以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
[第1実施例]
<はんだ印刷機の構成>
図1に、本発明の実施例のはんだ印刷機10を示す。はんだ印刷機10は、回路基板にクリームはんだを印刷するための装置である。はんだ印刷機10は、搬送装置20と、移動装置22と、スキージ装置24と、はんだ供給装置26とを備えている。
搬送装置20は、X軸方向に延びる1対のコンベアベルト30と、コンベアベルト30を周回させる電磁モータ(図4参照)32とを有している。1対のコンベアベルト30は、回路基板34を支持し、その回路基板34は、電磁モータ32の駆動により、X軸方向に搬送される。また、搬送装置20は、保持装置(図4参照)36を有している。保持装置36は、コンベアベルト30によって支持された回路基板34を、所定の位置(図1での回路基板34が図示されている位置)において固定的に保持する。なお、回路基板34の上面には、メタルマスク(図示省略)が載置されている。
移動装置22は、Y軸方向スライド機構50とX軸方向スライド機構52とによって構成されている。Y軸方向スライド機構50は、Y軸方向に移動可能にベース54上に設けられたY軸スライダ56を有している。そのY軸スライダ56は、電磁モータ(図4参照)58の駆動により、Y軸方向の任意の位置に移動する。また、X軸方向スライド機構52は、X軸方向に移動可能にY軸スライダ56の側面に設けられたX軸スライダ60を有している。そのX軸スライダ60は、電磁モータ(図4参照)62の駆動により、X軸方向の任意の位置に移動する。
スキージ装置24は、搬送装置20の上方において、Y軸スライダ56に取り付けられており、搬送装置20に保持された回路基板34の上方の任意の位置に移動する。スキージ装置24は、スキージ(図示省略)を有しており、そのスキージは、下方に延び出す状態で、Y軸方向および、上下方向に移動可能にスキージ装置24によって保持されている。そして、スキージは、電磁モータ(図4参照)66の駆動により、Y軸方向に移動し、電磁モータ(図4参照)68の駆動により、上下方向に移動する。
はんだ供給装置26は、X軸スライダ60に取り付けられており、移動装置22によってベース54上の任意の位置に移動する。はんだ供給装置26は、図2に示すように、はんだカップ70と外筒72と供給ノズル74と内筒76と固定蓋78とを有している。はんだカップ70は、一端部に開口部を有する有底円筒形状の容器であり、内部にクリームはんだが充填されている。はんだカップ70の開口部側の外周面には、フランジ部80が形成されており、そのフランジ部80と開口部側の端との間には、ねじ山(図示省略)が形成されている。そして、開口部を塞ぐ蓋(図示省略)がねじ山に螺合された状態で、市販されている。つまり、クリームはんだの製造業者は、はんだカップ70にクリームはんだを充填し、蓋によって開口部が塞がれたはんだカップ70を販売している。そして、ユーザは、はんだカップ70を購入し、蓋が開けられた状態のはんだカップ70を使用する。
また、外筒72も、一端部に開口部を有する有底円筒形状とされており、外筒72の内側に、はんだカップ70が収納されている。詳しくは、外筒72の内周面は、外筒72の開口部側に位置する第1内周面82と、外筒72の底面83側に位置する第2内周面84とによって構成されている。第1内周面82の内径は、はんだカップ70のフランジ部80の外径より僅かに大きくされており、第2内周面84の内径は、はんだカップ70の筒状の部分の外径より僅かに大きいが、はんだカップ70のフランジ部80の外径より小さくされている。そして、はんだカップ70の底面側の端部が、外筒72の開口部から嵌入され、はんだカップ70が、外筒72内に収納されている。第2内周面84は、はんだカップ70の筒状の部分に対して平行に延びている。これにより、はんだカップ70は、外筒72の内部を摺動する。ただし、外筒72の第2内周面84の部分の深さ寸法は、はんだカップ70のフランジ部80から底面までの長さ寸法より長くされており、外筒72に収納されたはんだカップ70のフランジ部80は、外筒72の第1内周面82と第2内周面84との間の段差面に当接する。このため、はんだカップ70の底面と外筒72の底面83との間には、空間86が形成される。なお、本明細書中では、有底円筒形状の部材の開口部と反対側の面を、底面と記載する。つまり、有底円筒形状の部材の開口部と反対側の面が上方に位置し、開口部が下方に位置する場合であっても、開口部と反対側の面を、蓋ではなく、底面と記載する。
また、供給ノズル74は、ノズル部88とフランジ部90とから構成されており、ノズル部88とフランジ部90とが、弾性変形可能な素材により一体的に形成されている。ノズル部88は、概して円筒形状とされており、内部を貫通するノズル穴92が形成されている。フランジ部90は、ノズル部の一端部側の外周面から円盤状に延び出しており、フランジ部90の外径は、はんだカップ70の内径より僅かに大きくされている。そして、フランジ部90は、ノズル部88がはんだカップ70の開口部側を向くように、はんだカップ70内に嵌入されており、フランジ部90の外周部が弾性変形した状態で、供給ノズル74がはんだカップ70の内部を摺動する。
また、内筒76は、円筒形状の筒部96と、筒部96の一端を覆う円環部98とを有しており、円環部98において、供給ノズル74を保持している。詳しくは、供給ノズル74のノズル部88の外周面は、フランジ部90側に位置する第1外周面100と、ノズル部88の先端部側に位置する第2外周面102とによって構成されており、第1外周面100の外径は、第2外周面102の外径より小さくされている。一方、内筒76の円環部98の内径は、第1外周面100の外径より僅かに大きくされており、第2外周面102の外径より僅かに小さくされている。そして、円環部98の内径部に、ノズル部88が、第2外周面102の部分を弾性変形させつつ、嵌入されており、円環部98の内径部とノズル部88の第1外周面100とが係合している。これにより、内筒76は、円環部98において、供給ノズル74を保持している。なお、内筒76は、円環部98において、供給ノズル74を保持していることから、はんだカップ70の内部に位置しているが、筒部96の円環部98が配設されていない側の端部は、はんだカップ70の開口部から延び出している。
また、供給ノズル74を内筒76から離間する方向に引っ張ることで、ノズル部88の第2外周面102の部分が弾性変形し、供給ノズル74を内筒76から取り外すことが可能である。ただし、供給ノズル74を内筒76から取り外す際にノズル部88の第2外周面102の部分を弾性変形させるために必要な力、つまり、内筒76による供給ノズル74の保持力は、はんだカップ70内に嵌入されている供給ノズル74のフランジ部90とはんだカップ70の内周面との間に生じる摩擦力より、大きい。このため、供給ノズル74を保持している内筒76を、はんだカップ70から離間する方向に引っ張った場合には、供給ノズル74は、内筒76から離脱することなく、内筒76と一緒にはんだカップ70内部から取り出される。
また、固定蓋78は、円環部106と、円環部106の外縁全周に立設された立設部108とを有している。立設部108の内周面には、ねじ山(図示省略)が形成されており、外筒72の開口部側の端部に形成されているねじ山(図示省略)に螺合されている。これにより、固定蓋78は、外筒72の開口部に着脱可能に取り付けられる。また、円環部106の内径は、内筒76の筒部96の内径とほぼ同じとされており、筒部96のはんだカップ70から延び出す端部が、円環部106の内縁に固定されている。このため、固定蓋78を外筒72から取り外すことで、内筒76も外筒72内部から取り出される。この際、内筒76に保持されている供給ノズル74も、外筒72内部から取り出される。さらに、供給ノズル74のフランジ部90とはんだカップ70の内周面との間で生じる摩擦力によって、はんだカップ70も、外筒72から取り出される。つまり、固定蓋78を外筒72から取り外すことで、内筒76と供給ノズル74とはんだカップ70とが一体となって、外筒72から取り出される。
また、外筒72の底面83には、貫通穴110が形成されており、その貫通穴110には、エアアダプタ112が取り付けられている。エアアダプタ112は、エアチューブ114の一端部に接続され、エアチューブ114の他端部には、装置側エアカプラ116が接続されている。その装置側エアカプラ116に、はんだ供給装置26の配設位置に設けられたスライダ側エアカプラ(図3参照)118が接続されることで、外筒72内の空間86にエアが供給され、供給ノズル74のノズル穴92からクリームはんだが排出される。
詳しくは、スライダ側エアカプラ118には、図3に示すように、エアチューブ120の一端部が接続されており、エアチューブ120の他端部は、バルブ121(図4参照)に接続されている。バルブ121は、図示しないエアチューブにより、エア供給装置(図4参照)122に接続されている。さらにバルブ121は、別の図示しないエアチューブにより、エア吸引装置(図4参照)123に接続されている。これにより、エアが、エア供給装置122から、外筒72内の空間86に供給される。空間86にエアが供給されると、はんだカップ70の底面が供給ノズル74に向かって押圧され、はんだカップ70が下方に移動する。この際、はんだカップ70内に充填されているクリームはんだが圧縮され、供給ノズル74のノズル穴92から排出される。ノズル穴92から排出されたクリームはんだは、内筒76の筒部96および、固定蓋78の円環部106の内部を通り抜け、はんだ供給装置26の外部に排出される。これにより、はんだ供給装置26は、クリームはんだを供給する。
さらに、エア吸引装置123により、外筒72内の空間86からエアが吸引される。エア吸引装置123は、供給ノズル74のフランジ部90とはんだカップ70の内周面との間で生じる摩擦力よりも大きな負圧力で、空間86からエアを吸引する。そのため、空間86からエアが吸引されると、はんだカップ70が供給ノズル74から離間する方向に引き上げられる。はんだカップ70は、はんだカップ70のフランジ部80が外筒72の第1内周面82と第2内周面84との間の段差面に当接するまで引き上げられる。すなわち、はんだカップ70と供給ノズル74とが完全に分離することなく、供給ノズル74のフランジ部90がはんだカップ70の開口部付近に留まった状態まで、はんだカップ70が引き上げられる。第1内周面82と第2内周面84との間の段差面により、はんだカップ70の供給ノズル74に対する移動は停止させられる。
このように、はんだ供給装置26では、はんだカップ70の底面と外筒72の底面83とによって空間86が区画され、その空間86がエア室として機能している。つまり、はんだカップ70の底面が、直接、エアにより押圧されることで、はんだカップ70内のクリームはんだが、ノズル穴92から排出される。また、空間86からエアが吸引されることにより、はんだカップ70が、供給ノズル74から離間する方向に引き上げられる。このため、はんだ供給装置26では、はんだカップ70を押圧したり、引き上げたりするためのシリンダ装置や加圧棒等を設ける必要がなく、はんだ供給装置26の小型化を図ることが可能となる。また、シリンダ装置や加圧棒等を設ける必要がないため、コストダウンを図ることが可能となる。さらに言えば、シリンダ装置や加圧棒等を設ける必要がないため、はんだ供給装置26の構造をシンプルにすることが可能となる。さらに、空間86へのエアの供給または空間86からのエアの吸引により、はんだカップ70は、外筒72の第2内周面84に沿って昇降させられる。そのため、はんだカップ70の筒状の部分は、第2内周面84に案内され、第2内周面84に対して平行に昇降させられる。したがって、はんだ供給装置26は、はんだカップ70や供給ノズル74のフランジ部90に無理な力を及ぼすことなく、はんだカップ70を昇降させることができる。
また、はんだ供給装置26は、図3に示すように、パチン錠130によって、X軸スライダ60に着脱可能に装着される。詳しくは、X軸スライダ60の下端部には、ブラケット132が取り付けられており、はんだ供給装置26の下面が、ブラケット132によって支持される。つまり、ブラケット132の上に、はんだ供給装置26を載置することが可能となっている。なお、ブラケット132には、はんだ供給装置26の固定蓋78の円環部106の内径と同程度の貫通穴が形成されている。これにより、ブラケット132上に載置されたはんだ供給装置26から、ブラケット132の貫通穴を介して、クリームはんだが供給される。
X軸スライダ60には、ブラケット132の上方に、2枚の囲い板134,136が、ブラケット132に対して垂直となるように、対向して固定されている。それら2枚の囲い板134,136の間の距離は、はんだ供給装置26の外筒72の外径より僅かに長くされており、2枚の囲い板134,136の間に、はんだ供給装置26が載置される。また、囲い板134には、ヒンジ138を介して、開閉板140の一端部が取り付けられている。開閉板140の他端部には、パチン錠130のレバー部146が設けられており、囲い板136には、パチン錠の掛止部148が設けられている。そして、開閉板140が閉じられた状態で、レバー部146が掛止部148に引っ掛けられた状態でロックされることで、はんだ供給装置26が、X軸スライダ60に固定的に装着される。また、パチン錠130のロックを解除し、開閉板140を開けることで、はんだ供給装置26をX軸スライダ60から取り外すことが可能となる。なお、装置側エアカプラ116とスライダ側エアカプラ118とは、着脱可能とされており、はんだ供給装置26をX軸スライダ60から取り外す際には、装置側エアカプラ116がスライダ側エアカプラ118から取り外される。
また、はんだ印刷機10は、図4に示すように、制御装置150を備えている。制御装置150は、コントローラ152と、複数の駆動回路154とを備えている。複数の駆動回路154は、上記電磁モータ32,58,62,66,68、保持装置36、バルブ121、エア供給装置122、エア吸引装置123に接続されている。また、コントローラ152は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路154に接続されている。これにより、搬送装置20、移動装置22、スキージ装置24、はんだ供給装置26の作動が、コントローラ152によって制御される。
<回路基板へのクリームはんだの印刷>
はんだ印刷機10では、上述した構成によって、回路基板34上に載置されたメタルマスクの上面に、クリームはんだが、はんだ供給装置26により供給され、そのクリームはんだが、スキージ装置24によって塗布される。メタルマスクには、回路基板34のパッド等のパターンに合わせてパターン孔が形成されており、そのパターン孔を介して、クリームはんだが回路基板34に印刷される。
具体的には、コントローラ152の指令により、回路基板34が作業位置まで搬送され、その位置において、保持装置36によって固定的に保持される。そして、はんだ供給装置26が、コントローラ152の指令により、回路基板34の所定の位置の上方に移動する。続いて、はんだ供給装置26は、コントローラ152の指令により、エア供給装置122から外筒72内の空間86にエアを供給する。これにより、ノズル穴92からクリームはんだが排出され、回路基板34上に載置されたメタルマスクの上面に、クリームはんだが供給される。次に、スキージ装置24が、コントローラ152の指令により、クリームはんだが供給された箇所の上方に移動する。そして、スキージ装置24は、コントローラ152の指令により、スキージを下方に移動させた後に、Y軸方向に移動させる。これにより、メタルマスクの上面にクリームはんだが塗布され、パターン孔の内部にクリームはんだが入り込む。このようにして、はんだ印刷機10では、回路基板34にクリームはんだが印刷される。
<はんだカップの交換>
上述したように、回路基板34へのクリームはんだ印刷時には、はんだ供給装置26のはんだカップ70からクリームはんだが供給されるため、はんだカップ70が空になる。このため、空になったはんだカップ70を、クリームはんだが充填されているはんだカップ70に交換する必要がある。以下に、はんだカップ70の交換手順について、詳しく説明する。
まず、はんだ供給装置26は、コントローラ152の指令により、エア吸引装置123により、外筒72内の空間86からエアを吸引する。これにより、はんだカップ70が供給ノズル74から離間する方向に引き上げられる。はんだカップ70は、はんだカップ70のフランジ部80が外筒72の第1内周面82と第2内周面84との間の段差面に当接すると、その段差面によって、それ以上の上昇が妨げられる。そのため、はんだカップ70は、供給ノズル74と完全に分離することなく、供給ノズル74がはんだカップ70の開口部付近に留まった状態となる。次に、パチン錠130のロックが解除され、開閉板140が開けられる。また、装置側エアカプラ116がスライダ側エアカプラ118から取り外される。そして、はんだ供給装置26が、X軸スライダ60から取り外され、はんだ印刷機10外に取り出される。はんだ供給装置26が機外に取り出されると、固定蓋78を外筒72に対して左回りに回転させ、固定蓋78と外筒72との螺合を解除する。これにより、図5に示すように、固定蓋78と内筒76と供給ノズル74とはんだカップ70とが一体的に、外筒72から取り外される。
次に、ユーザは、はんだカップ70が上方に開口した状態にして、はんだカップ70と固定蓋78との少なくとも一方を、互いに離れる方向に引っ張る。この際、供給ノズル74は、エア吸引装置123による負圧力により、はんだカップ70の開口部付近にあるので、ユーザは、一体となっている固定蓋78と内筒76と供給ノズル74を、はんだカップ70から容易に取り外すことができる。したがって、図6に示すように、固定蓋78と内筒76と供給ノズル74とが一体的に、はんだカップ70と分離する。つまり、空のはんだカップ70の内部から、供給ノズル74が、内筒76とともに引き出される。
続いて、図7に示すように、外筒72の内部に、新品のはんだカップ70、つまり、クリームはんだの充填されたはんだカップ70がセットされる。そして、そのはんだカップ70の内部に供給ノズル74を嵌入させた状態で、固定蓋78が外筒72の開口部に螺合される。これにより、図8に示すように、はんだ供給装置26内に、新品のはんだカップ70がセットされる。
はんだ供給装置26内に、新品のはんだカップ70がセットされると、そのはんだ供給装置26がはんだ印刷機10内に持ち込まれ、ブラケット132の上に載置される。そして、開閉板140が閉じられ、パチン錠130がロックされる。また、装置側エアカプラ116がスライダ側エアカプラ118に取り付けられる。これにより、はんだ供給装置26がX軸スライダ60に固定的に装着され、はんだカップ70の交換が終了する。
このように、はんだ印刷機10では、固定蓋78と外筒72との螺合により、固定蓋78と外筒72と内筒76と供給ノズル74とはんだカップ70とが一体物となっているため、作業者は、片手で、はんだ供給装置26を把持し、容易にはんだ印刷機10の外部に持ち出すことが可能となっている。これにより、はんだ印刷機10の外部で、はんだカップ70の交換を行うことが可能となり、交換時におけるクリームはんだの落下等によるはんだ印刷機10の内部の汚れを抑制することが可能となる。また、狭いはんだ印刷機10内部での交換作業でなく、はんだ印刷機10の外部で交換作業を行えるため、交換作業を容易に行うことが可能となる。さらに、はんだカップ70の清掃等も、はんだ印刷機10の外部で行うことが可能となり、清掃作業も容易となる。また、供給ノズル74は、上述したように、内筒76から取り外すことが可能であるため、汚れやすい供給ノズル74を、単独で清掃することが可能となる。
また、例えば、はんだ供給装置26を、もう一台用意しておくことで、はんだカップの交換作業を極めて短い時間で行うことが可能となる。詳しくは、X軸スライダ60に装着されているはんだ供給装置26と別のはんだ供給装置を用意しておいて、その別のはんだ供給装置に、図8に示すように、新品のはんだカップ70をセットしておく。そして、X軸スライダ60からはんだ供給装置26を取り外し、新品のはんだカップ70がセットされた別のはんだ供給装置をX軸スライダ60に装着することで、はんだカップの交換作業が完了する。これにより、はんだカップの交換作業を極めて短い時間で行うことが可能となる。
このように、はんだ供給装置26では、はんだカップ70が交換される際、エア吸引装置123による吸引により、供給ノズル74がはんだカップ70の開口部付近に位置している。そのため、ユーザが、固定蓋78と内筒76と供給ノズル74との一体物と、はんだカップ70とを分離する際、供給ノズル74がはんだカップ70の奥まで入り込んでいる状態から分離する場合と比較して、容易に分離することができる。しかも、エア吸引装置123の吸引により、はんだカップ70が外筒72内において引き上げられる際、外筒72の第1内周面82と第2内周面84との間の段差面によって、はんだカップ70と供給ノズル74とが完全に分離することが妨げられる。そのため、はんだ供給装置26は、はんだカップ70が下向きに開口した状態で、はんだカップ70と供給ノズル74とが分離することを防止できる。したがって、はんだ供給装置26は、例えば外筒72の内部等がはんだカップ70から落下したはんだにより汚れることを低減できる。
[第2実施例]
第1実施例のはんだ供給装置26では、はんだカップ70の移動により、クリームはんだが吐出されるが、供給ノズルの移動によりクリームはんだを吐出することも可能である。供給ノズルの移動によりクリームはんだを吐出するはんだ供給装置230を、第2実施例として、図9に示す。
はんだ供給装置230は、はんだカップ232と外筒234とピストン236と固定蓋238とノズル管240とを有している。はんだカップ232は、第1実施例のはんだカップ70と同形状である。つまり、一端部に開口部を有する有底円筒形状の容器であり、開口部側の外周面には、フランジ部242が形成されている。そして、はんだカップ232の内部に、クリームはんだが充填されている。
外筒234は、両端部が開口する円筒形状とされており、外筒234の内部に、はんだカップ232が収納されている。詳しくは、外筒234の内径は、はんだカップ232のフランジ部242の外径より僅かに小さくされており、はんだカップ232の筒状の部分の外径より僅かに大きくされている。そして、はんだカップ232の底面側の端部が、外筒234の一端部から嵌入され、はんだカップ232が、外筒234内に収納されている。なお、はんだカップ232のフランジ部242より開口部側の部分は、外筒234の開口部から延び出している。
また、ピストン236は、円筒部246とフランジ部248とから構成されており、円筒部246とフランジ部248とが、弾性変形可能な素材により一体的に形成されている。フランジ部248は、円筒部246の一端部側の外周面から円盤状に延び出しており、フランジ部248の外径は、はんだカップ232の内径より僅かに大きくされている。そして、フランジ部248は、円筒部246がはんだカップ232の開口部側を向くように、はんだカップ232内に嵌入されており、弾性変形した状態で、はんだカップ232内を摺動する。
また、固定蓋238は、円環部250と、円環部250の外縁全周に立設された立設部252とを有している。立設部252の内周面には、ねじ山(図示省略)が形成されており、外筒234の一端部の外周面に形成されているねじ山(図示省略)に螺合されている。これにより、固定蓋238は、外筒234の一端部に着脱可能に取り付けられる。
また、ノズル管240は、概して円筒形状とされており、内部を貫通するノズル穴256が形成されている。ノズル管240の外径は、固定蓋238の円環部250の内径と略同じとされており、ノズル管240が、円環部250に挿入され、ノズル管240と円環部250とが固定されている。これにより、円環部250に固定されたノズル管240の一端部は、固定蓋238から延び出し、他端部は、外筒234の内部、つまり、外筒234に収容されたはんだカップ232内に入り込んでいる。はんだカップ232内に入り込んだノズル管240は、はんだカップ232内に収容されているピストン236の円筒部246内に嵌入されている。その円筒部246の内径は、ノズル管240の外径より僅かに小さい。このため、円筒部246は、弾性変形した状態でノズル管240の外周面上を摺動する。
上述した構造により、固定蓋238により外筒234の一端部が閉じられることで、はんだカップ232の内部は、ピストン236によって、上室258と下室260とに区画される。上室258には、はんだカップ232内のクリームはんだが充填されている。一方、下室260には、何も充填されていないが、固定蓋238には、貫通穴262が形成され、下室260に貫通穴262が開口している。その貫通穴262には、エアアダプタ264が取り付けられている。エアアダプタ264は、エアチューブ266の一端部に接続され、そのエアチューブ266の他端部は、バルブ121(図4参照)に接続されている。バルブ121は、図示しないエアチューブにより、エア供給装置(図4参照)122に接続されている。さらにバルブ121は、別の図示しないエアチューブにより、エア吸引装置(図4参照)123に接続されている。このような構造により、はんだ供給装置230では、エア供給装置122からのエアの供給により、ノズル管240のノズル穴256からクリームはんだが排出される。
詳しくは、エアが、エア供給装置122から、エアチューブ266およびエアアダプタ264を介して、下室260に供給される。下室260にエアが供給されると、ピストン236の下室260側の面、つまり、ピストン236のはんだカップ232の開口を向く側の面が、はんだカップ232の底面に向かって押圧され、ピストン236が上方に移動する。これにより、上室258内に充填されているクリームはんだが圧縮され、固定蓋238から延び出しているノズル管240の先端部のノズル穴256から排出される。
さらに、エア吸引装置123により、下室260からエアが吸引される。エア吸引装置123は、ピストン236のフランジ部248とはんだカップ232の内周面との間で生じる摩擦力よりも大きな負圧力で、下室260からエアを吸引する。そのため、下室260からエアが吸引されると、ピストン236がはんだカップ232の底面から離間する方向に引き下げられる。ピストン236は、円筒部246のはんだカップ232の開口側の端部が、固定蓋238に当接するまで引き下げられる。ピストン236の円筒部246は、はんだカップ232の開口側の端部が固定蓋238に当接したとしても、ピストン236のフランジ部248が、はんだカップ232から完全に分離しない長さに設けられている。そのため、はんだカップ232とピストン236とが完全に分離することなく、ピストン236のフランジ部248がはんだカップ232の開口部付近に留まった状態まで、ピストン236が引き下げられる。ピストン236の円筒部246と固定蓋238との当接により、ピストン236のはんだカップ232に対する移動は停止させられる。
このように、はんだ供給装置230では、固定蓋238により外筒234の一端部が閉じられることで、はんだカップ232の内部が、ピストン236によって、上室258と下室260とに区画される。そして、上室258に、クリームはんだが充填され、下室260がエア室として機能している。つまり、ピストン236の下室側の面が、直接、エアにより押圧されていることで、上室258内のクリームはんだが、ノズル穴256から排出される。また、下室260からエアが吸引されることにより、ピストン236が、はんだカップ232の底面から離間する方向に引き下げられる。このため、第2実施例のはんだ供給装置230においても、第1実施例のはんだ供給装置26と同様に、シリンダ装置や加圧棒等を設ける必要がなく、はんだ供給装置26と同様の効果を得ることが可能となっている。また、はんだカップ232に対するピストン236の昇降は、下室260へのエアの供給または下室260からのエアの吸引により行われる。このため、ピストン236のフランジ部248は、はんだカップ232の内周面に案内されながら昇降する。したがって、第2実施例のはんだ供給装置230においても、第1実施例のはんだ供給装置26と同様に、はんだカップ232やピストン236のフランジ部248に無理な力を及ぼすことなく、ピストン236を昇降させることができる。
また、第2実施例のはんだカップの交換では、固定蓋238を外筒234に対して左回りに回転させ、固定蓋238と外筒234との螺合を解除する。これにより、固定蓋238とノズル管240とが、外筒234から取り外される。この際、ノズル管240が嵌入されているピストン236も、ノズル管240とピストン236の円筒部246との間に生じる摩擦力により、ノズル管240とともに外筒234から取り出される。さらに、ピストン236が嵌入されているはんだカップ232も、ピストン236のフランジ部248とはんだカップ232との間に生じている摩擦力により、ピストン236とともに外筒234から取り出される。これにより、固定蓋238とノズル管240とピストン236とはんだカップ232とが一体物として、外筒234から取り外される。
次に、ユーザは、はんだカップ232が上方に開口した状態にして、固定蓋238とはんだカップ232との少なくとも一方を離間する方向に引っ張ることで、固定蓋238とノズル管240とピストン236とはんだカップ232との一体物から、はんだカップ232のみを分離する。これは、ノズル管240とピストン236の円筒部246との間に生じる摩擦力のためである。詳しくは、ピストン236の円筒部246は、上述したように、ノズル管240の外周面において弾性変形しており、円筒部246とノズル管240との間に摩擦力が発生している。また、ピストン236のフランジ部248も、上述したように、はんだカップ232の内周面において弾性変形し、フランジ部248とはんだカップ232との間に摩擦力が発生しているが、その摩擦力は、円筒部246とノズル管240との間に生じている摩擦力より小さい。このため、ピストン236は、ノズル管240とともにはんだカップ232から取り出される。この際、ピストン236は、エア吸引装置123による負圧力により、はんだカップ232の開口部付近まで移動させられているので、ユーザは、一体となっている固定蓋238とノズル管240とピストン236を、はんだカップ232から容易に取り外すことができる。しかも、エア吸引装置123の吸引により、ピストン236が引き下げられる際、ピストン236の円筒部246のはんだカップ232の開口側の端部が、固定蓋238に当接することにより、はんだカップ232とピストン236とが完全に分離することが妨げられる。そのため、はんだ供給装置230は、はんだカップ232が下向きに開口した状態で、はんだカップ232とピストン236とが分離することを防止できる。したがって、第2実施例のはんだ供給装置230も、第1実施例のはんだ供給装置26と同様に、例えば固定蓋238の内部等が、はんだカップ232から落下したはんだにより汚れることを低減できる。
このように、ピストン236がはんだカップ232から取り出されることで、空のはんだカップ232が分離される。次に、分離された外筒234に新品のはんだカップが嵌入される。その新品のはんだカップが嵌入された外筒234に、固定蓋238とノズル管240とピストン236との一体物が取り付けられることで、はんだカップの交換作業が終了する。このように、第2実施例のはんだ供給装置230においても、比較的少ない工程によりはんだカップを交換することが可能となり、はんだカップの交換作業を短い時間で行うことが可能となる。
また、第2実施例のはんだ供給装置230を、第1実施例のはんだ供給装置26の代わりに、X軸スライダ60に装着することが可能である。これにより、はんだ供給装置230のはんだ印刷機10からの取り出しが用意となり、はんだ供給装置26と同様の効果を得ることが可能となっている。
ちなみに、上記実施例において、はんだ供給装置26、はんだ供給装置230は、はんだ供給装置の一例である。はんだカップ70、232は、はんだ容器の一例である。ノズル部88、ノズル管240は、ノズルの一例である。フランジ部90、ピストン236は、ピストンの一例である。外筒72、固定蓋238は、区画部材の一例である。空間86、下室260は、エア室の一例である。エア供給装置122は、エア供給装置の一例である。エア吸引装置123は、エア吸引装置の一例である。第2内周面84、はんだカップ232の内周面は、ガイドの一例である。第1内周面82と第2内周面84との間の段差面、ピストン236の円筒部246と固定蓋238は、ストッパの一例である。
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。具体的には、例えば、上記第1実施例では、はんだ供給装置26をX軸スライダ60に着脱可能に装着するためのロック機構として、パチン錠130が採用されているが、種々のロック機構を採用することが可能である。ただし、交換作業の短縮化等を考慮すると、ワンタッチではんだ供給装置26をX軸スライダ60に着脱するためのロック機構、つまり、はんだ供給装置26の取り付けと取り外しとを再現性よく、繰返し行うことが可能なロック機構を採用することが好ましい。具体的には、例えば、磁石,スプリング式のロック機構等を採用することが好ましい。
また、上記第2実施例では、外筒234に固定蓋238が螺合されているが、固定蓋をはんだカップ232に螺合することも可能である。このように、固定蓋をはんだカップ232に螺合する場合には、外筒234が不要となり、コスト削減を図ることが可能となる。また、固定蓋をはんだカップ232に螺合する場合には、はんだカップ232に予め形成されているねじ山、つまり、はんだカップの蓋が螺合しているねじ山を利用することが可能となる。これにより、はんだカップにねじ山を形成する必要がなくなり、コスト削減を図ることが可能となる。