JP4137287B2 - 高耐久性構造埋設型枠工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高耐久性構造埋設型枠工法に係り、特に床版、スラブ、橋脚、その他コンクリート構造物の劣化部を補修して補強する高耐久性構造埋設型枠工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば海洋に懸かる床版橋のコンクリート床版あるいはその下面のコンクリート製梁等の下面は、経年によりコンクリートが劣化して所要の強度が低下することがあり、したがって適時に補修を行なって補強することが必要となる。
【0003】
このような橋梁の下面の補修には、従来図7にコンクリート床版1の下面を補修する場合を示すように、水中に建て込まれた支柱2,2…間に梁材3を懸け渡して足場4を構築し、この足場4上からコンクリート床版1の下面の劣化部をハツリにより削落したのち前記梁材3上に多数本の仮柱5,5…を設立して支保工を組み、仮柱5,5…の上端に型枠6を保持してこの型枠6とコンクリート床版1の下面のハツリ面との間にモルタル等の充填材7を充填し、その硬化を待って仮柱5,5…および型枠6を撤去したのちその補修面に鋼板、炭素繊維、アラミド繊維などの補強材を付設し、これに防水塗装を行なって補修を完了するようになされている。
【0004】
前記支柱2,2…を使用しない場合は、コンクリート床版1の下面の梁8,8の側面にブラケットを取り付け、これらブラケット間に梁材を懸け渡して支保工を組み、この梁材上に型枠を保持して前記と同様にモルタルを充填するようになされている。
【0005】
またコンクリート床版1の梁8の部分の補修には、図8にその一部を示すように、前記と同様にして架設された足場上から梁8の鉄筋9,9が露出するまでハツリ、次いで仮柱5,5…により支保工を組んで型枠6,6aを保持し、この型枠6,6aとハツリ面との間にモルタルを充填するようになされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに上記従来の補修工法では、補修用の充填材(モルタル)の重量を支えるに足る高強度の支保工を立ち上げるように組み立てる必要があることから、これらに要する大型でかつ重量の大きい資材の搬入、組み立て、搬出を要し、そのため予備的作業が容易でないものであった。
【0007】
また小面積の補修であっても前述の支保工を組まなければならないためコスト高になり、きわめて不経済であった。このほか補修用充填材は水分が8%以下での施工となるので、乾燥期間を必要とし、脱型枠までに長期間を要することになって工期が長びくという問題があり、さらに海洋構造物の場合、潮位により作業時間が拘束されるため、この点からも工期が長くなるなどの種々の問題点があった。
【0008】
本発明は上記従来の技術の諸問題を解決することを課題としてなされたもので、作業用の足場のみを確保することによりすべての作業ができ、かつ型枠の撤去を不要として工期の大幅な短縮を図り、低コストでの補修施工を可能とする高耐久性構造埋設型枠工法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する手段として本発明は、補修すべきコンクリート構造物の劣化部を削落し、該コンクリート構造物の劣化部削落面にスクリューアンカーをその一端が該削落面から若干突出するよう抜出不能に埋設し、このスクリューアンカーの突出端に長ナット部材の一半部を螺合してその長ナット部材の他半部に支持用スクリューの一端を螺挿し、この支持用スクリューに炭素繊維内蔵セメントモルタル複合板を挿通するとともにこれを支える支持部材を挿通してナットで固定したのち前記コンクリート構造物の劣化部削落面と前記複合板との間にモルタル等の充填材を充填し、充填材の硬化後支持用スクリューを長ナット部材から外して前記支持部材を撤去し、これに代えて固定用ボルトを長ナット部材に螺挿締着して前記複合板を固定することを特徴とする。
【0010】
こうしたことにより、充填材を支えるための大掛りな支保工を立ち上げる必要がないとともに充填材の硬化の待ち時間が不要となり、脱型枠作業も不要となって大幅な工期の短縮およびコストダウンを図ることができる。
【0011】
上記炭素繊維内蔵セメントモルタル複合板を構成する炭素繊維シートにアクリル弾性塗装(またはウレタン系、フッソ系樹脂塗料による塗装)を施せば、美感および耐候性を高めるうえで好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施の形態を参照し、図7、図8と共通する部材にはこれと同一符号を用いて説明する。
【0013】
図1(A),(B)および図2は、コンクリート床版橋の下面の補修を想定した場合の一実施形態を示すもので、図1(A),(B)は補修作業工程途中の状態を、図2は補修作業終了時の状態をそれぞれ一部の断面図として示している。
【0014】
上記補修作業の工程としては、まず補修すべき対象であるコンクリート床版1の下面の劣化している部分のコンクリートを「ハツリ」により内部の鉄筋9,9が一部露出するまで削落し、その削落面1aに穿孔機により穴10を1mピッチ程度の間隔をおいて穿設し、これに所要長さのスクリューアンカー11をその下端が若干下方に突出する深さまで挿入し、この穴10とスクリューアンカー11との間に樹脂接着剤12(ケミカルアンカー)を充填固化させることにより抜出不能に埋設する。このスクリューアンカー11としては全長にわたってネジを有する全ネジ構造のものを用いることが既設コンクリートとの結合を強化するうえで好ましい。また削落により露出した部分の鉄筋9,9の外周面には防錆ペースト13を塗布して防錆策を施す。
【0015】
次いで前記スクリューアンカー11の下端の突出端部に図1(A)に示すように長ナット部材14の一半部を螺合し、この長ナット部材14の他半部に図1(B)に示すように支持用スクリュー15の上端を螺挿する。
【0016】
上記支持用スクリュー15にワッシャ16、永久型枠として機能する炭素繊維内蔵セメントモルタル複合板17(以下単に複合板という)、桟木18、チャンネル鋼材等で支保工として機能する支持部材19の順に挿通し、最後にワッシャ20を介してナット21で締着する(図1(B))。
【0017】
これによりコンクリート床版1の下面の削落面1aと複合板17との間に前記鉄筋9,9が内在する空隙22(空隙高さは130mm程度)が形成され、この空隙22内にモルタル等の充填材23を充填する。したがって前記鉄筋9,9はもとよりスクリューアンカー11の突出端、長ナット部材14、ワッシャ16は、すべて充填材23内に埋設される。
【0018】
前記空隙22に充填された充填材23(モルタル)の硬化を待って支持用スクリュー15に螺合されているナット21を外し、ワッシャ20、支持部材19、桟木18を順次抜き取ったのち図2のように前記長ナット部材14に固定用ボルト24をワッシャ25を介在して締着することにより複合板17は充填材23に密着した状態で固定され、補修を完了する。
【0019】
前記複合板17としては、図3に平面図を示すように例えば長辺L1 の長さ1800mm、短辺L2 の長さ900mmの矩形板状に形成され、図4に拡大断面図を示すようにセメントモルタル製の基板26(厚さ4mm程度)の一面にこれと同大の炭素繊維シート27(厚さ0.7〜1.0mm程度)を接着等の手段により固着し、その外面にアクリル弾性塗装28(厚さ1mm程度)が施され、また基板26の他面には充填材23との接着強度を出すためガラス繊維29(厚さ0.3mm)が積層され、さらにその表面に必要により下地調整材30が塗布されたものが用いられる。なおこの複合板17は工場において製造される。
【0020】
前記基板26、炭素繊維シート27、およびガラス繊維29はアクリル弾性塗装28および下地調整材30の塗布面より四辺が幅100mm程度大きく、この部分が接着代31とされており、隣位の複合板17との接合時に図5に示すように該接着代31に跨がるよう現場で接続用炭素繊維シート32を重ねて接着することにより継ぎ目を覆い、その上にアクリル弾性塗装33を塗布して接続部を施工する。このアクリル弾性塗装に代え、ウレタン系塗料、フッソ樹脂系塗料であってもよく、美感および耐候性の向上を図ることができるものであればよい。
【0021】
炭素繊維シート27は、1方向繊維、直交する2方向クロス繊維のいずれであってもよく、また基板26は曲げに対しても表面にひび割れを生じない曲げ強度および剪断強度を有するものがよい。なお図1、図2において符号34は、補修施工前において削落面1aに滲透させる浸透性防錆剤浸透域を示している。
【0022】
図6はコンクリート床版1の下面の梁8の下面から側面にかけて補修を行なう場合の一例を示す一部の断面図を示すもので、梁8の下部のコンクリートの劣化した部分を鉄筋9,9が露出するまで削落し、前記コンクリート床版1の場合と同様にして複合板17を取り付ける。隣位の複合板17との接続は接続用炭素繊維シート32を用いて接続する。
【0023】
梁8の場合は下面から側面にかけて補修することになるので、その角部では複合板17を90゜屈曲させ、削落面1aと複合板17との間の空隙に充填材23を充填するようにすればよい。また複合板17同士の接合部は図5で示したと同様にして施工すればよい。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、型枠を保持するための支保工を組み上げる必要がなく、補修対象のコンクリート構造物自体に保持させて施工するので、従来のような大掛りな足場が不要となり、作業者による作業用足場のみ確保すればよいことと補修面積に応じた範囲のみ作業用足場を組めばよいことによって足場の架設に要する経費が著しく廉価にでき、また型枠を撤去する必要がなく、これらにより安価で短かい工期での補修作業を行なうことができる。
【0025】
さらに型枠としての複合板の下に支保がないので作業用スペースを十分にとることができ、海洋構造物であっても潮位に関係なく作業を進めることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A),(B)は本発明をコンクリート床版の下面の補修に実施する場合の工程の一形態を示す一部の断面図。
【図2】同、補修完了時の状態を示す一部の断面図。
【図3】図1において用いる炭素繊維内蔵セメントモルタル複合板の一形態を示す平面図。
【図4】図3のA−A拡大断面図。
【図5】図3の複合板の接合部の処理の仕方を示す断面図。
【図6】コンクリート床版の梁部の補修例を示す一部の断面図。
【図7】従来のコンクリート床版下面の補修の施工技術を示す説明図。
【図8】従来の梁部の補修の施工技術を示す説明図。
【符号の説明】
1 コンクリート床版
1a 削落面
2 支柱
3 梁材
4 足場
5 仮柱
6 型枠
7 充填材
8 梁
9 鉄筋
10 穴
11 スクリューアンカー
12 樹脂接着剤
13 防錆ペースト
14 長ナット部材
15 支持用スクリュー
16,20,25 ワッシャ
17 複合板(炭素繊維内蔵セメントモルタル複合板)
18 桟木
19 支持部材
21 ナット
22 空隙
23 充填材(モルタル)
24 固定用ボルト
26 基板
27 炭素繊維シート
28,33 アクリル弾性塗装
29 ガラス繊維
30 下地調整材
31 接着代
32 接続用炭素繊維シート
34 浸透性防錆剤浸透域
Claims (2)
- 補修すべきコンクリート構造物の劣化部を削落し、該コンクリート構造物の劣化部削落面にスクリューアンカーをその一端が該削落面から若干突出するよう抜出不能に埋設し、このスクリューアンカーの突出端に長ナット部材の一半部を螺合してその長ナット部材の他半部に支持用スクリューの一端を螺挿し、この支持用スクリューに炭素繊維内蔵セメントモルタル複合板を挿通するとともにこれを支える支持部材を挿通してナットで固定したのち前記コンクリート構造物の劣化部削落面と前記複合板との間にモルタル等の充填材を充填し、充填材の硬化後支持用スクリューを長ナット部材から外して前記支持部材を撤去し、これに代えて固定用ボルトを長ナット部材に螺挿締着して前記複合板を固定することを特徴とする高耐久性構造埋設型枠工法。
- 前記炭素繊維内蔵セメントモルタル複合板は、セメントモルタル製の基板の一面に炭素繊維シートが固着され、この炭素繊維シートに美感および耐候性向上のためのアクリル弾性塗装が施された構造を有する請求項1記載の高耐久性構造埋設型枠工法。
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