以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明するが、まず「(1)床版取替え装置」で、本発明の実施形態に係る床版取替え装置の各実施形態について説明し、それから、「(2)床版取替え工法」で、本発明の実施形態に係る床版取替え装置を用いた床版取替え工法について説明する。
(1)床版取替え装置
(1−1)第1実施形態に係る床版取替え装置
本発明の第1実施形態に係る床版取替え装置は、橋梁の既設床版の横断面方向の断面のうちの一部の断面に相当する部位の既設床版の撤去を行うことができ、また、撤去した既設床版が架設されていた位置に新設床版を架設することができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る床版取替え装置10を用いて橋梁の床版の取替えを行っている状況を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る床版取替え装置10を用いて橋梁の床版の撤去を行っている状況を模式的に示す橋軸直角方向から見た側面図であり、図3は、図2のIII−III線断面図である。図4は、床版取替え装置10を中心に拡大した図3の拡大断面図であり、図5は橋軸直角方向から見た第1実施形態に係る床版取替え装置10の端部近傍の拡大側面図である。
本第1実施形態の床版取替え装置10の説明においては、図1に示す片側2車線の橋梁100の1車線分の横断方向の幅の領域内(進行方向が図1の斜め左下方向となる2つの車線のうち、橋梁100の橋軸直角方向中央寄りの車線である車線Aの横断方向の幅の領域内)に床版取替え装置10を設置するものとする。したがって、本第1実施形態の床版取替え装置10を用いて橋梁100の車線Aの床版の取替えを行っているときでも、残りの3車線(車線B、C、D)については、図1に示すように供用可能である。
橋梁100は、橋脚102と、主桁104と、既設床版106とを有してなり、また、橋脚102の上端部には支承108が備えられている。支承108の上部は主桁104の下面に連結しており、支承108は主桁104を含む橋梁100の上部構造を下方から支持して、橋梁100の上部構造の重量を橋脚102に伝達する。したがって、支承108の位置は、橋梁100の主桁104の支点となる。
図1に示すように、本第1実施形態の床版取替え装置10を用いて、橋梁100の既設床版106の横断面方向の断面のうちの一部の断面に相当する部位の既設床版106の撤去を行うとともに、撤去した既設床版106が架設されていた位置に新設床版200を架設することができる。即ち、本第1実施形態の床版取替え装置10を用いることにより、既設床版106の撤去と新設床版200の架設を同時期に行うこともできる。なお、橋梁100における橋軸方向および橋軸直角方向のことを、それぞれ単に橋軸方向および橋軸直角方向と記すことがある。
本第1実施形態に係る床版取替え装置10は、脚部12と、フレーム部14と、レール(軌道部材)16と、長尺移動部材18と、吊り上げ手段20とを有してなる。
脚部12は、橋梁100の橋面上に配置されて、床版取替え装置10全体の重量を橋梁100に伝達して、床版取替え装置10全体を支持する。
脚部12は、図1に示すように、橋梁100の橋面上に略橋軸直角方向に対向するように配置されて対となっている。略橋軸直角方向に対向するように配置されて対となっている脚部12は、図1に示すように、略橋軸方向に2対配置されている。したがって、本第1実施形態に係る床版取替え装置10は、脚部12を合計で4つ備えている。
脚部12は、橋梁100に加える力の作用点が、図2に示すように、橋梁100の橋脚102の鉛直方向上方に位置するように橋梁100の橋面上に配置されている。したがって、脚部12がそれぞれ橋梁100に加える力の各作用点の鉛直方向下方の位置に鉛直荷重伝達のための部材(例えばサンドル等)を橋脚102の上面と既設床版106の下面との間に配置することにより、曲げモーメントを主桁104にほとんど発生させずに、床版取替え装置10の重量ならびに床版取替え装置10が吊り上げている既設床版106および新設床版200の重量(以下、床版取替え装置10等の重量と記すことがある。)による鉛直荷重を橋脚102に伝達することができる。また、脚部12が橋梁100に加える力の作用点の鉛直方向下方に、隣り合う主桁104を連結する横桁が存在する場合には、該横桁の上面と既設床版106の下面との間および該横桁の下面と橋脚102の上面との間に必要に応じて鋼材等を挿入することで、床版取替え装置10等の重量による鉛直荷重を橋脚102に伝達することができる(ここで、「必要に応じて鋼材等を挿入する」とは、前記横桁の上面と既設床版106の下面との間や前記横桁の下面と橋脚102の上面との間に隙間がある場合に、該隙間に鋼材等を挿入するということである。)。
したがって、本第1実施形態の床版取替え装置10を用いて、橋梁100の既設床版106の撤去および橋梁100への新設床版200の架設を行っているときに橋梁100の主桁104に加わる負荷は、従来の工法を用いる場合よりも低減されており、主桁104の補強を不要にすることができる。
脚部12が橋梁100に加える力の作用点が橋梁100の橋脚102の支承108(主桁104の支点)の鉛直方向上方に位置している場合には、鉛直荷重伝達のための部材(例えばサンドル等)を橋脚102の上部に配置しなくても、主桁104に曲げモーメントをほとんど発生させずに、床版取替え装置10等の重量による鉛直荷重を、脚部12から主桁104および支承108を介して橋脚102に伝達させることができる。
したがって、脚部12が橋梁100に加える力の作用点が橋梁100の橋脚102の支承108(主桁104の支点)の鉛直方向上方に位置するように脚部12を配置させることが、追加の部材を必要としない点および曲げモーメントを主桁104にほとんど発生させない点で好ましい。
なお、図1、図3、および図4において、仮設防護柵300は、車線A(図1参照)において床版取替え工事を行っている期間においても、車線B(図1参照)の供用を安全に行うために設けられた防護柵である。
図4および図5を用いて、脚部12の詳細な構造について説明する。脚部12は、詳細には、サンドル固定架台12Aと、サンドル12Bと、沓座12Cと、沓12Dとを有してなる。
サンドル固定架台12Aは、サンドル12Bを固定するとともに、橋梁100の橋面から受ける反力を分散する。サンドル固定架台12Aには、例えばH形鋼を用いることができる。
サンドル12Bは、脚部12の本体部であり、脚部12の全体の高さを調整して、脚部12の全体の必要な高さを確保する。沓座12Cおよび沓12Dは、フレーム部14とサンドル12Bとの間に設けられていて、フレーム部14と脚部12とをある程度の自由度を持たせて連結し、温度変化や風、地震などによって生じる橋梁100のたわみを吸収できるようにしている。沓座12Cには、例えばH形鋼等を用いることができる。
フレーム部14は、橋梁100の橋軸方向と略平行な略鉛直面内に形成された略橋軸方向に延びる2つの側面トラス14Aと、2つの側面トラス14Aの上端部を連結する天井梁14Bとを有してなる。2つの側面トラス14Aは、略橋軸直角方向に対向するように配置されている。天井梁14Bはその両端部が2つの側面トラス14Aの上端部の上に位置するように配置されていて、天井梁14Bの長手方向は略橋軸直角方向になっている。2つの側面トラス14Aと天井梁14Bとの連結はボルト等による機械的な接合でなされている。また、天井梁14Bの下面には、2つのレール(軌道部材)16が橋軸直角方向に所定の間隔を開けてボルト等による機械的な接合で取り付けられている。なお、2つの側面トラス14Aと天井梁14Bとの連結方法、および2つのレール(軌道部材)16と天井梁14Bとの連結方法は特には限定されず、溶接による連結でもよい。
フレーム部14は、図1に示すように、2対の脚部12のうちの1対の脚部12に一端部近傍を支持され、2対の脚部12のうちのもう1対の脚部12に他端部近傍を支持されている。フレーム部14は、図1に示すように、略橋軸方向に延びている。
フレーム部14の2つの側面トラス14Aの下端部が、脚部12の上端部の沓12Dに取り付けられていて、フレーム部14は脚部12に連結されている。
フレーム部14の両端部付近を支持する2対の脚部12の橋軸方向の間隔は、主桁104の長さ程度あるので、フレーム部14の橋軸方向の長さは長くなる。また、フレーム部14の両端部付近を支持する2対の脚部12の橋軸方向の間隔が主桁104の長さ程度あることから、吊り上げた既設床版106および新設床版200の鉛直方向下向きの重量によってフレーム部14全体に加わる曲げモーメントは大きくなる。しかしながら、フレーム部14は2つの側面トラス14Aを備えているので、吊り上げた既設床版106および新設床版200の鉛直方向下向きの重量がフレーム部14に加わっても十分に支持することができる。なお、吊り上げた既設床版106および新設床版200の鉛直方向下向きの重量を十分に支持することができるのであれば、フレーム部14をトラス構造を備えない構造としてもよく、例えば、フレーム部14を桁構造を備える構造としてもよい。
レール(軌道部材)16は、略橋軸方向に延びている2本の長尺部材であり、橋軸直角方向に所定の間隔を開けて、フレーム部14の天井梁14Bの下面に取り付けられている。レール(軌道部材)16としては、例えば、H形鋼を用いることができる。
長尺移動部材18は、2つのレール(軌道部材)16の間を略橋軸直角方向に架け渡すように、かつ、2つのレール(軌道部材)16に沿って略橋軸方向に移動可能なように、2つのレール(軌道部材)16に取り付けられている。即ち、長尺移動部材18は、長手方向が略橋軸直角方向となるように、かつ、2つのレール(軌道部材)16に沿って略橋軸方向に移動可能なように、その両端部が2本のレール(軌道部材)16に取り付けられており、長尺移動部材18は、図示せぬ動力源から動力を供給されることで略橋軸方向に移動できるようになっている。長尺移動部材18としては、例えばH形鋼を用いることができる。
吊り上げ手段20は、長尺移動部材18の長手方向に移動可能なように長尺移動部材18に取り付けられている。したがって、吊り上げ手段20は、略橋軸方向および略橋軸直角方向の両方向に移動可能である。
吊り上げ手段20は、吊り上げ対象物(既設床版106および新設床版200)を吊り上げて上昇させるとともに、所定の位置において下降させて所定の位置に載置させる。吊り上げ手段20は、吊り上げ対象物を吊り上げるためのフック20Aを備えており、かつ、図示せぬ動力源から動力を供給されることで、フック20Aを上下に移動させることができるようになっており、吊り上げ対象物の上昇と下降を行うことができるようになっている。また、吊り上げ手段20は、図示せぬ動力源から動力を供給されることで、フック20Aを略鉛直軸回りに回動させることができるようになっており、フック20Aによって吊り上げられている吊り上げ対象物を回動させて、吊り上げ対象物の向きを所定の向きに変更することができるようになっている。
吊り上げ手段20が既設床版106を十分な高さに吊り上げている状態で、長尺移動部材18をトラック202の荷台の位置まで略橋軸方向に移動させ、その後、吊り上げ手段20が既設床版106を下降させることで、橋梁100から切り出した既設床版106をトラック202に積み込むことができる。
また、吊り上げ手段20がトラック204から新設床版200を吊り上げている状態で、長尺移動部材18を略橋軸方向に移動させることで新設床版200を橋梁100の所定の位置に架設することができる。
なお、前述したように、吊り上げ手段20は、長尺移動部材18の長手方向に移動可能なように長尺移動部材18に取り付けられているので、略橋軸直角方向に移動できるようになっており、吊り上げ手段20は、吊り上げ対象物の橋軸直角方向の位置を調整することもできるようになっている。
図6は、撤去する既設床版106を吊り上げた直後の状態の横断面方向の鉛直断面図であり、図7は、吊り上げた既設床版106を90°回動させて向きを変えた後、トラック202に向けて略橋軸方向に移動している状態の横断面方向(脚部12を切断するような横断面方向)の鉛直断面図である。
図6に示すように、撤去する既設床版106の橋軸直角方向の幅は、床版取替え装置10のフレーム部14の橋軸直角方向の幅よりも大きくなっているが、フレーム部14は脚部12の上端部に取り付けられているため、フレーム部14の下端部と橋梁100の橋面との間には脚部12の高さ程度の空間がある。このため、撤去する既設床版106の橋軸直角方向の幅が、床版取替え装置10のフレーム部14の橋軸直角方向の幅よりも大きくなっていても、撤去する既設床版106を吊り上げることができる。
吊り上げ手段20で吊り上げた既設床版106は、吊り上げ手段20によって回動させて、向きを90°変えてから、図7に示すように、トラック202(図1、図2参照)に向けて略橋軸方向に移動させて、トラック202の荷台に積み込む。
(1−2)第2実施形態に係る床版取替え装置
図8は、本発明の第2実施形態に係る床版取替え装置30を用いて橋梁の床版の撤去を行っている状況を模式的に示す橋軸直角方向から見た側面図である。
本発明の第2実施形態に係る床版取替え装置30は、第1実施形態に係る床版取替え装置10に主桁支持材32をさらに備えさせた実施形態である。第1実施形態に係る床版取替え装置10と同一の構成については同一の符号を付し、説明は省略する。
主桁支持材32は、吊り材32Aと、水平支持部材32Bとを有してなり、主桁104を上方から支持して主桁104に加わる鉛直荷重の負担を低減させる。
吊り材32Aは、上端部がフレーム部14の側面トラス14Aに連結され、下端部が水平支持部材32Bと連結している。吊り材32Aとしては、例えばφ30程度のPC鋼棒等を用いることができる。
水平支持部材32Bは、例えばH形鋼等からなる長尺部材であり、両端部がそれぞれ吊り材32Aの下端部に連結されていて、長手方向が橋梁100の略橋軸直角方向となるように、吊り材32Aによって吊られている。また、水平支持部材32Bの配置位置は、主桁104の下方であり、水平支持部材32Bは主桁104を下方から支持して、主桁104に加わる鉛直荷重の負担を低減させる。
橋梁100の主桁104と既設床版106とが強固に連結されていて合成桁を構成している場合等、既設床版106を撤去すると主桁104の耐力が不足する場合も想定されるが、このような場合には、主桁支持材32によって主桁104を上方から支持して主桁104に加わる鉛直荷重の負担を低減させることで、既設床版106の撤去を安全に行うことができる。
図9は、本第2実施形態に係る床版取替え装置30の主桁支持材32をフレーム部14の側面トラス14Aに取り付ける前の状況を示す横断面方向の鉛直断面図であり、図10は、本第2実施形態に係る床版取替え装置30の主桁支持材32をフレーム部14の側面トラス14Aに取り付けて主桁104を上方から支持した後、既設床版106を吊り上げ手段20で吊り上げた状態を示す横断面方向の鉛直断面図である。
主桁支持材32の吊り材32Aを配置する際に干渉してしまう地覆高欄部110(図9参照)は事前に撤去する。また、横断方向中央部の既設床版106には貫通孔112(図9参照)を設けて吊り材32Aが挿通できるようにする。
(1−3)第3実施形態に係る床版取替え装置
図11は本発明の第3実施形態に係る床版取替え装置40の横断面方向(沓46を切断するような横断面方向)の鉛直断面図であり、図12は橋軸直角方向から見た第3実施形態に係る床版取替え装置40の端部近傍の拡大側面図である。
本発明の第3実施形態に係る床版取替え装置40は、第1実施形態に係る床版取替え装置10のフレーム部14をフレーム部42に変更して脚部12を廃止した実施形態である。第1実施形態に係る床版取替え装置10と同一の構成については同一の符号を付し、説明は省略する。
第1実施形態に係る床版取替え装置10のフレーム部14は脚部12で下方から支持されていたが、本第3実施形態に係る床版取替え装置40においては、フレーム部42の側面トラス42Aに、トラス構造に類似した構造である脚部42Cを設け、側面トラス42A内に脚部42Cが一体的に含まれる構造となるように構成して、脚部12を廃止した。
また、橋軸直角方向に対向する脚部42C同士の間には、それらの下端部の間に横支材42Dを設けて構造の安定を図っている。安全が確認できれば、横支材42Dは設けなくてもよい。
側面トラス42Aのうち脚部42C以外の部位は第1実施形態に係る床版取替え装置10の側面トラス14Aに対応し、同様の働きをし、天井梁42Bは第1実施形態に係る床版取替え装置10の天井梁14Bに対応し、同様の働きをする。
フレーム部42の脚部42Cと橋梁100の橋面との間には沓座44および沓46が設けられていて、フレーム部42の脚部42Cと橋梁100の橋面とをある程度の自由度を持たせて連結し、温度変化や風、地震などによって生じる橋梁100のたわみを吸収できるようにしている。沓座44には、例えばH形鋼等を用いることができる。
本発明の第3実施形態に係る床版取替え装置40では、第1実施形態に係る床版取替え装置10の脚部12に替えて、フレーム部42に脚部42Cを設けており、脚部がフレーム部42と一体化した構造となっているので、転倒などに対する安全性が第1実施形態に係る床版取替え装置10よりも向上している。
なお、第2実施形態に係る床版取替え装置30のように、本第3実施形態に係る床版取替え装置40においても主桁支持材32を備えさせることができる(第3実施形態に係る床版取替え装置40の変形例)。
(1−4)第4実施形態に係る床版取替え装置
図13は本発明の第4実施形態に係る床版取替え装置50の横断面方向(沓46を切断するような横断面方向)の鉛直断面図であり、図14は橋軸直角方向から見た第4実施形態に係る床版取替え装置50の端部近傍の拡大側面図である。
本発明の第4実施形態に係る床版取替え装置50は、第3実施形態に係る床版取替え装置40のフレーム部42(フレーム部42は脚部42Cを備える。)を、脚部の機能も有するフレーム部52に変更して脚部42Cを廃止した実施形態である。第1および第3実施形態に係る床版取替え装置10、40と同一の構成については同一の符号を付し、説明は省略する。
第3実施形態に係る床版取替え装置40では、第1実施形態に係る床版取替え装置10の脚部12に替えて、フレーム部42に脚部42Cを設けて、脚部とフレーム部とを一体化させた構造にして、転倒などに対する安全性を第1実施形態に係る床版取替え装置10よりも向上させているが、本第4実施形態に係る床版取替え装置50では、フレーム部52自体が脚部の機能も備えることでさらに安全性を向上させている。
本第4実施形態に係る床版取替え装置50においては、橋梁100の橋面上に設置された沓座44および沓46と連結する両端部付近においては高さの高い側面トラス52Aにしており、両端部以外のフレーム部52の側面は、第1および第3実施形態に係る床版取替え装置10、40と同様の高さの側面トラス(図示せず)を上辺の部材の高さが側面トラス52Aの上辺の部材の高さと同一になるように配置している。フレーム部52をこのような構成にすることにより、フレーム部52自体が脚部の機能も備えることになる。
また、橋軸直角方向に対向する側面トラス52A同士の間には、それらの下端部の間に横支材52Cを設けて構造の安定を図っている。安全が確認できれば、横支材52Cは設けなくてもよい。
本第4実施形態に係る床版取替え装置50の天井梁52Bは床版取替え装置10、40の天井梁14B、42Bに対応しており、同様の働きをする。
なお、第2実施形態に係る床版取替え装置30のように、本第4実施形態に係る床版取替え装置50においても主桁支持材32を備えさせることができる(第4実施形態に係る床版取替え装置50の変形例)。
(1−5)第5実施形態に係る床版取替え装置
本発明の第5実施形態に係る床版取替え装置は、橋梁の既設床版の横断面方向の全断面に相当する部位の既設床版の撤去を行うとともに、撤去した既設床版が架設されていた位置に新設床版を架設することができる。
図15は、本発明の第5実施形態に係る床版取替え装置60を用いて橋梁の床版の取替えを行っている状況を模式的に示す斜視図である。図16は、本発明の第5実施形態に係る床版取替え装置60を用いて橋梁の床版の撤去を行っている状況を模式的に示す橋軸直角方向から見た側面図である。
本第5実施形態の床版取替え装置60を用いて床版取替え工事を行う橋梁150は、橋脚152と、主桁154と、既設床版156とを有してなり、また、橋脚152の上端部には支承158が備えられている。支承158の上部は主桁154の下面に連結しており、支承158は主桁154を含む橋梁150の上部構造を下方から支持して、橋梁150の上部構造の重量を橋脚152に伝達する。したがって、支承158の位置は、橋梁150の主桁154の支点となる。
図15に示すように、本第5実施形態の床版取替え装置60を用いて、橋梁150の既設床版156の横断面方向の全断面に相当する部位の既設床版156の撤去を行うとともに、撤去した既設床版156が架設されていた位置に新設床版250を架設することができる。即ち、本第5実施形態の床版取替え装置60を用いることにより、既設床版156の撤去と新設床版250の架設を同時期に行うこともできる。なお、橋梁150における橋軸方向および橋軸直角方向のことを、それぞれ単に橋軸方向および橋軸直角方向と記すことがある。
本第5実施形態に係る床版取替え装置60は、脚部62と、フレーム部64と、レール(軌道部材)66と、長尺移動部材68と、吊り上げ手段70とを有してなる。
脚部62は、橋梁150の橋面上に配置されて、床版取替え装置60全体の重量を橋梁150に伝達して、床版取替え装置60全体を支持する。
脚部62は、図15に示すように、橋梁150の橋面上に略橋軸直角方向に対向するように配置されて対となっている。図15に示すように、略橋軸直角方向に対向するように配置されて対となっている脚部62は、橋梁150の有効幅員の両端部近傍にそれぞれ配置されている。また、図15に示すように、略橋軸直角方向に対向するように配置されて対となっている脚部62は、略橋軸方向に2対配置されている。したがって、本第5実施形態に係る床版取替え装置60は、脚部62を合計で4つ備えている。
脚部62は、橋梁150に加える力の作用点が、図16に示すように、橋梁150の橋脚152の鉛直方向上方に位置するように橋梁150の橋面上に配置されている。したがって、脚部62がそれぞれ橋梁150に加える力の各作用点の鉛直方向下方の位置に鉛直荷重伝達のための部材(例えばサンドル等)を橋脚152の上面と既設床版156の下面との間に配置することにより、曲げモーメントを主桁154にほとんど発生させずに、床版取替え装置60の重量ならびに床版取替え装置60が吊り上げている既設床版156および新設床版250の重量(以下、床版取替え装置60等の重量と記すことがある。)による鉛直荷重を橋脚152に伝達することができる。また、脚部62が橋梁150に加える力の作用点の鉛直方向下方に、隣り合う主桁154を連結する横桁が存在する場合には、該横桁の上面と既設床版156の下面との間および該横桁の下面と橋脚152の上面との間に必要に応じて鋼材等を挿入することで、床版取替え装置60等の重量による鉛直荷重を橋脚152に伝達することができる(ここで、「必要に応じて鋼材等を挿入する」とは、前記横桁の上面と既設床版156の下面との間や前記横桁の下面と橋脚152の上面との間に隙間がある場合に、該隙間に鋼材等を挿入するということである。)。
したがって、本第5実施形態の床版取替え装置60を用いて、橋梁150の既設床版156の撤去および橋梁150への新設床版250の架設を行っているときに橋梁150の主桁154に加わる負荷は、従来の工法を用いる場合よりも低減されており、主桁154の補強を不要にすることができる。
脚部62が橋梁150に加える力の作用点が橋梁150の橋脚152の支承158(主桁154の支点)の鉛直方向上方に位置している場合には、鉛直荷重伝達のための部材(例えばサンドル等)を橋脚152の上部に配置しなくても、主桁154に曲げモーメントをほとんど発生させずに、床版取替え装置60等の重量による鉛直荷重を、脚部62から主桁154および支承158を介して橋脚152に伝達させることができる。
したがって、脚部62が橋梁150に加える力の作用点が橋梁150の橋脚152の支承158(主桁154の支点)の鉛直方向上方に位置するように脚部62を配置させることが、追加の部材を必要としない点および曲げモーメントを主桁154にほとんど発生させない点で好ましい。
なお、脚部62の構造は、第1実施形態の床版取替え装置10の脚部12の構造と同様であるので、脚部62の詳細な構造の説明は省略する。
また、第3実施形態のフレーム部42を本第5実施形態のフレーム部64に替えて用いることもでき、この場合、フレーム部42が脚部42Cを備えているので、脚部62は不要となる。
また、第4実施形態のフレーム部52を本第5実施形態のフレーム部64に替えて用いることもでき、この場合、フレーム部52自体が脚部の機能も備えているので、脚部62は不要となる。
フレーム部64は、橋梁150の橋軸方向と略平行な略鉛直面内に形成された略橋軸方向に延びる2つの側面トラス64Aと、2つの側面トラス64Aの上端部を連結する天井梁64Bとを有してなる。2つの側面トラス64Aは、略橋軸直角方向に対向するように配置されている。天井梁64Bはその両端部が2つの側面トラス64Aの上端部の上に位置するように配置されていて、天井梁64Bの長手方向は略橋軸直角方向になっている。2つの側面トラス64Aと天井梁64Bとの連結はボルト等による機械的な接合でなされている。また、天井梁64Bの下面には、2つのレール(軌道部材)66が橋軸直角方向に所定の間隔を開けてボルト等による機械的な接合で取り付けられている。なお、2つの側面トラス64Aと天井梁64Bとの連結方法、および2つのレール(軌道部材)66と天井梁64Bとの連結方法は特には限定されず、溶接による連結でもよい。
フレーム部64は、図15に示すように、2対の脚部62のうちの1対の脚部62に一端部近傍を支持され、2対の脚部62のうちのもう1対の脚部62に他端部近傍を支持されている。フレーム部64は、図15に示すように、略橋軸方向に延びている。
フレーム部64の2つの側面トラス64Aの下端部が、脚部62の上端部の沓(図示せず)に取り付けられていて、フレーム部64は脚部62に連結されている。
フレーム部64の両端部付近を支持する2対の脚部62の橋軸方向の間隔は、主桁154の長さ程度あるので、フレーム部64の橋軸方向の長さは長くなる。また、フレーム部64の両端部付近を支持する2対の脚部62の橋軸方向の間隔が主桁154の長さ程度あることから、吊り上げた既設床版156および新設床版250の鉛直方向下向きの重量によってフレーム部64全体に加わる曲げモーメントは大きくなる。しかしながら、フレーム部64は2つの側面トラス64Aを備えているので、吊り上げた既設床版156および新設床版250の鉛直方向下向きの重量がフレーム部64に加わっても十分に支持することができる。なお、本第5実施形態に係る床版取替え装置60は、橋梁の既設床版の横断面方向の全断面に相当する部位の既設床版の撤去を行うとともに、撤去した既設床版が架設されていた位置に新設床版を架設するので、第5実施形態に係る床版取替え装置60の側面トラス64Aは、第1実施形態に係る床版取替え装置10の側面トラス14Aよりも、橋軸直角方向に鋼材の量が多くなっている。ただし、吊り上げた既設床版156および新設床版250の鉛直方向下向きの重量を十分に支持することができるのであれば、フレーム部64をトラス構造を備えない構造としてもよく、例えば、フレーム部64を桁構造を備える構造としてもよい。
レール(軌道部材)66は、略橋軸方向に延びている2本の長尺部材であり、橋軸直角方向に所定の間隔を開けて、フレーム部64の天井梁64Bの下面に取り付けられている。レール(軌道部材)66としては、例えば、H形鋼を用いることができる。
図17は、本第5実施形態の床版取替え装置60を用いて撤去する既設床版156を吊り上げた直後の状態の横断面方向の鉛直断面図であり、図18は、本第5実施形態の床版取替え装置60を用いて吊り上げた既設床版156を90°回動させて向きを変えた後、トラック252(図15、図16参照)に向けて略橋軸方向に移動している状態の横断面方向(脚部62および支承158を切断するような横断面方向)の鉛直断面図である。
長尺移動部材68は、2つのレール(軌道部材)66の間を略橋軸直角方向に架け渡すように、かつ、2つのレール(軌道部材)66に沿って略橋軸方向に移動可能なように、2つのレール(軌道部材)66に取り付けられている。即ち、長尺移動部材68は、長手方向が略橋軸直角方向となるように、かつ、2つのレール(軌道部材)66に沿って略橋軸方向に移動可能なように、その両端部が2本のレール(軌道部材)66に取り付けられており、長尺移動部材68は、図示せぬ動力源から動力を供給されることで略橋軸方向に移動できるようになっている。長尺移動部材68としては、例えばH形鋼を用いることができる。
吊り上げ手段70は、長尺移動部材68の長手方向に移動可能なように長尺移動部材68に取り付けられている。したがって、吊り上げ手段70は、略橋軸方向および略橋軸直角方向の両方向に移動可能である。
吊り上げ手段70は、吊り上げ対象物(既設床版156および新設床版250)を吊り上げて上昇させるとともに、所定の位置において下降させて所定の位置に載置させる。吊り上げ手段70は、吊り上げ対象物を吊り上げるためのフック70Aを備えており、かつ、図示せぬ動力源から動力を供給されることで、フック70Aを上下に移動させることができるようになっており、吊り上げ対象物の上昇と下降を行うことができるようになっている。また、吊り上げ手段70は、図示せぬ動力源から動力を供給されることで、フック70Aを略鉛直軸回りに回動させることができるようになっており、フック70Aによって吊り上げられている吊り上げ対象物を回動させて、吊り上げ対象物の向きを所定の向きに変更することができるようになっている。
吊り上げ手段70が既設床版156を十分な高さに吊り上げている状態で、長尺移動部材68をトラック252の荷台の位置まで略橋軸方向に移動させ、その後、吊り上げ手段70が既設床版156を下降させることで、橋梁150から切り出した既設床版156をトラック252に積み込むことができる。
また、吊り上げ手段70がトラック254から新設床版250を吊り上げている状態で、長尺移動部材68を略橋軸方向に移動させることで新設床版250を橋梁150の所定の位置に架設することができる。
なお、前述したように、吊り上げ手段70は、長尺移動部材68の長手方向に移動可能なように長尺移動部材68に取り付けられているので、略橋軸直角方向に移動できるようになっており、吊り上げ手段70は、吊り上げ対象物の橋軸直角方向の位置を調整することもできるようになっている。
また、図17に示すように、撤去する既設床版156の橋軸直角方向の幅は、床版取替え装置60のフレーム部64の橋軸直角方向の幅よりも大きくなっているが、フレーム部64は脚部62の上端部に取り付けられているため、フレーム部64の下端部と橋梁150の橋面との間には脚部62の高さ程度の空間がある。このため、撤去する既設床版156の橋軸直角方向の幅が、床版取替え装置60のフレーム部64の橋軸直角方向の幅よりも大きくなっていても、撤去する既設床版156を吊り上げることができる。
吊り上げ手段70で吊り上げた既設床版156は、吊り上げ手段70によって回動させて、図18に示すように向きを90°変えてから、トラック252に向けて略橋軸方向に移動させて、トラック252の荷台に積み込む。
(1−6)第6実施形態に係る床版取替え装置
図19は、本発明の第6実施形態に係る床版取替え装置80を用いて橋梁の床版の取替えを行っている状況を模式的に示す斜視図である。図20は、本発明の第6実施形態に係る床版取替え装置80を用いて橋梁の床版の撤去を行っている状況を模式的に示す橋軸直角方向から見た側面図である。
本発明の第6実施形態に係る床版取替え装置80は、第5実施形態に係る床版取替え装置60に主桁支持材82をさらに備えさせた実施形態である。第5実施形態に係る床版取替え装置60と同一の構成については同一の符号を付し、説明は省略する。
主桁支持材82は、吊り材82Aと、水平支持部材82Bとを有してなり、主桁154を上方から支持して主桁154に加わる鉛直荷重の負担を低減させる。
吊り材82Aは、上端部がフレーム部84の天井梁84Bに連結され、下端部が水平支持部材82Bと連結している。吊り材82Aとしては、例えばφ30程度のPC鋼棒等を用いることができる。天井梁84Bは、図19に示すように、吊り材82Aが橋梁150の上部工と干渉しないように、橋梁150の上部工の橋軸直角方向の幅よりも長くなっている。
水平支持部材82Bは、例えばH形鋼等からなる長尺部材であり、両端部がそれぞれ吊り材82Aの下端部に連結されていて、長手方向が橋梁150の略橋軸直角方向となるように、吊り材82Aによって吊られている。また、水平支持部材82Bの配置位置は、主桁154の下方であり、水平支持部材82Bは主桁154を下方から支持して、主桁154に加わる鉛直荷重の負担を低減させる。
橋梁150の主桁154と既設床版156とが強固に連結されていて合成桁を構成している場合等、既設床版156を撤去すると主桁154の耐力が不足する場合も想定されるが、このような場合には、主桁支持材82によって主桁154を上方から支持して主桁154に加わる鉛直荷重の負担を低減させることで、既設床版156の撤去を安全に行うことができる。
図21および図22は、主桁支持材82をフレーム部84の天井梁84Bに取り付けて主桁154を上方から支持した後、既設床版156を吊り上げ手段70で吊り上げた状態を示す横断面方向の鉛直断面図である。
図21は、主桁154の上フランジの上面と既設床版156の下面との間を縁切りして既設床版156を吊り上げ手段70で吊り上げた状態を示しており、主桁154と既設床版156との連結状態が特に強固とは言えない非合成桁の場合を想定している。また、図22は、主桁154のウェブの上部を橋軸方向に切断して、既設床版156とともに主桁154の上フランジおよびウェブ上部を吊り上げ手段70で吊り上げた状態を示しており、主桁154と既設床版156との連結状態が強固な合成桁の場合を想定している。
図21または図22のようにして、既設床版156を主桁154から縁切りして、吊り上げ手段70で吊り上げた既設床版156は、吊り上げ手段70によって回動させて、図23に示すように向きを90°変えてから、トラック252(図19、20参照)に向けて略橋軸方向に移動させて、トラック252の荷台に積み込む。
(2)床版取替え工法
(2−1)既設床版の一部の断面についての床版取替え工法
橋梁の既設床版の横断面方向の断面のうちの一部の断面に相当する部位の既設床版の撤去を行い、撤去した既設床版が架設されていた位置に新設床版を架設する床版取替え(以下、「一部の断面についての床版取替え」と記すことがある。)の施工手順を、橋梁100の車線A(図1参照)の既設床版106を新設床版200に取り替える場合を例として取り上げて説明する。
一部の断面についての床版取替えを行う際には、「(1)床版取替え装置」で説明した第1〜第4実施形態に係る床版取替え装置10、30、40、50、および第3、第4実施形態に係る床版取替え装置40、50に主桁支持材32を備えさせた床版取替え装置40、50の変形例を、主桁支持材32の必要性に応じて使い分けて用いることができるが、ここでは、主桁支持材32を備えていない第1実施形態に係る床版取替え装置10、および第1実施形態に係る床版取替え装置10に主桁支持材32を備えさせた第2実施形態に係る床版取替え装置30を、主桁支持材32の必要性に応じて使い分けて施工を行うものとして説明を行う。
図24は、橋梁100の既設床版106の一部の断面についての床版取替えを行う場合の施工手順を示したフローチャートである。
橋梁100の車線Aの既設床版106を新設床版200に取り替える床版取替え工事の期間中も、橋梁100の車線B、C、Dは供用を続けるので、車線Aとの間に防護柵が設けられていない車線Bにおける車両の通行の安全性を確保するため、図1等に示すように仮設防護柵300を設ける(ステップS101)。
次に、車線Aの床版取替えの対象領域の舗装を除去する(ステップS102)。
次に、既設床版106の撤去が主桁104へ与える影響について精査して主桁104の支持の要否を判断し(ステップS103)、主桁104の支持が不要と判断した場合には、主桁支持材32を備えない床版取替え装置10を設置し(ステップS104)、主桁104の支持が必要と判断した場合には、主桁支持材32を備える床版取替え装置30を設置する(ステップS105)。
主桁104の支持が必要と判断して、ステップS105において主桁支持材32を備える床版取替え装置30を設置する場合には、設置する主桁支持材32と干渉する既設部材の切断・撤去を行う。干渉する既設部材の切断・撤去としては、地覆高欄部110(図9参照)の切断・撤去や、既設床版106に貫通孔112(図9参照)を設けること等が考えられる。
ステップS104で床版取替え装置10を設置した後、あるいはステップS105で床版取替え装置30を設置した後、床版取替えの対象領域の既設床版106の切断・撤去を行う(ステップS106)。
そして、既設床版106の切断・撤去を終えた床版取替えの対象領域に、新設床版200の架設施工を行う(ステップS107)。
新設床版200の架設施工終了後、床版取替え装置10、30の撤去を行う(ステップS108)。引き続き、橋梁100の他の既設床版106の領域について床版の取り替えを行う場合には、次の対象領域に床版取替え装置10、30を移設して、同様の施工を進める。
(2−2)既設床版の全断面についての床版取替え工法
橋梁の既設床版の横断面方向の全断面に相当する部位の既設床版の撤去を行い、撤去した既設床版が架設されていた位置に新設床版を架設する床版取替え(以下、「全断面についての床版取替え」と記すことがある。)の施工手順を、橋梁150(図15、図19等参照)の既設床版156を新設床版250に取り替える場合を例として取り上げて説明する。
全断面についての床版取替えを行う際には、「(1)床版取替え装置」で説明した第5および第6実施形態に係る床版取替え装置60、80を、主桁支持材82の必要性に応じて使い分けて用いることができるので、ここでは、主桁支持材82を備えていない第5実施形態に係る床版取替え装置60および主桁支持材82を備えさせた第6実施形態に係る床版取替え装置80を、主桁支持材82の必要性に応じて使い分けて施工を行うものとして説明を行う。
図25は、橋梁150の既設床版156の全断面についての床版取替えを行う場合の施工手順を示したフローチャートである。
まず、床版取替えの対象領域の舗装を除去する(ステップS201)。
次に、既設床版156の撤去が主桁154へ与える影響について精査して主桁154の支持の要否を判断し(ステップS202)、主桁154の支持が不要と判断した場合には、主桁支持材82を備えない床版取替え装置60を設置し(ステップS203)、主桁154の支持が必要と判断した場合には、主桁支持材82を備える床版取替え装置80を設置する(ステップS204)。
主桁154の支持が必要と判断して、ステップS204において主桁支持材82を備える床版取替え装置80を設置する場合には、設置する主桁支持材82と干渉する既設部材の切断・撤去を行う。干渉する既設部材の切断・撤去としては、地覆高欄部の切断・撤去や、既設床版156に貫通孔を設けること等が考えられる。
ステップS203で床版取替え装置60を設置した後、あるいはステップS204で床版取替え装置80を設置した後、床版取替えの対象領域の既設床版156の切断・撤去を行う(ステップS205)。
そして、既設床版156の切断・撤去を終えた床版取替えの対象領域に、新設床版250の架設施工を行う(ステップS206)。
新設床版250の架設施工終了後、床版取替え装置60、80の撤去を行う(ステップS207)。引き続き、橋梁150の他の既設床版156の領域について床版の取り替えを行う場合には、次の対象領域に床版取替え装置60、80を移設して、同様の施工を進める。