JP2016206976A - 車両の運転支援制御のための先行車軌跡算出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 車両の運転支援制御としての先行車追跡制御のために先行車の走行軌跡の算出する構成に於いて、演算負荷を過大にせずに、走行軌跡の算出精度の低下を防止できるように、先行車の位置情報データのバッファリングの範囲とタイミングを設定すること。
【解決手段】 本発明の先行車走行軌跡算出装置は、先行車の位置情報データの誤差に基づいて、先行車走行軌跡算出のために保存され利用される先行車の位置情報データの距離の範囲(バッファリング範囲D)を決定し、そのバッファリング範囲Dに基づいて決定された先行車の位置情報データの保存時期(バッファリングのタイミング)に先行車の位置情報データを保存し、保存された先行車の位置情報データのうちのバッファリング範囲D内の位置情報データを用いて、先行車の走行軌跡を算出する。
【選択図】 図4
【解決手段】 本発明の先行車走行軌跡算出装置は、先行車の位置情報データの誤差に基づいて、先行車走行軌跡算出のために保存され利用される先行車の位置情報データの距離の範囲(バッファリング範囲D)を決定し、そのバッファリング範囲Dに基づいて決定された先行車の位置情報データの保存時期(バッファリングのタイミング)に先行車の位置情報データを保存し、保存された先行車の位置情報データのうちのバッファリング範囲D内の位置情報データを用いて、先行車の走行軌跡を算出する。
【選択図】 図4
Description
本発明は、自動車等の車両の運転支援制御技術に係り、より詳細には、運転支援として、先行車に追跡するように車両の走行制御を行うために、先行車の軌跡を算出するための装置に係る。
自動車等の車両の運転支援制御技術の分野に於いて、車載のレーダーセンサ、ビデオカメラ、GPS装置などの情報を用いて検出された先行車(自車の前方を走行する車両)の位置、速度又は走行軌跡に基づいて、先行車に追従するように自車の走行を制御する手法(先行車追従制御)が提案されている。例えば、特許文献1に於いては、先行車までの距離と相対速度とに基づいて先行車に追従できるように自車の目標駆動力を決定する構成が開示されている。特許文献2に於いては、走行車線のマークを検出して、その検出された走行車線マークによって決定される車線を追跡するように自車の横方向位置を制御するとともに、先行車との車間距離を調整するように自車の前後方向位置を制御し、先行車の軌跡に追従する構成が記載されている。更に、特許文献3には、先行車の相対位置を検出して、先行車の走行軌跡を算出して、その先行車の走行軌跡に追従するよう自車を制御する構成が提案されている。なお、特許文献3の場合には、同時に、自車と異なる車線を走行する並走車の相対位置の検出と並走車の走行軌跡の算出が為され、先行車の走行軌跡に対する追従制御は、先行車の走行軌跡と並走車の走行軌跡とが並行であるときに実行される。
上記の如き先行車に追従するように自車の走行制御を行う先行車追従制御のうち、特に、先行車の位置情報を用いて算出された先行車の走行軌跡に追従する制御の場合、移動体である車両に搭載される演算装置(コンピュータ)の演算処理能力とそのメモリのデータ蓄積量には限界があるので、車両(自車)の走行中に於ける先行車の走行軌跡の算出に際しては、典型的には、車載のレーダーセンサ、ビデオカメラ、GPS装置などから検出された先行車の位置の座標値を表す位置情報データが、間歇的に、メモリに一時的に保存(バッファリング)され、それらのバッファリングされたデータの座標値に対して曲線フィッティングなどを実行することにより、先行車の走行軌跡を表す曲線が算出される。かかる先行車の走行軌跡の曲線の算出について、その算出精度は、先行車の座標値のデータのバッファリングの範囲とタイミングによって影響される。
具体的には、まず、バッファリングの範囲、即ち、走行軌跡の曲線の算出のために保存されるデータの座標値の範囲について、図6(A)に示されている如く、バッファリングされるデータの座標値の範囲が狭過ぎる場合には、走行軌跡の算出精度に対する座標値の誤差の影響が大きくなり、一点でも誤差の大きなデータが含まれるだけで、算出された走行軌跡の誤差も大きくなってしまう。一方、バッファリングされるデータの座標値の範囲が広い場合にも、自車前後に於ける先行車のデータの座標値の範囲の大きさの割合によって、走行軌跡の誤差が大きくなる場合がある。例えば、図6(B)に示されている如く、先行車がカーブに進入する際の走行軌跡の算出に利用される座標値のデータに、自車の後ろ側、即ち、直進走行時の座標値のデータが多く含まれていると、算出された走行軌跡は、カーブ入口で、実際の走行軌跡よりも旋回外方へ膨らんだ状態となる場合がある。これは、過去の位置情報を用いた走行軌跡の算出に於いて、相対的に古い位置情報(特に、現在の自車の位置よりも後方の位置情報)が得られた走行状況が、その後の相対的に新しい位置情報(現在の自車の位置よりも前方の位置情報)が得られた走行状況と異なっているにもかかわらず、そのまま、先行車の走行軌跡の算出に利用されてしまっていることに起因する。即ち、この場合の算出誤差は、古すぎる位置情報を走行軌跡の算出に使用してしまっていることに起因する。従って、バッファリングの範囲は、先行車の走行軌跡の算出に利用される各々の位置情報データの誤差の影響が過大にならないように、且つ、古過ぎる位置情報データを含まないように適切に設定することが望ましい。
また、座標値のデータのバッファリングのタイミング、即ち、先行車の走行軌跡の算出のために保存される座標値のデータの間隔について、バッファリングするタイミングが粗く、データの間隔が長過ぎると、走行軌跡の算出に利用するデータ数が少なくなるので、その算出精度が低下する場合があり、バッファリングするタイミングが細か過ぎると、例えば、渋滞時などに、データの間隔が狭くなり、走行軌跡の算出に利用するデータ数が不要に多くなるので、走行軌跡算出の演算負荷が肥大化することとなり得る。従って、バッファリングのタイミングは、走行軌跡の算出に利用されるデータ数が、演算負荷と算出精度との双方が許容される数となるように適切に設定されるべきである。
更に、バッファリングの範囲の設定とバッファリングのタイミングの設定とは、走行軌跡の算出精度と演算負荷に於いて相互に影響することは理解されるべきである。バッファリングの範囲が広がれば、バッファリングのタイミングの間隔を広げないと、演算負荷が増大することとなるが、その場合、算出精度は悪化することとなる。一方、バッファリングの範囲が狭くした場合には、バッファリングのタイミングの間隔を狭くしないと、データ数が少なくなるため、算出精度が低下するが、必要以上にバッファリングのタイミングの間隔を狭くすると、不要に演算負荷を増大させてしまうこととなり得る。
従って、先行車の走行軌跡の算出のために、先行車の位置情報データをバッファリングする場合には、その範囲を、先行車の位置情報の精度を考慮しつつ、古過ぎる位置情報データを含まないような大きさに設定することが可能であるとともに、その範囲内にてデータ数が適切な数となるようにタイミングを設定可能であることが好ましい。この点に関し、逐次的に検出され取得される先行車の位置情報データの各々の精度は、走行状況によって変化する。例えば、自車と先行車との距離が大きくなるほど、先行車の位置情報データの精度は低下する。即ち、バッファリングの範囲とタイミングとは、走行状況に応じて可変であることが好ましいこととなる。
かくして、本発明の一つの課題は、自動車等の車両の運転支援制御として、先行車追跡制御を実行するために、先行車の走行軌跡の算出する構成に於いて、演算負荷を過大にせずに、走行軌跡の算出精度の低下を防止できるように、先行車の走行軌跡の算出のための先行車の位置情報データのバッファリングの範囲とタイミングを適切に設定できる構成を提供することである。
また、本発明のもう一つの課題は、上記の如き先行車の走行軌跡算出に於いて、先行車の走行軌跡の算出のための先行車の位置情報データのバッファリングの範囲とタイミングを車両の走行状況に応じて適切に設定できるようにすることである。
本発明によれば、上記の課題は、先行車の走行軌跡を算出する先行車走行軌跡算出装置であって、先行車の位置情報データを取得する取得手段と、先行車の位置情報データの誤差に基づいて、先行車の走行軌跡の算出に利用する先行車の位置情報データの距離の範囲を決定する位置情報データ距離範囲決定手段と、保存する先行車の位置情報データの時期を、前記の決定された位置情報データの距離の範囲に基づいて決定する保存時期決定手段と、保存時期決定手段により決定された時期の先行車の位置情報データを保存する保存手段と、保存された先行車の位置情報データのうちの先行車の位置情報データの距離の範囲内の位置情報データを用いて、先行車の走行軌跡を算出する先行車走行軌跡算出手段とを含む装置によって達成される。ここに於いて、「先行車の位置情報データ」とは、例えば、車載のレーダーセンサ、ビデオカメラ、GPS装置などの情報を用いて検出された先行車の位置を表すデータであってよく、典型的には、自車に設定された座標系に於ける先行車の位置の座標値を表すデータであってよい。「先行車の位置情報データ」は、車両の走行中に逐次的に検出され取得される。「位置情報データの誤差」とは、先行車の位置の検出の際の誤差であり、例えば、誤差は、自車から先行車までの車間距離によって変化する。「先行車の位置情報データの距離の範囲」とは、逐次的に先行車の位置情報データが検出され取得された際の先行車の位置と自車の位置との距離の範囲である。
上記の構成に於いては、端的に述べれば、自車の走行中に於いて、先行車の位置情報データを逐次的に取得して間歇的に保存しつつ、かかる保存されたデータを用いて先行車の走行軌跡を演算により生成する。その際、先行車の走行軌跡の演算に使用される先行車の位置情報データの範囲が、先行車の位置情報データの誤差によって決定されると伴に、その決定された先行車の位置情報データの範囲に基づいて、データを保存する時期が決定されることとなる。かかる構成によれば、先行車の走行軌跡の演算に使用される先行車の位置情報データの範囲(先行車の走行軌跡の演算のためにバッファリングしておくデータの範囲)が、データの誤差に応じて可変に設定されることとなる。そうすると、データ群に於いてランダムに生ずる各データの誤差の影響が過大とならないように、且つ、古過ぎるデータが演算に含まれないように適当に設定することが可能となる。そして、そのように設定されたデータの範囲に基づいてデータの保存時期、即ち、データをバッファリングするタイミングが決定される構成によって、データの範囲が変化しても、演算負荷と走行軌跡の算出精度とが許容の範囲となるようなデータ数を保存し、走行軌跡の算出が実行できることとなる。なお、実際に、データの誤差に対してデータの範囲を如何に設定するか、及び、データの保存時期を何時にするか、より具体的には、保存時期の間隔をどの程度に設定して、演算に使用するデータ数をどの程度にするかについては、実験又はシミュレーション等により当業者に於いて適宜設定されてよい。
実施の形態に於いては、先行車と自車との距離が長くなるほど、先行車の位置情報データの精度が低減し、誤差が増大するので、その場合には、個々のデータの誤差の、先行車の走行軌跡の算出結果に対する影響を低減するべく、先行車の走行軌跡の演算に使用される先行車の位置情報データの範囲が広くなるように設定されてよい。また、データの保存時期は、先行車の走行軌跡の演算に使用されるデータの範囲が広くなるほど、バッファリングするデータの間隔が広がるように設定されてよい。更に、保存するデータをできるだけ少なくするために、最新のデータから或る程度の数のデータのみが確保され、そのうちの最も古いデータよりも古いデータは逐次破棄されるようになっていてよい。先行車の走行軌跡の演算に使用されるデータは、保存されたデータのうちの「位置情報データ距離範囲決定手段」によって決定された範囲内のデータとなる。先行車の走行軌跡の演算に於いて、具体的には、前記の決定されたデータの範囲内の位置情報データの群に対して任意の曲線をフィッティングすることにより、曲線の形状を規定する係数を算出する態様にて、先行車の走行軌跡が表されるようになっていてよい。本発明の装置で得られた先行車の走行軌跡の曲線は、先行車追跡制御の実行の際に自車の運動制御を決定するための情報として用いられることとなる。
かくして、上記の本発明の構成に於いては、先行車の走行軌跡の算出のために使用されるデータの範囲が、車両の走行状況に依存して変化するデータの誤差によって可変となり、これに連動して、データの保存時期が調節され、これにより、演算負荷を過大にせずに、走行軌跡の算出精度の低下の防止が可能となることが期待される。そして、このことにより、迅速に、より精度の高い走行軌跡の算出結果が得られ、より効果的な運転支援の達成が期待される。
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
10…車体
12FL、FR、RL、RR…車輪
14…差動歯車
20…車輪速センサ
30…ヨーレート・横加速度センサ
40…レーダー又はレーザーセンサ
42…カメラ
44…GPS装置
50…電子制御装置
12FL、FR、RL、RR…車輪
14…差動歯車
20…車輪速センサ
30…ヨーレート・横加速度センサ
40…レーダー又はレーザーセンサ
42…カメラ
44…GPS装置
50…電子制御装置
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
装置の構成
本発明による運転支援制御のための先行車の走行軌跡を算出する装置(先行車走行軌跡算出装置)の好ましい実施形態は、図1(A)に模式的に描かれている如く、通常の自動車等の車両10に搭載されてよい。左右前輪12FL、12FRと、左右後輪12RL、12RRを有する車両10には、通常の態様にて、各輪に制駆動力を発生する駆動系装置(一部のみ図示)、各輪に制動力を発生する制動系装置(図示せず)、操舵系装置(図示せず)が搭載される。また、特に、本発明による先行車走行軌跡算出装置が搭載される車両10に於いては、車両周辺の状況、特に、先行車の存在の有無及びその位置を検出するために、レーダー又はレーザーセンサ装置40、車載カメラ42及び/又はGPS人工衛星と通信して自車の位置情報等の種々の情報を取得するGPS装置(カーナビゲーションシステム)44が設けられる。なお、先行車の存在の有無及びその位置の検出に於いては、レーダー又はレーザーセンサ装置40、車載カメラ42、GPS装置44のいずれかが用いられればよく、全てが装備されていなくてもよいことは理解されるべきである。
本発明による運転支援制御のための先行車の走行軌跡を算出する装置(先行車走行軌跡算出装置)の好ましい実施形態は、図1(A)に模式的に描かれている如く、通常の自動車等の車両10に搭載されてよい。左右前輪12FL、12FRと、左右後輪12RL、12RRを有する車両10には、通常の態様にて、各輪に制駆動力を発生する駆動系装置(一部のみ図示)、各輪に制動力を発生する制動系装置(図示せず)、操舵系装置(図示せず)が搭載される。また、特に、本発明による先行車走行軌跡算出装置が搭載される車両10に於いては、車両周辺の状況、特に、先行車の存在の有無及びその位置を検出するために、レーダー又はレーザーセンサ装置40、車載カメラ42及び/又はGPS人工衛星と通信して自車の位置情報等の種々の情報を取得するGPS装置(カーナビゲーションシステム)44が設けられる。なお、先行車の存在の有無及びその位置の検出に於いては、レーダー又はレーザーセンサ装置40、車載カメラ42、GPS装置44のいずれかが用いられればよく、全てが装備されていなくてもよいことは理解されるべきである。
上記の本発明による先行車走行軌跡算出装置の作動は、電子制御装置50により実行される。電子制御装置50は、通常の形式の、双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、ROM、RAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路を含んでいてよい。後に説明される本発明の先行車走行軌跡算出装置の各部の構成及び作動は、それぞれ、プログラムに従った電子制御装置(コンピュータ)50の作動により実現されてよい。電子制御装置50には、先行車の存在の有無及びその位置の検出のために、車載カメラ40、レーダー装置等42、GPS装置44等からの情報s1〜s3などが入力され、又、自車の位置の変化を検出するべく、車速の計測のために車輪速センサからの各輪の車輪速値VwFL、FR、RL、RRと、ヨー角の変化の計測のために、ジャイロセンサ30からのヨーレートγ及び/又は横加速度Ygなどが入力される。なお、図示していないが、本実施形態の車両に於いて実行されるべき各種制御に必要な種々のパラメータ、例えば、前後Gセンサ値、操舵角などが入力され、各種の制御指令が対応する装置へ出力されてよい。
電子制御装置50に於いて実現される先行車走行軌跡算出装置の具体的な構成に於いては、図1(B)を参照して、まず、車載カメラ40、レーダー装置等42、GPS装置44のいずれかであってよい先行車の存在の有無及び位置の検出を行う先行車検出センサから、それらの検出値が、座標値・距離検出部へ与えられ、そこに於いて、センサの検出値から、任意の態様にて、先行車の位置の座標値と、先行車と自車との相対距離が検出される。そして、相対距離を表す信号が、バッファリング範囲決定部へ与えられ、後に説明される態様にて、バッファリング範囲、即ち、先行車の走行軌跡を算出するためのデータの位置座標の範囲が決定され、その範囲情報が、バッファリング決定部と、先行車走行軌跡算出部とへ送られる。バッファリング決定部に於いては、範囲情報を参照して、座標値・距離検出部で検出された座標値のデータをバッファメモリに保存するか否か(バッファリングするか否か)を決定し、バッファリングするとの判断があったときには、そのときの先行車の位置座標値のデータをバッファメモリへ保存する。一方、先行車走行軌跡算出部は、バッファリング範囲情報を参照して、後に説明される態様にて、バッファメモリに保存された先行車の相対距離のデータを用いて、先行車の走行軌跡を表す曲線を算出し、その軌跡情報が車両の運転支援制御のための車両運動制御を実行する制御へ送信されることとなる。なお、既に触れた如く、上記の各部の構成と作動は、コンピュータ(電子制御装置50)に於いて、プログラムを実行することにより実現されることは理解されるべきである。以下、先行車走行軌跡算出の処理について、詳細に説明する。
先行車走行軌跡算出処理
本発明による先行車走行軌跡算出装置に於いては、「発明の概要」の欄に於いて述べた如く、自車の走行中に、自車に対する先行車の位置が、逐次的に検出されて保存され、その検出され保存された先行車の位置を用いて、先行車の走行軌跡が算出される。その際、車載の電子制御装置50に於いては、演算処理能力とデータの蓄積可能量に限界があるので、先行車の位置データの保存は、間歇的に実行され、先行車の走行軌跡は、かかる間歇的に保存された数のデータの座標値に対して曲線をフィッティングすることにより算出される。この場合、既に触れた如く、間歇的に保存され演算に使用されるデータの座標値の範囲、即ち、バッファリングの範囲と、データを保存する時期の間隔、即ち、バッファリングのタイミングとが先行車の走行軌跡の算出結果の精度に影響することとなる。
本発明による先行車走行軌跡算出装置に於いては、「発明の概要」の欄に於いて述べた如く、自車の走行中に、自車に対する先行車の位置が、逐次的に検出されて保存され、その検出され保存された先行車の位置を用いて、先行車の走行軌跡が算出される。その際、車載の電子制御装置50に於いては、演算処理能力とデータの蓄積可能量に限界があるので、先行車の位置データの保存は、間歇的に実行され、先行車の走行軌跡は、かかる間歇的に保存された数のデータの座標値に対して曲線をフィッティングすることにより算出される。この場合、既に触れた如く、間歇的に保存され演算に使用されるデータの座標値の範囲、即ち、バッファリングの範囲と、データを保存する時期の間隔、即ち、バッファリングのタイミングとが先行車の走行軌跡の算出結果の精度に影響することとなる。
より詳細には、まず、バッファリングの範囲が比較的狭い場合、図6(A)に模式的に例示されている如く、演算に使用されるデータ数が、(バッファリングの範囲が比較的広い場合に比して、)少なくなるので、図示の如く、保存されたデータのうち、一点でも誤差が大きくなると、算出される先行車の走行軌跡の誤差も大きくなってしまう場合がある。逆に、バッファリングの範囲が比較的広い場合、各データ点の誤差の影響は相対的に小さくなるが、先行車の走行軌跡の算出結果が、時間的に遡った古いデータの影響を受けることにより、算出結果の誤差が大きくなる場合がある。例えば、図6(B)に模式的に例示されている如く、先行車がカーブへ進入した際、その前までの直線走行のデータ(図中、自車の後方のデータ)が多い場合には、(バッファリングの範囲が比較的狭い場合に比して、)直線走行中のデータの寄与が相対的に高くなるので、算出される先行車の走行軌跡は、実際の軌跡よりも直線に近くなって、旋回外方へ膨らみ、算出結果の誤差が大きくなってしまうこととなる。従って、先行車の走行軌跡の算出結果の精度を向上するためには、バッファリングの範囲は、できるだけ古いデータを含まないように、尚且つ、個々のデータの誤差の影響が大きくならないように、個々のデータの誤差の大きさに応じて可変に設定されることが好ましい、ということができる。
また、或る幅のバッファリングの範囲に於いて、データを保存する時期の間隔が広いほど、データ数が小さくなり、個々のデータの誤差の影響が大きくなって、先行車の走行軌跡の算出結果の精度が悪化し、データを保存する時期の間隔が狭いほど、先行車の走行軌跡の算出のための演算負荷が増大する。例えば、渋滞中に於いては、先行車の位置が自車に近くなり(車間距離が短くなり)、従って、個々のデータの精度が比較的高いにも関わらず、データの保存する時期の間隔が狭く、データの数が大きくなる場合には、無用に演算量が増大することとなる。即ち、データを保存する間隔は、バッファリングの範囲に於いて、個々のデータの誤差の影響が大きくならないように狭く、且つ、演算負荷を過剰に高くしないように設定されることが好ましい。この点に関し、上記の如く、バッファリングの範囲が可変に設定される場合には、設定されたバッファリングの範囲の幅に応じて、データを保存する時期の間隔が変更され、その変更された間隔でデータが保存されるように、バッファリングのタイミングが計られることが好ましい。
かくして、本発明の先行車走行軌跡算出装置は、既に触れた如く、先行車の位置情報データの誤差に応じて、バッファリングの範囲を設定し、その設定されたバッファリングの範囲に応じて、データを保存する時期の間隔を設定して、データのバッファリングのタイミングが計られるよう構成される。なお、先行車の位置情報データの誤差は、一つの態様として、自車と先行車との相対距離又は車間距離が大きくなるほど、増大するので、本実施形態に於いては、自車と先行車との車間距離が先行車の位置情報データの誤差の大きさを表す指標値として使用される。
図2は、本発明の先行車走行軌跡算出装置に於ける先行車走行軌跡算出の具体的な処理過程の例をフローチャートの形式にて示している。なお、同図の処理は、車両(自車)の走行中に、先行車の存在が確認され、先行車追従制御の実行が開始された後に、反復して実行されてよい。
同図を参照して、処理過程に於いては、まず、自車の走行中、自車の位置は、常に移動しているので、その移動距離ΔLとヨー角変化Δθが算出される(ステップ10)。図3(A)、(B)を参照して、まず、先行車の時々刻々の位置Pは、図3(A)に示されている如く、自車に設定された座標系の座標値として定義される。そして、或る時点で、自車と先行車とが、図3(A)に示されている如き位置関係にあったとすると、その後、自車と先行車とは、移動するので、図3(B)に示されている如く、自車の位置が、先行車の過去の位置に対して変化することとなる。従って、先行車の過去の位置は、移動後の自車の座標系の座標に変換される必要がある。そこで、上記の如く、まず、自車の位置の移動距離ΔLとヨー角変化Δθが算出される。移動距離ΔLは、車速及び横滑り角等を用いて、或いは、GPS装置から得られる自車の位置情報を用いて算出可能である。また、ヨー角変化Δθは、ヨーレートを用いて算出可能である。車速は、例えば、車輪速センサから得られる車輪速値から任意の方法により算出されてよく、ヨーレートは、ヨーレートセンサにて検出可能であり、横滑り角は、ヨーレート、車速等を用いて検出可能である。そして、自車の移動距離ΔLとヨー角変化Δθが得られると、これらの値を用いて、自車の移動前の座標系(図3(A)のt−1x−t−1y座標系)に於ける、それまでの先行車の過去の位置の座標値が、自車の移動後の座標系(図3(B)のtx−ty座標系)に於ける座標値へ変換される(ステップ20)。
かくして、それまでの先行車の過去の位置の座標値の座標変換が為されると、現在の先行車の位置情報データが取得される(ステップ30)。先行車の位置情報データは、既に述べた如く、車載カメラ40、レーダー装置等42、GPS装置44等の検出値を用いて、自車の座標系に於ける座標値として検出されてよい。そして、図4(A)に示されている如く、先行車の位置情報データの座標値から自車との相対距離(車間距離)Lが算出され(ステップ40)、かかる車間距離Lが、本実施形態に於いては、先行車の位置情報データの誤差の大きさを表す指標値となっているので、車間距離Lに基づいて、バッファリング範囲D、即ち、保存され先行車の走行軌跡の算出に利用される先行車の位置までの距離範囲、が決定される(ステップ50)。バッファリング範囲Dは、典型的には、図4(B)に例示されている如く、車間距離Lが増大するほど、自車の前後方向に幅が広くなるように設定されてよい。従って、或る時点で車間距離Lが、その前より大きくなった場合には、図4(A)に模式的に描かれている如く、バッファリング範囲Dが自車の後方へ広がる場合も起き得ることとなる。また、通常、自車より前方における先行車の位置情報データは、全て、先行車の走行軌跡の算出に利用されるので、自車と先行車との相対距離が増大し、自車の前方のバッファリング範囲が大きくなるほど、自車の後方のバッファリング範囲も拡張するということもできる。バッファリング範囲Dの決定に際しては、実際には、バッファリング範囲決定部に於いて、図4(B)に示されている如き車間距離Lを変数としたバッファリング範囲Dのマップが予め準備され、マップを用いて、検出された車間距離Lに対するバッファリング範囲Dが選択されるようになっていてよい。なお、自車前方は、常にバッファリング範囲に含まれるので、マップは、自車後方側のバッファリング範囲のマップであってもよい。
バッファリング範囲Dが決定されると、バッファリング間隔I、即ち、データを保存する時期の間隔、が、バッファリング範囲Dを用いて、下記の式により決定される(ステップ60)。
I=D/N …(1)
ここに於いて、Nは、先行車の走行軌跡の演算に於いて、個々のデータの誤差の影響が大きくならないように且つ演算負荷を過剰に高くしないように設定されたデータ数(基準データ数)である。即ち、本実施形態に於いては、先行車の位置情報データの誤差の大きさ(車間距離)に応じて、バッファリング範囲Dと伴に、バッファリング間隔Iも可変に設定されることとなる。
I=D/N …(1)
ここに於いて、Nは、先行車の走行軌跡の演算に於いて、個々のデータの誤差の影響が大きくならないように且つ演算負荷を過剰に高くしないように設定されたデータ数(基準データ数)である。即ち、本実施形態に於いては、先行車の位置情報データの誤差の大きさ(車間距離)に応じて、バッファリング範囲Dと伴に、バッファリング間隔Iも可変に設定されることとなる。
かくして、バッファリング間隔Iが決定されると、先行車の移動距離d、即ち、図5(A)を参照して、現在の先行車の位置tPと前回のバッファリングされたデータの先行車の位置t−1Pとの距離、が、バッファリング間隔Iよりも大きいか否か、即ち、
d≧I …(2)
が成立しているか否かが判定される(ステップ70)。ここで、式(2)が成立していなければ、現在の先行車の位置tPの座標値は、バッファリングされず、次の処理(ステップ110)が実行される。一方、式(2)が成立している場合には、現在の先行車の位置tPの座標値(位置情報データ)がバッファメモリにバッファリングされる(バッファリング決定部が保存の指示を出す)(ステップ80)。
d≧I …(2)
が成立しているか否かが判定される(ステップ70)。ここで、式(2)が成立していなければ、現在の先行車の位置tPの座標値は、バッファリングされず、次の処理(ステップ110)が実行される。一方、式(2)が成立している場合には、現在の先行車の位置tPの座標値(位置情報データ)がバッファメモリにバッファリングされる(バッファリング決定部が保存の指示を出す)(ステップ80)。
データのバッファリングについて、図示の処理サイクルが繰り返される間、保存されたデータがそのままとなると、保存されるデータ数が増大し、メモリの負担が増大することとなるので、先行車の走行軌跡の演算に使用しないバッファリング範囲Dよりも外側の位置のデータは破棄されることが望ましい。この点に関し、本発明のバッファリング範囲Dは可変に設定されるので、一旦、バッファリング範囲Dの外に出たデータであっても、再び、バッファリング範囲Dに包含される可能性がある。そこで、本発明に於いては、バッファメモリに保存されたデータ数Ntが、上記の基準データ数Nを超えており、即ち、
Nt>N …(3)
が成立しており、且つ、最も古いデータがバッファリング範囲Dの外にあるとき、即ち、バッファリング範囲Dの自車後方の境界までの長さL(D)と、最も古いデータの位置までの距離L(Po)とに於いて、
L(Po)>L(D) …(4)
が成立しているときには、最も古いデータの削除が実行される(ステップ100)。かかる構成によれば、データの削除によって、バッファメモリに保存されたデータ数Ntが、基準データ数Nを下回ることはなくなるので、バッファリング範囲Dが大きくなり、保存されているデータのうちで最も古いデータの位置がバッファリング範囲Dの境界から多少離れていても、先行車の走行軌跡の精度の大幅な悪化は生じないことが期待され、また、メモリ内に保存されるデータ数が無用に増大することが回避される。
Nt>N …(3)
が成立しており、且つ、最も古いデータがバッファリング範囲Dの外にあるとき、即ち、バッファリング範囲Dの自車後方の境界までの長さL(D)と、最も古いデータの位置までの距離L(Po)とに於いて、
L(Po)>L(D) …(4)
が成立しているときには、最も古いデータの削除が実行される(ステップ100)。かかる構成によれば、データの削除によって、バッファメモリに保存されたデータ数Ntが、基準データ数Nを下回ることはなくなるので、バッファリング範囲Dが大きくなり、保存されているデータのうちで最も古いデータの位置がバッファリング範囲Dの境界から多少離れていても、先行車の走行軌跡の精度の大幅な悪化は生じないことが期待され、また、メモリ内に保存されるデータ数が無用に増大することが回避される。
かくして、バッファリングされるデータ数についての処理(ステップ70〜100)が為されると、現在のメモリ内のデータ数Ntが閾値Ncより大きいか否か、即ち、
Nt≧Nc …(5)
が成立しているか否かが判定され(ステップ110)、式(5)が成立していなければ、データのバッファリングが継続され、式(5)が成立しているときには、バッファメモリ内のデータのうち、位置がバッファリング範囲D内に含まれるデータの座標を用いて、先行車の走行軌跡の算出が実行される。なお、閾値Ncは、基準データ数Nよりも低いデータ数であってよく、先行車走行軌跡算出に於いて、或る程度の精度が担保できるデータ数に設定される。従って、図2の処理サイクルの開始直後からメモリ内のデータ数Ntが閾値Ncに到達するまでは、先行車の走行軌跡の算出は、実行されず、メモリ内のデータ数Ntが閾値Ncを超えてから走行軌跡の算出が実行されることとなる。
Nt≧Nc …(5)
が成立しているか否かが判定され(ステップ110)、式(5)が成立していなければ、データのバッファリングが継続され、式(5)が成立しているときには、バッファメモリ内のデータのうち、位置がバッファリング範囲D内に含まれるデータの座標を用いて、先行車の走行軌跡の算出が実行される。なお、閾値Ncは、基準データ数Nよりも低いデータ数であってよく、先行車走行軌跡算出に於いて、或る程度の精度が担保できるデータ数に設定される。従って、図2の処理サイクルの開始直後からメモリ内のデータ数Ntが閾値Ncに到達するまでは、先行車の走行軌跡の算出は、実行されず、メモリ内のデータ数Ntが閾値Ncを超えてから走行軌跡の算出が実行されることとなる。
先行車の走行軌跡の算出に於いては、典型的には、図5(B)に模式的に描かれている如く、位置がバッファリング範囲D内に含まれる複数のデータの座標値に対して曲線フィッティングが実行され、曲線を規定する関数の係数が算出される(ステップ120)。なお、新しいデータのバッファリングが実行されない場合、データ点に変化はないが、自車が移動するので、移動後の自車の座標系に於いて先行車の走行軌跡が算出されることとなる。フィッティング曲線は、円、楕円、3次曲線等であってよく、フィッティングは、最小二乗法により実行されてよい。そして、フィッティングにより決定された曲線、即ち、先行車の走行軌跡を表す曲線に於いて、自車の運転支援制御に利用するための種々の軌跡パラメータが算出される。軌跡パラメータとは、例えば、先行車の走行軌跡の曲率、曲率変化、先行車の走行軌跡に対する自車のヨー角、横位置などであってよい。これらの軌跡パラメータは、既に触れた如く、運転支援のための運転制御部へ送信される。
かくして、上記の一連の処理によれば、先行車の位置情報データの誤差に応じて、先行車の走行軌跡の算出のために保存され利用されるデータの座標値の範囲(バッファリング範囲)が可変に設定され、また、座標値のデータを取得し保存するタイミングが計られることにより、演算負荷を過大にせずに、精度良い先行車の走行軌跡の算出を達成することが可能となる。なお、図示の実施形態に於いては、先行車の位置情報データの誤差の指標値として自車と先行車との車間距離を用いて、車間距離に応じてバッファリング範囲が設定されているが、誤差の大きさは、その他の要因、例えば、天候、混雑状況などの周囲環境によって影響を受けるので、それらの要因も考慮してバッファリング範囲が設定されてもよいことは理解されるべきである。
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
Claims (1)
- 先行車の走行軌跡を算出する先行車走行軌跡算出装置であって、
前記先行車の位置情報データを取得する取得手段と、
前記先行車の位置情報データの誤差に基づいて、前記先行車の走行軌跡の算出に利用する前記先行車の位置情報データの距離の範囲を決定する位置情報データ距離範囲決定手段と、
保存する前記先行車の位置情報データの時期を、前記決定された位置情報データの距離の範囲に基づいて決定する保存時期決定手段と、
前記保存時期決定手段により決定された前記時期の前記先行車の位置情報データを保存する保存手段と、
前記保存された先行車の位置情報データのうちの前記先行車の位置情報データの距離の範囲内の位置情報データを用いて、前記先行車の走行軌跡を算出する先行車走行軌跡算出手段と
を含む装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015088428A JP2016206976A (ja) | 2015-04-23 | 2015-04-23 | 車両の運転支援制御のための先行車軌跡算出装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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---|---|---|---|
JP2015088428A JP2016206976A (ja) | 2015-04-23 | 2015-04-23 | 車両の運転支援制御のための先行車軌跡算出装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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- 2015-04-23 JP JP2015088428A patent/JP2016206976A/ja active Pending
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