JP6504838B2 - コンクリート床版上面の補修工法 - Google Patents
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Description
舗装部表層の剥離は、舗装の基層と表層の間の剥離に起因し、表層の舗装施工の良否に左右される。また、表層剥離ではブロック状に舗装が剥離して局部的に穴が発生し、この状態をポットホールと呼ぶ。
基層の剥離は、コンクリート床版と舗装の間の剥離を原因とし、防水層の上面や下面に滞水した水の影響によって基層が剥離する場合や、コンクリート床版の上面の変状に伴って基層が剥離する場合などがある。
この場合の劣化形態もポットホールと呼ばれる。
亀甲状ひび割れとは、縦方向、横方向の線状ひび割れが相互につながった状態であり、通行車両の荷重の影響を受けて舗装路面に発生したひび割れがつながったものである。舗装のひび割れの原因には、舗装の経年劣化や、コンクリート床版上面の変状に伴うもの等がある。亀甲状ひび割れを長期間放置すると通行車両や雨水の影響を受け、ポットホールの発生に至る場合もある。
流動わだちとは、交通荷重によりアスファルト混合物層が塑性変形することにより発生し、車輪走行部は沈下し、その周辺が盛り上がることをいう。長期間放置すると通行車両や雨水の影響を受け、ポットホールの発生に至る場合もある。
表層からのずれとは、車両の走行にともないアスファルト混合物の表層部が縦断方向に移動した現象であり、防水層と舗装または防水層と床版の接着不良により、防水層の下面にずれを生じて舗装路面に変状が発生する。変状発生後は通行車両の影響を受け、早期にポットホールの発生に至る場合もある。
また、ブリスタリングとは、舗装や防水層内に閉じこめられた水分や油分が気候的な作用で気化し、その蒸気が上層のアスファルト混合物を押し上げる現象である。変状発生後は通行車両の影響を受け、早期にポットホールの発生に至る場合もある。
図20〜図22に示すように、道路橋等のコンクリート床版10は、橋梁において劣化の生じ易い部分である。これは、床版に通行車両の荷重が直接作用することで、床版を構成するコンクリート11及び鉄筋12が繰り返し荷重を受け、疲労による損傷を受けるためである。さらに寒冷地では冬季に散布される凍結防止剤にふくまれる塩化物イオンが舗装の下にあるコンクリート床版に達し、塩化物イオンがコンクリート中に浸透して、床版の内部に配置された鉄筋を腐食させることで、コンクリート11にひび割れや剥離を発生させるとともに、鉄筋12の断面積が減少して鉄筋による補強効果も低下するためである。
劣化を生じたコンクリート床版10では、床版の最上段に配置された鉄筋の上面のコンクリートが剥離することが多い。これは疲労によって生じたひび割れの上部から水が浸透し、コンクリート床版の最上段に配置された鉄筋12を腐食させ、腐食に伴って生じる錆の体積膨張によってコンクリートが引き剥がされるためである。また、浸透する水に塩分が含まれる場合は、床版にひび割れが入っていなくとも、拡散浸透によって塩分が浸透するため、同様にコンクリート床版10の最上段に配置された鉄筋12を腐食させることで、同様な劣化が発生する(図22参照)。
この工法は、損傷の生じたコンクリートを除去することも可能であり、コンクリートを取り替えることになるため床版コンクリートの機能を回復させることも可能である。
また、非特許文献1には、コンクリート床版上面の劣化箇所を除去したあと、劣化部分を樹脂モルタルで補修したあと、厚さ12mmのプレキャスト板を2層に千鳥配置し、床版ならびに2層のスレートボードによるプレキャスト板を樹脂モルタルで接着して一体化する方法が示されている。
この工法は損傷を生じた箇所の修復とともに、低下した床版の耐荷性を回復することが可能である。
一般的に、ポットホール15の補修は、二段階で行われる。まず、路面にポットホール15などの舗装の変状が発生したら、発見後1日以内に、緊急補修として、常温での施工が可能な舗装補修材で埋め、速やかに路面を修復する。緊急補修は走行安全性を確保することを優先するため、コンクリート床版の劣化により断面欠損した部分は剥離したコンクリートを取り除き、清掃したあと、舗装の補修と同時に舗装補修材で埋める場合が多い。
このような緊急補修を行った箇所は、緊急補修後1箇月程度の期間内に部分補修と呼ばれる再補修を行う。部分補修では、コンクリートカッターを用いてポットホール発生個所を包含するような四角形で舗装に切れ目を入れ、緊急補修で使用した舗装補修材を含めて、その内部の舗装をコンクリートブレーカー等を用いてはぎ取る。また、コンクリート床版の劣化部についても、コンクリートブレーカー等を用いてはつり、除去する。次に、コンクリート床版のはつりを行った箇所を清掃したのち、ジェットコンクリートと呼ばれる速硬性のコンクリートで埋め戻す。その次に、コンクリートが固まったら、その上にアスファルトコンクリートを用いて舗装を行う手順で行う。
(1)本発明のコンクリート床版面の補修工法は、コンクリート床版上の舗装部分の内でポットホールを含む範囲を撤去する舗装撤去工程と、前記コンクリート床版の前記ポットホールに対応する劣化部を含む範囲のコンクリートをはつり取るはつり工程と、前記はつりコンクリート床版は、道路橋のコンクリート床版である工程で除去した部位にモルタルを流し込み、その上にプレキャストコンクリート板を設置してプレキャストコンクリート板と既設コンクリート床版とを接着するモルタル施工工程とを備えたことを特徴とする。
(2)前記コンクリート床版は、道路橋のコンクリート床版であることを特徴とする。
(3)前記モルタル施工工程において、接着に使用するモルタルはセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、ポリマーモルタルの中の何れか1であることを特徴とする。
(4)前記プレキャストコンクリート板のモルタルとの接触面には、100mm以下の間隔で表面から裏面に通じる複数の貫通孔が形成されたことを特徴とする。
(5)前記モルタル施工工程において、補修対象となるコンクリート床版から露出した鉄筋が前記プレキャストコンクリート板の貫通孔に配置された連結治具で結合されることを特徴とする。
(6)前記プレキャストコンクリート板は、水結合材比35重量%以下25重量%以上のコンクリートあるいはモルタル材料が使用されていることを特徴とする。
(7)前記プレキャストコンクリート板は、結合材料にシリカフュームやフライアッシュ等のポゾランが10重量%以上混合されていることを特徴とする。
(8)前記プレキャストコンクリート板は、高炉スラグ微粉末が30重量%以上混合されていることを特徴とする。
(9)前記プレキャストコンクリート板は、使用されるコンクリートあるいはモルタル材料に、金属製あるいは有機繊維製の短繊維が体積比0.5%以上混入されていることを特徴とする。
また、プレキャストコンクリート板の下面は薄いモルタル層となるため、従来のようなコンクリートで埋め戻す方法に比べて、劣化したコンクリートのはつり量を低減でき、かつ現場で練り混ぜるコンクリートの量も少なくできるので、施工の手間を減らせるとともに、施工時間も短縮できる。更に、将来、舗装の打換を行う場合の路面切削作業の際に、床版上面に配置したプレキャストコンクリート板が先に切削されるため、切削歯がコンクリート床版に及ぼす影響を防止することができる。また、切削により痛んだプレキャストコンクリート板は取り換えることができるため、取り換えた後は補修直後の状態まで性能を回復できる。
また、前記モルタル施工工程において、接着に使用するモルタルはセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、ポリマーモルタルの中の何れか1であるので、舗装から浸透した塩化物イオンのコンクリート床版への浸透を抑制することができる。
また、接着はセメント系の材料を使用するため、コンクリート床版の補修部は湿った状態であることが好ましく、非特許文献1に示される方法で必要となるコンクリート床版の乾燥工程を必要としない。
また、前記プレキャストコンクリート板のモルタルとの接着面には、100mm以下の間隔で表面から裏面に通じる複数の貫通孔が形成されているので、プレキャストコンクリート板の下面に空気溜りを生ずることがなくなり、コンクリート床版との接着性を向上することができる。
また、前記モルタル施工工程において、前記プレキャストコンクリート板の貫通孔に配置された連結治具は補修対象となるコンクリート床版の鉄筋と結合されるので、コンクリート床版とプレキャストコンクリート板の接続をより強固にすることができる。
また、前記プレキャストコンクリート板は、水結合材比35重量%以下25重量%以上のコンクリートあるいはモルタル材料が使用されているので、プレキャストコンクリート板の強度を増して薄肉でも車両荷重に対して強くすることができる。
また、前記プレキャストコンクリート板は、結合材料にシリカフュームやフライアッシュ等のポゾランが10重量%以上混合されているので、プレキャストコンクリート板の緻密さを増して塩化物イオン浸透抵抗性を高めることができる。
また、前記プレキャストコンクリート板は、結合材料に高炉スラグ微粉末が30重量%以上混合されているので、プレキャストコンクリート板の緻密さを増して塩化物イオン浸透抵抗性を高めることができる。
また、前記プレキャストコンクリート板は、使用されるコンクリートあるいはモルタル材料に、金属製あるいは有機繊維製の短繊維が体積比0.5%以上混入されているので、プレキャストコンクリート板の引張強さを増して強い曲げ靱性を得ることができる。
本発明のコンクリート床版上面の補修工法は、コンクリート床版10上の舗装17部分の内でポットホール15を含む範囲を撤去する舗装撤去工程と、コンクリート床版10のポットホール15に対応する劣化部を含む範囲のコンクリートをはつり取るはつり工程と、前記はつり工程で除去した部位18にモルタル19を流し込み、その上にプレキャストコンクリート板24を設置してプレキャストコンクリート板24と既設コンクリート床版とを接着するモルタル施工工程とを備えている。
また、本発明は部分補修、ならびに舗装改良において適用されるものである。実施例1では、本発明をコンクリート床版上の舗装の部分補修に適用した場合について記述する。
はつり工程は、コンクリート床版10のポットホール15に対応する劣化部を含む範囲のコンクリートをはつり取り整形する。
次に、コンクリートを除去した箇所の穴を生じていない箇所の上面にプライマーを塗布し、モルタルを打ち込み、その上にプレキャストコンクリート板32を敷設する(図28参照)。この方法は円筒型枠29aに穴を生じた箇所の上面にモルタルを施工しないことを除けば、実施例1と同様である。また、プレキャストコンクリート板32の両端付近には貫通孔33が設けられており(図29)、実施例1と同様に貫通孔33を利用して治具やアンカーでプレキャストコンクリート板32とコンクリート床版を一体化させる。そのため従来の施工方法で補修を行う場合に比べて施工時間が大幅に短縮できる。
プレキャストコンクリート板32と舗装の間に生じた隙間はプレキャストコンクリート板32を敷設する際に盛り上がってきたモルタルで埋める。プレキャストコンクリート板32の厚さは円筒型枠29の浮き上がりの状態によって異なるが、およそ70mmから100mm程度である。また、実施例3の場合、穴が開いた円筒型枠29の上面部分のプレキャストコンクリート板32はコンクリート床版に支持されないため、曲げとせん断力が作用する。そのためプレキャストコンクリート板32には曲げとせん断力に抵抗できるようプレストレスを与え、鉄筋12及びPC鋼材36も配置しておく。プレキャストコンクリート板32に求められる弾性係数や線膨張係数の条件は実施例1と同様であるため、プレキャストコンクリート板32の圧縮強度は60〜100N/mm2程度となり、一般的なプレストレストコンクリートの圧縮強度である30〜50N/mm2に比べて大きく、プレキャストコンクリート板32により多くのプレストレスを与えることができるため、薄肉のプレストレストコンクリート板であっても、曲げやせん断に強い床版とすることができ、従来の方法で補修した場合に比べて耐久性と耐荷性に優れた床版を形成することができる。
11 コンクリート
12 鉄筋
13 基層
14 表層
15 ポットホール
15a カッター目地
16 ポットホール補修跡
17 舗装
18 除去した部位
19 モルタル
24 プレキャストコンクリート板
25 舗装
26 補強材
27 貫通孔
28 中空床版橋
29 円筒型枠
30 型枠
31 コンクリート
32 プレキャストコンクリート板
33 貫通孔
34 基層
35 表層
36 PC鋼材
Claims (8)
- コンクリート床版上の舗装部分の内でポットホールを含む範囲を撤去する舗装撤去工程と、
前記コンクリート床版の前記ポットホールに対応する劣化部を含む範囲のコンクリートをはつり取るはつり工程と、
前記はつり工程で除去した部位にモルタルを流し込み、その上に、裏面が平坦であって100mm以下の間隔で表面から裏面に通じる複数の貫通孔が形成されたプレキャストコンクリート板を設置してプレキャストコンクリート板と既設コンクリート床版とを接着するモルタル施工工程とを備えたことを特徴とするコンクリート床版上面の補修工法。 - 前記モルタル施工工程において、接着に使用するモルタルは、ポリマーセメントモルタルまたはポリマーモルタルであることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート床版上面の補修工法。
- 前記コンクリート床版は、道路橋のコンクリート床版であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンクリート床版上面の補修工法。
- 前記モルタル施工工程において、補修対象となるコンクリート床版から露出した鉄筋が前記プレキャストコンクリート板の貫通孔に配置された連結治具で結合されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載のコンクリート床版上面の補修工法。
- 前記プレキャストコンクリート板は、水結合材比35重量%以下25重量%以上のコンクリートあるいはモルタル材料が使用されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1に記載のコンクリート床版上面の補修工法。
- 前記プレキャストコンクリート板は、結合材料にシリカフュームやフライアッシュ等のポゾランが10重量%以上混合されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1に記載のコンクリート床版上面の補修工法。
- 前記プレキャストコンクリート板は、高炉スラグ微粉末が30重量%以上混合されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1に記載のコンクリート床版上面の補修工法。
- 前記プレキャストコンクリート板は、使用されるコンクリートあるいはモルタル材料に、金属製あるいは有機繊維製の短繊維が体積比0.5%以上混入されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1に記載のコンクリート床版上面の補修工法。
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