JP6493949B2 - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
従来から、環境負荷低減や省エネルギーを目的として、エンジンとモータを駆動源として併用したハイブリッド式電気自動車(HEV)の開発及び製品化が進められている。また、近年では、HEVの一種として電気プラグを介して電力を供給し得るプラグインハイブリッド式自動車(PHEV)や、モータのみを駆動源として使用する電気自動車(EV)の開発および製品化も進められている。
前記HEV、PHEV、EV等のモータの動力源として、二次電池モジュールが用いられている。二次電池モジュールは、繰り返し放充電を行うことが可能な複数の二次電池によって構成されている。車載用の二次電池モジュールでは、体積当たりの容量が高いリチウムイオン二次電池が用いられる。
車載用のリチウムイオン二次電池は、例えば、携帯電話、デジタルカメラ、ノートPC等の電化製品に用いられるリチウムイオン二次電池と比較して、特に長期に亘る信頼性が求められる。しかし、車載用のリチウムイオン二次電池は、他用途と比較して充放電される電流値が大きく、単位時間当たりに電極において挿入または脱離されるリチウムイオンの総量が多いため、負極表面にリチウムの析出が生じやすい。これにより、サイクル寿命特性が劣化することが知られている。
リチウムイオン電池において、負極表面でのリチウムイオンの析出を抑制し、エネルギー密度の向上およびサイクル特性の向上を図ることを課題として、負極活物質中に中位径が1μm未満であるセラミックのナノ粒子を混合する技術が知られている(下記特許文献1を参照)。特許文献1に記載のリチウムイオン電池では、セラミックとしてAl23、SiO2、ZrO2、MgO、Na2OおよびTiO2等を用いることで、負極活物質層の厚みを厚くした場合であっても負極表面でのリチウムの析出を抑制できるとしている。
特開2007−305545号公報
特許文献1で開示されている技術はリチウムの析出を抑制し、充放電サイクル寿命特性改善に効果がある。しかし、扁平に捲回されたリチウムイオン電池では、充放電に伴う負極合剤層の膨張収縮により特に合剤層の幅方向端部近傍で正極板と負極板の間隔が広がりやすく、リチウムの析出が起こりやすい傾向にある。そのため、充放電サイクル寿命特性が劣化する虞がある。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、充放電に伴う負極合剤層の膨張収縮に起因する合剤層の幅方向端部近傍での正極板と負極板の間隔の広がりを抑制することでリチウムの析出を減少させ、充放電サイクル寿命特性を改善し、長期間に亘る信頼性を向上させることができるリチウムイオン二次電池を提供することにある。
前記目的を達成すべく、本発明のリチウムイオン二次電池は、正極合剤層と正極電極箔の露出部とを有する正極電極と、負極合剤層と負極電極箔の露出部とを有する負極電極と、をセパレータを介して扁平に捲回した電極群と、電極群を収容する電池缶とを有するリチウムイオン二次電池であって、正極電極箔の露出部は、正極合剤層の幅方向外側に設けられており、正極合剤層の幅方向端縁には、正極合剤層と正極電極箔の露出部との境と、電池缶の内側面、とによって挟持された帯状部材が設けられたリチウムイオン二次電池である。
本発明のリチウムイオン二次電池によれば、充放電に伴う負極合剤層の膨張収縮の繰り返しによる電極間の間隔が広がりを防止でき、リチウムの析出が防止され、充放電サイクル寿命特性を改善して、長期間に亘る信頼性が向上したチウムイオン二次電池を提供できる。
前記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
本発明のリチウムイオン二次電池の一実施形態である角形二次電池の斜視図。 図1に示す角形二次電池の分解斜視図。 (a)は図2に示す角形二次電池の電極群の斜視図および断面図(b)は(a)に示す電極群の分解斜視図。 第二の実施例を示す概念図 図3に示す電極群の正極合剤層の幅方向端縁近傍における拡大断面図。 従来の二次電池の正極合剤層の幅方向端縁近傍における拡大断面図。
以下、本発明のリチウムイオン二次電池の一実施形態である角形二次電池について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の角形二次電池100の外観斜視図である。図2は、図1に示す角形二次電池100の分解斜視図である。図3(a)は図2に示す電極群4の斜視図および断面図であり、図3(b)は電極群4の分解斜視図である。
図1の角形二次電池100は、扁平角形の電池容器1を備えている。電池容器1は、電池缶2と電池蓋3とによって構成されている。
電池缶2は、開口部2aが形成されて上端が開放された有底角筒状の箱型容器であり、例えば、金属材料に深絞り加工を施すことによって製作される。電池缶2は、短辺と長辺がそれぞれ電池容器1の厚さ方向と幅方向に沿う長方形の底面2bと、底面2bの長辺に沿う面積が大きい一対の長方形の広側面2cと、底面2bの短辺に沿う面積が小さい一対の狭側面2dを有している。
電池蓋3は、電池缶2の開口部2aを塞ぐ平面視で長方形の板状の部材であり、開口部2aの全周に亘って、例えば、レーザ溶接によって接合されて開口部2aを密閉している。電池缶2および電池蓋3は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属材料によって製作されている。
図2は、図1に示す角形二次電池の分解斜視図である。
図2に示すように、電池蓋3に正極端子5および負極端子6が設けられることで蓋組立体が構成される。さらに、電極群4の箔露出部41c、42cが、それぞれ空洞部40aの両側の平坦部40b、40bで厚さ方向に二つに分けて束ねられて集電板55、65に接合されることで、発電要素が構成される。発電要素は、電池缶2の開口部2aから電池缶2の内部に挿入され、電池蓋3が電池缶2の開口部2aに全周に亘って封止溶接される。これにより、電極群4と集電板55、65が電池容器1の内部の所定の位置に収容配置される。
電池蓋3には、正極端子5と負極端子6との間にガス排出弁31が設けられている。ガス排出弁31は、プレス加工によって電池蓋3を部分的に薄肉化することで形成されている。なお、薄膜状の金属部材を電池蓋3に設けた貫通孔に、例えばレーザ溶接によって接合することでガス排出弁31を設けてもよい。ガス排出弁31は、角形二次電池100が過充電等の異常により発熱してガスが発生し、電池容器1内の圧力が上昇して所定圧力に達したときに開裂して、内部からガスを排出することで電池容器1内の圧力を低減させる。
さらに、電池蓋3には、電池容器1内に電解液を注入するための注液孔32が穿設されている。注液孔32は、電解液注入後に注液栓33によって封止される。非水電解液としては、例えばエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを体積比で1:2の割合で混合した混合溶液中へ六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルの濃度で溶解したものを用いることができる。
集電板55は、例えば金属板を折り曲げることによって製作され、電池蓋3の下面に沿って取り付けられ、電池容器1の幅方向端部で下方に略直角に折り曲げられた本体部と、本体部から電池缶2の底面2bに向けて下方に延びる一対の支持部56を有している。これら一対の支持部56は、電極群4の厚さ方向に二つに分けて束ねられた正極電極41の箔露出部41cに、例えば超音波溶接によって、それぞれ接合される。
同様に、集電板65は、例えば金属板を折り曲げることによって製作され、電池蓋3の下面に沿って取り付けられ、電池容器1の幅方向端部で下方に略直角に折り曲げられた本体部と、本体部から電池缶2の底面2bに向けて下方に延びる一対の支持部66を有している。これら一対の支持部66は、電極群4の厚さ方向に二つに分けて束ねられた負極電極42の箔露出部42cの接合部40dに、例えば超音波溶接によって、それぞれ接合される。
集電板55、65が不図示のガスケットを介して電池蓋3に固定され、電極群4が集電板55、65に接合されることで、電極群4が集電板55、65を介して電池蓋3に固定されている。また、電池蓋3には、集電板55を含む正極端子5と、集電板65を含む負極端子6が設けられている。
正極端子5は、外部端子51、絶縁体52、接続端子53、ボルト54、ガスケットおよび集電板55から構成され、これらは電池蓋3に一体的に固定されている。この状態において、集電板55、接続端子53および外部端子51は、互いに電気的に接続され、かつ絶縁体52およびガスケットによって電池蓋3と絶縁されている。外部端子51、絶縁体52、接続端子53、ボルト54、および集電板55は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって製作されている。
同様に、負極端子6は、外部端子61、絶縁体62、接続端子63、ボルト64、ガスケット、および集電板65から構成され、これらは電池蓋3に一体的に固定されている。この状態において、集電板65、接続端子63および外部端子61は、互いに電気的に接続され、かつ絶縁体62およびガスケットによって電池蓋3と絶縁されている。外部端子61、絶縁体62、接続端子63、ボルト64、および集電板65は、例えば、銅または銅合金によって製作されている。
絶縁体52、62およびガスケットは、例えばポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂等の絶縁性を有する樹脂材によって製作されている。
図3は、電極群の図である。(a)は図2に示す角形二次電池の電極群の斜視図および断面図(b)は(a)に示す電極群の分解斜視図である。
電池容器1の内部には、電池缶2との間に絶縁シート9を介して電極群4が収容されている。電極群4は、セパレータ43、44を介して重ねた正極電極41と負極電極42を、図示しない軸芯の周りに捲回して扁平状に成形した扁平な捲回電極群である。電極群4は、軸方向Dが電池容器1の幅方向(X軸方向)と平行になるように、電池容器1の内部に配置されている。電池容器1の幅方向と電極群4の幅方向および軸方向Dは一致し、電池容器1の厚さ方向(Y軸方向)と電極群4の厚さ方向は一致している。
電極群4は、電池蓋3の下面と電池缶2の底面2bにそれぞれ対向する一対の湾曲部40cと、電池缶2の一対の広側面2cに対向する一対の平坦部40bとを有している。正極電極41、負極電極42、およびセパレータ43、44は、平坦部40bにおいて平坦な状態で積層され、湾曲部40cにおいて半円筒状に湾曲した状態で積層されている。
正極電極41は、例えば、アルミニウム箔等からなる正極金属箔41aの表裏両面に正極合剤層41bが形成されたものである。正極合剤層41bは、一側縁に正極金属箔41aが露出された箔露出部41cを残して正極金属箔41aに塗工されている。
負極電極42は、例えば、銅箔等からなる負極金属箔42aの表裏両面に負極合剤層42bが形成されたものである。負極合剤層42bは、一側縁に負極金属箔42aが露出された箔露出部42cを残して負極金属箔42aに塗工されている。
正極電極41は、例えば、以下のように製作することができる。まず、正極活物質として層状ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(化学式Li(NixCoyMn1-x-y)O2)100重量部に対し、導電材として合計10重量部の鱗片状黒鉛やアセチレンブラックと結着剤として4重量部のポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFという)とを添加する。これに分散溶媒としてN−メチルピロリドン(以下、NMPという)を添加し、混練して正極スラリーを製作する。次に、この正極スラリーを、例えば、厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に箔露出部41cを残して塗布することで正極合剤層41bを形成する。その後、乾燥、プレス、裁断の各工程を経て、例えば、正極金属箔41aを含まない正極合剤層41bの厚さ(表裏両面の合計)が70μmの正極電極41を得ることができる。
負極合剤層42bは、例えば、以下のように製作することができる。まず、負極活物質として黒鉛質炭素粉末100重量部に対して、増粘調整剤としてカルボキシメチルセルロース(以下、CMCという)水溶液を添加、混合後に、結着剤として1重量部のスチレンブタジエンゴム(以下、SBRという)を添加し、混練後に粘度調整して負極スラリーを製作する。次に、この負極スラリーを、例えば、厚さ10μmの銅箔の両面に箔露出部42cを残して塗布することで負極合剤層42bを形成する。その後、乾燥、プレス、裁断の各工程を経て、例えば、負極電極箔42aを含まない負極合剤層42bの厚さ(表裏両面の合計)が40μmの負極電極42を得ることができる。
なお、正極活物質は、スピネル結晶構造を有する他のマンガン酸リチウムや一部を金属元素で置換又はドープしたリチウムマンガン複合酸化物や層状結晶構造を有すコバルト酸リチウムやチタン酸リチウムやこれらの一部を金属元素で置換またはドープしたリチウム-金属複合酸化物を用いるようにしてもよい。また、負極活物質は、リチウムイオンを挿入、脱離可能な天然黒鉛や、人造の各種黒鉛材、コークスなどの炭素質材料やSiやSnなどの化合物(例えば、SiO、TiSi2等)、またはそれの複合材料でもよく、その粒子形状においても、鱗片状、球状、繊維状、塊状等、特に制限されるものではない。また、結着材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、多硫化ゴム、ニトロセルロース、シアノエチルセルロース、各種ラテックス、アクリロニトリル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、フッ化プロピレン、フッ化クロロプレン、アクリル系樹脂などの重合体およびこれらの混合体などを用いることができる。
電極群4を製作するには、図示しない軸芯にセパレータ43、44の各先端部を溶着させ、正極電極41、セパレータ43、負極電極42、セパレータ44がこの順に重なるようにして捲回する。このとき、正極電極41の巻始め側端部が負極電極42の巻始め側端部よりも捲回後の電極群4の内側に位置するように、正極電極41の巻始め側端部を負極電極42の巻始め側端部よりも軸芯側に配置して捲回する。軸芯としては、例えば、正極金属箔41a、負極金属箔42a、セパレータ43、44のいずれよりも曲げ剛性の高い樹脂シートを捲回して構成したものを用いることができる。
ここで、この電極群4の軸芯と平行な方向すなわち正極電極41、負極電極42の幅方向と平行な方向を軸方向Dと定義する。この場合、正極の露出部41cと負極の露出部42cとは、電極群4の軸方向Dの一方側と他方側の側縁に位置するように配置する。すなわち、正極電極41および負極電極42は、電極群4の軸方向Dの一端と他端にそれぞれの箔露出部41c、42cが位置するように重ねられて捲回される。
電極群4の軸方向D(X軸方向)において、負極合剤層42bの幅は正極合剤層41bの幅よりも広く形成され、正極合剤層41bの幅方向端縁41eから負極合剤層42bの幅方向端縁42eを突出させた状態で、正極電極41と負極電極42はセパレータ43、44を介して重ねられる。第1のセパレータ43の幅は、電極群4の一方の側縁において、正極電極41の露出部41cが第1のセパレータ43から露出する寸法とされている。第2のセパレータ44の幅は、電極群4の他方の側縁において、負極電極42の露出部42cが第2のセパレータ44から露出する寸法とされている。
電極群4の巻始め端部、換言すれば、軸芯側には空洞部40aが形成されている。また、電極群4の巻終り端部は、最外周がセパレータ44であり、その内側が負極電極42である。従って、正極合剤層41bは、巻始め端部から巻終り端部までの全長に亘って、幅方向においてもすべての部分がセパレータ43、44を介して負極合剤層42bと重なっている。
電極群4の外周部の平坦部40bに沿って、帯状部材7が配置されている。正極合剤層41bの幅方向外側には、正極合剤層が塗工されていない未塗工部がある(露出部41c)。
正極合剤層の塗工部(正極合剤層41b)の幅方向端縁両側には、正極合剤層と正極電極箔の露出部との境と、前記電池缶の内側面、とによって挟持された帯状部材7が設けられている。
帯状部材7は、電極群4の平面上のうち、正極合剤層41bと露出部41cとの境および、負極合剤層42bと露出部42cとの境に重なるように設けけられている。本実施例では、電極群4の両面、合計4枚の帯状部材が設けられている。電池の充放電により、電極群4が、膨張した場合、合剤の端部は、帯状部材と、絶縁シート、電池缶により抑えつけられる。合剤の端部は、帯状部材と、絶縁シート、電池缶により抑えつけられることにより、正極合剤層41bの幅方向端縁41eおよびその近傍で、従来の二次電池のようなリチウムイオンの局所的な析出を防止することができる。効果の詳細は、図5,6にて後述する。
帯状部材7は、湾曲部40cにかけて設けることもできるが、集電板55、65や、電池蓋3との関係から設けないことが好ましい。したがって、帯状部材7は、電極群の幅広面の両面の平坦面について、四部材または、片面のみ二部材設けることが好ましい。
本実施形態の帯状部材7の電極群4の軸方向Dの幅は、電極群の幅方向(X軸方向)長さが117mm程度の場合、帯状部材7を電極群4の外周に配置する際の位置精度と作業性の観点から、例えば1mm以上かつ30mm以下とすることができ、例えば5mm以上かつ15mm以下であることがより好ましい。すなわち、電極群の横幅方向に対して、0.8〜26%ほど、好ましくは0.8〜13%ほどが好ましい。電池の充電放電による電極群4の膨らみは、電極群4の端部よりも中心部の方が大きくなるため、帯状部材7が大きすぎる場合、すなわち電極群の中心部に達するほどの大きさを持つ場合、中心部の膨らみを帯状部材7で抑えることになるため、合材層の幅方向端縁を電池缶と帯状部材により充分に抑えることができない可能性がでる。逆に、帯状部材の幅が小さすぎる場合、帯状部材の位置がずれた時に、合材層の幅方向端縁を抑えることができなくなる可能性がある。
帯状部材7の厚さは、電極群の厚さが10mmほどの場合、電池容器1の内部空間を有効に活用する観点から、前記の弾性力を電極群4に作用させることができる範囲で、可能な限り薄いことが好ましく、例えば0.1mm以上かつ0.5mm以下とすることができる。すなわち、電極群に対して、1〜5%の範囲が好ましい。
なお、電池容器1の幅方向(X軸方向)、すなわち電極群4の軸方向Dにおける帯状部材7の幅および配置は、電極群4の箔露出部41c、42cを露出させることができ、かつ、正極合材層41bの幅方向端縁41eよりも幅方向内側から幅方向端縁41eまでの部分に重なる幅および配置であれば、特に制限はない。
電極群4は、軸方向Dの一端と他端の箔露出部41c、42cが、それぞれ空洞部40aの両側の平坦部40b、40bで厚さ方向に二つに分けて束ねられ、集電板55、65に接合される。したがって、帯状部材7が正極合材層41bの幅方向端縁41eよりも幅方向外側までを覆う場合に、帯状部材7が幅方向端縁41eから幅方向外側に突出する幅は、例えば1mm以上かつ2mm以下であることが好ましい。これにより、電極群4の箔露出部41c、42cを集電板55、65に溶接する際の作業性が低下することを防止できる。また、帯状部材7は、電極群4の径方向(Y軸方向)の両側に配置しても良い。
帯状部材7は、弾性限界が比較的大きいゴム等の弾性樹脂材料によって製作され、幅広面に配置される部材である。
帯状部材7の材料は、電極群と接しており、さらに絶縁シート9を介して電池缶と接触した状態で、角形二次電池100の充放電に伴う電極群4の膨張収縮による径方向の寸法変化に追従して弾性変形し、電池缶から電極群4を構成する正極電極41および負極電極42を径方向内側に締め付ける力を付与できるものを選択する。ただし、帯状部材7が電極群4に付与する径方向内側の力は、帯状部材7が電極群4に食い込むような大きな力である必要はなく、電極群4の膨張収縮に伴う正極電極41、負極電極42の塑性変形を抑制できる大きさの力であればよい。
このような要求を満たす帯状部材7の材料として、例えば、合成樹脂および合成ゴムを用いることができる。合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、およびポリウレタンを用いることができる。合成ゴムとしては、例えば、シリコンゴムおよびブチルゴムを用いることができる。
帯状部材7は例えば、帯状部材7の一方面を粘着層とすることで、電極群に固定することができる。帯状部材7を、電極群4の外周の所定の位置に密着させて配置することができる。また、粘着層は、必ずしも電極群側に設ける必要はなく、例えば、電池缶側に設け、電極群の電池缶への挿入前に、電池缶に帯状部材を設けておくこともできる。
また、必ずしも粘着面がなくとも、電極群の電池缶への挿入時に帯状部材が所定の位置に設けられるよう位置決めすることができれば問題ない。
図4は第二の実施例を示す概念図である。
本実施例では、帯状部材7を電極群において、片面に設けた。帯状部材7は、実施例1のように電極群4の径方向の両面側に配置してもよいが、必ずしも一対の帯状部材7を設ける必要はなく、一方面の正極合材層41bの幅方向端縁41eおよび、同一面上の他方の幅方向端縁41eを覆う、合計2枚の帯状部材7を設けても構わない。
両面に帯状部材を設ける場合、電極群の膨張により電池缶と帯状部材により合材層の幅方向端縁を抑えることができる。片面にのみ設ける場合は、電極群の膨張により、合材層の幅方向端縁が抑えられるよう帯状部材の厚さ、または、電池缶内での電極群の位置等を調節する必要がある。
帯状部材7は、湾曲部40cにかけて設けることもできるが、集電板55、65や、電池蓋3との関係から設けないことが好ましい。したがって、帯状部材7は、電極群の幅広面の両面の平坦面について、二部材または、片面のみ一部材設けることが好ましい。
以下、本実施形態の角形二次電池100の作用について、図5および図6を用いて説明する。
図5は、本実施形態の角形二次電池100の電極群4の正極合剤層41bの幅方向端縁41e近傍における正極電極41と負極電極42の拡大断面図である。図6は、従来の二次電池の正極合剤層941bの幅方向端縁941e近傍における正極電極941と負極電極942の拡大断面図である。
図5では、図3(a)に示す電極群4を幅方向および厚さ方向に平行な面(XY平面)で切断し、正極電極41の正極合剤層41bの幅方向端縁41eの近傍を拡大して表している。図5のY軸の正方向側は空洞部40aが位置する電極群4の内周側であり、Y軸の負方向側は帯状部材7が位置する電極群4の外周側である。図示は省略するが、正極電極41のY軸正方向側にはセパレータ44を介して負極電極42が積層され、負極電極42のY軸負方向側にはセパレータ44を介して正極電極42が積層されている。
前述のように、電極群4の軸方向D(X軸方向)において、負極合剤層42bの幅は正極合剤層41bの幅よりも広く形成され、正極合剤層41bの幅方向端縁41eから負極合剤層42bの幅方向端縁42eを突出させた状態で、正極電極41と負極電極42はセパレータ43、44を介して重ねられている。そのため、図5に示すように、正極合剤層41bの幅方向端縁41eよりも幅方向外側では、負極電極42の厚さ方向(Y軸方向)に空間が形成されている。
角形二次電池100の充放電時には、正極合剤層41bに含まれる正極活物質から放出されたリチウムイオンが負極合剤層42bに含まれる負極活物質に吸蔵され、また、その逆の反応が生じる。負極活物質は、それぞれリチウムイオンを吸蔵、放出することで膨張、収縮し、これによって負極合剤層42bが膨張、収縮する。負極合剤層42bの膨張、収縮に伴って、正極電極41、負極電極42の間隔が変化する。
図6に示す従来の二次電池では、正極電極941、負極電極942の周囲に帯状部材7が配置されていない。そのため、負極合剤層942bの膨張、収縮に伴って、正極電極941、負極電極942の間隔が変化すると、正極電極941と負極電極942との間隔Gが局所的に拡大する場合がある。この局所的な間隔Gの拡大は、例えば、正極合剤層41bの幅方向端縁41eよりも幅方向外側(図においてX軸正方向側)に突出した負極合剤層942bが厚さ方向(Y軸方向)に膨張、収縮を繰り返すことによって発生する。
正極合剤層941bの幅方向端縁941eよりも幅方向内側(図においてX軸負方向側)では、正極合剤層941bと負極合剤層942bがセパレータ943を介して厚さ方向に積層されている。そのため、負極合剤層942bは厚さ方向に自由に膨張することができず、厚さ方向の膨張が抑制され、正極電極941と負極電極942との間隔Gは、変化が少ない。しかし、正極合剤層941bの幅方向端縁941eよりも幅方向外側に突出した負極合剤層942bは、厚さ方向に空間が形成されているため、厚さ方向に自由に膨張する。
この正極合剤層941bの幅方向端縁941eの幅方向外側の空間において負極合剤層942bが厚さ方向に膨張、収縮を繰り返すことで、正極金属箔941a、正極合剤層941b、負極金属箔942a、負極合剤層942bに歪みが蓄積される。これにより、正極電極941と負極電極942との間隔Gが局所的に拡大する虞がある。また、正極電極941、負極電極942に蓄積された歪みが、正極合剤層941b、負極合剤層942bの収縮時にも残存して元に戻らない状態になる虞がある。
このような状態になると、正極合剤層941bの幅方向端縁941eおよびその近傍で、正極電極941と負極電極942との間隔Gが局所的に拡大し、正極電極941と負極電極942との間隔Gが不均一になる。すると、間隔Gが局所的に縮小した部分において、正極電極941と負極電極942との間の電位差である電位勾配が急峻になり、リチウムイオンの移動が集中することで、リチウムイオンの析出が起こりやすくなる。逆に、間隔Gが局所的に拡大した部分では、電位勾配が緩やかになり、リチウムイオンの移動が減少する。したがって、図6に示す従来の二次電池では、正極合剤層941bの幅方向端縁941eおよびその近傍でリチウムイオンの析出が発生しやすく、二次電池の長期間に亘る信頼性を向上させることが困難であった。
これに対し、本実施形態の角形二次電池100は、図3(a)に示すように、弾性を有した帯状部材が電極群の外周の正極合剤層41bの幅方向端縁41eに重なる位置に配置され、電池缶と接触し弾性変形した状態で電極群と共に電池缶内に挿入されている。これにより、図5に示すように、正極合剤層41bの幅方向端縁41eおよびその近傍の負極電極42に対して、電極群4の径方向内側(図5においてY軸正方向)を向く力Fが作用する。この帯状部材7の弾性力に基づく力Fによって、正極合剤層41bの幅方向端縁41eの幅方向外側の空間において負極合剤層42bが厚さ方向に膨張、収縮する際の歪みが抑制される。
これにより、正極金属箔41a、正極合剤層41b、負極金属箔42a、負極合剤層42bに歪みが蓄積することが防止され、正極電極41と負極電極42との間隔Gが均一になる。そのため、正極合剤層41bの幅方向端縁41eおよびその近傍で、従来の二次電池のようなリチウムイオンの局所的な析出を防止できる。したがって、本実施形態の角形二次電池100によれば、負極活物質の組成や電池の正常な制御に影響を与えることなく、長期間に亘る信頼性を向上させることができる。
また、本実施形態の角形二次電池100において、帯状部材7は、電極群4の外周で正極合剤層41bの幅方向端縁41eの幅方向内側から幅方向外側まで連続している。そのため、正極合剤層41bの幅方向端縁41eの外側に突出した部分の負極電極42に対し、電極群4の径方向側を向く力Fが作用する。これにより、負極電極42の当該部分が電極群4の径方向外側へ変形することが抑制され、正極金属箔41a、正極合剤層41b、負極金属箔42a、負極合剤層42bに歪みが蓄積することをより効果的に防止できる。
また、図5では正極合剤層41bの幅方向片側のみを拡大して示しているが、角形二次電池100は、正極合剤層41bの両側の幅方向端縁41e、41eにそれぞれ重なる一対の帯状部材7、7を設けることができる。すなわち、正極合剤層41bの幅方向の両端側の端縁に、前記正極合剤層の塗工部と前記正極合剤層の未塗工部との境と、前記電池缶、によって挟持された帯状部材7を設けることができる。これにより、各帯状部材7によって、正極合剤層41bの両側の幅方向端縁41e、41eおよびその近傍の負極合剤層42bに対して、電極群4の径方向内側を向く力Fを集中的に作用させることができる。したがって、正極合剤層41bの両側の幅方向端縁41e、41eおよびその近傍において、正極金属箔41a、正極合剤層41b、負極金属箔42a、負極合剤層42bに歪みが蓄積することをより効果的に防止できる。また、電池容器1の内部空間における帯状部材7の占有スペースを最小化することができるだけでなく、材料の使用量も削減することができる。
また、本実施形態の角形二次電池100は、扁平形状の電極群4を収容する扁平角形の電池容器1を備えることで、電池モジュールを構成する際の角形二次電池100の体積効率を向上させることができる。したがって、本実施形態の角形二次電池100を用いることで、車載用途等に適した小型化された電池モジュールを提供することができる。
また、本実施形態の角形二次電池100では、帯状部材7が弾性限界の比較的大きいゴム等の弾性樹脂材料によって構成されている。そのため、帯状部材7によって電極群4に過度な力が加えられることが防止され、正極電極41と負極電極42の距離を均一に維持する適度な力Fを付与することができる。
また、帯状部材7の電極群4と接する面は粘着層を有している構成することで、前記したように、帯状部材7を電極群4の外周の所定の位置に密着させて配置することができる。したがって、正極合剤層41bの幅方向端縁41eおよびその近傍において、正極電極41、負極電極42に電極群4の径方向内側に向く適度な力Fを確実に付与することができる。
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。例えば、二次電池モジュールを構成する角形二次電池の接続は直列に限られず、必要とされる二次電池モジュールの性能に応じて直列、並列を適宜変更することができる。
2…電池容器、4…電極群、7…帯状部材、9…絶縁シート、41…正極電極、41b…正極合剤層、41e…正極合剤層の幅方向端縁、42…負極電極、42b…負極合剤層、42e…負極合剤層の幅方向端縁、43…セパレータ、44…セパレータ、100…角形二次電池(リチウムイオン二次電池)

Claims (5)

  1. 正極合剤層と正極電極箔の露出部とを有する正極電極と、
    負極合剤層と負極電極箔の露出部とを有する負極電極と、をセパレータを介して扁平に捲回した電極群と、
    前記電極群を収容する電池缶とを有するリチウムイオン二次電池であって、
    前記正極電極箔の露出部は、前記正極合剤層の幅方向外側に設けられており、
    前記正極合剤層の幅方向端縁には、前記正極合剤層と前記正極電極箔の露出部との境と、前記電池缶の内側面、とによって挟持された帯状部材が設けられ、
    前記帯状部材と前記正極合剤層との間には前記負極合剤層が配置され、
    前記帯状部材の幅は、5mm以上15mm以下であり、
    前記帯状部材の幅方向外側端部は、前記負極合剤層の幅方向外側端部と前記正極合剤層の幅方向外側端部との間に配置されることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  2. 請求項1において、
    前記帯状部材は、前記電極群の両幅広面に設けられたリチウムイオン二次電池。
  3. 請求項1または請求項2において、
    前記帯状部材は、弾性樹脂材料によって構成されているリチウムイオン二次電池。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、
    前記帯状部材の前記電極群と接する面は粘着層を有したリチウムイオン二次電池。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかにおいて、
    前記帯状部材の前記電池缶と接する面は粘着層を有した構成とされているリチウムイオン二次電池。
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