ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)道路勾配取得システムの構成:
(2)道路勾配取得処理:
(3)他の実施形態:
(1)道路勾配取得システムの構成:
図1は、本発明にかかる道路勾配取得システム10の構成を示すブロック図である。道路勾配取得システム10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20、記録媒体30を備えており、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムとして道路勾配取得プログラム21を実行可能である。道路勾配取得プログラム21は、車両の現在位置を取得し、車両の現在位置の勾配を特定する機能を制御部20に実行させる。
道路勾配取得システム10が使用される車両は、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43と変速部44と制動部45とを備えている。GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための信号を出力する。車速センサ42は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ43は、車両の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、車両の向きに対応した信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の進行方向を取得する。制御部20は、車速センサ42およびジャイロセンサ43等の出力信号に基づいて車両の走行軌跡を特定することで車両の現在位置を取得する。GPS受信部41の出力信号は、車速センサ42およびジャイロセンサ43等から特定される車両の現在位置を補正するなどのために利用される。
変速部44は、前進について計6速、後進について計1速等の複数の変速段を有する有段のトルクコンバータを備えており、各変速段に対応した変速比で回転数を調整しながらエンジンの駆動力を車両の車輪に伝達することができる。制御部20は図示しないインタフェースを介して変速段を切り替えるための制御信号を出力し、変速部44は当該制御信号を取得して変速段を切り替えることが可能である。従って、制御部20は、変速部44に制御信号を出力して変速段を変化させ、車両に対してエンジンブレーキを作用させることによって減速させることができる。なお、本実施形態においては、前進1速〜前進6速のように変速段がハイギアになるにつれて変速比が小さくなるように構成されている。
制動部45は、車両の車輪に搭載されたブレーキによる減速の程度を調整するホイールシリンダの圧力を制御する装置を含み、制御部20は当該制動部45に対して制御信号を出力してホイールシリンダの圧力を調整させることが可能である。従って、制御部20が当該制動部45に対して制御信号を出力してホイールシリンダの圧力を増加させると、ブレーキによる制動力が増加し、車両が減速される。
以上のように、制御部20は、変速部44、制動部45に対して制御信号を出力することによって車両を減速させることができる。本実施形態において、制御部20は、図示しない減速制御プログラムを実行することが可能であり、当該減速制御プログラムの処理により、制御部20は、勾配路において過度の車速とならないように車両の速度を目標速度以下に減速させる。ここで、目標速度は道路勾配に基づいて決定される。例えば、制御部20は、下り勾配で車両に作用する加速度に基づいて、当該加速度による加速が行われても過度の速度にならないように下り勾配の入口における目標速度を決定する。そして、制御部20は、例えば、下り勾配の入口前から等加速度直線運動によって車両を減速させ、下り勾配の入口において車速が目標速度となるように減速を行う等して減速制御を行う。
記録媒体30には、予め地図情報30aが記録されている。地図情報30aは、車両が走行する道路上の交差点に設定されたノードの位置を示すノードデータ,ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点データ,ノード同士の連結を示すリンクデータ,道路の周辺に存在する施設を示す施設データ等を含んでいる。また、本実施形態において地図情報30aには、道路上の既定の距離毎の標高を示す標高データが含まれている。当該標高データは、道路上の各位置について、当該位置の標高値を示している。なお、標高データは、ノードや形状補間点の標高を示すように定義されても良い。
本実施形態において制御部20は、上述のような減速制御を行うために、道路勾配取得プログラム21により車両の現在位置の勾配を特定する処理を実行する。道路勾配取得プログラム21は、対象位置取得部21aと分岐判定部21bと参照道路取得部21cと参照位置取得部21dと勾配取得部21eとを備えている。
対象位置取得部21aは、勾配を取得する対象の位置である対象位置を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。本実施形態において、制御部20は、車両の現在位置を対象位置として取得する。すなわち、制御部20は、地図情報30aおよびGPS受信部41、車速センサ42、ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて車両の現在位置を取得し、当該現在位置を対象位置と見なす。
分岐判定部21bは、対象位置が存在する対象道路に対して複数の接続道路が接続する分岐が、対象位置から予め決められた距離(既定距離とも呼ぶ)以内に存在するか否かを判定する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、対象位置が存在する道路を対象道路と見なし、対象道路に沿って対象位置の前方および後方の既定距離の範囲内にノードが存在するか否かを地図情報30aに基づいて判定する。そして、対象位置の前方および後方の既定距離の範囲内にノードが存在する場合、制御部20は、対象位置から既定距離以内に、対象道路に対して複数の接続道路が接続する分岐が存在すると判定する。
また、制御部20は、当該ノードが示す分岐に対して接続する道路のうち、対象道路以外の道路を接続道路とみなす。なお、本実施形態において、制御部20は、交差点が道路の端点であると見なしている。従って、例えば、図3Bに示すように、対象位置Cが対象道路R1上に存在する状況(図3Bは上方から下方を眺めた図)において、対象位置Cの後方に分岐Iが存在する場合、道路R2,R3は接続道路である。
参照道路取得部21cは、対象位置の勾配を取得する際に参照すべき参照道路を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。本実施形態において、制御部20は、対象道路自体または接続道路から標高を参照するための参照道路を選択する。すなわち、分岐が存在しないのであれば、制御部20は、対象道路を参照道路と見なす。一方、対象位置から既定距離以内に分岐が存在するのであれば、制御部20は、分岐に接続された接続道路から参照道路を選択する。ここで、制御部20は、対象道路の勾配を決定する道路として最も適した道路を複数の接続道路の中から選択して参照道路とする。
すなわち、対象位置の前後の標高に基づいて勾配を取得する構成においては、標高を示す情報の誤差の影響を低減するために、対象位置から既定距離離れた参照位置の標高を参照することが望ましい。地図情報30aに含められる標高データから誤差を排除することは現実的に不可能であるため、標高データが示す語標高にある程度の誤差は含まれると見なすべきである。従って、2カ所の参照位置の標高からその間の対象位置の勾配を内挿する場合、過度に参照位置が近いと、誤差の影響によって勾配が極めて不正確な値となる。
例えば、図3Aは、下り勾配を模式的に示す図であり、横方向で水平位置の変化を模式的に示し、縦方向で標高(垂直位置)の変化を模式的に示している。このような勾配において、対象位置が位置Piであり標高の誤差が±dである場合、参照位置が例えば、位置Pr3,r4のように過度に対象位置Piに近いと、誤差によっては勾配の符号が反転した状態で勾配が取得され得る。従って、このような勾配の誤算出を防止するため、参照位置は対象位置から前後に既定距離Lの位置Pr1,Pr2とされる。このような構成であれば、勾配が0(水平)の状態から離れるほど正確に対象位置の勾配を算出することが可能になる。
ところが、十分に長い距離を既定距離とすると、対象位置から既定距離の範囲に分岐が含まれることにより、参照位置の候補が複数個になってしまう場合がある。そこで、参照道路取得部21cは、対象道路の推定勾配に最も近い勾配の接続道路を参照道路として選択する。このため、制御部20は、地図情報30aに基づいて対象道路の推定勾配と接続道路の推定勾配とを取得し、対象道路の推定勾配に最も近い推定勾配となっている接続道路を選択する。この構成によれば、より正確に対象道路の勾配を取得可能な接続道路を複数の接続道路から選択することができる。
なお、推定勾配は、種々の構成によって特定可能であり、対象道路の推定勾配を特定する際に制御部20は、特定の規則によって対象道路上の推定区間および接続道路上の推定区間を特定し、各推定区間の標高に基づいて各道路の推定勾配を取得する。この構成によれば、簡易に推定勾配の取得対象を決定することができる。
参照位置取得部21dは、対象位置から前後に既定距離離れた参照道路上の参照位置を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、地図情報30aに基づいて対象位置を起点として道路沿いに既定距離だけ離れた位置を参照道路上で特定し、参照位置として取得する。例えば、対象道路の前方に分岐が存在しない場合、対象道路と参照道路とは一致するため、制御部20は、地図情報30aを参照し、対象位置から対象道路沿いに既定距離だけ離れた位置を参照位置として取得する。対象道路の後方に分岐が存在する場合、制御部20は、地図情報30aを参照し、対象位置から対象道路および参照道路(選択された接続道路)沿いに既定距離だけ離れた位置を参照位置として取得する。なお、既定距離は、標高を示す情報の誤差の影響を低減できる値として予め決められれば良く、本実施形態においては、固定値(例えば、50m等)である。
勾配取得部21eは、参照位置の標高に基づいて対象位置の勾配を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、参照位置取得部21dの処理によって取得された参照位置の位置および標高を地図情報30aに基づいて特定する。そして、制御部20は、各参照位置の標高差と、各参照位置の間の水平距離とに基づいて、標高差/水平距離を勾配値とする。
以上のような構成の本実施形態によれば、対象位置から前後に既定距離離れた参照道路上の参照位置の標高に基づいて対象位置の勾配を取得することができる。そして、この構成において、対象位置から既定距離以内に分岐が存在する場合であっても、対象道路の推定勾配に最も近い勾配の接続道路を参照道路として参照位置が特定される。従って、参照位置に基づいて対象位置の勾配を正確に算出することが可能になる。
(2)道路勾配取得処理:
次に、道路勾配取得処理を詳細に説明する。図2は、道路勾配取得処理を示すフローチャートであり、本実施形態において制御部20は、予め決められた開始タイミング(例えば、100ms毎のタイミング)で道路勾配取得処理を実行する。道路勾配取得処理において、制御部20は、対象位置取得部21aの処理により、現在位置を対象位置として取得する(ステップS100)。すなわち、制御部20は、地図情報30aおよびGPS受信部41、車速センサ42、ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて車両の現在位置を取得し、当該現在位置を対象位置と見なす。例えば、図3Bに示す例において、道路R1上の位置Cに車両が存在する場合、制御部20は、当該位置Cを対象位置として取得する。
次に、制御部20は、分岐判定部21bの処理により、対象位置から前後に既定距離の位置を特定する(ステップS105)。本実施形態において、制御部20は、対象位置が存在する対象道路沿いで、対象位置から前後に既定距離の位置を特定する処理を行う。従って、対象位置から既定距離の位置に達する前の位置に分岐が存在する場合、当該位置は不明となる。
例えば、図3Bに示す例において制御部20は、地図情報30aが示す対象位置Cの前方の情報を参照し、対象道路R1上で対象位置Cの前方に既定距離Lの範囲に分岐が存在するか否かを判定する。図3Bに示す例においては当該範囲に分岐が存在しないため、制御部20は、分岐が存在しないと判定する。この場合、制御部20は、対象道路R1上で対象位置Cの前方に既定距離Lの位置P1を特定する。また、制御部20は、地図情報30aが示す対象位置Cの後方の情報を参照し、対象道路R1上で対象位置Cの後方に既定距離Lの範囲に分岐が存在するか否かを判定する。図3Bに示す例においては当該範囲に分岐が存在するため、制御部20は、分岐が存在すると判定する。この場合、制御部20は、対象位置Cの後方に既定距離Lの位置が不明であるとみなす。
次に、制御部20は、分岐判定部21bの処理により、既定距離以内に分岐が存在するか否かを判定する(ステップS110)。すなわち、制御部20は、対象位置から既定距離の位置に達する前の位置に分岐が存在する場合と存在しない場合とで異なる手法で参照道路を特定する。ステップS110において、既定距離以内に分岐が存在すると判定された場合、制御部20は、参照道路取得部21cの処理により、接続道路を特定する(ステップS115)。すなわち、制御部20は、地図情報30aを参照し、ステップS105,S110の処理によって特定された分岐に接続される道路を特定する。そして、分岐に接続された道路の中から対象道路を除外した道路を接続道路として特定する。
例えば、図3Bに示す例においては、対象位置Cの後方に分岐Iが存在するため、制御部20は、地図情報30aに基づいて当該分岐Iに接続する道路R1,R2,R3を特定する。当該例において、道路R1は対象道路であるため、制御部20は、道路R2,R3を接続道路と見なす。
次に、制御部20は、参照道路取得部21cの処理により、接続道路の推定勾配を取得する(ステップS120)。本実施形態において、接続道路の推定勾配は、対象位置から既定距離の位置と分岐との間の標高を示す情報に基づいて算出される。そこで、制御部20は、地図情報30aを参照し、ステップS105,S110の処理によって特定された分岐の位置を特定する。さらに、制御部20は、分岐に接続する接続道路についての地図情報30aを参照し、接続道路上であり、かつ、対象位置から既定距離である位置を特定する。そして、制御部20は、地図情報30aを参照し、当該位置と分岐との間の区間の標高を示す情報(例えば、当該区間内の2カ所の位置)に基づいて、当該区間の勾配を取得する。制御部20は、当該処理を各接続道路について行うことにより、各接続道路の推定勾配を取得する。
次に、制御部20は、対象道路の推定勾配を取得するための処理を行う。このために、制御部20は、対象道路上で推定勾配を推定するための推定区間を特定する。本実施形態においては、推定区間の長さを対象位置に依存させる。推定区間の長さを対象位置に依存させるための構成としては、種々の構成が採用可能であるが、本実施形態において制御部20は、推定区間の長さを分岐と対象位置との関係に基づいて変化させる。具体的には、本実施形態においては、分岐から対象位置までの区間の長さを評価するための閾値が予め決められている。
そこで、当該評価を行うため、制御部20は、参照道路取得部21cの処理により、対象位置と分岐との距離を取得する(ステップS125)。すなわち、制御部20は、地図情報30aに基づいて、ステップS100で取得した対象位置と、ステップS105,S110で取得した分岐の位置とを特定し、両者の間の距離を取得する。例えば、図3Bに示す例において制御部20は、距離Lsを取得する。
次に、制御部20は、参照道路取得部21cの処理により、対象位置と分岐との距離が閾値より大きいか否かを判定する(ステップS130)。ステップS130において、対象位置と分岐との距離が閾値より大きいと判定された場合、制御部20は、対象位置と分岐との間の区間を推定区間として取得する(ステップS135)。一方、ステップS130において、対象位置と分岐との距離が閾値より大きいと判定されない場合、制御部20は、対象位置と分岐との間の区間を分岐の逆側に延長した区間を推定区間として取得する(ステップS140)。
すなわち、推定区間は、分岐に接続する接続道路の勾配を評価するために設定される区間である。従って、推定区間は推定区間の推定勾配に近い接続道路を特定できるように設定されることが好ましい。そこで、本実施形態において制御部20は、対象位置と分岐との距離が閾値より大きい場合に分岐から対象位置までの区間を推定区間とする。一方、対象位置と分岐との距離が閾値以下である場合、標高の誤差による勾配の取得精度の低下等の影響を受けやすく、分岐から対象位置までの区間を推定区間とすることは適切ではない。そこで、制御部20は、分岐から対象位置までの区間を分岐の逆側に延長した区間を推定区間として取得する。当該延長の距離は予め決められていれば良く、本実施形態においては、上述の既定距離の1/2の距離である。
例えば、図3Bに示す例において、分岐から対象位置までの距離Lsが閾値より大きい場合、推定区間は分岐から対象位置までの区間である。分岐から対象位置までの距離Lsが閾値以下である場合、推定区間は分岐と、対象位置から前方にL/2の距離の位置との間の区間である。以上の構成とすれば、対象位置の推定勾配を評価するために十分な長さの推定区間を設定することが可能である。以上の構成によれば、分岐と対象位置との関係に基づいて適切な長さまたは位置となるように調整して推定区間を取得することができる。
いずれにしても、次に、制御部20は、参照道路取得部21cの処理により、対象道路の推定勾配を取得する(ステップS145)。すなわち、制御部20は、地図情報30aを参照し、推定区間の標高を示す情報(例えば、当該区間内の最も離れた2カ所の位置の標高情報)に基づいて、当該推定区間の勾配を取得する。次に、制御部20は、参照道路取得部21cの処理により、対象道路の推定勾配に最も近い推定勾配の接続道路を取得する(ステップS150)。すなわち、制御部20は、ステップS145で取得された対象道路の推定勾配と、ステップS120で取得された接続道路の推定勾配とを比較し、対象道路の推定勾配に最も近い推定勾配の接続道路を取得する。
例えば、図3Bに示す例において、制御部20は、接続道路R2および接続道路R3の推定勾配と対象道路R1の推定勾配とを比較し、対象道路R1の推定勾配に近い推定勾配の接続道路を取得する。次に、制御部20は、参照道路取得部21cの処理により、接続道路を参照道路に設定する(ステップS155)。すなわち、制御部20は、ステップS150で取得された接続道路を参照道路と見なす。なお、車両の前方または後方のいずれか一方に分岐が存在しない場合、制御部20は、分岐が存在しない方について、対象道路が参照道路であると見なす。例えば、図3Bに示す例において、分岐Iが存在しない前方の参照道路は対象道路R1である。
一方、ステップS110において、既定距離以内に分岐が存在すると判定されない場合、制御部20は、参照道路取得部21cの処理により、対象道路を参照道路に設定する(ステップS160)。すなわち、この場合、対象道路の前後に既定距離の範囲において当該対象道路上に分岐が存在しない。そこで、制御部20は、対象道路を参照道路と見なす。
ステップS155またはS160が実行されると、制御部20は、参照位置取得部21dの処理により、参照道路上の参照位置を取得する(ステップS165)。すなわち、制御部20は、地図情報30aを参照し、対象位置から既定距離の位置を参照道路上で特定し、当該位置を参照位置として取得する。例えば、図3Bに示す例において、車両の前方には分岐が存在しないため、対象道路R1上の位置P1が参照位置となる。図3Bに示す例において、接続道路R2が参照道路の場合、対象位置Cから距離Lの位置P2が参照位置となり、接続道路R3が参照道路の場合、対象位置Cから距離Lの位置P3が参照位置となる。
次に、制御部20は、勾配取得部21eの処理により、参照位置の標高に基づいて対象道路の勾配を取得する(ステップS170)。すなわち、制御部20は、地図情報30aに基づいて、参照位置の標高を取得する(参照位置自体の標高が地図情報30aに存在しなければ、補間等によって参照位置の標高を取得する)。また、制御部20は、地図情報30aに基づいて、参照位置の間の水平距離を取得する。そして、制御部20は、参照位置の標高差/参照位置の水平距離を勾配値として取得する。
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、対象道路の推定勾配に最も近い勾配の接続道路を特定し、当該接続道路の勾配を参照して対象道路の勾配を取得する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、道路勾配取得システム10は車両に搭載された端末であってもよいし、車両の利用者が携帯する端末であってもよい。また、対象位置取得部21a、分岐判定部21b、参照道路取得部21c、参照位置取得部21d、勾配取得部21eの機能の少なくとも一部が上述の実施形態と異なる制御主体で実現されても良い。
また、一部の機能が省略されても良い。さらに、勾配の情報に基づいて実行される制御は、上述の減速制御に限定されない。例えば、加速制御、サスペンションの制御、オートクルーズ制御、ヘッドライトの方向制御等に勾配の情報が利用されても良い。
対象位置取得部は、勾配を取得する対象の位置である対象位置を取得することができればよい。対象位置は、種々の手法で決定されて良く、車両等の移動体の位置変化に伴って対象位置が変化するような構成であっても良いし、一定距離毎の位置など、予め決められた規則に基づいて対象位置が決定されても良い。なお、前者においては、移動体の位置自体が対象位置であっても良いし移動体の位置に基づいて対象位置(例えば、前後の位置等)が決定されても良い。
分岐判定部は、対象位置が存在する対象道路に対して複数の接続道路が接続する分岐が、対象位置から予め決められた距離以内に存在するか否かを判定することができればよい。すなわち、分岐判定部は、道路を示す情報(地図情報等)に基づいて道路の位置および道路ネットワークを再現することが可能であり、当該情報に基づいて任意の道路の位置、各道路上の分岐および分岐に接続する接続道路を特定することが可能である。
従って、分岐判定部は、当該情報に基づいて対象位置と分岐の位置を特定すれば、対象位置を起点として予め決められた距離以内に分岐が存在するか否かを判定することが可能である。なお、対象道路に分岐が存在する場合、当該分岐からみて対象道路と逆側には接続道路が接続される。このような道路は種々の道路が想定され、例えば、3以上の道路区間が1カ所の分岐(交差点)で接続する道路や、本線に対して1以上の道路区間が接続される道路等が想定される。
参照道路取得部は、分岐が存在する場合、対象道路の推定勾配に最も近い勾配の接続道路を参照道路とし、分岐が存在しない場合、対象道路を参照道路として取得することができればよい。すなわち、参照道路取得部は、対象位置の勾配を取得する際に参照すべき参照道路を取得する。
ここで、参照道路は、対象道路自体または対象道路から連続している道路であって、対象道路の勾配を決定するための標高を参照するための道路である。そして、対象位置から予め決められた距離以内に分岐が存在するのであれば、参照道路取得部は、対象道路の勾配を決定する道路として最も適した道路を複数の接続道路の中から選択して参照道路とする。すなわち、対象位置の前後の標高に基づいて勾配を取得する構成においては、標高を示す情報の誤差の影響を低減するために、対象位置から予め決められた距離離れた参照位置の標高を参照することが望ましい。
例えば、対象位置の実際の勾配が単位水平距離当たり1mの勾配であり、標高の誤差が垂直方向に±1mである場合において、対象位置の前後に水平距離で1m離れた参照位置の標高を参照した場合、標高の誤差により勾配が逆勾配になる場合もあり得る。従って、このような勾配の誤算出を防止するため、参照位置は対象位置から前後に予め決められた距離の位置とされる。このような構成であれば、勾配が0(水平)の状態から離れるほど正確に対象位置の勾配を算出することが可能になる。
このような構成においては、標高の誤差の影響を低減するために、対象位置から予め決められた距離離れた位置を参照位置とする必要があるものの、参照位置が対象位置から離れていることに起因して、対象位置の後方(または前方)において参照位置の候補が複数個になってしまう場合がある。この場合、複数個の参照位置の標高が一致するとは限らないため、参照位置の選択によっては対象道路の勾配を不正確に算出してしまう。そこで、参照道路取得部は、対象道路の推定勾配に最も近い勾配の接続道路を参照道路として選択する構成を採用しており、この構成によれば、より正確に対象道路の勾配を取得可能な接続道路を複数の接続道路から選択することができる。
対象道路の推定勾配は、対象道路の勾配として推定される値であれば良い。すなわち、推定勾配は、勾配取得部による勾配の取得が行われる前の段階で特定される値であるため、勾配取得部によって取得された勾配ではないという意味で推定された値である。推定勾配の取得法は、勾配取得部と異なる手法であれば良く、勾配取得部による勾配の取得法よりも簡易な手法であることが好ましい。例えば、対象道路に存在する少なくとも2カ所の位置の標高に基づいて勾配を取得する構成や、車両等の移動体に備えられたセンサの出力値等に基づいて勾配を取得する構成等を採用可能である。
参照位置取得部は、対象位置から前後に予め決められた距離離れた参照道路上の参照位置を取得することができればよい。すなわち、参照位置取得部は、道路を示す情報(地図情報等)に基づいて対象位置を起点として道路沿いに予め決められた距離だけ離れた位置を参照道路上で特定し、参照位置として取得することができればよい。予め決められた距離は、標高を示す情報の誤差の影響を低減できる値として予め決められれば良く、可変値であっても良いし、固定値であっても良い。また、予め決められた距離は、対象位置の前後で同一であっても良いし、異なる値であっても良い。
勾配取得部は、参照位置の標高に基づいて対象位置の勾配を取得することができればよい。すなわち、対象位置の前後に少なくとも1カ所ずつ参照位置が特定されるため、勾配取得部は、道路を示す情報(地図情報等)に基づいて各参照位置の標高を特定し、当該標高に基づいて、参照位置の間にある対象位置の勾配を特定することができればよい。例えば、各参照位置の標高差と、各参照位置の間の水平距離とに基づいて、標高差/水平距離を勾配値とする構成等を採用可能である。むろん、勾配は他の単位、例えば、角度によって特定されても良い。
推定勾配は、種々の構成によって特定可能であり、例えば、対象道路上の推定区間の標高に基づいて取得される構成であっても良い。すなわち、特定の規則によって推定区間を特定できるように構成されており、参照道路取得部は、任意の対象位置について当該推定区間を特定し、当該推定区間の標高に基づいて勾配を取得し、推定勾配とする。なお、推定区間は対象道路上に存在するため、分岐よりも対象位置側に存在する。この構成によれば、簡易に推定勾配の取得対象を決定することができる。
推定区間を規定するための特定の規則は種々の規則を採用可能であり、固定長の区間を推定区間としても良いし可変長の区間を推定区間としても良い。また、推定区間の長さおよび位置の少なくとも一方が対象位置に依存するように構成されていても良い。この構成によれば、対象位置に合わせて推定区間を設定することができる。なお、推定区間の位置が対象位置に依存する構成としては、種々の構成を採用可能であり、例えば、対象位置に基づいて推定区間の端点が変化する構成等が挙げられる。
さらに、推定区間の長さおよび位置の少なくとも一方は、分岐と対象位置との関係に基づいて変化してもよい。この構成によれば、分岐と対象位置との関係に基づいて適切な長さまたは位置となるように調整して推定区間を取得することができる。分岐と対象位置との関係に基づいて推定区間の長さおよび位置の少なくとも一方が変化する例としては、分岐から対象位置までの区間の長さに基づいて推定区間の長さおよび位置の少なくとも一方が変化するような構成等を採用可能である。すなわち、分岐と対象位置とが十分離れている場合と離れていない場合とで推定区間の長さおよび位置の少なくとも一方を変化させる構成を採用してもよい。
より具体的な例としては、例えば、分岐から対象位置までの区間の長さが閾値よりも大きい場合、分岐から対象位置までの区間が推定区間であり、分岐から対象位置までの区間の長さが閾値以下である場合、分岐から対象位置までの区間を分岐の逆側に延長した区間が推定区間である構成を採用してもよい。すなわち、推定区間は、分岐に接続した接続道路の勾配を評価するために設定される。従って、推定区間は推定区間の推定勾配に近い接続道路を特定できるように設定されることが好ましい。
そこで、分岐から対象位置までの区間を推定区間とすれば、推定区間と接続道路とが連続して存在することになり、推定区間の推定勾配に近い接続道路を特定できるように推定区間を対象道路上に設定することができる。ただし、この構成であっても、分岐から対象位置までの区間が過度に短い場合、標高の誤差による勾配の取得精度の低下等の影響を受けやすく、分岐から対象位置までの区間を推定区間とすることは適切ではない。このため、分岐から対象位置までの区間が過度に短いか否かを評価するための閾値を予め決定しておき、分岐から対象位置までの区間の長さが当該閾値よりも大きいか否かで参照道路取得部が推定区間を変化させる構成とすれば、対象位置の推定勾配を評価するために十分な長さの推定区間を設定することが可能である。
さらに、分岐が存在する場合に、対象道路の推定勾配に最も近い勾配の接続道路を特定し、当該接続道路の勾配を参照して対象道路の勾配を取得する手法は、この処理を行う方法やプログラムとしても適用可能である。また、以上のような道路勾配取得システム、方法、プログラムは、単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置として実現される場合もある。また、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあれば、車両に搭載されない各部と連携して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、道路勾配取得システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。