JP4131322B2 - 道路橋の構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高架道路又は河川等を横断する道路橋床版の補強構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近に於いて、通行車両の大型化による車両重量の増加等により旧道路橋示方書で設計・施工された橋梁は、耐荷力を満足できず諸々の損傷をきたしている。そして、コンクリート床版は顕著にその損傷が現れる部材であり、直接的に第三者傷害の起因する箇所で、その対策は重要な課題の一つとして取り上げられている。
【0003】
(1)従来、この種の技術に於いては、例えば、特開平10−266133号に開示された技術がある。すなわち、コンクリート床版の補強を鋼材のみによって必要強度を得る場合、コンクリート床版の増厚や鋼材の増量によってコンクリート床版の重量が増大し、ひいては桁や橋脚もより強度の高いものが要求されており、これを解消する手段として、図5に示すように、道路橋12のコンクリート床版14の少なくとも張出し部14aに炭素繊維強化樹脂板(CFRP樹脂板)13を配設する補強構造が提供されている。
そして、当該従来の技術に於ける道路橋12の補強構造においては、CFRP樹脂板13は軽量であってかつ鉄筋の10倍程度の強度が得られるので、それまでの補強材である鉄筋やPC鋼材等の鋼材の使用量を減量しても張出し部14aに高い強度を付与でき、コンクリート床版14全体の軽量化と高強度化を両立させることが可能となるというものである。しかしながら、前記CFRP樹脂板13がコンクリート床版14の表面に固着される方法は、コンクリート床版14に接着剤を塗布してCFRP樹脂板13を載せて接着し、その上に直接的にアスファルト舗装15を施すというものである。ここで、16は桁間部に発生する引張力に対抗するための補強部材である炭素繊維シート、17は端桁、18は中央桁である。
【0004】
(2)また、他の従来の技術の例としては、特許第3321694号に開示された技術がある。当該技術(図示せず)は、道路橋等の鉄筋コンクリート床版上面の補修・補強工法として提供されているものであり、補強鉄筋の役割を兼ねた薄板の帯状鋼板を接着剤及び取付金具により床版表面に固定し、その上に増厚コンクリートを打設するというものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術は叙上した構成であるので、次の課題が存在する。
(1)従来の技術に於ける道路橋床版の補強構造は、CFRP樹脂板をコンクリート床版の上面に配設するに当たり、接着剤のみによりコンクリート床版上面に固着させ、しかもCFRP樹脂板の上に直接アスファルト舗装を施している。従って、道路上を走行する車両の輪荷重がアスファルト舗装から直接的にCFRP樹脂板に作用し、アスファルト舗装に発生する轍やひび割れ等の傷みも直接的にCFRP樹脂板に影響する問題点があった。
また、CFRP樹脂板が所定の位置から滑動や剥離し易いこと等により所定の強度が発生しなくなるおそれがあるばかりでなく、CFRP樹脂板自体が破損して使用目的に耐えなくなって結果として道路橋床版の補強構造としての寿命が短くなり、CFRP樹脂板の取り替え頻度が増加して当該補修コストが嵩むと同時に、補修工事に伴う交通規制による社会経済活動への悪影響も無視できないという問題点があった。
更に、CFRP樹脂板の滑動や剥離を防止するためには、次に述べる他の従来の技術と同様に、CFRP樹脂板をコンクリート床版に固定するための取付金具を付加する等の措置を講じる必要もあり、取付工程が時間を要すると共に取付部品の増大によるコストアップになるという問題点があった。
【0006】
(2)他の従来の技術に於ける鉄筋コンクリート床版上面の補修・補強工法は、コンクリート床版の補修・補強として薄板の帯状鋼板を用いること、該帯状鋼板の上に直接アスファルト舗装するのではなく増厚コンクリートを打設すること、及び該帯状鋼板を接着剤及び取付金具により床版表面に固定することを特徴としている。従って、鋼板上に増厚コンクリートを施すことは、該増厚コンクリートに一定程度の厚みを要するため重量増にもなり補強・補修上逆行する側面も有しているという問題点があった。また、鋼板を使用することは、経年変化により錆が発生するという問題点があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、道路橋のコンクリート床版上面に樹脂モルタル層に介装したCFRP樹脂板等
からなる繊維補強層を設けることにより、軽量化に優れ耐久性を保持した道路橋の構造を提供することを目的としたものであって、次の構成、手段から成立する。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、床版および該床版の上部に舗装層を備えた道路橋に於いて、該舗装層の下面に敷設したシート系防水材層と、該シート系防水材層の下面に敷設したアスゴム系接着剤層と、該アスゴム系接着剤層の下面に第2樹脂モルタル層が硬化する前に硅砂を散布して形成した硅砂層と、前記床版の上面に第1及び前記第2樹脂モルタル層を構成し、前記道路橋の幅員方向に列設し、該道路橋の長手方向に所定相互間隔Aで配置構成し、かつ所定幅B及び所定厚さCを有した繊維補強層を第1及び第2樹脂モルタル層間に介装したことを特徴とする道路橋の構造である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る道路橋の構造についての実施の形態を、添付図面に基づき詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明に係る道路橋の構造の実施の形態の一例を示す図であって、一方の車線の横断面図である。
図2は本発明に係る道路橋の構造の実施の形態の一例を示す図であって、(a)は道路橋上面の平面図、(b)は道路橋下面の底面図である。
以下、図1及び図2に基づき道路橋全体の構造について説明する。
【0011】
図1に示すように、1は桁より上部を図示した道路橋であって、桁の下部には道路橋の縦断方向に沿って橋台及び一定間隔で橋脚(図示せず)が設けられている。2はコンクリート床版であって、通常鉄筋やPC鋼材等により補強されたコンクリートから形成されており、該コンクリート床版2の端は地覆2aであり該コンクリート床版2と一体成型されている。3は該コンクリート床版2の上面を被覆しているアスファルト舗装等の舗装層であって、車両等の走行面を形成している。該コンクリート床版2は端桁4及び中央桁5によって主に支持され、その自荷重及び車両等の走行荷重は端桁4及び中央桁5を通じて橋脚及び橋台に伝達されることとなる。
【0012】
6aは第1樹脂モルタル層、6bは第2樹脂モルタル層であって、コンクリート床版2の張出し部2bの荷重を支持するための補強部材として、該第1及び第2樹脂モルタル層6a、6b間にCFRP樹脂板等からなる繊維補強層7を介装している。8はコンクリート床版2の下面に貼付された炭素繊維補強シート等でなる繊維補強層であって、コンクリート床版2の桁間部2cの下面に作用する引張力への補強部材である。
【0013】
尚、図1は一方の車線について示しているが、中央桁5を挟んで道路橋はほぼ左右対称に構成されており、他方の車線についても略同一の構造となっている。また、ここでは端桁4が1つの場合について説明しているが、車線の数によって該端桁4の数が複数となっても何ら差し支えない。
【0014】
次に、道路橋1の一定区間についてコンクリート床版2の上面の全体を説明すれば、図2(a)に示すように、CFRP樹脂板等からなる繊維補強層7が、舗装層3の下部かつ該コンクリート床版2の上面に塗布された第1樹脂モルタル層6aと第2樹脂モルタル層6bに介装された状態で、道路橋1の幅員方向に長く、かつ、該道路橋1の長手方向に所定相互間隔A及び所定幅Bでその所望数を繊維補強層群として配置構成されている。
【0015】
また、道路橋1の一定区間についてコンクリート床版2の下面の全体は、図2(b)に示すように、該コンクリート床版2の下面の桁間部2cの所定部位に炭素繊維補強シート等でなる繊維補強層8を貼付している。
【0016】
図3は本発明に係る道路橋の構造の実施の形態の一例を示す図であって、図1の矢視H−H線方向の拡大縦断面図である。
以下、図3に基づき本発明の実施の形態の細部の構造について説明する。
【0017】
前記コンクリート床版2の表面を所定の深さまで切削した後、その深さの半分程度まで、CFRP樹脂板等でなる繊維補強層7を該コンクリート床版2に接着させ該繊維補強層7を確実に該コンクリート床版2と一体化させるため、及び、該繊維補強層7が該コンクリート床版2の切削後の粗い表面との摩擦により摩耗、毀損することを防止するため、第1樹脂モルタル層6aが打設されている。その上に炭素繊維含浸補強層、ガラス繊維補強層、セラミック繊維補強層、又はアラミド繊維補強層からなるCFRP樹脂板等の繊維補強層7を、道路橋1の長手方向に所定相互間隔Aで配置構成し、かつ所定幅B及び所定厚さCを有した繊維補強層7として配置する。そして、第2樹脂モルタル層6bをコンクリート床版2の表面高さと同一となるまで打設する。そこで、前記繊維補強層7は前記第1及び第2樹脂モルタル層6a、6b間に介装される。該第2樹脂モルタル層6bを積層することにより、車両等の走行荷重又は自荷重は、舗装層3を通じて伝達されコンクリート床版2が一体となって受け、また繊維補強層7に対して緩衝されるため、繊維補強層7の耐用年数が延命されることとなる。
【0018】
次に、第2樹脂モルタル層6bと舗装層3との間にシート系防水材層11が敷設し、該舗装層3から酸性雨や各種不純物を含んだ雨水等が浸透してコンクリート床版2を形成するコンクリートや補強材としての鉄筋やPC鋼材等の腐食及び劣化を促進することを防止している。該シート系防水材層11は、前記第2樹脂モルタル層6bの上に硅砂層9を散布した後、その上にアスゴム系接着剤層10を塗布してから敷設する。最後に例えば50(mm)程度のアスファルト舗装等の舗装層3を施工し、道路橋1を仕上げる。
【0019】
図4は本発明に係る道路橋の構造の実施の形態について、施工方法の一例を示した流れ図である。
以下、本発明に係る道路橋の構造に基づく施工方法を図4に基づき説明する。
【0020】
準備工(ステップ1)としては、繊維補強層7としての例えばCFRP樹脂板は工場出荷時に於いてロール状で梱包されているので、施工現場に搬入された後、カッター等により所定の長さに切断する。尚、現場搬入前に所定の長さに切断してもよい。併せて、CFRP成形板をコンクリート床版2に設置する際の固定用ガイドを製作する。
【0021】
床版切削工(ステップ2)としては、前記CFRP樹脂板を設置するために必要な範囲のコンクリート床版2の上面を切削する。切削深さは所望の深さとするが、ここでは平均10(mm)としている。
【0022】
切削面研掃(ステップ3)としては、CFRP樹脂板とコンクリート床版2との接着が適切に施され一体として所定の強度を発揮できるように切削面に存在するコンクリートの脆弱部分を除去し、ショットブラストにより切削面を研掃し、切削面上の塵埃等のブロアー等による完全な除去を行い、及び、切削面上の雨水等水分のガスバーナ等による完全な除去などを行い、切削面を研掃する。
【0023】
固定用ガイドの設置(ステップ4)としては、前記ステップ1にて製作したCFRP樹脂板をコンクリート床版2に設置する際の固定用ガイドを、切削面に所定の間隔にてアンカーボルトにより取り付ける。尚、CFRP樹脂板は軽量小型の部材であるため、固定用ガイドは以下で行う第1樹脂モルタル層6a敷き均しの際にCFRP樹脂板が動くことを防止し、CFRP樹脂板を所定の位置に仮止めするためのものである。
【0024】
第1樹脂モルタル層6a敷き均し(ステップ5)としては、ゴムレーキ等により第1樹脂モルタル層6aを切削面との間に空隙が生じないよう丹念に仕上げる。ここで、第1樹脂モルタル層6aは、例えば、層厚が5(mm)、配合がJH−3樹脂モルタルのショーボンド化学株式会社製を使用し、主剤:硬化剤:硅砂=2:1:9である。ここで、主剤と硬化剤の混合は攪拌機を使用し、施工は気温が5℃以上、湿度が80%以下、切削面の水分率が10%以内の条件下で行うものとする。
【0025】
CFRP成形板介装設置(ステップ6)としては、第1樹脂モルタル層6aが硬化する前に前記ステップ1にて所定の長さに切断したCFRP樹脂板を前記ステップ4にて取り付けた固定用ガイドに沿って、図3に示すように、最適値として所定相互間隔Aを25(mm)、所定幅Bを50(mm)、及び所定厚さCを2(mm)に設定し、配置していく。尚、CFRP樹脂板は道路橋幅員方向に例えば、1300(mm)程度の長さを有して設定している。
この際、CFRP樹脂板を角材等により均一に押し付け、CFRP樹脂板の下面から第1樹脂モルタル層6aが漏出するまで圧着させ、CFRP樹脂板と第1樹脂モルタル層6aの間に空隙が生じないようにする。第1樹脂モルタル層6aが不足している箇所が判明すれば直ちに充填すると共に、工場出荷時すなわち現場搬入時にはCFRP樹脂板はロール状に梱包されているため湾曲しており、施工の際の表裏面によって中央部が凸となったり凹となったりするのでいずれの場合も空隙や浮き上がりが生じないよう充分な注意が必要である。
【0026】
第2樹脂モルタル層6b敷き均し(ステップ7)としては、切削していないコンクリート床版2と同じ高さにまでゴムレーキ等により第2樹脂モルタル層6bを仕上げる。その他の樹脂モルタルに関する事項は前記ステップ5と同様である。
【0027】
硅砂散布(ステップ8)としては、第2樹脂モルタル層6bが硬化する前にふるい等により均一に硅砂を例えば2(kg/m2)の量で散布し、硅砂層9を形成する。
【0028】
床版防水工(ステップ9)としては、前記ステップ8にて散布した硅砂層9の上にアスゴム系接着剤層10を塗布し瀝青系シート防水材層11を施す。
【0029】
舗装工(ステップ10)としては、最後にアスファルト舗装3等を行って道路面の仕上げを完了する。
【0030】
本発明に係る道路橋の構造は叙上した構成、作用、工法を有するので、次の効果がある。
【0031】
請求項1記載の発明によれば、床版および該床版の上部に舗装層を備えた道路橋に於いて、該舗装層の下面に敷設したシート系防水材層と、該シート系防水材層の下面に敷設したアスゴム系接着剤層と、該アスゴム系接着剤層の下面に第2樹脂モルタル層が硬化する前に硅砂を散布して形成した硅砂層と、前記床版の上面に第1及び前記第2樹脂モルタル層を構成し、前記道路橋の幅員方向に列設し、該道路橋の長手方向に所定相互間隔Aで配置構成し、かつ所定幅B及び所定厚さCを有した繊維補強層を第1及び第2樹脂モルタル層間に介装したことを特徴とする道路橋の構造を提供する。
このような構成としたので、道路橋の張出し部の垂直方向の荷重によりコンクリート床版の上面に発生する引張力に対し、軽量かつ強度の優れた繊維補強層によって対抗することができ、確実に既設床版との一体化が図れ耐荷力が向上することにより現行の走行車両荷重に十分耐えうる構造とすることができ安全性を確保する効果がある。
また、繊維補強層を第1樹脂モルタル層と第2樹脂モルタル層間に介装したので、舗装層を通じて伝達される車両等の走行荷重が緩衝されると共に、コンクリート床版の切削面と直接摩擦等による摩耗、毀損が緩和されることにより、該繊維補強層の耐用年数が延命される効果がある。また、舗装層と第2樹脂モルタル層との間にシート系防水材層及びアスゴム系接着剤層並びに該アスゴム系接着剤層の下面に第2樹脂モルタル層が硬化する前に硅砂を散布して形成した硅砂層を設けたので、舗装層から浸透する酸性雨や各種不純物を含んだ雨水等によるコンクリートの破砕を防止し、かつ鉄筋、PC鋼材等の補強鋼材の腐食や劣化を防止することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る道路橋の構造の実施の形態の一例を示す図であって、一方の車線の横断面図である。
【図2】本発明に係る道路橋の構造の実施の形態の一例を示すであって、(a)は道路橋上面の平面図、(b)は道路橋下面の底面図である。
【図3】本発明に係る道路橋の構造の実施の形態の一例を示す図であって、図1の矢視H−H線方向の拡大縦断面図である。
【図4】本発明に係る道路橋の構造の実施の形態について、施工方法を示した流れ図である。
【図5】従来の技術に於ける道路橋の補強構造の一例を示す横断面図である。
【符号の説明】
1 道路橋
2 コンクリート床版
2a 地覆
2b 張出し部
2c 桁間部
3 舗装層
4 端桁
5 中央桁
6a 第1樹脂モルタル層
6b 第2樹脂モルタル層
7 繊維補強層
8 炭素繊維シート
9 硅砂層
10 アスゴム系接着剤層
11 シート系防水材層
12 従来の技術に於ける道路橋
13 炭素繊維強化樹脂板(CFRP樹脂板)
14 コンクリート床版
14a 張出し部
15 アスファルト舗装
16 炭素繊維シート
17 端桁
18 中央桁
A 繊維補強層の相互間隔
B 繊維補強層の幅
C 繊維補強層の厚さ
Claims (1)
- 床版および該床版の上部に舗装層を備えた道路橋に於いて、該舗装層の下面に敷設したシート系防水材層と、該シート系防水材層の下面に敷設したアスゴム系接着剤層と、該アスゴム系接着剤層の下面に第2樹脂モルタル層が硬化する前に硅砂を散布して形成した硅砂層と、前記床版の上面に第1及び前記第2樹脂モルタル層を構成し、前記道路橋の幅員方向に列設し、該道路橋の長手方向に所定相互間隔Aで配置構成し、かつ所定幅B及び所定厚さCを有した繊維補強層を第1及び第2樹脂モルタル層間に介装したことを特徴とする道路橋の構造。
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