JP6504582B2 - 顎振動牽引治療装置 - Google Patents

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Description

本発明は、顎関節症等の患者の治療に用いる顎振動牽引治療装置に関するものである。
顎関節は、リウマチ等により、その組織が破壊・消滅すると、その部分にスペースが生じる。このようなスペースが生じると、下顎が後退して、上顎と下顎との噛み合わせが悪化する。噛み合わせの悪化は円滑な栄養摂取を妨げ、患者の健康への影響が非常に大きい。
関節リウマチは、世界的に有病率約1%前後と報告され、重要な疾患である。中でも顎の関節に発生する関節リウマチは骨の強い変形によって、「睡眠時無呼吸を併発し窒息につながる」、「口が開いたままで咀嚼できない」等の重篤な状況を引き起こす。
そこで、下顎の奥歯に人体右から見て反時計回り方向等に回転する牽引力(静荷重)を作用させた状態で振動を与えると、後退した下顎が前方へ矯正され、噛み合わせが改善する効果がある。
このような顎関節症等の患者の治療装置として、下記の非特許文献1に記載されたものがある。
この治療装置を、図3(a)(b)を参照して説明すると、テーブル41に患者の顎が載置される。テーブル41には、患者の頭部固定手段42が設けられる。ヒンジ46には、傾動部材47が傾動可能に取り付けられる。この傾動部材47にマウスピース45が取り付けられる。傾動部材47の左右いずれかに、アーム43を介して、モーター44が取り付けられる。このモーターの軸に偏心錘が取付けられ、モーターと偏心錘が円筒形のケースに収納されている。
モーター44が作動すると、偏心錘によって振動が発生し、アーム43が振動し、これにより傾動部材47を介してマウスピース45が振動する。マウスピース45には、同時に下顎を前方へ矯正させるための牽引力が作用する。この牽引力は、モーター44の自重とアーム43の長さとで調節する。アーム43の長さは、アーム43に対するモーター44の取り付け位置で調節される。
Journal of Oral Rehabilitation 2000 27;703−707 「Vibrating-traction method for mechanical joint distraction」皆木省吾他
しかしながら、上記従来の装置では、モーター44とアーム43とが直結されているので、モーター44の振動がアーム43を介して装置全体に伝わり、装置全体が振動し、その振動音が騒音として患者に伝わる。このような騒音が発生する装置では、ストレスを抱えていることの多い顎関節症の患者の治療には適用し難い。
また、モーター44の振動は、アーム43に直接伝わるため、モーター44とアーム43とを連結するネジや、それ以外の機構部分を連結するネジ等が緩んだり、疲労破壊したりするリスクがある。
また、傾動部材47への牽引力は、モーター44の自重とアーム43の長さとで調節しているので、患者毎に、手計算で所望の牽引力が得られるアーム長の算出や調節を行う必要があり、治療のための準備作業が煩わしい。
また、アーム43の長さの計算やモーター44の取り付け位置の調節を間違えると、意図しない牽引力で治療が行われ治療効果が損なわれる可能性もある。
また、患者側にモーター44が突出しているので、振動するモーター44が患者の耳のそばに位置するので、患者の身体に接触する可能性が高く危険で、かつ騒音が直接耳に入り不快で、適切な治療を行いにくい。
また、マウスピース45とテーブル41との間の高さ調節が行えないので、患者の個体差によってマウスピース45を適正に患者の奥歯に当接するように装着することができない場合がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、振動が直接、患者に伝達されにくく、騒音が低減されて、これにより、患者に対してのストレスを減じられて、快適に治療を受けることができる顎振動牽引治療装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
(1)本発明に係る顎振動牽引治療装置は、
患者(7)の下顎に装着される下顎牽引具(19)と、
前記下顎牽引具(19)に治療用の振動を作用させる振動機構部(22)と、
前記患者(7)の前記下顎に牽引力を作用させる牽引機構部(24)と、
を具備し、
前記振動機構部(22)は、
前記患者(7)の前記下顎の運動方向と同方向に傾動可能に装置に軸支される傾動部材(18)と、
前記治療用の振動を発生する発振部(21)と、
を備え、
前記傾動部材(18)の一端側には前記下顎牽引具(19)が取着され、前記傾動部材(18)の他端側には前記牽引機構部(24)が可撓性の連結体(23)により連結され、前記一端側と前記他端側との間の前記傾動部材(18)には前記発振部(21)が固定され、
前記牽引機構部(24)は、前記下顎牽引具(19)を介して前記患者(7)の前記下顎に、前記患者(7)の左から見て時計回り方向に傾動する牽引力を作用させ、
前記牽引機構部(24)の牽引力と前記振動機構部(22)の治療用の振動とを、前記患者(7)の下顎に同時作用させる際に、前記連結体(23)は、前記振動機構部(22)の振動が前記牽引機構部(24)に伝達されることを抑制する、
ことを特徴とする。
この構成によれば、牽引機構部の牽引力と振動機構部の治療用の振動とを患者の下顎に作用させる際に、振動機構部の治療用の振動が牽引機構部に伝達するときは、連結体の可撓性が発現するので、前記牽引機構部への振動の伝達が軽減される。そのため、振動機構部と下顎牽引具以外の装置構成に治療用の振動が伝達され難くなり、騒音が増大することを防止することができる。
従って、患者が、その騒音により治療中にストレスを感じたりすることが軽減され、ストレスを抱えていることの多い顎関節症患者等であっても快適に顎振動牽引治療を行うことが可能となる。
また、この構成によれば、ネジの緩みや疲労破壊等の故障リスクを低減することも期待できる。
更に、この構成によれば、患者側に牽引機構部や振動機構部が突出していないので、治療中に患者の身体が装置に接触して治療効果が損なわれる心配がない。
()好ましくは、前記患者(7)の前記下顎に対する前記下顎牽引具(19)の装着角度調節が可能である。
この構成によれば、患者の個体差に対応して、下顎牽引具を患者の奥歯に適切に当接するように装着することができる。
()好ましくは、治療中に前記患者(7)の前記下顎が載置される下顎載置部(9)と、
前記下顎牽引具(19)に対する前記下顎載置部(9)の垂直方向の位置を調節する下顎載置部位置調節部(10)と、
を備えている。
この構成によれば、患者の個体差に対応して、下顎牽引具を患者の奥歯に適切に当接するように装着することができる。
本発明によれば、騒音が低減されて、患者に対してのストレスを減じられて、快適に治療を受けることができる顎振動牽引治療装置を提供することができる。
本発明の実施形態に係る顎振動牽引治療装置の概略構成を示す図である。 図1の装置を制御する制御ボックスの正面図である。 (a)は従来の顎振動牽引治療装置の模式的な側面図、(b)は(a)の上面図である。
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る顎振動牽引治療装置(以下、「装置」と言う)を説明する。
図1は、装置の概略構成図である。同図を参照して、符号1は、車輪ロック機能付きキャスター、2は昇降可能なスタンド、4はスライドレール、3は、スタンド2の上端に設置されてスライドレール4により前後位置の調節が可能な治療テーブル、5は、治療テーブル3上面に立設された支柱、6は患者7が座る椅子、8は患者7の背凭れである。
治療テーブル3の上面の右端には、患者7の下顎を載置する下顎載置部として、顎部パッド9が配置されている。
治療テーブル3に、下顎載置部位置調節部として、顎部パッド9の高さ調節ノブ10が設けられている。この顎部パッド9の高さ調節ノブ10は、顎部パッド9の垂直方向の位置を調節することができる。
傾動レバー18には、下顎牽引具19の前後位置を微調節する前後位置微調節ノブ12が設けられている。
支柱5の上部には、頭部アタッチメント13が取り付けられている。頭部アタッチメント13に、頭部固定ベルト14が装着されている。頭部固定ベルト14の前後位置調節および高さ位置の調節は、前後位置調節ノブ16および高さ位置調節ノブ15の操作によって行われる。
支柱5は、その下部に支点17を有する。
支点17には、傾動部材として、傾動レバー18が傾動(図中で時計回り、反時計回り方向)可能に取り付けられている。治療テーブル3には、傾動レバー18の振動周期と変位量を検出するレーザー変位計11が内蔵されている。
傾動レバー18の右端側に、患者7の下顎に牽引力と治療用振動とを作用させる下顎牽引具19が取り付けられている。
下顎牽引具19は、トレイになっており、その一端側に患者7の口内に入るマウスピース35を装着し、他端側が患者7の口外にまで延びている。
傾動レバー18は、患者7の下顎の運動方向と同方向に傾動し、下顎牽引具19を介して患者7の下顎に牽引力と治療用振動とを作用させる。傾動レバー18には、牽引力、及び振動強度検出用の歪みゲージ20、加速度センサ(図示しない)が設けられている。
傾動レバー18において支点17より左側の上面に、治療用の振動を発生する発振部(バイブレーター)21が装着されている。この発振部21と傾動レバー18とで、下顎牽引具19に治療用の振動を作用させる振動機構部22を構成する。傾動レバー18は、発振部(バイブレーター)21の振動で傾動するが、その傾動角度によって、患者の下顎に対する下顎牽引具19の装着角度を調節することができる。この時、傾動レバー18とは関係なく、下顎牽引具19のみで、装着角度が調節できてもよい。
傾動レバー18の左端は、可撓性の連結体として、連結ベルト23の一端側が接続されている。傾動レバー18は、この連結ベルト23を介して、牽引機構部24に連結されている。
連結ベルト23は、可撓性のベルトであるが、チェーン、ワイヤ、ロープ等、可撓性を有するものであれば、具体的な材質等には特に限定されない。さらには、広義にいえば、可撓性を有する連結ベルト23には、ゴムベルト、コイルバネも含まれており、これらの素材からなる連結ベルト23であっても同様の効果を奏することができる。
牽引機構部24は、患者7の下顎に、連結ベルト23、振動機構部22、および下顎牽引具19を介して、牽引力を作用させるものである。
牽引機構部24は、滑車25と、治療テーブル3の上面に立設固定された滑車取り付け柱26と、連結ベルト23の他端側が取り付けられ、且つ、滑車取り付け柱26に沿って昇降する昇降体27と、昇降体27に取り付けられたバランサ付き牽引力調節トレイ28と、このトレイ28上に載置される牽引力設定錘29と、を備える。
ただし、牽引機構部24は、実施形態では牽引力を牽引力設定錘29で設定する方式であるが、コイルバネ、牽引力検出センサー(歪みゲージ20)とモーター(図示しない)とを組み合わせる等、所望の牽引力を作用させることができれば、実施形態にその構成が限定されるものではない。
連結ベルト23は、振動機構部22の振動と牽引機構部24の牽引力とが下顎牽引具19に作用する際に、前記振動が、牽引機構部24に伝達されることを抑制するように、その可撓性を発現する。
この発現の形態は、振動機構部22の振動が、連結ベルト23を引っ張る方向であれば、連結ベルト23にテンションがかかって、前記振動と共に牽引機構部24の牽引力が下顎牽引具19に作用し、振動機構部22の振動が、連結ベルト23を引っ張る方向でなければ、連結ベルト23にテンションがかからないように撓み、前記振動は下顎牽引具19に作用しても、牽引機構部24には伝わらない。
このように、牽引機構部24の牽引力と振動機構部22の治療用の振動とを患者の下顎に作用させる際に、振動機構部22の治療用の振動が牽引機構部24に伝達しようとするときは、連結ベルト23が撓んでその可撓性を発現するので、牽引機構部24への前記振動の伝達は抑制される。そのため、振動機構部22と下顎牽引具19以外の装置構成部分に治療用の振動が伝達され難くなり、騒音が増大することを防止することができる。
図2は、図1の装置を制御する制御ボックス30を示す。
制御ボックス30は、治療テーブル3上など、ユーザが操作可能な適宜の位置に設置される。制御ボックス30は、コンピュータを内蔵する。コンピュータは、治療プログラムが記憶されているメモリと、このメモリに記憶されている治療プログラムに基づいて治療制御を実行するCPUと、を含む。ここで、ユーザとは、患者に対する治療を担当する施療者を指すのが一般的である。しかしながら、この装置は治療を受ける患者自身が自己治療のために操作することも可能である。そのため、ここでいうユーザとは患者自身も含まれる。
制御ボックス30は、パネル面に電源スイッチ31、振動周波数調節摘み32、治療時間設定摘み33、および治療開始/停止スイッチ34を備える。
ユーザは、図1の装置を制御するときは、電源スイッチ31をONにして電源を投入し、摘み32,33で患者の状態を確認しながら適切な振動周波数を決定し、治療時間設定を実施する。その後、治療開始/停止スイッチ34をONにして治療を開始すれば、コンピュータ内のCPUは、上記治療プログラムをメモリから読み出すと共に、図1の装置のレーザー変位計11、歪みゲージ20、等の検出出力に基づいて、治療プログラムを実行する。
なお、図示は省略するが、遠隔操作で制御ボックス30のコンピュータと通信して装置の作動を緊急停止できる手元スイッチ等を設け、この手元スイッチ等の操作によって、ユーザは、場所の制限を受けず、治療動作を緊急停止させる操作ができるようにしてもよい。
以上説明したように本装置は、牽引機構部24の牽引力と振動機構部22の治療用の振動とを、患者の下顎に同時作用させる際に、振動機構部22の治療用の振動が牽引機構部24に伝達することを連結ベルト23の可撓性の発現により軽減することができる。そのため、振動機構部22と下顎牽引具19以外の装置構成に治療用の振動が伝達され難くなり、騒音が増大することを防止することができる。
従って、本装置によれば、患者が恐怖感を抱いたり、治療中にストレスを感じたりすることが低減し、ストレスを抱えていることの多い顎関節症患者等であっても、快適に顎振動牽引治療を行うことが可能となる。
また、本装置によれば、ネジの緩みや疲労破壊等の故障リスクを低減することも期待できるうえ、更に、患者側に牽引機構部や振動機構部が突出していないので、治療中に患者の身体が装置に接触して治療効果が損なわれる心配がない。
また、下顎牽引具19にかかる牽引力は、患者毎に、手計算で行う必要がないので、治療のための準備作業が簡単に済む。
また、従来の図3の装置のように、アームの長さの計算やモーターの取り付け位置の調節を間違えるといったことがないので、意図しない牽引力で、治療が行われる虞がなくなり、所望する治療効果を得ることができる。
また、患者側に、従来の図3の装置のように、モーター44が突出していないので、適切な治療を行い易い。
また、一端側にマウスピース35を備えた下顎牽引具19を治療テーブル3に対して、その高さ調節ができるので、患者の個体差によってマウスピース35を適正に患者の奥歯に当接するように装着することができる。
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施できる。したがって、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、本発明の範囲は特許請求の範囲に示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲に属する変形や変更は全て本発明の範囲内のものである。
9 顎部パッド(下顎載置部)
10 顎部パッド高さ調節ノブ(下顎載置部位置調節部)
17 支点
18 傾動レバー(傾動部材)
19 下顎牽引具
21 発振部
22 振動機構部
23 連結ベルト
24 牽引機構部
30 制御ボックス
31 電源スイッチ
32 振動周波数調節摘み
33 治療時間設定摘み
34 治療開始/停止スイッチ

Claims (3)

  1. 患者(7)の下顎に装着される下顎牽引具(19)と、
    前記下顎牽引具(19)に治療用の振動を作用させる振動機構部(22)と、
    前記患者(7)の前記下顎に牽引力を作用させる牽引機構部(24)と、
    を具備し、
    前記振動機構部(22)は、
    前記患者(7)の前記下顎の運動方向と同方向に傾動可能に装置に軸支される傾動部材(18)と、
    前記治療用の振動を発生する発振部(21)と、
    を備え、
    前記傾動部材(18)の一端側には前記下顎牽引具(19)が取着され、前記傾動部材(18)の他端側には前記牽引機構部(24)が可撓性の連結体(23)により連結され、前記一端側と前記他端側との間の前記傾動部材(18)には前記発振部(21)が固定され、
    前記牽引機構部(24)は、前記下顎牽引具(19)を介して前記患者(7)の前記下顎に、前記患者(7)の左から見て時計回り方向に傾動する牽引力を作用させ、
    前記牽引機構部(24)の牽引力と前記振動機構部(22)の治療用の振動とを、前記患者(7)の下顎に同時作用させる際に、前記連結体(23)は、前記振動機構部(22)の振動が前記牽引機構部(24)に伝達されることを抑制する、
    ことを特徴とする顎振動牽引治療装置。
  2. 前記患者(7)の前記下顎に対する前記下顎牽引具(19)の装着角度の調節が可能である、
    ことを特徴とする請求項1に記載の顎振動牽引治療装置。
  3. 治療中に前記患者(7)の前記下顎が載置される下顎載置部(9)と、
    前記下顎牽引具(19)に対する前記下顎載置部(9)の垂直方向の位置を調節する下顎載置部位置調節部(10)と、
    を備えている、
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の顎振動牽引治療装置。
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