以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本実施形態におけるハイブリッド車両の動力伝達装置10を示す骨子図である。図1において、動力伝達装置10は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、ケース12という)内において共通の軸線C上に配設された入力軸14と、この入力軸14に直接或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接的に連結された無段変速部としての差動部11(本発明でいう第1変速部;電気式差動部)と、その差動部11から図示しない駆動輪への動力伝達経路上において伝達部材18を介して直列に連結されている自動変速機20(本発明でいう第2変速部)と、この自動変速機20に連結されている出力軸22とを直列に備えている。この動力伝達装置10は、例えば車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパーを介して間接的に連結された走行用の動力源として例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8と、駆動輪との間に設けられる。そして、エンジン8からの出力(動力)を、動力伝達経路の一部を構成する図示しない差動歯車装置(終減速機)および車軸等を順次介して駆動輪へ伝達する。
このように、本実施形態の動力伝達装置10においては、エンジン8と差動部11とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば前記脈動吸収ダンパーなどを介する連結はこの直結に含まれる。
差動部11は、入力軸14および伝達部材18の差動状態を制御する差動用電動機として機能する第1電動機MG1と、エンジン8の出力を第1電動機MG1および伝達部材18に分配する差動機構としての差動遊星歯車装置24と、伝達部材18と一体的に回転するように連結されている第2電動機MG2と、入力軸14を回転停止させるための固定ブレーキB0とを備えている。本実施形態の第1電動機MG1および第2電動機MG2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機MG1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機MG2は走行用の動力源として動力を出力する走行用電動機として機能するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。
差動機構として機能する差動遊星歯車装置24は、シングルピニオン型のものであって、差動サンギヤS0、差動遊星歯車P0、差動キャリヤCA0、差動リングギヤR0を回転要素として備えている。
この差動遊星歯車装置24においては、差動キャリヤCA0は入力軸14すなわちエンジン8に連結されて第1回転要素RE1を構成し、差動サンギヤS0は第1電動機MG1に連結されて第2回転要素RE2を構成し、差動リングギヤR0は伝達部材18に連結されて第3回転要素RE3を構成している。このように構成された差動遊星歯車装置24は、エンジン8の出力を第1電動機MG1と伝達部材18とに分配する。この分配されたエンジン8の出力の一部によって、第1電動機MG1が発電した電気エネルギが蓄電されたり、第2電動機MG2が回転駆動される。従って、差動部11は電気的な差動装置として機能する。例えば差動部11は、所謂無段変速状態とされて、エンジン8の回転速度に関わらず伝達部材18の回転速度が連続的に変化可能となっている。
自動変速機20は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置28を備え、有段式の自動変速機として機能する遊星歯車式の多段変速機である。第1遊星歯車装置26は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1を備えている。第2遊星歯車装置28は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、第2キャリヤCA2、第2リングギヤR2を備えている。
自動変速機20では、第1サンギヤS1は、第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結されている。また、第1キャリヤCA1と第2リングギヤR2とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に連結されると共に、第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結されている。また、第1リングギヤR1と第2キャリヤCA2とが一体的に連結されて出力軸22に連結されている。また、第2サンギヤS2が第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。さらに第1キャリヤCA1と第2リングギヤR2とが一方向クラッチF1を介してケース12に連結されている。
自動変速機20は、第1クラッチC1、第2クラッチC2、固定ブレーキB0、第1ブレーキB1、および、第2ブレーキB2それぞれの係合状態に応じて複数の変速段が選択的に成立する。各クラッチC1、C2、および、各ブレーキB0、B1、B2の係合状態と、それにより成立する変速段との関係は、図2の係合作動表に示されるようになっている。
なお、第1電動機MG1および第2電動機MG2によって車両を駆動する際には、固定ブレーキB0が係合される。固定ブレーキB0が係合されると、入力軸14が回転停止し、第1電動機MG1の反力トルクが伝達部材18から出力される。従って、第2電動機MG2に加えて第1電動機MG1による駆動が可能となる。また、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2の解放により自動変速機20はニュートラル状態とされる。
図3は、動力伝達装置10において、変速段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表す共線図を示している。この図3の共線図は、各遊星歯車装置24、26、28のギヤ比の関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、3本の横線のうちの下側の横線X1が回転速度零を示し、上側の横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度Neを示し、X3が差動部11から自動変速機20に入力される第3回転要素RE3の回転速度を示している。
また、差動部11を構成する差動遊星歯車装置24の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に前記第2回転要素RE2、前記第1回転要素RE1、前記第3回転要素RE3の相対回転速度を示すものであり、これらの間隔は差動遊星歯車装置24のギヤ比に応じて定められている。
また、自動変速機20の4本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7は、左から順に、第4回転要素RE4に対応する第2サンギヤS2、第5回転要素RE5に対応する第1リングギヤR1および第2キャリヤCA2、第6回転要素RE6に対応する第1キャリヤCA1および第2リングギヤR2、第7回転要素RE7に対応する第1サンギヤS1の相対回転速度を示しており、それらの間隔は第1、第2遊星歯車装置26、28のギヤ比に応じてそれぞれ定められている。
図3の共線図に示すように、差動部11においては、第1回転要素RE1乃至第3回転要素RE3が相互に相対回転可能とされる差動状態とされており、直線L0と縦線Y3との交点で示される差動リングギヤR0の回転速度が車速Vに拘束されて一定である場合に、第1電動機MG1の回転速度を制御することによって直線L0と縦線Y1との交点で示される差動サンギヤS0の回転速度が上昇或いは下降させられると、直線L0と縦線Y2との交点で示される差動キャリヤCA0の回転速度すなわちエンジン回転速度Neが上昇或いは下降させられる。
また、差動部11の変速比が「1.0」に固定されるように第1電動機MG1の回転速度を制御することによって差動サンギヤS0がエンジン回転速度Neと同じ回転速度とされると、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度Neと同じ回転速度で差動リングギヤR0すなわち伝達部材18が回転させられる。或いは、差動部11の変速比が「1.0」より小さい値、例えば「0.7」程度に固定されるように第1電動機MG1の回転速度を制御することによって差動サンギヤS0の回転速度が零とされると、エンジン回転速度Neよりも増速されて伝達部材18が回転させられる。また、例えば第2電動機MG2を逆回転させることで、直線L0Rに示すように、差動リングギヤR0に連結された伝達部材18の回転速度が、零より低い回転速度で回転させられる。
また、自動変速機20では、第1変速段1st〜第4変速段4thの前進変速段または後進変速段の有段変速が可能となっている。図3における1stは、第1変速段での各回転要素の回転速度の関係を表している。また、2ndは、第2変速段での各回転要素の回転速度の関係を表している。また、3rdは、第3変速段での各回転要素の回転速度の関係を表している。また、4thは、第4変速段での各回転要素の回転速度の関係を表している。また、Revは後進変速段での各回転要素の回転速度の関係を表している。
次に、動力伝達装置10の具体構成について、複数の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図4は、本実施形態に係る動力伝達装置10の一部を示す断面図である。この図4は、伝達部材18、および、その伝達部材18に連結されている第2電動機MG2それぞれの断面を示している。伝達部材18は、差動遊星歯車装置24の差動リングギヤR0に連結されている出力側回転軸(本発明でいう第1変速部の出力軸として機能する第1回転軸(第1電動機に動力伝達可能に連結された第1回転軸))30と、自動変速機20の入力軸として機能する入力側回転軸(本発明でいう第2変速部の入力軸として機能する第2回転軸)32と、第2電動機MG2のロータ軸(本発明でいう第2電動機に回転一体とされたロータ軸)34とを含んで構成されている。これら出力側回転軸30、入力側回転軸32、およびロータ軸34は、何れも同じ軸線Cまわりに配置されている。
出力側回転軸30と入力側回転軸32とは、径方向外側から見て軸線C方向で離れた位置に配置されており、これら出力側回転軸30と入力側回転軸32との間を、第2電動機MG2のロータ軸34が連結している。
第2電動機MG2のロータ軸34は、円筒状に形成され、軸線C方向で互いに向かい合う出力側回転軸30および入力側回転軸32の外周端部(先端)を覆うように(各回転軸30,32が挿入されるように)配置されている。ロータ軸34は、軸線C方向の一端が軸受35aを介して、ケース12に連結された電動機カバー37に回転可能に支持されているとともに、軸線C方向の他端が軸受35bを介してケース12に回転可能に支持されている。また、入力側回転軸32は、図示しない軸受等を介してケース12に回転可能に支持されている。
出力側回転軸30には、軸線C方向で入力側回転軸32と向かい合う側(図中の右側)の外周部に外周歯38が形成されている。入力側回転軸32には、軸線C方向で出力側回転軸30と向かい合う側(図中の左側)の外周部に、出力側回転軸30の外周歯38と同じ形状の外周歯40が形成されている。円筒状に形成されている第2電動機MG2のロータ軸34の内周側には、前記外周歯38および外周歯40それぞれとスプライン嵌合する内周歯42が形成されている。そして、この出力側回転軸30の外周歯38とロータ軸34の内周歯42とがスプライン嵌合されているとともに、入力側回転軸32の外周歯40とロータ軸34の内周歯42とがスプライン嵌合されている。出力側回転軸30の外周歯38とロータ軸34の内周歯42とが互いにスプライン嵌合されることで、出力側回転軸30とロータ軸34とを動力伝達可能に連結するスプライン嵌合部50が形成される。このスプライン嵌合部50において、外周歯38と内周歯42との間にガタが形成されており、このガタの間で出力側回転軸30とロータ軸34との相対回転が許容される。また、入力側回転軸32の外周歯40とロータ軸34の内周歯42とが互いにスプライン嵌合されることで、入力側回転軸32とロータ軸34とを動力伝達可能に連結するスプライン嵌合部52が形成される。このスプライン嵌合部52において、外周歯40と内周歯42との間にガタが形成されており、このガタの間で入力側回転軸32とロータ軸34との相対回転が許容される。
ロータ軸34の外周部には、第2電動機MG2のロータ46が固定され、そのロータ46の外周側に、第2電動機MG2のステータ48が配置されている。
前記のように構成される動力伝達装置10において、出力側回転軸30にエンジン8のトルク(出力)が伝達されると、出力側回転軸30とロータ軸34との間のスプライン嵌合部50を介してロータ軸34にトルクが伝達される。さらに、ロータ軸34と入力側回転軸32とのスプライン嵌合部52を介して入力側回転軸32にトルクが伝達される。従って、第2電動機MG2からトルクが出力されない状態であっても、出力側回転軸30とロータ軸34とのスプライン嵌合部50に形成されるガタが詰められる。
前記入力側回転軸32内には、軸線Cに平行な軸線方向油路72が形成されている。この軸線方向油路72は、入力側回転軸32の先端面(図中の左側の先端面)に開口されている。また、入力側回転軸32には、軸線方向油路72と、ケース12内に形成されている供給油路73とを連通する径方向油路75が形成されている(図4では、供給油路73と径方向油路75とを連通する油路については省略している)。
このため、図示しない油圧制御回路からケース12の供給油路73に供給された潤滑油は、径方向油路75を介して軸線方向油路72に供給されることになる。
前記出力側回転軸30内には、軸線Cに平行な軸線方向油路76が形成されている。この軸線方向油路76は、出力側回転軸30の先端面(図中の右側の先端面)に開口されている。また、この出力側回転軸30に形成されている軸線方向油路76は、図示しない各回転要素(例えば差動遊星歯車装置24を構成している各回転要素)に向けて延びており、この軸線方向油路76に潤滑油が供給された場合には、この潤滑油は、差動遊星歯車装置24を構成している各回転要素の潤滑や冷却に寄与することになる。
また、本実施形態に係る動力伝達装置10の制御の一つとして、前記ガタを詰めるための第1電動機MG1のトルク制御が行われるようになっている。この第1電動機MG1のトルク制御は一般に知られているものであって、第2電動機MG2のトルクが変動する状況(例えば車両に要求される走行駆動力が小さい走行状態等であって、第2電動機MG2のトルクが所定範囲内で変動する状況)において、第1電動機MG1から正回転方向(現在の車両走行状態での第1電動機MG1のロータの回転方向と同じ方向)のトルクを出力し(トルクを増大させ)、これによって出力側回転軸30とロータ軸34との間のガタを詰めると共に、ロータ軸34と入力側回転軸32との間のガタを詰めることで歯打ち音を抑制するものである。この制御が、本発明でいう「第2電動機のトルクが所定範囲内にある際に第1電動機からトルクを出力する」制御に相当する。
そして、本実施形態の特徴として、前記出力側回転軸30と前記入力側回転軸32との間には連結部材60が介在されている。以下、この連結部材60について説明する。
図5は、連結部材60の装着箇所を拡大して示す断面図である。この連結部材60は、弾性および耐油性を有する材料(フッ素系やシリコン系のゴム等)で形成されている。また、この連結部材60は、一端(図中の左端)が出力側回転軸30に、他端(図中の右端)が入力側回転軸32にそれぞれ接続されている。
具体的に、連結部材60は、第1接続部61、第2接続部62、および、これら第1接続部61と第2接続部62との間に位置する蛇腹部63を備えている。
第1接続部61は、出力側回転軸30に対する接続部である。前記出力側回転軸30の先端部(図中右側の先端部)は、その他の部分(外周歯38が形成されている部分)よりも小径とされた嵌合部31を備えている。また、連結部材60の第1接続部61は、円筒形状であって、その内径寸法が、前記嵌合部31の外径寸法と同一寸法、または、この嵌合部31の外径寸法よりも僅かに小径に形成されている。そして、この連結部材60の第1接続部61が出力側回転軸30の嵌合部31に嵌め合わされることで、この第1接続部61が嵌合部31に接続されている。この接続箇所にあっては、第1接続部61の内部に嵌合部31が圧入されて、第1接続部61の内周面と嵌合部31の外周面との間の面圧が高くなっていることで抜け止め機能が発揮されるものとなっている。また、これら第1接続部61の内周面と嵌合部31の外周面との間に接着剤等を適用して抜け止めするようにしてもよい。また、第1接続部61の内周面に雌ネジを、嵌合部31の外周面に雄ネジをそれぞれ形成しておき、螺合によってこれらを一体的に組み付けるようにしてもよい。
図6は、連結部材60の第2接続部62を示す図であって、図6(a)は断面図、図6(b)は第2接続部62を図6(a)の矢印B方向から見た図、図6(c)は第2接続部62を図6(a)の矢印C方向から見た図である。図5に示すように、第2接続部62は、入力側回転軸32に対する接続部である。
図5に示すように、前記入力側回転軸32の軸線方向油路72における、その内周面の2箇所には凹陥部74,74が設けられている。具体的には、軸線方向油路72の開口位置(入力側回転軸32の左端)から所定寸法を存した軸線方向油路72の奥側(図中の右側)において、その周方向で180°の角度間隔を存した位置(周方向で180°位相がずれた位置)にそれぞれ凹陥部74,74が設けられている。
また、図5および図6に示すように、連結部材60の第2接続部62は、略円筒形状であって、その外径寸法が、前記入力側回転軸32の軸線方向油路72の内径寸法と同一寸法、または、この軸線方向油路72の内径寸法よりも僅かに大径に形成されている。また、この第2接続部62には、Oリング溝64および係合突起65,65が設けられている。Oリング溝64は、第2接続部62の外周面に形成された円環状の凹部で成る。このOリング溝64の形成位置は、この第2接続部62の外周面上であって前記蛇腹部63との境界部分の近傍である。また、係合突起65,65は、前記Oリング溝64の形成位置に対し、前記蛇腹部63との境界部分とは反対側(図中の右側)の位置の2箇所に設けられている。そして、これら係合突起65,65の形成位置は、第2接続部62の周方向で180°の角度間隔を存した位置(周方向で180°位相がずれた位置)にそれぞれ設けられている。また、これら係合突起65,65の形成位置は、これら係合突起65,65が、前記凹陥部74,74に嵌め込まれた状態で、この第2接続部62の端面(蛇腹部63と接続している側の端面)と入力側回転軸32の先端面とが面一となるように設定されている。つまり、係合突起65,65と第2接続部62の端面(蛇腹部63と接続している側の端面)との間隔寸法が、前記凹陥部74,74と入力側回転軸32の先端面との間隔寸法(軸線Cに沿う方向での間隔寸法)に一致している。
このため、図5に示すように、第2接続部62が、入力側回転軸32の軸線方向油路72の内部に装着された状態では、前記各係合突起65,65それぞれが入力側回転軸32の凹陥部74,74に嵌め込まれる。これにより、第2接続部62の抜け止め構造が得られている。この状態では、第2接続部62の端面(図中左側の端面)と入力側回転軸32の先端面とが面一となっており、前記Oリング溝64が軸線方向油路72の内部に位置している。このOリング溝64には予めOリング66が装着されている。このため、軸線方向油路72内の潤滑油が、入力側回転軸32の先端面から(この先端面における軸線方向油路72の開口から)漏れ出ないようになっている。
また、第2接続部62の内部(第2接続部62の中心線に沿う方向に延びる通路)には、この第2接続部62を軸線方向油路72内部に挿入する(後述するロッド80を利用して挿入する)際に利用される押圧部67が一体形成されている。この押圧部67は、第2接続部62の内壁面同士を連結するように第2接続部62の径方向に沿って延びる板状であって、周方向で互いに90°の位相差を存した位置にそれぞれ形成されている。
蛇腹部63は、前記第1接続部61と第2接続部62とを連結しており、その変形(連結部材60の中心線に沿う方向での伸縮)によって、第1接続部61と第2接続部62との間の間隔を変化させることが可能となっている。また、この蛇腹部63は、その変形(連結部材60の中心線に対して直交する方向での変形)によって、前記出力側回転軸30と入力側回転軸32との相対回転を許容するものとなっている。
以上のように、連結部材60は、出力側回転軸(第1回転軸)30の軸線方向油路(潤滑油路)76と入力側回転軸(第2回転軸)32の軸線方向油路(潤滑油路)72とを油密に連通可能とするように出力側回転軸30と入力側回転軸32との間に介在され、出力側回転軸30と入力側回転軸32との相対回転を許容する構成となっている。
次に、出力側回転軸30と入力側回転軸32との間に連結部材60を配設するための作業について図7を用いて説明する。
まず、ケース12に第2電動機MG2を支持した状態において、この第2電動機MG2のロータ軸34の内部に入力側回転軸32を挿入する(図7における矢印Xを参照)。この際、第2電動機MG2のロータ軸34に形成されている内周歯42と、入力側回転軸32に形成されている外周歯40とがスプライン嵌合される。
次に、出力側回転軸30の先端部に連結部材60を装着した状態で、第2電動機MG2のロータ軸34の内部に出力側回転軸30を挿入していく(図7における矢印Yを参照)。この際、第2電動機MG2のロータ軸34に形成されている内周歯42と、出力側回転軸30に形成されている外周歯38とがスプライン嵌合されていくことになる。つまり、出力側回転軸30の嵌合部31に連結部材60の第1接続部61を嵌め合わせて、出力側回転軸30の先端部に連結部材60を装着した状態で、第2電動機MG2のロータ軸34の内部に出力側回転軸30を挿入していく。この挿入に伴い、連結部材60は、出力側回転軸30と共に入力側回転軸32に向けて移動していくことになる。
そして、この出力側回転軸30の挿入途中において、図7に示す如く、連結部材60の第2接続部62の一部(図中の右端部)が、入力側回転軸32の軸線方向油路72に挿入された際、この第2接続部62に形成されている係合突起65,65が入力側回転軸32の先端面に当接した状態となる。この状態で、出力側回転軸30の挿入が完了した場合、つまり、ロータ軸34の内周歯42と出力側回転軸30の外周歯38とが所定のスプライン嵌合状態となった場合であっても、連結部材60の蛇腹部63が変形することで(連結部材60の中心線に沿う方向に圧縮されることで)係合突起65,65が入力側回転軸32の先端面に当接した状態が維持される。
その後、入力側回転軸32の軸線方向油路72に第2接続部62を押し込むための治具としてのロッド80(図7に仮想線で示す)を、出力側回転軸30の軸線方向油路76から挿入し、このロッド80の先端を、連結部材60の蛇腹部63を通過させ、第2接続部62の押圧部67に押し当てて、第2接続部62を軸線方向油路72の内部に押し込んでいく。そして、第2接続部62の各係合突起65,65それぞれが入力側回転軸32の凹陥部74,74に嵌め込まれる位置まで第2接続部62が押し込まれると、ロッド80による押圧を解除し、このロッド80を軸線方向油路76から抜き取る。これにより、入力側回転軸32の軸線方向油路72内部の所定位置に第2接続部62が装着されることになる(図4および図5を参照)。
この状態では、前述したように、出力側回転軸30と入力側回転軸32との間に介在された連結部材60によって、出力側回転軸30の軸線方向油路76と入力側回転軸32の軸線方向油路72とが油密に連通された状態となり、また、この連結部材60が出力側回転軸30と入力側回転軸32との相対回転を許容する状態となっている。
このため、出力側回転軸30の軸線方向油路76と入力側回転軸32の軸線方向油路72との間では、油密に潤滑油の流通が可能となり、差動遊星歯車装置24を構成している各回転要素に向けて潤滑油が供給され、これら回転要素の潤滑や冷却が良好に行われることになる。また、前述した第1電動機MG1のトルク制御(第2電動機MG2のトルクが変動する状況でガタを詰めるために行われる第1電動機MG1のトルク制御)が行われる場合に、連結部材60は、その変形(蛇腹部63の変形)によって出力側回転軸30と入力側回転軸32との相対回転を許容しているため、第1電動機MG1から出力されたトルクが、出力側回転軸30、ロータ軸34、入力側回転軸32の順に伝達されることになり(出力側回転軸30から入力側回転軸32に直接的にトルクが伝達されることがなく(引きずりトルクが発生せず))、各軸30,34,32同士の間のガタを詰めることができて、歯打ち音を抑制することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態は、出力側回転軸30、入力側回転軸32および連結部材の構成が前記第1実施形態のものと異なっている。その他の構成および動作は第1実施形態のものと同様であるので、ここでは第1実施形態との相違点について主に説明する。
図8は、本実施形態に係る動力伝達装置10の一部を示す断面図である。この図8に示すように、出力側回転軸30の先端部には小径部30aが、入力側回転軸32の先端部には凹陥部32aがそれぞれ形成されている。
出力側回転軸30の先端部に形成されている小径部30aは、出力側回転軸30において外周歯38が形成されている部分の外径寸法よりも小径とされている。また、入力側回転軸32の先端部に形成されている凹陥部32aは、この入力側回転軸32の先端面が、軸線Cに沿う方向に凹陥されて成っている。そして、出力側回転軸30の小径部30aの外径寸法は入力側回転軸32の凹陥部32aの内径寸法よりも僅かに小さくなっている。
また、出力側回転軸30の小径部30aの外周面には、円環状の凹部で成るシールリング溝30bが形成されている。また、入力側回転軸32の凹陥部32aの内周面にも、円環状の凹部で成るシールリング溝32bが形成されている。そして、出力側回転軸30および入力側回転軸32それぞれが、ロータ軸34に対して所定位置まで挿入された状態では、出力側回転軸30のシールリング溝30bと入力側回転軸32のシールリング溝32bとが径方向で対面するように、各シールリング溝30b,32bの形成位置が設定されている。
そして、これらシールリング溝30b,32bに亘って、連結部材としての円環状のシールリング68が装着されている。このシールリング68は、前記第1実施形態の連結部材60と同様に、弾性および耐油性を有する材料(フッ素系やシリコン系のゴム等)で形成されている。
そして、このシールリング68における引きずりトルクは、出力側回転軸30から作用する制振トルク(前記歯打ち音を抑制するために第1電動機MG1から出力されるトルク)よりも低くなっている。
このようにシールリング68が装着されていることにより、このシールリング68が、出力側回転軸(第1回転軸)30の軸線方向油路(潤滑油路)76と入力側回転軸(第2回転軸)32の軸線方向油路(潤滑油路)72とを油密に連通可能とするように出力側回転軸30と入力側回転軸32との間に介在され、出力側回転軸30と入力側回転軸32との相対回転を許容する構成となっている。
このため、本実施形態においても、出力側回転軸30の軸線方向油路76と入力側回転軸32の軸線方向油路72との間の油密が確保された状態で、これら軸線方向油路72,76同士の間での潤滑油の流通が可能となり、差動遊星歯車装置24を構成している各回転要素に向けて潤滑油が供給され、これら回転要素の潤滑や冷却が良好に行われることになる。また、前述した第1電動機MG1のトルク制御(第2電動機MG2のトルクが変動する状況でガタを詰めるために行われる第1電動機MG1のトルク制御)が行われる場合に、シールリング68は、その変形によって出力側回転軸30と入力側回転軸32との相対回転を許容しているため(シールリング68における引きずりトルクが出力側回転軸30から作用する制振トルク(前記歯打ち音を抑制するために第1電動機MG1から出力されるトルク)よりも低くなっていることで)、第1電動機MG1から出力されたトルクが、出力側回転軸30、ロータ軸34、入力側回転軸32の順に伝達されることになり(出力側回転軸30から入力側回転軸32に直接的にトルクが伝達されることがなく)、各軸30,34,32同士の間のガタを詰めることができて、歯打ち音を抑制することができる。
−他の実施形態−
以上、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の各実施形態では、自動変速機20は前進4段の有段式の変速機であったが、変速段数や内部の連結構成については特に限定されない。また、有段式の自動変速機20に限らず、例えばベルト式等の無段変速機を適用することも可能である。
なお、上述した各種の構成はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。