次に、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
まず、本発明が適用される電動可変動弁装置について簡単に説明する。図1は特許文献1と同様の位相変換機能を備えた電動可変動弁装置の全体的な構成を示し、図2は電動機への給電装置付近の構成を示している。尚、図1、2では電動可変動弁装置を縦方向に描いているが、実際はカムシャフトに取り付けられるので横方向に配置して使用されるものである。
電動可変動弁装置は図1及び図2に示すように、内燃機関のクランクシャフトによって回転駆動する駆動回転体であるタイミングスプロケット10と、シリンダヘッド上に設けた軸受を介して回転自在に支持され、タイミングスプロケット10から伝達された回転力によって回転するカムシャフト11と、タイミングスプロケット10の前方位置に配置されたチェーンカバーに固定されたカバー部材12と、伝達方向で見てタイミングスプロケット10とカムシャフト11の間に配置されて、内燃機関の運転状態に応じてタイミングスプロケット10とカムシャフト11の間の相対回転位相を変更する位相変換機構13とを備えている。
タイミングスプロケット10は、全体が金属(例えば鉄系金属)によって環状一体に形成され、内周面が段差形状のスプロケット本体10aと、スプロケット本体10aの外周に一体に設けられて、巻回されたタイミングチェーンを介してクランクシャフトからの回転力を受けるギヤ部10bと、スプロケット本体10aの前端側に一体に設けられた環状部材14と、から構成されている。
また、このタイミングスプロケット10は、スプロケット本体10aとカムシャフト11の前端部に設けられた後述する従動部材15との間に、軸受である1つの大径ボールベアリング16が介装されており、この大径ボールベアリング16によって、タイミングスプロケット10とカムシャフト11が相対回転自在に支持されている。
大径ボールベアリング16は、一般的な構造であって、図1に示すように、外輪と内輪及び内外輪の間に介装されたボールとから構成されている。この大径ボールベアリング16は、外輪がスプロケット本体10aの内周側に固定されているのに対して内輪が従動部材15の外周側に固定されている。
スプロケット本体10aは図2に示すように、内周側にカムシャフト11側に開口した円環溝状の外輪固定部10cが形成されている。この外輪固定部10cは、段差形状に形成されて、カムシャフト11の軸方向に延びた円環状の内周面と、この内周面の開口と反対側に一体に有し、径方向に沿って形成された第1規定段差面とから構成されている。内周面には、大径ボールベアリング16の外輪が軸方向から圧入されると共に、第1固定段差面には、圧入された外輪の軸方向の内端面が当接して、外輪の軸方向一方側の位置決めをするようになっている。
環状部材14は、スプロケット本体10aの前端部外周側に一体に設けられ、位相変換機構13の電動機18の方向へ延出した円筒状に形成されていると共に、内周には、波形状の内歯14aが形成されている。この内歯14aは、円周方向に等間隔で連続的に複数形成されている。また、環状部材14の前端側には、電動機18の後述するハウジング19とねじ20によって固定されている。
また、スプロケット本体10aの環状部材14と反対側の後端部には、円環状の保持プレート21が配置されている。この保持プレート21は、金属板材によって一体に形成され、外径がスプロケット本体10aの外径とほぼ同一に設定されていると共に、内径が大径ボールベアリング16の径方向のほぼ中央付近の径に設定されている。
したがって、保持プレート21の内周面は、大径ボールベアリング16の外輪の軸方向の外端面に対して一定の隙間をもって覆うように対向配置されている。
図1に示すカバー部材12は、合成樹脂材によってカップ状に成形されて、前端部に形成された膨出部12aがハウジング19の前端部を覆うように設けられていると共に、外周に形成されたフランジ部に図示しないボルト挿通孔が貫通形成され、このボルト挿通孔に挿通されたボルトによってチェーンカバーに固定されている。
膨出部12aの内周面とハウジング19の外周面との間には、シール部材である大径なオイルシール22が固定されている。この大径オイルシール22は、横断面がほぼコ字形状に形成されて、合成ゴムの基材の内部に芯金が埋設されていると共に、外周側の円環状基部がカバー部材12の内周面に嵌着固定されている。
ハウジング本体19aは、後端側に円板状の底部19bを有し、底部19bのほぼ中央に後述の偏心軸部を挿通する大径な軸部挿通孔19cが形成されていると共に、軸部挿通孔19cの孔縁には、カムシャフト11軸方向へ突出した円筒状の延出部19dが一体に設けられている。カムシャフト11は、外周に吸気弁を開作動させる一気筒当り2つの駆動カムを有していると共に、前端部にフランジ部11aが一体に設けられている。また、カムシャフト11の前端面が従動部材15に軸方向から当接した状態でカムボルト24によって軸方向から結合されている。
従動部材15は、鉄系金属材によって一体形成され、前端側に形成された円板状の固定端部15aと、固定端部15aの内周前端面から軸方向へ突出した円筒部15bと、固定端部15aの外周部に一体に形成されて、複数のローラを保持する円筒状の保持器25とから構成されている。従動部材15は、後端面がカムシャフト11のフランジ部11aの前端面に当接配置されて、カムボルト24の軸力によってフランジ部11aに軸方向から圧接固定されている。従動部材15の内部には図1に示すように、中央にカムボルト24の軸部が挿通される挿通孔が貫通形成されていると共に、外周側にニードルベアリング26が設けられている。
保持器25は、図2に示すように、固定端部15aの外周部前端から断面がほぼL字形状に折曲されて、円筒部15bと同方向へ突出した有底円筒状に形成されている。この保持器25の筒状先端部25aは、延出部19dとの間に形成された円環状の凹部である空間部を介してハウジング19の底部19b方向へ延出している。また、先端部25aの周方向のほぼ等間隔位置に、複数のローラをそれぞれ転動自在に保持するローラ保持部であるほぼ長方形状の複数のローラ保持孔25bが周方向の等間隔位置に形成されている。このローラ保持孔25bは、その全体の数が環状部材14の内歯14aの全体の歯数よりも1つ少なくなっている。
そして、固定端部15aの外周部と保持器25の底部側結合部との間には、大径ボールベアリング16の内輪を固定する内輪固定部15cが切欠形成されている。この内輪固定部15cは、図1に示すように、外輪固定部110cと径方向から対向した段差状に切欠形成されて、カムシャフト11軸方向に延びた円環状の外周面と、外周面の開口と反対に一体に有し、径方向に沿って形成された第2固定段差面とから構成されている。外周面には、大径ボールベアリング16の内輪が軸方向から圧入されると共に、第2固定段差面には、圧入された内輪の内端面が当接して軸方向の位置決めされるようになっている。
図2にあるように、位相変換機構13は、カムシャフト2のほぼ同軸上前端側に配置されたアクチュエータである電動機18と、電動機18の回転速度を減速してカムシャフト11に伝達する減速機構27とから構成されている。
電動機18は、ブラシ付きの直流電動機であって、タイミングスプロケット10と一体に回転するヨークであるハウジング19と、ハウジング19の内部に回転自在に設けられた中間回転体である出力軸28と、ハウジング19の内周面に固定されたステータである半円弧状の一対の永久磁石29と、図3に示される封止プレート30に固定された固定子31と、を備えている。
出力軸28は、図1、2にも示すように、段差円筒状に形成されてアーマチュアとして機能し、軸方向のほぼ中央位置に形成された段差部を介してカムシャフト11側の大径部と、ブラシ保持体32側の小径部とから構成されている。また、大径部の外周に鉄心ロータ33が固定されていると共に、大径部の内部に偏心軸部34が軸方向から圧入固定されて、段差部の内面によって偏心軸部34の軸方向の位置決めがなされるようになっている。一方、小径部の外周には、コミュテータ35が軸方向から圧入固定されて段差部の外面によって軸方向の位置決めがされている。
鉄心ロータ33は、複数の磁極を持つ磁性材によって形成され、外周に形成されたスロットには電磁コイル36が巻回されている。この電磁コイル36は、カムシャフト11側のコイル部が前記ハウジング19の底部前端面の凹部内に収容された形で軸方向から近接配置されている。一方、コミュテータ35には、鉄心ロータ33の極数と同数に分割されたセグメントに電磁コイル36が電気的に接続されている。
図2にあるように、出力軸28と偏心軸部34は、カムボルト24の頭部側の軸部の外周面に設けられて小径ボールベアリング46と、従動部材15の円筒部15bの外周面に設けられて小径ボールベアリング46の軸方向側部に配置されたニードルベアリ26によって軸受機構が構成されている。
ニードルベアリング26は、偏心軸部34の内周面に圧入された円筒状のリテーナ26aと、リテーナ26aの内部に回転自在に保持された複数の転動体であるニードルローラ26bとから構成されている。このニードルローラ26bは、従動部材15の円筒部15bの外周面を転動している。
小径ボールベアリング46は、内輪が従動部材15の円筒部15bの前端縁とカムボルト24のワッシャとの間に挟持状態に固定されている一方、外輪が出力軸13の内周に形成された段差部と抜け止めリングであるスナップリングとの間で軸方向から位置決め支持されている。
また、出力軸28(偏心軸部34)の外周面とハウジング19の延出部19dの内周面との間には、減速機構27の内部から電動機18内への潤滑油のリークを阻止する小径なオイルシールが設けられている。このオイルシールは、内周部が出力軸28の外周面に弾性力を持って接することによって、出力軸28の回転に対して摩擦抵抗を付与するようになっている。
図示しないコントロールユニットは、クランク角センサやエアーフローメータ、水温センサ、アクセル開度センサなど各種のセンサ類から情報信号に基づいて現在の機関運転状態を検出し、機関制御を行うと共に、電磁カイル36に通電して出力軸28の回転制御を行い、減速機構278を介してカムシャフト24のタイミングスプロケット110に対する相対回転位相を制御するようになっている。
減速機構27は、図2に示すように、偏心回転運動を行う偏心軸部34と、偏心軸部34の外周に設けられた中径ボールベアリング47と、中径ボールベアリング47の外周に設けられたローラ48と、ローラ48を転動方向に保持しつつ径方向の移動を許容する保持器25と、保持器25と一体の従動部材15とから主として構成されている。
偏心軸部34は、段差径の円筒状に形成されて、前端側の小径部が前述した出力軸28の大径部の内周面に圧入固定されていると共に、後端側の大径部の外周面に形成されたカム面の軸芯が出力軸28の軸心から径方向へ僅かに偏心している。尚、中径ボールベアリング47とローラ48などが遊星噛合い部として構成されている。
中径ボールベアリング47は、ニードルベアリング26の径方向位置で全体がほぼオーバラップする状態に配置されている。中径ボールベアリング47の内輪は、偏心軸部34の外周面に圧入固定されているのに対して、外輪は軸方向で固定されることなく自由な状態になっている。つまり、この外輪は、軸方向の電動機18の出力軸28側の一端面がどの部位にも接触せず、また軸方向の他端面がこれに対向する保持器25の内側面との間に微少な第1隙間が形成されて自由な状態になっている。
また、この外輪の外周面には、各ローラ48の外周面が転動自在に当接していると共に、この外輪の外周側には、円環状の第2隙間が形成されて、この第2隙間によって中径ボールベアリング47全体が偏心軸部34の偏心回転に伴って径方向へ移動可能、つまり偏心動可能になっている。
各ローラ48は、中径ボールベアリング47の偏心動に伴って径方向へ移動しつつ環状部材14の内歯14aに嵌入すると共に、保持器25のローラ保持孔の両側縁によって周方向にガイドされつつ径方向に揺動運動させるようになっている。
減速機構27の内部には、潤滑油給油手段によって潤滑油が供給されるようになっている。この潤滑油給油手段は、シリンダヘッドの軸受の内部に形成されて、メインオイルギャラリーから潤滑油が供給される油供給通路と、カムシャフト24の内部軸方向に形成されて、油供給通路にグルーブ溝を介して連通した油供給孔と、従動部材15の内部軸方向に貫通形成されて、一端が油供給孔に開口し、他端がニードルベアリング26と中径ボールベアリング47の付近に開口した小径なオイル孔と、同じく従動部材15に貫通形成された大径な3つのオイル排出孔と、から構成されている。
このような電動可変動弁装置において、次にその動作について簡単に説明する。まず、機関のクランクシャフトが回転駆動するとタイミングチェーンを介してタイミングスプロケット10が回転して、その回転力が環状部材14とハウジング19に伝わり、電動機18が同期回転する。一方、環状部材14の回転力が、各ローラ48から保持器25及び従動部材15を経由してカムシャフト24に伝達される。これによって、カムシャフト24のカムが吸気弁を開閉作動する。
そして、機関始動後の所定の機関運転時には、前記コントロールユニットから制御信号が電動機18の電磁コイル36に通電される。これによって、出力軸28が回転駆動され、この回転力が減速機構27を介してカムシャフト24に減速された回転力が伝達される。
すなわち、従動部材15が偏心部34の偏心回転に伴ってタイミングスプロケット10の回転方向と同方向に回転することによって、カムシャフト24は、タイミングスプロケット10に対する相対回転位相が進角側へ変更される。
一方、従動部材15が、タイミングスプロケット10の回転方向と逆方向に回転することによって、カムシャフト24はタイミングスプロケット10に対する相対回転位相が遅角側へ最大に変更される。この結果、吸気弁の開閉タイミングが進角側或いは遅角側へ変換されて、機関の燃費や出力の向上が図れるものである。
以上に示した電動可変動弁装置の構成は、基本的には特許文献1に記載された電動可変動弁装置と同様のものであるため、これ以上の説明は省略する。尚、更に詳細な説明が必要な場合は特許文献1を参照されたい。
次に、本実施例における電動可変動弁装置の給電装置について説明する。図2に示すように封止プレート30には、通電切替手段として用いられる整流ブラシ37a、37bと、給電手段として用いられる給電ブラシ38a、38bが当接するスリップリング39a、39bが搭載されている。封止プレート30の電動機18側には整流ブラシ37a、37bが配置されており、整流ブラシ37a、37bはコミュテータ35の軸心に対して直交する方向に配置されている。
また、封止プレート30のカバー部材12側には給電ブラシ38a、38bと接触して電力を受ける同心円状のスリップリング39a、39bが配置されており、このスリップリング39a、39bは、コミュテータ35の軸心に対し半径方向に距離をおいて2個の円環として配置されている。
図3は図1のA−A間の矢視断面を示す封止プレート30の内側の断面図である。まず、整流ブラシ37a、37bについて説明する。図3に示される、固定子31は、封止プレート30の内周側に一体的に設けられた円板状の樹脂プレート40と、樹脂プレート40の内側に設けられた一対の樹脂製の整流ブラシ保持ホルダ41a、41bと、整流ブラシ保持ホルダ41a、41bの内部に径方向に沿って摺動自在に収容配置されて、コイルばねである整流ブラシ用ばね42a、42bのばね力で各先端面がコミュテータ35の外周面に径方向から摺動接触する整流ブラシ37a、37bと、整流ブラシ保持ホルダ41a、41bの前端面に、各外端面を露出した状態で埋設固定された内外二重の円環状のスリップリング39a、39bと、各整流ブラシ37a、37bと各スリップリング39a、39bを電気的に接続する整流ブラシ用ピグテール43a、43bと、から主として構成されている。
ここで、図3においてスリップリング39a、39bは実線で示した部分30c、39dがピグテール43a、43bと接続され、カバー部材12側に破線で示した同心の円環状のスリップリング39a、39bが配置されているものである。尚、スリップリング39a、39bが給電装置の一部を構成し、また、整流ブラシ37a、37bやコミュテータ35、整流ブラシ用ピグテール43a、43bなどが通電切替手段として構成されている。
次に、給電ブラシ38a、38bについて説明する。図2において、カバー部材12内部には、導電性金属で構成される端子44a、44bが埋め込まれ、図示しない端子を介してバッテリー電源に電気的に接続されている。端子44a、44bは図示しないピグテールを介して給電ブラシ38a、38bと電気的に接続されている。
給電ブラシ38a、38bは、カーボン粉、銅粉及びバインダ樹脂を混合したものを成形して得られるものである。給電ブラシ38a、38b、ほぼ直方体状に形成されており、カバー部材12内の給電ブラシ保護ホルダに設置された、ねじりコイルばねで作られた給電ブラシばね45a、45bの弾性腕部によって各スリップリング39a、39bに押圧、接触するように付勢されている。
したがって、給電ブラシ38a、38bはスリップリング39a、39bに対して摺動可能に保持される。給電ブラシばね45a、45bは、上述した通り、細長い円形のばね鋼線を同心状に複数回に亘って巻回して形成される「ねじりコイルばね」であり、ばね鋼線としてはステンレス鋼が使用されている。
このような電動可変動弁装置において、給電ブラシ38a、38bは電動機に常に電力を供給しておく必要があるので、給電ブラシ38a、38bの温度は、給電ブラシ自体のジュール熱による発熱や、給電ブラシ38a、38bとスリップリング39a、39bの間の摺動摩擦熱による発熱の影響を受け、かなり高いものとなる。そして、給電ブラシ38a、38bに蓄えられた熱は給電ブラシに当接している弾性腕部及び給電ブラシばね45a、45bを介して外部に放熱されるようになる。
したがって、給電ブラシばね45a、45bが放熱経路となるため、この影響を受けて給電ブラシばね45a、45bは高温に加熱されて「へたり」を生じるようになる。この「へたり」が生じると、給電ブラシ38a、38bの接触圧が減少し、給電ブラシ38a、38bがスリップリング39a、39bから断続的に上下するジャンプ現象を発生するようになる。このジャンプ現象が生じると、給電ブラシ38a、38bとスリップリング39a、39bの間で火花放電が発生し、給電ブラシ38a、38bの異常消耗や、スリップリング39a、39b表面の焼損による抵抗増加といった現象を惹起する。
そこで本実施例では、給電ブラシばね45a、45bを形成するねじりコイルばねの弾性腕部の一端と給電ブラシ38a、38bの当接部分に、給電ブラシばね45a、45bに伝わる熱の移動を抑制する低熱伝導部材を配置する構成を提案するものである。この構成によれば、給電ブラシ38a、38bから給電ブラシばね45a、45bに伝わる熱量を減らすことができるので、熱によって給電ブラシばね45a、45bの給電ブラシへの接触圧が減少するのを抑えて給電ブラシのジャンプ現象の発生を抑制することができるようになる。
以下、本発明の第1の実施形態になる給電装置の詳細を図4、図5に基づき説明する。尚、図4においては、給電ブラシ38b側の給電装置の構成を示しており、紙面手前側に給電ブラシ38aが位置することになる。給電ブラシ38a側の給電装置は給電ブラシ38b側の給電装置と同様の構成である。
図4、図5において、カバー部材12の内部には給電ブラシばね45a、45bを収納するばね収納部50が形成されている。この場合、図1にある通り、給電ブラシ38aの内周側と、給電ブラシ38bの外周側に給電ブラシばね45a、45bは配置されている。尚、給電ブラシばね45a、45bを収納する個別のばね収納部を形成することも可能である。
ばね収納部50に隣接して金属製のブラシホルダ51a、51bが配置されており、このブラシホルダ51a、51b内部に給電ブラシ38a、38bが収納されて摺動自在な構成とされている。給電ブラシ38a、38bはスリップリング39a、39bと接触して電力を整流ブラシ37a、37bに供給しているものである。このため、スリップリング39a、39bと摺動することで給電ブラシ38a、38bが消耗するが、給電ブラシ38a、38bは給電ブラシばね45a、45bの弾発力によって移動してスリップリング39a、39bとの接触を確保するものである。
ばね収納部50には2つのブラシホルダ51a、51bと平行に給電ブラシばね保持軸52が固定されており、この給電ブラシばね保持軸52に給電ブラシばね45a、45bが挿通されて保持されている。給電ブラシばね45a、45bの一方の固定端部45a-s、45b-sはカバー部材12の固定孔50a、50bに固定され、給電ブラシばね45a、45bの他方の弾性腕部45a−a、45b−aは、給電ブラシ38a、38bのスリップリング39a、39bとは反対側の上端面に弾性的に当接されている。そして、給電ブラシばね45a、45bは巻き戻される方向で取り付けられており、自由状態に戻る力を利用して給電ブラシ38a、38bをスリップリング39a、39b側に押圧して接触させている。また、図5にある通り、給電ブラシ38a、38bはピグテール49a、49bによって端子44a、44bと接続されている。
そして、本実施例では、給電ブラシばね45a、45bと給電ブラシ38a、38bの間に、低熱伝導部材53a、53bを配置している。したがって、給電ブラシばね45a、45bが低熱伝導部材53a、53bを介して給電ブラシ38a、38bに接触するように構成されている。この低熱伝導部材53a、53bは、少なくとも給電ブラシばね45a、45bより熱伝導率が低いものであり、本実施例では合成樹脂が使用されるものである。尚、電動可変動弁装置に用いられることもあって、低熱伝導部材53a、53bは耐熱性、或いは難燃性が要求され、本実施例では150℃以上の温度に耐えられる合成樹脂を使用するのが望ましいものである。
低熱伝導部材53a、53bは、給電ブラシばね45a、45bの弾性腕部45a−a、45b−aに設けられているものであり、筒状の低熱伝導部材53a、53bを弾性腕部45a−a、45b−aに挿通して固定しているものである。例えば、熱収縮性の合成樹脂を使用した場合、弾性腕部45a−a、45b−aより内径が大きい有底筒状の低熱伝導部材53a、53bを弾性腕部45a−a、45b−aに挿通した後に熱を加えて熱収縮させることで、給電ブラシばね45a、45bの弾性腕部45a−a、45b−aと低熱伝導部材53a、53bを簡単に一体化することができる。
また、一体化されていることで組立作業において低熱伝導部材53a、53bの脱落を防止することができ、組立作業を容易にできる。更に、弾性腕部45a−a、45b−aの先端は、有底筒状の低熱伝導部材53a、53bの底部によって覆われているので、弾性腕部45a−a、45b−aの先端から熱が侵入することを抑制できる。
このように、給電ブラシばね45a、45bの弾性腕部45a−a、45b−aと低熱伝導部材53a、53bを一体化して組み込むことができるので、給電ブラシ38a、38b側に低熱伝導部材53a、53bの特別な取付構造を採用する必要がなく組立作業が容易となる効果がある。この熱伝導率が低く耐熱性が良い熱収縮性の合成樹脂としては、難燃性のポリフッ化ビニリデン樹脂を用いることが望ましい。ただ、これ以外の合成樹脂を用いることも差し支えないものである。
上述した通り、給電ブラシ38a、38bはスリップリング39a、39bと摺動接触するため、運転中は常に給電ブラシ38a、38bとスリップリング39a、39bの間で摩擦熱が発生する。また、通電を行うことで給電ブラシ38a、38b自身にジュール熱による発熱も生じる。
従来の場合、給電ブラシ38a、38bとスリップリング39a、39bの間で発生した熱は、給電ブラシ38a、38bから給電ブラシばね38a、38bを介してカバー部材12へと伝わる。このため、給電ブラシばね45a、45bが放熱経路となるため、この影響を受けて給電ブラシばね45a、45bは高温に加熱されて「へたり」を生じる。この「へたり」が生じると、給電ブラシ38a、38bの接触圧が減少し、給電ブラシ38a、38bがスリップリング39a、39bから断続的に上下するジャンプ現象を発生するようになる。このジャンプ現象が生じると、給電ブラシ38a、38bとスリップリング39a、39bの間で火花放電が発生し、給電ブラシ38a、38bの異常消耗や、スリップリング39a、39b表面の焼損による抵抗増加といった現象を惹起する。
これに対して、本実施例では、給電ブラシ38a、38bと、給電ブラシばね45a、45bの弾性腕部45a−a、45b−aとの間に低熱伝導部材53a、53bが介在する。これによって、給電ブラシ38a、38bに蓄えられた熱は低熱伝導部材53a、53bによって給電ブラシばね45a、45b側に流れるのが抑制され、大部分の熱がブラシホルダ51a、51bに流れるようになる。したがって、給電ブラシばね45a、45bが高温となるのを防ぐことができる。
これによって、給電ブラシばね45a、45bの「へたり」を抑制できるので、給電ブラシ38a、38bの接触圧が減少する度合が小さくり、給電ブラシ38a、38bがスリップリング39a、39bから断続的に上下するジャンプ現象の発生を抑制できる。したがって、ジャンプ現象による給電ブラシ38a、38bとスリップリング39a、39bの間で生じる、火花放電による給電ブラシ38a、38bの異常消耗や、スリップリング39a、39b表面の焼損による抵抗増加といった現象を抑制できる。
以上述べた通り、本実施例はねじりコイルばねの弾性腕部を覆うように、ねじりコイルばねに伝わる熱の移動を抑制する低熱伝導部材を配置した構成とした。この構成によれば、給電ブラシからねじりコイルばねに伝わる熱量を減らすことができるので、熱によってねじりコイルばねの給電ブラシへの接触圧が減少するのを抑えて給電ブラシのジャンプ現象の発生を抑制し、給電ブラシの異常消耗や、スリップリング表面の焼損による抵抗増加といった現象を抑制することができる。
次に本発明の第2の実施形態について図6、図7に基づいて説明する。第1の実施形態では低熱伝導材が給電ブラシばねの弾性腕部に固定されていたが、本実施例では給電ブラシの上端面に低熱伝導部材を固定した点で異なっている。尚、実施例1と同じ参照番号は同一の構成要素、或いは類似の機能を備えた構成要素であるため説明は省略する。
図6、図7において、給電ブラシ38a、38bの上端面には板状の合成樹脂からなる低熱伝導部材54a、54bが配置されている。低熱伝導部材54a、54bはブラシホルダ51a、51bの内周側の形状に合わせた形状を備えており、ブラシホルダ51a、51b内に収納可能となっている。このため、低熱伝導部材54a、54bは、ブラシホルダ51a、51bによりその移動が拘束され、更に給電ブラシ38a、38bと弾性腕部45a−a、45b−aからの押付力により拘束される。これによって、低熱伝導部材54a、54bの脱落を防止できる。
低熱伝導部材54a、54bと給電ブラシ38a、38bの上端面の間には、給電ブラシばね45a、45bの弾性腕部45a−a、45b−aによって接触力が与えられているので特別に接着剤は必要ないが、更に脱落等の恐れを考慮する必要がある場合は、低熱伝導部材54a、54bと給電ブラシ38a、38bの上端面の間にはエポキシ樹脂のような熱硬化性の接着剤で接着することも可能である。
このように、給電ブラシばね45a、45bの弾性腕部45a−a、45b−aは、低熱伝導部材54a、54bを介して給電ブラシ38a、38bにスリップリング39a、39bへの接触力を付与している。低熱伝導部材54a、54bの必要な物理的特性は実施例1とほぼ同様であるが、本実施例の場合では熱収縮性は必要ないものである。低熱伝導部材54a、54bの材料としては、エンジニアリングプラスチックや熱硬化性樹脂といった種々のものが利用できるが、本実施例の給電装置の仕様に合わせて適切な材料を選択すれば良いものである。
ここで、実施例1に示す低熱伝導部材53a、53bの厚みは熱収縮させるため、それほど厚くできないが、本実施例では低熱伝導部材54a、54bが板状であるため厚みの選択は比較的自由度があり、低熱伝導部材54a、54bの板厚を厚くすれば熱の移動を抑制する効果を更に向上することが可能である。
このように本実施例では、給電ブラシ38a、38bと、給電ブラシばね45a、45bの弾性腕部45a−a、45b−aとの間に板状の低熱伝導部材54a、54bが介在する。これによって、給電ブラシ38a、38bに蓄えられた熱は低熱伝導部材54a、54bによって給電ブラシばね45a、45b側に流れるのが抑制され、大部分の熱がブラシホルダ51a、51bに流れるようになる。したがって、給電ブラシばね45a、45bが高温となるのを防ぐことができる。
これによって、給電ブラシばね45a、45bの「へたり」を抑制できるので、給電ブラシ38a、38bの接触圧が減少する度合いが小さくなり、給電ブラシ38a、38bがスリップリング39a、39bから断続的に上下するジャンプ現象の発生を抑制できる。したがって、ジャンプ現象による給電ブラシ38a、38bとスリップリング39a、39bの間で生じる、火花放電による給電ブラシ38a、38bの異常消耗や、スリップリング39a、39b表面の焼損による抵抗増加といった現象を抑制できる。
以上述べた通り、本実施例はねじりコイルばねの弾性腕部の一端と給電ブラシの当接部分に、ねじりコイルばねに伝わる熱の移動を抑制する板状の低熱伝導部材を配置した構成とした。この構成によれば、給電ブラシからねじりコイルばねに伝わる熱量を減らすことができるので、熱によってねじりコイルばねの給電ブラシへの接触圧が減少するのを抑えて給電ブラシのジャンプ現象の発生を抑制し、給電ブラシの異常消耗や、スリップリング表面の焼損による抵抗増加といった現象を抑制することができる。
次に、実施例2における板状の低熱伝導部材54a、54bの固定方法に関する変形例を説明する。
図8はその第1の変形例を示しており、低熱伝導部材54a、54bに接触する給電ブラシ38a、38bの上端面に凹形状部55a、55bを形成し、更に、給電ブラシ38a、38bの上端面と接触する低熱伝導部材54a、54bに、凹形状部55a、55bと相補的な形状を有する凸形状部56a、56bを設けている。
凹形状部55a、55bと凸形状部56a、56bを噛み合わせることで、低熱伝導部材54a、54bを給電ブラシ38a、38bに容易に固定することができる。また、低熱伝導部材54a、54bは合成樹脂で作られているので、凸形状部56a、56bを凹形状部55a、55bに比べて少しだけ大きく形成しておくと、凸形状部56a、56bの弾性変形によって凹形状部55a、55bと比較的強固に一体化できる。このため組立作業おいて低熱伝導部材54a、54bが給電ブラシ38a、38bから脱落することを防止できる。
図9は第2の変形例であり、図8に示す凹形状部55a、55bと凸形状部を56a、56bを反対にしたものである。低熱伝導部材54a、54bに接触する給電ブラシ38a、38bの上端面に凸形状部58a、58bを形成し、更に、給電ブラシ38a、38bの上端面と接触する低熱伝導部材54a、54bに、凸形状部58a、58bと相補的な形状を有する凹形状部57a、57bを設けている。
第1の変形例と同様に、凸形状部58a、58bと凹形状部57a、57bを噛み合わせることで、低熱伝導部材54a、54bを給電ブラシ38a、38bに容易に固定することができる。また、組立作業おいて低熱伝導部材54a、54bが給電ブラシ38a、38bから脱落することを防止できる。
図10、図11は第3の変形例であり、ブラシホルダ51a、51bの両側面に案内溝を形成し、この案内溝に沿って低熱伝導部材54a、54bが移動できるように案内突起を形成したものである。
図10、図11において、給電ブラシばね45a、45bの弾性腕部45a−a、45b−aに平行なブラシホルダ51a、51bの両側面(スリップリング39a、39bの摺動面に垂直な側面)には案内溝59a、59bが形成されている。更に、図11に示される通り、この案内溝59a、59bに案内されるように、低熱伝導部材54a、54bには、案内突起60a、60bが形成されている。
そして、低熱伝導部材51a、52bの案内突起60a、60bがブラシホルダ51a、51bの案内溝59a、59bに案内されるように組み合わせられている。これによって、低熱伝導部材54a、54bは円滑にずれたりせずに移動することができるようになる。
以上述べた通り本発明によれば、ねじりコイルばねの弾性腕部の一端と給電ブラシの当接部分に、ねじりコイルばねに伝わる熱の移動を抑制する低熱伝導部材を配置した構成とした。これによれば、給電ブラシからねじりコイルばねに伝わる熱量を減らすことができるので、熱によってねじりコイルばねの給電ブラシへの接触圧が減少するのを抑えて給電ブラシのジャンプ現象の発生を抑制し、放電による給電ブラシの異常消耗や、スリップリング表面の焼損による抵抗増加といった現象を抑制することができる。
尚、上記した説明では電動可変動弁装置を代表例としたが、ねじりコイルばねによって給電ブラシを付勢する給電装置を備え、特にこのねじりコイルばねが熱の影響を受ける電動機も同様の課題があるので、本発明はこれらについても適用可能である。この場合、スリップリングはコミュテータに置き換えられるものである。
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。