以下、添付図面を参照して、本願の開示する作業車両のPTO変速装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、作業車両の概略左側面図である。図2は、作業車両の概略正面図である。図3は、作業車両の概略背面図である。図4は、作業車両の概略平面図である。なお、以下では、作業車両として、トラクタ1を例に説明する。トラクタ1は、自走しながら圃場などで作業を行う農用トラクタである。また、以下の説明においては、前後方向とは、作業車両、すなわち、トラクタ1の直進時における進行方向であり、進行方向前方側を前後方向の「前」、後方側を前後方向の「後」と規定する。ここで、トラクタ1の進行方向とは、トラクタ1直進時において、後述する操縦席8からステアリングハンドル11に向かう方向である。
また、左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。ここでは、前後方向の「前」側に向けて左右を規定する。すなわち、操作者(オペレータ)が操縦席8に着いて前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。さらに、鉛直方向とは、前後方向および左右方向に対して直交する方向である。したがって、前後方向、左右方向および鉛直方向は、互いに3次元で直交することになる。
図1〜図4に示すように、作業車両としてのトラクタ1は、前輪2と、後輪3と、動力源としてのエンジン4と、変速装置(トランスミッション)5とを備えている。このうち、前輪2は、主に操舵用の車輪、すなわち、操舵輪として設けられる。後輪3は、主に駆動用の車輪、すなわち、駆動輪として設けられる。後輪3には、機体前部1Fのボンネット6内に搭載されるエンジン4で発生した回転動力を、変速装置(トランスミッション)5で適宜減速して伝達可能になっている。後輪3は、前輪2と同様に、エンジン4で発生した回転動力によって駆動力を発生する。
また、変速装置5は、エンジン4で発生した回転動力を、必要に応じて前輪2にも伝達可能になっており、この場合は、前輪2と後輪3との四輪が駆動輪となり駆動力を発生する。すなわち、変速装置5は、二輪駆動と四輪駆動との切り替えが可能になっており、エンジン4の回転動力を減速し、減速された回転動力を前輪2、後輪3に伝達可能である。また、トラクタ1は、機体後部1Rに、ロータリ(図示省略)などの作業機を装着可能な連結装置7が配設されている。連結装置7は、たとえば、左右のロアリンク7aや中央のトップリンクなどによってトラクタ1の機体後部1Rに作業機を連結する。
トラクタ1は、たとえば、左右のリフトアーム49を油圧で回動することで、リフトロッド49aおよびリフトロッド49aと連結されるロアリンク7aなどを介して作業機を昇降させることができる。また、トラクタ1は、機体上の操縦席8の周りがキャビン9で覆われている。トラクタ1は、キャビン9の内部において、操縦席8前方のダッシュボード10からステアリングハンドル11が立設されるとともに、操縦席8の周りにクラッチペダル、ブレーキペダル、アクセルペダルなどの各種操作ペダルや前後進レバー、変速レバーなどの各種操作レバーが配置されている。
次に、図5を参照して変速装置5のミッションケース12内の伝動機構13について説明する。図5は、変速装置5のミッションケース12内の伝動機構13を示す線図である。図5に示すように、変速装置5は、ミッションケース12(図1参照)と、ミッションケース12内に配置され、エンジン4から後輪3などへ回転動力を伝達する伝動機構13とを含んで構成されている。伝動機構13は、エンジン4からの回転動力を前輪2、後輪3および機体に装着した作業機に伝達し、これらをエンジン4からの回転動力によって駆動するものである。
具体的には、伝動機構13は、入力軸14、前後進切替機構15、高低変速機構としてのHi−Lo変速機構16、主変速機構17、副変速機構18、2WD/4WD切替機構19、PTO駆動部(PTO駆動機構)20などを含んで構成されている。伝動機構13は、エンジン4が発生させた回転動力を入力軸14、前後進切替機構15、Hi−Lo変速機構16、主変速機構17、副変速機構18を順に介して後輪3に伝達する。
また、伝動機構13は、エンジン4が発生させた回転動力を入力軸14、前後進切替機構15、Hi−Lo変速機構16、主変速機構17、副変速機構18および2WD/4WD切替機構19を順に介して前輪2に伝達する。さらに、伝動機構13は、エンジン4が発生させた回転動力を入力軸14およびPTO駆動機構20を順に介して作業機に伝達する。
入力軸14は、エンジン4の出力軸に結合されており、エンジン4からの回転動力が伝達(入力)される。
前後進切替機構15は、エンジン4から伝達された回転動力を、前進方向回転又は後進方向回転に切り替え可能なものである。前後進切替機構15は、前進側ギヤ段15a、後進側ギヤ段15b、逆転ギヤ15c、油圧多板クラッチ(前進クラッチ)C1、油圧多板クラッチ(後進クラッチ)C2を含んで構成されている。油圧多板クラッチC1、C2は、接続/接続解除を切り替えることで、前後進切替機構15における動力の伝達経路の切り替えを可能とする。前後進切替機構15は、油圧多板クラッチC1、C2の接続/接続解除状態に応じて入力軸14に伝達された回転動力を、伝達経路を変えてカウンタ軸21に伝達する。
また、前後進切替機構15は、油圧多板クラッチC1が接続状態、油圧多板クラッチC2が接続解除状態である場合に、入力軸14に伝達された回転動力を、前進側ギヤ段15a、油圧多板クラッチC1を介して前進方向回転でカウンタ軸21に伝達する。前後進切替機構15は、油圧多板クラッチC1が接続解除状態、油圧多板クラッチC2が接続状態である場合に、入力軸14に伝達された回転動力を後進側ギヤ段15b、逆転ギヤ15c、油圧多板クラッチC2を介して後進方向回転でカウンタ軸21に伝達する。これにより、前後進切替機構15は、トラクタ1の前後進を切り替えることができる。
また、前後進切替機構15は、メインクラッチとしても機能し、油圧多板クラッチC1、C2を共に接続解除状態とすることで、ニュートラル状態となり、前輪2や後輪3側への動力伝達を遮断することができる。前後進切替機構15は、たとえば、オペレータによって前後進切替レバー(図示せず)が操作されることで、油圧制御によって前進、後進およびニュートラルを切り替えることができる。また、クラッチペダル(図示せず)を踏み込み操作することで、油圧多板クラッチC1、C2を共に接続解除状態にすることができる。
Hi−Lo変速機構16は、エンジン4から伝達された回転動力を、高速段または低速段で変速可能なものである。Hi−Lo変速機構16は、Hi(高速)側ギヤ段16a、Lo(低速)側ギヤ段16b、油圧多板クラッチ(Hi(高速)側クラッチ)C3、油圧多板クラッチ(Lo(低速)側クラッチ)C4を含んで構成されている。油圧多板クラッチC3、C4は、接続/接続解除状態を切り替えることで、Hi−Lo変速機構16における動力の伝達経路の切り替えを可能とする。Hi−Lo変速機構16は、油圧多板クラッチC3、C4の接続/接続解除状態に応じて、カウンタ軸21に伝達された回転動力を、伝達経路を変えて変速軸22に伝達する。
また、Hi−Lo変速機構16は、油圧多板クラッチC3が接続状態、油圧多板クラッチC4が接続解除状態である場合に、カウンタ軸21に伝達された回転動力を、油圧多板クラッチC3、Hi側ギヤ段16aを介して変速して変速軸22に伝達する。Hi−Lo変速機構16は、油圧多板クラッチC3が接続解除状態、油圧多板クラッチC4が接続状態である場合に、カウンタ軸21に伝達された回転動力を、油圧多板クラッチC4、Lo側ギヤ段16bを介して変速して変速軸22に伝達する。これにより、Hi−Lo変速機構16は、エンジン4からの回転動力をHi側ギヤ段16aの変速比、あるいは、Lo(低速)側ギヤ段16bの変速比で変速して後段に伝達することができる。Hi−Lo変速機構16は、たとえば、オペレータによってHi−Lo切替スイッチ(高低変速操作スイッチ)がオン/オフされることで、油圧制御によってHi(高速)側およびLo(低速)側を切り替えることができ、高速と低速の2段のうちのいずれかで変速することができる。また、Hi−Lo変速機構16は、上述した構成によってトラクタ1の走行中に変速可能である。
主変速機構17は、エンジン4から伝達された回転動力を、複数の変速段のいずれかで変速可能である。主変速機構17は、シンクロメッシュ式の変速機構であり、ここでは、エンジン4から前後進切替機構15およびHi−Lo変速機構16を介して伝達される回転動力を変速可能である。主変速機構17は、複数の変速段として第1速ギヤ段17a、第2速ギヤ段17b、第3速ギヤ段17c、第4速ギヤ段17d、第5速ギヤ段17e、第6速ギヤ段17fを含んで構成されている。
また、主変速機構17は、第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fの変速軸22との結合状態に応じて、変速軸22に伝達された回転動力を、第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fのいずれかを介して変速して変速軸23に伝達する。これにより、主変速機構17は、エンジン4からの回転動力を第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fのいずれかの変速比で変速して後段に伝達することができる。主変速機構17は、たとえば、オペレータによって主変速操作レバー(図示せず)が操作されることで、複数の変速段のうちの1つを選択して切り替えることができ、第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fの6段のうちのいずれかで変速することができる。また、主変速機構17は、上述した構成によってトラクタ1の走行中に変速可能である。
副変速機構18は、エンジン4から前後進切替機構15、Hi−Lo変速機構16および主変速機構17を順に介して伝達される回転動力を変速可能である。副変速機構18は、第1副変速機24、第2副変速機25などを含んで構成され、変速軸23に伝達された回転動力を、第1副変速機24、第2副変速機25などを介して変速して変速軸26に伝達する。第1副変速機24は、エンジン4から伝達され主変速機構17などで変速された回転動力を高速段または低速段で変速して、駆動輪である後輪3側に伝達可能である。第2副変速機25は、エンジン4から伝達され主変速機構17などで変速された回転動力を、第1副変速機24よりもさらに低速の極低速段で変速して駆動輪である後輪3側に伝達可能である。
副変速機構18の第1副変速機24は、第1ギヤ24a、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24d、シフタ24eを含んで構成される。第1ギヤ24aは、変速軸23と一体回転可能に結合され変速軸23からの回転動力が伝達(入力)される。第2ギヤ24bは、第1ギヤ24aと噛合している。第3ギヤ24cは、第2ギヤ24bと一体回転可能に結合されている。第4ギヤ24dは、第3ギヤ24cと噛合している。シフタ24eは、第1ギヤ24aおよび第4ギヤ24dと変速軸26との結合状態を切り替えるものである。シフタ24eは、第1ギヤ24aと変速軸26とを一体回転可能に結合するHi(高速)側位置、第4ギヤ24dと変速軸26とを一体回転可能に結合するLo(低速)側位置、第1ギヤ24a、第4ギヤ24dのいずれもが変速軸26と結合せず、解放される中立位置(ニュートラル位置)に移動可能である。
また、第1副変速機24は、シフタ24eの位置に応じて、変速軸23に伝達された回転動力を、伝達経路を切り替えて変速軸26に伝達する。第1副変速機24は、シフタ24eがHi側位置にある場合、変速軸23に伝達された回転動力を、第1ギヤ24aから、第2ギヤ24b、第3ギヤ24cおよび第4ギヤ24dを介さずに、変速軸26に伝達する(変速軸23→第1ギヤ24a→変速軸26)。第1副変速機24は、シフタ24eがLo側位置にある場合、変速軸23に伝達された回転動力を、第1ギヤ24aから第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24dおよびシフタ24eを介して順次減速して変速軸26に伝達する。これにより、第1副変速機24は、エンジン4からの回転動力を、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24dを介さないHi(高速)側の変速比、あるいは、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24dを介したLo(低速)側の変速比で変速して、後段に伝達することができる。
また、第1副変速機24は、シフタ24eが中立位置にある場合、第1ギヤ24a、第4ギヤ24dのいずれもが変速軸26に対して空転する状態、すなわち、ニュートラルの状態となる。第1副変速機24は、たとえば、オペレータによって第1副変速操作レバー(図示せず)が操作されることで、シフタ24eの位置が切り替えられて、Hi(高速)側、Lo(低速)側およびニュートラルを切り替えることができる。
副変速機構18の第2副変速機25は、第1ギヤ25a、第2ギヤ25b、第3ギヤ25c、第4ギヤ25d、シフタ25eを含んで構成されている。第1ギヤ25aは、第4ギヤ25dと一体回転可能に結合されている。第2ギヤ25bは、第1ギヤ25aと噛合している。第3ギヤ25cは、第2ギヤ25bと一体回転可能に結合されている。第4ギヤ25dは、第3ギヤ25cと噛合している。シフタ25eは、第4ギヤ25dと変速軸26との結合状態を切り替えるものである。シフタ25eは、第4ギヤ25dと変速軸26とを一体回転可能に結合する極Lo(極低速)側位置、第4ギヤ25dと変速軸26とが結合されず、解放される中立位置(ニュートラル位置)に移動可能である。
また、第2副変速機25は、シフタ25eの位置に応じて、変速軸23に伝達された回転動力を、伝達経路を切り替えて変速軸26に伝達する。第2副変速機25は、第1副変速機24がニュートラルの状態で、シフタ25eが極Lo側位置にある場合、変速軸23に伝達された回転動力を、第1副変速機24の第1ギヤ24aから、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24d、第2副変速機25の第1ギヤ25a、第2ギヤ25b、第3ギヤ25c、第4ギヤ25dおよびシフタ25eを介して順次減速して変速軸26に伝達する。これにより、第2副変速機25は、エンジン4からの回転動力を、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24d、第1ギヤ25a、第2ギヤ25b、第3ギヤ25c、第4ギヤ25dを介した極Lo(極低速)側の変速比で変速して後段に伝達することができる。
また、第2副変速機25は、シフタ25eが中立位置にある場合、第4ギヤ25dが変速軸26に対して空転する状態、すなわち、ニュートラルの状態となる。第2副変速機25は、上記第1副変速機24がHi(高速)側またはLo(低速)側となっている場合には、ニュートラルの状態とされる。第2副変速機25は、たとえば、オペレータによって第2副変速操作レバー(図示せず)が操作されることで、シフタ25eの位置が切り替えられて、極Lo(極低速)側およびニュートラルを切り替えることができる。
したがって、副変速機構18は、変速軸23に伝達された回転動力を、第1副変速機24と第2副変速機25とを組み合わせることで、高速と低速と極低速の3段のうちのいずれかで変速して変速軸26に伝達することができる。すなわち、副変速機構18は、第1副変速機24がHi(高速)側、第2副変速機25がニュートラルの状態となっている場合には、Hi(高速)段で変速することができる。副変速機構18は、第1副変速機24がLo(低速)側、第2副変速機25がニュートラルの状態となっている場合には、Lo(低速)段で変速することができる。副変速機構18は、第1副変速機24がニュートラルの状態、第2副変速機25が極Lo(極低速)側となっている場合には、極Lo(極低速)段で変速することができる。副変速機構18は、トラクタ1が停車している状態で、高速、低速、極低速が切り替えられる。
そして、変速装置5の伝動機構13は、変速軸26に伝達された回転動力を、後輪デフ27、車軸(ドライブシャフト)28、遊星歯車機構29などを介して後輪3に伝達する。この結果、トラクタ1は、後輪3がエンジン4からの回転動力によって駆動輪として回転駆動する。
以上の説明を要約すると、入力軸14の回転は、まず、前後進切替機構15で正転または逆転に切り替えられ、Hi−Lo変速機構16で高速および低速の2段のうちのいずれかで変速され、主変速機構17で第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fの6段のうちのいずれかで変速され、さらに、副変速機構18で高速、低速および極低速の3段のうちのいずれかで変速されて、車軸28に伝達される。すなわち、入力軸14の回転は、変速装置5の伝動機構13によって、2×6×3=36段のいずれかで変速されて車軸28へ伝動される。
2WD/4WD切替機構19は、変速軸26に伝達された回転動力を、前輪2側に伝達するか否かを切り替えるものである。2WD/4WD切替機構19は、伝達軸19a、第1ギヤ19b、第2ギヤ19c、伝達軸19d、シフタ19eを含んで構成されている。伝達軸19aは、変速軸26からの回転動力が、ギヤ30、ギヤ31、伝達軸32、カップリング33などを介して伝達(入力)される。第1ギヤ19bは、伝達軸19aが挿入され、伝達軸19aに対して相対回転可能に組み付けられている。第2ギヤ19cは、第1ギヤ19bと噛合している。伝達軸19dは、第2ギヤ19cと一体回転可能に結合されている。シフタ19eは、伝達軸19aと第1ギヤ19bとの結合状態を切り替えるものである。シフタ19eは、伝達軸19aと第1ギヤ19bとを一体回転可能に結合する4WD位置、伝達軸19aと第1ギヤ19bとが結合されず、接続解除される2WD位置(ニュートラル位置)に移動可能である。2WD/4WD切替機構19は、シフタ19eが4WD位置にある場合、伝達軸19aに伝達された回転動力を、第1ギヤ19b、第2ギヤ19cを介して伝達軸19dに伝達する。これにより、2WD/4WD切替機構19は、エンジン4からの回転動力を前輪2側に伝達することができる。
変速装置5の伝動機構13は、伝達軸19dに伝達された回転動力を、前輪デフ34、車軸(ドライブシャフト)35、垂直軸36、遊星歯車機構37などを介して前輪2に伝達する。この結果、トラクタ1は、前輪2および後輪3がエンジン4からの回転動力により駆動輪として回転駆動し、四輪駆動で走行することができる。また、2WD/4WD切替機構19は、シフタ19eが2WD位置にある場合、伝達軸19aに伝達された回転動力の伝達軸19d側への動力伝達が遮断される。この結果、トラクタ1は、二輪駆動で走行することができる。2WD/4WD切替機構19は、たとえば、オペレータによって2WD/4WD切替レバーが操作されることで、シフタ19eの位置が切り替えられて、二輪駆動および四輪駆動を切り替えることができる。
PTO駆動機構20は、エンジン4から伝達される回転動力を変速して機体後部1R(図3参照)のPTO軸40(図3参照)から作業機に出力することで、エンジン4からの動力によって作業機を駆動するものである。PTO駆動機構20は、PTOクラッチ(PTOクラッチ機構)38、変速機構(PTO変速機構)39、PTO軸40などを含んで構成されている。
PTOクラッチ機構38は、PTO軸40側への動力の伝達と遮断とを切り替えるものである。PTOクラッチ機構38は、ギヤ38a、油圧多板クラッチC5、伝達軸38bを含んで構成されている。ギヤ38aは、入力軸14と一体回転可能に結合されたギヤ14aと噛合している。油圧多板クラッチC5は、接続/接続解除状態が切り替わることで、ギヤ38aと伝達軸38bとの間の動力の伝達状態を切り替えるものである。
また、PTOクラッチ機構38は、油圧多板クラッチC5が接続状態となることで、PTO軸40側へ動力を伝達するPTO駆動状態となり、入力軸14からギヤ14aを介してギヤ38aに伝達された回転動力を、油圧多板クラッチC5を介して伝達軸38bに伝達する。さらに、PTOクラッチ機構38は、油圧多板クラッチC5が接続解除状態となることで、PTO軸40側への動力の伝達が遮断されたPTO非駆動状態(ニュートラル状態)となり、ギヤ38aに伝達された回転動力の伝達軸38b側への伝達が遮断される。PTOクラッチ機構38は、たとえば、オペレータによってPTO切替スイッチがオン/オフされることで、油圧制御によってPTO駆動状態およびPTO非駆動状態を切り替えることができる。なお、トラクタ1は、ギヤ38aと噛合するギヤ70a、ギヤ70aと噛合するギヤ70bなどを介してギヤポンプ70が設けられている。ギヤポンプ70は、伝動機構13などの油圧系統に油圧を付与するものである。
PTO変速機構39は、PTO軸40側に動力を伝達する場合に変速を行うものである。PTO変速機構39は、Hi(高速)側ギヤ段39a、Lo(低速)側ギヤ段39b、伝達軸39c、シフタ39dを含んで構成されている。PTO変速機構39は、シフタ39dの位置に応じて、伝達軸38bに伝達された回転動力を、Hi側ギヤ段39a、あるいは、Lo側ギヤ段39bを介して変速して、伝達軸39cに伝達する。シフタ39dは、Hi側ギヤ段39a、Lo側ギヤ段39bと伝達軸39cとの接続状態を切り替えるものである。シフタ39dは、Hi側ギヤ段39aと伝達軸39cとを結合するHi(高速)側位置、Lo側ギヤ段39bと伝達軸39cとを結合するLo(低速)側位置、Hi側ギヤ段39a、Lo側ギヤ段39bのいずれもが伝達軸39cと結合せず、接続解除される中立位置(ニュートラル位置)に移動可能である。
また、PTO変速機構39は、シフタ39dがHi側位置にある場合、伝達軸38bに伝達された回転動力を、Hi側ギヤ段39aを介して伝達軸39cに伝達する。PTO変速機構39は、シフタ39dがLo側位置にある場合、伝達軸38bに伝達された回転動力を、Lo側ギヤ段39bを介して伝達軸39cに伝達する。これにより、PTO変速機構39は、エンジン4からの回転動力を、Hi側ギヤ段39aの変速比、あるいは、Lo側ギヤ段39bの変速比で変速して、後段に伝達することができる。また、PTO変速機構39は、シフタ39dが中立位置にある場合、Hi側ギヤ段39a、Lo側ギヤ段39bのいずれもが伝達軸39cに対して空転する状態、すなわち、ニュートラルの状態となる。PTO変速機構39は、たとえば、オペレータによって後述するPTO変速操作部(PTO変速操作レバー)47が操作されることで、シフタ39dの位置が切り替えられてHi(高速)側、Lo(低速)側およびニュートラルを切り替えることができ、高速と低速の2段のうちのいずれかで変速することができる。
PTO軸40は、機体後部1Rに連結される作業機の被駆動部に接続し、エンジン4からの回転動力を作業機に伝達するものである。PTO軸40は、伝達軸39cに伝達された回転動力が第1ギヤ41、第2ギヤ42などを介して伝達されることで、回転駆動する。
以上の説明を要約すると、入力軸14の回転は、PTOクラッチ機構38を介してPTO変速機構39に伝達され、PTO変速機構39で高速と低速の2段のうちのいずれかで変速されて、PTO軸40に伝達され、PTO軸40を回転駆動する。この結果、トラクタ1は、エンジン4から伝達される回転動力を変速してPTO軸40から作業機へ出力し、作業機を駆動することができる。なお、図5における伝動機構13のうち、図中のA部の構成については後述する。また、図中のB部の詳細な構成については、図16を参照して後述する。
また、PTO駆動機構20は、PTO軸40が脱着可能であり、たとえば、作業機の機種などに応じて、たとえば、2種類のPTO軸40を交換して使用可能である。本実施形態の2種類のPTO軸40としては、図6に例示するPTO軸43と、図7に例示するPTO軸44とがある。すなわち、本実施形態のトラクタ1は、PTO軸43およびPTO軸44を交換して使用可能である。
ここで、図6〜図8を参照してPTO軸40(43,44)について詳細に説明する。図6は、高回転用のPTO軸43(40)の概略側面図である。図7は、低回転用のPTO軸44(40)の概略側面図である。図8は、PTO軸40(たとえば、低回転用のPTO軸44)および着脱リング45を示す部分斜視図である。図6に示すように、高回転用のPTO軸43は、たとえば、六角スプライン43aを介して作業機と結合される。また、図7に示すように、低回転用のPTO軸44は、たとえば、21軸のインボリュートスプライン44aを介して作業機と結合される。上述したように、PTO軸43およびPTO軸44は、変速装置5の伝動機構13本体の機体後部1R側に組み付けられる(図3参照)。ここでは、PTO軸43およびPTO軸44は共に、六角スプライン43aやインボリュートスプライン44aとは反対側の取り付け端部43b,44bがスプラインなどを介して伝動機構13本体に対して回転駆動可能なように組み付けられる。また、PTO軸43およびPTO軸44は共に、中間部に大径部43c,44cを有している。
また、PTO軸43およびPTO軸44は、略同様の外形であるが、PTO軸44は、取り付け端部44b側に軸方向に突出した当接部44dが設けられており、PTO軸43よりも軸方向に長い。典型的には、高回転用のPTO軸43は、PTO変速機構39による高速および低速の2段のうち、相対的に高速(1000rpm)で回転駆動する場合に使用する一方、たとえば、作業機との連結部位の強度上、相対的に低速で回転駆動する場合、言い換えれば、相対的に大きなトルクを伝達する場合には使用しない。これに対して、低回転用のPTO軸44は、相対的に低速(540rpm)で回転駆動する場合に使用する。なお、以下の説明では、PTO軸43およびPTO軸44をとくに区別して説明する必要が無い場合には単に「PTO軸40」という。
図8に示すように、PTO軸40(たとえば、低回転用のPTO軸44)は、図中に例示するような着脱リング45を介して変速装置5の伝動機構13本体の機体後部1R(図3参照)側に着脱可能に組み付けられる。着脱リング45は、一部に切欠き45aを有する円環状に形成され、切欠き45aの縁部につまみ突起45bが設けられている。PTO軸44は、伝動機構13に対して回転駆動可能なように挿入された状態で、着脱リング45が嵌合溝部45cに嵌め込まれることで、伝動機構13本体から脱落しないように装着される。また、PTO軸40は、オペレータがつまみ突起45bをつまんで着脱リング45を撓ませたうえで着脱リング45が嵌合溝部45cから取り外されることで、伝動機構13本体から簡単に取り外すことができる。このように、トラクタ1は、オペレータがPTO軸40の交換を容易に行うことができるので、作業性を向上させて作業効率を向上させることができる。
また、トラクタ1は、図3に示すように、2種類のPTO軸40のうち一方を使用している状態で、機体に装着されない他方を収納可能な収納部46と、PTO駆動機構20の変速操作を行うPTO変速操作部47とを備えている。
次に、図9〜図11を参照して収納部46について詳細に説明する。図9は、収納部46の概略斜視図である。図10は、高回転用のPTO軸43の収納状態を示す概略側断面図である。図11は、低回転用のPTO軸44の収納状態を示す概略側断面図である。上述したように、収納部46は、PTO軸40を収納可能なものであり、機体後部1Rにおいて、固定部としてのシリンダケース48に支持される(図3参照)。
シリンダケース48は、変速装置5のミッションケース12の上方に固定されており、左右に一対のリフトアーム49が回動自由に設けられている(図3および図4参照)。リフトアーム49は、シリンダケース48の内部に設けられた油圧シリンダ内に作動油が供給されることで上昇回動し、反対に作動油が排出されることで下降するように構成されている。収納部46は、このように構成されるシリンダケース48の左方の面にブラケット50(図9参照)などを介して固定されて支持されている。
図9に示すように、収納部46は、円筒ケース51と、蓋52(図10および図11参照)とを含んで構成されている。円筒ケース51は、中空状の有底円筒状に形成され、内径がPTO軸43およびPTO軸44を収納可能な大きさに形成されている。円筒ケース51は、円筒形状の中心軸線が水平方向に対して傾斜するようにしてシリンダケース48に支持されている(図12参照)。すなわち、円筒ケース51は、前方端部が下方、後方端部が上方になるように傾倒した向きに配置されている。また、収納部46は、円筒ケース51の後方端部に蝶ナット53(図10および図11参照)などによって蓋52が締結されている。収納部46は、PTO軸43またはPTO軸44を収納する場合には、蝶ナット53が外されて蓋52が外されることで、後方端部の開口から内部にPTO軸43またはPTO軸44が挿入される。これにより、トラクタ1の後方からPTO軸43,44を、収納部46に収納することができ、また、収納部46から取り出すことができる。
また、収納部46は、円筒ケース51の周面にPTO変速操作部47のロッド部85(図13参照)をスライド移動可能に受けるスライドガイド部54が設けられている。さらに、収納部46の内周は、中途部56を境に内径を縮小させて形成されている。また、後述するが、PTO軸40(43,44)が収納部46に収納された場合、中途部56から底部55側へ取り付け端部43b,44bが挿入される(図10および図11参照)。また、円筒ケース51には、設置状態における周面下部の中途位置および前方の先端位置に主に水抜きのための穴部57,58が設けられている。なお、穴部57,58は、後述する切欠き59に対して180度対称となる位置に設けられている。
図10に示すように、収納部46に高回転用のPTO軸43(40)が収納される場合には、収納部46が前方へ下り傾斜して設置されているため、PTO軸43を後方から挿入すると、PTO軸43が底部55側へ自重によっても進入する。また、上述したように、PTO軸43は、大径部43cが中途部56に当接することで、中途部56から底部55側へ取り付け端部43bが挿入される。ここで、蓋52は、取り付け状態で円筒ケース51の開口と対向する側の面に筒状部52aが設けられている。かかる筒状部52aは、外径が収納部46(円筒ケース51)の内径よりも小さく、内径がPTO軸43の外径よりも大きい。さらに、筒状部52aの内径を、六角スプライン43aよりも大きく、取り付け端部43bよりも小さく設計して、PTO軸43を逆挿入すると蓋52が取り付けられない構成とすることで、PTO軸43の逆挿入を防止することができる。
また、図11に示すように、収納部46に高回転用のPTO軸44(40)が収納される場合には、上述したPTO軸43の場合と同様に、収納部46が前方へ下り傾斜して設置されているため、PTO軸44を後方から挿入すると、PTO軸44が底部55側へ自重によっても進入する。また、上述したように、PTO軸44は、大径部44cが中途部56に当接することで、中途部56から底部55側へ取り付け端部44bおよび当接部44dが挿入される。また、筒状部52aは、内径がPTO軸44の外径よりも大きい。さらに、筒状部52aの内径を、インボリュートスプライン44aよりも大きく、取り付け端部44bよりも小さく設計して、PTO軸44を逆挿入すると蓋52が取り付けられない構成とすることで、PTO軸44の逆挿入を防止することができる。
図10および図11に示すように、収納部46の底部55近傍(底部55外面の前方)には、PTO軸40の種類、すなわち、高回転用のPTO軸43であるか低回転用のPTO軸44であるかを検出するためのPTO軸検出センサ80が配設されている。PTO軸検出センサ80は、感知部81と、押圧部82とを備えている。感知部81および押圧部82は、収納部46の底部55の上部から中央部まで切り欠かれた切欠き59に配置されている。すなわち、PTO軸検出センサ80は、低回転用のPTO軸44が当接部44dの方から収納部46に収納されると、当接部44dに当接する収納部46内の位置に配置されている。
なお、押圧部82は、自由端である先端側が下方を向くように設けられている。これにより、押圧部82へ泥などが溜まることを防ぐことができ、押圧部82の動作に支障がでないようになる。また、収納部46に設けられた穴部57,58によって、円筒ケース51の外部へ水や油などが抜けるため、PTO軸検出センサ80の故障を防ぐことができる。さらに、使用しないPTO軸43,44に錆が発生することを抑えることができる。なお、PTO軸44は、収納部46の大径部44cに当接して保持されるため、PTO軸検出センサ80にPTO軸44の全重量がかかることはない。また、図示しないが、PTO軸検出センサ80のハーネスなどは、PTO軸検出センサ80の上方に位置する機体のフロア95(図12参照)にクランプされている。また、図示しないが、PTO軸検出センサ80は、泥などが直接かからないように、外部油圧バルブの背面、かつ、後部フェンダーカバーの内側に配置されている。
次に、図12〜図15を参照してPTO変速操作部47について詳細に説明する。図12は、ミッションケース12の配置説明図である。図13は、PTO変速操作部47の高速側操作の動作説明図である。図14は、PTO変速操作部47の中立側操作の動作説明図である。図15は、PTO変速操作部47の低速側操作の動作説明図である。なお、図12では、説明の便宜上、前輪2、後輪3、後部フェンダーカバーなどを省略している。図12に示すように、上述したミッションケース12は、機体後部1Rにおけるフロア95の下方に配設されている。ミッションケース12の左側面には、PTO変速操作部47が配設されている。
図12〜図15に示すように、PTO変速操作部であるPTO変速操作レバー47は、PTO駆動機構20の変速操作を行うものであり、機体後部1Rにおいて、シリンダケース48に対して収納部46を介して変速操作の方向に沿って移動可能に支持されている。ここでは、PTO変速操作レバー47の変速操作の方向とは、水平方向に対して傾斜を有した方向であり、典型的には、円筒ケース51の中心軸線に沿った方向である。すなわち、PTO変速操作レバー47の変速操作の方向とは、水平方向に対して後方から前方へ向けて下り傾斜した方向である。PTO変速操作レバー47は、変速操作の方向に沿って前方から後方へ向けてロッド部85が設けられている。ロッド部85は、シリンダケース48の左方、さらに言えば、収納部46の左方に配置され、後端部にPTO変速操作レバー47の本体が設けられている。PTO変速操作レバー47は、ロッド部85が円筒ケース51に設けられたスライドガイド部54によって変速操作方向(図13〜図15中の矢線X方向)に沿ってスライド移動可能に支持されている。これにより、PTO変速操作レバー47は、シリンダケース48に対してブラケット50、収納部46の円筒ケース51、スライドガイド部54などを介して、ロッド部85と共に変速操作に伴って変速操作方向に沿って移動可能に支持される。
PTO変速操作レバー47は、基端部がPTO変速機構39に接続され、先端部がオペレータによって操作可能な位置に配置されている。PTO変速操作レバー47は、ロッド部85のPTO変速操作レバー47の本体が設けられた端部とは反対側の端部に、シフタアーム86が設けられている。シフタアーム86は、PTO変速操作レバー47に対する変速操作に伴って、PTO変速機構39(図5参照)のシフタ39dを移動させるためのものである。PTO変速操作レバー47は、ロッド部85と共に変速操作方向に移動することで、シフタアーム86が回動し、ピン91を介してシフタ39dをHi(高速)側位置、Lo(低速)側位置、中立位置(ニュートラル位置)のいずれかに移動させることができる。
PTO変速操作レバー47は、変速操作に伴ってロッド部85とともに、高速位置PHiと、中立位置PNと、低速位置PLoとに移動可能である。図13に示すように、PTO変速操作レバー47の高速位置PHiとは、シフタ39dをHi側位置に移動させPTO変速機構39(図5参照)を高速側の状態にし、PTO軸40を相対的に高速で回転駆動させる位置である。図14に示すように、PTO変速操作レバー47の中立位置PNとは、シフタ39dを中立位置に移動させPTO変速機構39をニュートラルの状態にする位置である。図15に示すように、PTO変速操作レバー47の低速位置PLoとは、シフタ39dをLo側位置に移動させPTO変速機構39を低速側の状態にし、PTO軸40を相対的に低速で回転駆動させる位置である。
PTO変速操作レバー47は、中立位置PNを基準として変速操作方向に沿って前後方向前側に押し込まれることで低速位置PLoに移動する。一方、PTO変速操作レバー47は、中立位置PNを基準として変速操作方向に沿って後方に引き出されることで、高速位置PHiに移動する。この結果、オペレータは、PTO変速操作レバー47を変速操作方向に沿って変速操作することで、シフタ39dの位置を切り替えることができ、PTO変速機構39の変速状態、言い換えれば、PTO軸40の回転駆動状態を高速、低速、ニュートラルのいずれかに切り替えることができる。
また、ミッションケース12の左側面におけるロッド部85の基端部側には、上述したようなPTO変速操作レバー47の動作状態を検出するPTO変速センサ90が配設されている。PTO変速センサ90は、シフタ39dの位置を検出することで、PTO変速操作レバー47の動作状態を検出することができる。
トラクタ1では、PTO軸検出センサ80の検出結果に基づいて、PTO駆動機構20のPTO変速機構39の変速域を決定する。すなわち、2種類のPTO軸40の一方を使用している状態で、収納部46に収納されている2種類のPTO軸40の他方に基づいて、PTO変速機構39の変速域を決定する。換言すれば、2種類のPTO軸40の他方、すなわち、使用していない(機体に装着されていない)方のPTO軸40を収納部46に収納することで、使用している(機体に装着されている)PTO軸40に応じたPTO変速機構39の変速域を決定する。
また、図12〜図15に示すように、PTO変速センサ90は、ミッションケース12の外周面に配索された油圧ホース87と干渉しないように、ミッションケース12の外周面(左側面)との間にステー(図示せず)を介してミッションケース12に固定され、ミッションケース12とロッド部85との間に配置されている。また、PTO変速センサ90は、水や泥などが直接かからないように、フロア95(図12参照)の下方、燃料タンク96(図12参照)の背面、マウントブラケット(図示せず)の後方に配置されている。また、PTO変速センサ90側のハーネスは、PTO変速センサ90を組み付けるためにミッションケース12の左側面に溶接されたプレート92にクランプされている。
ここで、図5に戻り、トラクタ1における変速装置5の伝動制御系について説明する。図5に示すように、トラクタ1は、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)100を備えている。ECU100には、PTO軸検出センサ80の検出結果およびPTO変速センサ90の検出結果がそれぞれ入力される。ECU100は、各検出結果に基づいて、PTOクラッチソレノイドバルブ101へPTOクラッチ機構38を接続/接続解除する信号を出力することで、PTOクラッチ機構38を制御する。
ECU100は、PTO変速センサ90によってPTO変速操作レバー47が高速側に操作されたことが検出され、かつ、PTO軸検出センサ80によって低回転用のPTO軸44が検出されていない場合に、PTOクラッチ機構38の接続を禁止する制御を行う。
このような制御によれば、PTO軸40を高速で回転させる場合、低回転用のPTO軸44の収納をPTOクラッチ接続の条件とすることで、低回転用のPTO軸44を高速で回転させることを防止することができる。すなわち、PTO軸40(この場合、高速用PTO軸43)に対応しない回転数での作業機の駆動を防止することができる。
また、ECU100は、PTO変速センサ90によってPTO変速操作レバー47が低速側に操作されたことが検出され、かつ、PTO軸検出センサ80によって低回転用のPTO軸44が検出されている場合に、PTOクラッチ機構38の接続を禁止する制御を行う。
このような制御によれば、低回転用のPTO軸44が収納部46に収納されている場合は、高回転用のPTO軸43が作業機の被駆動部に接続されていることが想定されるため、低速駆動を禁止することで、不適切な作業を牽制することができる。
また、上述したように、PTO変速センサ90は、PTO変速操作レバー47の高速側に対応する動作状態または低速側に対応する動作状態のみを検出する。そして、中立の場合は、PTO軸40に回転動力が伝達されない。したがって、PTO変速操作レバー47が中立の姿勢の場合にはPTOクラッチ機構38の接続を禁止する必要がないため、PTO変速センサ90がPTO変速操作レバー47の高速側または低速側への1つの動作状態を検出すれば足りるようになる。これにより、PTO変速センサ90を、最小限の数に抑えることができるとともに、安価に構成することができる。
図16は、図5におけるB部の説明図(油圧伝動線図)である。モータ102によって駆動されるギヤポンプ70は、ギヤポンプ70から送り出された作動油によってPTOクラッチソレノイドバルブ101を介してPTOクラッチ機構38を駆動(接続/接続解除)する。PTOクラッチソレノイドバルブ101は、電流によって制御されることで、PTOクラッチ機構38を接続/接続解除する。
図17は、警報部の一例を示す説明図である。図17に示すように、トラクタ1(図1参照)のメーターパネル105には、警報部106,107が設けられている。本例では、たとえば、警報部106は、PTO軸40(図5参照)が故障によって回転しない場合に点灯または点滅する。また、たとえば、警報部107は、ECU100(図5参照)がPTOクラッチ機構38を接続禁止することによってPTO軸40が回転しない場合に、禁止状態を報知するために点灯または点滅する。なお、これらの警報部106,107は、ECU100によって制御される。
図18は、PTOクラッチ接続および警報制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。図18に示すように、ECU100は、PTO軸40を回転駆動するPTOスイッチのON/OFFを判定する(ステップS101)。ECU100は、PTOスイッチがONの場合(ステップS101,Yes)、PTO変速操作レバー47が低速側に操作されているか否かを判定する(ステップS102)。ECU100は、PTO変速操作レバー47が低速側に操作されていれば(ステップS102,Yes)、PTO軸検出センサ80からの検出信号に基づいて、収納部46に収納されたPTO軸40が低回転用のPTO軸44か否かを判定する(ステップS103)。また、ECU100は、収納部46に収納されたPTO軸40が低回転用のPTO軸44である場合(ステップS103,Yes)、高回転用のPTO軸43が誤装着されていることが想定されるため、PTOクラッチ機構38の接続を禁止し(ステップS104)、警報部(PTO表示灯)107を点滅する(ステップS105)。
また、ECU100は、ステップS101において、PTOスイッチがOFFの場合(ステップS101,No)、PTOクラッチ接続および警報制御の処理を終了する。
また、ECU100は、ステップS102において、PTO変速操作レバー47が低速側に操作されていなければ(ステップS102,No)、PTO軸検出センサ80からの検出信号に基づいて、収納部46に収納されたPTO軸40が低回転用のPTO軸44か否かを判定する(ステップS106)。ECU100は、収納部46に収納されたPTO軸40が低回転用のPTO軸44である場合(ステップS106,Yes)、PTOクラッチ機構38を接続し(ステップS107)、警報部(PTO表示灯)107を点灯する(ステップS108)。
また、ECU100は、ステップS103において、収納部46に収納されたPTO軸40が低回転用のPTO軸44でない場合(ステップS103,No)、PTOクラッチ機構38を接続し(ステップS109)、警報部(PTO表示灯)107を点灯する(ステップS110)。
さらに、ECU100は、ステップS106において、収納部46に収納されたPTO軸40が低回転用のPTO軸44でない場合(ステップS106,No)、高回転用のPTO軸43が誤装着されていることが想定されるため、PTOクラッチ機構38の接続を禁止し(ステップS111)、警報部(PTO表示灯)107を点滅する(ステップS112)。
上述してきたように、トラクタ1は、収納部46に収納されたPTO軸40の種類をPTO軸検出センサ80によって電気的に検出するので、泥などの影響を受け難くなり、PTO変速を確実に行うことができる。また、PTO変速操作レバー47の動作状態をPTO変速センサ90を用いて検出することで、他方のPTO軸40とPTO変速操作レバー47の動作状態とを電気的に比較することができる。これにより、PTO変速された回転数に応じたPTO軸40が装着されているか否かを容易に把握することができる。また、PTO変速操作レバー47の動作状態をPTO変速センサ90を用いて検出することで、他方のPTO軸40とPTO変速操作レバー47の動作状態とを電気的に比較することができる。これにより、PTO変速された回転数に応じたPTO軸40が装着されているか否かを容易に判定することができる。
また、PTO変速センサ90がPTO変速操作レバー47における基端部の近傍に配置されることで、PTO変速操作レバー47の動きを直接、かつ、確実に検出することができる。また、PTO軸40が収納部46に収納されたことを確実に検出することができる。また、収納部46に設けられた穴部57,58によって水や油が穴部57,58から外部へ抜けるため、PTO軸検出センサ80が水や油などの影響によって故障することを防ぐことができる。さらに、PTO軸検出センサ80およびPTO変速センサ90によって、PTO変速されるPTO軸40を電気的に制御することができる。
また、PTOクラッチ機構38を接続禁止する場合に禁止状態を警報部107に報知させることで、故障によってPTO軸40が回転しない場合と、ECU100の制御によるPTOクラッチ機構38の接続禁止によってPTO軸40が回転しない場合とを明確に区別することができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。