JP4975464B2 - 鋼床版舗装構造およびその構築方法 - Google Patents

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Description

本発明は道路橋や高架橋などに用いられる鋼床版舗装構造およびその構築方法に関する。
鋼床版上にアスファルト舗装やコンクリート舗装を行った鋼床版舗装は従来から道路橋や高架橋などに広く用いられているが、近年、交通車両の増大や重量化、さらには架橋時の溶接方法などにより鋼床版自体に亀裂が入り、鋼床版の耐久性が大幅に低下していることが大きな社会問題となっている。この補強対策として鋼床版上面にアスファルト舗装ではなく、剛性の高い繊維補強コンクリートを打設して剛性回復させる工法が適用されだしている。このような工法として、鋼床版の上にスタッドを突設しそれらの表面にエポキシ樹脂などの樹脂系塗膜材を塗布して防水層を形成し、その上に繊維補強コンクリート舗装を行う工法が提案されている(特許文献1)。しかしこの工法でも、交通車両の車輪走行付近に発生する部分的な層間剥離やひび割れの発生を防ぎ難く、また、補修時にはコンクリート版を橋面から全面的にはがすことが困難で、長期にわたる工事や工事期間中の騒音発生が避けられないという問題を生ずる。
特開2005−314992号公報
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決することにあり、特に施工が容易で、耐久性に優れ、層間剥離やひび割れなどが発生し難く、また補修時にも解体が容易で工事期間が短く騒音発生も少ない新規鋼床版舗装構造およびその構築方法を提供することにある。
本発明は、第1に、車道部における鋼床版舗装構造において、鋼床版上に配されたコンクリート版もしくはモルタル版と、前記コンクリート版上もしくは前記モルタル版上に施工されたアスファルト舗装と、前記鋼床版と前記コンクリート版もしくは前記モルタル版との間に介在し、前記鋼床版と前記コンクリート版もしくは前記モルタル版とを接続する、ゴム系シーリング材からなる群から選ばれる層間付着材料を用いた層間付着層とを備えることを特徴とする鋼床版舗装構造である。
本発明は、第2に、車道部における鋼床版舗装構造において、鋼床版上に配されたコンクリート版もしくはモルタル版と、前記コンクリート版上もしくは前記モルタル版上に施工されたアスファルト舗装と、前記鋼床版と前記コンクリート版もしくは前記モルタル版との間に介在し、前記鋼床版と前記コンクリート版もしくは前記モルタル版とを接続する、ゴム入りアスファルトを主成分とした層間付着材料を用いた層間付着層とを備えることを特徴とする鋼床版舗装構造である。
本発明は、第に、層間付着がイオン結合形成性官能基をもつゴム系シーリング材からなる上記の鋼床版舗装構造である。
本発明は、第に、コンクリート版もしくはモルタル版が繊維補強されている上記の鋼床版舗装構造である。
本発明は、第に、鋼床版が厚さ12mmの鋼床版である上記の鋼床版舗装構造である。
本発明は、第に、鋼床版がUリブ鋼床版である上記の鋼床版舗装構造である。
本発明は、第に、前記層間付着層の厚みが1乃至5mmである上記の鋼床版舗装構造である。
本発明は、第に、車道部における鋼床版舗装構造の構築方法において、鋼床版の表面にゴム系シーリング材からなる群から選ばれる層間付着材を塗布または接着して層間付着層を形成し、その上に生コンクリートを打設するかまたはコンクリート版もしくはモルタル版を付着させ、さらにその上にアスファルト舗装を施工することを特徴とする鋼床版舗装構造の構築方法である。
本発明は、第に、車道部における鋼床版舗装構造の構築方法において、鋼床版の表面に加熱したゴム入りアスファルトを主成分とした層間付着材料を塗布して層間付着層を形成し、その上にコンクリート版もしくはモルタル版を付着させ、さらにその上にアスファルト舗装を施工することを特徴とする鋼床版舗装構造の構築方法である。
本発明は、第10に、車道部における鋼床版舗装構造の構築方法において、鋼床版の表面にイオン結合形成性官能基をもつゴム系シーリング材からなる層間付着材料を付着させて層間付着層を形成し、その上に生コンクリートを打設してコンクリート版を形成し、さらにその上にアスファルト舗装を施工することを特徴とする鋼床版舗装構造の構築方法である。
本発明は、第11に、ゴム系シーリング材は粘着性を有し、シート状に形成された状態で前記鋼床版に付着させる上記の方法である。
本発明は、第12に、前記層間付着層を1乃至5mmの厚みで形成する上記方法である。
本発明により、施工が容易で、耐久性に優れ、長期間経過後も層間剥離やひび割れなどが発生し難く、また補修時にも解体が容易で工事期間が短く騒音発生も少ない鋼床版舗装構造が提供される。さらに、本発明により、鋼床版に発生する応力をコンクリート版に伝達しない応力緩和機能を有する鋼床版舗装構造が提供される。
以下に、本発明の好ましい態様について説明する。
好ましい態様の1つでは層間付着材として瀝青系材料を用いる。瀝青系材料としてはストレートアスファルト、ブローンアスファルトなどのアスファルトに、スチレンブタジエンゴム、スチレンブタジエンスチレンゴムなどの合成ゴムを典型例とするゴム成分を10〜40%程度添加したゴム入りアスファルトを主成分とし、これに炭酸カルシウムなどの鉱物質粉末を加えたものが好ましく用いられる。
これらの瀝青系材料は、加熱溶融させて鋼床版の表面に塗布される。塗布厚は1〜5mm程度が好ましい。
このように塗布された加熱溶融状態の瀝青系材料層の上にコンクリート版もしくはモルタル版を重ねて付着させる。コンクリート版もしくはモルタル版としては、鋼繊維、炭素繊維などの繊維やゴムラテックス等を混入させた補強版、特に繊維補強版が好ましく用いられる。コンクリート版もしくはモルタル版の厚さは特に制限されないが通常1〜10cm程度である。
本発明でより好ましく用いられる層間付着材はゴム系シーリング材であり、特に好ましく用いられるのは、イオン結合性官能基をもつゴム系シーリング材である。ここで、イオン結合性官能基としてはカルボキシル基やスルホン酸基などの有機酸性基が好ましく用いられる。
このようなゴム系シーリング材としては、カルボキシル基などのイオン結合性官能基を側鎖にもつ適宜の合成ゴム、天然ゴム、それらの再生ゴムがある。より具体的には、カルボキシル基変性ブチルゴム、カルボキシル基変性クロロプレンゴム、カルボキシル基変性アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシル基変性エチレンプロピレンゴム、マレイン酸変性ゴムなどが例示される。
ゴムへのイオン結合性官能基の導入方法の一例としては、(メタ)アクリル酸やマレイン酸などのイオン結合性官能基をもつモノマーをゴム成分中に共重合によって導入する方法などが例示される。
カルボキシル基などのイオン結合性官能基の量はイオン結合を形成しうる量であれば特に制限されないが、通常はゴム成分1グラム当り0.1ミリ当量以上、特に0.2〜1ミリ当量程度が好ましい。
これらのゴム系シーリング材は溶液状、ペースト状、シート状等で本発明に供しうるが、シート状で供することが好ましい。通常は粘着性を保持した状態で離型紙を表面に貼着したシート状のゴム系シーリング材の離型紙を剥離して本発明に供される。ゴム系シーリング材の厚さは特に制限はないが、通常1〜5mm程度が好ましい。
鋼床版の表面にこの粘着シート状のゴム系シーリング材を付着させた後、その表面から離型紙を剥離し、その上に、直接生コンクリートを打設してコンクリート版を形成する。プレキャストのコンクリート版もしくはモルタル版を付着させることも可能だが、生コンクリートの打設が一層顕著な効果をもたらす。
生コンクリートを打設すると、生コンクリート中の水分の作用でイオン化したセメント成分中のカルシウムなどのカチオン分とゴム系シーリング材中のカルボキシル基などのイオン結合形成性官能基とがイオン結合して両層間に強固な接着状態を形成する。
生コンクリートは鋼床版舗装に通常用いられるものと同様のものでよく、鋼繊維や炭素繊維などの補強用繊維を含有する繊維補強コンクリートが特に好ましく用いられる。生コンクリート打設層の厚さは特に制限されないが、通常1〜10cm程度である。
かくして付着されたコンクリート版もしくはモルタル版上に必要に応じて表層としてアスファルト舗装がなされる。
本発明の鋼床版舗装構造は鋼床版の補修または補強に適用すると特に効果的である。
また本発明の鋼床版舗装構造は、厚さが標準12mmの鋼床版において特に効果を発揮する。また鋼床版には、その支持構造の違いにより、Uリブ鋼床版や板リブ鋼床版等が知られているが、本発明の鋼床版舗装構造はUリブ鋼床版を用いた場合に亀裂防止等の点で特に有効性が高い。
次に実施例に基づいて本発明を例証する。
〔試験1〕
本発明の鋼床版舗装構造において鋼繊維補強コンクリートが硬化するときの乾燥収縮による影響を確認するために、次のような試験を行った。
縦横3m、厚さ12mmの鋼床版(構造実験用供試体)を2基準備し、各鋼床版の上面に層間付着材料として材料a、bを接着または塗布し、これらの上に鋼繊維補強コンクリートを打設してそれぞれ供試体A、Bとした。材料aはブチル再生ゴム100重量部、テルペン重合樹脂45重量部、ポリイソブチレン低重合物30重量部および炭酸カルシウム100重量部を混練して押し出し成形したカルボキシル基をもつゴム系シート材で、ゴム1グラム当たり0.25ミリ当量のカルボキシル基をもつものである。材料bはストレートアスファルト、熱可塑性スチレンブタジエンゴムおよび石油系樹脂等を混練した瀝青系塗膜材である。舗装断面は図1に示すとおりである。
供試体A、Bを環境シミュレーター内に入れて一定温度のもとに養生し、フレッシュな鋼繊維補強コンクリートが硬化するまでの状態を観察した。その結果、供試体A、Bのいずれのコンクリート版にもひび割れの発生がなかった。これらの試験結果より、本発明の鋼床版舗装構造によれば、フレッシュコンクリートが硬化するときの乾燥収縮に層間付着材料が追従することにより、不規則なひび割れを抑制できることが確認された。
〔試験2〕
本発明の鋼床版舗装構造に対する温度変化による影響を確認するために、次のような試験を行った。
試験1で使用した供試体A、Bが硬化した後、各供試体の鋼繊維補強コンクリート上面の中央と左右端部に歪みゲージを貼り付けた。なお、各供試体の鋼床版上面の中央と左右端部にも、試験1で鋼繊維補強コンクリートを打設する前にあらかじめ歪みゲージを貼り付けておいた。各供試体を恒温室に入れて、都内の冬期および夏期の気温を考慮して室温を上昇下降させ、このときのコンクリート版の状態および鋼床版とコンクリート版の長さの変位量を観察・測定した。
その結果、供試体A、Bのいずれのコンクリート版にもひび割れが見られなかった。また、鋼床版の長さの変位量とコンクリート版の長さの変位量とを比較すると、鋼床版の変位量の方が大きかった。これらの試験結果より、本発明の鋼床版舗装構造によれば、鋼床版とコンクリート版の変位量の差によって発生する応力を層間付着材料が吸収し、該応力をコンクリート版に伝達しない応力緩和機能を発揮するということが確認された。
〔試験3〕
本発明の鋼床版舗装構造に対する交通荷重による影響を確認するために、次のような試験を行った。
試験2で使用した供試体A、Bの鋼繊維補強コンクリート上面に118kNの輪荷重を繰り返し加えて、このときのコンクリート版の状態を観察した。
その結果、現在試験中ではあるが、繰り返し荷重が50万回の時点において、供試体A、Bのいずれのコンクリート版にもひび割れなど破損は見られなかった。この試験結果より、本発明の鋼床版舗装構造によれば、高速道路における鋼床版舗装の標準荷重に対して十分な耐久性をもつということが推定できる。
〔試験4〕
本発明の鋼床版舗装構造を撤去するときの施工効率などを確認するために、次のような試験を行った。通常の鋼床版上のアスファルト舗装を撤去する際に発生する工事騒音は、非常に大きな課題となっている。剛性回復を目的として鋼床版上にコンクリート舗装を施工した場合、コンクリート版を撤去するためにブレーカなどを使用することは現実的には認められず、コンクリート版をコンクリートカッタで小片に切断した後、各小片にアンカを打ち込んで引き抜く方法しか低騒音での撤去方法はない。そこで、縦横1m、厚さ12mmの鋼床版(構造実験用供試体)を2基準備し、各鋼床版の上面に層間付着材料として試験1と同じ材料a、bを接着または塗布し、これらの上に鋼繊維補強コンクリートを打設してそれぞれ供試体C、Dとした。上記したアンカによる引き抜きを想定して、供試体C、Dのコンクリート版を小片に切断してアンカによる引き抜き試験を行った。
その結果、供試体C、Dのいずれのコンクリート版に関しても鋼繊維補強コンクリートを鋼床版上から容易に撤去することができ、撤去後の鋼床版面は残存するコンクリートが少なく比較的きれいな状態であった。これらの試験結果より、本発明の鋼床版舗装構造によれば、舗装補修時に鋼床版からコンクリートを容易に剥がすことができ、補修時の工事騒音を低減することができると同時に工事の施工効率がよくなるということが推定できる。
本発明の鋼床版舗装構造の一例を示す断面図。

Claims (12)

  1. 車道部における鋼床版舗装構造において、
    鋼床版上に配されたコンクリート版もしくはモルタル版と、
    前記コンクリート版上もしくは前記モルタル版上に施工されたアスファルト舗装と、
    前記鋼床版と前記コンクリート版もしくは前記モルタル版との間に介在し、前記鋼床版と前記コンクリート版もしくは前記モルタル版とを接続する、ゴム系シーリング材からなる群から選ばれる層間付着材料を用いた層間付着層とを備えることを特徴とする鋼床版舗装構造。
  2. 車道部における鋼床版舗装構造において、
    鋼床版上に配されたコンクリート版もしくはモルタル版と、
    前記コンクリート版上もしくは前記モルタル版上に施工されたアスファルト舗装と、
    前記鋼床版と前記コンクリート版もしくは前記モルタル版との間に介在し、前記鋼床版と前記コンクリート版もしくは前記モルタル版とを接続する、ゴム入りアスファルトを主成分とした層間付着材料を用いた層間付着層とを備えることを特徴とする鋼床版舗装構造。
  3. 層間付着がイオン結合形成性官能基をもつゴム系シーリング材からなる請求項1に記載の鋼床版舗装構造。
  4. コンクリート版もしくはモルタル版が繊維補強されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼床版舗装構造。
  5. 鋼床版が厚さ12mmの鋼床版である請求項1〜のいずれか1項記載の鋼床版舗装構造。
  6. 鋼床版がUリブ鋼床版である請求項1〜のいずれか1項記載の鋼床版舗装構造。
  7. 前記層間付着層の厚みが1乃至5mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の鋼床版舗装構造。
  8. 車道部における鋼床版舗装構造の構築方法において、
    鋼床版の表面にゴム系シーリング材からなる群から選ばれる層間付着材を塗布または接着して層間付着層を形成し、その上に生コンクリートを打設するかまたはコンクリート版もしくはモルタル版を付着させ、さらにその上にアスファルト舗装を施工することを特徴とする鋼床版舗装構造の構築方法。
  9. 車道部における鋼床版舗装構造の構築方法において、
    鋼床版の表面に加熱したゴム入りアスファルトを主成分とした層間付着材料を塗布して層間付着層を形成し、その上にコンクリート版もしくはモルタル版を付着させ、さらにその上にアスファルト舗装を施工することを特徴とする鋼床版舗装構造の構築方法。
  10. 車道部における鋼床版舗装構造の構築方法において、
    鋼床版の表面にイオン結合形成性官能基をもつゴム系シーリング材からなる層間付着材料を付着させて層間付着層を形成し、その上に生コンクリートを打設してコンクリート版を形成し、さらにその上にアスファルト舗装を施工することを特徴とする鋼床版舗装構造の構築方法。
  11. 前記ゴム系シーリング材は粘着性を有し、シート状に形成された状態で前記鋼床版に付着させることを特徴とする請求項10に記載の方法。
  12. 前記層間付着層を1乃至5mmの厚みで形成することを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項記載の鋼床版舗装構造の構築方法。
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