JP2016141991A - コンクリート床版上面の補修工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コンクリート床版の延命を図ることのできるコンクリート床版上面の補修工法を提供する。
【解決手段】コンクリート床版上の舗装部分の内でポットホールを含む範囲を撤去する舗装撤去工程と、前記コンクリート床版の前記ポットホールに対応する劣化部を含む範囲のコンクリートをはつり取るはつり工程と、前記はつり工程で除去した部位にモルタルを流し込み、その上にプレキャストコンクリート板を設置してプレキャストコンクリート板と既設コンクリート床版とを接着するモルタル施工工程と、前記モルタル施工工程で設置したプレキャストコンクリート板の上に舗装を行う舗装工程とを備えたので、補修後に走行する車両の輪荷重を分散して耐荷重を向上することができる。また、舗装から浸透した塩化物イオンのコンクリート床版への浸透を抑制し、鉄筋の劣化を防止することができる。更に、将来、舗装の打換を行う際の路面切削機械が鉄筋を切断する等のコンクリート床版に及ぼす影響を防止することができる。
【選択図】図1

Description

この発明は、道路橋等のコンクリート床版部分の上面が劣化して舗装に変状を生じた場合に、劣化した箇所の舗装の直下及びその周囲のコンクリート床版の上面の修復を、コンクリート床版の鉄筋の上面に薄肉のプレキャストコンクリート板を取り付けることで補修する工法に関するものである。
コンクリート床版部分の上面に施工された舗装の変状、劣化には種々のパターンがある。
舗装部表層の剥離は、舗装の基層と表層の間の剥離に起因し、表層の舗装施工の良否に左右される。また、表層剥離ではブロック状に舗装が剥離して局部的に穴が発生し、この状態をポットホールと呼ぶ。
基層の剥離は、コンクリート床版と舗装の間の剥離を原因とし、防水層の上面や下面に滞水した水の影響によって基層が剥離する場合や、コンクリート床版の上面の変状に伴って基層が剥離する場合などがある。
この場合の劣化形態もポットホールと呼ばれる。
亀甲状ひび割れとは、縦方向、横方向の線状ひび割れが相互につながった状態であり、通行車両の荷重の影響を受けて舗装路面に発生したひび割れがつながったものである。舗装のひび割れの原因には、舗装の経年劣化や、コンクリート床版上面の変状に伴うもの等がある。亀甲状ひび割れを長期間放置すると通行車両や雨水の影響を受け、ポットホールの発生に至る場合もある。
流動わだちとは、交通荷重によりアスファルト混合物層が塑性変形することにより発生し、車輪走行部は沈下し、その周辺が盛り上がることをいう。長期間放置すると通行車両や雨水の影響を受け、ポットホールの発生に至る場合もある。
表層からのずれとは、車両の走行にともないアスファルト混合物の表層部が縦断方向に移動した現象であり、防水層と舗装または防水層と床版の接着不良により、防水層の下面にずれを生じて舗装路面に変状が発生する。変状発生後は通行車両の影響を受け、早期にポットホールの発生に至る場合もある。
また、ブリスタリングとは、舗装や防水層内に閉じこめられた水分や油分が気候的な作用で気化し、その蒸気が上層のアスファルト混合物を押し上げる現象である。変状発生後は通行車両の影響を受け、早期にポットホールの発生に至る場合もある。
上述した舗装の変状のうち、舗装自体や基層とコンクリート床版の接着面に問題がある場合は舗装のみを補修することで問題が解決する。しかし、舗装の変状の原因がコンクリート床版の劣化にある場合、舗装だけを補修してもコンクリート床版の変状が進行するため、再劣化を生じることになる。
図20〜図22に示すように、道路橋等のコンクリート床版10は、橋梁において劣化の生じ易い部分である。これは、床版に通行車両の荷重が直接作用することで、床版を構成するコンクリート11及び鉄筋12が繰り返し荷重を受け、疲労による損傷を受けるためである。さらに寒冷地では冬季に散布される凍結防止剤にふくまれる塩化物イオンが舗装の下にあるコンクリート床版に達し、塩化物イオンがコンクリート中に浸透して、床版の内部に配置された鉄筋を腐食させることで、コンクリート11にひび割れや剥離を発生させるとともに、鉄筋12の断面積が減少して鉄筋による補強効果も低下するためである。
劣化を生じたコンクリート床版10では、床版の最上段に配置された鉄筋の上面のコンクリートが剥離することが多い。これは疲労によって生じたひび割れの上部から水が浸透し、コンクリート床版の最上段に配置された鉄筋12を腐食させ、腐食に伴って生じる錆の体積膨張によってコンクリートが引き剥がされるためである。また、浸透する水に塩分が含まれる場合は、床版にひび割れが入っていなくとも、拡散浸透によって塩分が浸透するため、同様にコンクリート床版10の最上段に配置された鉄筋12を腐食させることで、同様な劣化が発生する(図22参照)。
このような劣化が発生すると、舗装の基層13の剥離や、亀甲状ひび割れが発生する。ポットホール15が発生すると、走行する車両がハンドルを取られることで走行車両の安全性に影響を及ぼす。また、ポットホール15より車両がバウンドすることで、騒音が近隣の環境に影響を与え、さらにはその衝撃が床版の劣化を加速させる。そのためポットホール15が発生した場合には、早急に舗装の補修を行う必要がある。
このようなポットホール15が発生した箇所では、ポットホールの補修が行われる(図23参照)。また、ポットホールの補修を行った箇所の周辺のコンクリート床版10は同様な劣化作用を受けているため、コンクリートが緩んでいることも多く、塩分が浸透している場合もある。そのため補修後数年で補修部ならびにその周辺の床版が劣化してポットホールが発生し、ポットホール15の補修を繰り返す場合も多い。そのためポットホールは特定の位置や区間に集中して発生することが多く、そのような場所では舗装面に多数のポットホール補修跡16を生じ、補修跡の継目によって、多くの凹凸が発生し、走行性の低下や、騒音などの問題が発生する。
コンクリート床版10に多数のポットホール補修跡16を生じ、走行性への影響が無視できない状態になると、コンクリート床版全体で舗装の再施工が行われる。タイヤと舗装の摩擦等によって舗装がすり減るなどの原因で、轍掘れを生じた場合も同様に舗装の再施工が行われる。一般的に、舗装の再施工はコンクリート床版上の舗装を全て削り取ったあと、新たなアスファルトコンクリートを敷設する方法で行う。
例えば、特許文献1には、コンクリート床版を補強するために床版コンクリートの表面を数センチメートルの厚さで切削した後に新しいコンクリートを打ち足す工法が提案されている。
この工法は、損傷の生じたコンクリートを除去することも可能であり、コンクリートを取り替えることになるため床版コンクリートの機能を回復させることも可能である。
また、非特許文献1には、コンクリート床版上面の劣化箇所を除去したあと、劣化部分を樹脂モルタルで補修したあと、厚さ12mmのプレキャスト板を2層に千鳥配置し、床版ならびに2層のスレートボードによるプレキャスト板を樹脂モルタルで接着して一体化する方法が示されている。
この工法は損傷を生じた箇所の修復とともに、低下した床版の耐荷性を回復することが可能である。
特開2011−149244号公報
D−RAP工法と小型はり試験(コンクリート工学年次論文報告集Vol.17、No.2、1995)
高速道路における一般的なポットホールの補修手順を例として、既往のポットホール補修ならびに補修後のコンクリート床版における課題を説明する。
一般的に、ポットホール15の補修は、二段階で行われる。まず、路面にポットホール15などの舗装の変状が発生したら、発見後1日以内に、緊急補修として、常温での施工が可能な舗装補修材で埋め、速やかに路面を修復する。緊急補修は走行安全性を確保することを優先するため、コンクリート床版の劣化により断面欠損した部分は剥離したコンクリートを取り除き、清掃したあと、舗装の補修と同時に舗装補修材で埋める場合が多い。
このような緊急補修を行った箇所は、緊急補修後1箇月程度の期間内に部分補修と呼ばれる再補修を行う。部分補修では、コンクリートカッターを用いてポットホール発生個所を包含するような四角形で舗装に切れ目を入れ、緊急補修で使用した舗装補修材を含めて、その内部の舗装をコンクリートブレーカー等を用いてはぎ取る。また、コンクリート床版の劣化部についても、コンクリートブレーカー等を用いてはつり、除去する。次に、コンクリート床版のはつりを行った箇所を清掃したのち、ジェットコンクリートと呼ばれる速硬性のコンクリートで埋め戻す。その次に、コンクリートが固まったら、その上にアスファルトコンクリートを用いて舗装を行う手順で行う。
このように部分補修は、その施工の大半が作業員の現場作業として行う手作業が現状であり、施工を簡便に行う方法の開発が望まれていた。また、埋め戻したコンクリートの品質を確保するには、硬化後に十分な水分を与えるか、水分の逸散を防止するようなコンクリートの養生が必要であるが、部分補修は1日で施工を完了させる必要があるため、十分な養生を行うことができない。埋め戻したコンクリートは発熱後の硬化時、ならびに硬化後の乾燥によって収縮するため、ひび割れの発生や、コンクリート床版との接着面での剥離の発生、コンクリートの緻密さに欠けることが多く、耐荷性や耐久性に劣り、再劣化を生じやすいという課題があった。
路面が走行性への影響を無視できない状態になった場合に実施される、コンクリート床版全体での舗装の再施工について、高速道路における施工手順を例として、既往の施工方法における課題を説明する。舗装の再施工は一般に舗装改良と呼ばれる。舗装改良工事では、まず、補修箇所となるコンクリート床版全体の施工が可能となるよう、比較的大規模な交通規制を行う。次に路面切削機と呼ばれる大型の機械で舗装を切削し、除去する。次に、切削後のコンクリート床版の上面を平坦に整形したのち、床版の上面全体を舗装して施工が完了する。
路面切削機は無限軌道を有する車両であり、車体の下部ある切削ドラムが回転して、舗装を削り取る機械である。切削ドラムに取り付けられている切削用の刃は高強度の金属でできており、舗装だけでなく、コンクリート床版を削ることができる。コンクリート床版上の舗装の切削では、できる限りコンクリート床版を傷つけないように注意して施工するが、現実にはコンクリート床版の上面付近も切削され、部分補修で施工したコンクリートも切削される。さらに、切削の施工管理が十分でない場合には、コンクリートだけでなく、コンクリート床版に配置されていた鉄筋を切断する場合もある。コンクリートが切削された床版は厚さの減少に伴って断面積が減少するため、当初の断面が残されていた場合に比較して、剛性と耐荷性が低下し車両の荷重によるコンクリート床版の変形が大きくなり、劣化が早く進行する。したがって、このような舗装の改良においては、切削時にコンクリート床版を傷つけないか、あるいは傷つけても床版の耐荷性や耐久性に影響を与えないような工法の開発が求められていた。
また、特許文献1の工法では、コンクリート床版の耐荷性の回復は期待できるが、補修後に散布された凍結防止剤による新たな塩化物イオンの浸透を防止するには、上面に施工されるコンクリートの品質を高める必要がある。上面に施工されるコンクリートの品質を高めるには、水セメント比が小さく、緻密なコンクリートを用いるとともに、硬化後のコンクリートに十分な水分を供給するための湿潤養生を必要とするが、前述のように、舗装の再施工においては十分な湿潤養生期間を確保することは不可能である。
また、非特許文献1に記載のD−RAP工法にあっては、床版の補修は自然環境の中で実施されるものであり、床版の補修を行う時の天候は雨天の場合や、湿度が高いこともある。また、床版上面の劣化箇所は舗装の防水性が失われているため、湿潤状態となっている場合が多い。非特許文献1に示される方法では接着に樹脂モルタルを使用する。非特許文献1には接着面が湿っている場合、接着性が低下するため、施工にあたっては接着面を乾燥させる必要があることが示されている。接着面が湿っている場合、雨よけを行ったうえで、乾燥した空気や炎によって接着面となるコンクリートの表面を乾燥させるが、コンクリート中に浸透した水分を完全に蒸発させるのは容易ではない。
本発明は、コンクリート床版上のポットホールの補修や舗装の再施工において、床版の耐荷性の低下を抑制するとともに、床版上面からの新たな塩化物イオン浸透を抑制できるコンクリート床版上面の補修工法を提供するものである。
この発明は、以下のような内容である。
(1)本発明のコンクリート床版面の補修工法は、コンクリート床版上の舗装部分の内でポットホールを含む範囲を撤去する舗装撤去工程と、前記コンクリート床版の前記ポットホールに対応する劣化部を含む範囲のコンクリートをはつり取るはつり工程と、前記はつりコンクリート床版は、道路橋のコンクリート床版である工程で除去した部位にモルタルを流し込み、その上にプレキャストコンクリート板を設置してプレキャストコンクリート板と既設コンクリート床版とを接着するモルタル施工工程とを備えたことを特徴とする。
(2)前記コンクリート床版は、道路橋のコンクリート床版であることを特徴とする。
(3)前記モルタル施工工程において、接着に使用するモルタルはセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、ポリマーモルタルの中の何れか1であることを特徴とする。
(4)前記プレキャストコンクリート板のモルタルとの接触面には、100mm以下の間隔で表面から裏面に通じる複数の貫通孔が形成されたことを特徴とする。
(5)前記モルタル施工工程において、補修対象となるコンクリート床版から露出した鉄筋が前記プレキャストコンクリート板の貫通孔に配置された連結治具で結合されることを特徴とする。
(6)前記プレキャストコンクリート板は、水結合材比35重量%以下25重量%以上のコンクリートあるいはモルタル材料が使用されていることを特徴とする。
(7)前記プレキャストコンクリート板は、結合材料にシリカフュームやフライアッシュ等のポゾランが10重量%以上混合されていることを特徴とする。
(8)前記プレキャストコンクリート板は、高炉スラグ微粉末が30重量%以上混合されていることを特徴とする。
(9)前記プレキャストコンクリート板は、使用されるコンクリートあるいはモルタル材料に、金属製あるいは有機繊維製の短繊維が体積比0.5%以上混入されていることを特徴とする。
この発明のコンクリート床版上面の補修工法によれば、コンクリート床版上の舗装部分の内でポットホールを含む範囲を撤去する舗装撤去工程と、前記コンクリート床版の前記ポットホールに対応する劣化部を含む範囲のコンクリートをはつり取るはつり工程と、前記はつり工程で除去した部位にモルタルを流し込み、その上にプレキャストコンクリート板を設置してプレキャストコンクリート板と既設コンクリート床版とを接着するモルタル施工工程とを備えた。プレキャストコンクリート板はあらかじめ工場で製作されたものであるため、施工を行う時点では既に十分な強度を有している。そのため、施工直後であっても走行する車両の輪荷重をプレキャストコンクリート板によって分散することができる。
また、プレキャストコンクリート板の下面は薄いモルタル層となるため、従来のようなコンクリートで埋め戻す方法に比べて、劣化したコンクリートのはつり量を低減でき、かつ現場で練り混ぜるコンクリートの量も少なくできるので、施工の手間を減らせるとともに、施工時間も短縮できる。更に、将来、舗装の打換を行う場合の路面切削作業の際に、床版上面に配置したプレキャストコンクリート板が先に切削されるため、切削歯がコンクリート床版に及ぼす影響を防止することができる。また、切削により痛んだプレキャストコンクリート板は取り換えることができるため、取り換えた後は補修直後の状態まで性能を回復できる。
また、前記モルタル施工工程において、接着に使用するモルタルはセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、ポリマーモルタルの中の何れか1であるので、舗装から浸透した塩化物イオンのコンクリート床版への浸透を抑制することができる。
また、接着はセメント系の材料を使用するため、コンクリート床版の補修部は湿った状態であることが好ましく、非特許文献1に示される方法で必要となるコンクリート床版の乾燥工程を必要としない。
また、前記プレキャストコンクリート板のモルタルとの接着面には、100mm以下の間隔で表面から裏面に通じる複数の貫通孔が形成されているので、プレキャストコンクリート板の下面に空気溜りを生ずることがなくなり、コンクリート床版との接着性を向上することができる。
また、前記モルタル施工工程において、前記プレキャストコンクリート板の貫通孔に配置された連結治具は補修対象となるコンクリート床版の鉄筋と結合されるので、コンクリート床版とプレキャストコンクリート板の接続をより強固にすることができる。
また、前記プレキャストコンクリート板は、水結合材比35重量%以下25重量%以上のコンクリートあるいはモルタル材料が使用されているので、プレキャストコンクリート板の強度を増して薄肉でも車両荷重に対して強くすることができる。
また、前記プレキャストコンクリート板は、結合材料にシリカフュームやフライアッシュ等のポゾランが10重量%以上混合されているので、プレキャストコンクリート板の緻密さを増して塩化物イオン浸透抵抗性を高めることができる。
また、前記プレキャストコンクリート板は、結合材料に高炉スラグ微粉末が30重量%以上混合されているので、プレキャストコンクリート板の緻密さを増して塩化物イオン浸透抵抗性を高めることができる。
また、前記プレキャストコンクリート板は、使用されるコンクリートあるいはモルタル材料に、金属製あるいは有機繊維製の短繊維が体積比0.5%以上混入されているので、プレキャストコンクリート板の引張強さを増して強い曲げ靱性を得ることができる。
本発明のコンクリート床版上面の補修工法に使用されるプレキャストコンクリート板を示す平面図である。 図1のA−A線断面図である。 プレキャストコンクリート板とコンクリート床版との接合状況を示す説明図である。 コンクリート床版上の劣化部分(ポットホール)を示す説明図である。 図4における劣化部分の断面図である。 劣化部分を舗装補修材で補修した場合の周囲をコンクリートカッターで切断した説明図である。 図6における劣化部分の断面図である。 コンクリートカッターで切断した範囲を切削機で切削して鉄筋が現れた状態を示す平面図である。 図8におけるコンクリート撤去部分の断面図である。 コンクリート撤去部分にモルタルを塗布した状態を示す説明図である。 図10におけるモルタル塗布部分の断面図である。 モルタル塗布部分の上にプレキャストコンクリート板を設置した状態を示す平面図である。 図12におけるプレキャストコンクリート板設置部分の断面図である。 プレキャストコンクリート板の上から舗装施工した状態を示す平面図である。 図14における舗装部分の断面図である。 本発明の他の実施形態を示すもので、複数のプレキャストコンクリート板を使用して補修する場合の平面図である。 図16における舗装部分の断面図である。 本発明のコンクリート床版上面の補修工法により補修した後に再度補修する場合を示す説明図である。 図18における補修部分の断面図である。 コンクリート床版の劣化を示す説明図である。 コンクリート床及び舗装の劣化を示す説明図である。 コンクリート床版の劣化を示す説明図である。 従来の緊急補修工法を示す説明図である。 本発明の第3の実施例を示すもので、中空床版橋に適用する場合の説明図である。 同中空床版橋の円筒型枠の上面コンクリートが陥没した場合を示す説明図である。 同中空床版橋の補修工法におけるコンクリートの除去を示す説明図である。 同中空床版橋の補修工法における現場打ちコンクリート施工を示す説明図である。 同中空床版橋の補修工法におけるプレキャストコンクリート板の施工を示す説明図である。 同補修工法に使用されるプレキャストコンクリート板を示す(a)正面図と(b)平面図である。 同補修工法における施工の程度を示す説明図である。
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて、本発明を詳細に説明する。図1は本発明のコンクリート床版上面の補修工法に使用されるプレキャストコンクリート板を示す平面図で、図2はそのA−A線断面図、図3はプレキャストコンクリート板とコンクリート床版との接合状況を示す説明図、図4〜図15は、本発明のコンクリート床版上面の補修工法を示す説明図である。
本発明のコンクリート床版上面の補修工法は、コンクリート床版10上の舗装17部分の内でポットホール15を含む範囲を撤去する舗装撤去工程と、コンクリート床版10のポットホール15に対応する劣化部を含む範囲のコンクリートをはつり取るはつり工程と、前記はつり工程で除去した部位18にモルタル19を流し込み、その上にプレキャストコンクリート板24を設置してプレキャストコンクリート板24と既設コンクリート床版とを接着するモルタル施工工程とを備えている。
ここで、本発明が対象とするコンクリート床版上面の補修の前提となるコンクリート床版の状態について説明する。本発明はコンクリート床版上面の補修を対象としたものである。実施例1におけるコンクリート床版の劣化状態は、主としてコンクリート床版の上端にある鉄筋の周囲およびその上面のコンクリートが劣化しており、上端の鉄筋より下面のコンクリート床版は耐荷性や耐久性が大きく低下していない状態が適している。
また、本発明は部分補修、ならびに舗装改良において適用されるものである。実施例1では、本発明をコンクリート床版上の舗装の部分補修に適用した場合について記述する。
ここで使用するプレキャストコンクリート板24は、図1、2に示すように事前にプレキャストコンクリート製品の製造工場で製造される。補修の対象となる舗装の下に存在するコンクリート床版10には、鉄筋12が上側と下側に2段配置されている。この発明で使用されるプレキャストコンクリート板24は、コンクリート床版10の上側に配置された鉄筋12と、コンクリート床版の上面の間に収まるように配置することを基本としている。コンクリート床版10の上側に配置された鉄筋12とコンクリート床版の上面の間隔は「鉄筋かぶり」と呼ばれ、コンクリート床版での設計上の鉄筋かぶりは通常35mmが確保されている。そのためプレキャストコンクリート板24の厚さは35mm未満であることが必要であり、実構造物における鉄筋かぶりの誤差を考慮すると、プレキャストコンクリート板24の厚さは25mm以下であるのが好ましい。そのためプレキャストコンクリート板24のコンクリート材料には、最大骨材径10mm以下の粗骨材を用いたコンクリートか、あるいは粗骨材を用いないモルタルを用いる。また、プレキャストコンクリート板24は、100mm以下の間隔で表面から裏面に通じる複数の貫通孔27が形成されている。貫通孔27は、円形或いは角形の断面を有すると共に、表面から裏面に向かって径が小さくなっている。
車両の荷重を分散させる機能を発揮するため、プレキャストコンクリート板24は棒状あるいは格子状の補強材26によって、あるいは短繊維によって、あるいは棒状あるいは格子状の補強材26と短繊維の両方を用いて補強する。棒状あるいは格子状の補強材は型枠内に配置し、コンクリートを打込むことによって一体化させる。棒状あるいは格子状の補強材26としては鉄筋やFRPが挙げられる。補強材26に鉄筋を用いる場合で、長期的な耐久性を必要とする場合には、プレキャストコンクリート板24は薄く鉄筋のかぶりが薄くなるため、ステンレス等の錆びにくい材質の材料を用いるか、塗装等の表面保護措置を施した材料を用いる。補強材26にFRPを用いる場合、炭素繊維やアラミド繊維製の補強材を用いるが、その材質は限定されない。
短繊維を用いる場合、短繊維の補強材としては、長さ30mm以下の鋼繊維や有機繊維を用いる。プレキャストコンクリート板24は、使用されるコンクリートあるいはモルタル材料に、金属製あるいは有機繊維製の短繊維が体積比0.5%以上混入されている。短繊維の補強材はコンクリートを練り混ぜるときに混入することで一体化させる。鋼繊維は鋼材やステンレス、金属被覆等の表面保護措置を施した鋼材を用いる。有機繊維は炭素繊維、ポリプロピレン、ポリビニルアルコールなどの材質の材料を用いるが、材質は限定されない。プレキャストコンクリート板24は、高炉スラグ微粉末が30重量%以上混合されている。あるいは、プレキャストコンクリート板24は、結合材料にシリカフュームやフライアッシュ等のポゾランが10重量%以上混合されている。
舗装撤去工程は、コンクリート床版10上の舗装17部分の内でポットホール15を含む範囲をカッターでカッター目地15aを形成して撤去する。この際、ポットホール15を清掃する。この発明で、舗装を撤去する舗装撤去工程と、ポットホール15の内部のコンクリートのはつり工程は、従来の方法と同じである。
はつり工程は、コンクリート床版10のポットホール15に対応する劣化部を含む範囲のコンクリートをはつり取り整形する。
モルタル施工工程は、はつり工程で除去した部位18にモルタル19を流し込み、その上にプレキャストコンクリート板24を設置してプレキャストコンクリート板24と既設コンクリート床版とを接着する。プレキャストコンクリート板24と既設コンクリート床版10を接着するモルタル施工工程では、まず、はつりを行ったコンクリート面にプライマーと呼ばれるコンクリート打継用の吸水防止剤を塗布する。次に、はつり部にモルタル材料を流し入れる。コンクリート打継用の吸水防止剤の材料は、種々の材料が市販されており、次工程で使用するコンクリート材料やモルタル材料の材質に応じて選定する。一般的には、アクリル樹脂製の材料などを用いるが、次工程でポリマーセメントモルタルを使用する場合には、ポリマーセメントモルタルの混和液を塗布してもよい。あるいは、コンクリート打継用の接着剤を用いてもよい。
モルタル材料が硬化する前にプレキャストコンクリート板24を置き、振動を加えながら所定の高さに据え付け、据付時にあふれ出たモルタル材料は除去する。敷設したモルタルとプレキャストコンクリート板に挟まれた空気は、プレキャストコンクリート板に設けられた貫通孔を通って、余剰のモルタルと共に排出される。このときプレキャストコンクリート板24ははつり部の寸法に合わせて予め適当な寸法に切断しておく。プレキャストコンクリート板24は薄いため、ベビーサンダーなどを用いて容易に現地で切断できる。プレキャストコンクリート板24と鉄筋の間に十分な空間的余裕があれば、はつり部に流しいれるモルタル材料は、コンクリート材料であっても構わない。また、そのコンクリート材料ははつり取ったコンクリート殻と新たに練り混ぜたモルタルを混合したものであっても構わない。このモルタル材料はプレキャストコンクリート板24とコンクリート床版10を接着し、コンクリート床版10としての一体性を確保するものであり、1.5N/mm2以上の接着力を有するのがよい。また、貫通孔27や周辺から溢れたモルタル材料を除去し、ボルト等の連結治具28を差し込み固定する。連結治具28と鉄筋12を連結してもよい。モルタル19は平坦に仕上げる。
舗装工程は、前記モルタル施工工程で設置したプレキャストコンクリート板24の上に舗装25を行う。舗装撤去部の舗装工程は、既往の方法との違いはない。施工が完了し供用された後のコンクリート床版10にはプレキャストコンクリート板24が埋め込まれている。プレキャストコンクリート板24はプレキャストコンクリート製品工場で製作されており、十分な品質管理が行われ、養生も十分に行われているため、強度特性とともに耐久性も優れている。同時に、接合用のモルタルに接着性と塩化物イオン浸透抵抗性に優れた材料を使用すれば、既往の工法に比べて、耐久性が向上する。
舗装は日射などによる温度変化が著しいため、コンクリート床版10とプレキャストコンクリート板24が温度変化によって同様な伸縮挙動を示すよう、モルタル材料はこれらと同等な線膨張係数を有することが必要である。ポリマーセメントモルタルはコンクリートと線膨張係数が等しく、接着力が大きく、同時に硬化後の防水性にも優れるため、本発明に使用するモルタル材料として適している。モルタル材料はこの要求性能を満足すれば、ポリマーを含有しないセメントモルタルであっても構わない。
舗装の補修後、プレキャストコンクリート板24はコンクリート床版10と一体になって変形することが好ましい。プレキャストコンクリート板24とコンクリート床版10の弾性係数が大きく異なると、車両の荷重に伴って両者の接合面に発生するせん断応力が大きくなるので、両者の弾性係数はより近いことが好ましい。また、温度変化に伴って接合面に発生するプレキャストコンクリート板24とコンクリート床版10の接合面のせん断応力を抑制するため、両者の線膨張係数はより近いことが好ましい。さらに、プレキャストコンクリート板24の上面からの塩分の浸透を抑制するには、より緻密な材料を用いることが好ましい。
プレキャストコンクリート板24の結合材料にセメント系の材料を使用すれば、線膨張係数はコンクリート床版10にほぼ等しくなる。コンクリート床版10の弾性係数は、建設時に使用されたコンクリート材料の強度や品質によって異なるが、一般的には25N/mm2から40N/mm2の範囲にある。したがって、弾性係数を合わせるためには、プレキャストコンクリート板24に使用するコンクリート材料の水結合材比はコンクリートの場合でおよそ45〜35重量%、モルタルの場合でおよそ40〜25重量%の範囲になる。緻密性を確保する上では、結合材料としてシリカフュームやフライアッシュ等のポゾランを10重量%以上混合するか、高炉スラグ微粉末が30重量%以上混合するとともに、いずれの混和材料を使用した場合であっても、水結合材比は35重量%以下とするのが好ましい。弾性係数と緻密性の確保とを併せて考えれば、プレキャストコンクリート板24に使用するコンクリート材料の水結合材比は35重量%以下25重量%以上であるのが好ましい。この場合のプレキャストコンクリート板24のコンクリートの圧縮強度はおよそ60〜100N/mm2である。
モルタル19はコンクリート床版10とプレキャストコンクリート板24に挟まれた状態であり露出面積が少ないため、乾燥することが少なく補修部全体を現場打ちのコンクリートで埋め戻した場合に比べて現場で練り混ぜる埋戻し材料の使用量も少なくて済む。さらに、プレキャストコンクリート板24は平滑であり、コンクリート床版10上面の高さに合うように据え付けるだけで舗装の下地が形成できるため簡便である。また、プレキャストコンクリート板24は十分な強度を有しているため、全部をコンクリート材料で埋め戻す場合に比べて、交通解放に必要な時間も短縮できる。
プレキャストコンクリート板24には、あらかじめ100mm以下の間隔で貫通孔を配しておくことができる。この貫通孔はモルタル上にプレキャストコンクリート板24を据え付ける際、プレキャストコンクリート板24の下面に気泡が残留し、付着性が低下することを防止するのに有効である。また、コンクリート床版10の鉄筋にフックを掛け、治具をこの貫通孔に固定することもできる。固定は鉄筋にフックを掛ける方法でなく、コンクリート床版10にアンカーを打込む方法でもよい。この固定治具を用いることで、モルタルとコンクリート床版10の界面、あるいはモルタルとプレキャストコンクリート板24の界面の剥離がより生じにくくなるとともに、仮に剥離を生じた場合でも、走行性に影響を与える可能性が低くなる。プレキャストコンクリート板24に貫通孔を設けることで、この穴から凍結防止剤などの劣化促進物質がプレキャストコンクリート板24の下面に浸透する懸念はあるが、一般にポリマーセメントモルタルの透水性や塩化物イオンの浸透性は小さいため、モルタル材料にポリマーセメントモルタルを用いることで耐久性が確保できる。
実施例1で示した、本発明をコンクリート床版10上の舗装の部分補修に適用した場合であっても、多数のポットホール15が発生した場合には、その都度補修を行う必要があるため、路面に多くの舗装の補修跡を生じることは避けられない。走行性に与える影響が無視できないほどの補修跡が発生した場合、前述したような舗装改良が行われる。図16〜図19は、実施例2を示すものである。また、実施例2では本発明を舗装改良に適用した場合について説明する。
舗装改良の場合も補修に用いるプレキャストコンクリート板24の製造工程は実施例1と同じである。舗装改良における舗装を撤去する舗装撤去工程は、実施例1で示した路面切削機を用いる。実施例1で示した本発明による部分補修が行われている場合、舗装の下にはプレキャストコンクリート板24が配置されている。既設のコンクリート床版10の圧縮強度はおよそ25〜40N/mm2の範囲にある。プレキャストコンクリート板24の圧縮強度はおよそ60〜100N/mm2であるため、この状態で路面を切削した場合、プレキャストコンクリート板24は既設のコンクリート床版10より削れにくく、切削音の変化などからプレキャストコンクリート板24を削ったことの判断も容易である。したがって、既設のコンクリート床版10を切削したときのように、削り過ぎによりコンクリート床版10内の鉄筋12を切断する虞れは少なくなる。
コンクリート床版10の劣化部のコンクリートのはつり工程と、プレキャストコンクリート板24を敷設して既設コンクリート床版10を接着するモルタル施工工程と、舗装撤去部を舗装する舗装工程は実施例1と同じである。ただし、舗装改良は部分補修の場合に比べて施工面積が広いため、施工機械を変えることができる。例えば、コンクリートのはつり工程ではハンドブレーカーに変えて、ウオータージェットを用いることが可能である。モルタル施工工程では、生コンクリート製造会社などのコンクリートプラントで練り混ぜたモルタルを用いることができる。施工の具体的な方法は施工の規模や制約条件に応じて、最も適切な手段を用いることができる。
本発明によるプレキャストコンクリート板24の敷設部で舗装の切削時にプレキャストコンクリート板24を傷つけた場合、必要に応じてプレキャストコンクリート板24を取り換えることができる。プレキャストコンクリート板24はモルタルによってコンクリート床版10と接着しているが、その界面にクサビを打込むなどの方法で引き剥がすことができる。引き剥がされた部分のモルタルを除去し、再度モルタルを施工して、プレキャストコンクリート板24を敷設すれば、取換が完了する。このように、本発明は、必要に応じて、容易にプレキャストコンクリート板24を取り換えることが可能という特徴がある。
舗装改良において本発明を用いた場合、コンクリート床版10の上面全体がプレキャストコンクリート板24で覆われることになるため、床版の耐久性が向上する。舗装は車両のタイヤによって消耗や変形を生じるため、将来的には再度舗装改良を行う必要がある。この舗装撤去工程では路面切削機でプレキャストコンクリート板24を切削する可能性はあるが、プレキャストコンクリート板24は取換が容易であるため、再度の舗装改良でも本発明を適用することで、コンクリート床版10を常に耐久性に優れた状態に保つことができる。
以上のようなコンクリート床版上面の補修工法10により、舗装の補修後に走行する車両の輪荷重を分散することができる。また、舗装から浸透した塩化物イオンのコンクリート床版への浸透を抑制し、鉄筋の腐食を防止できる。更に、将来、舗装の打換を行う場合の路面切削作業の際に、切削歯がコンクリート床版に及ぼす影響を防止することができる。
舗装に発生する変状には、ポットホールのように舗装自体やコンクリート床版の上面の劣化に伴って舗装が剥離する場合だけでなく、コンクリート床版が陥没して、舗装に陥没や穴を生じる場合もある。このような変状を生じた場合、従来、コンクリート床版の劣化部分を除去し、床版の下面に型枠を設けて、コンクリートを除去した箇所を新たなコンクリートで埋め戻す方法が一般的であった。実施例3では、このような変状の例として、図24〜図28に示すように中空床版橋28の円筒型枠29に浮き上がりを生じたことにより円筒型枠29の上面のコンクリートが陥没した場合の補修方法として、本発明を適用した場合について説明する。
コンクリート製の橋梁のうち、中空床版橋28と呼ばれる橋梁では内部に中空型枠29と呼ばれる円筒形あるいは方形の型枠が埋め込まれる。中空型枠29はコンクリート橋の重量を軽くするために使用するもので、型枠としては橋梁の桁高に応じて、直径が400mmから2000mmの鉄製のスパイラル管を用いることが多い。中空床版橋28の建設においては、中空型枠29を底面の型枠上に固定したあと、鉄筋12などを配置して、コンクリートを打込む方法が行われる。まだ固まらない、柔らかなコンクリートの中では中空型枠29に浮力が作用する。コンクリートの単位体積重量は2、300kg/m3程度であるため、中空型枠29に作用する浮力は水中の場合に比べて大きい。そのため中空型枠29の固定方法が適切でない場合には、中空型枠29がコンクリート中で浮き上がる。中空型枠29が浮き上がりを生じても、中空型枠29の上面には鉄筋12が配置されているため、中空型枠29がコンクリート床版の上面に露出することはないが、中空型枠上面のコンクリートの厚さH0は設計値Hより大幅に薄くなる(図24参照)。円筒型枠29はコンクリートの圧力に耐えられるだけの剛性があるため、建設直後はコンクリートの厚さが不足しても円筒型枠29上のコンクリートが陥没することはないが、長年にわたり使用すると、コンクリート床版に浸透した水や塩分によって円筒型枠29が腐食し、剛性が失われて円筒型枠29上のコンクリート床版が陥没し、舗装の陥没や穴が発生する(図25)。前に述べたとおり、このような場合の補修方法はコンクリートの劣化箇所を新たなコンクリートで埋め戻す方法が一般的であった。この方法では腐食して穴が開いた円筒型枠29の内部に型枠30を取り付ける必要があるため、施工に手間と時間を必要とするだけでなく、新たに打ち込んだコンクリート31を養生する時間がとれないため、品質の確保が困難である。さらに陥没や穴の発生原因がコンクリート厚の不足にあるため、床版の強度を確保するため、舗装面の高さまでコンクリート31で施工し、舗装を行わない場合もある(図26、図27)。
本発明を中空型枠上に発生した舗装の陥没や穴の補修に用いる場合、まず、損傷を生じた箇所およびその周囲の舗装、ならびに鉄筋12上のコンクリートを除去する。舗装ならびにコンクリートを除去する横断方向の範囲は円筒型枠29の直径程度とする。ここまでは、図26と同じである。本実施例におけるプレキャストコンクリート板32は、図29に示すように棒状あるいは格子状の鉄筋12或いはPC鋼材36で補強されると共に両端付近には貫通孔33が設けられている。
次に、コンクリートを除去した箇所の穴を生じていない箇所の上面にプライマーを塗布し、モルタルを打ち込み、その上にプレキャストコンクリート板32を敷設する(図28参照)。この方法は円筒型枠29aに穴を生じた箇所の上面にモルタルを施工しないことを除けば、実施例1と同様である。また、プレキャストコンクリート板32の両端付近には貫通孔33が設けられており(図29)、実施例1と同様に貫通孔33を利用して治具やアンカーでプレキャストコンクリート板32とコンクリート床版を一体化させる。そのため従来の施工方法で補修を行う場合に比べて施工時間が大幅に短縮できる。
実施例3の場合、円筒型枠29に陥没を生じた箇所の上面では、コンクリート厚や舗装厚が薄い場合が多く、床版として必要なコンクリートの厚さが不足する場合がある。そのためプレキャストコンクリート板32の厚さは、舗装の下面に留める場合(a)や、舗装の基層34まで(b)、あるいは舗装上面の表層35まで(c)など、必要な耐荷性に合わせて調整する(図30参照)。
プレキャストコンクリート板32と舗装の間に生じた隙間はプレキャストコンクリート板32を敷設する際に盛り上がってきたモルタルで埋める。プレキャストコンクリート板32の厚さは円筒型枠29の浮き上がりの状態によって異なるが、およそ70mmから100mm程度である。また、実施例3の場合、穴が開いた円筒型枠29の上面部分のプレキャストコンクリート板32はコンクリート床版に支持されないため、曲げとせん断力が作用する。そのためプレキャストコンクリート板32には曲げとせん断力に抵抗できるようプレストレスを与え、鉄筋12及びPC鋼材36も配置しておく。プレキャストコンクリート板32に求められる弾性係数や線膨張係数の条件は実施例1と同様であるため、プレキャストコンクリート板32の圧縮強度は60〜100N/mm2程度となり、一般的なプレストレストコンクリートの圧縮強度である30〜50N/mm2に比べて大きく、プレキャストコンクリート板32により多くのプレストレスを与えることができるため、薄肉のプレストレストコンクリート板であっても、曲げやせん断に強い床版とすることができ、従来の方法で補修した場合に比べて耐久性と耐荷性に優れた床版を形成することができる。
更に、本発明は上述の実施例に限定されることなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の設計変更が可能である。
10 コンクリート床版
11 コンクリート
12 鉄筋
13 基層
14 表層
15 ポットホール
15a カッター目地
16 ポットホール補修跡
17 舗装
18 除去した部位
19 モルタル
24 プレキャストコンクリート板
25 舗装
26 補強材
27 貫通孔
28 中空床版橋
29 円筒型枠
30 型枠
31 コンクリート
32 プレキャストコンクリート板
33 貫通孔
34 基層
35 表層
36 PC鋼材

Claims (9)

  1. コンクリート床版上の舗装部分の内でポットホールを含む範囲を撤去する舗装撤去工程と、
    前記コンクリート床版の前記ポットホールに対応する劣化部を含む範囲のコンクリートをはつり取るはつり工程と、
    前記はつり工程で除去した部位にモルタルを流し込み、その上にプレキャストコンクリート板を設置してプレキャストコンクリート板と既設コンクリート床版とを接着するモルタル施工工程とを備えたことを特徴とするコンクリート床版上面の補修工法。
  2. 前記コンクリート床版は、道路橋のコンクリート床版であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート床版上面の補修工法。
  3. 前記モルタル施工工程において、接着に使用するモルタルはセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、ポリマーモルタルの中の何れか1であることを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート床版上面の補修工法。
  4. 前記プレキャストコンクリート板のモルタルとの接触面には、100mm以下の間隔で表面から裏面に通じる複数の貫通孔が形成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載のコンクリート床版上面の補修工法。
  5. 前記モルタル施工工程において、補修対象となるコンクリート床版から露出した鉄筋が前記プレキャストコンクリート板の貫通孔に配置された連結治具で結合されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1に記載のコンクリート床版上面の補修工法。
  6. 前記プレキャストコンクリート板は、水結合材比35重量%以下25重量%以上のコンクリートあるいはモルタル材料が使用されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1に記載のコンクリート床版上面の補修工法。
  7. 前記プレキャストコンクリート板は、結合材料にシリカフュームやフライアッシュ等のポゾランが10重量%以上混合されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1に記載のコンクリート床版上面の補修工法。
  8. 前記プレキャストコンクリート板は、高炉スラグ微粉末が30重量%以上混合されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1に記載のコンクリート床版上面の補修工法。
  9. 前記プレキャストコンクリート板は、使用されるコンクリートあるいはモルタル材料に、金属製あるいは有機繊維製の短繊維が体積比0.5%以上混入されていることを特徴とする請求項1〜8の何れか1に記載のコンクリート床版上面の補修工法。
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