JP6494478B2 - セグメント継手の補強構造 - Google Patents
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セグメント同士の連結構造(セグメント継手)には、セグメントの端面に配設された継手板同士を重ね合わせた状態で、両継手板を貫通する継手ボルトにナットを螺合する継手ボックスタイプがある(例えば、特許文献1参照)。
また、トンネルの施工後の地下水位の低下や地殻変動等により、トンネルへの外力の作用状況が変化する場合もある。
外力の作用状況が変化すると、トンネル覆工の作用応力状態が変化し、トンネル覆工に変形が生じるおそれがある。
また、セグメントの老朽化に起因するトンネル覆工の変形も懸念されている。
ところが、セグメントを押し広げることによりセグメント同士の継手ボルトに生じる引張力に対して継手ボルトが十分な耐力を有していないおそれがある。
また、地下水の低下等によって継手部における軸力が減少すると、曲げが卓越することで継手板に損傷が生じるおそれがある。
このようなセグメント継手の補強構造としては、継手部位において締付け金物(例えば、万力やクランプ等)や継手ボルトを増設することにより継手板に生じる曲げモーメントの低減や引張耐力の増加を図る方法や、継手ボルトの太径化等によって引張抵抗力を増加させる方法等が考えられる。
ところが、継手ボックスタイプのセグメント継手の場合、継手ボックス内に締付け金物を配設できない場合がある。また、継手ボルトを増やす場合や太径化する場合には、ボルト孔の増設や既設のボルト孔の拡径作業を行う必要があるが、この作業によって継手板の耐力低下やシール材の損傷が懸念される。
また、第一締付け具の天板がセグメント間に生じる引張力に抵抗できるので、既存の継手ボルトに生じる引張力を低減させることができる。
なお、既存の継手ボルトよりも地山側において、少なくとも前記一対の第一縦板および前記一対の第二縦板のいずれか一方に横架された落下防止部材をさらに備えていれば、締付けボルトによる締付けトルクが万が一緩んだ場合であっても、落下防止部材が継手ボルトに引っ掛かるので、各締付け具が落下することを防止できる。
また、前記一方の脚板と前記第二締付け具との当接面が、前記継手板同士の当接面に対して傾斜している場合には、前記締付けボルトを前記天板に挿通させるとともに、前記締付けボルトの先端を前記一対の継手板に当接させればよい。締付けボルトを天板に対して進退させることにより第一締付け具を上下動させることで、くさび効果によって第一締付け具が第一受具を押圧するようになるので、第一縦板および第二縦板により継手板を挟持することができる。この構成では、締付けボルトを既存の継手ボックス内に配置する必要がないので、継手ボックスが小さい場合であっても、セグメント継手の補強が可能である。
なお、前記他方の脚板と前記第三締付け具との当接面が、前記一対の継手板同士の当接面に対して、前記一方の脚板と前記第二締付け具との当接面とは逆向きに傾斜した構成を採用してもよい。
第一の実施形態では、図1に示すように、セグメント11同士を連結することにより形成された円形断面の既設のトンネル1のセグメント継手12を補強する補強構造(セグメント継手の補強構造)について説明する。
トンネル周方向に連結されるセグメント11同士は、2箇所のセグメント継手12,12(セグメント間継手12a,12a)を介して連結されている。また、トンネル軸方向に連結されるセグメント11同士(セグメントリング同士)は、トンネル周方向に配設された複数のセグメント継手12,12,…(リング間継手12b,12b,…)を介して連結されている。なお、セグメント継手12(セグメント間継手12aおよびリング間継手12b)の数や配置は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
セグメント11の端面には、継手板14が配設されている。セグメント11同士の接合は、継手板14同士を重ね合わせた状態で、両継手板14,14を貫通する継手ボルト15にナット16を締着することにより行う。
継手ボルト15およびナット16は、セグメント11の端部に形成された継手ボックス13内に配設されている。
第一締付け具3は、図2(a)に示すように、セグメント11同士の継手部において重ね合わされた一対の継手板14,14を跨ぐように配設されている。
第一締付け具3は、一対の脚板31,31と、一対の脚板31,31の内空側端部に横架された天板32とにより門型を呈している。
一対の脚板31,31は、図2(a)および(c)に示すように、一対の継手板14,14の板面と平行で、かつ、一対の継手板14,14を挟んで対向している。
本実施形態の第一締付け具3(脚板31,31および天板32)は、鋼板同士を接合(溶接)することにより一体に形成されている。なお、第一締付け具3の形成方法は限定されるものではなく、例えば、鋼板を折り曲げることにより形成してもよいし、鋳造により形成してもよい。
本実施形態の第二締付け具4は、一対の第一縦板41,41と、第一受板42を備えている。
第一縦板41は、第一締付け具3の脚板31および天板32と直交(交差)するように設けられた鋼板である。第一縦板41は、端面が継手板14に当接している。
一対の第一縦板41,41は、図2(c)に示すように、継手ボルト15を挟んで対向している。
第二締付け具4は、一対の第一縦板41,41と第一受板42とが一体に接合(溶接)されることで、コ字状を呈している。第二締付け具4は、継手ボルト15を囲うように配設されている。なお、第二締付け具4の形成方法は限定されるものではなく、例えば、鋼板を折り曲げることにより形成してもよいし、鋳造により形成してもよい。
本実施形態の第三締付け具5は、図2(a)および(c)に示すように、第一締付け具3の脚板31および天板32と直行(交差)するように設けられた一対の第二縦板51,51からなる。
第二縦板51は、一方の端面が他方の継手板14に当接しているとともに、他方の端面が他方の脚板31に当接した状態で、他方の継手板14と他方(図2において右側)の脚板31との間に介設されている。
また、一対の第二縦板51,51は、一対の継手板14,14を挟んで一対の第一縦板41,41と対向するように配設されている。第二縦板51同士は、継手ボルト15を挟んで対向している。
なお、第二縦板51は、鋼板により形成されているが、第二縦板51を構成する材料は限定されない。また、第二縦板51は、他方の脚板31に一体に固定されていてもよい。
本実施形態の締付けボルト6のボルト軸は、図2(a)および(c)に示すように、一方の脚板31に形成されたボルト孔を貫通しているとともに、先端が第一受板42に当接している。
なお、脚板31のボルト孔の内面には雌ネジが形成されている。そのため、締付けボルト6が回転することで、脚板31に対して締付けボルト6が進退する。
落下防止部材7は、継手ボルト15よりも地山側に配設されており、第二縦板51,51、他方の継手板14および他方の脚板31により囲まれた空間の底面を遮蔽している(図2(c)参照)。
本実施形態の落下防止部材7は、第二縦板51,51に一体に接合(溶接)されている。なお、落下防止部材7の接合方法は限定されない。また、落下防止部材7は、継手ボルト15に地山側に配設されていればよく、必ずしも第二縦板51,51、他方の継手板14および他方の脚板31により囲まれた空間の底面全体を遮蔽する必要はない。また、落下防止部材7は、第一縦板41,41の地山側端部に設けられていてもよい。
また、第一締付け具3の天板32がセグメント11間に生じる引張力に抵抗するため、既存の継手ボルト15に生じる引張力を低減させることができる。
また、落下防止部材7が配設されているため、締付けボルト6による締付けトルクが万が一緩んだ場合であっても、落下防止部材7が継手ボルト15またはナット16に引っ掛かるので、各締付け具が落下することを防止できる。
第二の実施形態の補強構造2は、図3に示すように、セグメント11の端部に形成された凹部(継手ボックス13)に設ける。
なお、第二の実施形態に係るトンネル1のセグメント11およびセグメント継手12の詳細は、第一の実施形態で示したトンネル1のセグメント11およびセグメント継手12と同様なため、詳細な説明は省略する。
補強構造2は、第一締付け具3と、第二締付け具4と、第三締付け具5と、締付けボルト6と、落下防止部材7とを備えている。
第一締付け具3は、一対の脚板31,31と、一対の脚板31,31のトンネル内空側端部に横架された天板32とにより門型を呈している。
一対の脚板31,31は、図3(a)および(c)に示すように、一対の継手板14,14を挟んで対向している。
各脚板31は、図3(a)に示すように、継手板14側の板面(第二締付け具4または第三締付け具5との当接面)が継手板14に対して傾斜しているとともに、継手板14と反対側の板面が継手板14の板面と平行を呈していて、内空側に向うに従って板厚が減少する鋼板により形成されている。すなわち、一対の脚板31,31の対向面(継手板14側の板面)は、逆向きに傾斜している。
本実施形態の第一締付け具3(脚板31,31および天板32)は、鋼板同士を接合(溶接)することにより一体に形成されている。なお、第一締付け具3の形成方法は限定されるものではなく、例えば、鋳造により形成してもよい。
本実施形態の第二締付け具4は、一対の第一縦板41,41と、第一受板42を備えている。
第一縦板41は、第一締付け具3の脚板31および天板32と直行(交差)するように設けられた鋼板である。第一縦板41の端面は継手板14に当接している。
一対の第一縦板41,41は、図3(c)に示すように、継手ボルト15を挟んで対向している。
第一受板42の一方(継手板14との反対側)の板面は、図3(a)に示すように、一方の脚板31の板面と当接している。
第一受板42は、継手板14側の板面が継手板14の板面と平行であるとともに、一方の脚板31との当接面が継手板14の板面に対して傾斜していることで、内空側に向うに従って板厚が増加する断面形状を有している。
第二締付け具4は、一対の第一縦板41,41と第一受板42とが一体に接合(溶接)されることで、コ字状を呈している。第二締付け具4は、継手ボルト15を囲うように配設されている。なお、第二締付け具4の形成方法は限定されるものではなく、例えば、鋳造により形成してもよい。
本実施形態の第三締付け具5は、図3(a)および(c)に示すように、一対の第二縦板51,51と、第二受板52とを備えている。
第二縦板51は、第一締付け具3の脚板31および天板32と直行(交差)するように設けられている。
第二縦板51は、一方の端面が他方の継手板14に当接しているとともに、第二縦板52に接合されている。また、一対の第二縦板51,51は、一対の継手板14,14を挟んで一対の第一縦板41,41と対向している。さらに、第二縦板51同士は、継手ボルト15を挟んで対向している。
第二受板52は、継手板14側の板面が継手板14の板面と平行であるとともに、他方の脚板31との当接面が継手板14の板面に対して傾斜していることで、トンネル内空側に向うに従って板厚が増加する断面形状を有している。
第三締付け具5は、一対の第二縦板51,51と第二受板52とが一体に接合(溶接)されることで、コ字状を呈している。第三締付け具5は、継手ボルト15を囲うように配設されている。なお、第三締付け具5の形成方法は限定されるものではなく、例えば、鋳造により形成してもよい。
本実施形態の締付けボルト6のボルト軸は、図3(a)および(b)に示すように、天板32に形成されたボルト孔を貫通している。締付けボルト6の先端は、共上り防止板61を介して継手板14に当接している。
共上り防止板61は、図3(a)および(c)に示すように、継手板14,14、第一縦板41,41および第二縦板51,51の上端に載置されている。
なお、天板32のボルト孔の内面には雌ネジが形成されている。そのため、締付けボルト6を回転させることで、天板32が締付けボルト6に対して進退し、したがって、第一締付け具3が内空−地山方向に進退する。
落下防止部材7の詳細は、第一の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
また、落下防止部材7が配設されているため、締付けボルト6による締付けトルクが万が一緩んだ場合であっても、落下防止部材7が継手ボルト15またはナット16に引っ掛かるので、各締付け具が落下することを防止できる。
さらに、締付けボルト6を既存の継手ボックス13内に配置する必要がないので、継手ボックス13が小さい場合であっても、セグメント継手12の補強が可能である。
なお、本実施形態では、第一受具42および第二受具52の両方が傾斜した当接面を有している場合について説明したが、いずれか一方の当接面のみが傾斜していてもよい。
第三の実施形態の補強構造2は、図4に示すように、セグメント11の端部に形成された凹部(継手ボックス13)に設ける。
なお、第三の実施形態にかかるトンネル1のセグメント11およびセグメント継手12の詳細は、第一の実施形態で示したトンネル1のセグメント11およびセグメント継手12と同様なため、詳細な説明は省略する。
補強構造2は、第一締付け具3と、第二締付け具4と、第三締付け具5と、締付けボルト6と、落下防止部材7とを備えている。
第一締付け具3は、一対の脚板31,31と、一対の脚板31,31の内空側端部に横架された天板32とにより門型を呈している。
一対の脚板31,31は、図4(a)および(c)に示すように、一対の継手板14,14を挟んで対向している。
一対の脚板31,31は、図4(a)に示すように、継手板14側の板面(第二締付け具4または第三締付け具5との当接面)が継手板14に対して傾斜しているとともに、継手板14と反対側の板面が継手板14の板面と平行であり、内空側に向うに従って板厚が増加する鋼板により形成されている。すなわち、一対の脚板31,31の対向面(継手板14側の板面)は、逆向きに傾斜している。
この他の第一締付け具3の詳細は、第二の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
本実施形態の第二締付け具4は、一対の第一縦板41,41と、第一受板42を備えている。
第一受板42は、一対の第一縦板41,41の継手板14と反対側の端部に横架された鋼板である。すなわち、第一受板42は、第一縦板41と一方の脚板31との間に配設されている。
第一受板42の一方(継手板14との反対側)の板面は、図4(a)に示すように、一方の脚板31の板面と当接している。
第一受板42は、継手板14側の板面が継手板14の板面と平行であるとともに、一方の脚板31との当接面が傾斜していることで、内空側に向うに従って板厚が減少する断面形状を有している。
この他の第二締付け具4の詳細は第二の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
本実施形態の第三締付け具5は、図4(a)および(c)に示すように、一対の第二縦板51,51と、第二受板52とを備えている。
第二受板52は、一対の第二縦板51,51と他方の脚板31との間において、一対の第二縦板51,51の端部に横架されている。第二受板52の他方(継手板14との反対側)の板面は、図4(a)に示すように、他方の脚板31の板面と当接している。
第二受板52は、継手板14側の板面が継手板14の板面と平行であるとともに、他方の脚板31との当接面が傾斜していることで、内空側に向うに従って板厚が減少する断面形状を有している。
この他の第三締付け具5の詳細は、第二の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
本実施形態の締付けボルト6は、棒材の外面に雄ネジ加工が施されたいわゆる寸切ボルトからなり、図4(a)および(b)に示すように、天板32に形成されたボルト孔を貫通している。締付けボルト6の先端は、継手板14,14の内空側端面に固定(溶接)されている。天板32の内空側において、締付けボルト6の端部にはナット62が螺合されている。
なお、締付けボルト6の継手板14,14の内空側端面への固定方法は限定されるものではなく、例えば、取付部材を介して固定してもよい。また、締付けボルト6は寸切ボルトに限定されるものではない。
落下防止部材7の詳細は、第一の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
この他の第三の実施形態にかかる補強構造2の作用効果は、第二の実施形態の補強構造2と同様なため、詳細な説明は省略する。
例えば、トンネル1の断面形状は円形に限定されるものではない。
第一受板42および第二受板52は、必要に応じて設置すればよい。すなわち、第一縦板41および第二縦板51は、脚板31に直接当接していてもよい。
補強構造2が適用されるセグメント継手12は、セグメント11同士を周方向で接合するセグメント間継手12aに限定されるものではなく、セグメント11同士をトンネル軸方向で接合する(セグメントリング同士を接合する)リング間継手12bであってもよい。
11 セグメント
12 セグメント継手
13 継手ボックス
14 継手板
15 継手ボルト
16 ナット
2 補強構造(セグメント継手の補強構造)
3 第一締付け具
31 脚板
32 天板
4 第二締付け具
41 第一縦板
42 第一受板
5 第三締付け具
51 第二縦板
52 第二受板
6 締付けボルト
61 共上り防止板
7 落下防止部材
Claims (5)
- セグメント同士の継手部において重ね合わされた一対の継手板を跨ぐように配設された第一締付け具と、
一方の前記継手板と前記第一締付け具との間に介設された第二締付け具と、
他方の前記継手板と前記第一締付け具との間に介設された第三締付け具と、
前記第一締付け具に挿通された締付けボルトと、
を備えるセグメント継手の補強構造であって、
前記第一締付け具は、
前記一対の継手板を挟んで対向する一対の脚板と、
前記一対の脚板の内空側端部に横架された天板と、を備え、
前記第二締付け具は、
前記脚板および前記天板の板面と交差し、かつ、前記一方の継手板に当接する一対の第一縦板を備え、
前記第三締付け具は、前記一対の継手板を挟んで前記一対の第一縦板と対向するように他方の前記継手板に当接する一対の第二縦板を備えており、
前記一対の第一縦板および前記一対の第二縦板は、既存の継手ボルトを挟んで間隔をあけた位置において、前記一対の継手板を挟持していることを特徴とする、セグメント継手の補強構造。 - 前記第二締付け具が、前記一対の第一縦板と一方の前記脚板との間において、前記一対の第一縦板の端部に横架された第一受板を備えており、
前記締付けボルトは、前記一方の脚板に螺合されており、前記締付けボルトの先端が前記第一受板に当接していることを特徴とする、請求項1に記載のセグメント継手の補強構造。 - 前記締付けボルトは、前記天板に挿通されているとともに、前記締付けボルトの先端が前記一対の継手板に当接しており、
一方の前記脚板と前記第二締付け具との当接面が、前記継手板同士の当接面に対して傾斜していることを特徴とする、請求項1に記載のセグメント継手の補強構造。 - 他方の前記脚板と前記第三締付け具との当接面が、前記継手板同士の当接面に対して、前記一方の脚板と前記第二締付け具との当接面とは逆向きに傾斜していることを特徴とする、請求項3に記載のセグメント継手の補強構造。
- 既存の継手ボルトよりも地山側において、少なくとも前記一対の第一縦板および前記一対の第二縦板のいずれか一方に横架された落下防止部材をさらに備えていることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のセグメント継手の補強構造。
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