JP6501156B2 - 工具異常検知方法 - Google Patents
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そして、ロールRの外形加工では、軸体Sを軸S1周りに回転し、切削工具TをロールR表面に送るようにする。図1では、切削工具Tの加工位置の種々の例を○で示しており、例えば、ロールRの外径面R2の加工では、切削工具Tを、外径面R2の垂直方向(図のX方向)に加工分だけ切り込みつつ、ロールRの軸方向(図のZ方向)に送るようにする。また、ロールRの側面F1、F2の加工では、切削工具Tを、側面F1、F2の垂直方向(図のZ方向)に加工する分だけ切り込みつつ、ロールRの垂直方向(図のX方向)に送るようにする。
そして、X軸サーボモータ4とZ軸サーボモータ5は、それぞれ、X軸サーボアンプ7とZ軸サーボアンプ8に接続し、これらサーボアンプが、X軸サーボモータ4とZ軸サーボモータ5を駆動制御するようにしている。
電力計9は、X軸サーボアンプ7およびZ軸サーボアンプ8の2次側のU、V、W相配線から、電流値、電圧値を計測し、これら計測値から、切削工具Tの切削負荷を電力値として求め続けるようにしている。電力計9は、計測した電力値を、アナログ電圧に変換し、データ収集機(DAC:Data acquisition)10に出力するようにしている。データ収集機10は、電力計9から送られた電圧値を収集して蓄積した後、A/D変換してパソコン11に出力するようにしている。パソコン11は、電圧値を電力値に変換し、電力値データにしている。
図3に示すように、本実施形態は、ステップS1からフローを開始し、ステップS2に進み、電力計9により電力値を計測し電圧値として出力する。そして、ステップS3に進み、データ収集機10により、電圧値に変換した電力値を、時間tpのタイミングごとにサンプリングし続けて蓄積する。蓄積したデータは、パソコン11に送り、電力値に変換して電力値データとする。以降のステップは、パソコン11にて処理を行う。
なお、本実施形態では、装置の構成により、電力値を電圧値に変換する操作を経由しているが、電力値のまま処理を行うことと、フローは実質同等である。
次に、ステップS4に進み、電力値データにおける最新から時間ΔT1前までの電力値
の分散値を求めて第1の電力分散値とし、ステップS5に進み、第1の電力分散値を、時
間t1のタイミングごとに求め続けて蓄積し、第1の電力分散値データとする。
なお、本実施形態において、電力値は、モータの駆動に伴う周期的な変化を呈するもの
であり、時間ΔT1は、定常切削状態における電力値変化の一周期以上の時間である。一
周期以上とする理由については後で説明する。
次に、ステップS6に進み、第1の電力分散値データにおける最新から時間ΔT2前ま
での第1の電力分散値の分散値を求めて第2の電力分散値とし、ステップS7に進み、第
2の電力分散値を時間t2のタイミングごとに求め続けて蓄積し、第2の電力分散値デー
タする。
なお、ステップS7では、時間t1と時間t2が等しい場合、第2の電力分散値を求め
た第1の電力分散値のデータ群に対し、続けて求めた第1の電力分散値1つをデータ群に
加えると共に、時間ΔT2前の第1の電力分散値1つをデータ群から削除し、その後、再
びデータ群の分散値を求めて第2の電力分散値とすることができる。そして、この手順を
繰り返すことにより、第2の電力分散値データを求め続けてもよい。
次に、ステップS8に進み、第2の電力分散値データにおける最新の第2の電力分散値Vp1と、最新から所定個数Np個前のタイミングにおける第2の電力分散値Vp2との比(Vp1/Vp2)を逐次求める。Npの値は、電力値に異常が発生したと判定する精度が高くなるよう、正の整数値を適宜設定する。
次に、ステップS9に進み、予め第2の電力分散値Vp2に応じて設定した閾値αを参照し、ステップS10に進み、第2の電力分散値Vp1と第2の電力分散値Vp2の比が、閾値αを、所定回数m回続けて越えたとき、ステップS11進み、電力値に異常が発生したと判定する。
なわち、閾値αを、電力値の変化に応じて動的に設定している。これにより、第2の電力
分散値Vp2が小さく、且つ、第2の電力分散値Vp1と第2の電力分散値Vp2の比(
Vp1/Vp2)が大きい電力値変化、例えば、切粉等の噛込みやワークの溶着等に起因
する電力値変化から、工具異常の発生に起因する電力値変化をより判別しやすくすること
ができ、工具異常の発生をより精度よく検知することができる。
次に、本発明の実施例について説明する。本実施例は、上記実施形態を、ロールR外径面に形成された熱処理肌面の除去加工(粗加工)に適用した例である。
本実施例には、仕上げ外形寸法が1200mmになるロールRを用いた。加工では、ロールRを、軸周りに周速80m/minにて回転しつつ、切削工具Tを、軸方向に0.16mm/rotの速度で送るようにした。切削工具Tには、円板型のcBNチップを用いた。
また、図2に示した電力計9には、日置電機社製3390パワーアナライザを用い、切削工具Tを駆動するZ軸サーボモータ5の電力値を計測した。
なお、初期状態42は、切削工具TがロールRに接触するまでのエアカット区間、および、切削工具TがロールRに接触し始める非定常切削状態区間を含む状態を示したものである。そして、初期状態42では、切削工具Tの送りを小さくし、切削工具TがロールRに接触したときの衝撃を緩和するようにしている。
初期状態42から、切削工具Tの送りを大きくし、定常切削状態43になると、電力値の周期は小さくなり、安定した周期の電力値変化を示した。
なお、図4では、44において電力値に異常な変化が見られた。後で切削工具Tの外観観察をしたところ、この電力値の異常は、工具異常(切削工具Tの欠損)によるものと判明した。
ステップS3の時間tp : 1/10秒
ステップS4の時間ΔT1 : 1秒から100秒
ステップS5の時間t1 : 1秒
ステップS6の時間ΔT2 : 25秒
ステップS7の時間t2 : 1秒
ステップS8の所定個数Np : 30個
ステップS10の所定回数m : 5回
と設定した。
図7(a)の電力値は、7a1にて波形周期が10秒の定常切削状態を示した後、7a2付近にて振幅変動に異常を示したものである。ただし、異常前後にて波形周期は大きく変わっていない。7a2付近での異常の後、7a3にて加工を停止して切削工具Tを確認したところ、切削工具Tにカケが生じていた。すなわち、7a2における電力値の異常は工具異常に起因するものと推測できる。
なお、図7(b)の720秒付近の第2の電力分散値のピークは、図7(a)の7a3において加工を停止したことに起因している。電力値の異常を判定して工具異常を判定するプロセスに影響するものではない。
以上の結果から、時間ΔT1を、電力値の変化の周期以上とすることで、電力値の異常発生を精度よく判定できることが確認できた。ただし、時間ΔT1を、電力値の変化の周期よりも長くすると、第2の電力分散値Vp1と第2の電力分散値Vp2との比を求める際の、データの待ち時間が長くなることになる。すなわち、電力値の測定開始直後において、電力値の異常を見落とすリスクが高くなる。よって、時間ΔT1は、必要以上に大きくしないことが好ましく、電力値の変化の周期と同じにすることが好ましい。
例えば、本発明が適用することができる切削加工装置は、ロール旋盤加工機の限らず、軸周りに回転する円柱体或いは円筒体の表面に切削工具を送り、円柱体或いは円筒体の外形加工をする切削加工装置であればよく、シャフトや丸棒等の表面の切削加工装置にも適用することができる。
2:モータ
3:工具ホルダ
4:X軸サーボモータ
5:Z軸サーボモータ
6:制御配電盤
7:X軸サーボアンプ
8:Z軸サーボアンプ
9:電力計
10:データ収集機
11:パソコン
12:I/Oユニット
R:ロール
R1:内径面、R2:外径面
F1,F2:側面
S:スリーブ
T:切削工具
Claims (2)
- 軸周りに回転する円柱体或いは円筒体の表面に切削工具をモータで送り、前記円柱体或いは円筒体の外形加工をする切削加工装置に適用する工具異常検知方法であって、
前記切削工具を送る電力値を、時間tpのタイミングごとにサンプリングし続けて蓄積し、電力値データとする、電力値データ作成ステップと、
前記電力値データにおいて、前記電力値が、前記モータの駆動に伴う周期的な変化を呈するものであり、最新から前記変化の一周期以上の時間ΔT1前までの前記電力値の分散値を求めて第1の電力分散値とし、これを、時間t1のタイミングごとに求め続けて蓄積し、第1の電力分散値データとする、第1の電力分散値データ作成ステップと、
前記第1の電力分散値データにおいて、最新から時間ΔT2前までの前記第1の電力分散値の分散値を求めて第2の電力分散値とし、これを、時間t2のタイミングごとに求め続けて蓄積し、第2の電力分散値データとする、第2の電力分散値データ作成ステップと、
前記第2の電力分散値データにおいて、最新の第2の電力分散値Vp1と、最新から所定個数Np個前のタイミングにおける第2の電力分散値Vp2との比(Vp1/Vp2)を逐次求め、その比が閾値αを所定回数m回続けて越えたとき、前記電力値に異常が発生したと判定する、電力値異常判定ステップと
を有し、前記電力値異常判定ステップにおける異常判定の情報を基に、前記切削工具に工具異常が発生したと判定することを特徴とする工具異常検知方法。 - 前記閾値αを、前記第2の電力分散値Vp2に応じて設定することを特徴とする請求項1に記載の工具異常検知方法。
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