は30分間であり、短時間で効率良く脱溶剤工程を完了した。サンプリングを行い、165℃、減圧下で乾燥を行い、固形分を算出した結果、24.4%であった。固形分が20%となるようNMPを添加し、アクリル酸系重合体(A−1)のNMP溶液を得た。
脱溶剤前後のアクリル酸系重合体(A−1)の溶液の質量差から、留去した溶剤分は170部と算出された。ガスクロマトグラフィー測定の結果、未反応単量体(AA)の残存量は、アクリル酸系重合体(A−1)のNMP溶液の総量に対して0.41%であった。また、GPC測定の結果、数平均分子量(Mn)は29,000、重量平均分子量(Mw)は93,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.21と算出された。
実施例2〜4、6、8〜12、比較例1〜5
重合溶剤、単量体組成及び脱溶剤工程前に追加するNMPの量を表1に記載の通りとした以外は実施例1と同様の操作を行い、アクリル酸系重合体のNMP溶液を得た。各実験例とも実施例1と同様に分子量及び残存モノマーの測定を行い、結果を表1に示した。
実施例5
重合溶剤、単量体組成及び追加するNMPの量を表1に記載の通りとし、脱溶剤工程を設けなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、アクリル酸系重合体のNMP溶液を得た。実施例1と同様に分子量及び残存モノマーの測定を行い、結果を表1に示した。
実施例7
(重合工程)
攪拌翼、温度計、還流冷却器、窒素導入管及び原料供給配管連結部を備えたフラスコ内に、メタノール178g及びNMP2gを仕込んだ。反応器内を十分に窒素置換した後、攪拌下、窒素ガスの吹込みを行いながら、加温して内温を55℃まで昇温した。また、別途、送液配管を備えたガラス製原料容器にAA100gを仕込んだ。
フラスコの内温が55℃で安定したことを確認した後、フラスコにV−65を1g添加した。5分経過後、定量ポンプを使用して、上記原料容器に仕込んだAAを一定速度で60分間かけてフラスコへ供給した。AAを供給している間、内温は55℃を維持した。AAの供給完了後300分経過した時点から、30分間かけてフラスコの内温を62℃にまで昇温し、そのまま2時間30分間維持することにより重合工程を完了し、アクリル酸系重合体(A−7)のメタノール/NMP溶液を得た。なお、重合時の単量体濃度は36%であった。ガスクロマトグラフィー測定の結果、未反応単量体(AA)の残存量は、重合体溶液の総量に対して1.18%であった。
(脱溶剤工程)
上記の重合工程を経て得られたポリアクリル酸(A−7)のメタノール/NMP溶液にNMP298gを加えた後、フラスコを95℃の湯浴に浸漬し、10kPa(絶対圧)の減圧条件下にて脱溶剤を行い、メタノールを留去した。メタノールの留出が完全に見られなくなった時点を終点とし、固形分濃度が20%であるアクリル酸系重合体(A−7)のNMP溶液を得た。メタノールの留出開始から留出完了までに要した時間は45分間であり、短時間で効率良く脱溶剤工程を完了した。サンプリングを行い、165℃、減圧下で乾燥を行い、固形分を算出した結果、24.4%であった。固形分が20%となるようNMPを添加し、アクリル酸系重合体(A−7)のNMP溶液を得た。
脱溶剤前後のアクリル酸系重合体(A−7)の溶液の質量差から、留去した溶剤分は178gと算出された。ガスクロマトグラフィー測定の結果、未反応単量体(AA)の残存量は、重合体溶液の総量に対して0.44%であった。また、GPC測定の結果、数平均分子量(Mn)は69,000、重量平均分子量(Mw)は254,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.68と算出された。
Figure 0006508472
表1において用いた化合物の詳細を以下に示す。
AA:アクリル酸
BA:アクリル酸ブチル
MeOH:メタノール
EtOH:エタノール
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
実施例1〜12では、いずれもNMPを含む非水系溶剤中でアクリル酸を含む単量体の重合を行い、アクリル酸系重合体溶液が得られている。一般的な連鎖移動剤を用いることなく適度な分子量のアクリル酸系重合体を得ることができるため、得られた重合体溶液中には連鎖移動剤に由来する不純物が混入する虞がない。また、重合溶剤に水を含まないことから、水分の混入も抑制される。
各実施例とも短時間で効率良く脱溶剤を行うことができ、本発明の製造方法が生産性の点からも良好であることが確認された。
重合時の単量体濃度に着目すると、NMP/メタノール比が80/20である混合溶剤を重合溶剤とした実施例2及び実施例8〜10の結果から、重合時の単量体濃度を25質量%以上とすることにより、残存モノマー量が顕著に低減される結果が示された。
本発明の製造方法によれば、アクリル酸系重合体の有機溶剤溶液を簡便に効率良く製造することができ、従来の方法に比較して生産コストを低減することが可能となる。
また、水分や連鎖移動剤に由来する不純物等の混入を防止することができるため、本発明の製造方法により得られたアクリル酸系重合体溶液は、例えばリチウムイオン二次電池のバインダー用途に好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. N−メチル−2−ピロリドン及び炭素数1〜3のアルコールを含有し、N−メチル−2−ピロリドンを1質量%以上含む非水系溶剤中、アクリル酸を50質量%以上含む単量体の溶液重合を行う重合工程を備えることを特徴とするアクリル酸系重合体溶液の製造方法。
  2. 重合時の単量体濃度が25質量%以上である請求項に記載のアクリル酸系重合体溶液の製造方法。
  3. 前記重合工程の後、さらに脱溶剤工程を備える請求項1又は2に記載のアクリル酸系重合体溶液の製造方法。
  4. 前記アクリル酸系重合体の重量平均分子量が10000〜500000である請求項1
    のいずれか1項に記載のアクリル酸系重合体溶液の製造方法。
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