図1および図2に示される引込戸構造10は、柱11,12間の開口部29において、柱11の内面に固定される縦枠13と、柱12の内面に固定される戸当たり部材14と、これら縦枠13および戸当たり部材14の上端同士の間に架設される上枠15とからなる三方枠に引戸16が横方向にスライド移動可能に設けられ、戸当たり部材14の両側に、戸袋下地板17および戸袋下地桟18からなる戸袋下地材19および方立20を取り付け、それらの外側に各々壁材として石膏ボード21およびクロス22を貼って戸袋23,23を形成したものである。縦枠13、戸当たり部材14および上枠15はいずれもMDFで形成される。この実施形態において、開口部は高さ2470mm、幅1580mmであり、引戸16は高さ2440mm、幅790mmであり、戸袋23は高さ2470mm、幅785mmである。
縦枠13は、少なくとも施工状態において露出する部分に化粧シート貼りなどによる化粧が施された単一部材からなるものであっても良い(実施例2)が、この実施形態の縦枠13は、開口部29に固定する下地縦枠131と、この下地縦枠131の表面に固定する化粧縦枠132とからなるものとして示されている。下地縦枠131は化粧縦枠132より幅広であり、下地縦枠131には化粧が施されていないが、化粧縦枠132の少なくとも施工状態露出面を覆うように、たとえば、表面から側面を回り込んで裏面側に至る部分にかけて化粧が施されている。下地縦枠131の表面には長手方向に延長する凹条133が形成されると共に、化粧縦枠132の裏面には長手方向に延長する凸条134が形成され、この凸条134を凹条133に嵌合して固定することにより、下地縦枠131と化粧縦枠132とを一体化して縦枠13としている。また、化粧縦枠132の表面には、引戸16を閉じたときにその閉じ側端を受ける戸じゃくり135が形成されている。この実施形態において、下地縦枠131は長さ2467m、幅147mmであり、化粧縦枠132は長さ2467mm、幅110mmである。
上枠15は、開口側上枠32(図7)と戸袋側上枠33(図9)とからなる。開口側上枠32は、その長手方向一端面321を縦枠13(化粧縦枠132)の上端表面に突き当てた状態で方立20近くまで延長し、戸袋側上枠33は、その長手方向一端面331を戸当たり部材14の上端表面に突き当てた状態で縦枠13に向けて戸袋23から突出し、開口側上枠32の先端面322を戸袋側上枠33の先端面332とを実質的に突き当てた状態で一体化して、一直線に延長する上枠15が形成されている(図11)。
開口側上枠32と戸袋側上枠33は、厚さが略同一であるが、長さは開口側上枠32が戸袋側上枠33より短く、幅は開口側上枠32が壁厚さと略同一であるのに対し戸袋側上枠33は壁厚さより小さく、表裏の戸袋下地材19間の隙間に入り込むことが可能な幅寸法とされている。この実施形態において、開口側上枠32は長さ774.5mm、幅104mmであり、戸袋側上枠33は長さ790mm、幅62mmであって、いずれもMDFから形成されたものである。
開口側上枠32について図7を参照してさらに説明すると、開口側上枠32は平面視長方形状であり、長さは開口部29の左右幅の略半分であり、幅は開口部29の前後厚さと略等しい。断面形状は略コの字形であり、その施工状態において下面となる面326の幅方向中央には、後述する開口側鴨居レール241の戸車走行溝243を嵌合収容する溝324を含む鴨居レール取付凹部325が、長手方向全長に亘って延長するものとして凹設されている。溝324および鴨居レール取付凹部325はいずれも断面方形状である。また、上面327の幅方向両側には、長手方向全長に亘って延長する切欠328,328が形成されている。さらに、開口側上枠32には、その少なくとも施工状態で露出する面を化粧するために化粧シート323が貼着されている。この実施形態では、上面327、切欠328,328、幅方向両側面および下面326を完全に被覆して、その両端が鴨居レール取付凹部325の両側面まで巻き込まれるようにして化粧シート323が貼着されている。開口側上枠32を開口部29上面に取り付けると、開口側上枠32の上面327の左右角部に形成される切欠328,328と開口部上面との間にあらかじめ溝が形成されるので、施工後に開口部上面と開口側上枠32の上面327との間に隙間が生ずることになっても目立たず、良好な外観を維持することができる。
戸袋側上枠33について図9を参照してさらに説明すると、戸袋側上枠33は平面視略長方形状であるが、幅方向両側の段部333,333を介して先端が幅狭に形成され、幅広部334と幅狭部335とからなる。幅広部334と幅狭部335を含めた全長は開口部29の左右幅の略半分であり、開口部29の前後厚さ、すなわち、方立20(下地方立25および化粧方立26)の厚さと戸袋下地材19の幅の合計から戸当たり部材14の厚さを引いた寸法と略等しい(図2参照)。幅広部334の幅は開口側上枠32より小さく、表裏の戸袋下地材19,19の間に納まる大きさである。戸袋側上枠33の断面形状は幅広部334および幅狭部335を通じて略コの字形であり、その施工状態において下面となる面336の幅方向中央には、後述する開口側鴨居レール242の戸車走行溝244を嵌合収容する溝337を含む鴨居レール取付凹部338が形成されている。溝337は、幅広部334および幅狭部335を通じて戸袋側上枠33の長手方向全長に亘って直線状に連続して延長するものとして凹設されている。幅広部335の厚さは開口側上枠32の厚さと同じである。
開口側上枠32に形成される鴨居レール取付凹部325および戸袋側上枠33に形成される鴨居レール取付凹部338は同一断面形状を有し、開口側上枠32の先端面322と戸袋側上枠33の先端面332とを実質的に突き当てた状態にしたときに、これらが一直線上に整列して、後述する開口側鴨居レール241および戸袋側鴨居レール242を一直線上に配置して鴨居レール24を取り付けることを可能にする。また、戸袋側上枠33に形成される段部333,333は、開口側上枠32の先端面322と戸袋側上枠33の先端面332とを実質的に突き当てた状態にしたときに、開口側上枠先端面322との間に、方立20(下地方立26および化粧方立27)を収容するためのスペースを与える。この実施形態において、各段部333は長さ56mm、幅11.3mmである。
開口側上枠32の下面に開口側鴨居レール241(図8)が取り付けられ、戸袋側上枠33の下面に戸袋側鴨居レール242(図10)が取り付けられる。これら鴨居レール241,242はいずれも合成樹脂で形成され、同一の断面形状を有するものであって、その底面の幅方向中央に戸車走行溝243,244が形成され、両側面の先端には外方に向けて突出する係止縁245,246が形成された略コの字状の断面形状を有する。開口側鴨居レール241の長さは開口側上枠32の長さと同じ(774.5mm)であり、戸袋側鴨居レール242の長さは戸袋側上枠33の長さと同じ(790mm)である。したがって、開口側鴨居レール241と戸袋側鴨居レール242の長さの合計は、開口側上枠32と戸袋側上枠33の長さの合計と同じである。また、開口側鴨居レール241および戸袋側鴨居レール242の幅および高さは、それぞれ開口側上枠32の鴨居レール嵌合凹部325および戸袋側上枠33の鴨居レール嵌合凹部338の幅および深さと略同一であって、開口側鴨居レール241は、係止縁245が鴨居レール取付凹部325の開口縁に係止され且つ戸車走行溝243が開口側上枠32の溝324に嵌合された状態で鴨居レール取付凹部325に嵌合され、同様に、戸袋側鴨居レール242は、係止縁246が鴨居レール取付凹部325の開口縁に係止され且つ戸車走行溝244が戸袋側上枠33(幅広部334)の溝337に嵌合された状態で鴨居レール取付凹部338に嵌合される。係止縁245,246は、開口側鴨居レール241および/または戸袋側鴨居レール242が開口側上枠32の鴨居レール取付凹部325および/または戸袋側上枠33の鴨居レール取付凹部338に嵌合されたときにそれらの間に隙間が生じていても、この隙間を隠蔽する役割を果たす。
既述したように、開口側鴨居レール241と戸袋側鴨居レール242の断面形状は略同一であり、開口側鴨居レール241と戸袋側鴨居レール242が上述したように開口側上枠32および戸袋側上枠33にそれぞれ固定されたときに、開口側鴨居レール241と戸袋側鴨居レール242とが一直線に延長する鴨居レール24を形成して(図12)、引戸16の上端に取り付けられる戸車(図示せず)が鴨居レール24の戸車走行溝243,244内で走行することにより引戸16の開閉方向移動を円滑に案内する。なお、図示しないが、開口側上枠32の鴨居レール取付凹部325の側面に接する開口側鴨居レール241の側面および/または戸袋側上枠33の鴨居レール取付凹部338の側面に接する戸袋側鴨居レール242の側面には、長手方向に延長する一または複数の突条や長手方向に点在する一または複数の突起を形成して、これら突条や突起が凹部側面に喰い込んで外れにくくすることができる。
方立20は、下地方立25(図4)と、化粧方立26(図5)と、これらを連結する連結部材27(図6)とからなる。下地方立25と化粧方立26は、連結部材27により、図2およびそのB部分拡大図である(引戸16および鴨居レール24は図示省略)図3に示されるように連結された状態で、引込戸構造10の戸袋23開口端の表裏にそれぞれ設けられる。
図4を参照して、下地方立25はMDFで形成され、施工状態においては石膏ボード21の外面から連続して突出部外面253dおよび突出部前面253cにかけてクロス22が貼着される(図3)が、下地方立25自体に化粧シートは貼着されない。下地方立25は、一定の断面形状が長手方向(施工状態において壁高さ方向)に連続する長尺部材であり、略方形の断面形状を有する下地本体部251と、この下地本体部251の外方および前方に突出する突出部252とからなる。より詳しくは、下地方立25は、下地本体部251の前面253aと、突出部252の側面253bと、突出部252の前面253cと、突出部252の外面253dと、突出部252の後面253fと、突出部252の外面253dと後面253fとの間の傾斜面253eと、下地本体部251の外面253gと、下地本体部251の背面253hと、下地本体部251の内面253iの各面を有するものとして形成されている。
下地本体部251の前面253aと突出部252の下面253bとの間には化粧方立26を嵌合するための切欠254が形成され、突出部252の後面253fと下地本体部251の外面253gとの間には石膏ボード21を納めるための(したがって石膏ボード21の厚さと略同一幅を有する)切欠255が形成される。この実施形態における下地方立25の寸法は、長さ2469mm、幅(突出部252の外面253dと下地本体部261の内面253iの間隔)51.5mm、厚さ(突出部252の前面253cと下地本体部261の背面253hの間隔)30mmであり、切欠254を形成する下地本体部前面253aおよび突出部側面253bはそれぞれ幅29mm、幅5mmであり、切欠255を形成する突出部後面253fと下地本体部外面253gはいずれも幅13.5mm(石膏ボード21の厚さと略同一)である。また、突出部252の前面253cは幅22.5mm、外面253dは幅16.5mmである。突出部252の外面253dと後面253fとの間の傾斜面(面取り)253eは、施工時に、石膏ボード21の端面との間の隙間28(図3)にパテ(図示せず)を埋め込んで下地方立25と石膏ボード21との継ぎ目を略平坦にするための隙間28(図3)を与える。
下地本体部251の前面253aには長手方向に延長する連結溝256が形成されると共に、この連結溝256の中心線上に中心を持つ円形断面を有するネジ頭収容凹部257が長手方向に任意間隔をおいて複数個設けられ、さらに各ネジ頭収容凹部267の底面の中心から背面253h近くまでの深さにネジ穴258が形成される。連結溝256は、下地方立25が化粧方立26と組み合わされたときに、化粧方立26の連結溝262(後述)と一致する位置に形成される。この実施形態では、連結溝256は深さ7mm、幅3mmであり、13mm径、深さ10mmのネジ頭収容凹部257と、2.5mm径、深さ13mmのネジ穴258が、長手方向に550mmの等間隔で各々5箇所(図4では2箇所を図示省略)に設けられている。
図5を参照して、化粧方立26はMDFで形成され、一定の断面形状が長手方向(施工状態において壁厚方向)に連続する長尺部材である。化粧方立26は略方形の断面形状を有するが、下地方立25と組み合わされるときに向かい合う側の面(後面)に切欠261および連結溝262が形成されている。化粧方立26は、前面263aと、外面263cと、これらの間の傾斜面263bと、切欠261を形成する面263d,263eと、後面263fと、内面263gの各面を有するものとして形成されており、面263g,263a〜263eを完全に被覆してその両端が後面263fに回り込むように、化粧シート264が貼着されている。既述したように、連結溝262は、化粧方立26が下地方立25と組み合わされたときに、下地方立25の連結溝256と一致する位置に形成される。
この実施形態における化粧方立26の寸法は、長さ2469mm、幅(外面263cと内面263gの間隔)33mm、厚さ(前面263aと後面263fの間隔)30mmであり、連結溝262は深さ7mm、幅3mmであり、切欠261を形成する面263dおよび263eはそれぞれ幅5mmおよび幅9mmであり、後面263fは幅18mmである。化粧方立26は、対向する化粧縦枠132の幅に合わせて統一感を出すため、また、目立たないようにしてすっきりした外観に仕上げるために、下地方立25より幅を小さく形成している。
図6を参照して、連結部材27は合成樹脂で形成された細板状の長尺部材であり、その表裏には凹凸271が形成され、幅方向の一方が下地方立25の連結溝256に嵌合する嵌合部272となり、他方が化粧方立26の連結溝262に嵌合する嵌合部273となる。表裏の凹凸271は、嵌合部272,273では各々挿入方向に傾斜して先端鋭角状に突出する形状とされ、且つ、嵌合部272,273の先端も鋭角状に形成されている。これにより、嵌合部272,273を連結溝256,262に嵌合しやすく、且つ、一旦嵌合すれば凹凸271が連結溝256,262の溝内面に喰い込んで容易には離脱しない嵌合状態が得られる。
連結部材27の厚さは連結溝256,262の幅(この実施形態では3mm)と略同一またはそれよりわずかに大きい寸法であり、その幅(嵌合部272,273の長さ合計)は連結溝256,262の深さ合計(14mm)と略同一またはそれよりわずかに小さい寸法である。この実施形態では、連結部材27は、長さ2469mm、幅14mm、厚さ(凹凸271を含む)4mmである。なお、連結部材27は全体を単一の合成樹脂で一体に形成しても良いが、硬質樹脂を主体としながら、嵌合部272,273の先端から表裏面の一部にかけて軟質樹脂を設けて形成しても良い。
図1および図2記載の引込戸構造10の施工について、図14を参照して説明する。図14(a)は下地工程を示すものであり、柱11に下地縦枠131、柱12に戸当たり部材14、開口部29の上面に戸袋側上枠33をそれぞれ取り付け、開口部29の上下面および柱12に戸袋下地板17および戸袋下地桟18からなる戸袋下地材19を取り付け、戸袋下地材19の外面に石膏ボード21を取り付けて表裏に戸袋23,23を形成し、各戸袋23の開口端部に下地方立25を取り付ける。このとき、戸袋下地材19の側面と戸袋側上枠33の段部333の側面333a(図9(a))とが面一となり、これらに下地方立25の後面253hが当接して、下地方立25の一部が戸袋側上枠33の段部333に収容される。下地方立25は戸袋下地材19の側面にネジ(図示せず)で固定されるが、戸袋側上枠33の段部側面333b(図9(a))には接触せず、これらの間に1〜3mm程度の隙間を設けておく。このようにすることで、下地方立25や開口側上枠32などの加工精度が悪くても、下地方立25を所定の位置に施工することが妨げられない。戸袋側上枠33は、あらかじめ戸袋側鴨居レール242を嵌合固定して一体化した後に開口部29の上面に取り付けても良い。各戸袋下地材19の外面に石膏ボード21を取り付け、その端部を下地方立25の切欠255に納めて隙間28にパテ(図示せず)を埋め、下地方立25の外面253dとの継ぎ目を略平坦にする。
次いで、図14(b)に示すように、戸袋側上枠33に戸袋側鴨居レール242を嵌合固定した(この作業は図14(a)において戸袋側上枠33を取り付けた後、クロス貼りを行う前であればいつ行っても良い)後、クロス貼りを行う。すなわち、戸袋23,23側においては、石膏ボード21の表面から下地方立25の突出部外面253dおよび前面253cを完全に被覆するようにクロス22を貼る。下地方立25の切欠255の深さ(突出部外面253dと下地本体部外面253gの間隔)は石膏ボード21の厚さに略等しいので、石膏ボード21の表面から下地方立25の外面253にかけて連続的にクロス22を貼ると、石膏ボード21と下地方立25との間の継ぎ目においても段差のない平滑な化粧面が得られる。同様に、柱11の側においても、石膏ボード21の表面から下地縦枠131の外面および前面を覆うようにクロス22を貼る。
次いで、図14(c)に示すように、柱12側において下地縦枠131に化粧縦枠132を取り付けて縦枠13を形成し、戸袋側上枠33と連続するように開口側上枠32を開口部29の上面に取り付けて上枠15を形成し、さらに、戸袋側鴨居レール242と連続するように開口側鴨居レール241を取り付けて鴨居レール24を形成する。開口側上枠32は、あらかじめ開口側鴨居レール241を嵌合固定して一体化した後に、開口部29の上面に取り付けても良い。図示されないが、鴨居レール24の直下において、床面30に敷居レール31を取り付ける。また、各下地方立25の連結溝256に、連結部材27の嵌合部272を嵌合させ、他方の嵌合部273が開口部29に突出した状態としておく。
図14(d)は仕上げ工程を示すものであり、鴨居レール24に引戸16を吊り込むと共に、図14(c)で突出状態にある連結部材27の嵌合部273を、化粧方立26の連結溝262に差し込んで嵌合することにより、下地方立25に化粧方立26を取り付ける。あるいは、図14(c)では連結部材27を下地方立25の連結溝256に嵌合させずに、図14(d)において、連結部材27の嵌合部273を連結溝262に嵌合させた状態の化粧方立26を下地方立25に近付けていって、突出する嵌合部272を下地方立25の連結溝256に差し込んで嵌合することによって、これらを一体化するようにしても良い。下地方立25と化粧方立26とが上記のように一体化されて得られる方立20は、開口側上枠32の先端面322と戸袋側上枠33の段部側面333a,333bとで形成される方立収容凹部34(図12)に収容される。すなわち、下地方立25の後面253hが戸袋側上枠33の段部側面333aに当接すると共に、化粧方立26の前面263aが開口側上枠32の先端面322に当接し、これらの内面253i,263gが面一となって、下地方立25および化粧方立26の一部(内側部分)が方立収容凹部34に収容される。なお、図1に示すように、化粧方立26は、開口側上枠151に対していわゆる縦勝ちに固定される。
このとき、下地方立25の前面253aと化粧方立26の後面263fとが接した状態となり、下地方立25の内面253iと化粧方立26の内面263gは略面一となって連続した面を形成する。また、下地方立25の突出部252は化粧方立26の切欠261に納められるが、既述した寸法関係から、下地方立25の突出部側面253bおよび前面253cは化粧方立26の切欠面263d,263eとは非接触状態に維持され、これらの面の間には隙間が確保される。つまり、下地方立25において、連結溝256の上面から突出部側面253bまでの距離をa1、突出部側面253bの幅をa2とし、化粧方立26において、連結溝262の上面から切欠面263eまでの距離をb1、切欠面263の幅をb2とすれば、a1>b1であり且つb2>a2である(図3)。したがって、上記のように化粧方立26を下地方立25に組み付けて一体化したときに、下地方立25および/化粧方立26の加工精度が悪い場合であっても、それらの連結溝256,262同士を一致させて、連結部材17で連結することができる。また、下地方立25の外面253d、傾斜面253eおよび前面253cまでを完全に被覆するように貼着されたクロス22や、化粧方立26の面263g,263a〜263eを完全に被覆してその両端が後面263fに回り込むように貼着された化粧シート264を傷付けることがない。
この施工方法によれば、化粧が施されていない戸袋側上枠33を取り付けた(図14(a))後にクロス22を貼り(図14(b))、その後に、化粧が施された開口側上枠32を取り付けて戸袋側上枠33と連続させる(図14(c))ことにより上枠15を完成させるので、クロス貼り作業の際に開口側上枠32が傷付くことによる化粧の剥がれや破損を招くことがない。クロス貼り作業の時点で戸袋側上枠33は既に取り付けられているが、戸袋側上枠33には化粧が施されないので、養生シートで被覆して傷付きを防止する必要もない。
また、上記のようにして施工された引込戸構造10において、施工後に、開口側上枠32や開口側鴨居レール241が破損して補修や交換が必要になった場合、戸袋23を壊さなくても、開口側上枠32や開口側鴨居レール241を取り外すだけで補修や交換の作業を行うことができ、作業手間および作業時間が軽減される。
また、開口側上枠32と戸袋側上枠33との間の継ぎ目J1および開口側鴨居レール241と戸袋側鴨居レール242との間の継ぎ目J2は、いずれも戸袋23の外側(開口部29内)に位置しているので、開口側上枠32や開口側鴨居レール241の取り付け・取り外しの作業が容易である。
また、既述したように、下地方立25および化粧方立26は、開口側上枠32の先端面322と戸袋側上枠33の段部側面333a,333bとで形成される方立収容凹部34(図12)に収容され、開口側上枠32と戸袋側上枠33との間の継ぎ目J1および開口側鴨居レール241と戸袋側鴨居レール242との間の継ぎ目J2は、いずれも化粧方立26,26の前面263aと略面一なり、且つ、化粧方立26,26の幅方向の略中央に位置するので、これらの継ぎ目J1,J2が化粧方立26,26で隠蔽されて戸袋23の外側(正面側)から見えなくなり、見栄えを損なわない。
図15および図16に示される引込戸構造10は、実施例1の引込戸構造10に近似しているが、その構成部材である縦枠13、上枠15、鴨居レール24および方立20に相違が見られる。以下、主にこれらについて説明し、実施例1と同様の構成部材や作用については、説明を省略する。また、実施例1と同様または対応する部材や要素には同一の符号が付されている。
縦枠13については、下地縦枠131と化粧縦枠132の2部材からなるものとして示されているが、この実施形態では、これらを組み合わせて一体化させたような形状および構成を有し、その少なくとも施工時露出面に化粧シート136が貼られた単一部材である。方立20についても、実施例1ではこれを下地方立25と化粧方立26の2部材からなるものとして示されているが、この実施例では、これらを組み合わせて一体化させたような形状および構成を有し、その少なくとも施工時露出面に化粧シート201が貼られた単一部材である。
上枠15については、この実施形態においても実施例1と同様に開口側上枠32と戸袋側上枠33の2部材からなるが、実施例1ではこれらが同じ長さを有するものとされているのに対し、この実施形態では開口側上枠32が戸袋側上枠33より長く形成されている。すなわち、図17に示すように、この実施例の開口側上枠32は平面視略長方形状であるが、幅方向両側の段部320,320を介して先端が幅狭に形成され、幅広部32Aと幅狭部32Bとからなる。幅広部32Aと幅狭部32Bを含めた全長は開口部29の左右幅の略半分である。幅広部32Aの幅は開口側上枠32より小さく、表裏の戸袋下地材19,19の間に納まる大きさである。開口側上枠32の断面形状は幅広部32Aおよび幅狭部32Bを通じて略コの字形であり、その施工状態において下面となる面326の幅方向中央には、後述する開口側鴨居レール242の戸車走行溝244を嵌合収容する溝324を含む鴨居レール取付凹部325が形成されている。溝324は、幅広部32Aおよび幅狭部32Bを通じて開口側上枠32の長手方向全長に亘って直線状に連続して延長するものとして凹設されている。幅広部32Aの厚さは戸袋側上枠33の厚さと同じである。
一方、この実施形態の戸袋側上枠33は、図18に示すように、実施例1の戸袋側上枠33の幅狭部335を切除し、幅広部334のみからなるものとして形成されている。要すれば、この切除した幅狭部335を実施例1の開口側上枠32の先端側に連続させて幅狭部32Bとすることにより、この実施形態の開口側上枠32が形成される。長さの一例を挙げれば、開口側上枠32が790mm(幅広部32Aが734mm、幅狭部32Bが56mm)、戸袋側上枠33が774.5mm、開口側鴨居レール241が762mm、戸袋側鴨居レール242が802.5mmである。
鴨居レール14を構成する開口側鴨居レール241および戸袋側鴨居レール242は、実施例1の開口側鴨居レール241(図8)および戸袋側鴨居レール242(図10)と同様の平面形状および断面形状を有し、その幅および高さ(深さ)寸法も同じであるが、それらの開口側上枠32および戸袋側上枠33に対する長さ関係が異なっている。すなわち、実施例1では開口側上枠32と開口側鴨居レール241とが同じ長さであり、戸袋側上枠33と戸袋側鴨居レール242とが同じ長さであるため、開口側上枠32を戸袋側上枠33に連続させたときの継ぎ目J1(図19)と、開口側鴨居レール241を戸袋側鴨居レール242に連続させたときの継ぎ目J2とが同じ位置になる(図12)が、この実施例では開口側鴨居レール241は開口側上枠32より短く、戸袋側鴨居レール242は戸袋側上枠33より長いため、開口側上枠32を戸袋側上枠33に連続させたときの継ぎ目J1と、開口側鴨居レール241を戸袋側鴨居レール242に連続させたときの継ぎ目J2とが異なる位置となる(図20)。
上枠32,33同士の継ぎ目J1は方立20,20の後面と略面一であり、且つ、方立20,20の幅方向の略中央に位置するので、外部から見えず、良好な見栄えを維持する。また、鴨居レール241,242同士の継ぎ目J2も、方立20,20の幅方向の略中央に位置するので、見栄えを損なわない。また、鴨居レール241,242同士の継ぎ目J2も、方立20,20の厚さ範囲および幅方向の略中央に位置するので、外部から見えず、良好な見栄えを維持する。
この実施例による引込戸構造10の施工について、図22を参照して説明する。図22(a)は下地工程を示すものであり、柱11,12にそれぞれ縦枠13を取り付けると共に、柱12に戸当たり部材14、戸袋側上枠33、戸袋側鴨居レール242(図22(b)に示す)、戸袋下地板17、戸袋下地桟18、戸袋下地材19を取り付けて表裏に戸袋23,23を形成し、引戸16を吊り込む。各戸袋23の開口端部に方立20を取り付ける。各戸袋下地材19の外面に石膏ボード21を取り付け、その端部の隙間28(図3)にパテ(図示せず)を埋めて平滑にする。
次いで、図22(c)に示すように、戸袋23,23側においては、方立20との継ぎ目位置まで石膏ボード21の表面にクロス22を貼ると共に、柱11の側においても、縦枠13との継ぎ目位置まで石膏ボード21の表面にクロス22を貼る。
次いで、図22(d)に示すように、戸袋側上枠33と連続するように開口側上枠32を開口部29の上面に取り付けて上枠15を形成し、さらに、戸袋側鴨居レール242と連続するように開口側鴨居レール241を取り付けて鴨居レール24を形成する。開口側上枠32は、あらかじめ開口側鴨居レール241を嵌合固定して一体化した後に、開口部29の上面に取り付けても良い。この実施形態では、開口側上枠32が開口側鴨居レール241より長く形成され、戸袋側上枠33が戸袋側鴨居レール242より短く形成されているので、開口側上枠32と戸袋側上枠33との間の継ぎ目J1(これらの先端面322,332同士が突き合わされることによって形成される)と、開口側鴨居レール241と戸袋側鴨居レール242との間の継ぎ目J2(これらの先端面同士が突き合わされることによって形成される)が異なる位置となり(図20)、鴨居レール24を形成した時点で、上枠の継ぎ目J1は隠れて見えなくなる。
本発明について実施例を挙げて詳述したが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に規定される発明の範囲内において広く変形ないし変更して実施可能である。たとえば、上枠同士の継ぎ目J1と鴨居レール同士の継ぎ目J2とが異なる位置となるようにする実施形態(実施例2)の場合は、上枠同士の継ぎ目J1が開口部幅方向のどの位置であっても、鴨居レール24を形成した時点で鴨居24によって隠れて見えなくなるので、施工の容易さなどを考慮して任意の位置に上枠同士の継ぎ目J1を設定することができる。