チューブ供給方式によれば、インクカートリッジを記録ヘッドとともに主走査方向に移動させる必要がなく、記録ヘッドの走査機構を小型化することが容易になる。これにより、特に、記録装置の上下方向のサイズを小さくすることが容易になる。
ところが、チューブ供給方式を採用する場合、インクジェット記録装置の筐体の内部に、チューブの取り回しスペースを確保する必要が生じる。チューブの取り回しスペースはデッドスペースであり、記録装置のコンパクト化のためには、そのスペースを可能な限り小さくすることが望ましい。そして、その取り回しスペースを小さくするためには、略U字状に湾曲させたチューブにより記録ヘッドとインク貯留部とを接続し、その湾曲部の曲率半径をできるだけ小さくすることが望ましい。
ところが、チューブの曲率半径が小さくなればなるほど、元の形状を回復しようとする弾性回復力、つまり、チューブの曲げに対する反力は大きくなる。そのような反力が記録ヘッドに対して記録ヘッドの主走査方向と直交する方向に作用すると、記録ヘッドを水平面内で回転させる回転力が生じ、その結果、ガイドにより案内される記録ヘッドの移動にガタつきが生じることも考えられる。記録ヘッドの移動にガタつきが生じると、記録ヘッドから印字用のシートに向かって吐出されるインクの着弾位置にずれが生じ、印字品質の低下を招来することも考えられる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、吐出ヘッドに接続される樹脂チューブを湾曲させることによって生じる反力に起因して、吐出ヘッドから吐出される液体の着弾精度が低下するのを抑制することができる液体吐出装置の製造方法、及び液体吐出装置を提供することにある。
(1) 本発明の一実施形態に係る液体吐出装置の製造方法は、シートを搬送方向に搬送する搬送部と、上記搬送部によって搬送されるシートに向かって液体を吐出する吐出ヘッド、上記吐出ヘッドを搭載し、上記搬送方向と直交する主走査方向に往復移動するキャリッジ、及び上記キャリッジの移動を案内するガイドを有する吐出部と、液体を貯留する貯留部と、略U字状に湾曲された湾曲形状を有する状態で、第1端部が上記貯留部と接続され、第2端部が上記吐出ヘッドと接続される樹脂チューブと、を具備した液体吐出装置を製造する方法に関する。ここで、上記樹脂チューブの湾曲部の曲率半径は、上記キャリッジが上記主走査方向に沿って上記キャリッジの移動範囲の一端から他端に向かって移動するのにつれて小さくなる。そして、該製造方法は、上記キャリッジが上記移動範囲の中央よりも上記他端よりの第1位置にあるときの上記樹脂チューブの上記湾曲形状と同じ湾曲形状を有するように上記樹脂チューブを治具により固定する第1処理と、上記治具により固定された上記樹脂チューブの湾曲部を、上記樹脂チューブが軟化する第1温度まで加熱した後、上記第1温度よりも低い第2温度まで冷却することで、上記樹脂チューブを自然状態で湾曲するように永久変形させる第2処理と、を含む。
上記構成によれば、自然状態で湾曲するように永久変形されたチューブを使用して吐出ヘッドと液体貯留部とが接続される。このため、自然状態で略直線状である樹脂チューブを使用する場合と比較して、チューブの湾曲による反力を小さくすることが容易になる。これにより、例えば、大きな上記反力が吐出ヘッドに対して吐出ヘッドの主走査方向と直交する方向に作用し、吐出ヘッドから吐出される液体の着弾精度が低下するのを抑制することができる。
特に、第1位置は、キャリッジの移動範囲の中で、チューブに対する曲げが比較的にきつくなる(チューブの湾曲部の曲率半径が比較的に小さくなる)キャリッジの位置であり、このとき、上記反力は比較的に大きくなる。このため、キャリッジが第1位置にあるときのチューブの湾曲形状と同じ湾曲形状を有するように、加熱及び冷却によりチューブを永久変形させることで、効果的に上記反力を低減することができる。これにより、吐出ヘッドから吐出される液体の着弾精度の低下が抑制されるので、例えば液体吐出装置がインクジェット記録装置である場合には、印字品質が低下するのを抑制することができる。
また、上記構成によれば、チューブの材料の選定等によりチューブの物性(弾力性、固さ)を調整することで、上記反力を抑えるのではなく、チューブに簡単な加熱、冷却の処理を施すことにより上記反力を抑えることができる。このため、大きなコストアップを招来することなく、印字品質を向上させることができる。また、上記反力を抑えることだけを重視した材料の選定の結果、インクの送給路としてのチューブの重要な物性(耐食性、ガス透過に対するバリア性等)が犠牲にされることもない。
ここで、略U字状に湾曲された湾曲形状を有する状態のチューブとは、第1方向成分を含む方向に延びたチューブが湾曲して第1方向と反対の第2方向成分を含む方向に延びている状態のチューブである。また、チューブを湾曲させる方向は、水平方向(または、水平面(あるいは、シートに平行な平面)と平行な方向)に限らず、鉛直方向(または、重力方向に平行な方向)や水平方向から傾いた方向であってもよい。
(2) 好ましくは、該製造方法においては、上記樹脂チューブが熱可塑性樹脂を主成分として含む。
上記構成によれば、チューブを加熱し、冷却するという簡単な処理により、上記反力を効果的に低減することができる。その結果、コストアップ及び製造時間の長時間化を抑制することができる。
(3) 好ましくは、該製造方法においては、上記熱可塑性樹脂がポリエチレンである。
上記構成によれば、低コストでガス透過に対する良好なバリア性を発揮する液体の送給路を形成することができる。特に低密度ポリエチレン(LDPE:Low Density Polyethylene)が好ましい。
(4) また、好ましくは、該製造方法においては、上記熱可塑性樹脂がポリプロピレンである。
上記構成によれば、低コストでガス透過に対する良好なバリア性を発揮する液体の送給路を形成することができる。
(5) 好ましくは、該製造方法においては、上記第1位置が、上記キャリッジの上記移動範囲の上記他端の位置と一致している。
上記構成によれば、キャリッジの主走査方向における移動とともに変化する湾曲部の曲率半径が最小になるときの樹脂チューブの湾曲形状と同じ湾曲形状を有するように樹脂チューブが永久変形される。実施例によれば、そのような永久変形をチューブに与えることで、上記反力の最小値は微増し、その一方で、最大値は大幅に低下した(図9の折れ線L1(永久変形なし)と折れ線L7(永久変形あり)を比較参照のこと)。したがって、実施例において、上記反力の最小値と最大値の差異を大幅に小さくすることができた。これにより、特に、キャリッジを主走査方向に移動するときの、上記反力に起因する上記キャリッジの水平面内の回転力の変動を抑えることができる。したがって、キャリッジを主走査方向に移動する際に生じるガタつきを効果的に低減することができる。
(6) 好ましくは、該製造方法においては、上記樹脂チューブが2以上あり、それぞれの上記樹脂チューブの上記第2端部を、当該第2端部を上記吐出ヘッドに接続するためのコネクタに接続し、かつ、上記2以上の樹脂チューブを、それぞれの上記樹脂チューブの上記第1端部と上記第2端部との間の少なくとも一箇所で互いに結束した状態で、上記第1処理及び上記第2処理を実行する。
液体吐出装置としては、例えば、カラー印刷が可能であるインクジェット記録装置が考えられるが、上記構成によれば、カラー印刷が可能である一般的なインクジェット記録装置で実際に使用するときと同様の条件下で各チューブに永久変形を与えることができる。これにより、例えば、個別に永久変形させた後に複数のチューブの各端部をコネクタに接続する場合と比較すると、キャリッジの移動による各チューブの変形が均一となり、一束に結束した複数のチューブの配置の乱れを最小限度に抑えることが容易になる。したがって、チューブが他部材と干渉したり、吐出ヘッドに対して各チューブから様々な方向に反力が作用するのを防止することができる。これにより、印字品質の向上を容易にすることができる。
(7) 好ましくは、該製造方法においては、上記湾曲部を、上記第1温度以上の水に浸すことにより加熱する。
上記構成によれば、第1温度が100℃以下である場合には、その温度にまで加熱した水に湾曲部を浸せばよく、製造方法が簡便となる。また、チューブが局所的に100℃を超えるような高温度まで加熱されることもないので、加熱処理でチューブが損傷するのを防止することもできる。
(8) 本発明の一実施形態に係る液体吐出装置は、シートを搬送方向に搬送する搬送部と、上記搬送部によって搬送されるシートに向かって液体を吐出する吐出ヘッド、上記吐出ヘッドを搭載し、上記搬送方向と直交する主走査方向に往復移動するキャリッジ、及び上記キャリッジの移動を案内するガイドを有する吐出部と、液体を貯留する貯留部と、略U字状に湾曲された状態で、第1端部が上記貯留部と接続され、第2端部が上記吐出ヘッドと接続される第1樹脂チューブと、を具備する。該装置においては、上記第1樹脂チューブの湾曲部の曲率半径が、上記キャリッジが上記主走査方向に沿って上記キャリッジの移動範囲の一端から他端に向かって移動するのにつれて小さくなる。上記第1樹脂チューブは、自然状態で略U字状に湾曲する第1湾曲部を有し、上記第1湾曲部の曲率半径R1は、自然状態における形状が略直線状であり、かつ長さ、径及び材質が上記第1樹脂チューブと同じである第2樹脂チューブを上記第1樹脂チューブに代えて上記吐出ヘッド及び上記貯留部と接続し、上記キャリッジを上記移動範囲の中央よりも上記他端よりにある第1位置に移動したときに、上記第2樹脂チューブに形成される第2湾曲部の曲率半径R2と略等しい。
本発明によれば、吐出ヘッドに接続された樹脂チューブを湾曲させることによって生じる反力に起因して、吐出ヘッドから吐出される液体の着弾精度が低下するのを防止することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態であって、「使用状態」と表記することがある。)若しくは姿勢(図1の姿勢であって、「使用姿勢」と表記することがある。)を基準として上方向7A及び下方向7Bが定義され、複合機10の開口13が設けられている側を手前(前面)として前方向8A及び後方向8Bが定義され、複合機10を手前(前面)から見て左方向9A及び右方向9Bが定義される。
[複合機10の全体構成]
複合機10は、図1に示されるように、概ね直方体に形成されている。複合機10は、下部にインクジェット記録方式で用紙12(シートの一例。図2参照)に画像を記録するプリンタ部11を有している。プリンタ部11は、図2に示されるように、給送部15と、給送トレイ20と、排出トレイ21と、搬送ローラ部54と、記録部24と、排出ローラ部55と、プラテン42と、インクタンク100(貯留部の一例)とを備えている。また、複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。複合機10は、液体吐出装置の一例である。また、搬送ローラ部54及び排出ローラ部55は、搬送部の一例を構成する。
[給送トレイ20、排出トレイ21]
給送トレイ20は、図1に示されるように、複合機10の前面で且つ複合機10の左方向9A及び右方向9Bにおける中央部に形成された開口13を通じて前方向8A及び後方向8Bにユーザによって複合機10に対して挿抜される。給送トレイ20は、積層された複数の用紙12を支持可能である。排出トレイ21は、給送トレイ20の上方に配置されており、給送トレイ20と共に挿抜される。排出トレイ21は、排出ローラ部55によって記録部24とプラテン42との間から排出された用紙12を支持する。
[給送部15]
給送部15は、給送トレイ20に支持された用紙12を搬送経路65へ給送する。給送部15は、図2に示されるように、給送ローラ25と、給送アーム26と、軸27とを備えている。給送ローラ25は、給送アーム26の先端部で回転可能に支持されている。給送ローラ25は、搬送モータ(不図示)の回転によって、用紙12を搬送方向16に搬送する向きに回転する。以下、給送ローラ25、搬送ローラ60、及び排出ローラ62が、用紙12を搬送方向16に搬送する向きに回転することを、「正回転」と表記する。給送アーム26は、プリンタ部11のフレームに支持された軸27に回動可能に支持されている。給送アーム26は、自重或いはバネ等による弾性力によって給送トレイ20の方へ回動するように付勢されている。
[搬送経路65]
搬送経路65は、図2に示されるように、その一部がプリンタ部11の内部において、所定間隔で対向する外側ガイド部材18及び内側ガイド部材19によって形成される空間を指す。搬送経路65は、給送トレイ20の後端部からプリンタ部11の後方向8Bに延びる経路である。また、搬送経路65は、プリンタ部11の後部において下部から上部に延びつつUターンし、前方向8Aに沿って記録部24とプラテン42との間の空間を経て排出トレイ21に至る経路である。搬送ローラ部54及び排出ローラ部55の間における搬送経路65は、左方向9A及び右方向9Bにおける複合機10の概ね中央部に設けられており、且つ前方向8Aに延びている。なお、搬送経路65内における用紙12の搬送方向16は、図2において一点鎖線の矢印で示されている。
[搬送ローラ部54]
搬送ローラ部54は、図2に示されるように、記録部24より搬送方向16の上流に配置されている。搬送ローラ部54は、互いに対向する搬送ローラ60及びピンチローラ61を有する。搬送ローラ60は、搬送モータによって駆動される。ピンチローラ61は、搬送ローラ60の回転に伴って連れ回る。用紙12は、搬送モータの正転によって正回転する搬送ローラ60及びピンチローラ61に挟持されて搬送方向16に搬送される。
[排出ローラ部55]
排出ローラ部55は、図2に示されるように、記録部24より搬送方向16の下流に配置されている。排出ローラ部55は、互いに対向する排出ローラ62及び拍車63を有する。排出ローラ62は、搬送モータによって駆動される。拍車63は、排出ローラ62の回転に伴って連れ回る。用紙12は、搬送モータの正転によって正回転する排出ローラ62及び拍車63に挟持されて搬送方向16に搬送される。
[記録部24]
記録部24は、図2に示されるように、搬送方向16における搬送ローラ部54及び排出ローラ部55の間に配置されている。また、記録部24は、搬送経路65を挟んでプラテン42と上方向7A及び下方向7Bに沿って対向配置されている。すなわち、記録部24は、搬送経路65より上方で、且つ搬送経路65に対面するように配置されている。記録部24は、キャリッジ23と、記録ヘッド39(吐出ヘッドの一例)とを備えている。
キャリッジ23は、図3に示されるように、前方向8A及び後方向8Bに離間する位置において各々が左方向9A及び右方向9Bに沿って延設されたガイドレール45、46(ガイドの一例)に支持されている。ガイドレール45、46は、プリンタ部11のフレームに支持されている。キャリッジ23は、ガイドレール45よりも前方にあるガイドレール46に設けられた公知のベルト機構に連結されている。このベルト機構は、キャリッジモータ(不図示)によって駆動される。すなわち、ベルト機構に連結されたキャリッジ23は、キャリッジモータの駆動によって左方向9A及び右方向9Bに所定の移動範囲で往復移動する。つまり、ガイドレール45,46は、キャリッジ23の移動を案内する。以下、ガイドレール45、46を、後方のガイドレール45,前方のガイドレール46と称して区別することがある。
また、キャリッジ23からは、インクタンク100及び記録ヘッド39を接続するインクチューブ43が延出されている。インクチューブ43は、インクタンク100に貯留されたインク(液体の一例)を記録ヘッド39に供給する。より詳細には、各色(ブラック、マゼンタ、シアン、イエロー)のインクが流通する4本のインクチューブ43B、43M、43C、43Y(これらを総称して、「インクチューブ43」と表記することがある。)がインクタンク100から延出され、これらが垂直方向に並ぶように束ねられた状態で引き回された後、記録ヘッド39に接続されている。
記録ヘッド39は、図2に示されるように、キャリッジ23に搭載されている。記録ヘッド39の下面には、複数のノズル40が形成されている。複数のノズル40の先端は、記録ヘッド39及び記録ヘッド39を搭載するキャリッジ23の下面から露出されている。以下、ノズル40の先端が露出された面を「ノズル面」と表記することがある。記録ヘッド39は、ノズル40からインクを微小なインク滴として吐出する。キャリッジ23が移動する過程において、プラテン42に支持されている用紙12に向けて記録ヘッド39がインク滴を吐出する。これにより、用紙12に画像が記録される。
[プラテン42]
プラテン42は、図2に示されるように、搬送方向16における搬送ローラ部54及び排出ローラ部55の間に配置されている。プラテン42は、上方向7A及び下方向7Bにおいて記録部24に対向するようにして配置されており、搬送ローラ部54によって搬送される用紙12を下方から支持する。
[インクタンク100]
インクタンク100は、図1に示されるように、複合機10の内部に収容されている。インクタンク100は、複合機10から容易に取り外すことができないように、当該複合機10に固定されている。インクタンク100の前面は、複合機10の前面で且つ右方向9Bの端部に形成された開口を通じて、複合機10の外部に露出される。
以下、インクタンク100からインクチューブ43を通じてキャリッジ23へインクを供給する構成について詳述する。
インクタンク100は、図1に示すように、プリンタ部11の前部であって複合機10の筐体内の右端部(図の右方)近傍に設けられたインクタンク収容部(不図示)に収容されている。インクタンク100は、複合機10内において、記録ヘッド39を搭載するキャリッジ23とは別途に設けられており、キャリッジ23に搭載された記録ヘッド39へはインクチューブ43を通じてインクが供給されるようになっている。このようにキャリッジ23とインクタンク100とを別途に配置することにより、キャリッジ23が小型化される。
インクタンク100は、シアン(C)・マゼンダ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクを貯蔵する4個のインクタンク100C,100M,100Y,100Bからなり、複合機10の筐体内に設けられたインクタンク収容部内の所定の位置にそれぞれ装填されている。
なお、本実施の形態では、4色のインクで画像記録を行う複合機10について説明しているが、本発明に係る画像記録装置においてインク色の数は特に限定されず、例えば、6色インクや8色インクにより画像記録を行う場合には、インクタンクを増やすことが可能であることは勿論である。インクタンク100は、合成樹脂製の筐体内に各色インクが充填された、複合機10から着脱可能なカートリッジ式としたり、複合機10の筐体内に据え置きされてインクが適宜補充される補充式としたりすることができる。
インクタンク収容部に装填されたインクタンク100C,100M,100Y,100Bから記録ヘッド39へは、各色毎に独立したインクチューブ43により各色インクが供給される。すなわち、インクタンク100C,100M,100Y,100Bに対応して4本のインクチューブ43C,43M,43Y,43Bが相互に独立して配設されており、全てのインクチューブ43C,43M,43Y,43Bが記録ヘッド39に接続されている。
インクチューブ43C,43M,43Y,43Bは、合成樹脂製のチューブ(樹脂チューブ)であり、記録ヘッド39の走査に応じて撓むような可撓性を有するものである。その樹脂チューブは、加熱及び冷却の処理により所望の湾曲形状に永久変形することができるように、熱可塑性樹脂を主成分として含むことが好ましい。特に、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)が好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE:Low Density Polyethylene)がさらに好ましい。LDPEは、比較的に安価であり、かつガス透過に対する良好なバリア性とインクに対する良好な耐食性とを有する点が好ましい。反面、LDPE製のチューブは、例えばゴムチューブと比較すると、曲げに対して比較的に大きな反力を示す傾向がある。
図には詳細に示していないが、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bの第1端部は、インクタンク収容部の各インクタンク収容位置に設けられた接合部にそれぞれ接続されている。つまり、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bの第1端部は、接合部を介してインクタンク100C,100M,100Y,100Bに接続されている。インクチューブ43Cは、インクタンク100Cに対応しておりシアン(C)のインクを供給するためのものである。同様に、インクチューブ43M,43Y,43Bは、それぞれインクタンク100M,100Y,100Bに対応しており、それぞれマゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)のインクを供給するためのものである。
インクタンク収容部から導出されたインクチューブ43C,43M,43Y,43Bは、左方向9Aに向かって複合機10の左方向9A及び右方向9Bにおける中央付近まで引き出されて、複合機10のフレーム等の適当な部材に一旦固定されている。この固定部材は特に限定されず、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bを前方向8A及び後方向8Bから挟持する部材として複合機10のフレーム等に設けられていてもよいし、断面が略C形状のクランプとして複合機10のフレーム等に設けられていてもよいし、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bと複合機10のフレームの一部を一体に結束する、一般に結束バンドと呼称されるような、金属製や合成樹脂製の帯状の部材であってもよい。本実施の形態では、固定部材は、後述する支持プレート82に設けられている。インクチューブ43C,43M,43Y,43Bにおいて固定部材によって固定されている部分を中間固定部69と呼ぶ。インクチューブ43C,43M,43Y,43Bにおいて、インクタンク収容部から中間固定部69までの部分は、適当な複数の位置で複合機10のフレーム等(本実施の形態では、後述する支持プレート82)に係止されて固定されており、キャリッジ23の往復移動に拘わらず一定の姿勢を保っている。
一方、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bにおいて、中間固定部69から記録ヘッド39までの部分は、複合機10のフレーム等に固定されておらず、キャリッジ23の往復移動に追従して姿勢変化する。このような中間固定部69の位置は、キャリッジ23が、記録ヘッド39から延出されるインクチューブ43C,43M,43Y,43Bの曲げ半径が最小となる位置(キャリッジの移動範囲の他端の位置)にある場合に、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bが潰れずに湾曲姿勢を維持する位置の範囲内において、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bの長さや引き回し経路を考慮して適宜設定すればよい。
インクチューブ43C,43M,43Y,43Bの記録ヘッド39から中間固定部69までの部分は、記録ヘッド39から、キャリッジ23の往復移動方向の一方向(本実施の形態では、左方向9A)へ略水平に延出され、キャリッジ23と中間固定部69との略中間位置に相当する中間部70が湾曲して上記一方向(左方向9A)と反対方向(本実施の形態では、右方向9B)へ延出されて中間固定部69に至っている。したがって、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bの記録ヘッド39から中間固定部69までの部分は、水平方向へ略U字状に湾曲している。このように、実施形態においては、中間部70が湾曲部を構成している。記録ヘッド39からインクチューブ43C,43M,43Y,43Bが延出する方向は、キャリッジ23の往復移動方向のいずれの方向(左方向9Aまたは右方向9B)であってもよい。
さらに詳細に説明するに、図4に示すように、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bの第2端部は、それぞれコネクタ71に結合されている。コネクタ71には、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bの第2端部が略水平方向に配列されて結合されている。すなわち、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bは中間固定部69からコネクタ71に至るまでは、鉛直方向(上方向7A及び下方向7B)に束ねられているが、コネクタ71によって、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bの配列方向が鉛直方向から水平方向に変換される。図には詳細に示していないが、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bからそれぞれ供給される各色インクは、記録ヘッド39の各バッファタンク内へ導かれる。コネクタ71はキャリッジ23に着脱可能であり、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bのそれぞれの第2端部をコネクタ71に結合した状態でコネクタ71をキャリッジ23に装着することで、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bの第2端部を記録ヘッド39に接続することができる。
また、図3に示すように、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bは、キャリッジ23の往復移動に追従して中間部70の湾曲を変化させながら、つまり湾曲部の曲率半径を変化させながら移動する。図に示すように、キャリッジ23が往復移動されることにより、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bの中間固定部69から記録ヘッド39に至る部分がキャリッジ23に追従する。そして、キャリッジ23が往復移動範囲の一端(本実施の形態では右方向9Bの端)から他端(本実施の形態では左方向9Aの端)へ移動するに従い、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bは、湾曲している中間部70の曲げ半径(曲率半径)が小さくなるように撓みながら、キャリッジ23の移動方向へ移動する。また、中間部70から中間固定部69までは、後述する支持プレート82に設けられた壁に沿って往復移動方向に直線状となる。一方、記録ヘッド39が往復移動範囲の他端から一端へ移動するに従い、インクチューブ43C,43M,43Y,43Bは、湾曲している中間部70の曲げ半径が大きくなるように撓みながら、キャリッジ23の移動方向へ移動する。
ここで、図4に示すように、インクチューブ43C,43M,43Y,43B(第1樹脂チューブ)は、後で詳述するように、それぞれが自然状態で略U字状に湾曲する第1湾曲部70Aを有するように永久変形されている。第1湾曲部70Aの曲率半径R1は、自然状態における形状が略直線状であり、かつ長さ、径及び材質がインクチューブ43C,43M,43Y,43Bとそれぞれ同じである樹脂チューブ81C,81M,81Y,81B(第2樹脂チューブ、これらを総称して、「樹脂チューブ81」と表記することがある。)をインクチューブ43C,43M,43Y,43Bに代えて記録ヘッド39及びインクタンク100と接続し(図10参照)、キャリッジ23を移動範囲の中央よりも上記他端よりにある第1位置に移動したときに、樹脂チューブ81C,81M,81Y,81Bに形成される第2湾曲部70B(図10参照)の曲率半径R2と略等しい。
ここで、第1位置は、複合機10においてインクチューブ43C,43M,43Y,43Bの中間部70(湾曲部)の曲率半径が最も小さくなるキャリッジ23の上記移動範囲の他端と一致する位置に設定するのが好ましい。図3及び図10においては、上記他端の位置に移動したキャリッジ23を実線により示し、上記移動範囲の中央に移動したキャリッジ23を想像線L11により示し、上記移動範囲の一端の位置に移動したキャリッジ23を想像線L12により示している。
また、相互に独立したインクチューブ43C,43M,43Y,43Bは、中間固定部69と第2端部との間の少なくとも一箇所において結束部材72により結束されている。結束部材72は、垂直方向に配列されたインクチューブ43C,43M,43Y,43Bを、その配列状態で一体に結束するものであり、一般に結束バンドと呼称されるような、金属製や合成樹脂製の帯状の部材により実現される。
以下、本実施形態の液体吐出装置の製造方法を説明する。図4に、本実施形態の製造方法により自然状態で湾曲形状を有するように永久変形されたインクチューブ43の外観構成を示す。なお、図4においては、インクチューブ43の中間固定部69と対応する部分よりも右方の部分が湾曲しているが、この部分は自然状態で湾曲させる必要はなく、略直線状であってもよい。図5に、本実施形態の液体吐出装置の製造方法において、インクチューブ43の素材である複数の樹脂チューブ81を束にして治具により固定した状態を示す。図6〜8に、本実施形態の液体吐出装置の製造方法をフローチャートにより示す。
図6に示すように、本実施形態の液体吐出装置の製造方法は、キャリッジ23が上記移動範囲の中央よりも上記他端よりの第1位置にあるときのインクチューブ43の湾曲形状と同じ湾曲形状を有するようにインクチューブ43の素材である樹脂チューブ81を治具により固定する第1処理(S11。図7参照)と、そのようにして樹脂チューブ81が治具により固定されることで樹脂チューブ81に形成される湾曲部70Cを、樹脂チューブ81が軟化する第1温度TH1まで加熱した後、第1温度TH1よりも低い第2温度TH2まで冷却することで、樹脂チューブ81を自然状態で湾曲するように永久変形させる第2処理(S12。図8参照)と、を含む。
より具体的には、図5に示すように、第1処理(図7参照)においては、インクチューブ43の素材である複数の樹脂チューブ81(81C,81M,81Y,81B)は、複数の結束部材72により一束に結束された状態で、インクチューブ43を複合機10の筐体内部で支持させるための支持プレート82に装着される(S21)。次に、樹脂チューブ81C,81M,81Y,81Bのそれぞれの第2端部をコネクタ71に結合する(S22)。次に、キャリッジ23が上記第1位置にあるときのインクチューブ43C,43M,43Y,43Bの湾曲形状と同じ湾曲形状を有するように樹脂チューブ81C,81M,81Y,81Bを湾曲させる(S23)。次に、コネクタ71を、端部固定治具83により支持プレート82に対して固定する(S24)。このように、本実施形態の第1処理においては、複合機10に実際の部品として組み込まれる(図3参照)支持プレート82が、樹脂チューブを所望の湾曲形状を有する状態で固定するための治具として流用される。
一方、本実施形態の第2処理(図8参照)においては、例えば図示しない容器に水を入れ、その水を第1温度TH1かそれよりも若干高い温度まで加熱し、その温度に保温する(S31)。そして、その水に、上記第1処理により上記湾曲形状を有する状態で支持プレート82及び端部固定治具83により固定された樹脂チューブ81C,81M,81Y,81Bの湾曲部70Cを浸し、その状態を加熱に十分な時間(例えば30秒間)だけ維持する(S32)。これにより、樹脂チューブ81C,81M,81Y,81Bの湾曲部70Cが第1温度TH1まで加熱されて軟化する。
その後、湾曲部70Cを、例えば常温(例えば20℃)の水に浸すことで、第1温度TH1よりも低い第2温度TH2(例えば20℃)まで冷却し、湾曲部70Cを硬化させる(S33)。湾曲部70Cが硬化した後、コネクタ71を端部固定治具83から取り外し、端部固定治具83を支持プレートから取り外す(S34)。このように、端部固定治具83によるコネクタ71の固定は、一旦軟化した湾曲部70Cが硬化するまでの間維持される。ここで、ステップ32及びステップ33においては、樹脂チューブ81C,81M,81Y,81Bの少なくとも湾曲部70Cが水に浸されればよい。例えば、樹脂チューブ81C,81M,81Y,81Bの中間固定部69とコネクタ71との結合部よりもやや手前の部分との間の部分が水に浸されてもよいし、樹脂チューブ81C,81M,81Y,81Bの全体が水に浸されてもよい。しかしながら、コネクタ71に結合された、樹脂チューブ81C,81M,81Y,81Bの第2端部は上記加熱された水に浸さないことが好ましい。コネクタ71に設けられた図示しないチューブ接続用突起等を第2端部に差し込むような樹脂チューブ81の結合形態においては、樹脂チューブ81の壁から上記管接続用突起に働く力が、樹脂チューブ81の壁の加熱により除去されることも考えられるからである。以上の処理により、キャリッジ23が上記第1位置にあるときのインクチューブ43C,43M,43Y,43Bの湾曲形状と同じ湾曲形状を有するように各樹脂チューブ81C,81M,81Y,81Bを永久変形させることができる。
以上のように、第1温度TH1に加熱した水に湾曲部70Cを浸すことにより加熱することで、湾曲部70Cを簡便かつ正確に第1温度TH1まで加熱することができる。ここで、第1温度TH1は、樹脂チューブ81の主成分である樹脂(例えばLDPE)のビカット軟化温度VTに対し、条件:(VT+5)℃≧TH1≧(VT−10)℃を満たす範囲内の温度に設定することが好ましい。例えば樹脂チューブ81の主成分がLDPEであり、そのビカット軟化温度VTが94℃であれば、84℃から99℃までの所定温度(例えば85℃)の水に湾曲部70Cを十分な時間(例えば30秒間)だけ浸す。なお、樹脂チューブ81のビカット軟化温度VTが知られておらず、荷重たわみ温度(熱変形温度)HTが知られている場合には、第1温度TH1は、条件:(HT+5)℃≧TH1≧(HT−10)℃を満たす範囲内の温度に設定することが好ましい。
また、上記第1処理及び上記第2処理によれば、実際の複合機10の部品(支持プレート82)に、実際に複合機10に組み付けるときと同じ状態で樹脂チューブ81C,81M,81Y,81Bを取り付けて所望の永久変形が与えられる。そして、好ましくは、樹脂チューブ81C,81M,81Y,81Bを支持プレート82から取り外したり、コネクタ71を第2端部から取り外したりすることなく、支持プレート82に装着されたままの状態で、樹脂チューブ81C,81M,81Y,81Bが複合機10の組み立てラインに送られ、複合機10に組み付けられる。
したがって、例えば、樹脂チューブ81C,81M,81Y,81Bを個別に加熱及び冷却により永久変形させた後にそれぞれのチューブの第2端部をコネクタ71に結合し、支持プレート82に装着するような場合と比較すると、組み立て後の複合機10を作動させたときに、キャリッジ23の移動によるチューブの変形を均一にすることができる。その結果、一束に結束した複数のインクチューブ43C,43M,43Y,43Bの配置の乱れを抑えることができる。したがって、インクチューブ43が他部材と干渉したり、記録ヘッド39に対して各チューブから様々な方向に反力が作用するのを防止することができる。これにより、印字品質の向上を容易にすることができる。
なお、ステップS33では、湾曲部70Cを、例えば常温(例えば20℃)の水に浸すことで、第1温度TH1よりも低い第2温度TH2(例えば20℃)まで冷却し、湾曲部70Cを硬化させたが、湾曲部70Cを、例えば常温(例えば20℃)の空気中に放置することで、第1温度TH1よりも低い第2温度TH2(例えば20℃)まで冷却し、湾曲部70Cを硬化させてもよい。
(実施例)
以下、本発明に係る実施例を説明する。図9に、市場で購入可能なLDPE製の各樹脂チューブをインクチューブ43として使用した場合の、各樹脂チューブの曲げに対する反力についての調査結果をグラフにより示す。
図中の折れ線L1〜L5は、5種類のLDPE製の樹脂チューブ(TU1、TU2、TU3、TU4、TU5)を複数本ずつ準備し、同じ種類の複数の樹脂チューブを図5に示したのと同様にして結束したもの(資料D1〜D5)を準備し、各チューブの第2端部にコネクタ71を結合し、且つコネクタ71を疑似的なキャリッジ23に装着し、キャリッジ23に働く上記反力を、キャリッジ23の主走査方向の複数のポジションにて測定した結果を示している。なお、本調査では、資料D1〜D5は、それぞれに同じ材料から形成された同じ径のチューブを束にしたものではあるが、資料D1〜D5を、全て同じ径のチューブを束にして構成せずに、例えば黒インク用のチューブとして他のチューブよりも径の大きいチューブが使用されたとしても、本調査の定性的な結果は変わらない。
図9のグラフの横線の位置P1はキャリッジ23の移動範囲の一端の位置(上記曲率半径が最大の位置)に対応し、位置P5はキャリッジ23の移動範囲の他端の位置(上記曲率半径が最小の位置)に対応している。また、位置P1と位置P2、位置P2と位置P3、位置P3と位置P4、位置P4と位置P5の間隔はそれぞれ位置P1と位置P5との間隔の4分の1にほぼ等しくなっている。
また、上記5種類のLDPE製の樹脂チューブの中で、上記の測定結果の最大値(キャリッジ23が位置P5にあるときの反力)が最も小さかった樹脂チューブTU1(折れ線L1参照)を選び出し、その樹脂チューブTU1による資料(資料D1)に対して上記第1処理及び上記第2処理を行い、湾曲形状を有するように永久変形させたもの(資料D7)を準備した。資料D7が有する湾曲部の曲率半径は、キャリッジ23が位置P5にあるときの資料D1の湾曲部が有する曲率半径と略等しくした。そして、そのように永久変形された資料D7について、キャリッジ23の主走査方向の複数のポジションにて上記反力を測定した。その結果を、折れ線L7により示す。
資料D1(折れ線L1)を用いて反力を測定すると、キャリッジ23が位置P5にあるときに反力が最大となるが、資料D7(折れ線L7)を用いて反力を測定すると、キャリッジ23が位置P5にあるときの反力が大幅に低下している。その一方で、キャリッジ23が位置P1、P2,P3,P4にあるときに資料D7を用いて測定した反力は、キャリッジ23が位置P1、P2,P3,P4にあるときに資料D1を用いて測定した反力よりもそれぞれわずかに大きくなっている。その結果、資料D7では、キャリッジ23が位置P4にあるときの反力が最大(約0.85N)となり、キャリッジ23が位置P5にあるときの反力が最小(約0.25N)となっている。その最大値と最小値との差異(約0.6N)は、資料D1の反力の最大値(約1.35N)と最小値(約0.35N)との差異(約1.0N)よりも小さくなっている。
以上の結果により、キャリッジ23が位置P5にあるときのインクチューブ43の湾曲形状と同じ湾曲形状を有するように樹脂チューブ81を永久変形させることで、上記反力の最大値と最小値の差異を大幅に低減できることが確かめられた。
上記の結果によれば、例えばキャリッジ23が位置P4にあるときの樹脂チューブの湾曲形状と同じ湾曲形状を有するように樹脂チューブを永久変形させると、キャリッジ23が位置P4にあるときの反力は大幅に低下すると予想される。また、キャリッジが位置P5にあるときの樹脂チューブの形状は、キャリッジ23が位置P4にあるときの樹脂チューブの形状からの曲げの程度が小さくなるので、キャリッジ23が位置P5にあるときの反力もある程度低下すると予想される。一方、キャリッジ23が位置P1、P2,P3にあるときの反力は若干増大することが予想される。キャリッジ23が位置P5にあるときに最大であった反力が低下し、キャリッジ23が位置P1にあるときに最小であった反力が若干増大することで、この場合にも、上記反力の最大値と最小値との差異を小さくできることが予想される。したがって、上記の実施の形態において、第1位置は位置P5に相当する位置であることが好ましいが、第1位置を位置P4に相当する位置に設定してもよい。
また、折れ線L6は、複数本の樹脂チューブTU1に対して、個別に上記第1処理及び上記第2処理を行い、それぞれが湾曲形状を有するように永久変形させたものを後から束にして第2端部にコネクタ71を取り付けたもの(資料D6)を準備し、その資料D6に対して、上記反力の測定を行った結果を示している。資料D6が自然状態で有する湾曲部の曲率半径は、キャリッジ23が位置P4にあるときの資料D1の湾曲部が有する湾曲部の曲率半径と略等しくなるようにしている。この場合には、永久変形後に束にした複数本の樹脂チューブの配置がキャリッジ23の移動により乱れたために、湾曲部の曲率半径が最小となるキャリッジ23の位置(位置P5)で上記反力が大幅に上昇している。
なお、上記の実施の形態では、4色のインクで画像記録を行う複合機10について説明しているのでインクチューブ43も4本であるが、前述したように、本発明に係る画像記録装置においてインク色の数は特に限定されない。したがって、例えば、6色インクや8色インクにより画像記録を行うことも可能であり、その場合には、インクチューブ43の本数を増やせばよい。また、6本や8本のインクチューブ43を水平方向に配列するスペースがキャリッジ23の周辺に十分にない場合には、インクチューブ43を2群に分割して、キャリッジ23の右部と左部とからそれぞれ延出し、各群のインクチューブの湾曲方向が逆となるように引き回してインクタンク100に接続することとしてもよい。