本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)1は、図1に示すように、直方体形状の筐体1aと、筐体1aの一側面に設けられたカバー1bとを含む。筐体1a内には、搬送機構20及び制御ユニット100が配置されている。筐体1aの天板上部には、用紙受容部4が設けられている。また、筐体1aには、記録モジュール50a〜50c及び用紙収容部3がそれぞれ移動可能且つ着脱可能に支持されている。
用紙収容部3及び用紙受容部4は、葉書サイズ、A6サイズ、A4サイズ、レターサイズ、及びA3サイズを含む複数種類のサイズの用紙Pを、それぞれ複数枚収容及び受容可能である。用紙収容部3は、本発明に係る「記録媒体(用紙P)を収容するための記録媒体収容部」に該当する。
搬送機構20は、用紙Pを用紙収容部3から各記録モジュール50a〜50cを経由させて用紙受容部4まで搬送するように構成されており、上流搬送機構20x及び下流搬送機構20yを含む。
上流搬送機構20xは、用紙Pを用紙収容部3から各記録モジュール50a〜50cまで搬送するように構成されており、給紙ローラ21、ローラ対22a〜22f、ガイド23a〜23g及び切替部28a,28bを含む。給紙ローラ21は、用紙収容部3内で最も上方にある用紙Pの表面と接触するように配置されている。各ローラ対22a〜22fは、互いに接触する2つのローラを含む。給紙ローラ21、及び、各ローラ対22a〜22fのうちの一方のローラは、制御ユニット100による制御の下、上流搬送モータ20xM(図3参照)の駆動により回転する駆動ローラである。各ローラ対22a〜22fのうち他方のローラは、上記一方のローラの回転に伴って回転する従動ローラである。各ローラ対22a〜22fにおいて、一方のローラ及び他方のローラは、用紙Pを挟持しつつ互いに逆方向に回転する。各ガイド23a〜23gは、その厚み方向に互いに離隔した一対のガイド板を含む。各ガイド23a〜23gの一対のガイド板間の空間、及び、各ローラ対22a〜22fのローラ同士の接触点によって、経路R1x〜R3xを含む上流経路が形成されている。
各経路R1x〜R3xは、用紙収容部3から各記録モジュール50a〜50cのモジュール内経路Ra〜Rcの上流端部まで延在している。経路R1x,R2xは、用紙収容部3から分岐位置A1まで互いに共通の部分を有し、分岐位置A1において分岐して、互いに異なる記録モジュール50a,50bに向かう。経路R2x,R3xは、用紙収容部3から分岐位置A2まで互いに共通の部分を有し、分岐位置A2において分岐して、互いに異なる記録モジュール50b,50cに向かう。
また、各経路に着目すると、経路R1xは、2つの分岐位置A1,A2を含み、且つ、用紙収容部3から分岐位置A2までの経路R2x,R3xと共有される共通部分と、分岐位置A2から分岐位置A1までの経路R2xと共有される共通部分と、分岐位置A1から記録モジュール50aまでの他のいずれの経路とも共有されない個別部分とを含む。経路R2xは、2つの分岐位置A1,A2を含み、且つ、用紙収容部3から分岐位置A2までの経路R1x,R3xと共有される共通部分と、分岐位置A2から分岐位置A1までの経路R1xと共有される共通部分と、分岐位置A1から記録モジュール50bまでの他のいずれの経路とも共有されない個別部分とを含む。経路R3xは、1つの分岐位置A2を含み、且つ、用紙収容部3から分岐位置A2までの経路R1x,R2xと共有される共通部分と、分岐位置A2から記録モジュール50cまでの他のいずれの経路とも共有されない個別部分とを含む。
切替部28a,28bは、それぞれ、分岐位置A1,A2において用紙Pの搬送先を切り替えるためのものである。具体的には、切替部28aは、分岐位置A1において用紙Pの搬送先を経路R1xの個別部分と経路R2xの個別部分とのいずれかに切り替えるように構成されている。切替部28bは、分岐位置A2において用紙Pの搬送先を経路R1x,R2xの共通部分と経路R3xの個別部分とのいずれかに切り替えるように構成されている。
切替部28a,28bは、それぞれ、揺動部材28a1,28b1及び切替モータ28aM,28bM(図3参照)を含む。揺動部材28a1,28b1は、それぞれ、軸28ax,28bxを中心として揺動可能であり、制御ユニット100による制御の下、切替モータ28aM,28bMが駆動されることで、図1に実線で示す鉛直位置及び図1に点線で示す傾斜位置を選択的に取ることが可能である。
揺動部材28a1が鉛直位置にあるとき、分岐位置A1において、経路R1xの個別部分は開放され、経路R2xの個別部分は閉塞される。したがって、用紙収容部3から分岐位置A1まで搬送された用紙Pは、経路R1xの個別部分に導かれ、記録モジュール50aに向けて搬送される。揺動部材28a1が傾斜位置にあるとき、分岐位置A1において、経路R1xの個別部分は閉塞され、経路R2xの個別部分は開放される。したがって、用紙収容部3から分岐位置A1まで搬送された用紙Pは、経路R2xの個別部分に導かれ、記録モジュール50bに向けて搬送される。
揺動部材28b1が鉛直位置にあるとき、分岐位置A2において、経路R1x,R2xの共通部分は開放され、経路R3xの個別部分は閉塞される。したがって、用紙収容部3から分岐位置A2まで搬送された用紙Pは、経路R1x,R2xの共通部分に導かれ、分岐位置A1に向けて搬送される。揺動部材28b1が傾斜位置にあるとき、分岐位置A2において、経路R1x,R2xの共通部分は閉塞され、経路R3xの個別部分は開放される。したがって、用紙収容部3から分岐位置A2まで搬送された用紙Pは、経路R3xの個別部分に導かれ、記録モジュール50cに向けて搬送される。
各経路R1x〜R3xの個別部分に対向する位置に、用紙センサ6a〜6cが配置されている。各用紙センサ6a〜6cは、検知位置6ax〜6cxにおける用紙Pの有無を示す信号を出力するものであり、当該検知位置6ax〜6cxに用紙Pが有るときにON信号、用紙Pが無いときにOFF信号を出力する。各検知位置6ax〜6cxは、当該経路R1x〜R3xの個別部分の下流端部に定められている。
下流搬送機構20yは、各記録モジュール50a〜50cから搬送された用紙Pを用紙受容部4まで搬送するように構成されており、ローラ対25a〜25d及びガイド26a〜26dを含む。各ローラ対25a〜25dは、互いに接触する2つのローラを含む。各ローラ対25a〜25dのうちの一方のローラは、制御ユニット100による制御の下、下流搬送モータ20yM(図3参照)の駆動により回転する駆動ローラである。各ローラ対25a〜25dのうち他方のローラは、上記一方のローラの回転に伴って回転する従動ローラである。各ローラ対25a〜25dにおいて、一方のローラ及び他方のローラは、用紙Pを挟持しつつ互いに逆方向に回転する。各ガイド26a〜26dは、その厚み方向に互いに離隔した一対のガイド板を含む。各ガイド26a〜26dの一対のガイド板間の空間、及び、各ローラ対25a〜25dのローラ同士の接触点によって、経路R1y〜R3yを含む下流経路が形成されている。
各経路R1y〜R3yは、各記録モジュール50a〜50cのモジュール内経路Ra〜Rcの下流端部から用紙受容部4まで延在している。経路R1y,R2yは、互いに異なる記録モジュール50a,50bから延在し、合流位置B1において合流して、合流位置B1から用紙受容部4まで互いに共通の部分を有する。経路R2y,R3yは、互いに異なる記録モジュール50b,50cから延在し、合流位置B2において合流して、合流位置B2から用紙受容部4まで互いに共通の部分を有する。
また、各経路に着目すると、経路R1yは、1つの合流位置B1を含み、且つ、記録モジュール50aから合流位置B1までの他のいずれの経路とも共有されない個別部分と、合流位置B1から用紙受容部4までの経路R2y,R3yと共有される共通部分とを含む。経路R2yは、2つの合流位置B1,B2を含み、且つ、記録モジュール50bから合流位置B2までの他のいずれの経路とも共有されない個別部分と、合流位置B2から合流位置B1までの経路R3yと共有される共通部分と、合流位置B1から用紙受容部4までの経路R1y,R3yと共有される共通部分とを含む。経路R3yは、2つの合流位置B1,B2を含み、且つ、記録モジュール50cから合流位置B2までの他のいずれの経路とも共有されない個別部分と、合流位置B2から合流位置B1までの経路R2yと共有される共通部分と、合流位置B1から用紙受容部4までの経路R1y,R2yと共有される共通部分とを含む。
カバー1bは、鉛直方向に沿った軸1bxを中心として筐体1aに対して移動可能(回動可能)に取り付けられており、記録モジュール50a〜50cを筐体1aの外部に露出させて記録モジュール50a〜50cを筐体1aに対して移動可能とする開位置(図1に一点鎖線で示す位置)、及び、記録モジュール50a〜50cを覆って記録モジュール50a〜50cを筐体1aに対して移動不能とする閉位置(図1に実線で示す位置)を選択的に取ることが可能である。記録モジュール50a〜50cの筐体1aに対する移動や着脱は、カバー1bを開位置に保持した状態で行われる。鉛直方向において、カバー1bの長さHbは、記録モジュール50a〜50c全体の長さH以上である。また、カバー1bには、下流搬送機構20yの構成要素のうちローラ対25dを除く構成要素が設けられている。
記録モジュール50a〜50cは、鉛直方向に並んで配置されている。換言すると、筐体1aは、記録モジュール50a〜50cを鉛直方向に並列に支持している。鉛直方向において、記録モジュール50a〜50cのうち、記録モジュール50aが、用紙収容部3から最も遠く且つ用紙受容部4に最も近い位置にある。鉛直方向において、記録モジュール50a〜50cのうち、記録モジュール50cが、用紙収容部3に最も近く且つ用紙受容部4から最も遠い位置にある。
なお、本実施形態において、鉛直方向は、主走査方向及び副走査方向と直交する方向である。副走査方向は、水平面に平行で、且つ、経路R1x〜R3xの下流部分、モジュール内経路Ra〜Rc、及び経路R1y〜R3yの上流部分と平行な方向である。主走査方向は、水平面に平行で、且つ、副走査方向と直交する方向である。
記録モジュール50a〜50cは、互いに同じ構成であり、それぞれ、モジュール筐体5と、モジュール筐体5内に収容された、インクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)51、キャリッジ52、キャリッジ移動機構52x、モジュール搬送機構53、プラテン54(図2(a)〜(c)参照)、インク収容部57及び基板58とを含む。ヘッド51、キャリッジ52及びキャリッジ移動機構52xは、本発明に係る「液体(インク)を吐出して記録媒体(用紙P)に画像を記録するための記録部」に該当する。
ヘッド51は、シリアル式であって、キャリッジ52を介して筐体1aに支持されている。ヘッド51の上面はキャリッジ52に固定されており、ヘッド51の下面は複数の吐出口51b(図2(a)参照)が開口した吐出面51aである。制御ユニット100による制御の下、吐出口51bから所望タイミングでインクが吐出されることで、用紙Pに画像が記録される。なお、図2(a)では、キャリッジ52の下方にあって点線で示すべき吐出口51bを実線で描いている。
キャリッジ移動機構52xは、図2(a)〜(c)に示すように、ガイド52g1,52g2、プーリ52p1,52p2、ベルト52b及びキャリッジモータ52Mを含む。ガイド52g1,52g2は、鉛直方向から見て矩形の形状を有し、副走査方向に互いに離隔している。ガイド52g1,52g2は、ヘッド51の上部を挟み、且つ、キャリッジ52の副走査方向両端を主走査方向にスライド可能に支持している。プーリ52p1,52p2は、ガイド52g2の主走査方向一端及び他端にそれぞれ回転可能に支持されている。プーリ52p1,52p2は、直径が互いに同じであり、副走査方向に関して互いに同じ位置に配置されている。ベルト52bは、プーリ52p1,52p2に架け渡されたエンドレスベルトであり、プーリ52p1,52p2の回転に伴って走行する。キャリッジ52は、ベルト52bに固定されている。キャリッジモータ52Mは、鉛直方向に長尺な円柱形状を有し、ガイド52g2の下面に固定されている。キャリッジモータ52Mの回転軸は、プーリ52p1に取り付けられており、鉛直方向に延在している。プーリ52p1は、駆動プーリであり、制御ユニット100による制御の下、キャリッジモータ52Mの駆動により正逆回転する。これに伴い、ベルト52bが走行する。プーリ52p2は、従動プーリであり、ベルト52bの走行に伴って回転する。このようなキャリッジ移動機構52xの各部の動作に伴い、キャリッジ52がヘッド51を支持しつつ主走査方向に往復移動する。
モジュール搬送機構53は、用紙Pをモジュール内経路Ra〜Rcに沿って搬送方向D(副走査方向と平行な方向)に間欠的に搬送するように構成されており、ローラ対53a,53b及びモジュール搬送モータ53M(図3参照)を含む。ローラ対53aは、ヘッド51よりも搬送方向Dの上流に配置されている。ローラ対53bは、ヘッド51よりも搬送方向Dの下流に配置されている。各ローラ対53a,53bは、互いに接触する2つのローラを含む。各ローラ対53a,53bのうちの一方のローラは、制御ユニット100による制御の下、モジュール搬送モータ53Mの駆動により回転する駆動ローラである。各ローラ対53a,53bのうちの他方のローラは、上記一方のローラの回転に伴って回転する従動ローラである。各ローラ対53a,53bにおいて、一方のローラ及び他方のローラは、用紙Pを挟持しつつ互いに逆方向に回転する。これにより、用紙Pが搬送方向Dに搬送される。各ローラ対53a,53bのローラ同士の接触点によって、吐出面51aと対向する位置を通過するように、モジュール内経路Ra〜Rcが形成されている。
プラテン54は、ローラ対53a,53bの間であって、吐出面51aと対向する位置に配置されている。プラテン54の上面は、用紙Pを支持するための支持面54aであり、吐出面51aとの間に記録に適した間隙を形成している。
ローラ対53a,53b及びプラテン54は、一対のフランジ56によって支持されている。一対のフランジ56は、副走査方向に延在し、主走査方向に互いに離隔している。
インク収容部57は、インクを収容し、且つ、大気と連通している。また、インク収容部57は、チューブ(図示略)を介してヘッド51と連通している。インク収容部57内に収容されたインクは、制御ユニット100による制御の下、インク供給ポンプ57P(図3参照)の駆動により、チューブを介してヘッド51に供給される。インク収容部57は、本発明に係る「液体収容部」に該当し、記録モジュール50a〜50cと一体不可分に形成されており、記録モジュール50a〜50cに対して着脱不能である。インク収容部57が記録モジュール50a〜50cに支持されているとき、ユーザはインク収容部57にインクを補充することができない。また、インク供給ポンプ57Pは、本発明に係る「吐出回復部」に該当し、ヘッド51の吐出動作を回復させるためのパージ(ヘッド51内のインクに圧力を付与して複数の吐出口51bからインクを吐出させる動作)が行われるときに駆動される。
基板58には、メモリ58M(図3参照)が実装されている。メモリ58Mは、当該記録モジュール50a〜50c独自の情報(製造年月日等)を記憶してよい。
モジュール筐体5は、図4及び図5に示すように、4つの側壁5w1〜5w4、上壁5w5及び下壁5w6を有する。記録モジュール50a〜50cが筐体1aに支持された状態において、側壁5w1,5w2は鉛直方向及び主走査方向に延在し、側壁5w3,5w4は鉛直方向及び副走査方向に延在し、上壁5w5及び下壁5w6は水平方向に延在する。また、側壁5w1はローラ対53aよりも搬送方向Dの下流に配置され、側壁5w2はローラ対53aよりも搬送方向Dの上流に配置されている。
記録モジュール50a〜50cは、個別に、筐体1aに対して搬送方向Dに沿って移動可能であり、さらに筐体1aに対して着脱可能である。記録モジュール50a〜50cの筐体1aに対する移動や着脱は、例えばジャム処理、記録モジュール50a〜50cそのもの又はその構成部品(基板58)の交換等の際に、ユーザによって行われる。なお、インク収容部57は、上述のとおり、記録モジュール50a〜50cに対して着脱不能である。したがって、インク収容部57が空になったとき、ユーザは、記録モジュール50a〜50cごと交換する。
各記録モジュール50a〜50cは、筐体1aに支持された状態において、経路R1x〜R3xからモジュール内経路Ra〜Rcに用紙Pを供給可能に筐体1aに装着された装着位置(図1に実線で示す位置。図4及び図5の記録モジュール50a,50b参照)と、搬送方向Dと平行な移動経路Rxa〜Rxcに沿って装着位置から搬送方向Dに最も離れた引出位置(図1に一点鎖線で示す位置。図4及び図5の記録モジュール50c参照)との間で移動可能である。記録モジュール50a〜50cが装着位置にあるとき、ローラ対53a,53bは共に筐体1aの内部に配置されており、記録モジュール50a〜50cが引出位置にあるとき、ローラ対53a,53bは共に筐体1aの外部に配置されている。各記録モジュール50a〜50cは、搬送方向Dにおいて図1に一点鎖線で示す開位置にあるカバー1bの領域内で移動可能であり、引出位置にあるとき、開位置にあるカバー1bよりも搬送方向Dの下流に突出しない。
なお、各記録モジュール50a〜50cの筐体1aに対する移動及び着脱は、それぞれ、規制を解除して行われる。
各記録モジュール50a〜50cの筐体1aに対する搬送方向Dに沿った移動は、各記録モジュール50a〜50cの側壁5w3,5w4に設けられた一対の可動部材5x(図4及び図5参照)と、筐体1aに記録モジュール50a〜50c毎に設けられた一対の位置規制部(図示略)との当接によって、規制される。当該規制は、側壁5w1に設けられた一対の移動規制解除部材5zを搬送方向Dに引っ張ることで、解除される。各可動部材5xは、側壁5w3,5w4と直交する方向に沿った軸5xaを中心として回動可能であり、軸5xaが設けられた一端とは反対側の他端に、側壁5w3,5w4と直交する方向に突出した突起5xbを有する。突起5xbと位置規制部の突起とが搬送方向Dに対向しつつ当接することで、記録モジュール50a〜50cの筐体1aに対する搬送方向Dに沿った移動が規制される。移動規制解除部材5zが搬送方向Dに引っ張られると、可動部材5xが軸5xaを中心として回動し、突起5xbが位置規制部の突起から離隔し且つ当該突起と搬送方向Dに対向しない状態となり、記録モジュール50a〜50cの筐体1aに対する搬送方向Dに沿った移動の規制が解除される。このようにして規制が解除された状態で、記録モジュール50a〜50cを搬送方向Dに移動させることによって記録モジュール50a〜50cが筐体1aから引き出され、また、記録モジュール50a〜50cを搬送方向Dと反対の方向に移動させることによって記録モジュール50a〜50cが筐体1a内に収容される。筐体1aから引き出された記録モジュール50a〜50cが筐体1a内に収容され、記録モジュール50a〜50cが装着位置に到達すると、可動部材5xは、再び突起5xbと位置規制部の突起とが搬送方向Dに対向しつつ当接する位置に配置される。
各記録モジュール50a〜50cは、筐体1aに記録モジュール50a〜50c毎に設けられた一対の可動レール1lによって側壁5w3,5w4が支持された状態で、筐体1aに対して移動する(図4及び図5参照)。
筐体1aには、記録モジュール50a〜50c毎に、上記一対の可動レール1lと、一対の固定レール1mとが設けられている。各固定レール1mは、搬送方向Dに沿って延在し、筐体1aに固定されている。各可動レール1lは、搬送方向Dに沿って延在し、且つ、搬送方向Dと平行な方向に移動可能に固定レール1mに支持されている。記録モジュール50a〜50cが筐体1aに対して移動するとき、可動レール1lは、記録モジュール50a〜50cを支持しながら固定レール1mに対して移動する。
各記録モジュール50a〜50cの筐体1aに対する着脱は、側壁5w3,5w4の一方に設けられた係合部材が、一対の可動レール1lのうち当該一方の側壁と対向する一方の可動レール1lに設けられた穴に係合することによって、規制される(図示略)。換言すると、各記録モジュール50a〜50cは、一対の可動レール1lに着脱可能に支持されている。当該規制は、係合部材を穴から退避させることで、解除される。
なお、各記録モジュール50a〜50cの側壁5w1及び上壁5w5には、図4に示すように、開口5a,5bが設けられている。ジャム処理の際、ユーザは、記録モジュール50a〜50cを引出位置に配置し、又は、記録モジュール50a〜50cを筐体1aから離脱させて、ジャムした用紙Pを開口5a,5bからモジュール筐体5外に取り出すことができる。
また、各記録モジュール50a〜50cの側壁5w2には、図5に示すように、コネクタ5p及び一対の凹部5qが設けられている。筐体1aには、記録モジュール50a〜50c毎に、装着位置にある記録モジュールの側壁5w2と対向する対向部1axが設けられている。各対向部1axには、コネクタ1p及び一対の凸部(図示略)が設けられている。当該一対の凸部が一対の凹部5qに挿入されることで、記録モジュール50a〜50cが筐体1aに対して鉛直方向及び主走査方向に位置決めされる。
コネクタ1pには、図3に示す電力出力端子1p1及び接点1p2が設けられている。コネクタ5pには、電力入力端子5p1及び接点5p2が設けられている。電力出力端子1p1は、筐体1a内に配置された電源150と電気的に接続されており、電源150から供給された電力を出力する。電力入力端子5p1は、記録モジュール50a〜50cにおいて電力供給が必要な要素(ヘッド51、キャリッジモータ52M、モジュール搬送モータ53M、インク供給ポンプ57P及びメモリ58M)と電気的に接続されており、電力出力端子1p1と電気的に接続したときに電力出力端子1p1を介して入力される電力を上記要素に供給する。
記録モジュール50a〜50cが装着位置にあるとき、コネクタ1p,5pが係合している。このとき、電力出力端子1p1と電力入力端子5p1とが互いに接触して電気的に接続しており、電源150から電力出力端子1p1及び電力入力端子5p1を介して上記各要素に電力が供給されている。またこのとき、接点1p2,5p2同士が互いに接触して電気的に接続しており、記録モジュール50a〜50cと筐体1a内の制御ユニット100との間での信号の送受信が可能となっている。
記録モジュール50a〜50cが装着位置から引出位置に移動するとき、コネクタ1p,5pの係合が解除される。このとき、電力出力端子1p1と電力入力端子5p1とが互いに離隔し、電力出力端子1p1と電力入力端子5p1との電気的接続が解除されることで、上記各要素に電力が供給されなくなる。またこのとき、接点1p2,5p2が互いに離隔し、記録モジュール50a〜50cと筐体1a内の制御ユニット100との間での信号の送受信が不能となる。
記録モジュール50a〜50cが筐体1aから離脱した状態では、コネクタ1p,5pの係合が解除されており、電力出力端子1p1と電力入力端子5p1とが互いに離隔して電気的に接続されていないため、上記各要素には電力が供給されない。またこのとき、接点1p2,5p2が互いに離隔しており、記録モジュール50a〜50cと筐体1a内の制御ユニット100との間での信号の送受信が不能である。
制御ユニット100は、図3に示すように、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)104、I/F(Interface)105及びI/O(Input/Output Port)106を含む。ROM102は、CPU101が実行するプログラム等の固定データを記憶している。RAM103は、CPU101がプログラムを実行するために必要なデータ(画像データ等)を一時的に記憶する。ASIC104は、画像データの書き替え、並び替え等(例えば、信号処理や画像処理)を行う。I/F105は、外部装置(例えば、プリンタ1に接続されたPC)とデータの送受信を行う。I/O106は、各種センサと信号の送受信を行う。CPU101は、制御ユニット100に含まれるCPU101以外の各部と電気的に接続されており、各部から受信したデータに基づいて制御を行う。
CPU101は、本発明に係る「制御部」に該当する。ROM102及びRAM103は、本発明に係る「記憶部」に該当する。
ROM102は、図6に示すように、各記録モジュール50a〜50cの「記録可能枚数Aの初期値A0」と、「用紙1枚当たりのインク吐出量の閾値T」とを記憶している。「記録可能枚数A」は、記録モジュールの少なくとも記録部(ヘッド51、キャリッジ52及びキャリッジ移動機構52x)、モジュール搬送機構53及び吐出回復部(インク供給ポンプ57P)のいずれかの使用限度(以下、「記録モジュールの使用限度」という。)に達するまでに記録部によって記録可能な用紙Pの枚数をいう。「記録可能枚数A」は、記録モジュールの動作に伴い減少する。「初期値A0」は、記録モジュールの動作に伴う、記録モジュールの少なくとも記録部、モジュール搬送機構及び吐出回復部の劣化(例えば、キャリッジ52の往復移動に伴うキャリッジ移動機構52xの摺動部の摩耗やインク収容部57とヘッド51とを連通するチューブの疲労、ワイプに伴う吐出面51aの摩耗、記録に伴うモジュール搬送機構53のローラ対53a,53bの劣化、パージに伴うインク供給ポンプ57Pの劣化等)を考慮して設定される。
RAM103は、各記録モジュール50a〜50cの「記録済枚数X」及び「インク残量Y」を記憶する。「記録済枚数X」は、記録モジュールによって記録が行われた用紙Pの枚数をいい、本発明に係る「記録モジュールの少なくとも記録部、モジュール搬送機構53及び吐出回復部のいずれかの動作履歴情報」に該当する。「インク残量Y」は、インク収容部57内に残存するインクの量をいう。「記録済枚数X」は記録モジュールの動作に伴い増加し、「インク残量Y」は記録モジュールの動作に伴い減少する。なお、インク残量Yは、インク収容部57のインク満量から記録毎にインク吐出量を減算し、RAM103に記憶されてよい。
「記録済枚数X」から、「記録可能枚数A」を算出することができる。換言すると、「記録可能枚数A」は、「初期値A0」から「記録済枚数X」を減算することで得られる(A=A0−X)。
「インク残量Y」から、「記録可能枚数B」を算出することができる。「記録可能枚数B」は、所定の規格に基づく記録が記録モジュールによって行われると仮定した場合に、インク収容部57のインクが無くなるまでに記録部によって記録可能な用紙Pの枚数をいう。ここで、「所定の規格」とは、「記録部からの液体吐出に関する所定の規格」(例えば、ISO/IEC 24711等)である。「記録可能枚数B」は、記録部からのインクの吐出に伴い減少する。
つまり、RAM103は、各記録モジュール50a〜50cの「記録可能枚数B」に関する情報及び「記録可能枚数A」に関する情報(B/Aに関する情報)を記憶する。
本実施形態では、記録可能枚数Bの初期値をB0としたとき、各記録モジュール50a〜50cがA0≦B0となるように構成されている。
次いで、図7を参照し、CPU101により実行される記録モジュール50a〜50c毎の使用限度対応制御について説明する。図7に示すルーチンは、記録モジュール50a〜50c毎に並列に行われる。
CPU101は、先ず、当該記録モジュールの使用限度に達したか否かを判断する(S1)。S1は、本発明に係る「判断処理」に該当する。CPU101は、記録可能枚数A(=初期値A0−記録済枚数X)=0の場合に、当該記録モジュールの使用限度に達した(S1:YES)と判断する。
当該記録モジュールの使用限度に達していないと判断した場合(S1:NO)、CPU101は、当該記録モジュールの使用禁止フラグを「0」に設定する(S2)。S2の後、CPU101は、処理をS1に戻す。当該記録モジュールの使用限度に達したと判断した場合(S1:YES)、CPU101は、当該記録モジュールの使用禁止フラグを「1」に設定する(S3)。
使用禁止フラグは、後述の用紙搬送制御(図8)で用いられるものであり、使用禁止フラグが「0」であることは使用が許可されること(即ち、当該記録モジュールに用紙を搬送できること)を意味し、使用禁止フラグが「1」であることは使用が禁止されること(即ち、当該記録モジュールに用紙を搬送できないこと)を意味する。
S3の後、CPU101は、当該記録モジュールの使用限度に達したことをプリンタ1に設けられたディスプレイ7(図3参照)に表示する(S4)。S4の後、CPU101は、当該ルーチンを終了する。
S3及びS4は、本発明に係る「報知処理」に該当する。
次いで、図8を参照し、CPU101により実行される各記録モジュール50a〜50cに対する用紙Pの搬送制御について説明する。
本実施形態では、複数の用紙Pに対して連続的に記録を行う場合に、上から順番に(所定の順番で)用紙Pが搬送される(即ち、n=3m+1(mは0以上の整数)枚目の用紙Pは上から1段目の記録モジュール50aに搬送され、n=3m+2枚目の用紙Pは上から2段目の記録モジュール50bに搬送され、n=3m+3枚目の用紙Pは上から3段目の記録モジュール50cに搬送される)ように予め設定されている。ただし、以下のような制御によって、順番が変更される場合がある。
CPU101は、先ず、外部装置から記録指令を受信したか否かを判断する(S21)。記録指令を受信していないと判断した場合(S21:NO)、CPU101は、S21の処理を繰り返す。記録指令を受信したと判断した場合(S21:YES)、CPU101は、「n=0」「k=1」と設定する(S22)。「n」は頁番号、「k」は上から「k」段目の記録モジュールを意味する。S22の後、CPU101は、「n=n+1」と設定する(S23)。S23の後、CPU101は、上からk段目の記録モジュールの使用禁止フラグが「0」に設定されているか否かを判断する(S24)。
上からk段目の記録モジュールの使用禁止フラグが「0」に設定されていないと判断した場合(S24:NO)、CPU101は、「k=k+1」と設定する(S25)。S25の後、CPU101は、k>3か否かを判断する(S26)。本実施形態ではk>3に該当する記録モジュールが存在しないため、k>3と判断した場合(S26:YES)、CPU101は、「k=1」と設定する(S27)。k>3でないと判断した場合(S26:NO)、又は、S27の後、CPU101は、処理をS24に戻す。
上からk段目の記録モジュールの使用禁止フラグが「0」に設定されていると判断した場合(S24:YES)、CPU101は、n枚目の用紙Pに対するインク吐出量が、ROM102に記憶された閾値Tを超えるか否かを判断する(S28)。n枚目の用紙Pに対するインク吐出量が閾値Tを超えると判断した場合(S28:YES)、CPU101は、RAM103に記憶された情報に基づき、上からk段目の記録モジュールが、記録モジュール50a〜50cのうちB/Aが最も小さいモジュール(B/A最小モジュール)であるか否かを判断する(S29)。n枚目の用紙Pに対するインク吐出量が閾値Tを超えない(閾値T以下)と判断した場合(S28:NO)、CPU101は、RAM103に記憶された情報に基づき、上からk段目の記録モジュールが、記録モジュール50a〜50cのうちB/Aが最も大きいモジュール(B/A最大モジュール)であるか否かを判断する(S30)。
なお、B/Aの値は、記録モジュールの動作に伴い変化する。CPU101は、S29,S30の各ステップにおいて、その時点でRAM103に記憶されている情報に基づき、最新のB/Aを取得し、判断を行う。
上からk段目の記録モジュールがB/A最小モジュールであると判断した場合(S29:YES)、又は、上からk段目の記録モジュールがB/A最大モジュールであると判断した場合(S30:YES)、CPU101は、処理をS25に移す。ここで、S28:YES→S29:YES→S25が本発明に係る「高デューティスキップ処理」に該当する。S28:NO→S30:YES→S25が本発明に係る「低デューティスキップ処理」に該当する。
上からk段目の記録モジュールがB/A最小モジュールでないと判断した場合(S29:NO)、又は、上からk段目の記録モジュールがB/A最大モジュールでないと判断した場合(S30:NO)、CPU101は、上からk段目の記録モジュールに用紙Pが搬送されるように、切替モータ28aM,28bM及び上流搬送モータ20xMを制御する(S31)。S31の後、CPU101は、S21で受信した記録指令に基づく記録が完了したか否かを判断する(S32)。記録が完了したと判断した場合(S32:YES)、CPU101は、当該ルーチンを終了する。記録が完了していないと判断した場合(S32:NO)、CPU101は、「k=k+1」と設定する(S33)。S33の後、CPU101は、k>3か否かを判断する(S34)。本実施形態ではk>3に該当する記録モジュールが存在しないため、k>3と判断した場合(S34:YES)、CPU101は、「k=1」と設定する(S35)。k>3でないと判断した場合(S34:NO)、又は、S35の後、CPU101は、処理をS23に戻す。
以上に述べたように、本実施形態によれば、筐体1aに対して着脱可能に支持された各記録モジュール50a〜50cは、記録可能枚数A(記録モジュール50a〜50cの少なくとも記録部(ヘッド51、キャリッジ52及びキャリッジ移動機構52x)、モジュール搬送機構53及び吐出回復部(インク供給ポンプ57P)のいずれかの使用限度に達するまでに記録部によって記録可能な用紙Pの枚数)の初期値A0が、記録可能枚数B(所定の規格に基づく記録が記録モジュール50a〜50cによって行われると仮定した場合に、インク収容部57のインクが無くなるまでに記録部によって記録可能な用紙Pの枚数)の初期値B0以下(即ち、A0≦B0)となるように構成されている。そのため、記録モジュール50a〜50cの使用限度に達していないときにインク収容部57が空になり記録モジュール50a〜50cを交換する必要が生じるという事態を回避可能である。
筐体1aに複数の記録モジュール50a〜50cが個別に着脱可能に支持された構成において、CPU101が高デューティスキップ処理(図8のS28:YES→S29:YES→S25)を実行することで、記録モジュール50a〜50cにおいてB/Aが均等化される。また、使用過程でA>Bとなった記録モジュールのA,Bの関係がA≦Bに近づくことになる。これにより、上記事態をより確実に回避することができる。
さらに、CPU101が低デューティスキップ処理(図8のS28:NO→S30:YES→S25)を実行することで、記録モジュール50a〜50cにおけるB/Aの均等化をより促進することができ、上記事態をより確実に回避することができる。
CPU101は、記録モジュールの使用限度に達したと判断した場合に行う報知処理において、当該記録モジュールに対する用紙Pの搬送を禁止する(図7のS3)。上記構成によれば、記録の不具合を抑制することができる。また、本実施形態のように複数の記録モジュール50a〜50cが筐体1aに個別に着脱可能に支持される場合に、当該記録モジュール以外の記録モジュールを用いて、記録を続行することができる。
続いて、図9及び図10を参照し、本発明の第2実施形態に係るプリンタについて説明する。第2実施形態は、ROM102の記憶情報及びCPU101により実行される用紙搬送制御の内容が第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同じである。
本実施形態において、ROM102は、図9に示すように、各記録モジュール50a〜50cの「記録可能枚数Aの初期値A0」と、「B/Aと用紙1枚当たりのインク吐出量の閾値Tとが対応付けられたテーブル」とを記憶している。当該テーブルでは、「B/A」が段階的に区分され、「B/A」が小さいほど小さい閾値T(T1<T2<T3<T4)が対応付けられている。ROM102に記憶された当該テーブルと、RAM103に記憶された各記録モジュール50a〜50cのB/Aに関する情報とから、記録モジュール50a〜50cのそれぞれに対して定められた閾値Tが得られる。
本実施形態において用紙搬送制御でCPU101が行うS51〜S63は、第1実施形態におい用紙搬送制御でCPU101が行うS21〜S35と、S28〜S30を行わずにS58を行う点が異なるだけで、それ以外は同じである。
第1実施形態のS28では、「全ての記録モジュール50a〜50cに共通の閾値T」を用いるのに対し、本実施形態のS58では、「各記録モジュール50a〜50cに対して定められた閾値T」(即ち、記録モジュール50a〜50c毎に個別の閾値T)を用いる。S58において、CPU101は、ROM102に記憶されたテーブルに、当該記録モジュールに対して定められたB/Aを当てはめて、当該記録モジュール専用の閾値Tを取得する。そしてCPU101は、取得された当該記録モジュール専用の閾値Tを用いて、n枚目の用紙Pに対するインク吐出量が閾値Tを超えるか否かを判断する。n枚目の用紙Pに対するインク吐出量が閾値Tを超えると判断した場合(S58:YES)、CPU101は、処理をS55に移し、当該記録モジュールとは別の記録モジュールに用紙Pが搬送されるようにする。n枚目の用紙Pに対するインク吐出量が閾値Tを超えない(閾値T以下)と判断した場合(S58:NO)、CPU101は、処理をS59に移し、当該記録モジュールに用紙Pが搬送されるようにする。ここで、S58:YES→S55が本発明に係る「個別高デューティスキップ処理」に該当する。
なお、B/Aの値は、記録モジュールの動作に伴い変化する。CPU101は、S58において、その時点でRAM103に記憶されている情報に基づき、最新のB/Aを取得し、判断を行う。
以上に述べたように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の構成による同様の効果に加え、以下のような効果を得ることができる。
筐体1aに複数の記録モジュール50a〜50cが個別に着脱可能に支持された構成において、CPU101が個別高デューティスキップ処理(図10のS58:YES→S55)を実行することで、記録モジュール50a〜50cにおいてB/Aが均等化される。また、使用過程でA>Bとなった記録モジュールのA,Bの関係がA≦Bに近づくことになる。これにより、上記事態をより確実に回避することができる。
続いて、本発明の第3実施形態に係るプリンタについて説明する。第3実施形態は、各記録モジュール50a〜50cの構成、RAM103の記憶情報及びCPU101により実行される用紙搬送制御の内容が第2実施形態と異なり、それ以外は第2実施形態と同じである。
第3実施形態において、各記録モジュール50a〜50cのヘッド51は、図11に示すように、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色インクを吐出する4つのヘッド511〜514を含む。また、インク収容部57は、ヘッド511〜514のそれぞれに供給されるインクを収容した4つの収容部571〜574を含む。キャリッジ52は4つのヘッド511〜514を支持しつつ主走査方向に往復移動する。
第3実施形態において、RAM103は、各記録モジュール50a〜50cの「記録済枚数X」と、各記録モジュール50a〜50cにおける各収容部571〜574の「インク残量Y」とを記憶する。各収容部571〜574の「インク残量Y」から、ヘッド511〜514毎(色毎)の「記録可能枚数B」を算出することができる。また、ROM102に記憶されたテーブル(図9参照)に、色毎のB/Aを当てはめることで、記録モジュール50a〜50cのそれぞれに対してヘッド511〜514毎(色毎)に定められた閾値Tが得られる。
第3実施形態においてCPU101が行う用紙搬送制御は、第2実施形態においてCPU101が行う用紙搬送制御と、S58の内容が異なるだけで、それ以外は同じである。
本実施形態のS58において、CPU101は、ROM102に記憶されたテーブル(図9参照)に、当該記録モジュールのヘッド511〜514毎(色毎)のB/Aを当てはめて、当該記録モジュールの色毎の閾値Tを取得する。そしてCPU101は、取得された色毎の閾値Tのうち最も小さい閾値を用いて、n枚目の用紙Pに対するインク吐出量が閾値Tを超えるか否かを判断する。
以上に述べたように、本実施形態によれば、第2実施形態と同様の構成による同様の効果に加え、以下のような効果を得ることができる。
各記録モジュール50a〜50cで複数色の記録を行うプリンタ1において、CPU101が個別高デューティスキップ処理(図10のS58:YES→S55)で色毎に定められた閾値Tのうち最も小さい閾値を基準として判断を行う。このように、閾値が最も小さい(即ちB/Aが最も小さい)色に着目して制御を行うことで、上記事態をより確実に回避することができ、且つ、制御を簡素化することができる。
続いて、本発明の第4実施形態に係るプリンタについて説明する。第4実施形態は、各記録モジュール50a〜50cの構成、RAM103の記憶情報及びCPU101により実行される用紙搬送制御の内容が第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同じである。
第4実施形態の各記録モジュール50a〜50cの構成は、第3実施形態と同様である。即ち、各記録モジュール50a〜50cのヘッド51は、図11に示すように、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色インクを吐出する4つのヘッド511〜514を含む。また、インク収容部57は、ヘッド511〜514のそれぞれに供給されるインクを収容した4つの収容部571〜574を含む。キャリッジ52は4つのヘッド511〜514を支持しつつ主走査方向に往復移動する。
第4実施形態において、RAM103は、各記録モジュール50a〜50cの「記録済枚数X」と、各記録モジュール50a〜50cにおける収容部571〜574のうち黒色に対応する収容部の「インク残量Y」とを記憶する。この「インク残量Y」から、黒色での「記録可能枚数B」を算出することができる。つまり、RAM103は、各記録モジュール50a〜50cの「黒色記録部のB/Aに関する情報」を記憶する。
第4実施形態においてCPU101が行う用紙搬送制御は、第1実施形態においてCPU101が行う用紙搬送制御と、S29,S30の内容が異なるだけで、それ以外は同じである。
本実施形態のS29,S30において、CPU101は、RAM103に記憶された各記録モジュール50a〜50cの「黒色記録部のB/Aに関する情報」に基づき、当該記録モジュールがB/A最小モジュール又はB/A最大モジュールであるか否かを判断する。
以上に述べたように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の構成による同様の効果に加え、以下のような効果を得ることができる。
各記録モジュール50a〜50cで複数色の記録を行うプリンタ1において、CPU101は、使用頻度が最も高いと想定される黒色の記録部に着目して制御を行う。これにより、制御を簡素化しつつ、上記事態を回避することができる。
続いて、本発明の第5実施形態に係るプリンタについて説明する。第5実施形態は、各記録モジュール50a〜50cの構成、RAM103の記憶情報及びCPU101により実行される用紙搬送制御の内容が第2実施形態と異なり、それ以外は第2実施形態と同じである。
第5実施形態の各記録モジュール50a〜50cの構成は、第3実施形態と同様である。即ち、各記録モジュール50a〜50cのヘッド51は、図11に示すように、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色インクを吐出する4つのヘッド511〜514を含む。また、インク収容部57は、ヘッド511〜514のそれぞれに供給されるインクを収容した4つの収容部571〜574を含む。キャリッジ52は4つのヘッド511〜514を支持しつつ主走査方向に往復移動する。
第5実施形態において、RAM103は、各記録モジュール50a〜50cの「記録済枚数X」と、各記録モジュール50a〜50cにおける収容部571〜574のうち黒色に対応する収容部の「インク残量Y」とを記憶する。この「インク残量Y」から、黒色での「記録可能枚数B」を算出することができる。つまり、RAM103は、各記録モジュール50a〜50cの「黒色記録部のB/Aに関する情報」を記憶する。
第5実施形態においてCPU101が行う用紙搬送制御は、第2実施形態においてCPU101が行う用紙搬送制御と、S58の内容が異なるだけで、それ以外は同じである。
本実施形態のS58において、CPU101は、ROM102に記憶されたテーブルに、当該記録モジュール50a〜50cに対して定められた「黒色記録部のB/A」を当てはめて、当該記録モジュール専用の閾値Tを取得する。そしてCPU101は、取得された当該記録モジュール専用の閾値Tを用いて、n枚目の用紙Pに対するインク吐出量が閾値Tを超えるか否かを判断する。
以上に述べたように、本実施形態によれば、第2実施形態と同様の構成による同様の効果に加え、以下のような効果を得ることができる。
各記録モジュール50a〜50cで複数色の記録を行うプリンタ1において、CPU101は、使用頻度が最も高いと想定される黒色の記録部に着目して制御を行う。これにより、制御を簡素化しつつ、上記事態を回避することができる。
続いて、図12を参照し、本発明の一変形例に係るプリンタについて説明する。本変形例は、RAM103の記憶情報及びCPU101により実行される使用限度対応制御及び用紙搬送制御の内容が第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同じである。
本変形例において、RAM103は、各記録モジュール50a〜50cの「記録済枚数X」を記憶するが、「インク残量Y」は記憶しなくてよい(図6参照)。即ち、RAM103は、各記録モジュール50a〜50cの「記録可能枚数B」に関する情報(さらに、B/Aに関する情報)を記憶しなくてよい。ただし、本変形例において、RAM103は、インク吐出量が閾値Tを超える記録(高デューティ記録)を行った記録モジュールに関する情報を記憶する。
本変形例においてCPU101が行う使用限度対応制御は、第1実施形態でCPU101が行う使用限度対応制御においてS2,S3(使用禁止フラグの設定処理)を省略したものである。
本変形例の用紙搬送制御において、CPU101は、先ず、外部装置から記録指令を受信したか否かを判断する(S81)。記録指令を受信していないと判断した場合(S81:NO)、CPU101は、S81の処理を繰り返す。記録指令を受信したと判断した場合(S81:YES)、CPU101は、「n=0」と設定する(S82)。「n」は頁番号を意味する。S82の後、CPU101は、「n=n+1」と設定する(S83)。
S83の後、CPU101は、n枚目の用紙Pに対するインク吐出量が、ROM102に記憶された閾値Tを超えるか否かを判断する(S84)。n枚目の用紙Pに対するインク吐出量が閾値Tを超えない(閾値T以下)と判断した場合(S84:NO)、CPU101は、RAM103に記憶された情報に基づき、高デューティ記録を行った記録モジュールがあるか否かを判断する(S85)。高デューティ記録を行った記録モジュールがあると判断した場合(S85:YES)、CPU101は、高デューティ記録を行った記録モジュール(高デューティ記録を行った記録モジュールが複数ある場合はその中の任意のモジュール)に用紙Pが搬送されるように、切替モータ28aM,28bM及び上流搬送モータ20xMを制御する(S86)。高デューティ記録を行った記録モジュールがないと判断した場合(S85:NO)、CPU101は、任意の記録モジュールに用紙Pが搬送されるように、切替モータ28aM,28bM及び上流搬送モータ20xMを制御する(S87)。
n枚目の用紙Pに対するインク吐出量が閾値Tを超えると判断した場合(S84:YES)、CPU101は、RAM103に記憶された情報に基づき、高デューティ記録を行った記録モジュールがあるか否かを判断する(S88)。高デューティ記録を行った記録モジュールがないと判断した場合(S88:NO)、CPU101は、処理をS87に移し、任意の記録モジュールに用紙Pが搬送されるように、切替モータ28aM,28bM及び上流搬送モータ20xMを制御する。
高デューティ記録を行った記録モジュールがあると判断した場合(S88:YES)、CPU101は、高デューティ記録を行っていない記録モジュールがあるか否かを判断する(S89)。高デューティ記録を行っていない記録モジュールがあると判断した場合(S89:YES)、CPU101は、処理をS86に移し、高デューティ記録を行っていない記録モジュール(高デューティ記録を行っていない記録モジュールが複数ある場合はその中の任意のモジュール)に用紙Pが搬送されるように、切替モータ28aM,28bM及び上流搬送モータ20xMを制御する。高デューティ記録を行っていない記録モジュールがないと判断した場合(S89:NO)、CPU101は、処理をS87に移し、任意の記録モジュールに用紙Pが搬送されるように、切替モータ28aM,28bM及び上流搬送モータ20xMを制御する。
S86の後、又は、S87の後、CPU101は、S81で受信した記録指令に基づく記録が完了したか否かを判断する(S90)。記録が完了したと判断した場合(S90:YES)、CPU101は、当該ルーチンを終了する。記録が完了していないと判断した場合(S90:NO)、CPU101は、処理をS83に戻す。
以上、本発明の好適な実施の形態及び変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態及び変形例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
・「動作履歴情報」は、記録済枚数Xに限定されず、記録済枚数Xを算出可能な
情報(例えば、ヘッドの往復動回数、液体吐出量、パージ回数、ワイプ回数、加湿回数等の履歴情報)であってもよい。即ち、「動作履歴情報」における「動作」は、記録動作に限定されず、吐出回復に係る動作(例えば、パージ、ワイプ、加湿等)」であってよい。また、「動作履歴情報」は、記録可能枚数Aであってもよい。
・第2及び第5実施形態では、B/Aと閾値とが対応付けられたテーブルが記憶部に記憶されており、制御部は当該テーブルにB/Aを当てはめて閾値を取得するが、これに限定されない。例えば、B/Aから閾値を算出可能な計算式が記憶部に記憶されており、制御部は、当該計算式にB/Aを当てはめて閾値を算出してもよい。
・報知処理は、当該記録モジュールに対する記録媒体の搬送を禁止することを含まず、単にユーザに報知を行うだけでもよい。ユーザへの報知は、当該記録モジュールに設けられた出力部(例えば、発光部、ディスプレイ等の画像出力部、スピーカ等の音声出力部)を介して行われてよい。
・制御部による制御内容は上述したものに限定されず、制御部が判断処理及び報知処理を実行し、且つ、A0≦B0となるように構成されている限り、制御部は任意の処理を行ってよい。例えば、制御部は、所定の順番で複数の記録モジュールに記録媒体を搬送する場合において、1頁目について、高デューティスキップ処理、低デューティスキップ処理、個別高デューティスキップ処理等を行い、2頁目以降は、1頁目を搬送した記録モジュールを基準にして所定の順番で搬送してよい。
・記憶部は、Bに関する情報(B/Aに関する情報)を記憶しなくてもよい(上記変形例参照)。
・記録モジュールに設けられた記憶部が、動作履歴情報や初期値A0を記憶してもよい。
・記録モジュールの筐体からの引出方向は、搬送方向であることに限定されず、搬送方向と直交する方向(例えば主走査方向)等であってもよい。また、記録モジュールの筐体に対する着脱方向は、特に限定されず(例えば搬送方向でもよく)、また、引出方向と同じであってもよいし異なってもよい。
・上述の実施形態では、記録モジュールを筐体から引き出して引出位置に配置してから、記録モジュールの筐体に対する着脱を行う構成であるが、これに限定されない。
・記録装置に含まれる記録モジュールの数は、任意であり、1つであってもよい。
・記録部は、シリアル式に限定されず、ライン式であってもよい。
・吐出回復部は、ポンプに限定されず、吐出口の乾燥防止のため吐出面を封止するキャップ、パージで吐出された液体を受容する廃液タンク、吐出面付近の加湿を行うための加湿機構等であってもよい。
・搬送機構及びモジュール搬送機構は、いずれも、記録媒体を挟持しつつ回転するローラ対を含む構成に限定されず、記録媒体を表面に支持しつつ走行するベルトを含む構成であってもよい。
・液体収容部に収容される液体は、インクに限定されず、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等であってもよい。
・記録モジュールは、基板を支持していなくてもよい。
・記録装置は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等であってもよい。
・記録媒体は、用紙に限定されず、布等であってもよい。